説明

面状発熱体埋設舗装構造

【課題】施工に際して路面を掘り起こすことなく舗装面Rに対して極めて薄肉に敷設するだけで済み、施工作業時間の短縮が図れて材料費・施工費が少なくて済む面状発熱体埋設舗装構造を提供すること。
【解決手段】この面状発熱体埋設舗装構造10は、舗装面Rに、有機高分子と充填剤と硬化剤と硬化促進剤とを含み混練してなる第1の舗装用樹脂組成物を薄膜状に塗布してなる下地断熱層11が形成され、下地断熱層11の上に面状発熱体12が敷設され、さらに面状発熱体12の上に、有機高分子と充填剤と硬化剤と硬化促進剤とを含み混練してなる第2の舗装用樹脂組成物を薄膜状に塗布してなる表面層13が形成され、面状発熱体12に給電し得るように構成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積雪寒冷地の舗装された歩道、車道等の路面あるいは駐車場、玄関先ポーチ等の舗装面の積雪を融雪しさらに路面凍結を防止する面状発熱体埋設舗装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、面状発熱体埋設舗装構造としては、例えば、特許文献1にアスファルト舗装構造が開示されている。このアスファルト舗装構造は、例えば、(イ)下地アスファルト層と、(ロ)布帛に中実ビーズを分散してなる断熱部材層と、(ハ)アスファルトを含むシート層と、(ニ)アスファルト遮蔽シート層と、(ホ)軟質シート層と、(へ)線面発熱体と、(ト)軟質シート層と、(チ)アスファルト遮蔽シート層と、(リ)アスファルトを含むシート層と、(ヌ)表面アスファルト層と、を順に積層してなる多層構造である。
【特許文献1】特開2006−328747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1のアスファルト舗装構造は、施工に際して路面を深く掘り起こし、線面発熱体の敷設前に5種類の材料を5層に敷設し、敷設後には4種類の材料を4層に敷設するものであり、熟練を要し、施工作業に時間がかかり、材料費・施工費が多くかかっている。
本発明は、上記事情に鑑み案出されたもので、その目的とするところは、施工に際して路面を掘り起こすことなく舗装面に対して極めて薄肉に敷設するだけで済み、施工作業時間の短縮が図れ材料費・施工費が少なくて済む面状発熱体埋設舗装構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、本発明の面状発熱体埋設舗装構造は、舗装面に、有機高分子と充填剤と硬化剤と硬化促進剤とを含み混練してなる第1の舗装用樹脂組成物を薄膜状に塗布してなる下地断熱層が形成され、該下地断熱層の上に面状発熱体が敷設され、さらに該面状発熱体の上に、有機高分子と充填剤と硬化剤と硬化促進剤とを含み混練してなる第2の舗装用樹脂組成物を薄膜状に塗布してなる表面層が形成され、前記面状発熱体に給電し得るように構成されている、ことを特徴とする。
【0005】
上記構成によれば、施工に際して路面を掘り起こすことがなく、窪みがあれば埋めて平坦にして左官鏝によるコーティングが可能として、線面発熱体の敷設前に1種類の材料(舗装用樹脂組成物)を1層に敷設し、敷設後にも1種類の材料(舗装用樹脂組成物)を1層に敷設するものであり、左官鏝による薄膜コーティングであることにより熟練を必要とせず、施工作業が短時間で済み、材料費・施工費が少なくて済む。
面状発熱体に給電すると、該面状発熱体が発熱する。舗装面の上に下地断熱層を薄膜状に塗布形成しその上に面状発熱体を敷設したので、面状発熱体の発熱は、下地断熱層により舗装面への熱伝達量を少なく抑えることができる。そして、面状発熱体の発熱は、表面層を伝熱加熱するので、該表面層の上の積雪を融雪しあるいは凍結を防止することができる。
【0006】
上記構成の下地断熱層は、第1の舗装用樹脂組成物を構成する有機高分子または充填剤について断熱性が良好なものが選択され、該第1の舗装用樹脂組成物が薄膜状に塗布されてなることが好ましい。この構成にすると、伝熱移動が下地断熱層の方向でなく表面層の方向に優先するので、面状発熱体の発熱が融雪しあるいは凍結防止に一層効果的に使われる。
【0007】
また上記構成の面状発熱体は、網目状又は複数の孔が開いていることが好ましい。この構成にすると、面状発熱体の孔が開いていないところでは、下地断熱層と面状発熱体と表面層であり、面状発熱体の複数の孔が開いたところでは、下地断熱層と表面層とが2層一体になり、そして、既存の舗装面に下地断熱層が強く接着形成されるので、車両の重荷重による圧縮力、剪断力に対し充分な耐久性を持ち、断線事故が生じない面状発熱体埋設舗装構造となる。
【0008】
上記構成によれば、舗装された歩道、車道等の路面あるいは駐車場、玄関先ポーチ等の舗装面に設置し、面状発熱体に給電することにより、積雪を融雪しあるいは凍結を防止することができ、下地断熱層と表面層が、いずれも有機高分子と充填剤と硬化剤と硬化促進剤とを含み混練してなる舗装用樹脂組成物を塗布形成してなるので、既存の舗装面に高い接着性を有し、乾燥硬化が速く、厚みを例えばそれぞれ2mm位に薄く左官鏝で塗布形成することができるから、路面に他の接着剤の下地塗膜を形成しないで済み、舗装面に高い接着力を持つ下地断熱層を形成することができ、下地断熱層の上に面状発熱体を良好に接着させることができ、さらに、下地断熱層と面状発熱体の上に高い接着力を持つ表面層を形成することができる。
【0009】
また上記構成によれば、下地断熱層と表面層の厚みを例えばそれぞれ2mm位に薄くすることができるので、左官鏝で短時間で塗布形成することができるので、材料ボリュームが少なく、さらに厚みが薄いので乾燥硬化が速いから短時間で施工を完了させることができ低コストで施工することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の面状発熱体埋設舗装構造は、積雪地方・寒冷地方に好適であり、施工に際して路面を掘り起こすことなく舗装面に対して極めて薄肉に敷設するだけで済み、施工作業時間の短縮が図れて材料費・施工費が少なくて済み、薄肉構造であるので、積雪・寒冷期が過ぎれば、グラインダーによる除去が容易であり、かつ路面を掘り起こしていないから、原状復帰が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の面状発熱体埋設舗装構造の実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1に示すように、本発明の面状発熱体埋設舗装構造10は、舗装面Rに、有機高分子と充填剤と硬化剤と硬化促進剤とを含み混練してなる第1の舗装用樹脂組成物を薄膜状に塗布してなる下地断熱層11が形成され、該下地断熱層11の上に面状発熱体12が敷設され、さらに該面状発熱体12の上に、有機高分子と充填剤と硬化剤と硬化促進剤とを含み混練してなる第2の舗装用樹脂組成物を薄膜状に塗布してなる表面層13が形成され、前記面状発熱体12に給電し得るように構成されている、ことを特徴とする。
【0013】
施工対象の舗装面Rは、舗装された歩道、車道等の路面あるいは駐車場、玄関先ポーチ等の舗装面Rであり、表面がアスファルトやアンツーカ、あるいはコンクリートであってよい。舗装面Rは、施工に際して、窪みの穴埋めを行い、表面の浮塵は、バキュームにより取り除いて、第1の舗装用樹脂組成物の塗布・接着が良好となるように維持する。
【0014】
下地断熱層11は、有機高分子と充填剤と硬化剤と硬化促進剤とを含み混練してなる第1の舗装用樹脂組成物を舗装面Rに薄膜状に塗布してなる。
また表面層13は、有機高分子と充填剤と硬化剤と硬化促進剤とを含み混練してなる第2の舗装用樹脂組成物を面状発熱体12の上に薄膜状に塗布してなる。下地断熱層11の厚みは、例えば2mmとするのが好ましい。表面層13の厚みは、例えば2mm〜4mmとするのが好ましい。
【0015】
ここで使用する有機高分子は、ビニルエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂等から適宜に選ばれる。有機高分子は低臭性であることが望ましい。充填剤としては、硅砂や粉砕セラミック等の骨材、タルクやシリカの無機化合物から適宜に選ばれる。硬化剤と硬化促進剤は、有機高分子に適したものが適宜に選ばれる。
【0016】
下地断熱層11は、第1の舗装用樹脂組成物を構成する有機高分子または充填剤について断熱性が良好なものが選択され、該第1の舗装用樹脂組成物が薄膜状に塗布されてなることが好ましい。例えば、下地断熱層11は、有機高分子に関し、例えば、ウレタン樹脂、フェノール樹脂を選択することにより、あるいは廃棄ガラスから製造したミクロン単位の独立気泡を持ち断熱性を有する発泡ガラス骨材やその他の断熱性骨材を含ませることにより、断熱性が良い第1の舗装用樹脂組成物を薄膜状に塗布してなることが好ましい。
また、表面層13は、第2の舗装用樹脂組成物を構成する有機高分子または充填剤について伝熱性が良好なものが選択され、該第1の舗装用樹脂組成物が薄膜状に塗布されてなることが好ましい。例えば、表面層13は、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を選択することにより、あるいは硅砂や粉砕セラミック等の骨材を含ませることにより、伝熱性が良い第2の舗装用樹脂組成物を薄膜状に塗布してなることが好ましい。
この構成にすると、面状発熱体12の発熱の伝熱移動が下地断熱層11の方向でなく表面層13の方向に優先するので、面状発熱体12の発熱が融雪しあるいは凍結防止に効果的なエネルギー消費になる。なお、硅砂や粉砕セラミック等の骨材の色を選択することにより、表面層13を所望の色に着色できる。粉砕セラミック等を用いると、表面層13の滑りが有効に防止される。
【0017】
面状発熱体12は、(イ)導電性繊維を網目状の織り込み端縁に電極を備えた面状発熱体12、(ロ)極細の導電線(銅線)を複数織り込んだ布に特殊カーボン導電塗料を含浸塗布し、更にこれを耐熱性の軟質塩化ビニルシートで両面を熱融着絶縁したもの、(ハ)ニクロム線を蛇行配線したもの、(ニ)耐久性のあるフィルムに抵抗金属箔を印刷したもの、(ホ)導電性カーボンを合成ゴムに練り込んだもの、の中から適宜に選ばれる。(イ)または(ホ)のものが好ましい。
【0018】
また面状発熱体12は、網目状又は複数の孔が開いていることが好ましい。この構成にすると、面状発熱体12の孔が開いていないところでは、下地断熱層11と面状発熱体12と表面層13であり、面状発熱体12の複数の孔が開いたところでは、下地断熱層11と表面層13とが2層一体になり、そして、既存の舗装面Rに下地断熱層11が強く接着形成されるので、車両の重荷重による圧縮力、剪断力に対し充分な耐久性を持ち、断線事故が生じない面状発熱体埋設舗装構造10となる。
【0019】
面状発熱体12への給電する給電線は、面状発熱体埋設舗装構造の施工場所が歩道、車道等の路面あるいは駐車場等である場合には、施工に先行して路面内に埋設し、図1に示すように、路面の両側に給電線の端部14a、14bを立ち上げ、下地断熱層11の塗布形成前に導線部をテープを巻いて養生し下地断熱層11の塗布形成後にテープを巻き解いて、面状発熱体12の端部と結線する。
また、面状発熱体埋設舗装構造の施工場所がコンビニエンスストアや玄関先舗装面等である場合には、給電線を地上に露出させても良い。この場合、面状発熱体12の対給電線結線部には、テープを巻く等により養生し表面層13の塗布形成後にテープを除いて、該面状発熱体12の対給電線結線部に給電線を結線する。給電電力は、電流及び電圧を人体感電事故が起きる惧れがない大きさに設定する。
【0020】
上記構成によれば、舗装された歩道、車道等の路面あるいは駐車場、玄関先ポーチ等の舗装面Rに設置し、面状発熱体12に給電することにより、積雪を融雪しあるいは凍結を防止することができる。
【0021】
上記構成によれば、下地断熱層11を形成する第1の舗装用樹脂組成物と、表面層13を形成する第2の舗装用樹脂組成物は、いずれも有機高分子と充填剤と硬化剤と硬化促進剤とを含み混練してなり、第1の舗装用樹脂組成物は、既存の舗装面Rに対して高い接着性を有し、乾燥硬化が速く、厚みを例えばそれぞれ2mm位に薄く左官鏝で塗布形成することができるから、路面に他の接着剤の下地塗膜を形成しないて済み、舗装面Rに高い接着力を持つ下地断熱層11を短時間で形成することができ、下地断熱層11の上に面状発熱体12を良好に密着・接着させることができ、さらに、第2の舗装用樹脂組成物は、下地断熱層11及び面状発熱体12に対して高い接着性を有し、乾燥硬化が速く、厚みを例えばそれぞれ2mm位に薄く左官鏝で塗布形成することができるから、下地断熱層11と面状発熱体12の上に高い接着力を持つ表面層13を短時間で形成することができる。
【0022】
上記構成によれば、下地断熱層11と表面層13の厚みを例えばそれぞれ2mm位に薄くすることができるので、左官鏝で短時間で塗布形成することができ、材料ボリュームが少なく、低コストで施工することができ、さらに厚みが薄いので乾燥硬化が速いから短時間で施工を完了させることができる。従って、本発明の面状発熱体埋設舗装構造10は、施工に際して路面を掘り起こすことなく舗装面Rに対して極めて薄肉に敷設するだけで済み、施工作業時間の短縮が図れて材料費・施工費が少なくて済む。
【0023】
上記構成によれば、積雪地方・寒冷地方に好適であり、施工に際して路面を掘り起こすことなく舗装面Rに対して極めて薄肉に敷設するだけで済み、積雪・寒冷期が過ぎれば、グラインダーによる除去が容易であり、かつ路面を掘り起こしていないから、原状復帰が容易である。
【0024】
〔その他の実施形態〕
本発明は、上記の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態を技術的範囲に含まれるものである。
【0025】
本発明は、玄関先等に合板を被せ四隅を堅固に固定し、該合板の上に、下地断熱層11を塗布形成し、面状発熱体12を敷設し、その上に、第2の舗装用樹脂組成物を薄膜状に塗布し表面層13を形成する場合も含む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施形態に係る面状発熱体埋設舗装構造の縦断面図である。
【符号の説明】
【0027】
10 面状発熱体埋設舗装構造
R 舗装面
11 下地断熱層
12 面状発熱体
13 表面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装面に、有機高分子と充填剤と硬化剤と硬化促進剤とを含み混練してなる第1の舗装用樹脂組成物を薄膜状に塗布してなる下地断熱層が形成され、該下地断熱層の上に面状発熱体が敷設され、さらに該面状発熱体の上に、有機高分子と充填剤と硬化剤と硬化促進剤とを含み混練してなる第2の舗装用樹脂組成物を薄膜状に塗布してなる表面層が形成され、
前記面状発熱体に給電し得るように構成されている、
ことを特徴とする面状発熱体埋設舗装構造。
【請求項2】
前記下地断熱層は、第1の舗装用樹脂組成物を構成する有機高分子または充填剤について断熱性が良好なものが選択され、該第1の舗装用樹脂組成物が薄膜状に塗布されてなる、
ことを特徴とする請求項1に記載の面状発熱体埋設舗装構造。
【請求項3】
前記面状発熱体は、網目状又は複数の孔が開いている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の面状発熱体埋設舗装構造。

【図1】
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【公開番号】特開2010−112132(P2010−112132A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288209(P2008−288209)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(508334786)
【Fターム(参考)】