説明

面状採暖具

【課題】発熱体の吸湿状態に関わらず、快適な暖感覚を与えることができる面状採暖具を提供すること。
【解決手段】速熱制御手段16の目標温度よりも高い目標温度で発熱体11を立ち上げ制御するLow強制立ち上げ制御手段18と、Low強制立ち上げ制御中の発熱体の通電状態から発熱体の吸湿状態を判定する吸湿判定手段20と、吸湿判定手段により発熱体が吸湿していると判定された場合のみ、Low強制立ち上げ制御手段の目標温度よりもさらに高い目標温度で発熱体を立ち上げ制御するHi強制立ち上げ制御手段19と、Hi強制立ち上げ制御終了後の保温制御時において、温度設定手段による設定温度より高い目標温度で発熱体を保温制御するHi保温制御手段21を備えたことにより、発熱体の吸湿の有無に関わらず、いつも快適な暖感覚が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気カーペットや電気毛布、床暖房等の面状採暖具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の面状採暖具は、発熱線と温度検知線を一本の感温ヒータ線とした一線式構成の発熱体が使用されることが多い。一線式構成にすると発熱線と温度検知線を別々に配線する必要がなく、一本化した感温ヒータ線を配線するだけで温度制御が可能となる。
【0003】
また、発熱部分と温度検出部分とを一体化していることにより、発熱線の温度を直接検知できることから、局部的な保温をされても温度上昇を抑えることができ、安全性も高い。
【0004】
一線式構成に用いられる感温ヒータ線は、発熱線と温度検知線との間に高分子感温体を介在させ,この感温体のインピーダンスの温度特性により、線間に流れる電流が変化することを利用し、これを温度検知線から取り出して温度制御を行うことが一般的な制御方式となっている。
【0005】
そこで、従来の面状採暖具は、図6に示すように、面状採暖具(図示せず)に配設された一線式感温ヒータ線である発熱体1と、発熱体1の温度を検出する温度検出手段2と、面状採暖具の制御温度を設定する温度設定手段3と、温度検出手段2で検出された検出値(発熱体1の検出温度)と温度設定手段3にて設定された設定温度とから発熱体1への通電制御を行う制御手段4とから構成されている。
【0006】
ここで、温度検出手段2の検出値と実際の発熱体1の温度との関係を図7に示す。発熱体1に通電を行っている状態のときには、発熱体1の温度上昇に伴い温度検出手段2の検出値は小さくなるという特性を有している。
【0007】
一方、使用者は設定したい温度をVR等の温度設定手段3により可変し、温度検出手段2の検出値が温度設定手段3において設定した設定温度に相当する信号レベル(V1)まで低下したときに、制御手段4において、発熱体1への通電を非通電とするような温度制御を行っていた。
【0008】
また、面状採暖具の使用開始時には、使用環境によっては低い温度まで面状採暖具の温度が低下していることが容易に考えられ、その場合に、使用者が温度設定手段3にて設定した設定温度で発熱体1の温度を制御し始めると、面状採暖具の表面温度の温度上昇が緩慢となり、使用者に不快感を与えてしまうことから、図8に示すように、通電開始時から一定時間は設定温度よりも高い設定温度となるように発熱体1が制御され、速く昇温させる制御方式(速熱制御方式)が取られている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
また、前記従来の構成では,一線式ヒータ線に使用されている感温体が長期間使用されなかったり、環境条件によって吸湿すると、インピーダンスが減少し、発熱線と温度検知線との線間に流れる電流が増大するという特性を有している。
【0010】
図9に、吸湿状態の発熱体と乾燥状態の発熱体とを比較したときの発熱体の温度と温度検出手段の検出値との関係を示す。
【0011】
図9から明らかなように、温度検出手段の検出値が同じ値でも、吸湿状態の発熱体の温
度TAと、乾燥状態の発熱体の温度TBは
TA>TB
となり、温度検出手段の検出値が同じ値であっても、実際の発熱体の表面温度は、吸湿状態の方が乾燥状態よりも低い。
【0012】
このことから、吸湿状態の発熱体の場合に発熱体の温度が低いにも関わらず、温度検出手段の検出値に基づいて温度制御が行われることから、使用者が設定した設定温度よりも、実際の発熱体の表面温度が低くなり、使用者に不快感を与えてしまう。
【0013】
特に、購入直後やシーズン初めは、感温体が吸湿していることが多いため,上記症状が現れやすい。
【0014】
従来の面状採暖具は、前記課題を解決するために、通電開始時から一定時間は温度設定手段による設定温度よりも高い設定温度で発熱体を立ち上げ制御する強制立ち上げ制御手段を設けている。(例えば、特許文献2参照)。
【0015】
これにより、通電初期から高い温度を目標に温度制御し、従来よりも発熱体の温度が上昇することから、吸湿した湿気を除去しやすくなることで、吸湿状態の発熱体でも、早期に正常な温度特性を回復させ、快適な暖感覚を与えることができるというものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平6−102944号公報
【特許文献2】特許第4609214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、前記従来の構成では、発熱体の吸湿の有無に関わらず、通電開始時に高い温度で強制立ち上げ制御を行うため、吸湿していない場合、表面温度が熱くなりすぎて使用者に不快感を与えてしまうという課題を有していた。また、強制立ち上げ制御時の目標温度を吸湿してない場合でも不安全および不快にならないように低めにすると、本来の吸湿している場合に十分な効果が得られないという課題および立ち上げ制御後の保温制御時においても、発熱体が吸湿している場合、使用者の設定温度より低い保温温度になるという課題を有していた。
【0018】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、発熱体の吸湿の有無に関わらず、いつも快適な暖感覚を与えることができる面状採暖具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記従来の課題を解決するために、本発明の面状採暖具は、温度設定手段による設定温度よりも高い目標温度で発熱体を立ち上げ制御するLow強制立ち上げ制御中に、発熱体の通電状態から発熱体の吸湿状態を判定する吸湿判定手段を設けたものである。これによって、発熱体が吸湿していることを判定した場合のみ、Low強制立ち上げ制御手段の設定温度よりもさらに高い目標温度で発熱体を立ち上げ制御するHi強制立ち上げ制御手段により制御目標温度を上げて通電制御するので、吸湿している場合に発熱体の表面温度が低くなるような制御となることがなく適温に昇温することができ、加えて昇温制御中に発熱体の湿気除去がしやすくなり早期に正常な温度特性を回復させ、快適な暖感覚を与えることができる。かつ、吸湿がない場合には、Hi強制立ち上げ制御にせずLow強制立ち上げ制御で立ち上げ制御され、不用意に目標温度を上げて表面温度が熱くなりすぎて使用者に不快感を与えることがなく、快適な暖感覚を与えることができる。さらに、Hi強制
立ち上げ制御手段による立ち上げ制御後の保温制御時において、Hi保温制御手段により設定温度よりもさらに高い目標温度で保温制御され、発熱体の吸湿の有無に関わらず、いつも快適な暖感覚を与えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の面状採暖具は、発熱体の吸湿の有無に関わらず、いつも快適な暖感覚を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1における面状採暖具の制御ブロック図
【図2】本発明の実施の形態1における通電開始時からの時間と制御目標温度との関係を示す模式図
【図3】本発明の実施の形態2における吸湿時と吸湿なし時の発熱体検出温度と発熱体表面温度を表したチャート
【図4】本発明の実施の形態3における面状採暖具の制御ブロック図
【図5】本発明の実施の形態4における異なる電源電圧時の発熱体検出温度および発熱体表面温度を表したチャート
【図6】従来の面状採暖具の制御ブロック図
【図7】温度検出手段の検出値と発熱体の温度との関係を表した図
【図8】通電開始時の面状採暖具の温度と時間との関係を表した図
【図9】発熱体の乾燥状態と吸湿状態との差を表した図
【発明を実施するための形態】
【0022】
第1の発明は、面状採暖具本体に配設された発熱線と温度検知線とが一体になった発熱体と、前記発熱体に接続されたコントローラと、を備え、前記コントローラは、
前記発熱体の温度を検出する温度検出手段と、
前記発熱体の制御温度を設定する温度設定手段と、
通電開始時は前記温度設定手段による設定温度よりも高い目標温度で前記発熱体を立ち上げ制御する速熱制御手段と、
前記速熱制御手段の目標温度よりも高い目標温度で前記発熱体を立ち上げ制御するLow強制立ち上げ制御手段と、
前記Low強制立ち上げ制御手段の実施の可否を判定する判定手段と、
前記Low強制立ち上げ制御手段の立ち上げ制御中の前記発熱体の通電状態から前記発熱体の吸湿状態を判定する吸湿判定手段と、
前記吸湿判定手段により前記発熱体が吸湿していると判定された場合のみ、前記Low強制立ち上げ制御手段の目標温度よりもさらに高い目標温度で前記発熱体を立ち上げ制御するHi強制立ち上げ制御手段と、
前記吸湿判定手段が前記発熱体の吸湿を判定した場合のみ、前記Hi強制立ち上げ制御手段によるHi強制立ち上げ制御終了後の保温制御時において、前記温度設定手段による設定温度より高い目標温度で前記発熱体を保温制御するHi保温制御手段と、
前記吸湿判定手段が前記発熱体は吸湿していないと判定した場合、立ち上げ制御終了後の保温制御時において、前記温度設定手段による設定温度と同じ目標温度で前記発熱体を保温制御する通常保温制御手段と、
を備えた構成とすることにより、発熱体が吸湿している場合は、従来よりさらに発熱体の湿気を除去しやすくなり、早期に正常な温度特性を回復させ、快適な暖感覚を与えることができる。発熱体の吸湿がない場合も、不用意に目標温度を上げて、表面温度が熱くなりすぎて使用者に不快感を与えることがなくなり、快適な暖感覚を与えることができる。
【0023】
この場合、特に、吸湿判定手段が発熱体の吸湿を判定した場合のみ、Hi強制立ち上げ制御手段によるHi強制立ち上げ制御終了後の保温制御時において、温度設定手段による
設定温度より高い目標温度で発熱体を保温制御するHi保温制御手段を備えた構成とすることにより、発熱体が吸湿している場合においても、保温制御時の発熱体の表面温度も低くなることがなく、快適な暖感覚を与えることができる。そして、吸湿がない場合も不用意に目標温度を上げて、発熱体の表面温度が熱くなりすぎて使用者に不快感を与えることもなくすることができる。
【0024】
第2の発明は、特に、第1の発明の吸湿判定手段を、通電開始から一定時間内の発熱体の通電オン/オフ回数を計測する計時手段とカウント手段を有し、通電開始から一定時間内の前記発熱体の通電オン/オフ回数が所定回数以上の場合、吸湿と判定する構成とすることにより、発熱体の吸湿判定が可能となる。従来技術から明らかなように、発熱体の吸湿時は、温度検出手段の検出値が同じ値でも、吸湿状態の発熱体の方が乾燥状態よりも発熱体の実際の温度は低い。このように、発熱体の温度が低いにも関わらず温度検出手段の検出値によって温度制御を行うため、発熱体の吸湿時は、一定時間内の通電オン/オフ回数が多くなる。したがって、通電開始から一定時間内の発熱体の通電オン/オフ回数より発熱体の吸湿判定が可能となる。
【0025】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、判定手段を、コントローラ内部の温度を検出する内部温度検出手段を備え、内部温度検出手段の検出した内部温度が所定温度未満であり、かつ温度設定手段の設定温度が所定レベル以上のときに、Low強制立ち上げ制御にて制御を行い、吸湿判定手段は、Low強制立ち上げ制御中のみ、吸湿判定を行う構成とすることにより、通電直後等で発熱体の温度が高い場合には、Low強制立ち上げ制御手段およびHi強制立ち上げ制御手段による温度制御と、吸湿判定を行わないことで、不用意に温度が上昇することを防ぐことができ、かつ吸湿判定の精度を上げることができる。
【0026】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明において、吸湿判定手段は、発熱体に印加されている電圧を検出する電圧検出手段を備え、電圧検出手段の検出電圧により吸湿判定の判定値を変化させる構成とすることにより、さらに吸湿判定の精度を上げることができる。
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0028】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における面状採暖具の制御ブロック図で、図2は、Hi強制立ち上げ制御とLow強制立ち上げ制御と速熱制御との温度を比較した図である。
【0029】
図1において、発熱体11は発熱線と温度検知線とが一体になった一線式ヒータ線であり、発熱体11と接続されたコントローラ15があり、温度検出手段12は、発熱体11の温度を検出する手段であり、温度設定手段13は、使用者がスライドボリューム等のような、任意に所定の設定温度に切り替えが可能なものであり、速熱制御手段16は、通電開始時に温度設定手段13の設定温度よりも高い目標温度で発熱体11の温度を立ち上げ制御するものであり、判定手段17は、Low強制立ち上げ制御手段18の実施の可否を判定する手段であり、Low強制立ち上げ制御手段18は、判定手段17にて所定の条件を満足した場合に、速熱制御手段16よりも高い目標温度で発熱体11の温度を立ち上げ制御するものである。
【0030】
そして、Hi強制立ち上げ制御手段19は、Low強制立ち上げ制御手段18の目標温度よりもさらに高い目標温度で発熱体11の温度を立ち上げ制御するもので、吸湿判定手
段20は、Low強制立ち上げ制御手段18の立ち上げ制御中の発熱体11の通電状態から発熱体11の吸湿状態を判定し、吸湿していると判定した場合のみ、Hi強制立ち上げ制御手段19での立ち上げ制御をするものである。
【0031】
さらに、Hi保温制御手段21は、Hi強制立ち上げ制御手段19によるHi強制立ち上げ制御終了後の保温制御時において、温度設定手段13による設定温度より高い目標温度で発熱体11を保温制御するものである。そして、通常保温制御手段22は、吸湿判定手段が発熱体11は吸湿していないと判定した場合、立ち上げ制御終了後の保温制御時において、温度設定手段13による設定温度と同じ目標温度で発熱体11を保温制御する構成である。吸湿判定手段20の吸湿判定方法については後述する。
【0032】
以上のように構成された面状採暖具について、以下その動作、作用を説明する。
【0033】
面状採暖具は、使用者が温度設定手段13によって設定した設定温度に早く到達させるために、速熱制御手段16において、通電開始時は、使用者が設定した設定温度よりも高い目標温度で発熱体11を通電制御し、一定時間後に設定温度で制御することが一般的である。
【0034】
しかし、前述の通り、購入直後やシーズン始めのときには、面状採暖具、特に発熱体11が吸湿していることから、温度検出手段12の検出値と発熱体11の温度との関係が変化し、使用者が意図した設定温度で制御しないことがある。
【0035】
ここで、本来の制御温度にて制御させようとすると、早急に湿気を除去し、温度検出手段12の検出値と発熱体11の温度との関係を正常な状態に戻す必要がある。
【0036】
そのために、図2のように、設定温度までの到達時間を早めるための速熱制御だけでなく、速熱制御手段16の目標温度よりも高い目標温度で発熱体11を立ち上げ制御するLow強制立ち上げ制御手段18により、速熱制御手段16による速熱温度よりも高い目標温度で発熱体11への通電制御を行うことで、発熱体11の温度をさらに上昇させることができ、発熱体11の湿気を除去しやすくする。
【0037】
吸湿判定手段20はLow強制立ち上げ制御手段18の発熱体11の通電状態から発熱体の吸湿状態を判定する。判定方法の詳細は実施の形態2にて説明する。
【0038】
吸湿判定手段20によって、発熱体11が吸湿していると判定された場合のみ、図1の(a)のルートにて、さらに高い目標温度で発熱体11を通電制御するようHi強制立ち上げ制御手段19の立ち上げ制御に切り替わる。
【0039】
以上のように、本実施の形態において、Low強制立ち上げ制御手段18の立ち上げ制御中に、吸湿判定手段20によって発熱体11が吸湿しているかどうかの判定がされて、発熱体11が吸湿している場合のみ、Low強制立ち上げ制御手段18の目標温度よりもさらに高い目標温度で発熱体11の温度を立ち上げ制御されることで、吸湿している場合は、従来よりさらに発熱体の湿気を除去しやすくなり、早期に正常な温度特性を回復させ、快適な暖感覚を与えることができる。そして、発熱体11吸湿がない場合には、Low強制立ち上げ制御手段18による立ち上げ制御が継続されて、Hi強制立ち上げ制御手段19の立ち上げ制御に切り替わることはないので、不用意に目標温度を上げて、表面温度が熱くなりすぎて使用者に不快感を与えることがなくなり、快適な暖感覚を与えることができる。
【0040】
このように、本実施の形態1において、立ち上げ制御の途中に吸湿判定手段20によっ
て発熱体11が吸湿しているかどうかが判定され、吸湿していると判定された場合は、Low強制立ち上げ制御からHi強制立ち上げ制御に切り替わる。そして、通電開始から1時間程度すると立ち上げ制御から保温制御へと移行し、使用者が温度設定手段13によって設定した設定温度に保温制御される。この保温制御においても、通電開始時と同様に、温度検出手段12の検出値が同じ値でも、吸湿状態の発熱体11の表面温度は乾燥状態の発熱体11の表面温度よりも低くなる。そこで、立ち上げ制御の途中に吸湿判定手段20で発熱体11が吸湿していると判定された場合に、Hi保温制御手段21によって、温度設定手段13による設定温度より高い目標温度で発熱体11を保温制御することで、保温制御時の発熱体11の表面温度が低くなることがなく、快適な暖感覚を与えることができる。
【0041】
また、図1の制御ブロック図のとおり、吸湿判定手段20で発熱体11が吸湿していないと判定された場合は、Hi保温制御手段21ではなく通常保温制御手段22によって、温度設定手段13による設定温度と同じ目標温度で発熱体11が保温制御されるので、発熱体11の表面温度が不用意に熱くなりすぎて使用者に不快感を与えることもなくすることができる。
【0042】
なお、図1の実施の形態1における制御ブロック図の作用を、通電開始時からの時間と制御目標温度との関係にして表したのが、図2の模式図である。通電開始後、吸湿判定手段20による吸湿判定によって、吸湿なしと判定された場合は、Low強制立ち上げ制御手段18によるLow強制立ち上げ制御が継続され、保温制御に移行してからは、通常保温制御手段22によって、温度設定手段13による設定温度と同じ目標温度で発熱体11が保温制御される。
【0043】
また通電開始後、吸湿判定手段20による吸湿判定によって、吸湿していると判定された場合は、Low強制立ち上げ制御手段18によるLow強制立ち上げ制御から、Hi強制立ち上げ制御手段19によるHi強制立ち上げ制御に切り替わり、保温制御に移行してからは、Hi保温制御手段21によって、温度設定手段13による設定温度より高い目標温度で発熱体11が保温制御される。
【0044】
このように、本実施の形態1では、コントローラ15を、吸湿判定手段20が発熱体11の吸湿を判定した場合のみ、Hi強制立ち上げ制御手段19によるHi強制立ち上げ制御終了後の保温制御時において、温度設定手段13による設定温度より高い目標温度で発熱体11を保温制御するHi保温制御手段21を備えた構成とすることにより、発熱体11が吸湿している場合においても、保温制御時の発熱体11の表面温度も低くなることがなく、快適な暖感覚を与えることができる。そして、吸湿がない場合も不用意に目標温度を上げて、発熱体11の表面温度が熱くなりすぎて使用者に不快感を与えることもなくすることができる。
【0045】
(実施の形態2)
図3は、本発明の第2の実施の形態における発熱体11が吸湿している時と吸湿していない時の発熱体表面温度および温度検出手段12での検出値(発熱体の検出温度)とを示したチャートである。図3の左側は吸湿なし時、右側は吸湿あり時のチャートである。図3のチャートにおいて、温度が高低を繰り返しているのは、温度検出手段12による検出値によって、通電オン/オフが繰り返されていることによるものである。
【0046】
従来技術である特許文献2にも記載されているように、一線式ヒータ線に使用されている発熱線と温度検知線との間の感温体が吸湿すると、感温体のインピーダンスが減少し、発熱線と温度検知線との線間に流れる電流が増大するという特性を有している。
【0047】
発熱体11である一線式ヒータ線は、本来、感温体の温度の上昇にともなって感温体のインピーダンスが減少し、発熱線と温度検知線との線間に流れる電流が増大する特性を利用して、感温体のインピーダンス変化によって生じる電流変化を温度検出手段12で直流電圧に変換して、発熱体11の温度が検出される。ところが感温体は、前記のように温度上昇だけでなく吸湿によってもインピーダンスが減少することから、発熱体11が吸湿状態であれば、図3の右側の吸湿あり時のチャートのように、発熱体11の表面温度が低いにも関わらず、温度検出手段12によって検出された発熱体11の検出温度が制御目標温度に到達したと判定して発熱体11への通電をオフするため、発熱体11への通電オン/オフ回数が多くなる。
【0048】
このことから、吸湿判定手段20は、通電開始から一定時間内の発熱体の通電オン/オフ回数を計測する計時手段とカウント手段を有し、通電開始から一定時間内の発熱体11への通電オン/オフ回数が所定回数以上の場合、吸湿と判定する構成とすることにより、発熱体11の吸湿判定が可能となる。判定時間および判定値は、発熱体11の温度特性により異なる。実施例では、20分以内に5回以上の通電オン/オフ回数がカウントされたとき吸湿と判定している。
【0049】
(実施の形態3)
図4は、本発明の第3の実施の形態における面状採暖具の制御ブロック図である。
【0050】
内部温度検出手段23は、コントローラ15の内部の温度検出するものであり、コントローラ15は発熱体11と接続されていることから、発熱体11への通電を行うと、発熱体11の温度の影響を受け,コントローラ15内部の温度が上昇する。
【0051】
この温度変化を利用し、判定手段17は、使用者が温度設定手段13にて設定する設定温度が所定レベル以上であり、かつ内部温度検出手段23にて検出したコントローラ15内部の温度が所定温度未満、例えば20℃未満のときのような温度が低い場合のみ、Low強制立ち上げ制御手段18によるLow強制立ち上げ制御を行うこととする。
【0052】
さらに、上記以外のとき、すなわち使用者が設定している設定温度が所定レベル未満、例えば低目盛の場合、もしくは通電直後等により内部温度検出手段23の検出温度が高い場合には、Low強制立ち上げ制御手段18による制御を行わずに、速熱制御手段16による速熱制御のみとする。
【0053】
また、吸湿判定手段20はLow強制立ち上げ制御手段18がLow強制立ち上げ制御を行っている場合のみ、吸湿判定を行うこととする。吸湿判定は通電開始から一定時間内の発熱体11への通電オン/オフ回数にておこなうため、面状採暖具の前回使用直後の再使用等、表面温度が十分暖まっている状態からでは、正しく判定することができない。そこで内部温度検出手段23にて検出したコントローラ15内部の温度が所定温度未満の場合のみ、吸湿判定を行う。これにより、精度のよい吸湿判定を行うことができる。
【0054】
なお、判定手段17の判定条件は、商品性や使い勝手等を考慮した上で決定するものであり、ここに記載した数値に限ったものではない。
【0055】
(実施の形態4)
図5は、本発明の第4の実施の形態における面状採暖具の異なる電源電圧時の発熱体検出温度および発熱体表面温度の関係を示したチャートである。本実施の形態における例では発熱体11に電源電圧が印加されている。図5の左側は電源電圧100V、右側は電源電圧115V印加時のチャートである。図5のチャートにおいて、温度が高低を繰り返しているのは、温度検出手段12による検出値によって、通電オン/オフが繰り返されてい
ることによるものである。
【0056】
図5から分かるように、吸湿状態が同じでも、発熱体11に印加される電圧を変化させると、発熱体11の制御状態は変化する。電圧を上げると、所定の制御温度に到達するまでの時間が短くなり、一定時間内に発熱体11をオン/オフする回数は増える。
【0057】
電源電圧が設置場所の電源事情によりばらついても、正しく吸湿判定を行うために、本発明の第4の実施の形態の例では、電圧検出手段24を設け、発熱体11に印加されている電圧を検出する。吸湿判定手段20は、電圧検出手段24の検出電圧により吸湿判定の判定値を変化させることとした。例えば、電源電圧が上がると、一定時間内に発熱体11をオン/オフする回数は増えるため、吸湿と判定する発熱体11へのオン/オフ回数の比較値を、基準の判定値よりも上げている。これにより、より精度のよい吸湿判定を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上のように、本発明にかかる面状採暖具は、一線式ヒータ線の吸湿状態を検出し、安全かつ快適な温度制御を実現できるので、感温式の発熱体を用いている機器に適用できる。
【符号の説明】
【0059】
11 発熱体
12 温度検出手段
13 温度設定手段
15 コントローラ
16 速熱制御手段
17 判定手段
18 Low強制立ち上げ制御手段
19 Hi強制立ち上げ制御手段
20 吸湿判定手段
21 Hi保温制御手段
22 通常保温制御手段
23 内部温度検出手段
24 電圧検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面状採暖具本体に配設された発熱線と温度検知線とが一体になった発熱体と、
前記発熱体に接続されたコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記発熱体の温度を検出する温度検出手段と、
前記発熱体の制御温度を設定する温度設定手段と、
通電開始時は前記温度設定手段による設定温度よりも高い目標温度で前記発熱体を立ち上げ制御する速熱制御手段と、
前記速熱制御手段の目標温度よりも高い目標温度で前記発熱体を立ち上げ制御するLow強制立ち上げ制御手段と、
前記Low強制立ち上げ制御手段の実施の可否を判定する判定手段と、
前記Low強制立ち上げ制御手段の立ち上げ制御中の前記発熱体の通電状態から前記発熱体の吸湿状態を判定する吸湿判定手段と、
前記吸湿判定手段により前記発熱体が吸湿していると判定された場合のみ、前記Low強制立ち上げ制御手段の目標温度よりもさらに高い目標温度で前記発熱体を立ち上げ制御するHi強制立ち上げ制御手段と、
前記吸湿判定手段が前記発熱体の吸湿を判定した場合のみ、前記Hi強制立ち上げ制御手段によるHi強制立ち上げ制御終了後の保温制御時において、前記温度設定手段による設定温度より高い目標温度で前記発熱体を保温制御するHi保温制御手段と、
前記吸湿判定手段が前記発熱体は吸湿していないと判定した場合、立ち上げ制御終了後の保温制御時において、前記温度設定手段による設定温度と同じ目標温度で前記発熱体を保温制御する通常保温制御手段と、
を備えた面状採暖具。
【請求項2】
前記吸湿判定手段は、通電開始から一定時間内の前記発熱体の通電オン/オフ回数を計測する計時手段とカウント手段を有し、通電開始から一定時間内の前記発熱体の通電オン/オフ回数が所定回数以上の場合、吸湿と判定することを特徴とした請求項1に記載の面状採暖具。
【請求項3】
前記判定手段は、前記コントローラ内部の温度を検出する内部温度検出手段を備え、前記内部温度検出手段の検出した内部温度が所定温度未満であり、かつ前記温度設定手段の設定温度が所定レベル以上のときに、前記Low強制立ち上げ制御手段にて立ち上げ制御を行い、前記吸湿判定手段は、前記Low強制立ち上げ手段による立ち上げ制御中のみ、吸湿判定を行うことを特徴とした請求項1または2に記載の面状採暖具。
【請求項4】
前記吸湿判定手段は、前記発熱体に印加されている電圧を検出する電圧検出手段を備え、前記電圧検出手段の検出電圧により吸湿判定の判定値を変化させることを特徴とした請求項1〜3のいずれか1項に記載の面状採暖具。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−36670(P2013−36670A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172768(P2011−172768)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】