説明

面状発熱体及び該面状発熱体を用いた給湯装置

【課題】 電気による給湯を効率的に行う給湯装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、帯状の発熱体を螺旋状に形成し、この螺旋状発熱体の長手方向両端から通電する面状発熱体1と、この面状発熱体1を収容し、該面状発熱体1の一方の側に給水口31を設け、他方の側に給湯口33を設けた収容体とを有して、面状発熱体1に通電して発熱させると共に給水口31から冷水を取り込み該冷水を加熱して給湯口33から吐出することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気による給湯を効率的に行うための面状発熱体及び該面状発熱体を用いた給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、業務用あるいは家庭用として用いられる給湯装置としては、ガス等を用いたボイラ設備によるもののようなガス給湯器が一般的であった。しかしながら、このようなボイラ設備による給湯設備の場合、ガスバーナーで冷水を加熱し、熱水として給湯する際に、例えばビルの地下室に設けられたボイラ室と上層階に設定される客室のように、冷水の加熱場所と給湯場所とが離れていることが多い。そのため、客室で蛇口を開栓してから、温水が供給されるまで、時間が掛かり、利用者は温水が出るまで待たされ、不快なばかりか、その間の冷水が廃棄されることから不経済でもあった。また、さらに閉栓されたときには、加熱場所から給湯場所までの配管内の温水は使用されることなく無駄になってしまっていた。
【0003】
一方、近年になって電気ヒータによる給湯設備を用いたものも普及しつつある。
【0004】
例えば、図4に示す電気式の給湯設備の場合、加熱槽103に給水管131から給水された冷水は電気ヒータ101により加熱され、給湯管133から配水されるものである。また加熱槽103内の電気ヒータ101は電源ケーブル113を介して接続されるコントローラ105により、通電される電流値が設定される(例えば特許文献1参照)。
【0005】
図4に示す電気式の給湯設備の場合、例えば連続して給湯された場合には、給水管131から給水された冷水を所定の温度まで加熱しながら給湯することになるが、給湯量が多い場合には加熱が追いつかなくなることも想定される。そのため通常は常に加熱槽103に熱湯を貯めておき、蛇口の開栓に応じて加熱槽103内に貯められた熱湯を給湯するようにしている。
【0006】
しかしながら、加熱槽103内に貯められた熱湯は、適宜加熱して所定の湯温を維持するようにしなければならず、やはり不経済となることが想定される。
【0007】
また、このような経済性に鑑みて改善されたものも知られる。例えば特許文献2に記載の電気給湯器は、湯切れの心配が無く、かつ熱効率の良いことが効果として挙げられている(特許文献2、段落番号0005参照)。
【特許文献1】特開平8−75253号
【特許文献2】特開2006−84159号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載の電気給湯器は、貯湯槽内給水管は直径15〜25mmの銅パイプであり、この銅パイプに内装される発熱ヒータは長さ25m〜35mとかなり大掛かりな加熱装置が記載されており、その設置場所は有る程度、制限されることが予想される。そのため、さらに小型化された給湯設備の提供が要望されている。
【0009】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、その目的は、非常に小型で、かつ熱効率に優れた面状発熱体及び該面状発熱体を用いた給湯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、請求項1の面状発熱体は、帯状の発熱体を螺旋状に形成し、かつ帯状の発熱体の長手方向両端に通電のための接点を設けたことを要旨とする。
【0011】
請求項1の面状発熱体によれば、帯状の発熱体を螺旋状に形成したことから、加熱対象の水溶液との接触時間を長くすることができ、これにより水溶液を短時間で加熱することが可能となる。
【0012】
請求項2の面状発熱体は、少なくとも前記請求項1記載の発熱体と接点が電気的に絶縁性を有する樹脂で被覆されることを要旨とする。
【0013】
請求項2の面状発熱体によれば、発熱体と接点が電気的に絶縁性を有する樹脂で被覆されることから、電気の漏洩を防止することが可能となる。
【0014】
請求項3の面状発熱体を用いた給湯装置は、帯状の発熱体を螺旋状に形成し、この螺旋状発熱体の長手方向両端に通電のための接点を設けた面状発熱体と、この面状発熱体を収容し、該面状発熱体の一方の側に対応する部分に給水口を設け、他方の側に対応する部分に給湯口を設けた収容体とを有して、前記面状発熱体に前記接点を介して通電して当該面状発熱体を発熱させると共に給水口から冷水を取り込み該冷水を加熱して給湯口から吐出することを要旨とする。
【0015】
請求項3の給湯装置によれば、帯状の発熱体を螺旋状に形成したことから、加熱対象の水との接触時間を長くすることができ、これにより水を短時間で加熱し、所定の温度に加熱された温水を給湯口から提供することが可能となる。
【0016】
請求項4記載の給湯装置は、前記請求項3記載の面状発熱体が電気的に絶縁性を有する樹脂で被覆されることを要旨とする。
【0017】
請求項4の給湯装置によれば、発熱体と接点が電気的に絶縁性を有する樹脂で被覆されることから、電気の漏洩を防止することが可能となる。
【0018】
請求項5記載の給湯装置は、さらに面状発熱体に供給する電力のコントローラを備え、設定された湯温に応じて面状発熱体に供給する電力を調整することを要旨とする。
【0019】
請求項5の給湯装置によれば、設定された湯温に応じて面状発熱体に供給する電力を調整することができるので、つねに設定された湯温のお湯を供給することが可能となる。
【0020】
請求項6記載の給湯装置は、さらに前記給水口若しくは給湯口の少なくともいずれかに温度センサを設け、面状発熱体に供給する電力を調整することを要旨とする。
【0021】
請求項6の給湯装置によれば、給水口若しくは給湯口の少なくともいずれかに温度センサが設けられていることから、より的確な温度調整を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、温水や熱湯が必要なときにすぐに給湯することができ、また効率よく加熱することから経済性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、本発明に係る面状発熱体を模式的に示す図であり、図2は本面状発熱体を用いた給湯装置の一つの実施の形態を示す図である。
【0025】
まず、図1を参照して本実施の形態の加熱部3の構成を説明する。図1に示すように幅3〜4cm程度の帯状の発熱体を螺旋状に形成し、この螺旋状の面状発熱体1を円管(パイプ)状の収容容器に収容して加熱部3が構成される。この面状発熱体1の両側端部に電源線13との接続を行うための図示しない電気的接点が帯状の発熱体の全幅にわたって形成される。つまり幅3〜4cm程度で、長さ数mm〜2cm程度となる。さらに、この接点に該面状発熱体1に電力を供給するための電源11が電源線13を介して接続される。
【0026】
そして加熱部3の一側に設けられた給水口31から給水された冷水が、前記電源11から供給された電力により加熱された面状発熱体1の螺旋面の間を給湯口33まで流れる間に加熱されて、該給湯口33から温水が吐水され、給湯される。すなわち冷水は、給水口31から給湯口33までの間に、螺旋状に形成された面状発熱体に沿って流れるため、加熱部分との接触面積・接触時間が大きいため、速やかに所定の温度に達して、給湯口33から吐水される。
【0027】
なお、本実施の形態にあっては、面状発熱体1の材質としてはニッケル・インジウム合金が用いられているが、いわゆる通常のニクロム線を用いるようにしても良い。また、その螺旋状に形成する成型方法としては、幅8cm程の帯状の発熱体の両端をそれぞれ逆方向に10回転ほど回転させて、長さ15cmほどの螺旋形状に成形した後に、この螺旋形状を固定する方法でも良いが、いわゆる粉末冶金によっても良い。
【0028】
このようにして形成した後に、この螺旋状の面状発熱体1の両端の各接点に電源線13を電気的に、例えば半田付けや圧着によって導通させて、それぞれ接続する。さらに面状発熱体1全体と両端の電源線13との接続部分全体を、絶縁性に優れた樹脂、例えばエポキシ系樹脂で全体を被覆する。その後、さらに飲料水と接触しても安全性に優れかつ120℃以上まで安定して機能する任意の樹脂で被覆する。
【0029】
このようにして形成された螺旋状の面状発熱体1を耐熱セラミッククスからなるパイプ状の収容体に収容した後に、収容体の電源線13の取り出し口を封止して加熱部3を構成する。このとき収容体は、金属、樹脂等であっても良いが、金属のように熱伝導性に優れた材質の場合、保温性についての配慮は必要になり、また樹脂の場合には温度による経年変化等に配慮が必要となる。
【0030】
次に図2を参照して、図1に示した加熱部3を組み込んだ給湯装置、およびこの給湯装置を組み込んだ洗面台7について説明する。
【0031】
まず洗面台7について説明すると、洗面台7は、水量及び水温を調整するための操作ハンドル71と、この操作ハンドル71で調整された水量及び水温の水若しくは温水を吐出する蛇口73と、この蛇口73から吐出された水を受け、或いは貯水するボール部75と、このボール部75に貯水された水を配水する排水口77によって構成される。
【0032】
操作ハンドル71の操作手順は任意であるが、ここでは下記のように設定する。操作ハンドル71の垂直(鉛直)方向の回転量、すなわち操作ハンドル71の上方向の操作で蛇口73から水が吐出され、またその上方向への操作量で蛇口73からの水量が調整される。また下方向の操作で蛇口73からの吐出されている水の水量が絞られ、操作ハンドル71が最下端に位置したときに水は止められる。 また操作ハンドル71の水平方向の回転量、すなわち操作ハンドル71の左方向の操作で蛇口73から温水が吐出される。
【0033】
この洗面台7の内部には、加熱部3とコントローラ5で構成される100V、10kw程度の規模の給湯装置9が収容される。加熱部3は断熱・漏電防止ケース35に封止される。この断熱・漏電防止ケース35は、加熱部3及び電気的接点含む全体を電気的に絶縁性を有する樹脂で被覆するためのものである。
【0034】
次に図3を参照して、コントローラ5の構成とその作用について説明する。
【0035】
図3に示すコントローラ5は、水量設定部51と水温設定部53と水温センサ55及び電流値制御部57によって構成される。
【0036】
水量設定部51は、前記蛇口73の上部に取り付けられた操作ハンドル71の垂直(鉛直)方向の回転量、すなわち操作ハンドル71の上下方向の操作量で当該蛇口73からの吐出水量が調整されたときに、この操作ハンドル71の垂直方向の回転量から蛇口73からの吐出水量値を検出し、そのときの水量値として設定して、後述する電流値制御部57にこの設定した水量値を出力する。
【0037】
水温設定部53は前記蛇口73の上部に取り付けられた操作ハンドル71の水平方向の回転量、すなわち操作ハンドル71の水平方向の操作量で当該蛇口73からの吐出水の水温が調整されたときに、この操作ハンドル71の水平方向の回転量から蛇口73からの吐出水の水温値を検出し、そのときの水温値として設定して、後述する電流値制御部57にこの設定した水温値を出力する。
【0038】
また水温センサ55は、加熱部3の給水口31近傍に設けられ、加熱部3に供給される水の水温を測定し、この水温を後述する電流値制御部57に出力する。また、この水温センサ55を加熱部3の給湯口33に設けて、給湯温度を測定し、この給湯温度から、さらに後述する電流値制御部57にこの測定した水温値を還元して、さらに微細な温度制御が行えるようにしても良い。
【0039】
電流値制御部57は、水量設定部51から入力される設定水量値と水温設定部53から入力される設定水温値および水温センサ55から入力される水温から、加熱部3の面状発熱体1に流す電流値を設定して、電源11からの電力を制御する。
【0040】
また、電流値制御部57における電流値の制御では、最大電力の制限から、湯温(面状発熱体1で加温する温度差)が高く設定された場合には、水量を制限するようにしても良い。
【0041】
なお、以上の説明においては、加熱部を組み込んだ給湯装置、およびこの給湯装置を組み込んだ洗面台についての一例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではないことは言うまでもないことである。例えば、熱湯や温水、あるいは高温の水溶液等を使用する工場、例えばクリーニング業では、水量(大水量)に応じて並列に本発明装置を使用したり、温度(熱湯)に応じて直列に使用したり、消費電力が大(200v、20kw〜)であるもの等と、その他のさまざまな利用条件に応じて適宜、大きさや外形(例えば面状発熱体のターン数、帯幅、板厚さ、螺旋程度)変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の面状発熱体と該面状発熱体を組み込んだ加熱部の一つの実施の形態の構成を示す図である。
【図2】本発明の面状発熱体を用いた給湯装置の一つの実施の形態の構成を示す図である。
【図3】本発明に係る面状発熱体で用いられるコントローラの構成を示すブロック図である。
【図4】従来の給湯器の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1…面状発熱体
3…加熱部
5…コントローラ
7…洗面台
9…給湯装置
11…電源
11a…電源ケーブル
13…電源線
31…給水口
31a…給水管
33…給湯口
33a…給湯管
35…断熱・漏電防止ケース
51…水量設定部
53…水温設定部
55…水温センサ
57…電流値制御部
71…操作ハンドル
73…蛇口
75…ボール部
77…排水口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の発熱体を螺旋状に形成し、かつ帯状の発熱体の長手方向両端に通電のための接点を設けたことを特徴とする面状発熱体。
【請求項2】
少なくとも前記発熱体と接点が電気的に絶縁性を有する樹脂で被覆されることを特徴とする請求項1記載の面状発熱体。
【請求項3】
帯状の発熱体を螺旋状に形成し、この螺旋状発熱体の長手方向両端に通電のための接点を設けた面状発熱体と、
この面状発熱体を収容し、該面状発熱体の一方の側に対応する部分に給水口を設け、他方の側に対応する部分に給湯口を設けた収容体と
を有して、前記面状発熱体に前記接点を介して通電して当該面状発熱体を発熱させると共に給水口から冷水を取り込み該冷水を加熱して給湯口から吐出することを特徴とする面状発熱体を用いた給湯装置。
【請求項4】
前記面状発熱体が電気的に絶縁性を有する樹脂で被覆されることを特徴とする請求項3記載の給湯装置。
【請求項5】
前記給湯装置は、さらに面状発熱体に供給する電力のコントローラを備え、設定された湯温に応じて面状発熱体に供給する電力を調整することを特徴とする請求項3記載の給湯装置。
【請求項6】
前記給湯装置は、さらに前記給水口若しくは給湯口の少なくともいずれかに温度センサを設け、面状発熱体に供給する電力を調整することを特徴とする請求項5記載の給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−123625(P2009−123625A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298450(P2007−298450)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(300003156)東和通商株式会社 (2)
【Fターム(参考)】