説明

面状発熱体

【課題】安全性が高く,使い勝手に優れた面状発熱体を提供することを目的とする。
【解決手段】電気絶縁性基材1と、前記電気絶縁性基材1の両面a,1bに各々対向して形成され、電源に接続した一対の主電極2a,2b、前記主電極2a,2bから個々に枝別れした複数の枝電極3a,3b、および前記枝電極3a,3bからさらに分岐され、かつ対向する位置に配設された複数の接続電極4a,4bとを具備し、前記接続電極4a,4b間に電気的に接続して構成された複数の抵抗体5aとを備えたもので、安全性が高く、使い勝手に優れた面状発熱体を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電気床暖房パネル、電気カーペットなどに使われる面状発熱体に関するものであり、特に電極、抵抗体が同一面上で形成される面状発熱体の電極および抵抗体のパターン構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の面状発熱体は、ポリエステルフィルムなどの電気絶縁性基材の一面に給電電極を形成し、この給電電極と電気的に導通して抵抗体が配置してあった。
【0003】
前記給電電極は、一対の主電極より複数の枝電極を分岐するとともに、これら枝電極から複数の接続電極をさらに分岐したもので、導電性銀ポリマーなどの印刷によって形成されている。
【0004】
抵抗体は相対応した接続電極に複数独立して設けられており、PTC導電性インキの印刷によって得たものである。
【0005】
したがって、給電電極の主電極に電源を印加すると、接続電極を介してそれぞれの抵抗体に通電されて発熱し、前記抵抗体が配置されている領域が加熱される。
【0006】
抵抗体を形成するPTC導電性インキは、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂にカーボンブラックを添加し、溶剤と混合させてインキにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
PTC特性とは、温度上昇によって抵抗値が上昇し、ある温度に達すると抵抗値が急激に増加する抵抗温度特性(Positive Temperature Coefficient)を意味しており、PTC特性を有する加熱領域は、自己温度調節機能を有する面状発熱体として提供できる。
【0008】
また、他の面状発熱体として、電気絶縁性基材上に帯状電極を間隔をおいて配置し、これら帯状電極間に抵抗体皮膜を分割配置したものも見受けられる(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
一方、電気絶縁性基材の両面に、一対の主電極部と、この主電極に接続され、櫛歯状に互いに噛み合うよう設けた枝電極と、枝電極を覆うように配置された抵抗体とを設け、両面の枝電極の位置をずらすことで、面状発熱体の温度ムラを改善したものもある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平3−129693号公報
【特許文献2】実開昭57−186997号公報
【特許文献3】特開平8−64352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の面状発熱体において、給電電極の主電極が断線した場合、断線間隔が極めて小さいとコロナ放電が発生し、絶縁破壊を起こす可能性がある。
【0012】
特に、主電極の根元に近い箇所が断線した場合、すなわち、抵抗体が重なっている箇所が断線した場合、始めは、断線間隔が極めて小さいとコロナ放電が発生し、断線部から主電極の先端部までに電気的に繋がっている加熱領域の合成抵抗に相当する電力を流そうとする力がスパークを発生するに必要な分以上あれば、その後絶縁破壊を起こしてスパークが発生する。
【0013】
スパークによる発生熱は断線部に重なっている抵抗体およびその周辺に放熱されてしまうため、主電極の断線部は蒸発せず、断線間隔は極めて小さい状態を維持しつつスパークが継続する。さらに、そのスパークによる発生熱により断線部の上に重なっている抵抗体が徐々に変質し、炭素が繋がったバイパス経路が形成されて電流が流れる。
【0014】
そして、バイパス経路の抵抗値がある適度な値である場合、バイパス経路で異常加熱を起こすという問題が発生する。
【0015】
この問題を解決するためには、
(1)スパークを発生させないようにするために、断線箇所以降の加熱領域および主電極あるいは給電電極の合成抵抗を大きくする。
【0016】
(2)スパークによる発生熱、あるいはバイパス経路での発生熱を分散させるために、
(2−1)金属箔を貼り付ける
(2−2)主電極あるいは給電電極を十分放熱できる程度に幅広くする
(2−3)主電極あるいは給電電極の厚みを十分放熱できる程度に厚くする
などが考えられる。
【0017】
しかしながら、(1)については、断線箇所以降の加熱領域および主電極あるいは給電電極の合成抵抗を大きくするためには、具体的に加熱領域の数を減少させて発熱面積を小さくするか、加熱領域を挟み込んでいる2本の主電極間の距離を広げてやることになるが、加熱領域の数を減少させて発熱面積を小さくすることは、面状発熱体としての本来機能である面的に発熱させるという目的を大きく損なうことであり、また、加熱領域を挟み込んでいる2本の給電電極の距離を広げてやることも、個々の加熱領域の抵抗値を大きくすることであり、発熱量が大幅に小さくなるため、面状発熱体としての本来機能である発熱させて温度を上げるという目的を大きく損なうもので有効ではない。
【0018】
次に、(2)については、スパークによる発生熱あるいはバイパス経路での発生熱を分散させるために金属箔を貼り付けることは、面状発熱体の厚みが厚く、重く、硬くなり、コストが高くなるなどの不具合が発生する。
【0019】
主電極、あるいは給電電極間の幅を広くすると発熱面積が小さくなるため、面状発熱体としての本来機能である面的に発熱させるという目的を大きく損なうことになる。
【0020】
また、主電極、あるいは給電電極の厚みを厚くすると、面状発熱体の厚みが厚くなるという不具合に加えて、PTC導電性インキを給電電極上に印刷した時に、給電電極と電気絶縁性基材との間に大きな段差ができ、給電電極と加熱領域との境界線に段差クラック(エッジ切れ)が発生して電気的に接続されず、加熱領域が発熱しなくなるという不具合も発生する。
【0021】
それに加えて、スパークによる発生熱を放熱してしまうため、断線部が蒸発せず、スパークが継続してしまう可能性もあり、いずれにしても有効な解決手段とならない。
【0022】
また、特許文献3に開示された面状発熱体は、面状発熱体としての温度分布は改善され
るものの、上記に示すスパークの課題が解消されない。
【0023】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、抵抗体が接続されている電極が断線したとしてもスパークが発生せず、断線箇所での異常過熱も防止し、かつ昇温性に優れた面状発熱体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
前記課題を解決するために、前記絶縁性基材の両面に各々対向して形成され電源に接続された一対の主電極、前記主電極から個々に枝別れした複数の枝電極、および前記枝電極から更に分岐し対向する位置に配設された複数の接続電極からなる電極と、前記接続電極間に電気的に接続して形成される複数の抵抗体を設ける構成としたものである。
【0025】
これによって、抵抗体が接続されている接続電極が断線したとしても、スパークが継続せず、断線箇所での異常過熱も防止し、かつ昇温性に優れた面状発熱体を提供することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の面状発熱体によれば、それぞれの接続電極に流れる電流は抵抗体の抵抗値で決定され、接続電極が断線してもスパークを引き起こさない抵抗値を設定すれば、抵抗体の変質やカーボン化による異常過熱が防止でき、さらに電気絶縁性基材の両面に抵抗体が設けられているため、昇温性に優れ使い勝手の良い面状発熱体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態1における面状発熱体の表面の平面図
【図2】同面状発熱体の表面の要部拡大平面図
【図3】同面状発熱体の裏面の平面図
【図4】同面状発熱体の裏面の要部拡大平面図
【図5】本発明の実施の形態2における面状発熱体の電源と主電極との接続状態を示す説明図
【図6】本発明の実施の形態3における面状発熱体の表面の平面図
【図7】同面状発熱体の裏面の平面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
第1の発明は、電気絶縁性基材と、前記電気絶縁性基材の両面に各々対向して形成され電源に接続された少なくても一対の給電電極、前記給電電極から個々に枝別れした複数の枝電極、および前記枝電極から更に分岐し対向する位置に配設される複数の接続電極からなり、前記接続電極間に電気的に接続して抵抗体を設けているため、それぞれの接続電極には抵抗体の抵抗値で電流値が決定され、接続電極が断線してもスパークを引き起こさない抵抗値を設定すれば、抵抗体の変質やカーボン化による異常過熱が防止でき、さらに電気絶縁性基材の両面に抵抗体が設けられているため、昇温性に優れ使い勝手の良い面状発熱体を提供することが可能となる。
【0029】
第2の発明は、第1の発明の面状発熱体の表面の抵抗体は電気絶縁性基材を介して対向する裏面の複数の抵抗体と対向する位置に設ける構成とするものであり、互いの非発熱部を補完するため、温度ムラの少ない面状発熱体を提供することができる。
【0030】
第3の発明は、第1の発明の面状発熱体の、表面側主電極に接続する電源と、裏面側主電極に接続する電源とを各々独立して制御する構成とするものものであり、必要に応じ面状発熱体に供給する電力を制御することにより、細やかな温度制御が可能となり、さらな
る使い勝手の向上と省エネに貢献する面状発熱体を提供することができる。
【0031】
第4の発明は、第1または第2の発明の面状発熱体の両面の主電極は電気絶縁性基材を介して対向する位置に配設するとともに、同一位置より両面の主電極に電源を供給する構成するものであり、両面の給電電極への電源供給を簡素化し安価な面状発熱体を提供することができる。
【0032】
第5の発明は、第1から第3の発明のいずれか一つにおいて、面状発熱体の両面の給電電極への電源供給を表面側と裏面側とは対辺側より供給する構成とするものであり、主電極の線路抵抗による電圧降下で電源供給側と端末側とで生ずる発熱差を、互いに補うため温度ムラの少ない面状発熱体を提供することができる。
【0033】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、実施の形態が本発明を限定するものではない。
【0034】
(実施の形態1)
図1,2において、ポリエステルフィルムなどからなる電気絶縁性基材1の表面1aには、間隔をおいて位置させた一対の主電極2aと2bと、これら主電極2aと2bとから相手極へ向け個々に分岐された複数の枝電極3aと3bと、前記枝電極3aと3bからさらに分岐された複数の接続電極4aと4bとからなる電極が銀ペーストを印刷・乾燥して構成されている。
【0035】
そして、隣接する枝電極3aと3bの対応する接続電極4aと4b間には抵抗体5aが独立して多数形成してある。
【0036】
また、前記電気絶縁性基材1の裏面1bにも、間隔をおいて位置させた一対の主電極2cと2dと、これら主電極2cと2dとから相手極へ向け個々に分岐された複数の枝電極3cと3dと、前記枝電極3cと3dからさらに分岐された複数の接続電極4cと4dとからなる電極が銀ペーストを印刷・乾燥して構成されている。
【0037】
そして、隣接する枝電極3cと3dの対応する接続電極4cと4d間には抵抗体5bが独立して多数形成してある。
【0038】
前記表裏面の抵抗体5a,5bは重なる位置に対向するように位置するが、上下ならびに左右方向には位置をずらしてある。
【0039】
表側の主電極2a,2bの間に電源6aが接続され、裏面の主電極2c,2dの間にも電源6bが独立して接続されており、電源制御手段7a,7bにより電力供給が制御されるようにしてある。
【0040】
抵抗体5a,5bは、樹脂にカーボンを練り込んだ高分子抵抗材を溶剤に溶かしたもの、あるいは特に結晶性樹脂にカーボンを練り込んだ高分子抵抗材を溶剤に溶かした高分子抵抗体インキを印刷により形成・乾燥させて形成したものである。
【0041】
次に、動作、作用について説明する。
【0042】
先ず、通常の動作状態としては、電源制御手段7a,7bがON状態では、給電電極2aと2b間に接続された電源6aによって、電気絶縁性基材1の表面1aに流れる電流は主電極2a→枝電極3a→接続電極4a→抵抗体5a→接続電極4b→枝電極3b→主電極2bという順に流れ、電源が交流であれば当然この流れ方向と逆の流れ方向が交互に発
生し、抵抗体5aが発熱する。
【0043】
同様に電気絶縁性基材1の裏面1b側に流れる電流も、主電極2c→枝電極3c→接続電極4c→抵抗体5b→接続電極4d→枝電極3d→主電極2dという順に電流が流れ抵抗体5bが発熱する。
【0044】
一方、電気絶縁性基材1の表面1a側において、接続電極4aまたは4bが断線した場合、本来接続電極4aや4bには個々の抵抗体を負荷とする電力を供給する回路構成であり、接続電極4aまたは4bが断線してもスパークエネルギーが発生しないレベルで各々の抵抗値を予め高抵抗側に設定すればスパークは発生せず、断線箇所で抵抗体が変質したり炭化することでの異常過熱を防止できる。
【0045】
電気絶縁性基材1の裏面1b側において接続電極4cまたは4dが断線した場合においても、同様に異常加熱が防止できる。
【0046】
また、電気絶縁性基材1の両面に配設された複数の抵抗体5aと5bに同時に通電すると、電気絶縁性基材1の単位面積当たりの発熱量は、抵抗体5aと5bが同一抵抗であれば、片面にのみ抵抗体を配置した時と比較してほぼ倍となるため昇温性に優れる。
【0047】
さらに、両面の抵抗体5a5bとは互いに上下、左右方向へ位置をずらして配置しているため、抵抗体周囲に発生する非発熱領域を互いに補完し温度ムラが抑制される。
【0048】
さらに、表面側抵抗体5aと裏面側抵抗体5bとに印加する電力を独立して制御することにより、両面同時加熱や片面加熱、あるいはそれぞれを断続加熱することが可能となり、必要に応じ面状発熱体の表面温度を可変制御することができるため、使い勝手の良い面状発熱体を提供し得る。
【0049】
(実施の形態2)
図5は、実施の形態2を示し、実施の形態1との違いは、表面1a側の主電極2a,2bと、裏面1b側の主電極2c,2dとを絶縁性基材1を間にして対向させ、リベットなどの導電体8を介して主電極2aと2c、および2bと2dを電気的に接続し、共通の電源6、電源制御手段7へ接続したものである。
【0050】
このように構成することにより、電源6への接続を片面づつ独自に配線することが不要となり、安価な面状発熱体が提供できる。
(実施の形態3)
図6,7は、実施の形態3を示すものである。なお、図1,3と動作用を行う構成部分には同一符号を付し、その具体的な説明は実施の形態1のものを援用する。
【0051】
実施の形態1との違いは、電気絶縁性基材1の表面1a側の主電極2aと2bへの電源接続位置と、裏面1b側の主電極2cと2dへの電源接続位置とを、電気絶縁性基材1に対し対辺側設けたものである。
【0052】
主電極2a,2bおよび2c,2dへの電源供給位置を互いに対辺側に配置することで、それら主電極の通路抵抗により電源供給側に対し末端側で生ずる電圧降下によって発生する発熱ムラが、表面と裏面とで相殺され、その結果、加熱ムラを抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明にかかる面状発熱体は、抵抗体が接続されている電極が断線したとしても、スパークが発生しても断線箇所での異常過熱を防止し、かつ昇温性に優れた面
状発熱体を提供することができるため、床暖房パネルや電気カーペット等の暖房商品に限らず、発熱部を平面状に形成したすべての面状発熱体に適用できる。
【符号の説明】
【0054】
1 電気絶縁性基材
1a 表面
1b 裏面
2a,2b,2c,2d 主電極
3a,3b,3c,3d 枝電極
4a,4b,4c,4d 接続電極
5a,5b 抵抗体
6,6a,6b 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁性基材と、前記電気絶縁性基材の表裏両面に各々対向して形成され、電源に接続された一対の主電極、前記給電電極から個々に枝別れした複数の枝電極、および前記枝電極から更に分岐し対向する位置に配設された複数の接続電極からなる電極と、前記接続電極間に電気的に接続して形成した複数の抵抗体とを備えた面状発熱体。
【請求項2】
表面の抵抗体と裏面の抵抗体とを対向して位置させた請求項1記載の面状発熱体。
【請求項3】
表面側主電極に接続する電源と、裏面側主電極に接続する電源とは各々独立して制御する構成とした請求項1記載の面状発熱体。
【請求項4】
両面の主電極を電気絶縁性基材を介して対向する位置に配設するとともに、同一位置より両面の主電極に電源を供給する構成とした請求項1または2記載の面状発熱体。
【請求項5】
両面の主電極への電源供給を、表面側と裏面側との対辺側より行うようにした請求項1〜3のいずれか1項記載の面状発熱体。


【図2】
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【図4】
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【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−14268(P2011−14268A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154969(P2009−154969)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】