説明

鞍乗型車両

【課題】砂等の異物による影響を抑制することができる後輪支持機構を備えた鞍乗型車両を提供する。
【解決手段】鞍乗型車両1は、右後輪39Rおよび左後輪39Lを回転可能に支持する後輪支持機構30を備える。後輪支持機構30は、右スイングアーム35Rと、左スイングアーム35Lと、右スイングアーム35Rと左スイングアーム35Lとを連動させるギヤ機構41を備える。ギヤ機構41は、右スイングアーム35Rを回転させる第1ギヤ43と、左スイングアーム35Lを回転させる第2ギヤ44と、第1ギヤ43と第2ギヤ44とを互いに逆方向に回転させる少なくとも1つの中間ギヤ45と、車体に対して回転可能に支持され、少なくとも中間ギヤ45を収容するギヤケース47を有する。後輪支持機構30は、ギヤケース47に支持され、ギヤケース47の回転にともなって伸縮する緩衝器55をさらに備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、後輪が左右一対の車輪で構成され、車体を傾斜させて旋回可能な鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の技術
特許文献1は、右後輪および左後輪と、右後輪および左後輪を支持する後輪支持機構とを備えた車両を開示している。後輪支持機構は、右後輪を支持する右スイングアームと、左後輪を支持する左スイングアームと、右スイングアームおよび左スイングアームを連動させるギヤ機構と、を備えている。ギヤ機構は、右スイングアームと連動するベベルギヤ(17)と、左スイングアームと連動するベベルギヤ(17)と、これら双方のベベルギヤ(17)を連動させる2つのベベルギヤ(18)を備えている。ベベルギヤ(18)にはアーム(19)が取り付けられている。アーム(19)には緩衝器(20)の下端が取り付けられている。緩衝器(20)の上端は、車体のフレーム(1)に取り付けられている。
【0003】
このように構成される車両では、右スイングアームおよび左スイングアームが互いに反対方向に揺動し、右後輪および左後輪が互いに反対方向に上下動する。よって、水平な路面に対して車体を傾斜させることができる。また、傾いている路面に対して車体を直立させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第97/27071号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
特許文献1に記載の車両では、ベベルギヤ(18)が露出しているので、砂や石などの異物がベベルギヤ(18)に噛み込んで動作不良を起こすおそれがある。また、異物によってベベルギヤ(18)が損傷するおそれがある。
【0006】
特許文献1に記載の車両では、アーム(19)を介してベベルギヤ(18)と緩衝器(20)が接続されているので、ベベルギヤ(18)を保護する部材を適切に設けることは困難である。仮に、ベベルギヤ(18)を収容するケースを設けようとすれば、ベベルギヤ(18)とともに緩衝器(20)を収容する大きなケースを採用せざるを得ない。この結果、ギヤ機構が大型化してしまうという不都合がある。
【0007】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、砂等の異物による影響を抑制することができる後輪支持機構を備えた鞍乗型車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明は、車体を傾斜させて旋回可能な鞍乗型車両であって、右後輪および左後輪と、前記右後輪および前記左後輪をそれぞれピボット軸周りに回転可能に支持する後輪支持機構と、を備え、前記後輪支持機構は、前記右後輪を前記ピボット軸周りに回転可能に支持する右スイングアームと、前記左後輪を前記ピボット軸周りに回転可能に支持する左スイングアームと、前記右スイングアームと前記左スイングアームとを連動させるギヤ機構と、を備え、前記ギヤ機構は、前記右スイングアームを回転させる第1ギヤと、前記左スイングアームを回転させる第2ギヤと、前記第1ギヤと前記第2ギヤとを互いに逆方向に回転させる少なくとも1つの中間ギヤと、を有し、前記ギヤ機構は、前記車体に対して回転可能に支持され、少なくとも前記中間ギヤを収容するギヤケースをさらに有し、前記後輪支持機構は、前記ギヤケースに支持され、前記ギヤケースの回転にともなって伸縮する緩衝器をさらに備えている鞍乗型車両である。
【0009】
[作用・効果]本発明に係る鞍乗型車両によれば、中間ギヤは第1ギヤと第2ギヤを互いに連動させ、第1ギヤと第2ギヤを互いに反対向きに回転させる。第1ギヤおよび第2ギヤが逆方向に回転すると、右スイングアームおよび左スイングアームは、互いに逆向きにピボット軸周りに回転し、右後輪および左後輪は互いに反対向きに上下動する。よって、右後輪および左後輪をそれぞれ路面に接触させつつ車体を傾斜させることができ、車体を傾斜させて旋回可能である。
【0010】
また、中間ギヤを収容するギヤケースを備えているので、砂や小石等の異物が中間ギヤに噛み込むことを好適に抑制することができる。また、砂等が中間ギヤに衝突することによって中間ギヤが損傷することも好適に抑制することができる。
【0011】
また、ギヤケースは車体に対して回転可能に設けられている。緩衝器はギヤケースの回転に対して伸縮するように設けられている。よって、右後輪および/または左後輪が路面から受ける衝撃の大きさや向きに応じて、ギヤケースを回転させることができる。このギヤケースの回転と、第1ギヤおよび第2ギヤの相対的な回転とによって、右後輪および左後輪をそれぞれ適切な高さ位置に上下動させることができる。たとえば、右後輪および左後輪を同じ方向に上下動させることも可能である。また、右後輪および左後輪の一方のみを上下動させずに、他方のみを上下動させることも可能である。さらに、ギヤケースの回転に応じて緩衝器が伸縮するので、右後輪および/または左後輪が受ける衝撃を好適に吸収することができる。
【0012】
さらに、緩衝器はギヤケースに支持されている。ギヤケースは、中間ギヤ等に比べて強度・剛性が比較的に高いので、ギヤケースから緩衝器に対して衝撃を適切に伝えることができる。このため、緩衝器を的確に伸縮させることができ、緩衝器によって衝撃を好適に吸収させることができる。
【0013】
以上のとおり、本発明によれば、後輪支持機構は第1ギヤ、第2ギヤおよび中間ギヤを有するギヤ機構を備えているので、右後輪および左後輪を互いに逆方向に上下動させることができる。また、ギヤ機構は回転可能に設けられるギヤケースを有し、後輪支持機構はギヤケースの回転に応じて伸縮する緩衝器を備えているので、右後輪および/または左後輪が路面から受ける衝撃の大きさや向きに応じて、右後輪および左後輪をそれぞれ適切な高さ位置に上下動させることもできる。この場合には、さらに、路面から受ける衝撃を好適に吸収することができる。また、中間ギヤはギヤケースに収容されているので、砂等の異物から中間ギヤを好適に保護することができる。さらに、ギヤケースによって中間ギヤを堅牢に支持することができる。また、緩衝器はギヤケースに支持されているので、緩衝器に衝撃を適切に伝えることができる。よって、緩衝器は衝撃を好適に吸収することができる。
【0014】
ここで、「鞍乗型車両」は、ライダーが鞍にまたがった状態で乗車可能な車両のほかに、足をそろえて乗車可能なスクータ型の車両も含む。「車体」は車体フレームおよび車体フレームに直接的または間接的に固定されて車体フレームと一体とみなせるものを含む。
【0015】
上述した発明において、前記ギヤ機構は、前記中間ギヤを回転可能に支持する中間ギヤ用シャフトをさらに有し、前記中間ギヤ用シャフトは前記ギヤケースの内部に設けられ、前記緩衝器は前記ギヤケースの外側に配置されていることが好ましい。ギヤケースは中間ギヤおよびこれに関連する部材である中間ギヤ用シャフトを収容するので、中間ギヤを一層適切に保護することができる。また、緩衝器はギヤケース外に設けられ、ギヤケースは緩衝器を収容しないので、ギヤケースを好適に小型化することができる。
【0016】
上述した発明において、前記第1ギヤおよび前記第2ギヤはそれぞれ同一の回転中心軸周りに回転可能に前記ギヤケースに保持され、前記ギヤケースは前記回転中心軸周りに回転可能に前記車体に保持されていることが好ましい。これによれば、第1ギヤと第2ギヤとが互いに逆方向に回転するときの第1ギヤおよび第2ギヤの回転中心(すなわち、回転中心軸)と、ギヤケースの回転によって第1ギヤと第2ギヤが一体に回転するときの第1ギヤおよび第2ギヤの回転中心とを一致させることができる。よって、ギヤケースの回転によって右スイングアームおよび左スイングアームを好適に回転させることができる。また、ギヤケースの可動範囲を小さくすることができる。これにより、ギヤ機構の設置スペースを小さくすることができる。
【0017】
上述した発明において、前記ギヤケースは、前記回転中心軸が前記ピボット軸と同軸となるように配置されていることが好ましい。これによれば、第1ギヤの回転中心軸周りの回転と右スイングアームのピボット軸周りの回転を、簡素な構造によって連動させることができる。同様に、第2ギヤの回転と左スイングアームの回転を、簡素な構造によって連動させることができる。また、ギヤケースはピボット軸周りに回転可能に保持されることとなり、後輪支持機構の設置スペースをコンパクトにすることができる。
【0018】
上述した発明において、前記ギヤケースは、前記回転中心軸が前記ピボット軸と平行となるように配置されていることが好ましい。これによれば、ギヤケースをピボット軸の位置から外れた位置に配置することができる。また、回転中心軸とピボット軸が平行であるので、第1ギヤの回転と右スイングアームの回転を好適に連動させることができる。同様に、第2ギヤの回転と左スイングアームの回転を好適に連動させることができる。
【0019】
上述した発明において、前記ギヤケースは、平面視または側面視で前記回転中心軸が前記ピボット軸と交差するように配置されていることが好ましい。これによれば、ギヤケースの配置の自由度を高めることができる。
【0020】
上述した発明において、前記ピボット軸と同軸の軸心を有し、前記右スイングアームと連結され、前記第1ギヤに連動してその軸心周りに回転する右シャフトと、前記車体に支持され、前記右シャフトを回転可能に保持する右シャフト保持部と、前記ピボット軸と同軸の軸心を有し、前記左スイングアームと連結され、前記第2ギヤに連動してその軸心周りに回転する左シャフトと、前記車体に支持され、前記左シャフトを回転可能に保持する左シャフト保持部と、を備えることが好ましい。右シャフトおよび右シャフト保持部を備えているので、右スイングアームを車体に回転可能に支持することができる。同様に、左シャフトおよび左シャフト保持部を備えているので、左スイングアームを車体に回転可能に支持することができる。また、右シャフトによって、右スイングアームと第1ギヤを好適に連動させることができる。同様に、左シャフトによって、左スイングアームと第2ギヤを好適に連動させることができる。
【0021】
上述した発明において、前記右シャフトは前記右スイングアームと一体であり、前記左シャフトは前記左スイングアームと一体であることが好ましい。これによれば、部品点数を低減させることができ、簡素な構造にすることができる。
【0022】
上述した発明において、前記右シャフト保持部は、前記右シャフトをその軸心周りに回転可能に支持する右ベアリングを含み、前記左シャフト保持部は、前記左シャフトをその軸心周りに回転可能に支持する左ベアリングを含むことが好ましい。右ベアリングおよび左ベアリングを備えているので、右シャフト及び左シャフトを好適に支持することができる。
【0023】
上述した発明において、前記右シャフトおよび前記左シャフトはそれぞれ、前記ギヤケースを回転可能に保持することが好ましい。右シャフトおよび左シャフトは、左右のスイングアームのみならずギヤケースも支持する。よって、部品点数を低減することができる。また、後輪支持機構の設置スペースを一層コンパクトにすることができる。
【0024】
上述した発明において、前記ギヤケースは、前記右シャフトおよび前記左シャフトによって前記ピボット軸周りに回転可能に保持されていることが好ましい。右シャフトおよび左シャフトはそれぞれピボット軸と同軸の軸心を有する。よって、右シャフトおよび左シャフトは、ギヤケースをピボット軸周りに回転可能に容易に保持することができる。また、ギヤケースをピボット軸周りに回転可能に保持することで、後輪支持機構の設置スペースをコンパクトにすることができる。
【0025】
上述した発明において、前記第1ギヤは、前記ピボット軸と同軸の回転中心軸周りに回転可能にギヤケースに保持され、かつ、前記右シャフトと一体に回転可能に前記右シャフトに連結されており、前記第2ギヤは、前記ピボット軸と同軸の回転中心軸周りに回転可能にギヤケースに保持され、かつ、前記左シャフトと一体に回転可能に前記左シャフトに連結されていることが好ましい。これによれば、第1ギヤと右スイングアームとを一体に回転させることができる。同様に、第2ギヤと左スイングアームとを一体に回転させることができる。
【0026】
上述した発明において、前記右シャフトおよび前記左シャフトはそれぞれ段差部を有し、前記第1ギヤと前記第2ギヤの双方、および、前記ギヤケースの少なくともいずれかは、前記右シャフトおよび前記左シャフトの前記段差部と接触し、前記右シャフトおよび前記左シャフトの前記ピボット軸方向の各位置ずれを規制するフランジ部を有することが好ましい。右シャフトの段差部とフランジ部が接触することによって、右シャフトがその軸心方向に位置ずれすることを好適に規制することができる。同様に、左シャフトの段差部とフランジ部が接触することによって、左シャフトがその軸心方向に位置ずれすることを好適に規制することができる。
【0027】
上述した発明において、車幅方向において、前記ギヤケースは前記右シャフト保持部と前記左シャフト保持部との間に設けられていることが好ましい。ギヤ機構を好適に小型化することができる。
【0028】
上述した発明において、前記ギヤケースの外周面と接触して、車体に対して前記ギヤケースを回転可能に保持するケース保持部を備えていることが好ましい。ケース保持部によれば、ギヤケースを堅牢に保持することができる。
【0029】
なお、本明細書は、次のような鞍乗型車両に係る発明も開示している。
【0030】
(1)上述した発明において、前記ギヤケース内に設けられ、右シャフトおよび左シャフトをそれぞれ回転可能に支持する内部ベアリングを備えている鞍乗型車両。
【0031】
前記(1)に記載の発明によれば、ギヤ機構の一層の小型化を図ることができる。
【0032】
(2)上述した発明において、前記第1ギヤおよび前記第2ギヤは、それぞれベベルギヤである鞍乗型車両。
【0033】
前記(2)に記載の発明によれば、ギヤ機構を好適に実現することができる。
【発明の効果】
【0034】
この発明に係る鞍乗型車両によれば、右後輪および左後輪を互いに逆方向に上下動させることができる。なおかつ、右後輪および/または左後輪が路面から受ける衝撃の大きさや向きに応じて、右後輪および左後輪をそれぞれ適切な高さ位置に上下動させることもできる。この場合には、さらに、路面から受ける衝撃を好適に吸収することができる。また、ギヤケースを備えているので、砂等の異物から中間ギヤを好適に保護することができるとともに、中間ギヤを堅牢に支持することができる。また、中間ギヤ等に比べて強度・剛性が比較的に高いギヤケースから緩衝器に対して衝撃を伝えるので、緩衝器に衝撃を適切に伝えることができる。この結果、緩衝器を的確に伸縮させ、緩衝器によって衝撃を好適に吸収させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例1に係る鞍乗型車両の左側面図である。
【図2】実施例1に係る鞍乗型車両の要部を示す左側面図である。
【図3】実施例1に係る鞍乗型車両の要部を斜め後方から見た斜視図である。
【図4】実施例1に係る鞍乗型車両の要部を示す平面図である。
【図5】ギヤ機構および右/左シャフトの分解詳細図である。
【図6】(a)は車体が直立しているときの鞍乗型車両の背面図であり、(b)は車体が右側に傾斜しているときの鞍乗型車両の背面図である。
【図7】図6(b)に対応した鞍乗型車両の要部を斜め後方から見た斜視図である。
【図8】(a)、(b)は、実施例1の鞍乗型車両の動作例を模式的に示す図である。
【図9】実施例1の鞍乗型車両の動作例をまとめた表である。
【図10】鞍乗型車両の要部の側面図であり、(a)は通常の走行状態を示し、(b)は路面から衝撃を受けた状態を示す。
【図11】(a)、(b)は、実施例1の鞍乗型車両の動作例を模式的に示す図である。
【図12】鞍乗型車両の背面図であり、(a)は通常の走行状態を示し、(b)は右後輪のみが路面から衝撃を受けた状態を示す。
【図13】(a)、(b)は、実施例1の鞍乗型車両の動作例を模式的に示す図である。
【図14】(a)、(b)は、実施例1の鞍乗型車両の動作例を模式的に示す図である。
【図15】実施例2に係る鞍乗型車両の左側面図である。
【図16】実施例2に係る鞍乗型車両の要部を示す左側面図である。
【図17】実施例2に係る鞍乗型車両の平面図である
【図18】(a)は、車体が直立しているときの鞍乗型車両の背面図であり、(b)は、車体が右側に傾斜しているときの鞍乗型車両の背面図である。
【図19】鞍乗型車両の要部の側面図であり、(a)は通常の走行状態を示し、(b)は路面から衝撃を受けた状態を示す。
【図20】変形実施例に係る鞍乗型車両の左側面図である。
【図21】図20におけるa−a矢視断面図である。
【実施例1】
【0036】
以下、図面を参照して本発明の鞍乗型車両について説明する。
【0037】
1.鞍乗型車両の概略構成
図1は、実施例1に係る鞍乗型車両の左側面図である。各図において、x方向は車体の前後方向であり、y方向は車体の車幅方向であり、z方向は車体の上下方向である。車体の前後方向x、車幅方向y、及び、上下方向zは互いに直交している。水平な路面Gに車体が直立している状態では車体の前後方向x、及び、車幅方向yはそれぞれ水平となり、車体の上下方向zは鉛直となる。なお、前後、左右、上下とは、鞍乗型車両1に乗車したライダーにとっての「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」を意味する。
【0038】
図1を参照する。本実施例にかかる鞍乗型車両1は、スクータ型の電動三輪車両である。鞍乗型車両1は、車体フレーム3を備えている。車体フレーム3は、スクータ型に特有のアンダーボーン型である。車体フレーム3は、ヘッドパイプ5と前部フレーム6と後部フレーム7とを含む。ヘッドパイプ5は、車体フレーム3の前端部に設けられている。
【0039】
ヘッドパイプ5内にはステアリングシャフト11が回転自在に挿入されている。ステアリングシャフト11の上端部には、ハンドル13が取り付けられている。ステアリングシャフト11の下端部には、フロントフォーク15が取り付けられている。フロントフォーク15の下端部には、単一の前輪17が回転可能に支持されている。
【0040】
前部フレーム6には、前部カバー19が装着されている。前部フレーム6には、ライダーが足を載せる左右1対のフートレスト21が支持されている。後部フレーム7の上部には、ライダーが着座するシート23が取り付けられている。シート23の下方には、電力を蓄積可能なバッテリ25が設けられている。バッテリ25は後部フレーム7に支持されている。
【0041】
図2は、実施例1に係る鞍乗型車両の要部を示す左側面図であり、図3は、実施例1に係る鞍乗型車両の要部を斜め後方から見た斜視図である。
【0042】
前部フレーム6は、左右一対のダウンチューブ6R、6Lを含む。各ダウンチューブ6R、6Lは、ヘッドパイプ5から後方に向かって斜め下方に延び、その後、湾曲してさらに後方に向かって略水平に延びている。ダウンチューブ6R、6Lの各後端部には、車幅方向yに延びるクロスメンバ8がそれぞれ連結されている。後部フレーム7は、左右一対の後傾斜部7R、7Lと緩衝器支持部7Aとを含む。後傾斜部7R、7Lはクロスメンバ8から後方に向かって斜め上方に延びるように設けられている。緩衝器支持部7Aは車幅方向yに延びるように設けられ、その両端は後傾斜部7R、7Lとそれぞれ連結している。
【0043】
なお、本明細書では、車体フレーム3と、車体フレーム3と一体とみなせる前部カバー19等の部材を含めたものを、適宜に「車体」に呼ぶ。なお、車体フレーム3と一体とみなせる部材は、車体フレーム3に直接的に固定されている部材であってもよいし、間接的に固定されている部材であってもよい。
【0044】
2.後輪支持機構の概要
後輪支持機構30は、左右一対の後輪39R、39Lをピボット軸P周りに回転可能に支持する。後輪支持機構30は、右/左シャフト保持部31R/31L、右/左シャフト33R/33L、右/左スイングアーム35R/35L、ギヤ機構41および緩衝器55を備えている。以下、説明する。
【0045】
3.スイングアーム、電動モータおよび後輪に関連する構成
図3、4を参照する。図4は、実施例1に係る鞍乗型車両の要部を示す平面図である。クロスメンバ8には、右シャフト保持部31Rと左シャフト保持部31Lがそれぞれ支持されている。右シャフト保持部31Rはクロスメンバ8に対して固定されている。右シャフト保持部31Rはクロスメンバ8に対して移動不能に支持されている。左シャフト保持部31Lはクロスメンバ8に対して固定されている。左シャフト保持部31Lはクロスメンバ8に対して移動不能に支持されている。
【0046】
右シャフト保持部31Rは右ベアリング32Rを有している。右ベアリング32Rは、例えばボールベアリングである。右シャフト保持部31Rは、右ベアリング32Rを介して右シャフト33Rを回転可能に支持する。右シャフト33Rは、クロスメンバ8の後方かつ下方において車幅方向yに延びるように設けられている。右シャフト33Rの軸心は車幅方向yと平行である。右シャフト33Rは、その軸心周りに回転可能である。車体に対する右シャフト33Rの軸心の位置は一定であり、変化しない。
【0047】
右シャフト33Rの右端部には、右スイングアーム35Rが接続されている。右スイングアーム35Rは、右シャフト33Rと一体に右シャフト33Rの軸心周りに回転する。右シャフト33Rの軸心は、右スイングアーム35Rのピボット軸Pに相当する。右シャフト33Rと右スイングアーム35Rとは、例えば、セレーション結合またはスプライン結合によって連結されている。このように、右スイングアーム35Rはピボット軸P周りに回転可能に車体に支持されている。
【0048】
右スイングアーム35Rは右シャフト33Rから後方に延びるように設けられている。右スイングアーム35Rの後端部には、右電動モータ37Rが設けられている。右電動モータ37Rはバッテリ25と電気的に接続されている。バッテリ25は右電動モータ37Rに電力の供給をする。右電動モータ37Rには、右後輪39Rが連結されている。右電動モータ37Rは、右後輪39Rを車軸BR周りに回転駆動する。
【0049】
左シャフト保持部31L等は、右シャフト保持部31R等と同様に構成される。すなわち、左シャフト保持部31Lは左シャフト33Lを支持する。左シャフト保持部31Lは左ベアリング32Lを有し、左ベアリング32Lを介して左シャフト33Lを回転可能に支持する。左シャフト33Lは右シャフト33Rの左側方において車幅方向yに延びるように設けられている。左シャフト33Lの軸心は、右シャフト33Rの軸心と同軸である。左シャフト33Lは、その軸心周りに回転可能である。
【0050】
左シャフト33Lの左端部には、左スイングアーム35Lが接続されている。左スイングアーム35Lは、左シャフト33Lと一体に左シャフト33Lの軸心周りに回転する。左スイングアーム35Lのピボット軸Pは、右スイングアーム35Rのピボット軸Pと同軸である。このように、左スイングアーム35Lも回転可能に車体に支持されている。
【0051】
左スイングアーム35Lの後端部には左電動モータ37Lが設けられている。左電動モータ37Lもバッテリ25と電気的に接続されている。左電動モータ37Lには左後輪39Lが連結されている。左電動モータ37Lは、左後輪39Lを車軸BL周りに回転駆動する。
【0052】
右/左電動モータ37R/37Lがそれぞれ右/左後輪39R/39Lを回転駆動すると、鞍乗型車両1は前進する。また、右/左スイングアーム35R/35Lがそれぞれ回転すると、右/左後輪39R/39Lがピボット軸P周りに回転する。以下では、右/左後輪39R/39Lがピボット軸P周りに回転することを、適宜に「上下動する」等と記載する。
【0053】
4.ギヤ機構と緩衝器の構成
クロスメンバ8の後方であって右シャフト33Rと左シャフト33Lの間には、ギヤ機構41が設けられている。ギヤ機構41は、車体の車幅方向yにおける中央部に配置されている。
【0054】
図5はギヤ機構41および右/左シャフトの分解詳細図である。ギヤ機構41は、第1ギヤ43と、第2ギヤ44と、2つの中間ギヤ45と、ギヤケース47とを備えている。第1ギヤ43は右スイングアーム35Rを回転させる。第2ギヤ44は左スイングアーム35Lを回転させる。中間ギヤ45は第1ギヤ43と第2ギヤ44とを互いに逆方向に回転させる。以下、ギヤ機構41の構成について、さらに詳細に説明する。
【0055】
第1ギヤ43、第2ギヤ44および中間ギヤ45は、ギヤケース47内に収容されている。第1ギヤ43と第2ギヤ44は、互いに向かい合うように配置される。第1ギヤ43と第2ギヤ44はそれぞれ、回転中心軸C1回りに回転自在にギヤケース47に支持されている。
【0056】
2つの中間ギヤ45は、互いに向かい合うように、第1ギヤ43と第2ギヤ44との間にそれぞれ配置される。各中間ギヤ45はそれぞれ、第1ギヤ43および第2ギヤ44の双方と噛み合う。各中間ギヤ45はともに、中間ギヤ用シャフト46に回転自在に支持されている。中間ギヤ用シャフト46はギヤケース47に固定されている。つまり、中間ギヤ45も、ギヤケース47に回転自在に支持されている。中間ギヤ用シャフト46はギヤケース47の内部に設けられている。以下では、中間ギヤ45の回転中心を中間ギヤ軸心C2という。回転中心軸C1と中間ギヤ軸心C2とは直交している。
【0057】
第1ギヤ43、第2ギヤ44および中間ギヤ45は、それぞれベベルギヤである。第1ギヤ43と第2ギヤ44は同じ形状を有する。第1ギヤ43の歯数と第2ギヤ44の歯数は同じある。
【0058】
ギヤケース47は、右/左シャフト33R/33L(以下、右/左シャフト33R/33Lを特に区別しないときは適宜に「シャフト33」と言う)を挿入するための貫通孔48a、48bとを有している。貫通孔48aは、回転中心軸C1に沿ってギヤケース47の一側面から第1ギヤ43に達するように形成されている。貫通孔48bは、回転中心軸C1に沿ってギヤケース47の他側面から第2ギヤ44に達するように形成されている。
【0059】
第1ギヤ43は、貫通孔43aとフランジ部43bとを有している。貫通孔43aは、貫通孔48aと連通するように形成されている。貫通孔43aは回転中心軸C1に沿って延びている。フランジ部43bは、貫通孔43aの内壁に形成されている。フランジ部43bは、回転中心軸C1の径方向内側に張り出すように形成されている。同様に、第2ギヤ44は、貫通孔44aとフランジ部44bとを有する。貫通孔44aは、貫通孔48bと連通するように形成され、回転中心軸C1に沿って延びている。フランジ部44bは、貫通孔44aの内壁に、回転中心軸C1の径方向内側に張り出すように形成されている。
【0060】
他方、各シャフト33は、それぞれフランジ部43a、43bと接触する段差部33aを有している。段差部33aは、各シャフト33の外周面からシャフト33の軸心の径方向外側に張り出すように形成されている。各シャフト33の段差部33aは、フランジ部43b、44bに対応する位置に設けられる。
【0061】
ギヤ機構41は、さらに、ギヤケース47に固定される内部ベアリング49a、49bを備える。内部ベアリング49a、49bはそれぞれギヤケース47内に収容されている。内部ベアリング49aは、貫通孔48aに配置されて、第1ギヤ43を回転可能に支持する。内部ベアリング49bは、貫通孔48bに配置され、第2ギヤ44を回転可能に支持する。第1、第2ギヤ43、44はそれぞれ、ギヤケース47に対して回転可能である。内部ベアリング49a、49bは、例えば、転がり軸受けや滑り軸受け(slide bearing)などが例示される。転がり軸受けとしては、ボールベアリングや、円筒軸受け(cylindrical bearing)などが例示される。また、滑り軸受けとしては、プレーンベアリング(plane bearing)などが例示される。
【0062】
ギヤ機構41は、さらに、ギヤケース47に固定されるシール部材51a、51bを有している。シール部51a、51bはそれぞれギヤケース47内に収容されている。シール部材51a、51bは、それぞれ貫通孔48a、48bに設けられている。シール部材51a、51bは、それぞれ貫通孔48a、48bの開口端部に配置されることが好ましい。シール部材51a、51bは環形状を有する。シール部材51a、51bとしては、たとえばオイルシール等が例示される。
【0063】
図4に示すように、ギヤ機構41は、回転中心軸C1がピボット軸Pと同軸となるように配置されている。右シャフト33Rの左端部は、貫通孔48aを通じてギヤケース47内に挿入されている。同様に、左シャフト33Lの右端部は、貫通孔48bを通じてギヤケース47内に挿入されている。シール部材51aは右シャフト33Rと貫通孔48aとの隙間を塞ぎ、シール部材51bは左シャフト33RLと貫通孔48bとの隙間を塞ぐ。これにより、ギヤケース47内に異物が侵入することを防ぐことができる。
【0064】
右シャフト33Rの左端部は、第1ギヤ43に接続されている。右シャフト33Rは、第1ギヤ43と一体にピボット軸P(回転中心軸C1)周りに回転する。これにより、第1ギヤ43と右スイングアーム35Rは一体に回転する。同様に、左シャフト33Lの右端部は、第2ギヤ44に接続される。左シャフト33Lは、第2ギヤ44と一体にピボット軸P(回転中心軸C1)周りに回転する。これにより、第2ギヤ44と左スイングアーム35Lは一体に回転する。
【0065】
内部ベアリング49aは第1ギヤ43とともに右シャフト33Rを回転可能に支持する。内部ベアリング49bは第2ギヤ44とともに左シャフト33Lを回転可能に支持する。逆に言えば、右シャフト33Rおよび左シャフト33Lは、ギヤケース47をピボット軸P周りに回転可能に保持する。
【0066】
右シャフト33Rが所定位置まで貫通孔43aに挿入されことにより、右シャフト33Rの段差部33aはフランジ部43bと接触する。これにより、右シャフト33Rの位置決めが行われる。また、右シャフト33Rがその軸心方向(すなわち、ピボット軸P方向)に位置ずれすることが規制される。同様に、左シャフト33Lの段差部33aは、フランジ部44bと接触する。これにより、左シャフト33Lの位置決めが行われるとともに、左シャフト33Lの位置ずれが規制される。
【0067】
図2、3に示すように、ギヤケース47は、回転中心軸C1を中心とする略筒形状を有する。ギヤケース47の外周面には、ステー53が固定されている。ギヤケース47とステー53とは、鋳造などによって一体に成形されても良い。ギヤケース47とステー53とは溶接により固定されていてもよい。ステー53は、ギヤケース47の円周状の表面に固定されていることが好ましい。また、ステー53は、ギヤケース47の周方向のわたって固定されていることが好ましい。さらに、ステー53は、ギヤケース47の全周の3分の1以上にわたって固定されていることが好ましく、ギヤケース47の全周の2分の1以上にわたって固定されていることが一層好ましい。ステー53は、ギヤケース47から後方に延びるように設けられている。
【0068】
ステー53の後端部には、緩衝器55の一端(下端部)が回転可能に接続されている。緩衝器55の他端(上端部)は、後部フレーム7(緩衝器支持部7A)に回転可能に接続されている。緩衝器55は、クロスメンバ8の後方に位置し、側面視で右/左スイングアーム35R/Lの上方に位置する。緩衝器55は、ギヤケース47の回転に応じて伸縮する。本実施例1では、右後輪39Rおよび/または左後輪39Lが受ける衝撃が上向きの場合に緩衝器55が収縮するように、緩衝器55はギヤケース47に連結されている。緩衝器55は、ギヤケース47の回転を抑制しつつ、ギヤケース47を支持している。また、緩衝器55は伸縮することによってギヤケース47に伝わる衝撃を吸収する。
【0069】
5.後輪支持機構の動作
ギヤケース47の回転(緩衝器55の伸縮)を伴わない場合と、伴う場合とに分けて説明する。
【0070】
なお、以下の説明では、右/左スイングアーム35R/35Lがピボット軸P周りに回転することを、単に「右/左スイングアーム35R/35Lが回転する」と記載する。同様に、第1、第2ギヤ43、44またはギヤケース47が回転中心軸C1周りに回転することを、単に「回転する」と記載する。
【0071】
6.ギヤケース47の回転を伴わない後輪支持機構の動作
図6乃至図8を参照する。図6(a)は、車体が直立しているときの鞍乗型車両の背面図であり、図6(b)は、車体が右側に傾斜しているときの鞍乗型車両の背面図である。図7は、図6(b)に対応した鞍乗型車両の要部を斜め後方から見た斜視図である。なお、図3は、図6(a)に対応した鞍乗型車両の斜視図に相当する。
【0072】
図3、図6(a)は、水平な路面G上に車体が直立している状態を示す。この状態では、各後輪39R、39Lは車体に対して同じ高さ位置にある。右スイングアーム35Rの車体に対する向きと左スイングアーム35Lの車体に対する向きとは、同じである。図6(b)、図7は、水平な路面G上で車体が右側に傾斜している状態を示す。この状態では、右車輪39Rの車体に対する高さ位置は比較的に高く、左後輪39Lの車体に対する高さ位置は比較的に低い。
【0073】
以下では、図6(a)の状態から図6(b)の状態に移るときの動作例を説明する。右後輪39Rの上方へ移動しようとし、左後輪39Lは下方へ移動しようとする。これに伴い、右スイングアーム35Rは上向きに回転しようとし、左スイングアーム35Lは下向きに回転しようとする。第1ギヤ43および第2ギヤ44には、互いに逆向きに回転する力が働く。この力により、中間ギヤ45は中間ギヤ軸心C2周りに円滑に回転する。中間ギヤ45の中間ギヤ軸心C2周りの回転によって、第1、第2ギヤ43、44は相対的に逆方向に回転する(以下、適宜に「相対回転する」という)。すなわち、第1ギヤ43と第2ギヤ44は、互いに逆方向に回転する。第1ギヤ43の回転量(絶対値)と第2ギヤ44の回転量(絶対値)とは同じである。
【0074】
第1ギヤ43の回転と一体に、右スイングアーム35Rは上向きに回転し、右後輪39Rは車体に対して上方に移動する。第2ギヤ44の回転と一体に、左スイングアーム35Lは下向きに回転し、左後輪39Lは車体に対して下方に移動する。左後輪39Lの移動量は右後輪39Rの移動量と略同等である。
【0075】
なお、この場合、右後輪39Rおよび左後輪39Lは緩衝器55を伸縮させるほどの衝撃を路面Gから受けない。よって、ギヤケース47は回転中心軸C1周りに回転せず、緩衝器55は伸縮しない。
【0076】
図8を参照して、上述した動作を改めて説明する。図8(a)、(b)は、上述した動作例を模式的に示す図である。図8(a)は、図6(a)および図3の状態を示し、図8(b)は図6(b)および図7の状態を示す。
【0077】
図8は、後輪支持機構30を左側面から見た図であり、回転中心軸C1(ピボット軸P)を原点としている。参考として、回転中心軸C1をとおり、前後方向xと平行な軸x1と、回転中心軸C1をとおり、上下方向zと平行な軸z1を図示する。また、鞍乗型車両1の「前方」、「後方」、「上方」および「下方」の各方向を付記する。車軸BRは右後輪39Rの位置を表す。車軸BLの位置は左後輪39Lの位置を表す。各後輪39R、39Lが車体に対して同じ高さ位置にあるとき、車軸BRと車軸BLの位置は同じである。
【0078】
第1ギヤ43、第2ギヤ44およびギヤケース47は、便宜上、半径の異なる円で模式的に示す。図8(a)における車軸BR/BLの位置と回転中心軸C1とを結ぶ線を仮想線Lとして、仮想線Lが第1ギヤ43、第2ギヤ44およびギヤケース47と交わる点をそれぞれM、N、Oとする。点Mの移動は第1ギヤ43の車体に対する回転を表す。点Nの移動は第2ギヤ44の車体に対する回転を表す。点Nの移動は、ギヤケース47の車体に対する回転を表す。
【0079】
なお、図8は、回転中心軸C1、車軸BR/BL、点M乃至Oの位置関係を正確に示すものではない。上述した図8の説明は、図11、図13についても同じである。
【0080】
図8(a)の状態から図8(b)の状態に移ると、第1ギヤ43は車体に対して一方向に回転する。第2ギヤ44は車体に対して一方向とは逆向きの他方向に回転する。第1、2ギヤ43、44の各回転量(絶対値)は同じである。ギヤケース47は回転しない。この結果、右後輪39Rは車体に対して上方に移動し、左後輪39Lは車体に対して下方に移動する。
【0081】
図9は、実施例1の鞍乗型車両の動作例をまとめた表である。図9に示すように、後輪支持機構30および右/左後輪39R/39Lの動作は、主として動作1乃至動作8の8種類に大別される。上述した動作例は、動作1に相当する。
【0082】
各動作1乃至8は、「緩衝器の伸縮」と、「第1ギヤと第2ギヤの相対回転」と、「右後輪の上下動」と、「左後輪の上下動」によって区別される。
【0083】
「緩衝器の伸縮」については、緩衝器55が伸張する場合を「伸」で示し、収縮する場合を「縮」で示し、伸縮しない場合を「無」で示す。「第1ギヤと第2ギヤの相対回転」については、第1、第2ギヤ43、44が相対回転する場合を「有」で示し、相対回転しない場合を「無」で示す。なお、第1、第2ギヤ43、44が相対回転することは、中間ギヤ45が中間ギヤ軸心C2周りに回転することと同義である。「右後輪の上下動」の欄では、右後輪39Rが車体に対して上方に移動する、下方に移動する、あるいは、上下動しないのいずれであるかを示す。同様に、「左後輪の上下動」の欄では、左後輪39Lが車体に対して上方に移動する、下方に移動する、あるいは、上下動しないのいずれであるかを示す。
【0084】
図9に示す動作1、2では、緩衝器55が伸縮せず、第1ギヤ43と第2ギヤ44が相対回転する。動作1と動作2の違いは、右後輪39Rおよび左後輪39Lのいずれが上方に移動するかの違いである。
【0085】
車体の左側に傾斜する場合は、動作2に相当する。この場合、後輪支持機構30に含まれる各部材はそれぞれ、上述した動作例とは逆方向に回転または移動する。この結果、左後輪39Lが車体に対して上方に移動し、右後輪39Rが車体に対して下方に移動する。
【0086】
7.ギヤケース47の回転を伴う後輪支持機構に動作(1)
図10は鞍乗型車両の要部の側面図であり、(a)は通常の走行状態(すなわち、路面Gから衝撃を受けていない状態)を示し、(b)は路面Gから衝撃を受けた状態を示す。
【0087】
図10(a)に示すように車体を直立させて走行しているときに、右/左後輪39R/39Lの双方が上向きの衝撃を受けたとする。この場合、右/左スイングアーム35R/35Lがともに車体に対して上向きに回転しようとする。第1、第2ギヤ43、44は車体に対して同じ方向に回転しようとする。この力は、中間ギヤ45を中間ギヤ軸心C2周りに回転させる力としては働かず、中間ギヤ45を回転中心軸C1周りに回転させる力として働く。
【0088】
中間ギヤ45を回転中心軸C1周りに回転させる力が、緩衝器55がギヤケース47の回転を抑制する力を上回ると、ギヤケース47が車体に対して回転し、緩衝器55が収縮する。第1、第2ギヤ43、44および中間ギヤ45は、ギヤケース47と一体に回転中心軸C1周りに回転する。ただし、中間ギヤ45は中間ギヤ軸心C2周りに回転しない。第1、第2ギヤ43、44は相対回転しない。
【0089】
この結果、図10(b)に示すように、右/左スイングアーム35R/35Lは、第1、第2ギヤ43、44と一体に上向きに回転する。右後輪39Rおよび左後輪39Lはそれぞれ車体に対して上方に移動する。右後輪39Rの移動量は左後輪39Lの移動量と等しい。すなわち、各後輪39R、39Lは車体に対して同じ高さ位置まで移動する。緩衝器55は右後輪39Rおよび左後輪39Lが受けた衝撃を吸収する。
【0090】
図11を参照して、上述した動作を改めて説明する。図11(a)、(b)は、上述した動作例を模式的に示す図である。図11(a)は、図10(a)の状態を示し、図11(b)は図10(b)の状態を示す。
【0091】
図11(a)の状態から図11(b)の状態に移ると、第1、2ギヤ43、44およびギヤケース47は車体に対して一体に回転する。すなわち、第1、2ギヤ43、44およびギヤケース47は同じ方向に同じ回転量だけ回転する。第1ギヤ43と第2ギヤ44は相対的に逆方向に回転しない。この結果、右後輪39Rおよび左後輪39Lはともに車体に対して上方に移動する。
【0092】
上述した動作例は、図9に示す動作3に相当する。上述した動作例のほかに、右/左後輪39R/39Lが路面Gから受ける衝撃が下向きの場合は、図9に示す動作4が行われる。この場合、後輪支持機構30に含まれる各部材はそれぞれ、上述した動作例とは逆方向に回転、移動または伸縮する。この結果、右/左後輪39R/39Lはともに車体に対して下方に移動する。
【0093】
8.ギヤケース47の回転を伴う後輪支持機構に動作(2)
右後輪39Rのみが路面Gから上向きの衝撃を受け、左後輪39Lは路面Gから衝撃を受けない場合を例に採って説明する。
【0094】
図12は鞍乗型車両の背面図であり、(a)は通常の走行状態(すなわち、路面Gから衝撃を受けていない状態)を示し、(b)は右後輪39Rのみが路面Gから衝撃を受けた状態を示す。
【0095】
図12(a)に示すように水平な路面G上に車体を直立させて走行している状態を示す。図12(b)は、右後輪39Rのみが路面Gが隆起した凸部G1に乗り上げた状態を示す。図12(a)の状態から図12(b)の状態に急に移ると、右後輪39Rは上向きの衝撃を受ける。右後輪39Rは車体に対して上方に移動しようとする。右スイングアーム35Rが車体に対して上向きに回転しようとする。第1ギヤ43は車体に対して回転しようとする。他方、左後輪39Lは衝撃を受けないので、左スイングアーム35Lは、車体に対して一定の位置を保とうとする。第2ギヤ44には、車体に対する回転を阻止する力が働く。
【0096】
ここで、第2ギヤ44が車体に対して回転しない場合を考える。第1ギヤ43が回転しようとする力は、中間ギヤ45を中間ギヤ軸心C2周りに回転させる力として働く。第2ギヤ44が車体に対して回転しない場合、中間ギヤ45を中間ギヤ軸心C2周りに回転させる力は、第2ギヤ44に対して中間ギヤ45を回転中心軸C1周りに回転させる力として作用する。
【0097】
中間ギヤ45を回転中心軸C1周りに回転させる力が、緩衝器55がギヤケース47の回転を抑制する力を上回ると、ギヤケース47が車体に対して回転し、緩衝器55が収縮する。中間ギヤ45が中間ギヤ軸心C2周りに回転しながら、中間ギヤ45は回転中心軸C1周りに回転する。これに伴い、第1ギヤ43が回転する。第2ギヤ44は回転しないので、第1ギヤ43に対しては相対的に逆方向に回転したことになる。
【0098】
右スイングアーム35Rは第1ギヤ43と一体に上向きに回転する。左スイングアーム35Lは第2ギヤ44とともに車体に対して回転しない。右後輪39Rのみが車体に対して上方に移動し、左後輪39Lを上下動しない。この結果、右後輪39Rは凸部G1に乗り上げ、左後輪39Lは路面Gに接触した状態に保たれる。車体は直立した状態に保たれ、一方に傾いたりしない。緩衝器55は右後輪39Rが受けた衝撃を吸収する。
【0099】
図13を参照して、上述した動作を改めて説明する。図13(a)、(b)は、上述した動作例を模式的に示す図である。図13(a)は、図12(a)の状態を示し、図13(b)は図12(b)の状態を示す。
【0100】
図13(a)の状態から図13(b)の状態に移ると、第1ギヤ43が車体に対して回転する。第2ギヤ44は車体に対して回転しない。よって、第1ギヤ43と第2ギヤ44は相対回転する。ギヤケース47は車体に対して回転する。この結果、右後輪39R(車軸BR)は車体に対して上方に移動し、左後輪39L(車軸BL)は車体に対して上下動しない。
【0101】
ここで、ギヤケース47(中間ギヤ軸心C2)に対する第1ギヤ43の回転と、ギヤケース47(中間ギヤ軸心C2)に対する第2ギヤ44の回転との間には、互いに回転方向が逆向きとなり、回転量(絶対値)が等しいという関係が成り立つ。この関係から、ギヤケース47は、第1ギヤ43と同じ方向に、第1ギヤ43の回転量の2分の1だけ回転することが導かれる。
【0102】
上述した動作例は、図9に示す動作5に相当する。上述した動作例のほかに、左後輪39Lのみが上向きの衝撃を受ける場合は、動作6に相当する。この場合、右スイングアーム35R、右シャフト33R及び第1ギヤ43(以下、「右側部材」と総称する)の動作と、左スイングアーム35L、左シャフト33L及び第2ギヤ44(以下、「左側部材」と総称する)の動作とが相互に入れ替わる。この結果、左後輪39Lのみが車体に対して上方に移動し、右後輪39Rは車体に対して上下動しない。
【0103】
右後輪39Rのみが下向きの衝撃を受ける場合は、図9に示す動作7に相当する。この場合、右スイングアーム35R、右シャフト33R及び第1ギヤ43、中間ギヤ45、ギヤケース47、緩衝器55が、それぞれ反対向きに回転、移動または伸縮する。この結果、右後輪39Rのみが車体に対して下方に移動し、左後輪39Lは車体に対して上下動しない。
【0104】
さらに、左後輪39Lのみが下向きの衝撃を受ける場合は、図9に示す動作8に相当する。この場合、上述した動作7の動作例において、右側部材の動作と左側部材の動作が入れ替わる。この結果、左後輪39Lのみが車体に対して下方に移動し、右後輪39Rは車体に対して上下動しない。
【0105】
上述した動作5乃至8は、右/左後輪39R/39Lの一方が上下動しなかったが、右/左後輪39R/39Lの双方が上下動する場合もある。以下では、右/左後輪39R/39Lの双方が上下動する場合の動作を説明する。
【0106】
図14(a)、(b)は、動作例を模式的に示す図である。図14(a)の状態から図14(b)の状態に移ると、第1ギヤ43と第2ギヤ44が車体に対して回転するとともに、第1ギヤ43と第2ギヤ44は相対回転する。ギヤケース47は車体に対して回転する。これにより、緩衝器55は伸縮する。
【0107】
この結果、右後輪39Rは車体に対して下方に比較的小さく移動し、左後輪39Lは上方に比較的大きく移動する。右後輪39Rの移動量と左後輪39Lの移動量は等しくない。
【0108】
なお、この場合であっても、ギヤケース47(中間ギヤ軸心C2)に対する第1ギヤ43の回転と、ギヤケース47(中間ギヤ軸心C2)に対する第2ギヤ44の回転との間には、互いに回転方向が逆向きとなり、回転量(絶対値)が等しいという関係が成り立つ。この関係を言い換えれば、第1ギヤ43、第2ギヤ44およびギヤケース47が車体に対して回転した回転角度をそれぞれθ1、θ2、θ3とすると、回転角度θ3は回転角度θ1と回転角度θ2の和の2分の1となる。なお、回転角θ1、θ2、θ3は、それぞれ回転する方向に応じて正負の値をとるものとする。
【0109】
このように、実施例1に係る鞍乗型車両1によれば、第1ギヤ43、第2ギヤ44および中間ギヤ45を有するギヤ機構41を備えている。よって、右スイングアーム35Rおよび左スイングアーム35Lを互いに逆向きに円滑に回転させることができ、右後輪39Rおよび左後輪39Lを互いに逆向きに円滑に上下動させることができる。このため、右後輪39Rおよび左後輪39Lをそれぞれ路面Gに接触させつつ車体を傾斜させることができる。よって、鞍乗型車両1は車体を傾斜させつつ旋回走行することができる。
【0110】
また、ギヤ機構41は第1ギヤ43、第2ギヤ44および中間ギヤ45(以下、「第1ギヤ43等」という)を収容するギヤケース47を備えているので、第1ギヤ43等を好適に保護することができる。例えば、第1ギヤ43等に砂や小石等の異物が噛み込むことを好適に抑制できる。また、第1ギヤ43等に砂等が衝突することを好適に抑制することができ、第1ギヤ43等が損傷することを未然に防ぐことができる。
【0111】
また、ギヤ機構41は、中間ギヤ用シャフト46を収容するので、中間ギヤ45を一層的確に保護することができる。
【0112】
また、ギヤケース47自体が車体に対して回転可能に設けられているとともに、ギヤケース47の回転にともなって伸縮する緩衝器55を備えている。よって、右後輪39Rおよび/または左後輪39Lが路面Gから受ける衝撃の大きさや向きに応じて、ギヤケース47が回転する。このギヤケース47の回転と、第1ギヤ43および第2ギヤ44の相対回転とによって、右後輪39Rおよび左後輪39Lをそれぞれ適切な高さ位置に上下動させることができる。すなわち、右後輪39Rおよび左後輪39Lを互いに逆向きに上下動させるのみならず、路面Gの条件などに応じて右後輪39Rおよび左後輪39Lをそれぞれ任意の高さ位置に上下動させることもできる。また、ギヤケース47の回転に応じて緩衝器55が伸縮することによって、緩衝器55は右後輪39Rおよび/または左後輪39Lが受ける衝撃を好適に吸収することができる。
【0113】
また、緩衝器55はステー53を介してギヤケース47に支持されている。ギヤケース47はギヤ機構41に含まれる部材の中で比較的に強度・剛性が高い部材である。よって、ギヤケース47は緩衝器55に衝撃を適切に伝達することができ、緩衝器55を的確に伸縮させることができる。この結果、緩衝器55は効果的に衝撃を吸収することができる。また、ギヤケース47はギヤ機構41の部材の中で比較的大きい部材である。このようなギヤケース47によって緩衝器55を支持しているので、緩衝器55を支持する部位の面積を容易に大きくすることができる。換言すれば、ギヤケース47とステー53との接合部を大きくすることができる。これのため、さらに、緩衝器55と接続されるステー53の後端部も大きくすることができる。この結果、応力の集中を抑制でき、支持強度を向上させることができる。
【0114】
また、緩衝器55はギヤケース47の外部に設けられ、ギヤケース47は緩衝器55を収容しないので、ギヤケース47を好適に小型化することができる。
【0115】
また、第1ギヤ43及び第2ギヤ44の回転中心軸C1はピボット軸Pと同軸である。このため、第1ギヤ43及び第2ギヤ44を右/左スイングアーム35R/35Lにそれぞれ好適に接続することができる。
【0116】
また、ギヤケース47は、第1ギヤ43及び第2ギヤ44の回転中心軸C1と同軸周りに回転可能に設けられている。よって、ギヤケース47が回転しても、回転中心軸C1の車体に対する位置は変わらない。ギヤケース47の可動範囲は小さくなり、ギヤ機構41の設置スペースを小さくすることができる。また、回転中心軸C1とピボット軸Pとの位置関係を一定に保つことができる。よって、第1ギヤ43と右スイングアーム35R、および、第2ギヤ44と左スイングアーム35Lをそれぞれ好適に連動させることができる。さらに、ギヤケース47の回転によって第1ギヤ43と第2ギヤ44が一体に回転するときの第1ギヤ43および第2ギヤ44の回転中心は、第1ギヤ43と第2ギヤ44が相対回転するときの第1ギヤ43および第2ギヤ44の回転中心(すなわち、回転中心軸C1)と一致する。このため、ギヤケース47の回転によって右/左スイングアーム35R/35Lを好適に回転させることができる。
【0117】
また、右シャフト33R及び右シャフト保持部31Rを備えているので、右スイングアーム35Rを車体に回転可能に好適に支持することができる。同様に、左シャフト33L及び左シャフト保持部31Lを備えているので、左スイングアーム35Lを車体に回転可能に好適に支持することができる。また、右/左シャフト保持部31R/31Lは、それぞれ右/左ベアリング32R/32Lを備えている。よって、右/左シャフト33R/33Lをそれぞれ回転可能に保持することができる。
【0118】
右シャフト33Rは、右スイングアーム35Rおよび第1ギヤ43とを一体に回転可能に連結する。よって、第1ギヤ43の回転と右スイングアーム35Rの回転を好適に連動させることができる。同様に、左シャフト33Lは左スイングアーム35Lおよび第2ギヤ44と一体に回転可能に連結する。よって、第1ギヤ43の回転と右スイングアーム35Rの回転を好適に連動させることができる。
【0119】
右/左シャフト33R/33Lは、さらにギヤケース47を保持する。よって、ギヤ機構41を保持するための専用の部材を省略することができ、構造を簡略化することができる。また、後輪支持機構30の設置スペースをコンパクトにすることができる。また、右シャフト33R及び左シャフト33Lは、その軸心がピボット軸P(回転中心軸C1)と一致するように配置されている。このような右/左シャフト33R/33Lによれば、ギヤケース47をピボット軸Pと同軸周りに回転可能に好適に保持することができる。
【0120】
また、右/左シャフト33R/33Lはそれぞれ段差部33aを有し、第1、第2ギヤ43、44は、段差部33aと接触するフランジ部43b、44bを有する。よって、右/左シャフト33R/33Lをギヤケース47に対して好適に位置決めすることができる。また、右/左シャフト33R/33Lがギヤケース47に対して位置ずれしたり、ギヤケース47から抜けることを好適に抑制することができる。
【0121】
また、車幅方向yにおいて、ギヤケース47は、右シャフト保持部31Rと左シャフト保持部31Lの間で設けられている。これにより、ギヤ機構41を好適に小型化することができる。
【0122】
また、ギヤ機構41は、右/左シャフト33R/33Lを回転可能に支持する内部ベアリング49a、49bを備え、この内部ベアリング49a、49bはギヤケース47内に配置されている。これにより、ギヤ機構41の一層の小型化を図ることができる。
【0123】
また、右電動モータ37Rと左電動モータ37Lとを別個に備えている。このため、右電動モータ37Rが発生した動力を全て右後輪39Rに伝達することができ、左電動モータ37Lが発生した動力を全て左後輪39Lに伝達することができる。すなわち、各電動モータ37R、37Lが発生した動力をさらに右/左後輪39R/39Lに分配する機構を省略することができる。よって、鞍乗型車両1の構造を簡素化することができる。
【実施例2】
【0124】
以下、図面を参照してこの発明の実施例2を説明する。なお、実施例1と同じ構成については同符号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0125】
図15は、実施例2に係る鞍乗型車両の左側面図であり、図16は、実施例2に係る鞍乗型車両の要部を示す左側面図であり、図17は、実施例2に係る鞍乗型車両の平面図である。
【0126】
1.後輪支持機構の概要
実施例2に係る後輪支持機構60は、ギヤ機構41と緩衝器65との間に設けられるリンク機構71を備えている。後輪支持機構60は、実施例1で説明した右/左シャフト保持部31R/31L、右/左シャフト33R/33L、右/左スイングアーム35R/35L、ギヤ機構41を含む。以下では、主にリンク機構71に関して説明する。
【0127】
2.リンク機構に関連する構成
【0128】
リンク機構71は、ギヤ機構41の前方であって、車体フレーム3(前部フレーム6)の下方に配置されている。リンク機構71は、ブラケット73とロッド75を含む。
【0129】
ブラケット73は、側面視で略L字形状を有する。ブラケット73の上端部が、前部フレーム6の湾曲部付近に水平軸周りに回転可能に支持されている。ブラケット73の下端部および中央の屈曲部は、前部フレーム6の下方において揺動する。
【0130】
ロッド75は、ブラケット73とギヤケース47との間に設けられている。ロッド75は、平面視で前後方向xと略平行となるように配置されている。ロッド75の前端部は、ブラケット73の中央の屈曲部に回転可能に接続されている。ロッド75に対応して、ギヤケース47の外周面には、ステー63が下方に延びるように固定的に取り付けられている。ロッド75の後端部は、ステー63の下端部に回転可能に接続されている。ロッド75は、側面視で後端部に比べて前端部が高くなるように傾けて設けられている。
【0131】
緩衝器65は、ブラケット73と車体フレーム3(前部フレーム6)との間に設けられている。緩衝器65の前端部は、ブラケット73の下端部に回転可能に接続されている。緩衝器65の後端部は、前部フレーム6に回転可能に接続されている。緩衝器65が前部フレーム6に支持される位置は、ブラケット73が前部フレーム6に支持される位置の後方である。緩衝器65は、平面視でロッド75の側方に並ぶように配置されている。緩衝器65は、側面視で後端部に比べて前端部が低くなるように傾けて設けられている。緩衝器65は、側面視でロッド75と交差する。
【0132】
ギヤケース47が回転すると、ロッド75が略前後方向に移動し、ブラケット73が揺動し、緩衝器65が伸縮する。本実施例2においても、右後輪39Rおよび/または左後輪39Lが受ける衝撃が上向きの場合に緩衝器65が収縮するように、緩衝器65がギヤケース47に連結されている。
【0133】
3.後輪支持機構の動作
実施例2の後輪支持機構60においても、ギヤケース47の回転を伴わない場合と、伴う場合とに大別される。ここで、実施例1と同様の動作については簡略に説明する。
【0134】
4.ギヤケース47の回転を伴わない後輪支持機構に動作
後輪支持機構60は、実施例1で説明した動作と基本的に同じ動作をする。図18(a)は、車体が直立しているときの鞍乗型車両の背面図であり、図18(b)は、車体が右側に傾斜しているときの鞍乗型車両の背面図である。
【0135】
図18(a)では、水平な路面G上に車体が直立している状態を示す。図18(b)では、水平な路面G上に車体を右側に傾斜させている状態を示す。図18(a)に示す状態から図18(b)に示す状態に移るとき、第1ギヤ43と第2ギヤ44は相対回転する。ギヤケース47は回転しない。このため、ロッド75は移動せず、ブラケット73は揺動せず、緩衝器65は伸縮しない。第1ギヤ43の回転に応じて、右スイングアーム35Rは上向きに回転し、右後輪39Rは車体に対して上方に移動する。第2ギヤ44の回転に応じて、左スイングアーム35Lは下向きに回転し、左後輪39Lは車体に対して下方へ移動する。この動作例は、図9の動作1に相当する。
【0136】
5.ギヤケース47の回転を伴う後輪支持機構に動作
後輪支持機構60は、実施例1で説明した動作に加えて、リンク機構71が動作する。
【0137】
図19は鞍乗型車両の要部の側面図であり、(a)は通常の走行状態(すなわち、路面Gから衝撃を受けていない状態)を示し、(b)は路面Gから衝撃を受けた状態を示す。
【0138】
図19(a)に示すように車体を直立させて走行しているときに、右/左後輪39R/39Lが上向きの衝撃を受けたとする。この場合、右/左スイングアーム35R/35Lがともに車体に対して上向きに回転しようとする。第1、第2ギヤ43、44は車体に対して同じ方向に回転しようとする。この力は、中間ギヤ45を回転中心軸C1周りに回転させる力として働く。
【0139】
中間ギヤ45を回転させる力が、緩衝器65がギヤケース47の回転を抑制する力を上回ると、ギヤケース47が車体に対して回転する。ロッド75は後方に移動し、ブラケット73は揺動し、緩衝器65が収縮する。第1、第2ギヤ43、44および中間ギヤ45は、ギヤケース47と一体に回転中心軸C1周りに回転する。このとき、中間ギヤ45は中間ギヤ軸心C2周りに回転しないので、第1、第2ギヤ43、44は相対回転しない。
【0140】
この結果、図19(b)に示すように、右/左スイングアーム35R/35Lは、第1、第2ギヤ43、44と一体に上向きに回転する。右後輪39Rおよび左後輪39Lはそれぞれ車体に対して上方に移動する。各後輪39R、39Lは車体に対して同じ高さ位置まで移動する。この動作例は、図9に示す動作3に相当する。
【0141】
以上の動作説明から明らかなように、実施例2の後輪支持機構60も、図9に示す各種の動作1乃至8を行うことができる。
【0142】
このように、実施例2に係る鞍乗型車両1においても、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0143】
また、実施例2に係る鞍乗型車両1では、ギヤ機構41と緩衝器65との間に設けられ、ギヤケース47の回転に応じて緩衝器65を伸縮させるリンク機構71を備えている。このため、ギヤ機構41から緩衝器65に好適に衝撃を伝達することができ、緩衝器65を的確に伸縮させることができる。よって、緩衝器65は効果的に衝撃を吸収することができる。
【0144】
また、リンク機構71を備えているので、緩衝器65の配置の自由度を高められる。本実施例2では、緩衝器65を車体フレーム3(前部フレーム6)の下方に配置することで、車体フレーム3の下方のスペースを有効に活用することができる。さらに、リンク機構71自体も、車体フレーム3(前部フレーム6)の下方に配置することで、車体フレーム3の下方のスペースを一層有効に活用することができる。また、前部フレーム6の後端部付近、言い換えれば、右/左スイングアーム35R/35Lの前端部付近に配置される後輪支持機構60の部材を少なくすることができる。これにより、バッテリ25などの他部材の配置の自由度を高めることができる。
【0145】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0146】
(1)上述した実施例1、2では、回転中心軸C1とピボット軸Pは同軸であったが、これに限られない。
【0147】
図20、21を参照する。図20は、変形実施例に係る鞍乗型車両の左側面図であり、図21は図20におけるa−a矢視断面図である。図示するように、変形実施例の鞍乗型車両1は、後輪支持機構80を備えている。後輪支持機構80は、右/左スイングアーム35R/35Lと、ギヤ機構41と備えている。しかしながら、それらの位置関係が、実施例1、2で説明した後輪支持機構30、60と異なっている。以下、具体的に説明する。
【0148】
右/左スイングアーム35R/35Lはそれぞれピボット軸P周りに回転可能に設けられている。ギヤ機構41は、第1ギヤ43と、第2ギヤ44と、中間ギヤ45と、ギヤケース47とを含む。第1ギヤ43および第2ギヤ44はそれぞれ回転中心軸C1周りに回転可能にギヤケース47に支持されている。ギヤケース47は、この回転中心軸C1がピボット軸Pと平行となるように、配置されている。図20、21では、回転中心軸C1がピボット軸Pの前方に位置するように配置されたギヤ機構41を例示している。
【0149】
第1ギヤ43と右スイングアーム35Rとの間には、右伝達機構81Rが設けられている。右伝達機構81Rは、平行な軸間で(すなわち、回転中心軸C1とピボット軸Pの間で)回転動力を伝達する。
【0150】
右伝達機構81Rは、互いに噛み合う一対の伝達ギヤ83a、83bと、各伝達ギヤ83a、83bを回転可能に支持するケース83cとを備えている。ケース83cは車体に支持されている。ケース83cはクロスメンバ8に対して固定されている。具体的には、ケース83cはクロスメンバ8に移動不能に支持されている。ケース83cは、たとえば、ボルト等によってクロスメンバ8に取り付けられている。
【0151】
伝達ギヤ83aおよび伝達ギヤ83bはケース83cによって回転可能に支持されている。伝達ギヤ83aは回転中心軸C1と同軸周りに回転可能である。伝達ギヤ83bはピボット軸Pと同軸周りに回転可能である。第1ギヤ43は右第1シャフト84aによって伝達ギヤ83aと連結されている。第1ギヤ43とギヤ83aとは一体に回転中心軸C1周りに回転する。右スイングアーム35Rは、右第2シャフト84bによって伝達ギヤ83bと連結されている。右スイングアーム35Rと伝達ギヤ83bとは一体にピボット軸P周りに回転する。第1ギヤ43が回転中心軸C1周りに回転すると、これに連動して、伝達ギヤ83aが回転中心軸C1周りに回転し、伝達ギヤ83bがピボット軸P周りに回転し、右スイングアーム35Rがピボット軸P周りに回転する。このように、第1ギヤ43は右伝達機構81Rを介して右スイングアーム35Rを回転させる。
【0152】
同様に、第2ギヤ44と左スイングアーム35Lとの間には、左伝達機構81Lが設けられている。左伝達機構81Lは、伝達ギヤ86a、伝達ギヤ86bおよびケース86cを備える。第2ギヤ44と伝達ギヤ86aとは、左第1シャフト87aによって互いに連結されて、回転中心軸C1周りに一体に回転する。左スイングアーム35Lと伝達ギヤ86bとは、左第2シャフト87bによって互いに連結されて、ピボット軸P周りに回転する。そして、第2ギヤ44の回転に連動して、左スイングアーム35Lが回転する。このように、第2ギヤ44は左伝達機構81Lを介して左スイングアーム35Lを回転させる。
【0153】
ギヤケース47は、右/左第1シャフト84a/87aによって回転可能に保持される。右第1シャフト84aは、右第1シャフト保持部91によって回転可能に保持される。左第1シャフト87aは、左第1シャフト保持部92によって回転可能に保持される。右第1シャフト保持部91と左第1シャフト保持部92とは、それぞれ車体に支持されている。右第1シャフト保持部91と左第1シャフト保持部92は、クロスメンバ8に対してそれぞれ固定されている。右第1シャフト保持部91と左第1シャフト保持部92はそれぞれ、クロスメンバ8に対して移動不能に支持されている。ギヤケース47には緩衝器55が支持されている。緩衝器55は、ギヤケース47の回転にともなって伸縮する。
【0154】
この変形実施例によっても、実施例1、2と同様の動作をすることができる。また、この変形実施例によれば、ギヤ機構41を、ピボット軸Pの位置に関係なく配置することができるので、ギヤ機構41の配置の自由度を高めることができる。
【0155】
また、この変形実施例によれば、回転中心軸C1とピボット軸Pが平行であるので、右/左伝達機構81R/81Lをそれぞれ、簡素な構造とすることができる。
【0156】
さらに、伝達ギヤ83a、83bの各歯数を適宜に選択することで、第1ギヤ43の回転と右スイングアーム35Rの回転とを減速または増速することができる。同様に、伝達ギヤ86a、86bの各歯数を適宜に選択することで、第2ギヤ44の回転と左スイングアーム35Lの回転とを減速または増速することができる。
【0157】
なお、この変形実施例では、回転中心軸C1がピボット軸Pと平行になるようにギヤ機構41(ギヤケース47)を配置するものであったが、これに限られない。すなわち、平面視または側面視で回転中心軸C1がピボット軸Pと交差するように、ギヤ機構41(ギヤケース47)を配置してもよい。この場合、右/左伝達機構81R/81Lは、それぞれ、交差する2軸C1、P間で回転動力を伝達する機構に適宜に変更される。これによれば、さらにギヤ機構41の配置の自由度を高めることができる。
【0158】
また、この変形実施例では、右/左伝達機構81R/81Lを備えていたが、これに限られない。たとえば、右/左伝達機構81R/81Lを減速機構等に変更してもよい。
【0159】
(2)上述した実施例1、2では、ギヤ機構41は、2つの中間ギヤ45を備えていたが、これに限られない。たとえば、単一の中間ギヤを備えるように変更してもよい。あるいは、3個以上の中間ギヤを備えるように変更してもよい。
【0160】
(3)上述した実施例1、2では、ギヤ機構41は、いわゆる差動傘歯車方式であったが、これに限られない。差動装置であれば、適宜に他の方式の差動装置に変更することができる。たとえば、差動装置の方式としては、トルセン(登録商標)方式や、プラネタリーギヤ方式などが例示される。また、第1ギヤ43等はベベルギヤであったが、第1ギヤ43等の形状はこれに限られない。たとえば、第1ギヤ43等を、ウォームギヤ、プラネタリーギヤ、平歯車、ラックなどに変更してもよい。
【0161】
(4)上述した実施例1、2では、右スイングアーム35Rと右シャフト33Rとは別体の部材であったが、これに限られない。すなわち、右スイングアーム35Rおよび右シャフト33Rを一体の部材で構成してもよい。左スイングアーム35Lと左シャフト33Lについても同様である。
【0162】
(5)上述した実施例1、2では、ギヤケース47は第1ギヤ43、第2ギヤ44および中間ギヤ45を収容したが、これに限られない。たとえば、中間ギヤ45を少なくとも収容するギヤケース47であれば、適宜に変更することができる。
【0163】
(6)上述した実施例1、2では、第1、第2ギヤ43、44はそれぞれフランジ部43b、44bを有していたが、これに限られない。たとえば、ギヤケース47がフランジ部を有するように変更してもよい。この場合、ギヤケース47の貫通孔48a、48bの内壁にフランジ部を形成してもよい。
【0164】
(7)上述した実施例1、2では、内部ベアリング49aは第1ギヤ43を介して右シャフト33Rを間接的に支持したが、これに限られない。たとえば、右シャフト33Rを直接的に支持するように内部ベアリング49aを変更してもよい。同様に、内部ベアリング49bを変更してもよい。すなわち、左シャフト33Lを直接的に支持するように内部ベアリング49bを変更してもよい。
【0165】
(8)上述した実施例1、2では、ギヤケース47は右/左シャフト保持部31R/31Lおよび右/左シャフト33R/33Lによって保持したが、これに限られない。たとえば、ギヤケース47の外周面と接触してギヤケース47を回転可能に保持するケース保持部に変更してもよい。
【0166】
(9)上述した実施例2では、ブラケット73およびロッド75を含むリンク機構71を説明したが、これに限られない。リンク機構71の構成については、適宜に選択、変更することができる。
【0167】
(10)上述した実施例1、2では、右/左電動モータ37R/37Lはそれぞれ、右スイングアーム35Rおよび左スイングアーム35Lの後端部に配置されていたが、これに限られない。例えば、電動モータを車体フレーム3に支持するように変更してもよい。この変形実施例の場合においては、適宜に電動モータが発生する動力を右後輪39Rおよび左後輪39Lに伝達する機構を備えるように変更してもよい。また、上述した実施例では、右後輪39Rのみを回転駆動する右電動モータ37Rと左後輪39Lのみを回転駆動する左電動モータ37Lを別個に備えていたが、これに限られない。すなわち、右後輪39Rおよび左後輪39Lを回転駆動する共通の電動モータを備えるように構成してもよい。
【0168】
(11)上述した実施例1、2では、動力源として電動モータ37R、37Lを備える電動車両を例示したが、これに限られない。動力源としてエンジン(内燃機関)を備える車両に適宜に変更することができる。
【0169】
(12)上述した実施例1、2では、単一の前輪17と一対の後輪(39R、39L)を有する三輪車両を例示したがこれに限られない。すなわち、一対の前輪と一対の後輪を有する四輪車両に変更してもよい。
【0170】
(13)上述した各実施例および上記(1)から(12)で説明した各変形実施例については、さらに各構成を他の変形実施例の構成に置換または組み合わせるなどして適宜に変更してもよい。
【符号の説明】
【0171】
1 … 鞍乗型車両
3 … 車体フレーム
30、60、80 … 後輪支持機構
31R … 右シャフト保持部
31L … 左シャフト保持部
32R … 右ベアリング
32L … 左ベアリング
33R … 右シャフト
33L … 左シャフト
33a … 段差部
35R … 右スイングアーム
35L … 左スイングアーム
37R … 右電動モータ
37L … 左電動モータ
39R … 右後輪
39L … 左後輪
41 … ギヤ機構
43 … 第1ギヤ
43a … 貫通孔
43b … フランジ部
44 … 第2ギヤ
44a … 貫通孔
44b … フランジ部
45 … 中間ギヤ
46 … 中間ギヤ用シャフト
47 … ギヤケース
48a、48b … 貫通孔
49a、49b … 内部ベアリング
51a、51b … シール部材
53、63 … ステー
55、65 … 緩衝器
71 … リンク機構
73 … ブラケット
75 … ロッド
81R … 右伝達機構
81L … 左伝達機構
83a、83b、86a、86b … 伝達ギヤ
83c、86c … ケース
84a … 右第1シャフト
84b … 右第2シャフト
87a … 左第1シャフト
87b … 左第2シャフト
91 … 右第1シャフト保持部
92 … 左第1シャフト保持部
BR、BL … 車軸
C1 … 回転中心軸
C2 … 中間ギヤ軸心
G … 路面
G1 … 凸部
L … 仮想線
M、N、O … 点
P … ピボット軸
θ1、θ2、θ3 … 回転角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体を傾斜させて旋回可能な鞍乗型車両であって、
右後輪および左後輪と、
前記右後輪および前記左後輪をそれぞれピボット軸周りに回転可能に支持する後輪支持機構と、
を備え、
前記後輪支持機構は、
前記右後輪を前記ピボット軸周りに回転可能に支持する右スイングアームと、
前記左後輪を前記ピボット軸周りに回転可能に支持する左スイングアームと、
前記右スイングアームと前記左スイングアームとを連動させるギヤ機構と、
を備え、
前記ギヤ機構は、
前記右スイングアームを回転させる第1ギヤと、
前記左スイングアームを回転させる第2ギヤと、
前記第1ギヤと前記第2ギヤとを互いに逆方向に回転させる少なくとも1つの中間ギヤと、
を有し、
前記ギヤ機構は、前記車体に対して回転可能に支持され、少なくとも前記中間ギヤを収容するギヤケースをさらに有し、
前記後輪支持機構は、前記ギヤケースに支持され、前記ギヤケースの回転にともなって伸縮する緩衝器をさらに備えている鞍乗型車両。
【請求項2】
請求項1に記載の鞍乗型車両において、
前記ギヤ機構は、前記中間ギヤを回転可能に支持する中間ギヤ用シャフトをさらに有し、
前記中間ギヤ用シャフトは前記ギヤケースの内部に設けられ、
前記緩衝器は前記ギヤケースの外側に配置されている鞍乗型車両。
【請求項3】
請求項1または2に記載の鞍乗型車両において、
前記第1ギヤおよび前記第2ギヤはそれぞれ同一の回転中心軸周りに回転可能に前記ギヤケースに保持され、
前記ギヤケースは前記回転中心軸周りに回転可能に前記車体に保持されている鞍乗型車両。
【請求項4】
請求項3に記載の鞍乗型車両において、
前記ギヤケースは、前記回転中心軸が前記ピボット軸と同軸となるように配置されている鞍乗型車両。
【請求項5】
請求項3に記載の鞍乗型車両において、
前記ギヤケースは、前記回転中心軸が前記ピボット軸と平行となるように配置されている鞍乗型車両。
【請求項6】
請求項3に記載の鞍乗型車両において、
前記ギヤケースは、平面視または側面視で前記回転中心軸が前記ピボット軸と交差するように配置されている鞍乗型車両。
【請求項7】
請求項1または2に記載の鞍乗型車両において、
前記ピボット軸と同軸の軸心を有し、前記右スイングアームと連結され、前記第1ギヤに連動してその軸心周りに回転する右シャフトと、
前記車体に支持され、前記右シャフトを回転可能に保持する右シャフト保持部と、
前記ピボット軸と同軸の軸心を有し、前記左スイングアームと連結され、前記第2ギヤに連動してその軸心周りに回転する左シャフトと、
前記車体に支持され、前記左シャフトを回転可能に保持する左シャフト保持部と、
を備える鞍乗型車両。
【請求項8】
請求項7に記載の鞍乗型車両において、
前記右シャフトは前記右スイングアームと一体であり、
前記左シャフトは前記左スイングアームと一体である鞍乗型車両。
【請求項9】
請求項7または8に記載の鞍乗型車両において、
前記右シャフト保持部は、前記右シャフトをその軸心周りに回転可能に支持する右ベアリングを含み、
前記左シャフト保持部は、前記左シャフトをその軸心周りに回転可能に支持する左ベアリングを含む鞍乗型車両。
【請求項10】
請求項7から9のいずれかに記載の鞍乗型車両において、
前記右シャフトおよび前記左シャフトはそれぞれ、前記ギヤケースを回転可能に保持する鞍乗型車両。
【請求項11】
請求項10に記載の鞍乗型車両において、
前記ギヤケースは、前記右シャフトおよび前記左シャフトによって前記ピボット軸周りに回転可能に保持されている鞍乗型車両。
【請求項12】
請求項11に記載の鞍乗型車両において、
前記第1ギヤは、前記ピボット軸と同軸の回転中心軸周りに回転可能にギヤケースに保持され、かつ、前記右シャフトと一体に回転可能に前記右シャフトに連結されており、
前記第2ギヤは、前記ピボット軸と同軸の回転中心軸周りに回転可能にギヤケースに保持され、かつ、前記左シャフトと一体に回転可能に前記左シャフトに連結されている鞍乗型車両。
【請求項13】
請求項7から12のいずれかに記載の鞍乗型車両において、
前記右シャフトおよび前記左シャフトはそれぞれ段差部を有し、
前記第1ギヤと前記第2ギヤの双方、および、前記ギヤケースの少なくともいずれかは、前記右シャフトおよび前記左シャフトの前記段差部と接触し、前記右シャフトおよび前記左シャフトの前記ピボット軸方向の各位置ずれを規制するフランジ部を有する鞍乗型車両。
【請求項14】
請求項7から13のいずれかに記載の鞍乗型車両において、
車幅方向において、前記ギヤケースは前記右シャフト保持部と前記左シャフト保持部との間に設けられている鞍乗型車両。
【請求項15】
請求項1から14のいずれかに記載の鞍乗型車両において、
前記ギヤケースの外周面と接触して、車体に対して前記ギヤケースを回転可能に保持するケース保持部を備えている鞍乗型車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−112297(P2013−112297A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262722(P2011−262722)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】