説明

面状発熱体

【課題】ドアミラーなど加熱対象物に貼り付ける際に、加熱対象物との間に熱伝導を阻害する空気層が形成されるのを防止した面状発熱体10を提供する。
【解決手段】複数の電極11,12と、この電極11,12間で通電されることにより発熱する発熱部13が、シート又はフィルム状の絶縁層14と接着層15との間に配置され、厚さ方向へ貫通した所要数の穴10aが開設されている。加熱対象物へ貼り付ける際に、接着層15と加熱対象物との間に空気が閉じ込められても、この空気は、穴10aを通じて容易に排出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両用ドアミラーなどに曇りや霜の除去のために取り付けられる面状発熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
面状発熱体は、例えば車両のドアミラーの背面に貼着されて、ドアミラーの表面に空気中の水蒸気が凝結することによる曇りや霜を除去するためのドアミラー加熱手段として用いられる。図3は、従来の面状発熱体における電極パターンの一例を示す平面図、図4は、従来の面状発熱体の一部を、図3のIV−IV線で切断して示す断面図である。
【0003】
図4に示されるように、面状発熱体100は、第一の電極101及び第二の電極102と、この第一の電極101及び第二の電極102の片側を覆うように配置された発熱部103を、電気絶縁性の材料からなるベースフィルム104と、両面接着テープ等からなる接着層105との間に挟み込むように一体的に設けたものである。
【0004】
第一の電極101及び第二の電極102は、発熱部103に接合した銅箔を、図3に示されるような互いに入り組んだ櫛歯状など所定のパターンにエッチング加工したものであって、それぞれ接続端子101a,102aを介して電圧が印加されるようになっている。また、発熱部103は、ポリマーにカーボン粒子あるいは導電性金属粒子を含有させたPTCインク組成物を、均一な層厚で印刷あるいは塗布し、乾燥させることにより形成した導電性の薄膜であって、電極101,102の櫛歯部101b,102b間で通電されて発熱するものである。
【0005】
すなわち、上記構成の面状発熱体100は、不図示のドアミラーの背面等へ接着層105によって貼着され、通電して発熱させることによって前記ドアミラー等を加熱し、その表面の曇りや霜を除去するものである(例えば下記の特許文献参照)。
【特許文献1】特開平9−13477号公報
【特許文献2】特開2006−324164号公報
【0006】
しかしながら、この種の面状発熱体100は、接着層105によってドアミラー等の背面へ貼り付ける際に、接着層105とドアミラー等の背面との間に空気が閉じ込められて空気層が形成されてしまった場合、このような空気層は熱伝導性が低いため、面状発熱体100からドアミラーへの伝熱が阻害され、ドアミラー表面の曇りや霜の除去効率が低下する問題がある。したがって、面状発熱体100を貼り付ける作業には細心の注意をする必要があり、作業性が悪かった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、ドアミラーなど加熱対象物に貼り付ける際に、加熱対象物との間に熱伝導を阻害する空気層が形成されるのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、本発明に係る面状発熱体は、複数の電極と、この複数の電極間で通電されることにより発熱する発熱部が、シート又はフィルム状の絶縁層と接着層との間に配置され、厚さ方向へ貫通した所要数の穴が開設されたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る面状発熱体によれば、加熱対象物へ貼り付ける際に、接着層と加熱対象物との間に空気が閉じ込められても、この空気を、厚さ方向へ貫通した穴を通じて容易に排出することができる。したがって作業性が向上する。また、面状発熱体と加熱対象物との間に空気層が形成されるのを防止して、加熱対象物への伝熱を良好にすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る面状発熱体を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明に係る面状発熱体における電極パターンの一例を示す平面図、図2は、本発明に係る面状発熱体の一部を、図1のII−II線で切断して示す断面図である。
【0011】
図2に示されるように、本発明に係る面状発熱体10は、第一の電極11及び第二の電極12と、この第一の電極11及び第二の電極12の片側を覆うように配置された抵抗発熱層13を、ベースフィルム14と、接着層15との間に挟み込むように一体的に設けた積層構造を有するものである。
【0012】
第一の電極11及び第二の電極12は、抵抗発熱層13に銅箔を接合し、この銅箔を、図1に示されるような互いに入り組んだ櫛歯状など所定のパターンにエッチング加工したものであって、それぞれ接続端子11a,12aを介して電圧が印加されるようになっている。
【0013】
抵抗発熱層13は、請求項1に記載された発熱部に相当するものであって、ポリマーにカーボン粒子あるいは導電性金属粒子を含有させたPTCインク組成物を、均一な層厚で印刷あるいは塗布し、乾燥させることにより形成した導電性の薄膜で、第一の電極11と第二の電極12の櫛歯部11b,12b間で、この櫛歯部11b,12bの縁と直交する方向へ電流が流れることによって発熱するものである。
【0014】
ベースフィルム14は請求項1に記載された絶縁層に相当するものであって、電気絶縁性が高く、かつ可撓性を有する合成樹脂フィルムからなる。
【0015】
接着層15としては、熱伝導性が高い合成樹脂からなる両面接着テープが好適に採用される。
【0016】
上述のような積層構造を有する面状発熱体10には、その厚さ方向へ貫通した複数の穴10aが適当な間隔で開設されている。また、第一の電極11及び第二の電極12は、これらの穴10aを避けるように延長されており、言い換えれば、各穴10aの周囲には、第一の電極11及び第二の電極12や抵抗発熱層13が形成されていない円形の領域10bが設けられている。
【0017】
以上のように構成された面状発熱体10は、例えば車両における不図示のドアミラーの背面に貼着され、接続端子11a,12aに接続される通電手段を介して第一の電極11及び第二の電極12間に電圧が印加されることによって抵抗発熱層13が通電されて発熱し、その熱がドアミラーへ伝導されて、ドアミラーの表面に空気中の水蒸気が凝結することによる曇りや霜を除去するものである。
【0018】
そしてこの面状発熱体10は、接着層15によってドアミラー等加熱対象物の背面へ貼り付ける際に、接着層15とドアミラー等の背面との間の残存空気が、面状発熱体10の厚さ方向へ貫通した穴10aから排出される。また、もし前記残存空気が接着層15とドアミラー等の背面との間に閉じ込められた場合も、ベースフィルム14の表面を適当な方向へしごくようにすることによって、前記残存空気を複数の穴10aのいずれかから容易に排出することができる。
【0019】
このため、面状発熱体10を貼り付ける際の作業性が向上する。また、面状発熱体10の接着面に、伝熱を阻害する空気層が形成されてしまうのを防止して、ドアミラー等加熱対象物に対する加熱効率の低下を有効に防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る面状発熱体における電極パターンの一例を示す平面図である。
【図2】本発明に係る面状発熱体の一部を、図1のII−II線で切断して示す断面図である。
【図3】従来の面状発熱体における電極パターンの一例を示す平面図である。
【図4】従来の面状発熱体の一部を、図3のIV−IV線で切断して示す断面図である。
【符号の説明】
【0021】
10 面状発熱体
10a 穴
11 第一の電極
12 第二の電極
13 抵抗発熱層(発熱部)
14 ベースフィルム(絶縁層)
15 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極と、この複数の電極間で通電されることにより発熱する発熱部が、シート又はフィルム状の絶縁層と接着層との間に配置され、厚さ方向へ貫通した所要数の穴が開設されたことを特徴とする面状発熱体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−3606(P2010−3606A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162879(P2008−162879)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】