説明

面状発熱体

【課題】スクリーン印刷加工される面状発熱体において非発熱部を最小限に設定できることを目的とする。
【解決手段】間隔をおいて位置した一対の主電極6,7、前記主電極6,7から相互に、しかも平行に分岐したそれぞれ複数の副電極6a,7aおよびそれら副電極6a,7aよりさらに分岐した接続電極6b,7bからなる給電電極3,4を電気絶縁性基材2上にスクリーン印刷により形設するとともに、対応する副電極6a,7aの接続電極6b,7bと電気的に接続してスクリーン印刷により高分子抵抗体5を形設し、前記高分子抵抗体5は異極同士の前記接続電極毎に分離独立形成され、かつ、前記副電極6a,7aおよび接続電極6b,7bと高分子抵抗体5の印刷領域をずらした構成としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄くて長尺の面状発熱体に関するものであり、特に電極、抵抗体が同一面上で形成される面状発熱体の電極および抵抗体のパターン構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の面状発熱体の発熱部には、ベースポリマーと、カーボンブラック、金属粉末、グラファイトなどの導電性物質を溶媒に分散して、特に、ベースポリマーとして結晶性樹脂を用いてPTC特性を持たせたものがある(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【0003】
図3,4は従来のPTC特性を持たせた面状発熱体を示し、ポリエステルシートなどの電気絶縁性基材51の上面両側に一対の平行な主電極52、53を配置し、これら主電極52、53からは相手側にのびる枝電極52a、53aを交互に位置するように分岐し、これら枝電極52a、53aに電気的接続状態で高分子抵抗体54が配置してあった。
【0004】
そして、主電極52、53、枝電極52a、53aは電気絶縁性基材51上に導電性ペーストを印刷・乾燥して形成されるもので、また、高分子抵抗体54は高分子抵抗体インクを印刷・乾燥して得ていた。
【0005】
これら主電極52、53、枝電極52a、53a、および高分子抵抗体54は電気絶縁性基材51と同材質の被覆材55で被覆して保護する構成としてある。
【0006】
前記高分子抵抗体54は多数の枝電極52a、53aより給電されることで電流が流れ、発熱する。
【0007】
電気絶縁性基材51、被覆材55としてポリエステルフィルムを用いる場合には、被覆材55に、例えばポリエチレン系の熱融着性樹脂56を予め接着しておき、熱を与えながら加圧する(熱加圧)ことにより、電気絶縁性基材51と被覆材55とを熱融着性樹脂56を介して接合する。
【0008】
これにより、主電極52,53、その枝電極52a,53a、および高分子抵抗体54は外界から隔離され、長期信頼性を付与されるのである。
【0009】
前記した熱時加圧の手段としては、図5に示すように、矢印方向へ回転する2本の加熱ロール56、57からなるラミネーター58が一般的である。
【0010】
PTC特性とは、温度上昇によって抵抗値が上昇し、ある温度に達すると抵抗値が急激に増加する抵抗温度特性(Positive Temperature Coefficient)を意味しており、したがって、PTC特性を有する高分子抵抗体54は、自己温度調節機能を有する面状発熱体を提供できる(例えば、特許文献1,2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭56−13689号公報
【特許文献2】特開平6−96843号公報
【特許文献3】特開平8−120182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記従来の面状発熱体では、長尺のものを作成しようとすると、印刷の版が大きくなるために、どうしても所定の長さの版を作成し、印刷する必要があった。
【0013】
印刷直後は乾燥されていないため、所定の距離をあけて次の印刷を行う必要があるところから、印刷端部間は発熱しなくなり、部分的に温度が低くなってしまう課題があった。さらに、高分子抵抗体54を枝電極52a,53aよりも内側に配設しようとすると、さらに印刷端部間距離が広くなってしまうという課題があった。
【0014】
上記従来の技術の問題点に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、長尺の面状発熱体において、連結部の非発熱領域を最小とすることで発熱分布が改善された面状発熱体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、前記目的を達成するために、間隔をおいて位置した一対の主電極、前記主電極から相互に、しかも平行に分岐したそれぞれ複数の副電極およびそれら副電極よりさらに分岐した接続電極からなる給電電極を電気絶縁性基材上にスクリーン印刷により形設するとともに、対応する副電極の接続電極と電気的に接続してスクリーン印刷により高分子抵抗体を形設し、前記高分子抵抗体は異極同士の前記接続電極毎に分離独立形成され、かつ、前記副電極および接続電極と高分子抵抗体の印刷領域をずらした構成としたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の面状発熱体は、抵抗体発熱部間距離を最小化することができるので、面状発熱体を連結して長尺にしても、連結部の温度低下を可及的に小さくできるものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1における面状発熱体の構成を示す平面図
【図2】同要部拡大平面図
【図3】従来の面状発熱体の構成を示す平面図
【図4】図3のX−Y断面図
【図5】同加工説明図
【発明を実施するための形態】
【0018】
第1の発明は、間隔をおいて位置した一対の主電極、前記主電極から相互に、しかも平行に分岐したそれぞれ複数の副電極およびそれら副電極よりさらに分岐した接続電極からなる給電電極を電気絶縁性基材上にスクリーン印刷により形設するとともに、対応する副電極の接続電極と電気的に接続してスクリーン印刷により高分子抵抗体を形設し、前記高分子抵抗体は異極同士の前記接続電極毎に分離独立形成され、かつ、前記副電極および接続電極と高分子抵抗体の印刷領域をずらした構成としてある。
【0019】
これにより、接続電極の印刷端部間距離にかかわらず高分子抵抗体の端部間距離を決めることができるので発熱端部間距離を最小化することができる。
【0020】
第2の発明は、前記第1の発明において、印刷領域の後端部と前端部に位置する副電極および接続電極は印刷進行方向に対し垂直方向に略整列されて形成したものである。
【0021】
これにより、接続電極印刷間距離を最小化することができ、接続電極と抵抗体の印刷領域をずらしたことの影響を少なくすることができ、発熱分布を良化することができる。
【0022】
第3の発明は、前記第1または第2の発明において、副電極および接続電極の印刷領域の後端部と次に印刷される印刷領域の前端部に位置する接続電極間距離は他の前記接続電極間距離よりも広く形成設定したため、発熱量としては小さくなるが、当然、非発熱部よりは発熱することとなり、設計意図する接続電極間距離が印刷間距離よりも短かった場合においても発熱分布が良化することとなる。
【0023】
さらに、製品全体の長さ調整をこの接続電極印刷領域の後端部と次に印刷される接続電極印刷領域の前端部に位置する接続電極間距離で調整することが可能となり、設計意図する端部まで発熱させうることができ、発熱分布を向上させることができる。
【0024】
第4の発明は、前記第1〜3のいずれか一つの発明において、副電極および接続電極の印刷領域の後端部と次に印刷される印刷領域の前端部は共に高分子抵抗体の端部と電気的に接続される接続電極とは異なる接続電極としたものである。
【0025】
これにより、特に第3の発明のように接続電極間距離が短い面状発熱体において構成される他の接続電極間距離よりも広く形成されている発熱部の発熱減少を隣接する発熱部からのもらい熱により抑制することができ、使用感がよくなる。
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0027】
(実施の形態1)
図1,2において、面状発熱体1は、電気絶縁性基材2に複数対の給電電極3,4およびこれら給電電極3,4に接続して高分子抵抗体5を配置し、それらを被覆材(図示せず)で覆って構成したものである。
【0028】
そして、前記給電電極3,4は、ポリエステルフィルムなどからなる電気絶縁性基材2上に銀ペーストをスクリーン印刷し、その後、乾燥して形成したものである。
【0029】
また、高分子抵抗体5も、同じく電気絶縁性基材2上にあって、高分子抵抗体インキをスクリーン印刷し、その後、乾燥して形設してある。
【0030】
前記給電電極3,4は、電気絶縁性基材2の両側に位置する主電極6,7と、それら主電極6,7の一方より相手電極へ向かい交互に伸びるように櫛歯状に分岐された複数の副電極6aおよび副電極7aと、隣接する副電極6a,7aより対向するように分岐され、しかも向きを反対方向のL字状に設定した複数対の接続電極6bおよび接続電極7bとからなるものである。
【0031】
前記高分子抵抗体5は、対となった接続電極6b,7bにそれぞれ独立形成してある。ここで留意すべきは、この高分子抵抗体5が接続電極6b,7bからはみ出さないようにすることである。
【0032】
それぞれ独立した高分子抵抗体5は、電気絶縁性基材2の長手方向にブロック分けして形成され、各ブロックの間には高分子抵抗体5が印刷・乾燥されていない非形成部Y1が設定してある。
【0033】
副電極6a,7aおよび接続電極6b,7bの一回の印刷領域がX、高分子抵抗体5の一回の印刷領域がY、そして、主電極6,7の一回の印刷領域はそれぞれZ1、Z2である。
【0034】
そして、副電極6a,7aおよび接続電極6b,7bの一回の印刷領域Xと高分子抵抗体5の一回の印刷領域Yとはずらした配置としてある。
【0035】
同一版にて繰り返し印刷を行うため、副電極6a,7aおよび接続電極6b,7bの一回の印刷領域Xと次段の印刷領域Xとは所定の印刷間距離X1だけ離して印刷を行っている。
【0036】
これは、高分子抵抗体5の一回の印刷領域Yと次段の印刷領域Yでも同様で、印刷間距離となる高分子抵抗体5の非形成部Y1が設定してある。
【0037】
印刷した直後においては、給電電極3,4または高分子抵抗体5は乾燥されておらず、濡れた状態であるため、連続して同じ形状の印刷を行うためには前記した印刷間距離X1,Y1が必要である。これら印刷間距離X1,Y1は印刷版の大きさにもよるが最低でも10mmは必要である。
【0038】
副電極6a,7aの印刷領域始部位、終端部位の間は他の部位よりも距離が広くしてあり、かつ印刷進行方向に垂直に整列している。
【0039】
ここで、副電極6aが電極印刷の前端部であり、副電極7aが後端部となっている。
【0040】
高分子抵抗体インキとしては樹脂にカーボンを練り込んだ高分子抵抗体材料を溶剤に溶かしたもの、あるいは特に結晶性樹脂にカーボンを練り込んだ高分子抵抗体材料を溶剤に溶かしたものを使用している。
【0041】
全ての印刷が終了した後、抵抗体非印刷領域Y1の略中央に位置する場所にて電気絶縁性基材2を切断することで、所定の長さ形状を持つ面状発熱体1が完成する。
【0042】
このように、接続電極印刷領域Xと抵抗体印刷領域Yがずらして印刷されているため、印刷端部および切り替えのための送り位置が異なることとなる。
【0043】
その結果、抵抗体印刷領域Yとその次に印刷する抵抗体印刷領域Yの距離Y1よりも、抵抗体印刷領域Yの前端・後端に接続されている副電極6a,7aおよび接続電極6b,7bの距離は短くできる。
【0044】
面状発熱体1は絶縁や発熱分布の都合上、抵抗体が印刷されていない領域で切断され、その部位が面状発熱体1の端部となるため、副電極6a,7aおよび接続電極6b,7b間距離を短くすることで、端部まで発熱させることができることとなり発熱分布が向上される。
【0045】
印刷領域端部に位置する副電極6a,7aおよび接続電極6b,7bは、他よりも距離が広く構成されており十分距離をおいているため、副電極6a,7aおよび接続電極6b,7bを次に印刷する際にも接続電極印刷版と接触することなく良好な印刷をすることが可能である。
【0046】
副電極6a,7aおよび接続電極6b,7bの印刷領域端部に位置する副電極6a,7aおよび接続電極6b,7bは他よりも距離が広く構成されているが、副電極6a,7aおよび接続電極6b,7bにまたがるように高分子抵抗体5を印刷しているため、その部位も発熱量は小さくなるものの発熱可能である。
【0047】
特に、高分子抵抗体5にPTC特性を有するものを用いた時には、低温での発熱量が大きくなるため、副電極6a,7aおよび接続電極6b,7bの距離が大きくとも発熱量の低下を軽減することができ、より発熱分布の向上を行うことができる。
【0048】
また、副電極6a,7aおよび接続電極6b,7bの端部は印刷進行方向に垂直に整列しており、印刷スキージに平行に整列されているところから、印刷端部が揃うこととなっている。
【0049】
その結果、印刷を良好に行うために必要な接続電極印刷間距離X1を最小とすることができ、発熱分布の向上を行うことができる。もちろん、接続電極印刷間距離X1を小さくするために副電極6a,7aおよび接続電極6b,7bを整列させているので、他の副電極6a,7aおよび接続電極6b,7bは整列させる必要はなく千鳥型に整列させてもよい。
【0050】
副電極6a,7aおよび接続電極6b,7bの端部は抵抗体非印刷領域Y1から離して配設してある。同端部と高分子抵抗体5により形成される発熱部分は他の接続電極間距離よりも広いため発熱量が小さく、その結果温度上昇が小さくなる。
【0051】
しかしながら、前記端部の隣にある発熱部からもらい熱をうけるため、この端部による発熱量の減少を抑えることができ、面状発熱体1全体として発熱分布の向上が得られ使用感が向上することとなる。
【0052】
ただし、印刷版の中央を用いてパターンを形成することで安定した印刷を行うことが通常のスクリーン印刷の方法であるため、接続電極非印刷領域X1と高分子抵抗体非印刷領域Y1は近いほど印刷しやすくなる。
【0053】
そのため、前記端部は図1においては、抵抗体印刷領域Yの2〜4番目のブロックに位置する副電極にするのが良いといえる。
【0054】
また、本実施の形態では給電電極印刷領域をZ1とZ2に分けたが、どちらか一方を接続電極印刷Xに含んでも良い。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上のように、本発明にかかる面状発熱体は、スクリーン印刷により形成される比較的長尺の面状発熱体の構成において発熱分布を向上させることができるため、床暖房用パネル、電気カーペット等の暖房商品に適用できるだけでなく、櫛歯電極間距離を小さくすることで発熱量を大きくする必要のある輻射暖房の発熱分布向上に適用できる。
【符号の説明】
【0056】
1 面状発熱体
2 電気絶縁性基材
3,4 給電電極
5 高分子抵抗体
6,7 主電極
6a7a 副電極
6b,7b 接続電極
X 接続電極印刷領域
X1 接続電極非印刷領域
Y 抵抗体印刷領域
Y1 抵抗体非印刷領域
Z1、Z2 給電電極印刷領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をおいて位置した一対の主電極、前記主電極から相互に、しかも平行に分岐したそれぞれ複数の副電極およびそれら副電極よりさらに分岐した接続電極からなる給電電極を電気絶縁性基材上にスクリーン印刷により形設するとともに、対応する副電極の接続電極と電気的に接続してスクリーン印刷により高分子抵抗体を形設し、前記高分子抵抗体は異極同士の前記接続電極毎に分離独立形成され、かつ、前記副電極および接続電極と高分子抵抗体の印刷領域をずらした面状発熱体。
【請求項2】
印刷領域の後端部と前端部に位置する副電極および接続電極は印刷進行方向に対し垂直方向に略整列されて形成した請求項1記載の面状発熱体。
【請求項3】
副電極および接続電極の印刷領域の後端部と次に印刷される印刷領域の前端部に位置する接続電極間距離は他の前記接続電極間距離よりも広く形成設定した請求項1または2記載の面状発熱体。
【請求項4】
副電極および接続電極の印刷領域の後端部と次に印刷される印刷領域の前端部は共に高分子抵抗体の端部と電気的に接続される接続電極とは異なる接続電極とした請求項1〜3いずれか1項記載の面状発熱体。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−3428(P2011−3428A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146214(P2009−146214)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】