説明

音像位置制御装置

【課題】同じ会議室内の音声を容易に聞こえるようにしつつ、会議参加者の位置関係をユーザが把握できるようにする。
【解決手段】制御装置10Aは、自身の位置情報を記憶すると共に、制御装置10B〜10Dの位置情報を受信する。制御装置10Aは、受信した位置情報により制御装置10A〜10Dの位置関係を求める。制御装置10Aは、制御装置10B〜10Dから会話者の位置を表す情報を含む音声データが送信されると、会話者の位置を表す情報と、制御装置10B〜10Dの位置関係とから、制御装置10B〜10Dから送られる音声の音像定位位置を設定する。そして、設定した位置に音像が定位するようにオーディオ信号を生成してスピーカアレイSPAへ供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔地の音を再生する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の会議室同士で会議を行う会議システムとして、特許文献1に開示されたシステムがある。この会議システムにおいては、会議室内の音声の収音および他会議室の音声の出力を行う端末が各会議室に配置されており、この端末は、端末の位置を取得する機能を備えている。そして、会議室内の端末は、他端末の位置情報を取得すると、自端末と各端末の位置関係を計算し、他会議室の音声をヘッドホンから出力する際、算出した位置関係に応じて各会議室の位置関係が反映されるように、他会議室の音声の音像を定位させる。このシステムによれば、ある会議室において遠隔地にある会議室の音声を聞く際、実空間における会議参加者の相対的な位置関係を容易に把握することができる。
【0003】
【特許文献1】特開2005−341092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、上述したシステムにおいては、遠隔地にいる会議室で収音された音声はヘッドホンで再生されているが、ある会議室に複数の会議参加者が居る場合、参加者毎にヘッドホンを用意しなければならず、参加者が多い場合にはヘッドホンを揃えるのが難しい。また、ヘッドホンをしていると、他の会議室の音声ははっきりと聞こえるものの、耳が塞がれるため、同じ部屋にいる会議参加者の音声は聞き取りづらくなるという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した背景の下になされたものであり、その目的は、同じ会議室内の音声を容易に聞こえるようにしつつ、会議参加者の位置関係をユーザが把握できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために本発明は、接続されているスピーカアレイへオーディオ信号を供給する音像位置制御装置であって、前記スピーカアレイの向きを表す方向情報と、当該音像位置制御装置の位置情報と、当該音像位置制御装置と通信ネットワークを介して接続された他の音像位置制御装置の位置情報とを記憶する記憶手段と、音声を表す音声情報と該音声の音源の位置を表す音源位置情報とを前記通信ネットワークに接続されている他の音像位置制御装置から受信する受信手段と、前記受信手段により受信された音声情報に従って該音声情報が表す音声のオーディオ信号を生成するオーディオ信号生成手段と、前記記憶手段に記憶されている当該音像位置制御装置の位置情報と、前記記憶手段に記憶されている位置情報であって前記受信手段により受信された音声情報の送信元である音像位置制御装置の位置情報と、前記記憶手段に記憶されている方向情報と、前記受信手段により受信された音源位置情報とに基づいて、前記受信手段で受信された音声情報が表す音の音像定位位置を決定し、決定した音像定位位置に前記オーディオ信号が表す音の音像が定位するように前記オーディオ信号生成手段で生成されたオーディオ信号を加工して前記スピーカアレイへ供給するオーディオ信号供給手段とを有する音像位置制御装置を提供する。
【0007】
本発明の好ましい態様において、前記音像位置制御装置は、当該音像位置制御装置の位置を検出する位置検出手段と、前記スピーカアレイの向きを検出する方向検出手段と、前記位置検出手段で検出された位置を表す位置情報を前記通信ネットワークに接続されている他の音像位置制御装置へ送信する送信手段とを有し、前記受信手段は、前記通信ネットワークに接続されている他の音像位置制御装置の位置情報を他の音像位置制御装置から受信し、前記記憶手段は、前記位置検出手段で検出された位置を表す位置情報と、前記受信手段で受信された位置情報と、前記方向検出手段で検出された向きを表す方向情報とを記憶する
【0008】
また、本発明の別の好ましい態様において、前記位置検出手段は所定周期で位置を検出し、前記方向検出手段は所定周期で向きを検出し、前記送信手段は、前記位置検出手段で検出された位置を表す位置情報を所定周期で送信し、前記受信手段は、前記通信ネットワークに接続されている他の音像位置制御装置から所定周期で送信される他の音像位置制御装置の位置情報を受信する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、同じ会議室内の音声を容易に聞こえるようにしつつ、会議参加者の位置関係をユーザに把握させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[実施形態の構成]
まず、本発明の一実施形態に係る会議システム1の構成について説明する。図1は、同会議システム1の全体構成を模式的に示した図である。同図に示した会議室A〜Dは、例えば、会議室AはA県、会議室BはB県、会議室CはC県、会議室DはD県というように、各会議室間の距離が離れている。そして、各会議室には、マイクロホンアレイ、スピーカアレイ、制御装置が配置されている。会議システム1は、会議室内の音をマイクロホンで収音し、収音した音を他会議室のスピーカアレイから出力することにより、各会議室間での会議を行うことを可能とした音声通信システムである。
【0011】
各会議室に配置されているマイクロホンアレイ、スピーカアレイ、制御装置は、いずれも同じ構成となっている。このため、以下の説明においては会議室Aに配置されているマイクロホンアレイMA、スピーカアレイSPA、制御装置10Aについて、その構成を説明し、会議室B〜Dに配置されているマイクロホンアレイ、スピーカアレイ、制御装置については、会議室Aに配置されているものと同じであるため、各会議室を表すB,C,Dの文字を末尾に付し、その説明を省略する。
【0012】
会議室Aに配置されているマイクロホンアレイMAは、複数のマイクロホンが列状に並べられているマイクロホンアレイである。マイクロホンアレイMAは、制御装置10Aに接続されており会議室A内の音を収音する。そして、マイクロホンアレイMAを構成する各マイクロホンは、収音した音を表すオーディオ信号を制御装置10Aへ出力する。
スピーカアレイSPAは、複数のスピーカユニットが複数行・複数列に配置されているスピーカアレイであり、制御装置10Aに接続されている。スピーカアレイの各スピーカユニットは、供給されるオーディオ信号に対応した音を出力する。
通信ネットワークNETは、各会議室に配置されている制御装置間で行われる通信を中継する通信ネットワークであり、例えば、インターネットである。通信ネットワークNETには、制御装置10A〜10Dが接続されている。
【0013】
制御装置10Aは、通信ネットワークNETを介して制御装置10B〜10Dと各種情報や各種信号を授受する。図2は、制御装置10Aのハードウェア構成を示したブロック図である。制御装置10Aは、電源(図示略)を備えており、制御装置10Aの各部は、この電源から供給される電力により動作する。また、制御装置10Aの各部は、同図に示したようにバス101に接続されており、バス101を介して各部間で各種信号やデータの授受を行う。
【0014】
アンテナ20Aは、GPS(Global Positioning System)において人工衛星から出力された位置を測位するための信号を受信するアンテナである。アンテナ20Aは、GPSにおける複数の人工衛星からの信号を受信し、受信した信号を位置解析部106へ供給する。位置解析部106は、アンテナ20Aから供給される信号を解析し、制御装置10Aの位置(経度,緯度)を表す位置情報を生成する。
【0015】
方位センサ30Aは、スピーカアレイSPAに配設されており、方位センサ30Aの向けられている方位を示す信号を方位解析部107へ出力する。なお、本実施形態において方位センサ30Aは、スピーカアレイSPAのスピーカユニットが向けられている方向に向けられている。方位解析部107は、方位センサ30Aから供給される信号を解析し、スピーカアレイSPAのスピーカユニットが向けられている方位を求める。そして、スピーカユニットが向けられている方位を表す方位情報を生成する。なお、図1においては図示されていないが、制御装置10Bにおいてはアンテナ20Bと方位センサ30B、制御装置10Cにおいてはアンテナ20Cと方位センサ30C、制御装置10Dにおいてはアンテナ20Dと方位センサ30Dとが接続されている。
【0016】
マイクインターフェース108には、マイクロホンアレイMAが接続されている。マイクインターフェース108は、マイクロホンアレイMAを構成する各マイクロホンから供給されるオーディオ信号をデジタルデータに変換し、オーディオ信号が表す音を示す音声データを生成する。また、マイクインターフェース108は、各マイクロホンで収音された音声の音圧レベルの差や各マイクロホンへの音声の到達時間差に基づいて収音した音声の音源(すなわち、受信した音声が人間の声ならばその話者)の位置を特定する。そして、特定した位置を表す音源位置情報を生成し、この音源位置情報を含む音声データを出力する。
【0017】
通信部110は、通信ネットワークNETに接続されており、通信ネットワークNETを介して他の制御装置と通信を行う際の通信インターフェースとして機能する。通信部110は、位置解析部106で生成された位置情報やマイクインターフェース108で生成された音声データなどの各種情報を通信ネットワークNETに接続されている他の制御装置へ送信する。また、通信部110は、他の制御装置から送信された位置情報や他の制御装置から送信された音声データを受信する。
【0018】
スピーカ制御部109は、DSP(Digital Signal Processor)を備えており、スピーカアレイSPAが接続されている。スピーカ制御部109は、スピーカアレイSPAから出力される音の音像位置を制御するものであり、供給される音声データを受け取ると、受け取った音声データを表すオーディオ信号を生成する。そして、スピーカアレイSPAから出力される音の音像位置を決定し、生成されたオーディオ信号に対して時間遅延や振幅調整等の加工処理を施し、加工処理後のオーディオ信号をスピーカアレイSPAへ出力する。
【0019】
記憶部105は、各種データを記憶する不揮発性メモリを備えている。この記憶部105には、当該記憶部105を備えている制御装置を一意に識別する装置識別子や、通信部110で受信された位置情報が記憶される。例えば、制御装置10Aの記憶部105には、装置識別子として「ID−A」という識別子が記憶されており、制御装置10Bにおいては「ID−B」、制御装置10Cにおいては「ID−C」、制御装置10Dにおいては「ID−D」という装置識別子が記憶されている。また、記憶部105には、他の制御装置の位置に対応した音像位置を表す情報が記憶される。
【0020】
ROM(Read Only Memory)103は、CPU102により実行される制御プログラムを記憶している。CPU102は、ROM103に記憶されている制御プログラムを読み出し、RAM(Random Access Memory)104を作業エリアにして制御プログラムを実行する。CPU102により制御プログラムが実行されると、CPU102により制御装置10Aの各部が制御される。そして、制御プログラムが実行された制御装置10Aにおいては、スピーカアレイSPAから出力される音の音像位置を、他の制御装置10B〜10Dの位置関係や発話者の位置関係に対応して制御する機能が実現する。
【0021】
[実施形態の動作]
次に、本実施形態の動作について説明する。なお、以下の説明においては、図3に示したように、制御装置10Aの緯度・経度が(x0,y0)、制御装置10Bの緯度・経度が(x1,y1)、制御装置10Cの緯度・経度が(x2,y2)、制御装置10Dの緯度・経度が(x3,y3)である場合を想定して動作の説明を行う。
【0022】
まず、制御装置10Aの電源が投入されると、方位センサ30Aが向いている方位を示す信号が方位センサ30Aから出力される。方位解析部107は、この信号が入力されると、入力された信号を解析して方位センサ30Aが向いている方位を求め、求めた方位を表す方位情報を生成する(図10:ステップS1)。例えば、方位センサ30Aが「南」に向いている場合、「南」を表す方位情報が生成される。そして、この生成された方位情報は、記憶部105に記憶される。なお、方位センサ30Aが向いている方位は、スピーカアレイSPAの複数のスピーカユニットが向いている方位と同じであるため、方位センサ30Aが向いている方位は、スピーカユニットが向いている方位、換言すれば、スピーカアレイSPAが向いている方位と言うことができる。
【0023】
また、アンテナ20Aにおいては、GPS衛星から送信された信号が受信され、受信された信号が位置解析部106に供給される。位置解析部106は、信号が供給されると、供給された信号に基づいて、制御装置10Aの位置(経度および緯度)を求め、求めた経度および緯度(x0,y0)を表す位置情報を生成する(ステップS2)。位置解析部106において位置情報が生成されると、この生成された位置情報(x0,y0)と記憶部105に記憶されている装置識別子(ID−A)とが、通信部110を介して制御装置10B〜10Dへ送信される(ステップS3〜S5)。
【0024】
この位置情報と装置識別子とが制御装置10Bの通信部110において受信されると、受信された位置情報(x0,y0)と装置識別子(ID−A)とが対応付けて制御装置10Bの記憶部105に記憶される(ステップS6)。そして、制御装置10Bにおいては、受信した位置情報と装置識別子の記憶が終了すると、記憶部105に記憶されている制御装置10Bの装置識別子(ID−B)と、制御装置10Bの位置解析部106で生成された、制御装置10Bの位置を表す位置情報(x1,y1)とが制御装置10Aへ送信される(ステップS9)。
【0025】
この装置識別子と位置情報とが制御装置10Aの通信部110にて受信されると、受信された装置識別子(ID−B)と位置情報(x1,y1)とが対応づけられて記憶部105に記憶される(ステップS10)。制御装置10C,10Dにおいても、制御装置10Aから送信された装置識別子と位置情報とが記憶され(ステップS7,S8)、また、制御装置10Cから送信された制御装置10Cの装置識別子(ID−C)と位置情報(x2,y2)(ステップS11)、および制御装置10Dから送信された制御装置10Dの装置識別子(ID−D)と位置情報(x3,y3)(ステップS13)も、制御装置10Aの記憶部105に記憶される(ステップS12,S14)。このように、各制御装置は、他の制御装置の装置識別子と位置情報とを受信すると、自身の装置識別子と位置情報とを、装置識別子を送信してきた制御装置に送信するため、各制御装置は、通信ネットワークNETに接続されている他の制御装置の位置情報を取得することができる。
【0026】
制御装置10Aは、他の制御装置から位置情報を受け取ると、受け取った位置情報に基づいて、他の制御装置10B〜10Dとの位置関係を求める(ステップS15)。具体的には、CPU102は、記憶部105に記憶された制御装置10B〜10Dの位置情報に基づいて、図3に示したように、制御装置10Bの位置が(x1,y1)、制御装置10Cの位置が(x2,y2)、制御装置10Dの位置が(x3,y3)である場合、図4に示したように、制御装置10Aを中心とした場合の制御装置10Bの極座標位置(r1,θ1)、制御装置10Cの極座標位置(r2,θ2)、制御装置10Dの極座標位置(r3,θ3)を求める。
【0027】
CPU102は、制御装置10B〜10Dの極座標位置を求めると、制御装置10Aが配置されている会議室Aにおいて他の会議室の音を再生したときの各音の音像位置を設定する(ステップS16)。
具体的には、スピーカ制御部109は、方位解析部107で生成された方位情報を参照し、図5に示したように、スピーカアレイSPAの左右方向の中心位置からスピーカアレイSPAの方向に向かって所定距離離れた所定位置Pを、制御装置10Aを中心としたときの極座標の原点に対応させる。すると、制御装置10Bの位置は(r1,θ1)であるため、図5に示したように、所定位置Pから見てθ1の方向の位置(X1,Y1)が制御装置10Bに対応する位置となる。また、制御装置10Cの位置は(r2,θ2)であるため、所定位置Pから見てθ2の方向の位置(X2,Y2)が制御装置10Cに対応する位置となり、制御装置10Dの位置は(r3,θ3)であるため、所定位置Pから見てθ3の方向の位置(X3,Y3)が制御装置10Dに対応した位置となる。
【0028】
次にスピーカ制御部109は、音像を定位させることができる範囲内に他の会議室の音の音像が定位するように、各制御装置の位置関係を保ちつつ、各制御装置の位置を正規化する。そして、図6に示したように正規化後の位置を他の会議室の音を再生したときの各音の音像の基本位置に設定する。CPU102は、制御装置10B〜10Dから送信される音の音像の基本位置を設定すると、各制御装置の装置識別子と、設定した基本位置をスピーカ制御部109へ供給する。そして、スピーカ制御部109においては、図7に示したように、各制御装置の装置識別子に対応付けて、供給された基本位置が記憶される。
【0029】
次に、会議室Bに居る者が音声を発すると、この音声がマイクロホンアレイMBで収音され、収音された音を表すオーディオ信号が制御装置10Bのマイクインターフェース108により音声データに変換される。また、マイクインターフェース108は、各マイクロホンで収音された音声の音圧レベルの差や各マイクロホンへの音声の到達時間差に基づいて収音した音声の音源(すなわち、受信した音声が人間の声ならばその話者)の位置を特定する。そして、特定した位置を表す音源位置情報を生成し、この音源位置情報を含む音声データ生成して(ステップS17)出力する(ステップS18)。
【0030】
例えば、図8に示したように、会議室Bの会話者B1が音声を発すると、マイクロホンアレイMBの位置を基準とした時の会話者B1の位置が求められ、この位置の座標を表す音源位置情報として(xb1,yb1)が生成される。また、会話者B2が音声を発すると音源位置情報として(xb2,yb2)が生成され、会話者B3が音声を発すると音源位置情報として(xb3,yb3)が生成される。音源位置情報が生成されると、この音源位置情報を含む音声データと、記憶部105に記憶されている装置識別子(ID−B)が通信部110から他の制御装置10A,10C,10Dへ送られる。
【0031】
この音声データと装置識別子とが制御装置10Aの通信部110にて受信されると、受信された音声データと装置識別子とがスピーカ制御部109へ供給される。スピーカ制御部109は、音声データと装置識別子とが供給されると、まず、音声データが表す音のオーディオ信号を生成する(ステップS19)。
次に、スピーカ制御部109は、供給された装置識別子(ID−B)に対応付けて記憶されている基本位置(X10,Y10)を記憶部105から読み出す。そして、この読み出した基本位置を音声データに含まれている音源位置情報に応じて補正する。
例えば、音源位置情報が会話者B1の位置を表す(xb1,yb1)であった場合、基本位置の座標に音源位置情報の座標が加えられ、音像位置は図9に示したように(X11,Y11)の位置に補正される。また、音源位置情報が会話者B2の位置を表す(xb2,yb2)であった場合、音像位置は図9に示したように(X12,Y12)の位置に設定され、音源位置情報が会話者B3の位置を表す(xb3,yb3)であった場合、音像位置は図9に示したように(X13,Y13)の位置に設定される。
【0032】
スピーカ制御部109は、音源位置情報に応じて音像位置を設定すると、この設定した位置に、生成したオーディオ信号の音の音像が定位するように、時間遅延や振幅調整等の加工処理を施し、加工後のオーディオ信号をスピーカアレイSPAへ供給する(ステップS20)。オーディオ信号が供給されたスピーカアレイSPAにおいては、オーディオ信号に対応した音が出力される。これにより、会議室Bの音の音像は、会議室Aにおいては図9に示したように会議室Bの位置と会話者B1〜B3の位置に対応した位置に定位する。
【0033】
また、会議室Dに居る者が音声を発すると、会話者の音源位置情報を含む音声データが生成される(ステップS21)。そして、会話者の音源位置情報を含む音声データと、記憶部105に記憶されている装置識別子(ID−D)が通信部110から他の制御装置10A,10B,10Cへ送られる(ステップS22)。
【0034】
この音声データと装置識別子とが制御装置10Aの通信部110にて受信されると、受信された音声データと装置識別子とがスピーカ制御部109へ供給される。スピーカ制御部109は、音声データと装置識別子とが供給されると、まず、音声データが表す音のオーディオ信号を生成する(ステップS23)。次に、スピーカ制御部109は、供給された装置識別子(ID−D)に対応付けて記憶されている基本位置(X30,Y30)を記憶部105から読み出す。そして、この読み出した基本位置を音声データに含まれている音源位置情報に応じて補正する。
【0035】
スピーカ制御部109は、音源位置情報に応じて音像位置を設定すると、この設定した位置に、生成したオーディオ信号の音の音像が定位するように、時間遅延や振幅調整等の加工処理を施し、加工後のオーディオ信号をスピーカアレイSPAへ供給する(ステップS24)。オーディオ信号が供給されたスピーカアレイSPAにおいては、オーディオ信号に対応した音が出力される。これにより、会議室Dの音の音像は、会議室Aにおいては会議室Dの位置と会話者の位置に対応した位置(基本位置(X30,Y30)近辺の位置)に定位する。
【0036】
このように会議室Aにおいては、他の会議室の音声の音像位置が会議室Aと他の会議室との位置関係に応じて設定されるので、会議参加者の音声を区別するのが容易になる。
また、本実施形態においては、会話者の位置に応じて音像位置が調整されるので、会議室にいる複数の会議参加者の位置関係を知ることができる。また、本実施形態においては、会議室内に居る者は、ヘッドホンを使用しなくても他の会議室の音声を聞くことができるため、会議参加者が多数の場合でもヘッドホンを複数準備する必要がない。また、会議参加者はヘッドホンを使用しないので、同室内にいる者の会話音声を容易に聞き取ることができる。
【0037】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、例えば、上述した実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。
【0038】
上述した実施形態においては、制御装置10A〜10Dにキーボード等の入力装置を設け、スピーカアレイの方向や、各制御装置の位置を表す情報を入力装置で入力して記憶部105に記憶させるようにしてもよい。この態様によれば、アンテナ20Aや位置解析部106、方位センサ30Aや方位解析部107を設ける必要がなくなるので、制御装置10A〜10Dの構成を簡易なものとすることができる。
【0039】
上述した実施形態においては、制御装置10A〜10Dは自身の位置を一定の周期で求め、求めた位置を一定の周期で他の制御装置に送信するようにしてもよい。
【0040】
上述した実施形態においては、記憶部105に記憶された位置情報から各制御装置間の距離を求め、例えば、距離が遠い会議室の音声については音量を小さくし、距離が近い会議室の音声については音量を大きくするというように、求めた距離に応じて音量を制御するようにしてもよい。また、上述した実施形態においては、オーディオ信号に遅延処理を施し、制御装置間の距離に応じて音声の出力を遅延させるようにしてもよい。また、求めた制御装置間の距離に応じてスピーカアレイSPAから出力する音の音質を変えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態に係る会議システムの全体構成を示した図である。
【図2】制御装置10Aのハードウェア構成を示したブロック図である。
【図3】制御装置の位置関係を例示した図である。
【図4】各制御装置の位置関係を例示した図である。
【図5】各制御装置の位置関係を例示した図である。
【図6】各会議室の音の音像の基本位置を例示した図である。
【図7】記憶された装置識別子と基本位置とを例示した図である。
【図8】会議室Bにおける会話者の位置関係を例示した図である。
【図9】会議室Aにおける音像の定位位置を例示した図である。
【図10】会議システム1の動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0042】
1・・・会議システム、A,B,C,D・・・会議室、MA,MB,MC,MD・・・マイクロホンアレイ、NET・・・通信ネットワーク、SPA,SPB,SPC,SPD・・・スピーカアレイ、10A〜10D・・・制御装置、20A・・・アンテナ、30A・・・方位センサ、101・・・バス、102・・・CPU、103・・・ROM、104・・・RAM、105・・・記憶部、106・・・位置解析部、107・・・方位解析部、108・・・マイクインターフェース、109・・・スピーカ制御部、110・・・通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続されているスピーカアレイへオーディオ信号を供給する音像位置制御装置であって、前記スピーカアレイの向きを表す方向情報と、当該音像位置制御装置の位置情報と、当該音像位置制御装置と通信ネットワークを介して接続された他の音像位置制御装置の位置情報とを記憶する記憶手段と、
音声を表す音声情報と該音声の音源の位置を表す音源位置情報とを前記通信ネットワークに接続されている他の音像位置制御装置から受信する受信手段と、
前記受信手段により受信された音声情報に従って該音声情報が表す音声のオーディオ信号を生成するオーディオ信号生成手段と、
前記記憶手段に記憶されている当該音像位置制御装置の位置情報と、前記記憶手段に記憶されている位置情報であって前記受信手段により受信された音声情報の送信元である音像位置制御装置の位置情報と、前記記憶手段に記憶されている方向情報と、前記受信手段により受信された音源位置情報とに基づいて、前記受信手段で受信された音声情報が表す音の音像定位位置を決定し、決定した音像定位位置に前記オーディオ信号が表す音の音像が定位するように前記オーディオ信号生成手段で生成されたオーディオ信号を加工して前記スピーカアレイへ供給するオーディオ信号供給手段と
を有する音像位置制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の音像位置制御装置において、
当該音像位置制御装置の位置を検出する位置検出手段と、
前記スピーカアレイの向きを検出する方向検出手段と、
前記位置検出手段で検出された位置を表す位置情報を前記通信ネットワークに接続されている他の音像位置制御装置へ送信する送信手段とを有し、
前記受信手段は、前記通信ネットワークに接続されている他の音像位置制御装置の位置情報を他の音像位置制御装置から受信し、
前記記憶手段は、前記位置検出手段で検出された位置を表す位置情報と、前記受信手段で受信された位置情報と、前記方向検出手段で検出された向きを表す方向情報とを記憶することを特徴とする音像位置制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の音像位置制御装置において、
前記位置検出手段は所定周期で位置を検出し、
前記方向検出手段は所定周期で向きを検出し、
前記送信手段は、前記位置検出手段で検出された位置を表す位置情報を所定周期で送信し、
前記受信手段は、前記通信ネットワークに接続されている他の音像位置制御装置から所定周期で送信される他の音像位置制御装置の位置情報を受信することを特徴とする音像位置制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−131193(P2008−131193A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311833(P2006−311833)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】