説明

非水電解液二次電池

【課題】量産性および電池容量を低下させることなく、高温保存時の信頼性を向上させた非水電解液二次電池を提供する。
【解決手段】電極群、非水電解液および電池内で発生するガスを吸収するガス吸収剤を具備し、電極群が、リチウム含有複合酸化物を正極材料とする正極と、金属リチウムまたはリチウムイオンを吸蔵および放出し得る物質を負極材料とする負極と、正極と負極との間に介在するセパレータとを含み、非水電解液は、非水溶媒とそれに溶解したリチウム塩とを含み、ガス吸収剤は、アミンで修飾されたメソポーラス材料を含む非水電解液二次電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信頼性に優れた非水電解液二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、携帯パソコン、携帯ビデオカメラといった民生用電子機器のポータブル化およびコードレス化が急速に進んでいる。このため、これらの電子機器の駆動用電源として、小型・軽量で、高エネルギー密度を有する二次電池への要望が高まっている。
【0003】
上記のような観点から、リチウム含有複合酸化物を正極活物質とし、リチウム金属、リチウム合金、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な炭素材料、シリコン化合物、スズ化合物等を負極活物質とする非水電解液二次電池の開発が進められている。このような電池において、セパレータとしては、主としてポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などの微多孔膜が用いられ、非水電解液としては、非プロトン性の非水溶媒にLiBF4、LiPF6等のリチウム塩を溶解した溶液が用いられている。
【0004】
上記のような非水電解液二次電池は高い起電力を有するため、充電状態で高温保存すると、非水電解液中の非水溶媒が分解されやすくなる。非水溶媒が分解すると、二酸化炭素を主成分としたガスが発生することが知られている。
【0005】
発生したガスは、電池内圧を上昇させる。このため、例えば、角形電池の場合には、外装ケースの変形または破損が生じる。円筒形電池の場合には、過充電時の安全性を確保するために封口板に設けられた内圧作動型電流遮断機構が、誤作動を起こす。
【0006】
このように、非水溶媒を含む非水電解液二次電池では非水溶媒の分解が不可避であるため、上記諸問題を抑制する手段が強く求められている。例えば、分解ガスによる電池内圧の上昇を抑制するために、二酸化炭素を吸収する各種吸収剤を用いることが検討されている(特許文献1および特許文献2参照)。特許文献1には、二酸化炭素吸収剤として、周期表のI族またはII族の金属水酸化物、酸化物あるいは炭酸塩、またはゼオライト、二酸化炭素吸収能を有する鉄系脱酸素剤、金属リチウム、金属カルシウム、金属マグネシウム等を用いることが開示されている。特許文献2には、多孔質ガラス、シリカゲル、活性アルミナ、活性炭、活性白土等を二酸化炭素吸収剤として用いることが開示されている。
【0007】
上述のように、非水電解液二次電池においては、従来から、二酸化炭素の発生による内圧の上昇に伴う信頼性の低下を抑制するための検討が行われてきている。しかし、上述した構成では、電池内圧の上昇を長期間安定して抑制することは困難である。なぜなら、特許文献3に記載されているように、ガス吸収剤が非水電解液と接するように配置されている場合には、ガス吸収剤が非水溶媒で湿潤し、ガス吸収剤としての機能が阻害されるからである。
【0008】
一方で、従来から、SrO、CaO、BaO、MgO等をガス吸収剤として用い、そのガス吸収剤を非水溶媒と直接接触しないように配置することが提案されている(特許文献4参照)。また、ガス吸収材料と非水溶媒に対する疎液材とからなるガス吸収剤を用いることも提案されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平10−255860号公報
【特許文献2】特開平11−307131号公報
【特許文献3】特開2003−77549号公報
【特許文献4】特開平11−54154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ガス吸収剤を非水溶媒と直接接触しないように配置することは難しく、量産性の観点からも好ましくない。
また、ガス吸収材料と非水溶媒に対する疎液材とからなるガス吸収剤を用いる場合、疎液材にはガス吸収能がないので、ガス吸収剤のガス吸着能は、ガス吸収材料単体の場合と比べて低下する。そのため、二酸化炭素の発生による電池内圧の上昇に伴う信頼性の低下を抑制するためには、多量のガス吸収剤を電池内に添加しなければならず、電池内にガス吸収剤を設置するための大きな空間を設ける必要が生じる。電池内に大きな空間を設けると、電池内で電極群が占めることのできる体積が減少し、電池容量が低下するという問題が生じる。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑み、量産性および電池容量を低下させることなく、高温保存時の信頼性を向上させた非水電解液二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、発明者らが鋭意研究を重ねた結果、アミンで修飾したメソポーラス材料が選択的に二酸化炭素を吸収し、そのガス吸収能力が非水電解液と接している場合でも低下しないことを見出したことに基づく。
つまり、本発明は、電極群、非水電解液および電池内で発生するガスを吸収するガス吸収剤を具備し、電極群が、リチウム含有複合酸化物を正極材料とする正極と、金属リチウムまたはリチウムイオンを吸蔵および放出し得る物質を負極材料とする負極と、正極と負極との間に介在するセパレータとを含み、非水電解液は、非水溶媒とそれに溶解したリチウム塩とを含み、ガス吸収剤は、アミンで修飾されたメソポーラス材料を含む非水電解液二次電池に関する。この非水電解液二次電池において、電極群、非水電解液およびガス吸収剤は、電池ケースに収容されており、その電池ケースは密閉されていることが好ましい。
【0012】
メソポーラス材料は、メソポーラスシリカであることが好ましい。ガス吸収剤は、アミノ基含有シランカップリング剤とメソポーラス材料とを反応させることにより形成されたものであることが好ましい。
【0013】
上記非水電解液二次電池において、ガス吸収剤による二酸化炭素の吸着量が、60℃、15kPaの環境下において、ガス吸収剤1kgあたり0.9mol以上であることが好ましい。
【0014】
上記ガス吸収剤は、1kgあたり3.5mol以上の前記アミン由来のアミノ基を含むことが好ましい。
【0015】
上記ガス吸収剤の細孔容積は、ガス吸収剤1gあたり0.07cm3以上2.0cm3以下であることが好ましい。
【0016】
上記ガス吸収剤は、非水電解液と接触していてもよいし、電池内に配置される絶縁部品に含まれていてもよい。ガス吸収剤が絶縁部品に含まれる場合、絶縁部品は、セパレータであることがさらに好ましい。
【0017】
上記非水電解液二次電池の充電終止電圧は、4.3V以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の非水電解液二次電池は、アミンで修飾されたメソポーラス材料を含むガス吸収剤を備える。このガス吸収剤は、非水電解液に接している場合でも、高温保存時に電池内で発生する二酸化炭素のようなガスの吸収能力が低下しない。よって、ガス吸収剤の配置場所が制限されない。このため、電池内に、ガス吸収剤を設置する場所を別に確保する必要がない。従って、量産性や電池容量を低下させることなく、高温保存時の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の非水電解液二次電池は、電極群、非水電解液、および電池内で発生するガスを吸収するガス吸収剤を具備する。電極群は、リチウム含有複合酸化物を正極材料とする正極、金属リチウムまたはリチウムイオンを吸蔵および放出し得る物質を負極材料とする負極、ならびに正極と負極との間に介在するセパレータを含む。非水電解液は、非水溶媒とそれに溶解したリチウム塩とを含む。
【0020】
正極は、例えば、正極集電体とその上に担持された正極合剤層とから構成することができる。同様に、負極は、負極集電体とその上に担持された負極合剤層とから構成することができる。この場合、上記正極材料および負極材料は、それぞれ正極合剤層および負極合剤層に含まれる。
【0021】
ガス吸収剤は、アミンで修飾されたメソポーラス材料を含む。メソポーラス材料は、二酸化炭素の吸着能を有するアミノ基をその細孔内に高密度に固定するための支持体として機能する。メソポーラス材料の細孔内に固定されたアミノ基は、二酸化炭素の吸着場であり、このアミノ基と二酸化炭素との反応により、カルバメートが生成する。こうして、アミノ基に二酸化炭素が固定される。
【0022】
このようなガス吸収剤は、非水電解液に含まれる非水溶媒に湿潤することなく、二酸化炭素を選択的に吸収できる。よって、このガス吸収剤を、例えば、正極合剤層、負極合剤層、セパレータのような、非水溶媒に直接接触する場所に設置することが可能である。このため、電池内に、ガス吸収剤を配置する空間を別に設ける必要がないので、実施が容易となり、量産性の観点からも好ましい。
また、非水溶媒に対する疎液材を必要としないため、ガス吸収剤の能力を最大限に発揮することが可能である。
さらには、上記のように、電池内に、ガス吸収剤を配置する空間を別に設ける必要がないため、正極および負極の大きさを小さくする必要がない。よって、電池容量を低下させることがない。
【0023】
メソポーラス材料とは、孔径が2〜50nmの細孔(メソ孔)を有する材料である。例えば、メソポーラスシリカ、ならびにヘテロ原子を含むメタロシリケート、非ケイ素系酸化物、硫化物、リン酸塩、白金等からなるメソポーラス材料が挙げられる。
【0024】
図1に、メソポーラスシリカの構造の一例を示す。図1に示されるメソポーラスシリカは、ケイ素原子を含む筒状体1が、その開口部を同じ方向に向けて複数個集合している形態を有する。なお、メソポーラス材料は、これ以外の構造を有していてもよい。
【0025】
メソポーラス材料は、アミンにより修飾されている。このようにアミンにより修飾されることにより、メソポーラス材料のメソ孔内の内壁には、例えば、アミノ基が導入されることになる。
このとき、修飾するアミンは、分子内に1つ以上のアミノ基を有していてもよい。導入されるアミノ基は、水素原子が他の置換基に置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。例えば、置換アミノ基がメソ孔内に導入される場合、そのアミノ基は、第1級アミノ基、第2級アミノ基、または第3級アミノ基であってもよい。
また、上記のようなアミノ基を、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
さらに、上記アミノ基は、例えば、メソポーラス材料の内壁との間に介在する、炭化水素鎖のようなスペーサー部を有していてもよい。
【0026】
アミノ基の水素原子が置換されている場合、その置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基などが好ましい。
【0027】
このようなガス吸収剤は、分子内に1つ以上のアミノ基を有する分子とメソポーラス材料とを反応させることにより、作製することができる。例えば、メソポーラス材料と、有機官能性基を有するシランカップリング剤とを用いるグラフト法により形成することができる。
【0028】
まず、メソポーラス材料とシランカップリング剤とを化学反応させる。この反応は、所定の溶媒中で行うことが好ましい。すなわち、メソポーラス材料とシランカップリング剤とを所定の溶媒と混合して、反応混合物とすることが好ましい。反応温度は、特に限定されない。なお、含まれる溶媒の沸点までその反応混合物を加熱し、その反応混合物を還流させながら、メソポーラス材料とシランカップリング剤とを反応させることが好ましい。これにより、メソポーラス材料とシランカップリング剤との反応を促進することができる。
【0029】
上記反応に用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ベンゼン、(脱水)トルエン、キシレン、アセトン、酢酸エチル、メチルセロソルブおよびテトラヒドロフラン等の有機溶媒を用いることができる。なかでも、(脱水)トルエンが好ましい。
【0030】
次いで、反応後の混合物をろ過し、ろ別された固形分を洗浄し、乾燥することにより、細孔内にシランカップリング剤が導入されたメソポーラス材料を得ることができる。
【0031】
シランカップリング剤が有する有機官能性基は、アミノ基であってもよいし、そうでなくてもよい。シランカップリング剤の有機官能性基がアミノ基である場合、上記反応により、メソポーラス材料のメソ孔内に、アミノ基が導入される。
シランカップリング剤の有機官能性基がアミノ基でない場合、その有機官能性基がアミノ基に置換する。有機官能性基のアミノ基への置換は、公知の方法で行うことができる。
【0032】
このように、本発明においては、グラフト法を用いて、メソポーラス材料のメソ孔内に、アミノ基を導入している。含浸法では、図2に示されるように、ガス吸収成分3が、メソポーラス材料2のメソ孔4を塞ぐことがある。このため、比表面積が小さくなり、ガスの吸着速度が遅くなる。一方、グラフト法を用いることにより、図3に示されるように、従来の含浸法と比較して、メソポーラス材料2のメソ孔4内に、そのメソ孔4を塞ぐことなく、ガス吸収成分(アミノ基)3を均一にかつ高密度に導入することが可能となる。このため、含浸法で作製したガス吸収剤と比較して、ガスの吸着速度を向上させることができる。
【0033】
シランカップリング剤としては、上記のように、アミノ基を有するものおよび有しないものの両方を用いることができる。その例としては、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−メチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、(3−トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、N−ビニルベンジル−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(塩酸塩)、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、N,N−ジメチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
これらのなかでも、アミノ基を分子内に有するもの(アミノ基含有シランカップリング剤)が好ましい。特に、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−メチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、および(3−トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミンよりなる群から選択される少なくとも1種のアミノ基含有シランカップリング剤が好ましい。なお、アミノ含有シランカップリン剤は、その分子内に、2つ以上のアミノ基を有していてもよい。
【0035】
メソポーラス材料に結合したシランカップリング剤の量は、メソポーラス材料とシランカップリング剤の合計の、約0.1〜75質量%、好ましくは約1〜60質量%、さらに好ましくは約2.5〜50質量%である。シランカップリング剤の量が約0.1質量%未満であると、CO2の吸着能が小さくなりすぎる。その量が約75質量%を超えると、シランカップリング剤の量が過剰となり経済的でない。なお、メソポーラス材料に結合したシランカップリング剤の量は、シランカップリング剤が結合したメソポーラス材料を熱重量分析または化学分析に供して、C、H、Nの含有量を計測することにより求めることができる。
【0036】
メソポーラス材料としては、上記のなかでも、メソポーラスシリカが最も好ましい。メソポーラスシリカは、2nm〜50nmの範囲内のほぼ均一な細孔径、規則的な構造、および大きな比表面積と細孔容積を有することを主な特徴とする。例えば、メソポーラスシリカとゼオライトとを比較すると、メソポーラスシリカの孔径は、ゼオライトの孔径よりも大きい。このため、メソポーラスシリカは、比較的大きな分子をその細孔内に導入できる。すなわち、シランカップリング剤を細孔内に化学的に結合する場合、メソポーラスシリカはゼオライトに比べその自由度が大きい。また、メソポーラスシリカはほぼ均一な細孔径を有しているために、不均一な細孔を有する物質に比べ、より均一な化学修飾が可能であると考えられる。このような理由により、メソポーラス材料の中でも、メソポーラスシリカが好ましい。
【0037】
ガス吸収剤の二酸化炭素の吸着能力は、特に限定されるものではないが、大きい方が望ましい。よって、高温時に電池内に二酸化炭素が発生し始める状態を想定して、60℃、15kPaの環境下、二酸化炭素の吸着量が0.9mol/kg以上である吸着剤を用いることが望ましい。
ガス吸収剤の二酸化炭素の吸着能力は、メソ孔内に導入されるアミノ基の量を調節することにより、制御することができる。
【0038】
ガス吸収剤の細孔容積は、ガス吸収剤1gあたり0.07〜2.0cm3であることが好ましく、さらには、0.11〜0.88cm3であることがさらに好ましい。細孔容積が0.07cm3/gより小さいと、二酸化炭素の吸着能力が低下し、十分な効果が発揮されない。その細孔容積が2.0cm3/gより大きいと、ガス吸収剤の強度が低下し、取り扱いが困難になる。
【0039】
ガス吸収剤における、前記アミンに由来するアミノ基の含有量は、ガス吸収剤1kgあたり3.5mol以上であることが好ましい。そのアミノ基の含有量が3.5mol/kgより少ないと、二酸化炭素をトラップするサイトが減少するため、吸着能力が低下する。このため、本発明の効果が十分に発揮されなくなる。
また、アミノ基の含有量は、10mol/kg以下であることが好ましい。アミノ基の含有量が10mol/kgより多いと、細孔が閉塞してしまい、二酸化炭素の吸着速度が著しく低下するからである。
【0040】
本発明の非水電解液二次電池は、ガス吸収剤を含んでいるため、充電終止電圧を4.3V以上とすることができる。ガス吸収剤を含まない従来の電池では、その充電終止電圧を4.3V以上とすると、充電状態での高温保存時に、電池内に大量のガスが発生し、電池が破損することがある。しかし、電池内にガス吸収剤を添加することにより、そのガス吸収剤が、電池内に発生したガスを吸収する。このため、高い電圧まで充電され、その状態で高温保存されたとしても、その信頼性を維持することができる。
【0041】
ガス吸収剤は、非水電解液に含まれる非水溶媒と接していても、二酸化炭素の吸着能力が低下しない。このため、ガス吸収剤は、限定されるものではないが、非水電解液に接する部分、例えば、正極合剤層、負極合剤層、および/またはセパレータに添加することができる。
【0042】
上記のように、正極および負極は、集電体およびその上に担持された合剤層とから構成することができる。例えば、正極は、正極材料(正極活物質)、バインダー、溶媒および必要に応じて増粘剤を混合して、スラリーを得、そのスラリーを集電体上に塗布し、乾燥することにより得られる。負極についても、正極と同様にして作製される。
よって、ガス吸収剤が正極合剤層および/または負極合剤層に含まれる場合、ガス吸収剤は、上記スラリーの混練工程で、そのスラリーに添加してもよいし、混錬後のスラリーに添加してもよい。
ガス吸収剤が合剤層に添加される場合、その量は、活物質100重量部あたり0.1〜10重量部であることが好ましい。合剤層へのガス吸収剤の添加量が著しく少ないと、得られるガス吸収効果が小さくなる。一方、その添加量が著しく多いと、合剤層に充填可能な活物質量が減少するため、電池容量が顕著に低下する。ガス吸収剤のより好ましい添加量は、活物質100重量部あたり0.5〜5重量部である。
【0043】
また、ガス吸収剤は、絶縁性が高いため、例えば、粉体状で電池内に直接設置してもよい。また、電池容量の低下を引き起こさないという観点から、ガス吸収剤は、電池内に設置される絶縁部品に、樹脂とともに成型して用いてもよい。例えば、円筒形電池の場合には、電極群の上下部に配置される絶縁板として、角形電池の場合には、電極群の上部に配置される絶縁枠体として、ガス吸収剤を樹脂とともに成型することが可能である。
【0044】
ガス吸収剤の成型時に用いられる樹脂としては、100℃以上の融点を持つ樹脂が好ましい。このような樹脂としては、化学的安定性の観点から、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、フェノール樹脂を用いることが好ましい。
【0045】
また、このようなガス吸収剤を含む多孔質層を、正極および/または負極上に形成してもよい。
【0046】
あるいは、ガス吸収剤を、アクリルゴム系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂などの樹脂と共に混錬し、薄膜に成型することにより、セパレータとして用いることもできる。このとき、従来からセパレータとして用いられている、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン系樹脂からなる多孔質膜と、ガス吸収剤を含む薄膜とを積層したものを、セパレータとして用いることも可能である。または、上記のような多孔質膜の内部に、ガス吸収剤を含浸させてもよい。
【0047】
本発明において、正極材料としては、リチウム含有複合酸化物が用いられる。リチウム含有複合酸化物は、高容量を有するが、充電状態における高温下での保存において、非水電解液との反応性が高く、CO2ガスを発生させやすい。よって、電池内にガス吸収剤を添加することにより、正極材料にリチウム含有複合酸化物を用い、高温下充電状態で保存した場合でも、発生するCO2ガスを吸収できる。このため、電池の信頼性を向上させることができる。
【0048】
リチウム含有複合酸化物としては、例えば、リチウム含有遷移金属酸化物が挙げられる。その例には、LixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixCoyNi1-y2、LixCof1-fz、LixNi1-yy2(M=Ti、V、Mn、またはFe)、LixCoaNibc2(M=Ti、Mn、Al、Mg、Fe、またはZr)、LixMn24、およびLixMn2-yy4(M=Na、Mg、Sc、Y、Fe、Co、Ni、Ti、Zr、Cu、Zn、Al、Pb、またはSb)が挙げられる。ここで、x=0〜1.2、y=0〜0.9、f=0.9〜0.98、z=2.0〜2.3、a+b+c=1、0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c<1である。なお、x値は、その酸化物の作製時の値であり、充放電により増減する。また、これらの酸化物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
上記のようなリチウム含有遷移金属酸化物は、例えば、リチウムの炭酸塩、硝酸塩、酸化物または水酸化物と、コバルト、マンガン、ニッケル等の遷移金属の炭酸塩、硝酸塩、酸化物または水酸化物とを所望の割合で混合・粉砕し、焼成する方法により作製することができる。または、溶液反応により合成することができる。
リチウム含有遷移金属酸化物の合成は、焼成法で行うことが好ましく、その焼成温度は、混合された化合物の一部が分解、溶融する温度、例えば、250〜1500℃であることが好ましい。焼成時間は1〜80時間であることが好ましい。焼成ガス雰囲気は、空気、酸化雰囲気、還元雰囲気のいずれでもよく、特に限定されない。
【0050】
正極合剤層には、上記正極材料の他に、導電剤が含まれる。この導電剤としては、構成された電池において、化学変化を起こさない電子伝導性材料を用いることができる。このような材料としては、例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛などのグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、炭素繊維などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの導電剤のなかで、人造黒鉛およびアセチレンブラックが特に好ましい。
【0051】
正極合剤層における導電剤の量は、特に限定されないが、正極合剤層の1〜50重量%であることが好ましく、特に1〜30重量%であることが好ましい。例えば、カーボンまたはグラファイトを導電剤として用いる場合、その量は、正極合剤層の2〜15重量%であることが好ましい。
【0052】
次に、本発明の非水電解液二次電池に用いられる負極および非水電解液について説明する。
負極および非水電解液には、従来から非水電解液二次電池に用いられている負極および非水電解液を、特に限定なく用いることができる。
【0053】
負極も、上記のように、例えば、負極集電体とその上に担持された負極合剤層とから構成することができる。負極合剤層には、それを構成する主材料である負極材料が含まれる。この負極材料としては、リチウム金属、リチウム合金などの合金、金属間化合物、炭素材料、有機化合物、無機化合物、金属錯体、有機高分子化合物等のリチウムイオンを吸蔵・放出できる化合物を用いることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのなかでは、炭素材料が特に好ましい。
【0054】
炭素材料の平均粒子サイズは、0.1〜60μmが好ましく、0.5〜30μmが特に好ましい。炭素材料の比表面積は1〜10m2/gであることが好ましい。なかでも、炭素六角平面の間隔(d002)が3.35〜3.4Åであり、c軸方向の結晶子の大きさ(Lc)が100Å以上である黒鉛が特に好ましい。
【0055】
非水電解液は、非水溶媒およびそれに溶解したリチウム塩を含む。非水溶媒には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの環状炭酸エステル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの鎖状炭酸エステル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンなどの環状カルボン酸エステルなどが好ましく用いられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4などを用いることができる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
セパレータとしては、大きなイオン透過度を持ち、所定の機械的強度を持ち、絶縁性の微多孔性薄膜が用いられる。なかでも、耐有機溶剤性と疎水性の観点から、ポリプロピレン、ポリエチレンなどを少なくとも1種含むオレフィン系ポリマー、ガラス繊維などから作製されたシートまたは不織布をセパレータとして用いることが好ましい。また、セパレータは、一定の温度以上で孔を閉塞し、内部抵抗を上昇させる機能を持つことが好ましい。
【0057】
セパレータの細孔の孔径は、正極および/または負極より脱離した活物質、結着剤および/または導電剤が透過しない範囲であることが望ましく、例えば、0.01〜1μmであることが望ましい。セパレータの空孔率は、電子やイオンの透過性、セパレータの素材、膜厚等に応じて決定されるが、一般的には30〜80%であることが望ましい。
セパレータの厚みは、一般的には、10〜300μmである。
【0058】
また、ガス吸収剤を含む薄膜と、上記多孔性膜、シートまたは不織布とを積層したものを、セパレータとして用いることもできる。
【0059】
電池の形状は、特に限定はなく、円筒形、偏平形および角形のいずれでもよい。また、誤動作時にも安全を確保できるように、電池は、例えば、電池の内圧が所定の圧力となったときに電池内のガスを放出する圧開放型安全弁、電池の内圧が所定の圧力となったときに電流を遮断する安全弁等を備えることが好ましい。
【0060】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
【実施例】
【0061】
《ガス吸収剤の合成》
(i)メソポーラス材料の作製
種々のメソポーラスシリカを以下に示す方法により作製した。
【0062】
(メソポーラスシリカSBA−15の作製)
ポリエチレンオキサイド鎖−ポリプロピレンオキサイド鎖−ポリエチレンオキサイド鎖を有するトリブロックコポリマー(EO20PO70EO20(アルドリッチ社製))50gを、蒸留水1.3dm3に溶解させた溶液に、テトラエトキシシラン(キシダ化学(株)製)110gを添加し、5分間撹拌した。
【0063】
次に、この溶液に、36容量%塩酸(和光純薬工業(株)製)175cm3を30分間かけて添加した。この後、35℃で20時間、撹拌し、その後、95℃で24時間、さらに撹拌した。
【0064】
生成した固形物を、吸引濾過により回収し、蒸留水4dm3で洗浄した。この固形物を70℃に保持した恒温槽中にて12時間乾燥し、その後、550℃で8時間焼成して、メソポーラスシリカSBA−15を得た。
【0065】
(メソポーラスシリカwSBA−15の作製)
6.0gのメソポーラスシリカSBA−15を95℃の蒸留水250cm3に加え、2時間煮沸処理を行った。この後、吸引濾過により回収した固形物を、60℃に保持した恒温槽中にて12時間乾燥して、メソポーラスシリカwSBA−15を得た。
【0066】
(メソポーラスシリカMSU−Hの作製)
ポリエチレンオキサイド鎖−ポリプロピレンオキサイド鎖−ポリエチレンオキサイド鎖を有するトリブロックコポリマー(EO20PO70EO20(アルドリッチ社製))50gを蒸留水1.4dm3に溶解させた溶液に、氷酢酸(キシダ化学(株)製)15cm3およびケイ酸ナトリウム溶液(3号)(キシダ化学(株)製)72.5cm3を添加した。この溶液を、45℃で20時間、撹拌し、その後、100℃で20時間、さらに撹拌した。
生成した固形物を吸引濾過により回収し、蒸留水4dm3で洗浄した。この固形物を60℃に保持した恒温槽中にて12時間乾燥し、その後、550℃で8時間焼成して、メソポーラスシリカMSU−Hを得た。
【0067】
(メソポーラスシリカwMSU−Hの作製)
6.0gのメソポーラスシリカMSU−Hを95℃の蒸留水250cm3に加え、2時間煮沸処理を行った。この後、吸引濾過により回収した固形物を60℃に保持した恒温槽中にて12時間乾燥して、メソポーラスシリカwMSU−Hを得た。
【0068】
(メソポーラスシリカMCM−48の作製)
蒸留水110cm3に、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(ナカライテスク(株)製)15gおよび水酸化ナトリウム(和光純薬工業(株)製)2gを60℃で溶解させた。この溶液に、20gのテトラエトキシシラン(キシダ化学(株)製)を添加した。この後、その溶液を、60℃で1時間半、攪拌し、この後、オートクレーブに移して、90℃で72時間、さらに加熱した。
生成した固形物を吸引濾過により回収し、蒸留水で洗浄した。この固形物を60℃に保持した恒温槽中にて12時間乾燥し、その後、500℃で12時間焼成して、メソポーラスシリカMCM−48を得た。
【0069】
(メソポーラスシリカwMCM−48の作製)
6.0gのメソポーラスシリカMCM−48を95℃の蒸留水250cm3に加え、2時間煮沸処理を行った。この後、吸引濾過により回収した固形物を60℃に保持した恒温槽中にて12時間乾燥して、メソポーラスシリカwMCM−48を得た。
【0070】
(メソポーラスシリカSBA−3の作製)
蒸留水120cm3に臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(ナカライテスク(株)製)4.4gおよび36容量%塩酸(和光純薬工業(株)製)20cm3を溶解させ、さらに10gのテトラエトキシシラン(キシダ化学株式会社製)を添加した。この後、この溶液を、室温で4時間攪拌した。
生成した固形物を吸引濾過により回収し、蒸留水で洗浄した。この固形物を室温にて12時間乾燥し、その後、500℃で4時間焼成して、メソポーラスシリカSBA−3を得た。
【0071】
(ii)ガス吸収剤の作製
(ガス吸収剤APS/SBA−15(g)の作製)
上記のようにして得られたメソポーラスシリカSBA−15を120℃の恒温槽中にて乾燥した。この後、所定量のメソポーラスシリカSBA−15を、脱水トルエン(和光純薬工業(株)製)に添加して、この混合物を撹拌した。次いで、その混合物に、アミノ基含有シランカップリング剤である3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APS)(アルドリッチ社製)を、所定量添加した。その後、この混合物を、不活性ガスであるアルゴン気流中にて、110℃で24時間、還流しながら撹拌した。
【0072】
この後、その混合物を室温まで放冷し、混合物を、吸引濾過して回収した固体物質を、脱水トルエン(和光純薬工業(株)製)で洗浄した。次に、その固体物質を、60℃の恒温槽中にて12時間乾燥して、アミノ基が導入されたガス吸収剤APS/SBA−15(g)を得た。
【0073】
(MAPS/SBA−15(g)の作製)
APSの代わりに、N−メチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン(MAPS)を用いたこと以外、APS/SBA−15(g)と同様にして、ガス吸収剤MAPS/SBA−15(g)を得た。
【0074】
(AEAPS/SBA−15(g)の作製)
APSの代わりに、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(AEAPS)を用いたこと以外、APS/SBA−15(g)と同様にして、ガス吸収剤AEAPS/SBA−15(g)を得た。
【0075】
(AEAPMS/SBA−15(g)の作製)
APSの代わりに、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(AEAPMS)を用いたこと以外、APS/SBA−15(g)と同様にして、ガス吸収剤AEAPMS/SBA−15(g)を得た。
【0076】
(TA/SBA−15(g)の作製)
APSの代わりに、(3−トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン(TA)を用いたこと以外、APS/SBA−15(g)と同様にして、ガス吸収剤TA/SBA−15(g)を得た。
【0077】
(APS/wSBA−15(g)の作製)
メソポーラスシリカSBA−15の代わりに、メソポーラスシリカwSBA−15を用いたこと以外、APS/SBA−15(g)と同様にして、ガス吸収剤APS/wSBA−15(g)を得た。
【0078】
(AEAPS/wSBA−15(g)の作製)
APSの代わりに、AEAPSを用いたこと以外、APS/wSBA−15(g)と同様にして、ガス吸収剤AEAPS/wSBA−15(g)を得た。
【0079】
(TA/wSBA−15(g)の作製)
APSの代わりに、TAを用いたこと以外、APS/wSBA−15(g)と同様にして、ガス吸収剤TA/wSBA−15(g)を得た。
【0080】
(APS/MSU−H(g)の作製)
メソポーラスシリカSBA−15の代わりに、メソポーラスシリカMSU−Hを用いたこと以外、APS/SBA−15(g)と同様にして、ガス吸収剤APS/MSU−H(g)を得た。
【0081】
(TA/MSU−H(g)の作製)
メソポーラスシリカSBA−15の代わりに、メソポーラスシリカMSU−Hを用い、APSの代わりにTAを用いたこと以外、APS/SBA−15(g)と同様にして、ガス吸収剤TA/MSU−H(g)を得た。
【0082】
(APS/MCM−48(g)の作製)
メソポーラスシリカSBA−15の代わりに、メソポーラスシリカMCM−48を用いたこと以外、APS/SBA−15(g)と同様にして、ガス吸収剤APS/MCM−48(g)を得た。
【0083】
(TA/MCM−48(g)の作製)
メソポーラスシリカSBA−15の代わりに、メソポーラスシリカMCM−48を用い、APSの代わりにTAを用いたこと以外、APS/SBA−15(g)と同様にして、ガス吸収剤TA/MCM−48(g)を得た。
【0084】
(APS/wMCM−48(g)の作製)
メソポーラスシリカSBA−15の代わりに、メソポーラスシリカwMCM−48を用いたこと以外、APS/SBA−15(g)と同様にして、ガス吸収剤APS/wMCM−48(g)を得た。
【0085】
(TA/wMCM−48(g)の作製)
メソポーラスシリカSBA−15の代わりに、メソポーラスシリカwMCM−48を用い、APSの代わりにTAを用いたこと以外、APS/SBA−15(g)と同様にして、ガス吸収剤TA/wMCM−48(g)を得た。
【0086】
(APS/SBA−3(g)の作製)
メソポーラスシリカSBA−15の代わりに、メソポーラスシリカSBA−3を用いたこと以外、APS/SBA−15(g)と同様にして、ガス吸収剤APS/SBA−3(g)を得た。
【0087】
(TA/wMSU−H(g)(1)の作製)
120℃に保持した恒温槽中にて6時間、メソポーラスシリカwMSU−Hを乾燥した。乾燥後のメソポーラスシリカwMSU−Hの5.0gを脱水トルエン250cm3(和光純薬工業(株)製)に添加し、5分間撹拌した後、これにTA50cm3を添加した。この混合物を、アルゴンガス気流中にて、110℃で24時間、還流させながら撹拌した。この後、その混合物を室温まで冷却した。
【0088】
次に、冷却した混合物を吸引濾過して、固形物を回収した。その固形分を、脱水トルエン200cm3(和光純薬工業(株)製)で洗浄し、その後、60℃に保持した恒温槽中にて1夜乾燥して、ガス吸収剤TA/wMSU−H(g)(1)を得た。
【0089】
(TA/wMSU−H(g)(2)の作製)
上記のようにして得られたガス吸収剤TA/wMSU−H(g)(1)を、上記と同様にして、さらにTAで処理して、アミノ基の担持量を増加させた吸収剤TA/wMSU−H(g)(2)を得た。
【0090】
(APS/SBA−15(i)の作製)
含浸法により、ガス吸収剤APS/SBA−15(i)を、以下のようにして作製した。
SBA−15にAPSを撹拌しながら少量ずつ添加した後、この混合物を水蒸気を飽和させた25℃のデシケーター中で、24時間放置した。次いで、水蒸気を飽和させた60℃のデシケーター中で、さらに24時間放置した。その後、この混合物を60℃の恒温槽中にて一夜乾燥して、アミノ基含有シランカップリング剤で処理された吸収剤APS/SBA−15(i)を得た。
【0091】
(iii)メソポーラスシリカおよびガス吸収剤の物性評価
得られた種々のメソポーラスシリカおよびガス吸収剤について、その比表面積、平均細孔径および細孔容積を、N2ガスを用いたBET法により測定した。得られた結果を表1に示す。
【0092】
また、ガス吸収剤1kgあたりに導入されたアミノ基の含有量(モル数)を、熱重量分析およびC、H、N元素についての化学分析により測定した。得られた結果を表1に示す。
【0093】
さらに、ガス吸収剤のCO2吸着能力を、以下に示す方法により測定した。ここで、作製したガス吸収剤のCO2吸着能を調べるための試験装置は、ガス吸収剤充填用カラム、原料ガスボンベ、真空ポンプ、切り替え弁から構成される。この装置は、シーケンスコントローラーで所定の切り替え弁を開閉することにより、一定温度・圧力条件でのCO2の吸着/脱着等の試験が可能となっている。
CO215容積%、水分12容積%、残りがN2であるガスを、1.5gのガス吸収剤に、60℃の環境下で吸着させることにより破過曲線を作成し、15kPaにおけるCO2の吸着量を見積もった。得られた結果を、表1に示す。
【0094】
【表1】

【0095】
《実施例1》
(a)正極の作製
正極活物質としてLiCoO2(平均粒径8μm、BET法による比表面積4.2m2/g)を用い、この活物質100重量部に、導電剤であるアセチレンブラックを3重量部、結着剤であるポリフッ化ビニリデンを4重量部、ガス吸収剤であるAPS/SBA−15(g)を2重量部、および適量のN−メチル−2−ピロリドンを加え、攪拌・混合して、ペースト状の正極合剤を得た。なお、ポリフッ化ビニリデンは、予めN−メチル−2−ピロリドンに溶解した状態で用いた。
【0096】
次に、厚さ20μmのアルミニウム箔からなる集電体の両面に、前記ペースト状正極合剤を塗布し、塗膜を乾燥し、ローラーで圧延した。得られた極板を、所定寸法に裁断して、正極を得た。
【0097】
以下に、正極活物質として用いたLiCoO2の調製法を述べる。
まず、硫酸コバルトを溶解させた金属塩水溶液を調製した。前記金属塩水溶液を攪拌しながら50℃に維持し、その水溶液中に、水酸化ナトリウムを30重量%含む水溶液を滴下し、中和することにより、水酸化コバルトの沈殿を生成させた。
この水酸化コバルトの沈殿を濾過し、水洗し、空気中で乾燥させ、次いで400℃で5時間焼成して、酸化コバルトを得た。得られた酸化コバルトは、粉末X線回折により、単一相であることが確認された。
【0098】
次に、得られた酸化コバルトと炭酸リチウムとをCoの原子数とLiの原子数の比が1:1になるように混合した。この混合物を950℃で10時間焼成した。この後、その焼成物を、粉砕してレーザー回折法で得られる累積50%粒径が8μmの粉末とすることにより、目的とするLiCoO2を得た。得られたLiCoO2は、粉末X線回折により六方晶構造の単一相を有することが確認された。
【0099】
(b)負極の作製
平均粒径が約20μmになるように粉砕・分級した鱗片状黒鉛100重量部に、結着剤であるスチレン−ブタジエンゴムを2.5重量部混合した。この混合物に、鱗片状黒鉛100重量部あたり1重量部のカルボキシメチルセルロース(CMC)を含むCMC水溶液を加え、攪拌・混合して、ペースト状負極合剤を得た。
【0100】
次に、厚さ15μmの銅箔からなる集電体の両面に、前記ペースト状負極合剤を塗布し、塗膜を乾燥し、ローラーで圧延した。得られた極板を所定寸法に裁断して、負極を得た。
【0101】
(c)電池の組立
上記のようにして得られた正極および負極を用いて、角形非水電解液二次電池(厚さ5.2mm、幅34mm、高さ50mm、設計容量800mAh)を組み立てた。図4に、実施例で作製した角形電池の一部を切り欠いた斜視図を示す。
【0102】
この角形電池は以下のようにして組み立てた。
帯状の正極と負極とを、厚さ25μmの微多孔性ポリエチレン樹脂製セパレータを介して、渦巻き状に捲回して、極板群11を作製した。正極および負極には、それぞれアルミニウム製正極リード12およびニッケル製負極リード13を溶接した。極板群の上部にポリエチレン樹脂製絶縁枠体16を装着し、肉厚0.25mmのアルミニウム製電池ケース14の内部に収容した。正極リード12の他端は、アルミニウム製封口板15の内面にスポット溶接した。また、負極リード13の他端は、封口板15の中心部に、絶縁材19を介して取り付けられたニッケル製負極端子17の下部にスポット溶接した。
次いで、電池ケース14の開口端部と封口板15の周縁部とをレーザー溶接した。そして、所定量の非水電解液を注入口から注入し、最後に注入口を、アルミニウム製の栓18で封じて、電池を完成させた。
【0103】
非水電解液には、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの体積比30:70の混合溶媒100重量部にビニレンカーボネート1重量部を加え、1.0mol/Lの濃度になるようにLiPF6を溶解したものを用いた。
【0104】
《実施例2》
ガス吸収剤として、APS/SBA−15(i)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電池を作製した。
【0105】
《実施例3》
ガス吸収剤として、MAPS/SBA−15(g)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電池を作製した。
【0106】
《実施例4》
ガス吸収剤として、AEAPS/SBA−15(g)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電池を作製した。
【0107】
《実施例5》
ガス吸収剤として、AEAPMS/SBA−15(g)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電池を作製した。
【0108】
《実施例6》
ガス吸収剤として、TA/SBA−15(g)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電池を作製した。
【0109】
《実施例7》
ガス吸収剤として、APS/wSBA−15(g)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電池を作製した。
【0110】
《実施例8》
ガス吸収剤として、AEAPS/wSBA−15(g)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電池を作製した。
【0111】
《実施例9》
ガス吸収剤として、TA/wSBA−15(g)を用いた以外は、実施例1と同様にして、電池9を作製した。
【0112】
《実施例10》
ガス吸収剤として、APS/MSU−H(g)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電池を作製した。
【0113】
《実施例11》
ガス吸収剤として、TA/MSU−H(g)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電池を作製した。
【0114】
《実施例12》
ガス吸収剤として、TA/wMSU−H(g)(1)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電池を作製した。
【0115】
《実施例13》
ガス吸収剤として、TA/wMSU−H(g)(2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電池を作製した。
【0116】
《実施例14》
ガス吸収剤として、APS/MCM−48(g)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電池を作製した。
【0117】
《実施例15》
ガス吸収剤として、TA/MCM−48(g)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電池を作製した。
【0118】
《実施例16》
ガス吸収剤として、APS/wMCM−48(g)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電池を作製した。
【0119】
《実施例17》
ガス吸収剤として、TA/wMCM−48(g)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電池を作製した。
【0120】
《実施例18》
ガス吸収剤として、APS/SBA−3(g)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電池を作製した。
【0121】
《比較例1》
ガス吸収剤を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、電池を作製した。
【0122】
《比較例2》
ガス吸収剤として、Y型ゼオライト(東ソー株式会社製)(比表面積 410m2/g、平均細孔径0.74nm、細孔容積0.48cm3/g、CO2吸着量0.03mol/kg)を用いた。このこと以外は、実施例1と同様にして、電池を作製した。
【0123】
《比較例3》
ガス吸収剤の代わりに、メソポーラスシリカSBA−15を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電池を作製した。
【0124】
《比較例4》
ガス吸収剤の代わりに、メソポーラスシリカwSBA−15を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電池を作製した。
【0125】
《比較例5》
ガス吸収剤の代わりに、メソポーラスシリカMSU−Hを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電池を作製した。
【0126】
《比較例6》
ガス吸収剤の代わりに、メソポーラスシリカwMSU−Hを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電池を作製した。
【0127】
《比較例7》
ガス吸収剤の代わりに、メソポーラスシリカMCM−48を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電池を作製した。
【0128】
《比較例8》
ガス吸収剤の代わりに、メソポーラスシリカwMCM−48を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電池を作製した。
【0129】
《比較例9》
ガス吸収剤の代わりに、メソポーラスシリカSBA−3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電池を作製した。
【0130】
《実験評価》
(i)初期充放電
実施例1〜18および比較例1〜9の電池をそれぞれ3個ずつ、25℃環境下にて、以下のような充放電サイクルを3回繰り返し、慣らし充放電を行った。充電は、電流値160mA、充電終止電圧4.2Vの定電流充電とした。放電は、電流値160mA、放電終止電圧3.0Vの定電流放電とした。この慣らし充放電において、2回目のサイクルにおける放電容量と3回目のサイクルにおける放電容量がほぼ一致することが確認された。
【0131】
次に、これらの電池を、それぞれ1個ずつ、充電電圧を4.2V、4.3Vまたは4.4Vとした高温保存試験に供した。
【0132】
(ii)4.2V高温保存試験
初期充放電が終了した放電状態の電池を、25℃環境下にて、4.2Vの定電圧充電を2時間行った。この充電では、最大電流値800mAとした。充電状態の電池厚みをマイクロメーターを用いて測定し、その厚みをT1とした。測定位置は、ケースの中央部とした。その後、80℃環境下に48時間放置した。放置後の電池を25℃まで冷却し、電池厚みを同様に測定し、その厚みをT2とした。電池の膨れ量をT2−T1と定義し、この膨れ量を、高温保存時のガス発生による電池ケースの変形量の指標とした。得られた結果を表2に示す。
【0133】
(iii)4.3V高温保存試験
充電電圧値を4.3Vとしたこと以外は、4.2V高温保存試験と同様にして電池の膨れ量を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0134】
(iv)4.4V高温保存試験
充電電圧値を4.4Vとしたこと以外は、4.2V高温保存試験と同様にして電池の膨れ量を測定した。得られた結果を表2に示す。
なお、表2には、用いたガス吸収剤の種類も示す。
【0135】
【表2】

【0136】
ガス吸収剤を添加しなかった比較例1の電池と比べて、アミンで修飾されたメソポーラスシリカをガス吸収剤として添加した実施例1〜18の電池は、いずれの電圧値の高温保存試験においても、電池の膨れを抑制できていることがわかる。一方で、一般的なガス吸収剤であるY型ゼオライトを用いた比較例2の電池では、ほとんど電池の膨れを抑制できないという結果になった。これは、アミンで修飾されたメソポーラスシリカをガス吸収剤として用いた場合、非水電解液の主成分である極性有機溶媒に湿潤することなくCO2ガスの吸着能を維持できたのに対し、Y型ゼオライトでは極性有機溶媒に湿潤してしまい、本来有するCO2ガスの吸着能を失ってしまったためと考えられる。
以上のように、非水電解液と接する位置に配置しても、アミンで修飾されたメソポーラスシリカを含むガス吸収剤は、CO2ガスの吸収能を失うことなく、電池の高温保存時の膨れによる変形を抑制することができることが明らかになった。
【0137】
また、各種メソポーラスシリカのみを用いた比較例3〜9の電池は、ほとんど電池の膨れを抑制する効果がないことがわかる。これは、表1に示すように、メソポーラスシリカにはCO2ガスの吸収能がないためであり、メソポーラスシリカにCO2ガスの吸収能を付与するためには、アミンで修飾することが必要であることがわかる。
【0138】
さらに、同じアミノ基含有シランカップリング剤(APS)とメソポーラスシリカ(SBA−15)を用い、異なる修飾法で作製したガス吸収剤を用いた実施例1の電池と実施例2の電池とを比較すると、実施例1の電池に比べ、実施例2の電池の方が、膨れ抑制効果が小さいことがわかる。実施例2の電池で用いたガス吸収剤APS/SBA−15(i)は、表1に示すように、比較的多くのアミンを含有し、一定のCO2吸着量を示すもののガス吸収剤に細孔を有さず、比表面積も用いたガス吸収剤の中では著しく小さい。このため、高温保存試験時、電池内部で起こるCO2の発生速度に対してガス吸収剤のCO2吸着速度が追いつかず、結果として、電池内部の圧力が増加し、電池ケースの変形が引き起こされたと推定される。この結果より、アミノ基のメソポーラス材料への導入は、グラフト法を用いることが好ましいことがわかる。
【0139】
次に、図5に、実施例1および3〜18の電池に用いたガス吸収剤のCO2吸着量と、充電電圧値が4.2V(菱形)、4.3V(四角)または4.4V(三角)であるときの高温保存試験時の電池膨れとの関係と示す。また、図5には、各電圧値での高温保存試験における、比較例1の電池の膨れ量も示す。
【0140】
いずれの充電電圧においても、ガス吸収剤のCO2吸着量が大きいほど、高温保存時の電池膨れの抑制効果は大きなものとなった。ガス吸収剤のCO2吸着量が0.25mol/kg以上であれば、電池膨れの抑制効果は認められるが、高温保存時の信頼性を顕著に向上させるには、ガス吸収剤を添加していない比較1の電池の膨れ量の半分程度にすることが望ましい。この観点から、CO2吸着量が0.9mol/kg以上のガス吸収剤を用いることが好ましく、その吸着量が1.5mol/kg以上のガス吸収剤を用いることがさらに好ましい。
【0141】
また、CO2吸着量が0.9mol/kg以上のガス吸収剤を用いることにより、充電電圧が4.3Vや4.4Vといった高電圧充電を行った場合でも、ガス吸収剤を含まない電池を4.2Vで充電した場合と同等以上の高温保存時の信頼性を付与することが可能となる。よって、ガス吸収剤を含む本発明の電池では、充電電圧を4.3V以上とすることができる。
【0142】
図6に、実施例1および3〜18の電池に用いたガス吸収剤のアミノ基含有量と各充電電圧における高温保存試験時の電池膨れとの関係を示す。また、図6には、各電圧値での高温保存試験における、比較例1の電池の膨れ量も示す。
【0143】
いずれの充電電圧においても、ガス吸収剤に含まれるアミノ基の含有量の増加とともに、高温保存時の電池膨れの抑制効果は大きなものとなった。アミノ基含有量が2.0mol/kg以上であれば、電池膨れの抑制効果は認められるが、高温保存時の信頼性を顕著に向上させるには、ガス吸収剤を添加していない比較例1の電池の膨れ量の半分程度にすることが望ましい。この観点から、アミノ基含有量が3.5mol/kg以上のガス吸収剤を用いることが好ましい。
【0144】
図7に、同等のアミノ基含有量(5.1〜6.0mol/kg)(実施例2、9、12、15および17)を有するガス吸収剤の細孔容積と各充電電圧における高温保存時の電池膨れとの関係を示す。また、図7には、各電圧値での高温保存試験における、比較例1の電池の膨れ量も示す。
【0145】
いずれの充電電圧においても、総じてガス吸収剤の細孔容積の増加と共に、高温保存時の電池膨れの抑制効果は大きなものとなった。ガス吸収剤1gあたりの細孔容積が0.025cm3以上であれば、電池膨れの抑制効果は認められ、細孔容積が0.07cm3/gまで、膨れの抑制効果は増大した。細孔容積が0.07cm3/gよりも大きい場合、細孔容積が増加しても、膨れ抑制効果は、細孔容積が0.07cm3/gの場合と同程度かそれよりも大きかった。一方で、ガス吸収剤の細孔容積が2.0cm3/gより大きい場合には、ガス吸収剤の強度が低下し、取り扱いが困難になる。以上の結果から、安定した電池膨れ抑制効果を得るためには、ガス吸収剤の細孔容積は、0.07cm3/g以上2.0cm3/g以下であることが好ましい。
【0146】
以下の実施例では、正極活物質の種類を変化させた。
【0147】
《実施例19》
正極活物質としてLiCo0.975Mg0.020Al0.0052(平均粒径8μm、BET法による比表面積3.9m2/g)を用いたこと以外は、実施例13と同様にして電池を作製した。
【0148】
正極活物質として用いたLiCo0.975Mg0.020Al0.0052の調製法を以下に述べる。
まず、所定比率で硫酸コバルトと硫酸マグネシウムとを溶解させた金属塩水溶液を調製した。前記金属塩水溶液を攪拌しながら50℃に維持し、その水溶液に、水酸化ナトリウムを30重量%含む水溶液を滴下し、中和することにより、マグネシウム含有水酸化コバルトの沈殿を共沈法により生成させた。
このマグネシウム含有水酸化コバルトの沈殿を、濾過し、水洗し、空気中で乾燥させ、次いで400℃で5時間焼成し、マグネシウム含有酸化コバルトを得た。得られたマグネシウム含有酸化コバルトは、粉末X線回折により、単一相であり、マグネシウムが固溶していることが確認された。
【0149】
次に、得られたマグネシウム含有酸化コバルトと、水酸化アルミニウムと、炭酸リチウムとを、(Co+Mg+Al)の原子数とLiの原子数の比が1:1になるように混合した。この混合物を950℃で10時間焼成した後、粉砕してレーザー回折法で得られる累積50%粒径が8μmの粉末とすることにより、目的とするLiCo0.975Mg0.020Al0.0052を得た。得られたLiCo0.975Mg0.020Al0.0052は、粉末X線回折により、六方晶構造の単一相を有することが確認された。
【0150】
《比較例9》
ガス吸収剤を用いなかったこと以外は、実施例19と同様にして電池を作製した。
【0151】
《実施例20》
正極活物質としてLiNi1/3Mn1/3Co1/32(平均粒径10μm、BET法による比表面積3.2m2/g)を用いたこと以外は、実施例13と同様にして電池を作製した。
【0152】
正極活物質として用いたLiNi1/3Mn1/3Co1/32の調製法を以下に述べる。
まず、所定比率で、硫酸ニッケル、硫酸マンガンおよび硫酸コバルトを溶解させた金属塩水溶液を調製した。前記金属塩水溶液を攪拌しながら50℃に維持し、その水溶液中に、水酸化ナトリウムを30重量%含む水溶液を滴下し、中和することにより、三元系の水酸化物Ni1/3Mn1/3Co1/3(OH)2の沈殿を共沈法により生成させた。
この三元系の水酸化物の沈殿を、濾過し、水洗し、空気中で乾燥させ、次いで400℃で5時間焼成して、三元系の酸化物Ni1/3Mn1/3Co1/3Oを得た。得られた三元系の酸化物は、粉末X線回折により、単一相であることが確認された。
【0153】
次に、得られた前記三元系の酸化物と水酸化リチウム1水和物とを、(Ni+Mn+Co)の原子数とLiの原子数の比が1:1になるように混合した。この混合物を乾燥空気中1000℃で10時間焼成した後、粉砕してレーザー回折法で得られる累積50%粒径が10μmの粉末とすることにより、目的とするLiNi1/3Mn1/3Co1/32を得た。得られたLiNi1/3Mn1/3Co1/32は、粉末X線回折により六方晶構造の単一相を有することが確認された。
【0154】
《比較例10》
ガス吸収剤を用いなかったこと以外は、実施例20と同様にして電池を作製した。
【0155】
《実施例21》
正極活物質としてLiNi0.82Co0.15Al0.032(平均粒径9μm、BET法による比表面積4.1m2/g)を用いたこと以外は、実施例13と同様にして電池を作製した。
【0156】
正極活物質として用いたLiNi0.82Co0.15Al0.032の調製法を以下に述べる。
まず、所定比率で、硫酸ニッケルと硫酸コバルトとを溶解させた金属塩水溶液を調製した。前記金属塩水溶液を攪拌しながら50℃に維持し、その水溶液中に、水酸化ナトリウムを30重量%含む水溶液を滴下し、中和することにより、コバルト含有水酸化ニッケルの沈殿を共沈法により生成させた。
このコバルト含有水酸化ニッケルの沈殿を、濾過し、水洗し、空気中で乾燥させ、次いで600℃で5時間焼成して、コバルト含有酸化ニッケルを得た。得られたコバルト含有酸化ニッケルは、粉末X線回折により、単一相であり、コバルトが固溶していることが確認された。
【0157】
次に、得られたコバルト含有酸化ニッケルと、水酸化アルミニウムと、水酸化リチウム1水和物とを、(Ni+Co+Al)の原子数とLiの原子数の比が1:1になるように混合した。この混合物を740℃で10時間焼成した後、粉砕してレーザー回折法で得られる累積50%粒径が9μmの粉末とすることにより、目的とするLiNi0.82Co0.15Al0.032を得た。得られたLiNi0.82Co0.15Al0.032は、粉末X線回折により、六方晶構造の単一相を有し、Alが固溶されていることが確認された。
【0158】
《比較例11》
ガス吸収剤を用いなかったこと以外は、実施例21と同様にして、比較電池11を作製した。
【0159】
作製した電池19〜21および比較電池9〜11に、上記のようにして、初期充放電を施し、その後、4.2V高温保存試験に供した。得られた結果を表3に示す。
【0160】
【表3】

【0161】
正極活物質の種類を変えても、ガス吸収剤を添加した実施例19〜21の電池においては、ガス吸収剤を添加しない比較例9〜11の電池と比べて、電池膨れが抑制され、ガス吸収剤の添加効果が認められた。
【0162】
以下の実施例では、ガス吸収剤を添加する部位を変えた。
【0163】
《実施例22》
(i)正極の作製
ガス吸収剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして正極を作製した。
【0164】
(ii)負極の作製
実施例1と同様にして負極を作製した。
【0165】
(iii)電池の組立
極板群の上部に設置する絶縁枠体として、0.1gのポリプロピレンと0.12gのガス吸収剤(TA/wMSU−H(g)(2))を加熱・混練し、成型したものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして電池を得た。
【0166】
《実施例23》
(i)正極の作製
ガス吸収剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして正極を作製した。
【0167】
(ii)負極の作製
実施例1と同様にして負極を作製した。
【0168】
(iii)電池の組立
実施例1で用いた25μmの微多孔性ポリエチレン樹脂製セパレータに代えて、ガス吸収剤を添加したフッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンの共重合体を成型したイオン透過性絶縁膜をセパレータとして用いた。このこと以外は、実施例1と同様にして電池を得た。
【0169】
前記イオン透過性絶縁膜の調製法を以下に述べる。
10重量%の六フッ化プロピレンを含むポリフッ化ビニリデンのコポリマー10重量部と90重量部のガス吸収剤(TA/wMSU−H(g)(2))に、適量のN−メチル−2−ピロリドンを加え、攪拌・混合して、スラリーを得た。このスラリーを、30μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、乾燥することにより、目的とする25μmのイオン透過性絶縁膜を得た。作製したイオン透過性絶縁膜をポリエチレンテレフタレートフィルムから剥離し、その絶縁膜をセパレータとして用いた。
【0170】
作製した実施例22および23の電池に、上記のような初期充放電を施し、その後、4.2V高温保存試験に供した。得られた結果を表4に示す。また、初期充放電における3回目の放電容量を初期容量と定義し、その値も表4に示す。
なお、表4には、実施例13および比較例1の結果も示す。
【0171】
【表4】

【0172】
正極合剤層中にガス吸収剤を添加した実施例13の電池では、高温保存試験における電池膨れは抑制されるものの、正極合剤層中に含まれる正極活物質の割合が低下する。このため、結果として、比較例1の電池と比べて、実施例13の電池の初期容量は幾分低い。一方で、ガス吸収剤を電池内の絶縁部品として組み込んだ実施例22の電池(絶縁枠体)および実施例23の電池(セパレータ)では、正極合剤層中に含まれる正極活物質の割合を低下させることがないので、初期容量の低下を招くことなく、電池の膨れを抑制することができる。
【0173】
以上、高容量化と高温信頼性の両立の観点から、ガス吸収剤は、電池内に配置される絶縁部品として成型され、電池内に具備されることが好ましい。上記実施例では、角形電池用の絶縁枠体またはセパレータにガス吸収剤を添加した例を挙げたが、その形態は特に限定されるものではない。例えば、電池内において発生ガスと接するように配されている絶縁部品がガス吸収剤が含まれれば、その効果を発現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0174】
本発明により、高温保存時の電池の信頼性を向上させることができる。よって、本発明の非水電解液二次電池は、例えば、高い信頼性が必要とされる携帯型電子機器用の電源として用いることができる。また、本発明は、電気自動車や電力貯蔵用に用いられる大型電池等にも広く適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】メソポーラスシリカの形状の一例を示す斜視図である。
【図2】含浸法により、アミンで修飾されたメソポーラス材料の断面模式図を示す。
【図3】グラフト法により、アミンで修飾されたメソポーラス材料の断面模式図を示す。
【図4】実施例で作製した角形非水電解液電池の一部を切り欠いた斜視図である。
【図5】ガス吸収剤のCO2吸着量と高温保存試験時の電池膨れとの関係を示すグラフである。
【図6】ガス吸収剤のアミン含有量と高温保存試験時の電池膨れとの関係を示すグラフである。
【図7】ガス吸収剤の細孔容積と高温保存試験時の電池膨れとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0176】
1 筒状体
2 メソポーラス材料
3 ガス吸収成分
4 メソ孔
11 極板群
12 正極リード
13 負極リード
14 電池ケース
15 封口板
16 絶縁枠体
17 負極端子
18 封栓
19 絶縁材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極群、非水電解液および電池内で発生するガスを吸収するガス吸収剤を具備し、
前記電極群が、リチウム含有複合酸化物を正極材料とする正極と、金属リチウムまたはリチウムイオンを吸蔵および放出し得る物質を負極材料とする負極と、前記正極と前記負極との間に介在するセパレータとを含み、
前記非水電解液は、非水溶媒と前記非水溶媒に溶解したリチウム塩とを含み、
前記ガス吸収剤は、アミンで修飾されたメソポーラス材料を含む非水電解液二次電池。
【請求項2】
前記メソポーラス材料が、メソポーラスシリカである請求項1記載の非水電解液二次電池。
【請求項3】
前記ガス吸収剤が、アミノ基含有シランカップリング剤と前記メソポーラス材料とを反応させることにより形成される請求項1記載の非水電解液二次電池。
【請求項4】
前記ガス吸収剤による二酸化炭素の吸着量が、60℃、15kPaの環境下において、前記ガス吸収剤1kgあたり0.9mol以上である請求項1記載の非水電解液二次電池。
【請求項5】
前記ガス吸収剤が、前記ガス吸収剤1kgあたり3.5mol以上の前記アミン由来のアミノ基を含む請求項1記載の非水電解液二次電池。
【請求項6】
前記ガス吸収剤の細孔容積が、前記ガス吸収剤1gあたり0.07cm3以上2.0cm3以下である請求項1記載の非水電解液二次電池。
【請求項7】
前記ガス吸収剤が、前記非水電解液と接触している請求項1記載の非水電解液二次電池。
【請求項8】
前記ガス吸収剤が、電池内に配置される絶縁部品に含まれている請求項1記載の非水電解液二次電池
【請求項9】
前記絶縁部品が、セパレータである請求項8記載の非水電解液二次電池。
【請求項10】
前記電池の充電終止電圧が4.3V以上である請求項1記載の非水電解液二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−242454(P2007−242454A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−64158(P2006−64158)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【出願人】(591178012)財団法人地球環境産業技術研究機構 (153)
【Fターム(参考)】