説明

非水電解液二次電池システム

【課題】「液枯れ現象」による電池容量の劣化を確実に低減しつつ、効率的に非水電解液二次電池を制御することが可能な非水電解液二次電池システムを提供する。
【解決手段】積層された単電池21・21・・・と、単電池21・21・・・を積層方向に挟持し、積層方向に向かって増圧・減圧可能に拘束圧力を付加する圧力付加手段3と、単電池21・21・・・と圧力付加手段3の運転を制御する制御装置4と、を備える非水電解液二次電池システム1であって、制御装置4には単電池21の「液枯れ状態」を示す理論抵抗値Rが記憶され、また、単電池21の電流値・電圧値を測定する電流センサー41と電圧センサー42が電気的に接続され、制御装置4は電流センサー41による電流値Iaと、電圧センサー42による電圧値Vaとに基づいて抵抗値Raを算出し、抵抗値Raが理論抵抗値R以上となる場合、圧力付加手段3を減圧させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばリチウムイオン二次電池などの非水電解液二次電池を備え、「液枯れ現象」による電池容量の劣化を抑制しつつ、効率的に前記非水電解液二次電池を制御することが可能な非水電解液二次電池システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の分野においては、環境問題や資源問題が叫ばれるなか、電気自動車やハイブリッド電気自動車についての車両の開発が進められており、駆動電源として当該車両に搭載される非水電解液二次電池は大きく注目されている。
ところで、非水電解液二次電池においては、使用条件等によって電池内部の抵抗値が上昇することが知られている。そして、このような抵抗値の上昇によって引き起こされる電池性能の低下を抑制するために、電池内部の抵抗値に基づいて、電池本体を構成する各単電池の締結荷重を制御する技術が「特許文献1」によって開示されている。
即ち、前記「特許文献1」においては、複数個の単電池(非水電解液二次電池)を積層した積層体を含む組電池であって、前記積層体の積層方向に加わる締結荷重を変える締結荷重可変手段と、前記積層体の内部抵抗値を検出する検出手段と、前記検出した内部抵抗値、及び予め格納される制御マップに基づいて、前記締付荷重可変手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする組電池についての技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−288168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記「特許文献1」によって示される技術によれば、積層体に加えられる締付荷重は、検出された内部抵抗値に見合った適切な値にフレキシブルに可変させることが可能となり、「液枯れ現象」が効果的に抑制され、効率のよい高電池容量の非水電解液二次電池を実現することも可能であると思われる。
しかし、電池内部の抵抗値を上昇させる要因としては、様々なものが存在するところ、前記「特許文献1」においては、制御手段に格納される制御マップの内容等が具体的に示されておらず、各々の要因に対して適切な制御となっているか疑問が残る。
また、電池内部の抵抗値が上昇する要因の一つとして、電極体内の電解液の「液枯れ現象」が知られているが、前記「特許文献1」における制御マップの内容は、前記「液枯れ現象」に起因する、電池内部の抵抗値の上昇についての対応とはなっていない。
【0005】
本発明は、以上に示した現状の問題点を鑑みてなされたものであって、積層された複数の非水電解液二次電池と、該非水電解液二次電池を積層方向に挟持しつつ、該積層方向に向かって増圧・減圧可能に拘束圧力を付加する圧力付加手段と、前記非水電解液二次電池及び前記圧力付加手段の運転を制御する制御装置と、を備える非水電解液二次電池システムであって、「液枯れ現象」による電池容量の劣化を確実に低減しつつ、効率的に非水電解液二次電池を制御することが可能な非水電解液二次電池システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、積層された複数の非水電解液二次電池と、該非水電解液二次電池を積層方向に挟持しつつ、前記非水電解液二次電池に対して前記積層方向に向かって増圧・減圧可能に拘束圧力を付加する圧力付加手段と、前記非水電解液二次電池及び前記圧力付加手段の運転を制御する制御装置と、を備える非水電解液二次電池システムであって、前記制御装置には、前記非水電解液二次電池の「液枯れ状態」を示す理論抵抗値Rが予め記憶されるとともに、前記非水電解液二次電池の電流値及び電圧値を測定する電流値測定手段及び電圧値測定手段が、各々電気的に接続され、前記制御装置は、前記電流値測定手段によって測定された電流値Iaと、前記電圧値測定手段によって測定された電圧値Vaとに基づいて、抵抗値Raを算出し、該抵抗値Raが前記理論抵抗値R以上となる場合、前記圧力付加手段による拘束圧力を減圧させるものである。
【0008】
請求項2においては、請求項1に記載の非水電解液二次電池システムであって、前記制御装置は、前記圧力付加手段による拘束圧力を減圧させた後、再び前記非水電解液二次電池の電流値及び電圧値を測定するとともに、前記電流値測定手段によって測定された電流値Ibと、前記電圧値測定手段によって測定された電圧値Vbとに基づいて、抵抗値Rbを算出し、該抵抗値Rbが前記理論抵抗値R未満とならない場合、前記非水電解液二次電池の出力を停止させるものである。
【0009】
請求項3においては、請求項1または請求項2に記載の非水電解液二次電池システムであって、前記非水電解液二次電池の電気容量は4.5V以上であるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、「液枯れ現象」による電池容量の劣化を確実に低減しつつ、効率的に非水電解液二次電池を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例に係る非水電解液二次電池システムの全体的な構成を示した側面図。
【図2】非水電解液二次電池システムの制御方法を示したフローチャート。
【図3】検証実験に用いられる第一実験装置の全体的な構成を示した分解立体図。
【図4】同じく検証実験に用いられる第二実験装置の全体的な構成を示した分解立体図。
【図5】同じく検証実験において、サンプルである非水電解液二次電池の電池容量に関する回復処置前後における、サイクル数と電池容量比との関係をドットによって示した関係図。
【図6】同じく検証実験において、サンプルである非水電解液二次電池の電池容量に関する回復処置前後における、電流値と電圧変化値との関係をドットによって示した関係図。
【図7】同じく検証実験において、サンプルである非水電解液二次電池の電池容量に関する回復処置前後における電池容量比を、各試験材料別に示した図であって、(a)は第一実験装置による両者の関係をドットによって示した関係図、(b)は第二実験装置による両者の関係をドットによって示した関係図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0013】
[非水電解液二次電池システム1の全体構成]
先ず、本実施例における非水電解液二次電池システム1の全体構成について図1を用いて説明する。
なお、以下の説明に関しては便宜上、図1における矢印Aの方向を前方と規定して記述する。また、図1においては、図面上の上下方向を非水電解液二次電池システム1の上下方向と規定して記述する。
【0014】
非水電解液二次電池システム1は、例えば電気自動車やハイブリッド電気自動車などの車両において、駆動電源システムとして当該車両に搭載されるものである。
非水電解液二次電池システム1は、主に電池本体2や圧力付加手段3や制御装置4などによって構成される。
【0015】
電池本体2は、非水電解液二次電池システム1における電源機能を発現するために備えられるものである。
電池本体2は、積層配置される複数の単電池21・21・・・やエンドプレート22などによって構成される。
【0016】
単電池21は、電池本体2の蓄電素子として備えられるものである。
単電池21は、例えばリチウムイオン二次電池などの非水電解液二次電池であって、略矩形状の平板形状に構成される。
【0017】
より具体的には、単電池21は、正極活物質としてxLi2MnO3と(1−x)Li(NiMnCo)O2との固溶体(但し、x=0.2〜0.7)を有した正極合材を備えて構成される。また、前記正極活物質は、200〜300[mAh/g]の容量、および2.0〜5.0[m/g]の比表面積を有しており、単電池21は、およそ4.5V級以上の高電池容量を有した非水電解液二次電池として構成される。
なお、正極活物質は、LiFePO4やLiMnPO4などによって構成することも可能であるが、単電池21の寿命や入出力の観点から言えば、前述のxLi2MnO3と(1−x)Li(NiMnCo)O2との固溶体によって形成するのが望ましい。
【0018】
一方、単電池21は、負極活物質として、比較的安定したLiイオンの挿入・脱離が可能であるグラファイトを用いた負極合材を有する。
【0019】
このような構成からなる単電池21・21・・・は、非水電解液二次電池システム1が搭載される車両の要求性能に応じて所定の個数分備えられ、一方向(本実施例においては前後方向)に向かって積層される。
【0020】
各単電池21の一側部には、複数(本実施例においては2個)の端子21a・21aが突設される。
そして、隣り合う単電池21・21間において、各々の端子21a・21aが高圧ケーブル21bによって連結されることにより、積層される複数の単電池21・21・・・(以下、適宜「組電池21A」と記載する)は、互いに電気的に接続される。
またその一方で、組電池21Aは、端子21aを介して、既知のDC/DCコンバータ23と、高圧ケーブ21cによって電気的に接続されており、前記組電池21Aに入出力される電流は、DC/DCコンバータ23を通じて行われるようになっている。
【0021】
なお、本実施例における組電池21Aは、車両の駆動電源として設けられることから、通常4.5V級以上の高電池容量からなる単電池21(非水電解液二次電池)によって構成される。
ここで、このような高電池容量からなる単電池21においては、正極活物質として比較的活性の低い(即ち、化学反応の鈍い)物質が選択されるところ、前記単電池21による電力の入出力量を確保するためには、正極活物質の比表面積に関して、十分な広さを確保する必要がある。
一方、単電池21全体の特性からすれば、正極活物質の比表面積が増大すればするほど「液枯れ現象」が発生しやすくなる。
【0022】
なお、前記「液枯れ現象」とは、非水電解液二次電池が充電・放電を繰返すたびに、電極の膨張・収縮が繰返され、該電極内部における非水電解液の分布に偏りが生じて、電池容量が劣化する現象をいう。
【0023】
そこで、本実施例における非水電解液二次電池システム1においては、後述する制御方法に従って、組電池21A(より具体的には、単電池21)に関する電力の入出力動作を制御することで、正極活物質の比表面積について十分な広さを確保しつつ、たとえ「液枯れ現象」が発生したとしても、電池容量の劣化を極力抑え、効率の良い組電池21Aを実現することを可能としているのである。
【0024】
エンドプレート22は、後述する圧力付加手段3とともに、組電池21Aの積層姿勢(より具体的には、単電池21・21・・・の配置位置。以下同じ。)を保持するためのものである。
エンドプレート22・22は、略矩形状の平板形状に形成され、一組の組電池21Aに対して二枚備えられる。
【0025】
そして、各エンドプレート22は、組電池21Aの前後方向(単電池21・21・・・の積層方向。以下同じ。)の両端面側(組電池21Aの最前面側、及び最後面側)において、前記組電池21Aを挟持するようにして各々積層配置される。また、何れか一方(或いは両方)のエンドプレート22は、圧力付加手段3によって、他方のエンドプレート22に対して相対的に近接する方向に向かって可動される。
これにより、組電池21Aには、エンドプレート22・22を介して、積層方向の圧縮力(以下、「拘束圧力」と記載する)が加えられることとなり、組電池21Aの積層姿勢が堅固に保持されるのである。
【0026】
次に、圧力付加手段3について説明する。
圧力付加手段3は、エンドプレート22を可動させることによって、電池本体2(より具体的には、組電池21A)に拘束圧力を加えるためのものである。
圧力付加手段3は、例えば、拘束バー31や駆動モータ32などによって構成される。
【0027】
拘束バー31は、二枚のエンドプレート22・22を連結するとともに、一方(本実施例においては、後方。以下同じ。)のエンドプレート22を、他方(本実施例においては、前方。以下同じ)のエンドプレート22に向かって可動させる際、可動方向を規制しつつ、前記一方のエンドプレート22に動力を伝達するためのものである。
拘束バー31・31・・・は、例えば既知のボールネジなどによって構成され、一組の組電池21Aに対して複数本(図1においては、側面図であるため二本のみ記載)備えられる。また、各拘束バー31は、単電池21・21・・・の積層方向に延出するようにして配置され、一方の端部(本実施例においては、前端部)において、前記他方のエンドプレート22に軸支されるとともに、他方の端部(本実施例においては、後端部)において、後述する駆動モータ32の出力軸と連結される。
【0028】
そして、これら複数本の拘束バー31・31・・・の中途部には、前記一方のエンドプレート22が、移動ナット34・34・・・を介して貫設されており、各々の拘束バー31・31・・・が、駆動モータ32・32・・・によって、軸心を中心にして回転されることで、前記一方のエンドプレート22は、前方、或いは後方に可動される。
【0029】
駆動モータ32は、前述したように、拘束バー31を回転させる際の動力源として備えられるものであって、それぞれの拘束バー31ごとに設けられる。
なお、本実施例における構成は一例を示すものであって、例えば、複数本の拘束バー31・31・・・に対して一基の駆動モータ32を設け、これらの拘束バー31・31・・・、及び駆動モータ32を、駆動ベルトなどによって連結するような構成であってもよい。
【0030】
駆動モータ32には、ドライバ33が電気的に接続されている。
前記ドライバ33は、駆動モータ32に出力信号を送信するためのものであり、該出力信号に応じて、駆動モータ32の駆動が実行される。
【0031】
以上に示した構成からなる圧力付加手段3によって、前記一方のエンドプレート22を、前記他方のエンドプレート22に対して近接する方向に可動させることで、組電池21Aには、拘束圧力が増圧される。また、圧力付加手段3によって、前記一方のエンドプレート22を、前記他方のエンドプレート22に対して離間する方向に可動させることで、組電池21Aに加えられた拘束圧力が減圧されるのである。
【0032】
なお、本実施例における圧力付加手段3の構成は一例を示すものであって、組電池21Aに拘束圧力を増圧することが可能であり、且つ該拘束圧力を必要に応じて減圧することが可能であるような構成であれば特に限定されない。
例えば、組電池21Aとエンドプレート22との間に袋部材を配設するとともに、該袋部材の内部に圧縮空気を供給し、或いは該袋部材の内部より圧縮空気を排出することによって、組電池21Aに加えられる拘束圧力を増圧、或いは減圧させるような構成としてもよい。
【0033】
次に、制御装置4について説明する。
制御装置4は、記憶部や演算部を備えた、非水電解液二次電池システム1全体の運転を制御するための装置である。
制御装置4には、電池本体2に設けられるDC/DCコンバータ23や、圧力付加手段3に設けられる複数のドライバ33・33・・・や、車両に搭載されるモニター(図示せず)などが、出力手段として電気的に接続される一方、単電池21の電流値、及び電圧値を検出する電流センサー41、及び電圧センサー42などが、入力手段として電気的に接続されている。
【0034】
そして、制御装置4は、電流センサー41、及び電圧センサー42によって検出された電流値、及び電圧値に基づいて、これらのDC/DCコンバータ23やドライバ33・33・・・に関する動作を各々制御することで、非水電解液二次電池システム1全体の運転の制御を行うように構成されているのである。
【0035】
なお、本実施例においては、複数の単電池21・21・・・の中から代表となる一つの単電池21(より具体的には、組電池21Aの最前面側に位置する単電池21)を選択し、この単電池21に対して、電流センサー41、及び電圧センサー42を電気的に接続し、電流値、及び電圧値を測定することとしている。
しかし、これに限定されることはなく、例えば、全ての単電池21・21・・・に各々電流センサー41・41・・・、及び電圧センサー42・42・・・を電気的に接続し、それぞれの電流値、及び電圧値を測定することとしてもよい。
【0036】
[非水電解液二次電池システム1の制御方法]
次に、非水電解液二次電池システム1の制御方法について、図2を用いて説明する。
先ず始めに、非水電解液二次電池システム1に備えられる電池本体2において、組電池21Aには、予め定められた所定の拘束圧力(以下、「初期拘束圧力」と記載する)が、圧力付加手段3によって加えられつつ保持されている。
【0037】
ここで、本実施例における非水電解液二次電池システム1は、前述したように、駆動電源システムとして電気自動車やハイブリッド電気自動車などの車両に搭載されており、当該車両に走行指令が与えられると(ステップS101)、制御装置4は、DC/DCコンバータ23に出力信号を送信する。
そして、前記出力信号を受信したDC/DCコンバータ23は、組電池21Aより電流の放電を開始する。
【0038】
放電が開始された電流の値(電流値)は、その後、予め定められた所定の電流値に向かって徐々に高められる。
一方、制御装置4は、DC/DCコンバータ23への出力信号の送信後、所定時間の経過を経て、電流センサー41、及び電圧センサー42に電気信号を送信する。
そして、前記電気信号を受信した電流センサー41、及び電圧センサー42は、現時点における組電池21Aの電流値(Ia)、及び電圧値(Va)を検出して電気信号に変換し、その後、該電気信号を制御装置4に送信する。
【0039】
電気信号に変換された電流値(Ia)、及び電圧値(Va)を受信した制御装置4は、予め記憶部に格納されているプログラムを演算部に呼び出し、該演算部において、これらの電流値(Ia)、及び電圧値(Va)に基づき抵抗値(Ra)を算出する(ステップS102)。
ここで、前記記憶部には、閾値としての理論抵抗値(R)が予め記憶されており、前記プログラムとともに、該理論抵抗値(R)も同時に演算部に呼び出される。
そして、算出された抵抗値(Ra)は、理論抵抗値(R)と比較演算され、抵抗値(Ra)が理論抵抗値(R)以上であるかどうかが判断される(ステップS103)。
【0040】
なお、理論抵抗値(R)については、「液枯れ現象」を発生し得る組電池21Aの抵抗値として、例えば検証実験などによって経験上導き出される最も低い値の抵抗値が設定される。
【0041】
そして、演算部による比較演算の結果、抵抗値(Ra)が理論抵抗値(R)未満であれば(Ra<R)、前記ステップS101に戻され、車両への走行指令は続行される。
一方、抵抗値(Ra)が理論抵抗値(R)以上であれば(Ra≧R)、制御装置4は、各ドライバ33に出力信号を送信することとなり、後述するステップS104へと進められる。
【0042】
前記出力信号を受信した各ドライバ33は、駆動モータ32を駆動させ、一方のエンドプレート22(図1における後方のエンドプレート22)を、他方のエンドプレート22(図1における前方のエンドプレート22)に対して離間する方向に可動させる。
その後、前記一方のエンドプレート22の移動距離が、所定の値に到達すると、各ドライバ33は、駆動モータ32の駆動を停止するとともに、制御装置4に電気信号を送信する。
【0043】
このように、前記一方のエンドプレート22を可動させることによって、組電池21Aに加えられていた初期拘束圧力は減圧される(ステップS104)。
なお、この際の初期拘束圧力の減圧量については、該初期拘束圧力が完全に開放される(即ち、減圧後の拘束圧力が0となる)必要はなく、減圧後の拘束圧力が、初期拘束圧力の1/4程度となるような値に設定される。
また、本ステップ(ステップS104)によって、初期拘束圧力が一旦減圧された後は、その後、再び回復させる必要もなく、減圧後の拘束圧力を維持することとなる。
【0044】
各ドライバ33からの電気信号を受信した制御装置4は、所定時間の経過を経て(或いは、前記電気信号の受信直後)、再び電流センサー41、及び電圧センサー42に電気信号を送信する。
そして、前記電気信号を受信した電流センサー41、及び電圧センサー42は、初期拘束圧力の減圧後における組電池21Aの電流値(Ib)、及び電圧値(Vb)を検出して電気信号に変換し、その後、該電気信号を制御装置4に送信する。
【0045】
電気信号に変換された電流値(Ib)、及び電圧値(Vb)を受信した制御装置4は、再び演算部において、これらの電流値(Ib)、及び電圧値(Vb)に基づき抵抗値(Rb)を算出する(ステップS105)。
その後、算出された抵抗値(Rb)は、前記ステップS102によって算出された抵抗値(Ra)と比較演算され、抵抗値(Rb)が抵抗値(Ra)と比べて変化しているかどうかが判断される(ステップS106)。
【0046】
そして、演算部による比較演算の結果、抵抗値(Rb)が抵抗値(Ra)と比べて変化していなければ(Rb=Ra)、後述するステップS108へと進められることとなる。
一方、抵抗値(Rb)が抵抗値(Ra)と比べて変化していれば(Rb≠Ra)、引き続きステップS107へと進められる。
【0047】
ステップS107においては、算出された抵抗値(Rb)と、理論抵抗値(R)との比較演算が演算部によって実行され、抵抗値(Rb)が理論抵抗値(R)以上であるかどうかが判断される(ステップS107)。
【0048】
そして、演算部による比較演算の結果、抵抗値(Rb)が理論抵抗値(R)未満であれば(Ra<R)、前記ステップS101に戻され、車両への走行指令は続行される。
一方、抵抗値(Rb)が、初期拘束圧力の減圧後においても依然として理論抵抗値(R)以上であれば(Ra≧R)、制御装置4は、車両に搭載されるモニターに出力信号を送信することとなり、前記出力信号を受信したモニターは、該モニターに設けられる警告灯を点灯させる(ステップS108)。
【0049】
そして、警告灯の点灯後、車両に与えられた走行指令は解除され、非水電解液二次電池システム1の制御方法を示すステップは終了するのである。
【0050】
[検証実験]
次に、本実施例における非水電解液二次電池システム1の有効性を確認するために、本発明者が行った検証実験について、図3乃至図7を用いて説明する。
なお、以下の説明に関しては便宜上、図3及び図4における矢印Aの方向を前方と規定して記述する。また、図3及び図4においては、図面上の上下方向を第一実験装置101、或いは第二実験装置201の上下方向と規定して記述する。
【0051】
先ず始めに、本検証実験において、サンプルとして用意された非水電解液二次電池50の構成について説明する。
非水電解液二次電池50は、図3(或いは図4)に示すように、一組の正極板51及び負極板52や、これら正極板51及び負極板52を被包するラミネートフィルム53・53などからなる、積層ラミネート型リチウムイオン二次電池として構成される。
また、非水電解液二次電池50は、正極板51に塗工される正極合材51aの成分内容の違いによって、七種類に分類される。
【0052】
より具体的には、正極合材51aは、表1のNo.1〜7によって示される各々の正極活物質に対して、導電剤であるAB(アセチレンブラック)や、結着剤であるPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を、所定の重量比(正極材料:AB:PVdF=85:5:10)で混合し、分散溶媒であるNMP(N−メチルピロリドン)を加えて混練することによりペースト状に構成される。
そして、このようなペースト状の正極合材51aが、シート状のアルミ箔51bの表面に塗工され、その後、ロールプレスによる圧延処理が施されることによって、正極板51は構成される。
【0053】
【表1】

【0054】
なお、本検証実験において、これらの正極活物質や導電剤や結着剤と、分散溶媒との混練作業については、滴下される分散溶媒の重量が、正極活物質と導電剤との重量和の、およそ50%に到達した時点で完了することとした。
【0055】
一方、負極板52に塗工される負極合材52aは、正極合材51aの異なる成分内容に関わらず、全て共通の成分内容となっており、天然黒鉛系の炭素材料からなる負極活物質や、結着剤であるSBR(スチレン−ブタジエン共重合体)や、増粘剤であるCMC(カルボキシメチルセルロース)を、所定の重量比(炭素材料:SBR:CMC=95:2.5:2.5)で混合し、蒸留水を加えてペースト状にすることによって構成される。
そして、このようなペースト状の負極合材52aが、シート状の銅箔52bの表面に塗工され、その後、ロールプレスによる圧延処理が施されることによって、負極板52は構成される。
【0056】
なお、本検証実験においては、負極合材52aの塗工量が、正極合材51aの塗工量に対して所定の理論容量比(正極合材51a:負極合材52a=1:1.5)となるように調製することとした。
【0057】
こうして形成された、一組の正極板51及び負極板52を、互いの塗工面(より具体的には、正極合材51a、或いは負極合材52aの塗工面。)が向き合うようにして水平状に配置しつつ、図示せぬシート状のセパレータを間に挟んで上下方向に積層する。
そして、積層された一組の正極板51及び負極板52を、二枚のラミネートフィルム53・53によって完全に被包することによって、サンプルとなる非水電解液二次電池50を製作した。
【0058】
なお、本検証実験における非水電解液二次電池50の電池容量については、正極合材51aの理論容量に基づき、60[mA]に設定することとした。
【0059】
次に、本検証実験において用意された第一実験装置101の構成について、図3を用いて説明する。
第一実験装置101は、主にサンプルとしての非水電解液二次電池50に拘束圧力を加える拘束板102や、該非水電解液二次電池50の充放電に関する運転を制御する充放電装置103などによって構成される。
【0060】
拘束板102は、アルミ製の矩形板状部材によって形成されるとともに、非水電解液二次電池50の正極合材51a、或いは負極合材52aの塗工面に比べて、十分広い表面積を有している。
また、拘束板102の四隅には、貫通孔102a・102a・・・が各々穿孔されており、該貫通孔102a・102a・・・を介して、複数のボルト104・104・・・が、拘束板102に貫通可能となっている。
【0061】
そして、このような形状からなる二枚の拘束板102・102は、非水電解液二次電池50の積層方向(上下方向)の両端面側(上側のラミネートフィルム53の上面側、及び下側のラミネートフィルム53の下面側)において、前記非水電解液二次電池50を挟持するようにして各々積層配置される。
また、これら二枚の拘束板102・102は、貫通孔102a・102a・・・を介して、ボルト104・104・・・、及びナット105・105・・・によって、互いに連結される。
【0062】
このような構成を有することで、非水電解液二次電池50には、これら二枚の拘束板102・102によって拘束圧力が加えられることとなり、例えば、各ボルト104がナット105に対して深く捩じ込まれるに従って、前記拘束圧力は増圧される一方、各ボルト104がナット105に対して浅く緩められるに従って、前記拘束圧力は減圧されるようになっている。
【0063】
なお、本検証実験においては、実験開始直後の非水電解液二次電池50に加えられる初期拘束圧力として、20[Kgf/cm]の圧力が、正極合材51aの塗工面に発生するように、図示せぬロードセルによって確認しつつ、各ボルト104の捩じ込み量を調整することとした。
【0064】
充放電装置103は、入力手段としての各種操作スイッチ(図示せず)や、出力手段としてのモニター(図示せず)などを備え、非水電解液二次電池50の正極版51、及び負極板52と、高圧ケーブル103a・103aを介して電気的に接続されている。
そして、充放電装置103は、後述する実験手順に従って操作され、非水電解液二次電池50の充放電を行うとともに、各種実験結果を収集するようになっている。
【0065】
次に、本検証実験において用意された第二実験装置201の構成について、図4を用いて説明する。
第二実験装置201は、主な構成を前述した第一実験装置101と同じくし、拘束板202の構成に関して相違点を有する。
なお、以下の説明においては、主に第一実験装置101との相違点について記述し、該第一実験装置101と同等な構成については、説明を省略する。
【0066】
拘束板202は、ある程度の厚みを有したアルミ製の矩形板状部材によって形成されるとともに、その中央部には、非水電解液二次電池50の正極活物質51a、或いは負極活物質52aの塗工面と同形状の切欠部202bが形成される。
【0067】
そして、このような形状からなる二枚の拘束板202・202は、非水電解液二次電池50の積層方向(上下方向)の両端面側(上側のラミネートフィルム53の上面側、及び下側のラミネートフィルム53の下面側)において、前記非水電解液二次電池50を挟持するようにして各々積層配置される。
また、これら二枚の拘束板202・202は、貫通孔202a・202a・・・を介して、ボルト204・204・・・、及びナット205・205・・・によって、互いに連結される。
さらに、各拘束板202の切欠部202bには袋部材206が内装されるとともに、該切欠部202bの非水電解液二次電池50側との対向側は、閉塞板207によって閉塞される。
【0068】
なお、前記袋部材206には、配管部材などを介して、図示せぬ電磁制御弁やコンプレッサーなどが連結されるとともに、該電磁制御弁は、充放電装置203と電気的に接続されている。
そして、充放電装置203による電磁制御弁の操作によって、コンプレッサーより吐出された圧縮空気が、袋部材206内に充填され、或いは該袋部材206内の圧縮空気が、大気中に放出され、該袋部材206は、膨張、或いは収縮するようになっている。
【0069】
このような構成を有することで、非水電解液二次電池50は、これら二枚の拘束板202・202、及び袋部材206・206によって拘束圧力を加えられることとなり、例えば、前記袋部材206・206が膨張するに従って、前記拘束圧力は増圧される一方、前記袋部材206・206が収縮するに従って、前記拘束圧力は減圧されるようになっている。
【0070】
なお、本検証実験においては、実験開始直後の非水電解液二次電池50に加えられる拘束圧力として、先ず、5[Kgf/cm]の圧力が、正極合材51aの塗工面に発生するように各ボルト104の捩じ込み量を調整し、その後、最終的に20[Kgf/cm]の圧力が、正極合材51aの塗工面に発生するように、各袋部材206に充填される圧縮空気の量を調整することとした。
また、この際、各袋部材206に充填される圧縮空気の量は、感圧紙などを用いて事前に確認実験を行ったうえで設定することとした。
【0071】
次に、本検証実験の実験手順について説明する。
先ず初めに、サンプルとなる非水電解液二次電池50・50を、第一実験装置101、及び第二実験装置201にそれぞれセットし、前述した初期拘束圧力(20[Kgf/cm])をもって、前記非水電解液二次電池50・50をそれぞれ拘束した。
【0072】
その後、「耐久試験1」として、各々の非水電解液二次電池50・50に対して、前記初期拘束圧力を維持しつつ、定電流充電、及び定電流放電からなる1[サイクル]の電気的動作を、100[サイクル]繰返し実行した。
そして、前記電気的動作の50[サイクル]目、及び100[サイクル]目の定電流放電の終了直後において、各非水電解液二次電池50に対して、0.06[A]、0.12[A]、0.18[A]、0.24[A]からなる放電電流を各々10秒間ずつ印加し、この際の各電圧値をそれぞれ測定した。
なお、前述した各サイクルにおける電気動作において、各非水電解液二次電池50に充電され、或いは放電される電流は、1.2[A]からなる定格電流とした。また、充電時における電圧の上限値は4.65[V]とし、放電時における電圧の下限値は3.00[V]とした。
【0073】
次に、「容量回復処置」として、前記「耐久試験1」の終了後、第一実験装置101、及び第二実験装置201において、各々の非水電解液二次電池50・50に加えられた初期拘束圧力を一旦開放した。
ここで、第一実験装置101においては、各ボルト104及びナット105を一旦完全に緩めて初期拘束圧力を完全に開放し、その後、再び20[Kgf/cm]の圧力が、正極活物質51aの塗工面に発生するように、各ボルト104及びナット105を調整した。
一方、第二実験装置201においては、各袋部材206内より圧縮空気を完全に放出させて初期拘束圧力を開放し、その後、再び各袋部材206内に圧縮空気を充填させることなく、各ボルト204及びナット205による5[Kgf/cm]の拘束圧力を維持した。
【0074】
そして最後に、「耐久試験2」として、前記「容量回復処置」の終了後、第一実験装置101、及び第二実験装置201において、前記電気的動作を1[サイクル]のみ実行し(即ち、前記「耐久試験1」から通算して101[サイクル]目を実行し)、その後、再び各非水電解液二次電池50に対して、0.06[A]、0.12[A]、0.18[A]、0.24[A]からなる放電電流を各々10秒間ずつ印加し、この際の各電圧値をそれぞれ測定した。また、各電圧値の測定後、非水電解液二次電池50の電気容量について、該非水電解液二次電池50の種類ごとに測定した。
なお、この際の1[サイクル]における電気動作についても、各非水電解液二次電池50に充電され、或いは放電される電流は、1.2[A]からなる定格電流とした。また、充電時における電圧の上限値は4.65[V]とし、放電時における電圧の下限値は3.00[V]とした。
【0075】
次に、本検証実験における実験結果について説明する。
先ず始めに、定電流充電、及び定電流放電を繰返すことによる、非水電解液二次電池50の電池容量の変化について、図5を用いて説明する。
なお、本図における関係図は、代表的に、前述した表4のNo.2に示される正極材料を有した非水電解液二次電池50を、サンプルとして選択したものである。
【0076】
図5は、縦軸に電池容量比(単位[%])を表し、横軸にサイクル数(単位[サイクル])を表すこととして、これら両者の関係をドットによって表した関係図である。
ここで、前記「電池容量比」は、前記「耐久試験1」の実行直前における非水電解液二次電池50の電池容量を100[%]として換算した、各サイクル数における非水電解液二次電池50の電池容量比を示したものである。
また、前記「サイクル数」は、前記「耐久試験1」、及び前記「耐久試験2」を通して、連続的に実行される定電流充電、及び定電流放電を1[サイクル]として加算した累積和を示すものである。
【0077】
本図に示すように、非水電解液二次電池50の電池容量比は、サイクル数が加算されるに従って急激に減少することとなり、例えば、前記「耐久試験1」において、50[サイクル]の終了直後の電池容量比は、略25[%]程度にまで減少し(図5における、A点を参照)、また100[サイクル]の終了直後の電池容量比に至っては、略5[%]程度にまで減少する(図5における、B点を参照)ことがわかる。
【0078】
一方、前記「容量回復処置」の実行直後においては、非水電解液二次電池50の電池容量比は回復されることとなり、例えば、前記「耐久試験2」の開始直後において、101[サイクル]目の電池容量比は、略50[%]以上回復されている(図5における、C点を参照)ことがわかる。
【0079】
次に、前記「耐久試験1」、及び前記「耐久試験2」において測定された、各放電電流に対する電圧値の変化について、図6を用いて説明する。
なお、本図における関係図は、代表的に、前述した表4のNo.2に示される正極材料を有した非水電解液二次電池50をサンプルとして選択したものである。
【0080】
図6は、非水電解液二次電池50に印加される各放電電流の電流値と、該放電電流によって非水電解液二次電池50に発生した電圧値との関係において、縦軸に電圧値(単位[V])を表し、横軸に電流値(単位[A])を表すこととして、これら両者の関係をドットによって表した関係図である。
なお、本図における「白抜き菱形形状」のドット(図6における「A点での抵抗値」を参照)は、前記「耐久試験1」における、50[サイクル]目の電気的動作の終了後に測定された、各放電電流の電流値に対する電圧値を示したものであり、また「黒塗り正方形状」のドット(図6における「B点での抵抗値」を参照)は、前記「耐久試験1」における、100[サイクル]目の電気的動作の終了後に測定された各放電電流の電流値に対する電圧値を示したものである。
また、本図における「白抜き正方形状」のドット(図6における「電池容量の回復措置後の抵抗値」を参照)は、前記「耐久試験2」における、101[サイクル]目の電気的動作の終了後に測定された、各放電電流の電流値に対する電圧値を示したものである。
さらに、本図における一次曲線Lは、非水電解液二次電池50に「液枯れ現象」が発生し得る電流値と電圧値との関係、即ち理論抵抗値(R)を示したものである。
【0081】
本図に示すように、50[サイクル]目の電気的動作の終了後においては、放電電流の電流値が増加するごとに、電圧値は増加するものの、これら電流値及び電圧値によって求められる抵抗値は、一次曲線Lによって示される理論抵抗値(R)を超えることはなく、非水電解液二次電池50に「液枯れ現象」が発生することはない。
しかし、100[サイクル]目の電気的動作の終了後においては、放電電流の電流値が増加するごとに、電圧値は増加し、これら電流値及び電圧値によって求められる抵抗値は、該電流値が0.18[A]となった時点で、一次曲線Lによって示される理論抵抗値(R)を超えることとなり、非水電解液二次電池50に「液枯れ現象」が発生することとなる。
【0082】
一方、前記「容量回復処置」による初期拘束圧力の開放後に行われる、101[サイクル]目の電気的動作の終了後においては、放電電流の電流値が増加するごとに、電圧値は増加するものの、これら電流値及び電圧値によって求められる抵抗値は、一次曲線Lによって示される理論抵抗値(R)を超えることがないばかりか、50[サイクル]目の電気的動作の終了後における抵抗値に比べても低い値を示している。
このようなことから、前記「容量回復処置」による初期拘束圧力の開放によって、非水電解液二次電池50における抵抗値は、大幅に改善されることが分かる。
【0083】
次に、前記「耐久試験2」において測定された、非水電解液二次電池50の種類別における電池容量の相異について、図7(a)(b)を用いて説明する。
【0084】
図7(a)(b)は、縦軸に電池容量比(単位[%])を表すこととして、前記「容量回復処置」による初期拘束圧力の開放によって回復された非水電解液二次電池50の電池容量を、前述した表1のNo.1〜7に基づいて、前記非水電解液二次電池50の種類ごとに、ドットによって表した関係図である。
【0085】
なお、図7(a)は、第一実験装置101(図3を参照)によって前記「容量回復処置」を行った場合の、非水電解液二次電池50の電池容量比を表したものであり、また図7(b)は、第二実験装置201(図4を参照)によって前記「容量回復処置」を行った場合の、非水電解液二次電池50の電池容量比を表したものである。
より具体的には、図7(a)は、前述したように、初期拘束圧力(20[Kgf/cm])の開放後、再び20[Kgf/cm]の拘束圧力を加えた場合の、非水電解液二次電池50の電池容量比を表したものであり、また図7(b)は、前述したように、5[Kgf/cm]の拘束圧力を残しつつ初期拘束圧力(20[Kgf/cm])を開放し、その後、前記5[Kgf/cm]の拘束圧力を維持した場合の非水電解液二次電池50の電池容量比を表したものである。
【0086】
また、前記「電池容量比」は、前記「耐久試験1」の実行直前における非水電解液二次電池50の電池容量を100[%]として換算した、非水電解液二次電池50の電池容量比を表したものである。
さらに、図7(a)(b)における「白抜き正方形状」のドットは、前記「耐久試験2」における、101[サイクル]目の電気的動作の終了後に測定された、非水電解液二次電池50の電池容量比を示したものであり、また「黒塗り正方形状」のドットは、前記「耐久試験1」における、100[サイクル]目の電気的動作の終了後に測定された非水電解液二次電池50の電池容量比を示したものである。
【0087】
図7(a)(b)に示されるように、両者の関係図によって表される、非水電解液二次電池50の電池容量比の傾向は、略同程度の結果となることから、非水電解液二次電池50に加えられた初期拘束圧力が一旦開放されれば、その後、再び該初期拘束圧力と同等の拘束圧力(本検証実験においては、20[Kgf/cm])を復帰させるかどうかに関わらず、前記非水電解液二次電池50の電池容量は、確実に回復されることがわかる。
【0088】
また、図7(a)(b)に示されるように、前記「容量回復処置」による初期拘束圧力の開放を行えば、非水電解液二次電池50の電池容量は回復されるが、中でも、前述した表1のNo.2、3、5、6によって示される正極活物質を有した非水電解液二次電池50に関して、電池容量の回復効果が大きいことが分かる。
より具体的には、xLi2MnO3と(1−x)Li(NiMnCo)O2との固溶体(但し、x=0.3、またはx=0.5)であり、且つ比表面積が2.0〜4.0[m/g]である正極活物質を有した非水電解液二次電池50に関して、電池容量の回復効果が大きいことが分かる。
【0089】
以上のように、本実施例における非水電解液二次電池システム1は、積層された複数の非水電解液二次電池(単電池21・21・・・)と、単電池21・21・・・を積層方向に挟持しつつ、前記単電池21・21・・・に対して前記積層方向に向かって増圧・減圧可能に拘束圧力を付加する圧力付加手段3と、前記単電池21・21・・・及び前記圧力付加手段3の運転を制御する制御装置4と、を備える非水電解液二次電池システム1であって、前記制御装置4には、各単電池21の「液枯れ状態」を示す理論抵抗値Rが予め記憶されるとともに、前記各単電池21の電流値及び電圧値を測定する電流センサー(電流値測定手段)41及び電圧センサー(電圧値測定手段)42が、各々電気的に接続され、前記制御装置4は、前記電流センサー(電流値測定手段)41によって測定された電流値Iaと、前記電圧センサー(電圧値測定手段)42によって測定された電圧値Vaとに基づいて、抵抗値Raを算出し、該抵抗値Raが前記理論抵抗値R以上となる場合、前記圧力付加手段3による拘束圧力を減圧させることとしている。
【0090】
このような構成を有することで、本実施例における非水電解液二次電池システム1によれば、「液枯れ現象」による電池容量の劣化を確実に低減しつつ、効率的に非水電解液二次電池を制御することができる。
【0091】
即ち、例えば従来の非水電解液二次電池システムにおいては、拘束圧力が加えられる非水電解液二次電池に対して、電極板が内装される電池ケース内部の圧力を、圧力検出器によって常に監視し、検出された圧力が、「液枯れ現象」を示す圧力を超えれば、前記拘束圧力を開放して、該「液枯れ現象」による電池容量の劣化を防ぐような制御を行っていた。
しかし、電池ケース内部の圧力変化は、該電池ケース内の状態の変化に対してリアルタイムに発現されるものではなく、幾らかの時間の遅れをもって発現される。また、非水電解液二次電池が車両に搭載されることとなれば、該車両の走行時に発生する振動の影響などによっても、電池ケース内部の圧力変化は変化することもある。
このようなことから、従来の非水電解液二次電池システムでは、「液枯れ現象」による電池容量の劣化を確実に低減しつつ、効率的に非水電解液二次電池を制御することができるととはいえなかった。
【0092】
これに対して、本実施例における非水電解液二次電池システム1によれば、電池ケース内部の圧力変化などのような、不確かな情報に基づくのではなく、単電池21の電流値Ia、及び電圧値Vaより算出される確実な情報(抵抗値R)に基づいて、単電池21に加えられる拘束圧力を減圧するため、該単電池21に備えられる正極合材51a、及び負極合材52aへの液戻りが促進され、「液枯れ現象」による電池容量の劣化を確実に低減しつつ、効率的に非水電解液二次電池を制御することができるのである。
【0093】
また、本実施例における非水電解液二次電池システム1において、前記制御装置4は、前記圧力付加手段3による拘束圧力を減圧させた後、再び前記非水電解液二次電池(単電池22)の電流値及び電圧値を測定するとともに、前記電流センサー(電流値測定手段)41によって測定された電流値Ibと、前記電圧センサー(電圧値測定手段)42によって測定された電圧値Vbとに基づいて、抵抗値Rbを算出し、該抵抗値Rbが前記理論抵抗値R未満とならない場合、前記非水電解液二次電池(単電池22)による出力を停止させることしている。
つまり、本実施例における非水電解液二次電池システム1においては、単電池21に加えられる拘束圧力を減圧した後、抵抗値の回復が確認されない限り、非水電解液二次電池(単電池22)による出力を停止させることとしており、非水電解液二次電池(単電池22)の無理な使用を極力防止し、該非水電解液二次電池(単電池22)の耐用年数を延命させるような制御がなされているのである。
【0094】
また、本実施例における非水電解液二次電池システム1において、前記非水電解液二次電池(単電池22)の電気容量は4.5V以上であることとしている。
つまり、本実施例における非水電解液二次電池システム1は、およそ「液枯れ現象」による電池容量の劣化が起こりやすい、通常4.5V級以上の高電池容量からなる単電池21(非水電解液二次電池)について、特に効果を発揮するのである。
【0095】
より具体的には、このような車両に搭載される非水電解液二次電池(単電池22)は、高い作動電圧や高エネルギー密度が要求されることから、従来から、4.5V級以上の高電池容量からなるものが用いられる。そして、このような高電池容量からなる非水電解液二次電池(単電池22)としては、例えば、リチウムイオン二次電池などが知られている。
ここで、高電池容量の非水電解液二次電池(単電池22)においては、通常、活性の低い(即ち、化学反応の鈍い)正極活物質51aが正極材料として用いられるため、該正極活物質51aの比表面積が十分に確保されなければ、前記非水電解液二次電池(単電池22)による電力の入出力量は極小となり、駆動電源としての機能を有さない。よって、正極活物質51aの比表面積については、前記非水電解液二次電池(単電池22)が駆動電源としての機能を果たすために十分な広さを確保する必要がある。
一方、正極活物質51aの比表面積が増大すれば、非水電解液二次電池(単電池22)の充電・放電を繰返す際に、「液枯れ現象」が発生しやすくなり、前記非水電解液二次電池(単電池22)の実用性は益々乏しくなる。
そこで、本実施例における非水電解液二次電池システム1によれば、このような特性を有する高電池容量の非水電解液二次電池(単電池22)に対して、「液枯れ現象」による電池容量の劣化に対応した、高効率の非水電解液二次電池(単電池22)を実現することができるのである。
【符号の説明】
【0096】
1 非水電解液二次電池システム
3 圧力付加手段
4 制御装置
21 単電池(非水電解液二次電池)
41 電流センサー(電流値測定手段)
42 電圧センサー(電圧値測定手段)
Ia 電流値
Ib 電流値
R 理論抵抗値
Ra 抵抗値
Rb 抵抗値
Va 電圧値
Vb 電圧値


【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の非水電解液二次電池と、
該非水電解液二次電池を積層方向に挟持しつつ、前記非水電解液二次電池に対して前記積層方向に向かって増圧・減圧可能に拘束圧力を付加する圧力付加手段と、
前記非水電解液二次電池及び前記圧力付加手段の運転を制御する制御装置と、
を備える非水電解液二次電池システムであって、
前記制御装置には、
前記非水電解液二次電池の「液枯れ状態」を示す理論抵抗値Rが予め記憶されるとともに、
前記非水電解液二次電池の電流値及び電圧値を測定する電流値測定手段及び電圧値測定手段が、各々電気的に接続され、
前記制御装置は、
前記電流値測定手段によって測定された電流値Iaと、
前記電圧値測定手段によって測定された電圧値Vaとに基づいて、
抵抗値Raを算出し、
該抵抗値Raが前記理論抵抗値R以上となる場合、
前記圧力付加手段による拘束圧力を減圧させる、
ことを特徴とする非水電解液二次電池システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記圧力付加手段による拘束圧力を減圧させた後、
再び前記非水電解液二次電池の電流値及び電圧値を測定するとともに、
前記電流値測定手段によって測定された電流値Ibと、
前記電圧値測定手段によって測定された電圧値Vbとに基づいて、
抵抗値Rbを算出し、
該抵抗値Rbが前記理論抵抗値R未満とならない場合、
前記非水電解液二次電池の出力を停止させる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の非水電解液二次電池システム。
【請求項3】
前記非水電解液二次電池の電気容量は4.5V以上である、
ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の非水電解液二次電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−101788(P2013−101788A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244022(P2011−244022)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】