説明

面材

【課題】石材の石目調が顕在化されて立体感に富んだ外観を発現させることが可能な面材を提供する。
【解決手段】石材シート2の表面に厚さ1mm以上の透明樹脂層3が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面材に関する。
【背景技術】
【0002】
住設建材用途に用いられる面材において、高級感のある石目調の外観を発現させるには次の方法がある。すなわち、天然石をそのまま利用する方法と、図4に示すように、薄くスライスし、もしくは剥離した天然石20をその両面から樹脂板やガラス板等の板材21で挟み込み、かつ天然石20の意匠側の板材21を透明性のものにして利用する方法がある。
【0003】
前者の方法は、天然石の表面を研磨する手間がかかるとともに所定の強度を確保するめにある程度の厚みが必要になる。そのため面材自体が重くなり、設置方法に制約が生じ、場合によっては周辺の補強が必要になる。
【0004】
後者の方法は、天然石20と板材21とを接着剤22を用いて貼り合わせる接着工程が必要であり、天然石20の表面に凹凸があると接着しにくいという問題がある。また、透明な接着剤22で天然石20と板材21を貼り合わせても、板材21および接着剤層23を通して目視される天然石20の石目調は立体感が十分でなく、外観向上の改善が望まれてもいる。天然石の表面の凹凸により接着しにくいという問題を解決するために、天然石に予め樹脂を塗布または含浸させ、この樹脂により板材との接着強度を確保することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、立体感に富んだ外観を付与するための検討は十分になされていない。
【0005】
ところで、特許文献2には、表面の汚れ易さや汚れの取れにくさを改善するため、天然大理石をスライスした薄板の大理石板の表面に透明なハードコート層を設けることが開示されている。しかしながら、大理石の石目調を顕在化させ立体感に富んだ外観を発現することは記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−247851号公報
【特許文献2】特開平1−178641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、石材の石目調が顕在化されて立体感に富んだ外観を発現させることが可能な面材を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の面材は以下のことを特徴としている。
【0009】
第1に、石材シートの表面にに厚さ1mm以上の透明樹脂層が形成されている。
【0010】
第2に、上記第1の発明において、石材シートの厚さが2mm以下である。
【0011】
第3に、上記第1または第2の発明において、透明樹脂層は、石材シートの表面に塗布された液状樹脂の硬化により石材シートと一体に形成されている。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、石材シートの石目調が顕在化されて立体感に富み深度感のある外観が発現され、薄い石材シートであっても高級感のある外観を発現させることが可能である。また、透明樹脂層の存在により、表面が汚れ易い石材シートの問題が解消され、耐汚染性が向上する。
【0013】
第2の発明によれば、立体感に富み深度感のある外観を損なわずに面材の重量を軽くすることができる。これにより取り扱いが容易になり、設置方法の制約が軽減される。コストを抑えることもできる。また、3次元の立体形状にも容易に対応可能である。
【0014】
第3の発明によれば、石材シート上に塗布された液状樹脂の硬化により石材シートと一体に透明樹脂層が形成されているので、石材シートの表面に凹凸が形成されていても石材シートの表面に透明樹脂層を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の面材の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】(a)実施例で製造した面材の外観写真であり、(b)は比較例で製造した面材の外観写真であり、(c)は石材シートの外観写真である。
【図4】接着剤を用いて形成した従来の面材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の面材の一実施形態を示す断面図であり、図2は、図1の要部拡大図である。
【0017】
図1の面材1は、石材シート2と、その石材シート2の表面に厚さ1mm以上の透明樹脂層3を有している。
【0018】
石材シート2は、大理石、花崗岩、御影石等の天然石からなる板状部材であり、例えば、板状に切断もしくは剥離して得ることができる。石材シート2はその表面が研磨されて平滑になっているものではなく、切断、剥離によって形成された凹凸を表面に有したままの状態で使用することができる。このため製造上、研磨の手間を省くことができる。石材シート2の表面に凹凸を有する場合、その凹凸は表面全域に規則的もしくは不規則に形成されている。凹凸の形状は鋭利な角を有していてもよいし、丸みを帯び連続する曲線状に形成されていてもよい。また、凹凸は目視できる程度に形成されていてもよく、例えば、その凹凸高さ(凹部4の底部4aと凸部5の頂部5aとの差)が最大で1mm程度のものも許容される。
【0019】
石材シート2の厚さは特に制限されるものではないが、重くなって取り扱いに支障がきたさない程度に厚くないことが望ましく、例えば2mm以下とすることができる。下限値は、石材シート2に欠け、割れ等が発生せず、また製造可能な厚さであり、例えば1mm程度に設定することができる。
【0020】
石材シート2の表面に形成される透明樹脂層3は、石材シート2の石目調を顕在化させ、立体感に富んだ深度感のある外観を付与するために設けられる。透明樹脂層3を構成する樹脂としては、透明性を有している従来公知の各種樹脂を用いることができる。例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂の硬化の形態は、例えば、熱硬化、湿気反応硬化、紫外線や電子線などの電離放射線硬化が挙げられる。
【0021】
透明樹脂層3の厚さが1mm以上であることが必要である。ここで透明樹脂層3の厚さとは、図2に示すように、石材シート2の表面に有する凹凸の仮想中心線Xから透明樹脂層3の表面3aに至るまでの長さdである。厚さが1mm以上であると、石材シート2の表面に表現される石目調が顕在化されて立体感に富み深度感のある外観が発現され、石材シート2が薄くても高級感のある外観が発現される。一方、厚さが1mm未満の場合、石材シート2の表面に表現される石目調に立体感、深度感を十分に付与することができず、意匠性を向上させた高級感のある面材1とすることができない。
【0022】
透明樹脂層3の厚さの上限値は、石材シート2の表面に表現される石目調が顕在化されて立体感に富み深度感のある外観が発現されれば特に限定されない。透明樹脂層3が厚くなりすぎると面材1が重くなり取り扱い性が低下する場合もあり、またコスト増にもなるので、例えば、10mm以下とすることができる。また、透明樹脂層3の表面は、平滑面であることが好ましいが、多少の凹凸であればあっても良い。なお、意図的に大きな波打ち形状等を形成するようにしても良い。
【0023】
透明樹脂層3は、より立体感に富む外観を発現させるために単層であることが好ましいが、複数層(単層が複数積層されて形成されたもの)とすることもできる。複数層の透明樹脂層の場合、積層した状態の厚さが1mm以上であれば各層の厚さが1mm未満であってもよい。
【0024】
透明樹脂層3は石材シート2と一体化されて形成されている。具体的な製造方法としては、例えば、上記した各種樹脂の液状物(液状樹脂)を石材シート2の表面に塗布し、樹脂表面が平滑な状態で樹脂の種類に応じた熱硬化や電離放射線硬化等の方法により硬化させて石材シート2と透明樹脂層3とを一体に形成する。熱圧処理を施してもよい。複数層の透明樹脂層の場合、液状樹脂の塗布とその後の硬化を複数回繰り返して行えばよい。塗布方法は、例えば、ロールコーター、フローコーター、スプレー等の方法を採用することができるが、石材シート2の表面に気泡や異物等が混入することなく均等に塗布することができて厚さ1mm以上とすることができればどのような方法であってもよく、前記の方法に限定されるものではない。例えば、型枠に石材シート2を載置し、その上に液状樹脂を塗布ないし注入して硬化させて石材シート2と透明樹脂層3とを一体に形成することもできる。このように接着剤を用いることなく面材を形成することができる。石材シート2の表面に凹凸を有する場合でも、上記製造方法ではその凹凸の形状に沿って液状樹脂が塗布ないし注入されるので、石材シート2の表面に透明樹脂層3を容易にかつ確実に形成することができる。
【0025】
以上のようにして得られた面材は、石材シートの石目調が顕在化されて立体感に富み深度感のある外観が発現される。薄い石材シートであっても高級感のある外観を発現させることが可能である。従来、石材シートの表面は汚れ易いという問題があったが、石材シートの表面に形成した透明樹脂層によりその問題は解消され、耐汚染性を向上させることができる。また、石材シートの厚さを2mm以下にして面材の重量を軽くすることができる。これにより取り扱いが容易になり設置方法の制約が軽減され、コストを抑えることもできる。3次元の立体形状にも容易に対応可能である。石材シートの厚さが2mm以下の場合でも、面材は立体感に富み、深度感のある外観は損なわれない。したがって、上記面材は、住設建材用部材として床、壁、天井、扉等や水廻り機器用の面材として利用することができる。
【0026】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。例えば、上記実施形態では石材シートの表面のみ透明樹脂層が形成されている面材について説明しているが、石材シートの裏面側にも透明樹脂層を形成し、石材シートが両面から透明樹脂層で挟み込まれている面材とすることもできる。
【実施例】
【0027】
<実施例>
厚さ0.5mmの花崗岩からなる石材シートの上に透明樹脂層形成のための型枠を載置し、この状態で液状樹脂(透明性2液混合型エポキシ樹脂)を型枠内に流し込んだ。次いで、液状樹脂を熱硬化させ、型枠を取り外し、石材シートの上に表面が平滑な厚さ1.5mmの透明樹脂層が一体に形成されてなる面材Aを得た。面材Aの外観写真を図3(a)に示す。
<比較例>
厚さ0.5mmの花崗岩からなる石材シートの上に液状樹脂(透明性2液混合型エポキシ樹脂)をロールコーターで塗布した。次いで、液状樹脂を熱硬化させて、石材シートの上に厚さ0.2mmの透明樹脂層が一体に形成されてなる面材Bを得た。面材Bの外観写真を図3(b)に示す。なお、石材シートおよび液状樹脂は、実施例で用いたものと同様のものを使用した。図3(c)に石材シートの外観写真を示す。
【0028】
面材Aおよび面材Bを上方から目視で観察したところ、面材Aは石材シートの石目調が顕在化されて立体感に富み深度感のある外観が発現されていることが確認された。一方、面材Bについては、透明樹脂層が薄いために石材シートの石目調が顕在化せず、面材Aと比べて立体感および深度感が劣る外観であった。
【符号の説明】
【0029】
1 面材
2 石材シート
3 透明樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石材シートの表面に厚さ1mm以上の透明樹脂層が形成されていることを特徴とする面材。
【請求項2】
石材シートの厚さが2mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の面材。
【請求項3】
透明樹脂層は、石材シートの表面に塗布された液状樹脂の硬化により石材シートと一体に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の面材。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−202463(P2011−202463A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72648(P2010−72648)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】