説明

靱性に優れた高耐食性フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法

【課題】 本発明は、0℃のシャルピー吸収エネルギーが100J/cm以上の靱性に優れた高耐食性フェライト系ステンレス鋼板を提供することを目的とする。
【解決手段】 質量%で、C:0.015%以下、Si:0.5%以下、Mn:1.0%以下、P:0.06%以下、S:0.01%以下、Al:0.01〜0.35%、N:0.015%以下、Cr:18.0〜24.0%、Mo:0.4%以下、Cu:0.3〜0.6%、Ti:0.01%以下、V:0.01〜0.10%、Nb:0.15〜0.35%で、かつ、(Nb+2V)/Ti≧30、8≦(Nb+2V)/(C+N)≦85を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、フェライト相以外の粒状物が2μm以下の粒径で分散した組織を有することを特徴とする靱性に優れた高耐食性フェライト系ステンレス鋼板およびその製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靱性に優れた高耐食性フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フェライト系ステンレス鋼板は、Cr含有量を高めることにより、高い耐食性を保持させることができるので、近年、建築資材、厨房用品、電化製品、各種プラント、輸送機械等、様々な用途に使用されている。しかし、高Crフェライト系ステンレス鋼板は低温において脆化しやすいという短所があり、特に高い靱性が必要となる板厚の厚い構造部材には使用できない。フェライト系ステンレス鋼の靱性を改善する方法としては、フェライト粒を微細化することが知られているが、高い靱性が求められる用途には、それだけでは不十分である。
【0003】
特許文献1には、C:0.025wt%以下、Si:0.60wt%以下、Mn:0.50wt%以下、Cr:15〜30wt%、Ni:1.0wt%以下、Mo:2.5wt%以下、V:0.05〜1.0wt%、Cu:0.1〜3.0wt%、Al:0.02wt%以下、N:0.025wt%以下、およびCo:0.005〜1.0wt%を含有し、かつNbとTiをそれぞれ単独または複合して、次式;
0.1≦Nb(wt%)+Ti(wt%)≦1.0
0≦Nb(wt%)+Ti(wt%)−{8×(C(wt%)+N(wt%))+0.1}≦0.4
を満足するように含み、そして上記VおよびCoは、複合させたとき、次式;
0.1≦2×V(wt%)+Co(wt%)
Nb(wt%)+Ti(wt%)−{8×(C(wt%)+N(wt%))+0.1}≦2×V(wt%)+Co(wt%)≦3.0
を満足するように含み、かつ、上記CおよびNは、複合させたときの含有量が0.040wt%以下であり、残部が実質的にFeよりなる靱性および耐食性がともに優れるフェライト系ステンレス鋼が開示されているが、Mo等の元素を多量に含有する鋼は、靱性を低下させる金属間化合物等も生成しやすく、靱性の改善効果は不十分と考えられる。開示されているのは本願より条件の易しい板厚5mmにおける結果で、本願の想定しているような板厚6mmでの使用は困難と考えられる。
【0004】
このような使用上の困難性に差異が生ずるのは、板厚方向の変形が完全に拘束される平面ひずみ状態とならない範囲(例えば板厚10mm未満)では、板厚が薄いほど板厚方向の変形による吸収エネルギーの寄与が大きくなるため、板厚6mmの場合は、板厚5mmの場合よりも単位面積あたりの吸収エネルギー(靱性)が低下し、靱性の点ではより厳しい条件となるからである。
【0005】
また、特許文献2には、質量%で、C:0.1%以下、N:0.003〜0.05%、Si:0.03〜1.5%、Mn:1.0%以下、P:0.04%以下、S:0.03%以下、Cr:10〜30%、Cu:2%以下、Ni:2%以下、Mo:3%以下、V:1%以下、Ti:0.02〜0.5%、O:0.001〜0.005%、Nb:0.8%以下、Al:0.001〜0.15%、Zr:0.3%以下、B:0.1%以下、Ca:0.003%以下およびMg:0.0005%未満を含み、更に、式fn1=Ti(%)×N(%)で表される値が0.0005以上を満足し、残部はFeおよび不可避的不純物の化学組成で、鋼中にMgとAlの質量の比(Mg/Al)が0.3〜0.5のAlおよびMgを含有する介在物とTi系介在物との複合介在物が分散した加工性と靱性に優れたフェライト系ステンレス鋼が開示されている。しかしながら、Ti系介在物の分散制御は困難で、粗大化により靱性が低下しやすく、この技術でもまた十分な靭性が得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−280948号公報
【特許文献2】特開2001−20046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上述べたように、MoやTi添加による方法では高耐食性フェライト系ステンレス鋼の靭性改善が十分には図られていない。そこで、本発明は、板厚6mmにおける0℃のシャルピー吸収エネルギーが100J/cm以上の靱性に優れた高耐食性フェライト系ステンレス鋼板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、高Crフェライト系ステンレス鋼の靱性を改善する方法について、鋭意検討をおこない、その結果、フェライト相以外の粒状物の分散状態を制御し、靱性におよぼす負の影響を極小化することで、高Crフェライト系ステンレス鋼の靱性を改善することが可能であることを見出した。ここで、粒状物とは、フェライト相以外の相であって、炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物、硫化物、金属間化合物、およびこれらの複合物をいう。以下、特に断らない限り、%表示は質量%を意味する。
【0009】
具体的にはTiを0.01%以下として実質無添加とするなど特定範囲の組成に制御されたスラブを1100〜1300℃に加熱し、全体の圧下率が95%以上、1100℃以下での圧下率が75%以上となるような条件で熱間圧延を行った後、650℃以下で巻取ることにより、熱延板およびそれを素材とした製品のフェライト相以外の粒状物の粒径が2μm以下で、かつ、球状に近い形状となり、高い靱性を達成できることを見出した。上記のように組織を制御することにより、フェライト相以外の粒状物の近傍において、応力集中が生じにくくなり、靱性が向上するものと考えられる。
【0010】
本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。
すなわち本発明は、(1)C:0.015%以下、Si:0.5%以下、Mn:1.0%以下、P:0.06%以下、S:0.01%以下、Al:0.01〜0.35%、N:0.015%以下、Cr:18.0〜24.0%、Mo:0.4%以下、Cu:0.3〜0.6%、Ti:0.01%以下、V:0.01〜0.10%、Nb:0.15〜0.35%で、かつ、(Nb+2V)/Ti≧30、8≦(Nb+2V)/(C+N)≦85を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、フェライト相以外の粒状物が2μm以下の粒径で分散した組織を有することを特徴とする上記の靱性に優れた高耐食性フェライト系ステンレス鋼板である。
【0011】
また、本発明は、(2)C:0.015%以下、Si:0.5%以下、Mn:1.0%以下、P:0.06%以下、S:0.01%以下、Al:0.01〜0.35%、N:0.015%以下、Cr:18.0〜24.0%、Mo:0.4%以下、Cu:0.3〜0.6%、Ti:0.01%以下、V:0.01〜0.10%、Nb:0.15〜0.35%で、かつ、(Nb+2V)/Ti≧30、8≦(Nb+2V)/(C+N)≦85を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるスラブを1100〜1300℃に加熱し、全体の圧下率が95%以上、1100℃以下での圧下率が75%以上、巻取り温度が650℃以下となるような条件で熱間圧延を行った後、900℃以上で60秒以上保持した後、冷却する焼鈍を施すことを特徴とする靱性に優れた高耐食性フェライト系ステンレス鋼板の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、0℃のシャルピー吸収エネルギーが100J/cm以上の靱性に優れた高耐食性フェライト系ステンレス鋼板を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の詳細について、以下に説明する。
まず、本発明におけるステンレス鋼板の成分の限定理由について説明する。
【0014】
C:0.015%以下
Cは炭化物を形成することにより靱性を低下させる。よってC含有量は0.015%以下とする。さらに、高靭性を得るには、好ましくは0.010%以下である。
【0015】
Si:0.5%以下
Siは脱酸に用いられる元素であるが、過剰に含有すると固溶強化により加工性が低下する。よってSi含有量は0.5%以下とする。さらに、高加工性を得るには、好ましくは0.3%以下である。
【0016】
Mn:1.0%以下
MnはSと結合することにより耐食性を低下させる元素である。よってMn含有量は1.0%以下とする。
【0017】
P:0.06%以下
P含有量が0.06%を超えると、固溶強化によって加工性が低下する。よってP含有量は0.06%以下とする。さらに、高加工性を得るには、好ましくは0.05%以下である。ここで、加工性とは延性をいう。
【0018】
S:0.01%以下
S含有量が0.01%を超えると耐食性が著しく低下する。したがってSは0.01%以下とする。さらに、高耐食性を得るには、好ましくは0.006%以下である。
ここで、高耐食性とは孔食電位測定試験(JIS G 0577)で、0.250V vs SHE以上を示すものをいう。
【0019】
Al:0.01〜0.35%
Alは脱酸に用いられる元素である。脱酸が不十分であると欠陥が生じやすくなる。一方、過剰に含有すると溶存酸素量が著しく減少して溶接性が低下する。よってAl含有量は0.01〜0.35%とする。さらに、溶接性の観点から、好ましくは0.02〜0.30%である。ここで、溶接性とは主として素材の溶け込み性をいう。
【0020】
N:0.015%以下
Nは窒化物を形成することにより靱性を低下させる。よってN含有量は0.015%以下とする。さらに、高靭性を得るには、好ましくは0.010%以下である。
【0021】
Cr:18.0〜24.0%
Crは表面に不働態皮膜を形成して耐食性を高める元素である。Cr含有量が18.0%未満では十分な耐食性が得られない。一方、24.0%を超えるとσ相や475℃脆性の影響で靱性が低下しやすくなる。よってCr含有量は18.0〜24.0%とする.さらに、高耐食性および靭性の観点から、好ましくは20.0〜22.0%である。
【0022】
Mo:0.4%以下
Moはステンレス鋼の耐食性を高める効果を有するが、本発明においては必須の元素ではない。過剰に添加するとラーベス相等の粗大な金属間化合物を生成させ、靱性を低下するので、Mo含有量は0.4%以下に限定する。
【0023】
Cu:0.3〜0.6%
Cuは不働態皮膜を強化し、耐食性を向上させる元素である。一方、過剰に添加されるとε−Cuが析出しやすくなり、耐食性を低下させる。よってCu含有量は0.3〜0.6%とする。さらに、耐食性を考慮すると、好ましくは0.3〜0.5%である。
【0024】
Ti:0.01%以下
Tiは粗大な炭窒化物を形成し、靱性を低下させる。よってTi含有量は0.01%以下とする。
【0025】
V:0.01〜0.10%
VはCやNを固定し、鋭敏化を抑制する効果を有する。適量であれば微細な炭窒化物を形成するが、過剰に添加されるとそれらが粗大化する傾向がある。よってV含有量は0.01〜0.10%とする。
【0026】
Nb:0.15〜0.35%
NbはCやNを固定し、鋭敏化を抑制する効果を有する。一方で、過剰に添加されるとラーベス相等の粗大な金属間化合物を生成させ、靱性が低下する。よってNb含有量は0.15〜0.35%とする。さらに、靭性を考慮すると、好ましくは0.15〜0.30%である。
(Nb+2V)/Ti≧30、8≦(Nb+2V)/(C+N)≦85
Ti、Nb、Vはいずれも炭窒化物を形成する元素である。その中でTiの炭窒化物(特に窒化物)は粗大化して靱性を低下させやすいが、NbやVの炭窒化物はそれに比べると微細で応力集中を生じにくい。また、Tiは、NbやVと比べるとCやNとの親和力が強く、また、高温から窒化物を生成させることにより、僅かな含有量でも靱性を低下させる可能性があるため、Tiの添加量はNbやVのそれを大きく下回る必要がある。よって(Nb+2V)/Ti≧30を満たすこととする。
【0027】
さらに、靭性を考慮すると、好ましくは(Nb+2V)/Ti≧90である。また、NbやVの添加により鋭敏化を抑制する場合、両元素による複合効果を考慮して、下限を決定する必要がある。一方で、両元素の添加量が多すぎる場合には炭窒化物が粗大化しやすくなるため、複合添加の影響を考慮して、上限を決定する必要がある。よって8≦(Nb+2V)/(C+N)≦85を満たすこととする。
【0028】
次に、本発明のステンレス鋼板の組織について説明する。
【0029】
フェライト相以外の粒状物の粒径:2μm以下
フェライト(α)相以外の相は、フェライト相との塑性変形挙動の差によって生じる応力集中の原因となる。応力集中はこの相が粗大であるほど生じやすい。そこで、本発明では、その大きさを制御することにより、靱性を改善させる。よって、フェライト相以外の粒状物の粒径は2μm以下とする。粒状物の粒径が2μmを超えると靭性の向上は期待できない。
【0030】
フェライト相以外の粒状物の粒径は、研磨後、王水で腐食した試料を用いて測定する。走査型電子顕微鏡で3000倍の写真を5視野撮影し、腐食されてフェライト相と識別できるようになった粒子について、粒子ごとに断面積を求め、それと同じ面積を有する円の直径をその粒子の粒径とし、視野に入った全ての粒子の中で大きいものから順に10個の粒径を平均したものをフェライト相以外の粒状物の粒径とする。断面積の測定方法は、電子顕微鏡写真で識別された粒子をトレーシングペーパー等に写したものを用いて画像処理などにより各粒子の断面積を測定する方法とする。
【0031】
次に、本発明のステンレス鋼板の製造方法について説明する。
転炉、電気炉等を用いて所定の成分を有するステンレス鋼を溶製し、さらに脱炭処理を施す。得られた溶鋼を連続鋳造法あるいは造塊法によってスラブとする。ただし、生産性の高い連続鋳造法を採用することが好ましい。
【0032】
次いで、スラブを1100〜1300℃に加熱し、全体の圧下率が95%以上、1100℃以下の圧下率が75%以上となるような熱間圧延を行い、650℃以下で巻取り熱延板を得る。
【0033】
ここで、熱間圧延の条件を限定した理由は以下の通りである。
【0034】
スラブの加熱温度:1100〜1300℃
スラブ加熱段階において、フェライト相以外の粒状物を微細化するには1100℃以上に加熱する必要がある、一方で、スラブ加熱温度が高すぎるとクリープ変形にともなうスラブ垂れの問題が発生するため1300℃以下とする必要がある。
【0035】
熱間圧延における全体の圧下率:95%以上、1100℃以下の圧下率:75%以上
熱間圧延において、全体の圧下率が小さい場合は、導入される歪が小さく、熱延板の結晶粒径が大きくなる。熱延板の結晶粒径が大きい場合、フェライト相以外の粒状物の析出サイトが少なくなるため、フェライト相以外の粒状物の粒径が大きくなり、靱性が低下する。よって全体の圧下率は95%以上とする。また、特に1100℃を超える温度では導入された歪が減少しやすいため、さらに1100℃以下の圧下率を75%以上とする。
【0036】
熱間圧延におけるコイル巻取り温度:650℃以下
熱間圧延におけるコイル巻取り温度が650℃を超えると、巻取り後に炭窒化物や金属間化合物が析出、過剰に成長し、靱性が低下する。よってコイルの巻取り温度を650℃以下とする。
【0037】
得られた熱延板に、900℃以上で60秒以上保持した後、冷却する焼鈍を施す。
焼鈍条件を限定した理由は以下の通りである。
【0038】
熱延板の焼鈍条件:900℃以上で60秒以上保持
熱延板は475℃脆性と呼ばれる脆化が生じていることがある。これは、スピノーダル分解による脆化相の生成が原因と考えられているが、900℃以上で60秒以上保持することで脆化原因が解消され靱性が回復するため、熱延板の焼鈍条件を上記に限定する。
【0039】
得られた熱延焼鈍板はそのまま製品として使用できるが、必要に応じて、脱スケール、スキンパス圧延などを行い、表面性状、形状の良好な熱延焼鈍板としても良い。また、熱延板、熱延焼鈍板を素材として、脱スケール、冷延、焼鈍、脱スケールを行い冷延焼鈍板としても良い。ただし、焼鈍時間が長い場合、フェライト相、フェライト相以外の粒状物がともに粗大化し、靱性が低下する恐れがあるため、焼鈍は加熱開始から冷却終了までを10分以内とすることが好ましい。
【0040】
また、光沢を高めるため、あるいは形状を整えるためにスキンパス圧延を施しても良いが、延性を確保するために、伸び率は1.0%以下とすることが好ましい。また、本発明の効果を十分に発揮できる態様は、部材の靱性が問題となりやすい板厚3mm以上の熱延焼鈍板あるいは冷延焼鈍板である。
【実施例】
【0041】
表1に示す成分のステンレス鋼を溶製し、連続鋳造法で250mm厚のスラブとした。これらのスラブを1200℃に加熱後、35mm厚まで粗圧延し、仕上圧延を1050℃で開始、900℃で終了して、500℃でコイル状に巻取って冷却し、板厚6mmの熱延板とした。
【0042】
得られた熱延板に1000℃以上で80秒(最高温度:1100℃)保持した後、放冷する焼鈍を施し、熱延焼鈍板とした。そして、熱延焼鈍板の圧延方向の断面について前述の方法によりフェライト相以外の粒状物の粒径を求めた。また、各熱延焼鈍板よりJIS Z 2202に規定された4号試験片(ただし幅は6mmとした)を各5本ずつ採取(圧延方向が採取方向、衝撃方向は圧延幅方向、試験片の幅は板厚である)し、JIS Z 2242の規定に準拠して、試験温度:0℃の条件でシャルピー衝撃試験を実施した。5本の吸収エネルギーを平均し、100J/cm以上の場合を良好、100J/cm未満の場合を不良とした。得られた結果を表2に示す。
【0043】
表2に示す通り、本発明範囲内である試料はいずれも0℃のシャルピー吸収エネルギーが100J/cm以上で靱性が良好であるのに対して、NbやTi、(Nb+2V)/Tiが本発明範囲外である試料はフェライト相以外の粒状物の粒径が大きく、靱性が低い。
【0044】
また、耐食性は孔食電位測定方法(JIS G 0577)により確認し、0.250V vs SHE以上という結果が得られ、非常に優れていることを確認している。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0047】
特に、製造コスト低減の観点で、更なる高耐食性および高靭性に優れたフェライトステンレス鋼板の安定製造が望まれる中、本発明が提供する鋼板は、特に耐食性および靭性が要求される構造部材用の素材として有望である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、C:0.015%以下、Si:0.5%以下、Mn:1.0%以下、P:0.06%以下、S:0.01%以下、Al:0.01〜0.35%、N:0.015%以下、Cr:18.0〜24.0%、Mo:0.4%以下、Cu:0.3〜0.6%、Ti:0.01%以下、V:0.01〜0.10%、Nb:0.15〜0.35%で、かつ、(Nb+2V)/Ti≧30、8≦(Nb+2V)/(C+N)≦85を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、フェライト相以外の粒状物が2μm以下の粒径で分散した組織を有することを特徴とする靱性に優れた高耐食性フェライト系ステンレス鋼板。
【請求項2】
質量%で、C:0.015%以下、Si:0.5%以下、Mn:1.0%以下、P:0.06%以下、S:0.01%以下、Al:0.01〜0.35%、N:0.015%以下、Cr:18.0〜24.0%、Mo:0.4%以下、Cu:0.3〜0.6%、Ti:0.01%以下、V:0.01〜0.10%、Nb:0.15〜0.35%で、かつ、(Nb+2V)/Ti≧30、8≦(Nb+2V)/(C+N)≦85を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるスラブを1100〜1300℃に加熱し、全体の圧下率が95%以上、1100℃以下での圧下率が75%以上、巻取り温度が650℃以下となるような条件で熱間圧延を行った後、900℃以上で60秒以上保持した後、冷却する焼鈍を施すことを特徴とする靱性に優れた高耐食性フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。

【公開番号】特開2011−225944(P2011−225944A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97599(P2010−97599)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】