説明

音速測定装置及び音速測定方法

【課題】正確かつ安定して音速を求めることが可能な音速測定装置及び音速測定方法を提供する。
【解決手段】骨強度診断装置1は、送波専用振動子21と、複数の振動子24と、仮定伝播時間算出部51と、波形積算部52と、音速導出部53と、を備える。送波専用振動子21は、皮質骨10の表面に向けて超音波を送波する。振動子24は、皮質骨10からの超音波を受波し、受波した超音波に応じた波形信号を出力する。仮定伝播時間算出部51は、送波専用振動子21が送波した超音波が、皮質骨10の表面近傍を伝播した後で各振動子24に到達するまでの伝播時間を、当該皮質骨10内の音速の仮定値と、当該皮質骨10の表面形状と、に基づいて算出する。波形積算部52は、複数の振動子24が出力した各波形信号を伝播時間分だけズラして積算した波形のエンベロープの振幅を求める。音速導出部53は、エンベロープの振幅に基づいて皮質骨10内の音速を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音速測定装置及び音速測定方法に関する。詳細には、超音波を用いて被測定体内部の音速を外部から測定する音速測定装置及び音速測定方法において、正確で安定した音速測定を可能にするための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、超音波を用いて骨評価を行う超音波診断装置を開示する。この超音波診断装置は、超音波パルスを放射し、皮質骨内を伝播して当該皮質骨から放出された超音波を受波する。そして超音波診断装置は、送波から受波までの時間を測定し、既知の伝播経路から皮質骨内の音速を求める。
【0003】
物体中の音速は、当該物体の弾性的な性質によって変化するものであるから、骨中の音速を測定することで骨強度(骨の健全性)の指標とすることができる。特許文献1の超音波診断装置は、上記のようにして求めた音速を骨評価値としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−517328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように超音波パルスの送波から受波までの間隔をタイマー計測する構成の場合、振動子が出力する波形信号の中から受波パルスのピークを適切に検出しなければならない。ここで、理想的な条件(例えば、水中に置かれた対象物の測定等)であれば、受波パルスを検出することは比較的容易である。しかし、生体を対象とした実際の測定では、超音波の伝播経路に脂肪分や水分が混在しているため不要エコーが発生したり、皮質骨の裏面からの反射などの不必要な波形が重畳するなど、様々なノイズが発生する。
【0006】
この点、特許文献1の構成は、波形信号にノイズが含まれると、波形信号の中から必要な受波パルスを検出することが困難となり、超音波パルスの送波から受波までの時間を安定して計測することができなかった。従って、実際の現場で骨強度を検査しようとしても正確な結果を得ることが困難であり、改良の余地が残されていた。
【0007】
本願発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、正確かつ安定して音速を求めることが可能な音速測定装置及び音速測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の音速測定装置が提供される。即ち、この音速測定装置は、送波部と、複数の受波部と、仮定伝播時間算出部と、妥当性指標値算出部と、音速導出部と、を備える。前記送波部は、被測定体の表面に向けて超音波を送波する。前記受波部は、前記被測定体からの超音波を受波し、当該受波した超音波に応じた波形信号を出力する。前記仮定伝播時間算出部は、前記送波部が送波した超音波が、前記被測定体の表面又は当該被測定体の内部を伝播した後で前記各受波部に到達するまでの伝播時間を、当該被測定体内の音速の仮定値と、当該被測定体の表面形状と、に基づいて算出する。前記妥当性指標値算出部は、前記複数の受波部のうち少なくとも2つが出力した波形信号に基づいて、前記伝播時間の妥当性の指標となる妥当性指標値を求める。前記音速導出部は、前記妥当性指標値に基づいて、前記被測定体内の音速を求める。
【0010】
即ち、伝播時間の妥当性を判断することにより、当該伝播時間を算出した際に仮定していた音速の値が正しいか否かを判断することができるので、これにより被測定体内の音速を求めることができる。ここで、伝播時間の妥当性を判断する際には、受信波形のピークを厳密に検出する必要が無いため、受信波形にノイズが含まれていても適切に音速を求めることができる。また、複数の受波部からの波形信号に基づいて伝播時間の妥当性を判断するため、ノイズの影響を弱めることができる。
【0011】
前記の音速測定装置においては、前記妥当性指標値算出部は、前記複数の受波部のうち少なくとも2つが出力した波形信号を、前記伝播時間に対応する時間だけそれぞれズラし、当該ズラした波形信号同士を積算した積算波形を求め、当該積算波形に基づいて前記妥当性指標値を求めることが好ましい。
【0012】
即ち、複数の受波部が出力する波形信号同士を積算すると、波形のピーク位置が一致している場合に振幅を最も強め合う。この性質を利用することにより、所望のピークのみ強調し、その他のノイズの影響を少なくすることができる。上記の構成においては、仮定伝播時間算出部が仮定した音速が正しかった場合、積算される波形信号のピーク位置が一致するので、振幅を強め合う。従って、受波部が出力した波形信号にノイズが含まれている場合であっても、積算波形を調べることで、音速の仮定値が正しいか否かを判断することができる。
【0013】
前記の音速測定装置においては、前記妥当性指標値算出部は、前記複数の受波部のうち少なくとも2つが出力した波形信号を、前記伝播時間に対応する時間だけそれぞれズラし、当該ズラした波形信号同士を乗算した乗算波形を求め、当該乗算波形に基づいて前記妥当性指標値を求めても良い。
【0014】
即ち、複数の受波部が出力する波形信号同士を乗算すると、波形のピーク位置が一致している場合に振幅を最も強め合う。この性質を利用することにより、所望のピークのみ強調し、その他のノイズの影響を少なくすることができる。上記の構成においては、仮定伝播時間算出部が仮定した音速が正しかった場合、乗算される波形信号のピーク位置が一致するので、振幅を強め合う。従って、受波部が出力した波形信号にノイズが含まれている場合であっても、乗算波形を調べることで、音速の仮定値が正しいか否かを判断することができる。
【0015】
前記の音速測定装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記仮定伝播時間算出部は、前記音速の仮定値として複数通りの値を用いて前記伝播時間を算出する。前記妥当性指標値算出部は、前記複数通りの音速の仮定値に応じて、それぞれの場合の妥当性指標値を求める。前記音速導出部は、前記複数通りの音速の仮定値それぞれの場合の妥当性指標値に基づいて、前記被測定体内の音速を求める。
【0016】
これにより、複数通りの音速の仮定値を試行し、伝播時間が最も妥当であった場合に、当該伝播時間を算出した際の音速の仮定値を、被測定体内の音速の測定値として採用することができる。
【0017】
前記の音速測定装置においては、前記仮定伝播時間算出部は、予め測定された被測定体表面の形状に基づいて前記伝播時間を算出することが好ましい。
【0018】
これにより、被測定体表面の実際の形状を考慮して仮定伝播時間を算出することができるので、例えば被測定体表面が曲面状の場合であっても精度良く音速を求めることができる。
【0019】
前記の音速測定装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この音速測定装置は、形状検出部を備える。前記複数の受波部のうち少なくとも一部は、被測定体の表面に向けて超音波を送波することができるように構成される。前記形状検出部は、超音波が送波されてから前記被測定体の表面で反射して前記各受波部に到達するまでの時間に基づいて、前記被測定体表面の形状を検出する。前記仮定伝播時間算出部は、前記形状検出部が検出した前記被測定体表面の形状に基づいて前記伝播時間を算出する。
【0020】
これにより、音速を測定するための構成の一部を用いて、被測定体表面の形状を検出することができるので、装置を簡略化してコストを削減することができる。
【0021】
前記の音速測定装置は、以下のように構成することもできる。即ち、前記複数の受波部は、略等間隔で1列に並べられたリニアアレイを構成するとともに、前記複数の受波部のうち少なくとも何れか1つは、前記送波部として機能する。
【0022】
これにより、送波専用の構成を省略することができるので、装置を簡略化することができる。また、近接する複数の受波部からタイミングをズラし、当該タイミングをズラす時間を調整することにより、任意の角度で超音波ビームを形成することができる。これにより、被測定体表面に対して最適な角度で超音波を当てることができる。また、受波部から被測定体に向けて超音波を送波し、各受波部に反射波が到達するまでの時間に基づいて当該被測定体の表面形状を検出する構成の場合、当該表面形状を検出できるのは受波部の直下の位置のみである。従って、送波部と受波部が別の構成の場合は、送波部直下の表面形状は検出することができない。この点、受波部が送波部を兼ねることにより、送波部としての受波部の直下の表面形状を検出することができる。これにより、伝播時間を正確に算出することができる。
【0023】
本発明の第2の観点によれば、受波した超音波に応じて波形信号を出力する複数の受波部を備えた音速測定装置を用いる音速測定方法であって、以下のような音速測定方法が提供される。即ち、この音速測定方法は、送波工程と、受波工程と、仮定伝播時間算出工程と、妥当性指標値算出工程と、を含む。前記送波工程においては、被測定体の表面に向けて超音波を送波する。前記受波工程においては、当該被測定体からの超音波を前記各受波部によって受波する。前記仮定伝播時間算出工程においては、前記送波工程で送波した超音波が、前記被測定体の表面又は当該被測定体の内部を伝播した後で前記各受波部に到達するまでの伝播時間を、当該被測定体内の音速の仮定値と、当該被測定体の表面形状と、に基づいて算出する。前記妥当性指標値算出工程においては、前記複数の受波部のうち少なくとも2つが出力した波形信号に基づいて、前記伝播時間の妥当性の指標となる妥当性指標値を求める。そして、前記音速の仮定値を変化させながら、前記仮定伝播時間算出工程と前記妥当性指標値算出工程とを繰り返し行うことで、複数通りの音速の仮定値それぞれの場合の妥当性指標値を求め、前記それぞれの場合の妥当性指標値に基づいて、前記被測定体内の音速を求める。
【0024】
即ち、伝播時間の妥当性を判断することにより、当該伝播時間を算出した際に仮定していた音速の値が正しいか否かを判断することができるので、これにより被測定体内の音速を求めることができる。ここで、伝播時間の妥当性を判断する際には、受信波形のピークを厳密に検出する必要が無いため、受信波形にノイズが含まれていても適切に音速を求めることができる。また、複数の受波部からの波形信号に基づいて伝播時間の妥当性を判断するため、ノイズの影響を弱めることができる。そして、複数通りの音速の仮定値を試行し、伝播時間が最も妥当であった場合に、当該伝播時間を算出した際の音速の仮定値を、被測定体内の音速の測定値として採用することができる。
【0025】
前記の音速測定方法においては、以下の方法を採ることが好ましい。即ち、前記妥当性指標値算出工程において、前記複数の受波部のうち少なくとも2つが出力した波形信号を、前記伝播時間に対応する時間だけそれぞれズラし、当該ズラした波形信号同士を積算した積算波形を求め、当該積算波形に基づいて前記妥当性指標値を求める。
【0026】
即ち、複数の受波部が出力する波形信号同士を積算すると、波形のピーク位置が一致している場合に振幅を最も強め合う。この性質を利用することにより、所望のピークのみ強調し、その他のノイズの影響を少なくすることができる。上記の構成においては、仮定伝播時間算出工程で仮定した音速が正しかった場合、積算される波形信号のピーク位置が一致するので、振幅を強め合う。従って、受波部が出力した波形信号にノイズが含まれている場合であっても、積算波形の振幅を見ることで、音速の仮定値が正しいか否かを判断することができる。
【0027】
前記の音速測定方法においては、以下の方法を採ることもできる。即ち、前記妥当性指標値算出工程において、前記複数の受波部のうち少なくとも2つが出力した波形信号を、前記伝播時間に対応する時間だけそれぞれズラし、当該ズラした波形信号同士を乗算した乗算波形を求め、当該乗算波形に基づいて前記妥当性指標値を求める。
【0028】
即ち、複数の受波部が出力する波形信号同士を乗算すると、波形のピーク位置が一致している場合に振幅を最も強め合う。この性質を利用することにより、所望のピークのみ強調し、その他のノイズの影響を少なくすることができる。上記の構成においては、仮定伝播時間算出工程で仮定した音速が正しかった場合、乗算される波形信号のピーク位置が一致するので、振幅を強め合う。従って、受波部が出力した波形信号にノイズが含まれている場合であっても、乗算波形の振幅を見ることで、音速の仮定値が正しいか否かを判断することができる。
【0029】
前記の音速測定方法においては、以下の方法を採ることが好ましい。即ち、この音速測定方法は、前記被測定体の表面形状を検出する形状検出工程を含む。そして、前記仮定伝播時間算出工程においては、前記表面形状に基づいて前記伝播時間を算出する。
【0030】
これにより、被測定体表面の実際の形状を考慮して仮定伝播時間を算出することができるので、例えば被測定体表面が曲面状の場合であっても精度良く音速を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る骨強度診断装置の模式的な断面図及び機能ブロック図。
【図2】超音波の複数の伝播経路を説明する概念図。
【図3】各振動子が出力する波形信号を例示するグラフ。
【図4】本実施形態の音速測定方法のフローチャート。
【図5】(a)アレイ振動子によって平面波を送波した様子を示す図。(b)アレイ振動子が送波した平面波が皮質骨の表面又は裏面で反射する様子を示す図。
【図6】(a)表面反射波を受波している振動子組の近傍を拡大した模式図。(b)振動子組を構成する2つの振動子に到来する表面反射波の伝播経路の差を説明する模式図。
【図7】表面屈折波の伝播経路の算出方法を説明する模式図。
【図8】仮定伝播時間算出部が求めるt−x曲線を示す図。
【図9】各振動子の波形信号に窓関数を掛けた様子を示す図。
【図10】各振動子の波形信号をズラした様子を示す図。
【図11】波形積算部が求める積算波形の様子を示す図。
【図12】音速仮定値を変化させてt−x曲線を描いた様子を示す図。
【図13】音速仮定値を変化させながらエンベロープの振幅を求めてプロットした結果の例を示す図。
【図14】本実施形態の骨強度診断装置によってウシ脛骨皮質骨の音速を測定した結果を示す図。
【図15】変形例に係る超音波送受波器の模式的な断面図。
【図16】表面伝播波に対して表面からの反射波及び裏面からの反射波が重なり合っている様子を示す図。
【図17】図13のグラフに、積算波形が最大振幅になった時間を追加的にプロットしたグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る音速測定装置としての骨強度診断装置1の模式的な断面図及び機能ブロック図である。
【0033】
音速測定装置としての骨強度診断装置1は、例えば、脛骨などの長管状の骨の皮質骨について骨強度を診断するものである(ただし、診断対象はこれに限定されない)。具体的に説明すると、骨は一般的に、皮質骨10と、皮質骨10の内側に存在する網目状の海綿骨12とから構成されている。また、皮質骨10の周囲は、筋肉や脂肪などの軟組織11に覆われている。本実施形態の骨強度診断装置1は、軟組織11の外側から皮質骨10に対して超音波を放射し、当該皮質骨10中の音速(骨音速)を測定するように構成されている。
【0034】
図1の左側には、人体の脛の部分を骨の長手方向に直交する平面で切った断面が示されている。図1に示すように、皮質骨10表面の輪郭形状は、径方向(骨の長手方向と直交する方向)に向かって膨らんだ穏やかな曲線状となっている。そこで、以下の説明では、長管状の骨を円柱に見立てて、この断面内において皮質骨10表面に沿うようにして超音波が伝播する方向を、円周方向と称することがある。一方、図示は省略するが、骨の長手方向と平行な平面で切った断面において、皮質骨10の表面輪郭はほぼ直線状となっている。
【0035】
ところで、ヒトの骨は異方性を有しているので、長軸方向の音速と円周方向の音速が異なる。従って、円周方向と長軸方向の音速をそれぞれ測定し、異方性構造を調べることが骨強度を診断する上で重要である。そこで、本実施形態の骨強度診断装置1は、骨の円周方向の音速を測定する場合のように測定対象の断面輪郭が曲線状の場合であっても、音速を正確に測定できるように構成されている。
【0036】
以下、骨強度診断装置1の構成について具体的に説明する。図1に示すように、骨強度診断装置1は、超音波送受波器2と、装置本体3とから構成されている。
【0037】
超音波送受波器2は、超音波の送波及び受波を行うものである。この超音波送受波器2は、測定部位の軟組織11の表面に当接する当接面2aと、送波専用振動子21と、アレイ振動子22と、遮音材23と、を備えている。アレイ振動子22は、1列に並んで配列された複数の振動子24からなっている。また、送波専用振動子21と遮音材23は、アレイ振動子22の配列方向に沿って並んで配置されている。なお、本実施形態で使用される振動子としては、電気信号を与えられるとその表面が振動して超音波を発射するとともに、その表面に超音波を受波すると電気信号を生成して出力するものが採用されている。
【0038】
送波専用振動子(送波部)21は、その表面が当接面2aに対して傾くように設置され、当接面2aから超音波を斜め方向に送波できるように構成されている。送波専用振動子21としては、放射する超音波の指向性が弱い(超音波の角度範囲が広い)ものが用いられる。
【0039】
アレイ振動子22は、複数の振動子(受波部)24を備えている。なお、以下の説明では、複数の振動子24を区別する必要がある場合には、送波専用振動子21に近い側から順に小文字のアルファベットを符号の末尾に付し、振動子24a、振動子24b、振動子24c、・・・のように表記することがある。この振動子24は、当接面2aと平行になるようにして等間隔で1列に並んで配置されている。また、各振動子24は超音波を送波及び受波可能に構成されている。
【0040】
遮音材23は板状に形成され、送波専用振動子21とアレイ振動子22との間に配置される。この遮音材23は、送波専用振動子21から送波された超音波が、超音波送受波器2内を伝播してアレイ振動子22に直接到達してしまうことを防止するためのものである。なお、遮音材23の材料としては、例えば、コルク、合成ゴム、多孔質材(例えば発泡樹脂)などの吸音作用を有する材料を用いることができる。
【0041】
この超音波送受波器2を用いて実際に超音波の送受波を行う際には、測定部位の皮膚表面(即ち、軟組織11の外側表面)に超音波ゼリーを塗布し、当該皮膚表面に当接面2aを当接させる。そして、送波専用振動子21又はアレイ振動子22によって、超音波を送波する。これにより、超音波が、軟組織11を介して、測定対象である皮質骨10に当たる。そして、皮質骨10から帰ってくる超音波は、アレイ振動子22によって受波される。なお、前記超音波ゼリーは、軟組織11と当接面2aとの間に隙間が生じるのを防止するとともに、当接面2aと軟組織11との間の音響インピーダンスを整合させて、送波専用振動子21又はアレイ振動子22から送波された超音波が軟組織11の表面で反射するのを抑制するためのものである。
【0042】
次に、装置本体3について説明する。装置本体3は、ケーブルによって超音波送受波器2と接続されており、当該超音波送受波器2との間で信号の送受信ができるように構成されている。具体的には、この装置本体3は、超音波制御部30と、送信回路31と、送信切替部32と、複数の受信回路33と、送受信分離部34と、演算部35と、を備えている。
【0043】
送信回路31は、送波専用振動子21又はアレイ振動子22を振動させて超音波を発生させるための電気パルス信号を生成するとともに、この電気パルス信号を送信切替部32に送信するように構成されている。電気パルス振動の中心周波数は、例えば1〜10MHz程度である。なお、電気パルス信号の代わりに、例えばチャープ信号を用いても良い。
【0044】
なお、アレイ振動子22によって超音波を発生させる場合には、送信回路31は、複数の振動子24それぞれに対して任意のタイミングの電気パルス信号を生成することができるように構成されている。また、超音波制御部30は送信回路31に接続されており、複数の振動子24から超音波を送波させるための制御信号を送信回路31に送信するように構成されている。これにより、複数の振動子24から、一斉に、あるいは個別のタイミングで超音波を送波するように制御することが可能となっている。
【0045】
送信切替部32は、送信回路31から送信される電気パルス信号を、送波専用振動子21又はアレイ振動子22の何れに送信するかを切り替えるように構成されている。即ち、送信切替部32によって、超音波の送波を行う振動子が選択される。
【0046】
複数の受信回路33は、アレイ振動子22を構成する複数の振動子24にそれぞれ対応して接続されている。各受信回路33は、1つの振動子24が超音波を受波することにより出力する電気信号を受信し、当該電気信号に対して、増幅処理や、フィルタ処理、デジタル変換処理などを施したデジタル信号を生成して演算部35に送信するように構成されている。なお、アレイ振動子22から直接出力される信号はアナログの波形信号であり、演算部35に送信される信号は信号処理されたデジタルの波形信号であるが、以下の説明ではこれらを区別せず、単に「波形信号」と呼ぶことがある。
【0047】
送受信分離部34は、アレイ振動子22と、前記送信回路31及び前記受信回路33と、の間に接続されている。この送受信分離部34は、送信回路31からアレイ振動子22に送られる電気信号(電気パルス信号)が受信回路33に直接流れるのを防止するとともに、アレイ振動子22から受信回路33に送られる電気信号が送信回路31側に流れるのを防止するためのものである。
【0048】
次に、送波専用振動子21によって超音波を送波したときの様子について説明する。送波専用振動子21によって超音波を送波する場合、送信切替部32によって、超音波の送波を行う振動子として送波専用振動子21が決定される。そして、送信回路31からのパルス信号が送波専用振動子21に送られると、当該送波専用振動子21は、パルス状に変調された超音波を、皮質骨10に対して斜め方向に送波する。
【0049】
送波専用振動子21から送波された超音波は、複数の伝播経路を経由してアレイ振動子22に受波される。アレイ振動子22に超音波が受波されると、各振動子24からの波形信号が演算部35に送信される。
【0050】
送波専用振動子21から送波された超音波が伝播する複数の経路について、図2を参照して説明する。図2は、ある振動子24に到達する超音波の複数の伝播経路を概念的に示した図である。なお、図2には1つの振動子24に到達する超音波の例のみを示しているが、実際は、すべての振動子24のそれぞれに対して複数の経路で超音波が到達し得る。
【0051】
図2に示すように、直接波は、送波専用振動子21から送波された超音波が軟組織11の表面に沿って伝播して、振動子24に直接到達するものである。表面からの反射波は、送波専用振動子21から送波された超音波が軟組織11内を伝播し、皮質骨10の表面(軟組織11と皮質骨10との境界面)で反射して振動子24に到達するものである。また、裏面からの反射波は、軟組織11中を伝播した超音波が、皮質骨10内に入射して当該皮質骨10内を伝播し、皮質骨10の裏面(皮質骨10と海綿骨12との境界面)で反射した後、再び軟組織11中に放射されて振動子24に到達するものである。
【0052】
また、送波専用振動子21から送波された超音波が、軟組織11中を伝播し、皮質骨10に当たり、当該皮質骨10表面近傍を伝播し、再び軟組織11中に放射されて振動子24に到達する場合もある。本明細書では、このような伝播経路を経て受波される超音波を、表面伝播波と呼ぶ。表面伝播波には、漏洩表面波と表面屈折波の2通りの伝播経路がある。
【0053】
皮質骨10の表面に臨界角で超音波が当たると、皮質骨10表面に表面波が発生する。この表面波は、軟組織11側に所定方向(出射角が臨界角となる方向)に漏洩波を放射しつつ、皮質骨10の表面に沿って伝播する。このとき振動子24によって受波される漏洩波を、漏洩表面波と呼ぶ。一方、臨界角よりも小さい角度で皮質骨10の表面に超音波が当たると、皮質骨10表面で屈折する。このとき、臨界角に近い入射角で超音波が入射した場合は、皮質骨10内であって当該皮質骨10の表面近傍を伝播した後、皮質骨10表面でアレイ振動子22側に屈折して軟組織11中に放射される。このとき受波される超音波を、本明細書では表面屈折波と呼ぶこととする。表面屈折波は、皮質骨10の断面輪郭形状が曲線状の場合のみ発生する。
【0054】
なお、骨の形状、受波する振動子24の位置、及び送波専用振動子21から送波される超音波の角度などの条件によっては、上記複数種類の超音波のうち、一部が発生しない場合や、発生しても振動子24に受波されない場合が有り得る。ただし、本実施形態では、前述のように指向性の広い送波専用振動子21を用いているので、超音波を臨界角又は臨界角に近い角度で皮質骨10に当てることができる。これにより、漏洩表面波又は表面屈折波を確実に発生させ、複数の振動子24のうち少なくとも何れか1つには漏洩表面波又は表面屈折波を到達させることができるようになっている。
【0055】
次に、図3を参照して、それぞれの振動子24が生成する信号波形について説明する。図3は、送波専用振動子21が超音波を送波した後、各振動子24が超音波を受波して出力する波形信号の波形を示すグラフである。各振動子24の波形において、横軸tは時間であり、各波形信号の縦軸は当該波形信号の振幅を示している。また、グラフのx軸は、送波専用振動子21に最も近い振動子である振動子24aから各振動子24b,24c,・・・までの距離を示している。
【0056】
なお、受波する振動子24が送波専用振動子21から離れるに従い、波形信号の振幅は小さくなる。図3に示す波形の曲線は、各波形信号に適当なゲインを掛けて、各波形信号の振幅が略同じになるように調整したものである。
【0057】
図3に示すように、各振動子24の波形信号には複数のピークが含まれている。図3においては、各振動子24の波形信号に含まれるピークの位置を点線で繋いで、当該ピークが、直接波、表面からの反射波、裏面からの反射波、及び表面伝播波の何れによるものかを示している。なお、このグラフでは漏洩表面波と表面屈折波は区別しにくいので、2つをまとめて表面伝播波として示している。
【0058】
図3のグラフから分かるように、直接波は、表面伝播波より先に振動子24に到達する場合もあれば、後に到達する場合もある。また、裏面からの反射波と表面からの反射波は、表面伝播波とほぼ同時に振動子24に到達する場合があり、この場合はピークが重なり合っていて、区別が難しくなっている。このように、波形信号中にピークが含まれていても、それがどの経路を伝播してきた超音波のピークなのかを判別するのは困難である。
【0059】
また、軟組織11は脂肪と水分の混合体であるため、実際の測定においては、不要エコーが検出されてしまう。この場合、図3の波形に更にノイズが加わるため、ピークを安定して検出することが一層困難になる。
【0060】
ここで、従来の音速測定装置においては、超音波を送波してから表面伝播波を受波するまでの時間間隔を測定することにより、骨音速を求めていた。従って、従来の音速測定装置においても表面伝播波のピークを検出する必要があるが、上述のように、表面伝播波のピークを安定して検出することは困難である。従って、従来の方法では、骨音速を安定して測定することができなかったのである。
【0061】
そこで、本実施形態では、複数の振動子24が出力する波形信号の波形を積算することで、ノイズに強い音速測定方法を実現している。
【0062】
即ち、複数の波形のピーク位置が一致している場合、これらの波形を積算すると、当該ピーク位置の振幅が大きくなる。この性質を利用することで、所望のピークのみを強調し、ノイズを目立たなくすることができる。ただし、波がそれぞれの振動子24に到達するタイミングは様々に異なるので、特定の波に基づくピークが強め合うようにするには、当該ピークを一致させるように各波形の位相をズラした上で波形同士を積算する必要がある。
【0063】
以下、本実施形態の音速測定方法について具体的に説明する。図4に、本実施形態に係る音速測定方法のフローチャートを示す。本実施形態の音速測定方法は、形状検出工程と、送波工程と、受波工程と、仮定伝播時間算出工程と、波形積算工程と、音速導出工程と、を含んでいる。
【0064】
形状検出工程では、皮質骨10の表面形状が測定される(S101)。表面形状は、例えばX線等を用いて測定しても良いが、本実施形態では、骨強度診断装置1によって皮質骨10の表面形状を測定する。なお、この表面形状の測定についての詳細は後述する。
【0065】
送波工程においては、送波専用振動子21によって、皮質骨10に対して超音波を送波する(S102)。
【0066】
受波工程においては、送波専用振動子21から送波された超音波を、各振動子24によって受波し(S103)、図3に示すような波形信号を得る。図3に示すように、各振動子24が受波した表面伝播波のピークは、当該振動子24の位置が送波専用振動子21から遠くなるに従い、遅れて検出される。この遅れ量は、送波専用振動子21が超音波を送波してから各振動子24が表面伝播波を受波するまでの時間(伝播時間)に相当している。
【0067】
従って、表面伝播波の伝播時間分だけ各波形信号を早める(図3の左側に各波形信号をオフセットさせる)ことで、表面伝播波のピークの位相を各振動子24の間で合わせることができる。しかしながら、骨音速は未知であるから、伝播時間を予め知ることはできない。
【0068】
そこで本実施形態では、仮定伝播時間算出工程において、骨音速を仮定し、当該仮定した骨音速(音速仮定値)と、形状検出工程で検出した皮質骨10の表面形状と、に基づいて、各振動子24に対する伝播時間の仮定値(仮定伝播時間)を求める(S104)。
【0069】
次に、波形積算工程(妥当性指標値算出工程)において、前記仮定伝播時間に対応する時間だけ各波形信号をオフセットさせた上で、波形信号を積算した積算波形を求める(S105)。このとき、仮定伝播時間の妥当性を示す妥当性指標値として、前記積算波形のエンベロープの振幅を求める(詳細は後述)。
【0070】
そして、所定の範囲内で、音速仮定値を次々と変化させて、それぞれの音速仮定値についての積算波形を求める(S104〜S106のループ)。すると、音速仮定値が実際の骨音速と合致したときに、各波形の表面伝播波のピークの位相が合い、ピーク同士が最も強め合った積算波形を得る。
【0071】
従って、音速導出工程において、複数の音速仮定値について求めた積算波形のエンベロープの振幅同士を比較して、積算波形の振幅が最も大きくなったときを検出し、そのときの音速仮定値を骨音速の測定値とする(S107)。
【0072】
以上の方法によれば、ピークの位相が合っていない波(即ち、表面伝播波のピーク以外のノイズ)は、積算波形の振幅に大きな影響を与えないため、表面伝播波のみを強調して(表面伝播波にいわば焦点を合わせて)、骨音速を精度良く求めることができる。
【0073】
次に、上記の音速測定方法を本実施形態の骨強度診断装置1によって実現するための構成について説明する。
【0074】
図1に示す骨強度診断装置1の装置本体3が備える演算部35は、CPU、RAM、ROMなどのハードウェアと、前記ROMに記憶されたプログラム等のソフトェアと、から構成される。そして、当該演算部35は、前記ハードウェアとソフトウェアとが協働することにより、形状検出部40、音速検出部50等として機能するように構成されている。
【0075】
まず、形状検出部40について説明する。形状検出部40は、音速の導出に必要な骨表面形状の検出を行う。
【0076】
即ち、仮定した骨音速(音速仮定値)から仮定伝播時間を求める際には、表面伝播波の伝播経路に関する情報が必要である。ここで、伝播経路を求めるためには、皮質骨10表面の形状(皮質骨10の断面輪郭形状)を何らかの方法で取得しなければならない。そこで本実施形態では、音速検出部50によって骨音速を求める前に、形状検出部40による皮質骨10の表面形状の検出を行うこととしている。
【0077】
形状検出部40によって骨表面形状の検出を行う際には、まず、アレイ振動子22から超音波の送波を行う。アレイ振動子22によって超音波を送波する様子を、図5を参照して説明する。図5(a)はアレイ振動子22によって超音波を送波した様子を示した図、図5(b)はアレイ振動子22が送波した超音波が皮質骨10の表面又は裏面で反射する様子を示した図である。
【0078】
アレイ振動子22によって超音波を送波する場合、送信切替部32によって、超音波の送波を行う振動子としてアレイ振動子22が決定される。そして、送信回路31からのパルス信号がアレイ振動子22に送られ、当該アレイ振動子22を構成している複数の振動子24が同時に同位相の超音波を骨に対して送波する。
【0079】
複数の振動子24が同時に送波することにより、図5(a)に示すような平面波を発生させることができる。この平面波は当接面2aに平行な波であって、当接面2aと直交する向きに軟組織11中を進行する。平面波は、皮質骨10の表面及び裏面で図5(b)のように反射して、振動子24に受波される。
【0080】
各振動子24が超音波を受信すると、各振動子24が受波した超音波に対応する波形信号が演算部35に送られる。演算部35は、形状検出部40として機能することにより、反射波が振動子24に受波されたときの角度及び時間を検出し、これに基づいて皮質骨10の表面形状を求めるように構成されている。
【0081】
具体的には、形状検出部40は、到来方向検出部41と、到達時間検出部42と、表面反射点検出部43と、骨表面ライン検出部44と、から構成されている。
【0082】
まず、到来方向検出部41について説明する。到来方向検出部41は、複数の振動子24のうち隣接する2つの振動子を1組として振動子組25を決定し、各振動子組25に到達する超音波の到来方向を検出する。なお、以下の形状検出部40に関する説明において、アレイ振動子22から送波された平面波が皮質骨10の表面で反射して受波された超音波を表面反射波、同じく皮質骨10の裏面で反射して受波された超音波を裏面反射波と称することがある。また、各振動子組25を区別する必要がある場合には、送波専用振動子21に近い側から順に大文字のアルファベットを符号の末尾に付し、振動子組25A、振動子組25B、・・・のように表記することがある。
【0083】
以下、図6を参照して具体的に説明する。図6(a)は、表面反射波を受波している振動子組25Aの近傍を拡大した模式図、図6(b)は振動子組を構成する2つの振動子24a,24bに到来する表面反射波の伝播経路の差を説明する模式図である。ある振動子組25において、隣接する2つの振動子24に対する表面反射波の到来方向は近似している。例えば図6において、振動子組25Aを構成する振動子24aと振動子24bには、それぞれ到来角度θaで表面反射波が到来したとみなすことができる。ここで、到来角度θaを求めるために、以下のような演算を行う。
【0084】
まず、到来方向検出部41は、振動子組25Aを構成する2つの振動子24a,24bが表面反射波のピークを検出する時間差Δtを測定する。なお、前述のように、アレイ振動子22から平面波を送波すると表面反射波及び裏面反射波が発生するが、表面反射波は裏面反射波よりも必ず先に受波されるから、表面反射波のピークを適切に検出することができる。
【0085】
続いて、この時間差Δtに基づいて、当該振動子組25Aに対する表面反射波の到来角度θaを求める。図6(b)に示すように、振動子24aと振動子24bとの間隔をWとすると、振動子24aには、振動子24bと比べてWsinθaだけ長い距離を伝播して表面反射波が到達する。ここで、軟組織中の音速をSOSsoftとおくと、
SOSsoftΔt=Wsinθa
従って、到来角度θaは、
θa=arc sin(SOSsoftΔt/W)
によって求めることができる。到来方向検出部41は、他の振動子組25についても同様に到来角度を求める。なお、本実施形態では軟組織11中の音速SOSsoftとしては経験により得られた値を用いているが、実測値を用いても良い。
【0086】
次に、到達時間検出部42について説明する。到達時間検出部42は、アレイ振動子22によって超音波が送波されてから、振動子組25に表面反射波が到達するまでの到達時間Taを求める。本実施形態では、アレイ振動子22によって超音波が送波されてから、振動子組25を構成する2つの振動子24それぞれに表面反射波が到達するまでの時間の平均値を、到達時間Taとしている。なお、平均値に限らず、例えばどちらか一方の振動子24に表面反射波が到達するまでの時間をそのまま到達時間Taとして用いても良い。
【0087】
次に、表面反射点検出部43について説明する。表面反射点検出部43は、到来角度θaと到達時間Taに基づいて、各振動子組25に到達した表面反射波の反射点Raを検出する。
【0088】
ここで、図6に示される平面内において、アレイ振動子22が並んでいる方向をx軸とし、x軸と直交する方向をy軸とする。そして、振動子組25Aから反射点Raまでのx軸方向の距離をX、y軸方向の距離をYとおく。図6から明らかなように、表面反射波の伝播距離Laは、
a=Y+Y/cosθa
となる。一方、到達時間Taと軟組織11中の音速SOSsoftを用いると、
a=SOSsoft×Ta
であるから、反射点Raの位置を示す距離X,Yは、
Y=SOSsoft×Ta×cosθ/(1+cosθ)
X=Y×tanθ=SOSsoft×Ta×sinθ/(1+cosθ)
で求めることができる。このように、平面波の到来角度θaと到達時間Taに基づいて、反射点Raの位置を算出することができる。そして、表面反射点検出部43は、他の振動子組25についても同様に反射点を求める。
【0089】
骨表面ライン検出部44は、表面反射点検出部43が求めた複数の反射点を直線又は曲線で結ぶことにより、骨表面ラインを検出する。反射点は皮質骨10表面上の点であるから、骨表面ラインは皮質骨10の表面形状を表す。
【0090】
以上のようにして、形状検出部40によって皮質骨10の表面形状(骨表面ライン)を得ることができる。
【0091】
次に、音速検出部50について説明する。音速検出部50は、皮質骨10中の音速(骨音速)を検出するように構成されている。
【0092】
音速検出部50によって骨音速を検出する前に、まず、形状検出部40による骨表面ラインの検出が行われる(形状検出工程)。続いて、送波専用振動子21によって超音波の送波を行い(送波工程)、帰ってきた超音波をアレイ振動子22によって受波して、演算部35に対して波形信号を送信する(受波工程)。そして、各振動子24の波形信号に基づいて、音速検出部50による骨音速の導出を行う。
【0093】
具体的には、音速検出部50は、仮定伝播時間算出部51と、波形積算部52と、音速導出部53と、から構成される。
【0094】
仮定伝播時間算出部51は、前記仮定伝播時間算出工程に対応する演算処理を行う。即ち、仮定伝播時間算出部51は、骨音速を仮定し、当該仮定した骨音速に基づいて仮定伝播時間を求める。
【0095】
仮定伝播時間算出部51は、仮定伝播時間を求めるために、まず、表面伝播波の伝播経路を求める。即ち、皮質骨10の表面形状と、骨音速と、軟組織11中の音速と、が既知であれば、公知のスネルの法則により、送波専用振動子21から各振動子24まで表面伝播波が伝播する経路を、一意に求めることができる。
【0096】
ここで、骨形状は、形状検出部40が検出した骨表面ラインを用いる。骨音速としては、骨音速の経験値に基づいて設定された所定範囲内から適当な値(音速仮定値)を仮定して計算に用いる。軟組織11中の音速としては、本実施形態では経験値を用いているが、予め測定しておいた値を用いても良い。また、軟組織11中の音速は、送波専用振動子21又はアレイ振動子22によって超音波を送波し、アレイ振動子22によって受波することにより測定することもできる。
【0097】
なお、上記で説明したように、各振動子24が受波する表面伝播波には、伝播経路の違いによって漏洩表面波と表面屈折波の2種類が存在する。本実施形態では、表面屈折波の伝播経路を計算するものとして説明する。
【0098】
以下、図7を参照して説明する。図7は、表面屈折波の伝播経路の算出方法を説明する模式図である。
【0099】
仮定伝播時間算出部51は、表面屈折波の伝播経路を決定するために、まず、送波専用振動子21からの超音波が皮質骨10の内部に入射する入射点Pinを決定する。
【0100】
なお、入射点Pinは、アレイ振動子22の直下から外れた位置にあるので、アレイ振動子22から平面波を送波して表面反射波を検出する方法(形状検出部40による皮質骨表面形状の検出)では、当該入射点Pin近傍の表面形状を取得することができない。そこで本実施形態では、入射点Pin近傍の形状を、形状検出部40が求めた骨表面ラインに基づいて予測しておく。図7には、予測された骨表面ラインが破線で示されている。
【0101】
次に、仮定伝播時間算出部51は、この予測したラインに対して超音波が入射する位置(入射点Pin)を求める。超音波は、臨界角θcよりも小さい任意の角度で皮質骨10の内部に入射することが可能である。ただし、表面屈折波が振動子24に受波されるのは、臨界角θcに近い入射角で皮質骨10内に超音波が入射した場合に限られる。そこで本実施形態では、臨界角θcで皮質骨10内に超音波が入射するものと近似して入射位置を求める。臨界角θcは、骨音速と軟組織中の音速とによって決まるものであるから、骨音速を仮定することにより、入射点Pinを一意に求めることができる。
【0102】
続いて、仮定伝播時間算出部51は、骨表面ライン上に任意の点Poutを設定する。入射点Pinから点Poutまでの直線距離が、皮質骨10内を超音波が伝播する距離である。
【0103】
そして、仮定伝播時間算出部51は、Poutから超音波が軟組織11側に放射されるときの角度を求める。超音波が放射されるときの角度は、スネルの法則により一意に求めることができる。具体的には、音速仮定値をSOSbone、軟組織中の音速をSOSsoftとすると、皮質骨10から軟組織11側に超音波が出射する際の屈折角β1と入射角β2の関係は、
sinβ1/SOSsoft=sinβ2/SOSbone
である。入射角β2は、直線Pinoutの傾きと、骨表面ラインの形状から求めることができる。従って、上記の式により屈折角β1を求めることができる。
【0104】
ここで、図7に示すように、送波専用振動子21に最も近い振動子24aの位置を原点として、アレイ振動子22が並んでいる方向にx軸をとる。屈折角β1と骨表面ラインの形状が分かっているので、点Poutから放射された超音波がx軸と交わる点Pxが決まる。以上で説明した演算処理により、送波専用振動子21から点Pxまでの表面屈折波の伝播経路を求めることができる。
【0105】
なお、入射点Pinを求める際に、上記のように臨界角θcで皮質骨10内に超音波が入射するものと近似するのは、計算を容易にするためであり、計算される伝播経路は近似的な値となる。一方、皮質骨10への入射角を臨界角θcで近似せずに、伝播経路を厳密に計算することも可能である。即ち、皮質骨10の表面形状が既知であれば、皮質骨10への入射角を変化させながらスネルの法則を2回用いることにより、送波専用振動子21から点Pxまでの伝播経路を厳密に計算することができる。この場合、入射点Pinは点Pxによって変化する。ただし、このような伝播経路の厳密な計算は、臨界角θcで入射角を近似する計算方法と比べて処理時間が掛かる。本実施形態では、近似的な計算方法と厳密な計算方法のどちらかを選択して伝播経路を計算することができるように構成されている。
【0106】
そして、仮定伝播時間算出部51は、求めた伝播経路に基づいて、送波専用振動子21によって超音波が送波されてから、表面屈折波が点Pxに到達するまでの伝播時間を求める。即ち、
(点Pxまでの伝播時間)=(軟組織中を伝播する距離)×SOSsoft+(皮質骨中を伝播する距離)×SOSbone
となる。
【0107】
仮定伝播時間算出部51は、Poutの位置を変えながら上記伝播時間の計算を繰り返す。これにより、点Pxの位置を変えながら、それぞれの点Pxまでの表面屈折波の伝播時間を求めることになるので、図8に示すようなt−x曲線を求めることができる。なお、図8の縦軸xは、振動子24aからの距離であり、横軸tは、送波専用振動子21が超音波を送波してから前記x軸に表面屈折波が到達するまでの伝播時間である。
【0108】
最後に、仮定伝播時間算出部51は、各振動子24に対して表面屈折波が到達するまでの時間(仮定伝播時間)を求める。即ち、各振動子24のx座標(振動子24aからの距離)は既知であるから、t−x曲線を参照することにより、各振動子24の仮定伝播時間を求めることができる。
【0109】
次に、波形積算部52について説明する。波形積算部(妥当性指標値算出部)52は、前記波形積算工程に対応した演算処理を行う。即ち、波形積算部52は、各振動子24が出力した波形信号の波形を、それぞれ前記仮定伝播時間分だけズラして(オフセットして)積算し、積算波形を求めるように構成されている。
【0110】
以下、具体的に説明する。まず、波形積算部52は、波形信号を積算する前に、表面屈折波以外の波を消すために各波形信号に適当な窓関数を掛ける(図9)。なお、窓関数の範囲を決定するためには、骨音速や伝播時間をある程度知っておかなければならない。ただし、窓関数によって表面屈折波以外の波をすべて消すことができなくても、残った波の影響は波形信号同士の積算により弱めることができるので、表面屈折波以外の波を完全に消すように窓関数を厳密に決める必要は無い。従って、窓関数は、骨音速と軟組織11中の音速の経験値等に基づき、適当なマージンを考慮して定めれば十分である。
【0111】
また、波形信号の振幅は、振動子24が送波専用振動子21から離れるに従って弱くなる。そこで、波形積算部52は、各振動子24の波形信号に適当なゲインを掛けて、各波形信号の振幅が同じ程度になるように調整する。ここで、前記ゲインの掛け方は、窓関数により得られた波形信号の最大振幅に基づいて定めても良いし、適当な指数関数の減衰を仮定して決定しても良い。
【0112】
続いて、波形積算部52は、前記窓関数及びゲインを乗じて調整した各波形信号を、各振動子24の仮定伝播時間に対応する時間だけ、時間を早めるようにしてズラす(即ち、図9の左側にオフセットさせる)。各波形信号をズラすと、例えば図10に示すようになる。なお、図10においては、各波形信号に含まれる表面屈折波のピークの位相が一致している。このように波形信号をズラした結果ピークが一致するのは、音速仮定値が実際の骨音速と一致した場合である。
【0113】
そして、波形積算部52は、ズラした波形信号同士を積算して、図11のような積算波形を求める。
【0114】
最後に、波形積算部52は、前記積算波形のエンベロープ(包絡線)を生成し、当該エンベロープの振幅を求める(図11参照)。後述するように、このエンベロープの振幅は、オフセット後の表面伝播波のピークが互いに一致しているか否か(更に言えば、仮定伝播時間が実際の骨音速と合致しているか否か)の指標となるものである。即ち、エンベロープの振幅は、仮定伝播時間の妥当性を示す妥当性指標値である。
【0115】
次に、音速導出部53について説明する。音速導出部53は、仮定伝播時間算出部51及び波形積算部52の機能を呼び出して、前記エンベロープの振幅を求める処理(ループ処理)を繰り返すように構成されている。
【0116】
音速導出部53において行われる上記ループ処理において、仮定伝播時間算出部51は、呼び出されるたびに前回とは異なる音速仮定値を用いて仮定伝播時間を算出する。即ち、仮定伝播時間算出部51は、前記ループのたびに、新しい音速仮定値を用いて新しいt−x曲線を求める。例えば図12に、音速仮定値を変化させて求めた複数のt−x曲線を示す。図12のグラフに示すように、音速仮定値が異なると、t−x曲線の傾きや、当該t−x曲線とt座標軸との交点などが変化する。従って、音速仮定値が異なれば、波形信号を積算する際に、各波形信号をズラす量も異なる。
【0117】
各波形信号をズラす量が変化すると、積算波形も変化する。従って、音速仮定値を変化させることにより、前記エンベロープの振幅が変化する。音速導出部53は、音速仮定値を所定範囲内で変化させつつ前記ループを繰り返すことにより、当該所定範囲内のすべての場合についてエンベロープの振幅値を求める。図13に、このように音速仮定値を変化させながらエンベロープの振幅を求めてプロットした結果の例を示す。
【0118】
図13の例では、仮定音速がSOStrueのときにエンベロープの振幅が最大となっている。即ち、このSOStrueのときに、各波形信号に含まれる表面屈折波のピークが最も強め合っている(図10のように、表面屈折波のピークの位相が合っている)と考えられる。そこで、音速導出部53は、このSOStrueを音速の測定値として採用する。以上のように、音速導出部53は、音速導出工程に対応する演算処理を行って音速を導出している。
【0119】
次に、上記の骨強度診断装置1を用いた音速測定方法によって、実際に骨音速を測定した実施例について説明する。本願発明者らは、上記音速測定方法の有効性を確認するため、上記の骨強度診断装置1によってウシ脛骨皮質骨の音速を測定した。また、その結果が正しいかどうかを評価するため、当該ウシ脛骨を切り出してブロック状にして、長軸方向と円周方向の音速を透過法で測定し、骨強度診断装置1による測定値との比較を行った。この結果を図14に示す。
【0120】
まず、透過法によって音速を測定した結果について説明する。ウシの骨は、オステオンからなるHaversian構造と、層状のPlexiform構造からなることが知られている。なお、顕微鏡での観察の結果、皮質骨の外側にはPlexiform構造が、内側にはHaversian構造が多く存在することが確かめられた。そこで、透過法では、Plexiform構造とHaversian構造のそれぞれについて、円周方向と長軸方向の音速を測定した。
【0121】
なお、長管状の骨は、長手方向の負荷に晒されることが多いため、一般的に長軸方向に強化されている。そのため、一般的に、円周方向に比べて長軸方向の方が音速が大きい。図14に示すように、透過法による測定においても、長軸方向の音速の方が大きいという結果が得られている。
【0122】
次に、本実施形態の骨強度診断装置1によって音速を測定した結果について説明する。図14に示すように、本実施形態の骨強度診断装置1によって得られた長軸方向の音速は、透過法で測定した結果とほぼ一致している。また、円周方向の音速に関しては、本実施形態の骨強度診断装置1による測定結果は、Plexiform構造とHaversian構造の平均的な値となった。従って、本実施形態の骨強度診断装置1によって適切に骨音速の測定を行えることが確認できた。なお、一般にヒトの骨は大部分がHaversian構造からなると言われている。従って、ヒトの骨においても、骨強度診断装置1によって適切な骨音速の測定を行うことができると考えられる。
【0123】
以上で説明したように、本実施形態の骨強度診断装置1は、送波専用振動子21と、複数の振動子24と、仮定伝播時間算出部51と、波形積算部52と、音速導出部53と、を備える。送波専用振動子21は、皮質骨10の表面に向けて超音波を送波する。振動子24は、皮質骨10からの超音波を受波し、当該受波した超音波に応じた波形信号を出力する。仮定伝播時間算出部51は、送波専用振動子21が送波した超音波が、皮質骨10の表面近傍を伝播した後で各振動子24に到達するまでの伝播時間を、当該皮質骨10内の音速の仮定値と、当該皮質骨10の表面形状と、に基づいて算出する。波形積算部52は、複数の振動子24のうち少なくとも2つが出力した波形信号に基づいて、前記伝播時間の妥当性の指標となる積算波形のエンベロープの振幅を求める。音速導出部53は、積算波形のエンベロープの振幅に基づいて、皮質骨10内の音速を求める。
【0124】
即ち、仮定伝播時間の妥当性を判断することにより、当該仮定伝播時間を算出した際に仮定していた音速の値が正しいか否かを判断することができるので、これにより皮質骨10内の音速を求めることができる。ここで、仮定伝播時間の妥当性を判断する際には、受信波形のピークの位置を厳密に検出する必要が無いため、受信波形にノイズが含まれていても適切に音速を求めることができる。また、複数の振動子24からの波形信号に基づいて仮定伝播時間の妥当性を判断するため、ノイズの影響を弱めることができる。
【0125】
また、本実施形態の骨強度診断装置1においては、波形積算部52は、複数の振動子24のうち少なくとも2つが出力した波形信号を、前記仮定伝播時間に対応する時間だけそれぞれズラし、当該ズラした波形信号同士を積算した積算波形を求め、当該積算波形のエンベロープの振幅を求めている。
【0126】
即ち、複数の振動子24受波部が出力する波形信号同士を積算すると、波形のピーク位置が一致している場合に振幅を最も強め合う。この性質を利用することにより、所望のピークのみ強調し、その他のノイズの影響を少なくすることができる。上記の構成においては、仮定伝播時間算出部51が仮定した音速が正しかった場合、積算される波形信号のピーク位置が一致するので、振幅を強め合う。従って、振動子24が出力した波形信号にノイズが含まれている場合であっても、積算波形を見ることで、音速の仮定値が正しいか否かを判断することができる。
【0127】
また、本実施形態の骨強度診断装置1は、以下のように構成されている。即ち、仮定伝播時間算出部51は、複数通りの音速仮定値を用いて伝播時間を算出する。波形積算部52は、複数通りの音速仮定値に応じて、それぞれの場合の積算波形についてエンベロープの振幅を求める。そして、音速導出部53は、複数通りの音速仮定値それぞれの場合のエンベロープの振幅を比較することで、皮質骨10内の音速を求める。
【0128】
これにより、複数通りの音速仮定値を試行し、ピーク同士が最も強め合った(ピーク位置が最も一致した)場合の音速仮定値を、骨音速の測定値として採用することができる。
【0129】
また、本実施形態の骨強度診断装置1において、仮定伝播時間算出部51は、予め測定された皮質骨10表面の形状に基づいて伝播時間を算出している。
【0130】
これにより、皮質骨10表面の実際の形状を考慮して伝播時間を算出することができるので、例えば皮質骨10表面が曲面状の場合であっても精度良く音速を求めることができる。
【0131】
また、本実施形態の骨強度診断装置1は、形状検出部40を備える。また、複数の振動子24は、皮質骨10の表面に向けて同時に超音波を送波することによって平面波を発生させることができるように構成されている。形状検出部40は、平面波が皮質骨10の表面で反射して各振動子24に到達したときの到達角度に基づいて、皮質骨10表面の形状を検出する。そして、仮定伝播時間算出部51は、形状検出部40が検出した皮質骨10表面の形状に基づいて前記伝播時間を算出している。
【0132】
これにより、音速を測定するための構成の一部を用いて、皮質骨10表面の形状を検出することができるので、装置を簡略化してコストを削減することができる。
【0133】
また、本実施形態の音速測定方法は、送波工程(S102)と、受波工程(S103)と、仮定伝播時間算出工程(S104)と、波形積算工程(S105)と、を含む。送波工程においては、皮質骨10の表面に向けて超音波を送波する。受波工程においては、当該皮質骨10からの超音波を各振動子24によって受波する。仮定伝播時間算出工程においては、送波工程で送波した超音波が、皮質骨10の表面近傍を伝播した後で各振動子24に到達するまでの伝播時間を、当該皮質骨10内の音速の仮定値と、当該皮質骨10の表面形状と、に基づいて算出する。波形積算工程においては、複数の振動子24のうち少なくとも2つが出力した波形信号に基づいて、前記伝播時間の妥当性の指標となる積算波形のエンベロープの振幅を求める。そして、音速仮定値を変化させながら、仮定伝播時間算出工程と前記波形積算工程とを繰り返し行うことで(S104〜S106のループ)、複数通りの音速仮定値それぞれの場合の積算波形を求め、前記それぞれの場合の積算波形のエンベロープの振幅を比較することで、皮質骨10内の音速を求める(S107)。
【0134】
即ち、伝播時間の妥当性を判断することにより、当該伝播時間を算出した際に仮定していた音速の値が正しいか否かを判断することができるので、これにより皮質骨10内の音速を求めることができる。ここで、伝播時間の妥当性を判断する際には、受信波形のピークを厳密に検出する必要が無いため、受信波形にノイズが含まれていても適切に音速を求めることができる。また、複数の振動子24からの波形信号に基づいて伝播時間の妥当性を判断するため、ノイズの影響を弱めることができる。そして、複数通りの音速の仮定値を試行し、伝播時間が最も妥当であった場合に、当該伝播時間を算出した際の音速の仮定値を、被測定体内の音速の測定値として採用することができる。
【0135】
また、本実施形態の音速測定方法は、以下の方法を採っている。即ち、波形積算工程において、前記複数の受波部のうち少なくとも2つが出力した波形信号を、前記伝播時間に対応する時間だけそれぞれズラし、当該ズラした波形信号同士を積算した積算波形を求め、当該積算波形のエンベロープの振幅を求める。
【0136】
即ち、複数の振動子24が出力する波形信号同士を積算すると、波形のピーク位置が一致している場合に振幅を最も強め合う。この性質を利用することにより、所望のピークのみ強調し、その他のノイズの影響を少なくすることができる。上記の構成においては、仮定到達時間算出工程で仮定した音速が正しかった場合、積算される波形信号のピーク位置が一致するので、振幅を強め合う。従って、振動子24が出力した波形信号にノイズが含まれている場合であっても、積算波形を調べることで、音速の仮定値が正しいか否かを判断することができる。
【0137】
また、本実施形態の音速測定工程は、皮質骨10の表面形状を検出する形状検出工程(S101)を含む。そして、仮定伝播時間算出工程においては、前記表面形状に基づいて伝播時間を算出する。
【0138】
これにより、皮質骨10表面の実際の形状を考慮して仮定伝播時間を算出することができるので、例えば皮質骨10表面が曲面状の場合であっても精度良く音速を求めることができる。
【0139】
次に、上記実施形態の骨強度診断装置1の変形例について説明する。
【0140】
この変形例に係る骨強度診断装置は、妥当性指標値算出部として、波形乗算部を備える。即ち、上記の実施形態において、妥当性指標値算出部としての波形積算部52は、各振動子24の波形信号を仮定伝播時間に応じてズラし、ズラした波形信号同士を積算して積算波形を求めていた。この点、本変形例の波形乗算部は、各振動子24の波形信号を仮定伝播時間に応じてズラし、ズラした波形信号同士を乗算して乗算波形を求め、当該乗算波形に基づいて妥当性指標値を求めるように構成したものである。
【0141】
以上で説明したように、この変形例に係る音速測定装置においては、波形乗算部は、複数の振動子24のうち少なくとも2つが出力した波形信号を、仮定伝播時間に対応する時間だけそれぞれズラし、当該ズラした波形信号同士を乗算した乗算波形を求め、当該乗算波形に基づいて妥当性指標値を求めている。
【0142】
また、この変形例に係る音速測定装置を用いた音速測定方法においては、妥当性指標値算出工程として、上記実施形態の波形積算工程に代えて、波形乗算工程を行う。即ち、波形乗算工程においては、複数の受波部のうち少なくとも2つが出力した波形信号を、前記伝播時間に対応する時間だけそれぞれズラし、当該ズラした波形信号同士を乗算した乗算波形を求め、当該乗算波形に基づいて妥当性指標値を求める。
【0143】
即ち、複数の振動子24受波部が出力する波形信号同士を乗算すると、波形のピーク位置が一致している場合に振幅を最も強め合う。この性質を利用することにより、所望のピークのみ強調し、その他のノイズの影響を少なくすることができる。上記の構成においては、仮定伝播時間算出部51が仮定した音速が正しかった場合、乗算される波形信号のピーク位置が一致するので、振幅を強め合う。従って、振動子24が出力した波形信号にノイズが含まれている場合であっても、乗算波形を見ることで、音速の仮定値が正しいか否かを判断することができる。
【0144】
次に、上記実施形態の骨強度診断装置1の別の変形例について説明する。
【0145】
この変形例に係る骨強度診断装置1が備える超音波送受波器90の構造を図15に示す。この超音波送受波器90は、送波専用振動子を省略し、複数の振動子24が略等間隔で1列に並んだアレイ振動子22のみを備えるものである。ここで、アレイ振動子22は、上記実施形態で送波専用振動子21が配置されていた位置まで延長して設けられている。
【0146】
ここで、上記実施形態の骨強度診断装置1においては、以下のような課題があった。即ち、上記実施形態では、骨表面ラインを検出する際に、皮質骨10に対する超音波の入射点Pin近傍の形状は検出することができなかった。これは、形状検出部40によって皮質骨表面の形状を検出する際に、アレイ振動子22の直下の形状しか検出することができないためである。このため、表面伝播波の伝播経路を算出する際には、骨表面ラインから予測したラインに基づいて入射点Pinの位置を求めていたが、この方法では正確な入射点Pinの位置を求めることができないので、導出する音速の誤差にも繋がる。
【0147】
そこで、本変形例は、送波専用振動子を省略して、音速測定を行う際の超音波の送波もアレイ振動子(リニアアレイ)22によって行うようにしたものである。例えば、振動子24aと振動子24bを、上記実施形態における送波専用振動子21の代わりとして用いる。
【0148】
即ち、隣接する振動子24がタイミングをズラして超音波を送波することにより、斜め方向に超音波ビームを送波することができる。これによれば、アレイ振動子22が送波専用振動子21の機能を兼ねることができるだけでなく、任意の角度で超音波を送波できるようになるので、皮質骨10に対して適切な角度(臨界角又は臨界角近傍の角度)で超音波を当てることができる。これにより、効率が良く、指向性による音速誤差も低減できる。
【0149】
更に、上記のように構成すれば、皮質骨10に対して超音波が入射する入射点の位置は、常にアレイ振動子22の直下の位置であるから、形状検出部40による骨表面ラインの検出結果に基づいて、当該入射点の位置を精度良く算出することができる。また、本変形例の超音波送受波器90は、図15のように全幅にわたってアレイ振動子22が配置されるので、測定時に骨形状の全体を把握でき、測定が行い易くなる。
【0150】
以上で説明したように、この変形例に係る音速測定装置が備える超音波送受波器においては、複数の振動子24が、等間隔で1列に並べられたアレイ振動子22を構成するとともに、複数の振動子のうち少なくとも何れか1つは、上記実施形態における送波専用振動子21の機能を兼ねている。
【0151】
これにより、送波専用の構成を省略することができるので、装置を簡略化することができる。また、隣接する振動子24から超音波を送波するタイミングをズラし、当該タイミングをズラす間隔を調整することにより、任意の角度で超音波ビームを形成することができる。これにより、皮質骨10の表面に対して最適な角度で超音波を当てることができる。また、アレイ振動子22によって平面波を発生させて皮質骨10の表面形状を検出する構成の場合、当該表面形状を検出できるのはアレイ振動子22の直下の位置のみである。従って、送波専用振動子21とアレイ振動子22が別の構成の場合は、皮質骨表面への入射点近傍の形状を検出することができない。この点、振動子24が送波専用振動子21としての機能を兼ねることにより、皮質骨表面への入射点近傍の形状を検出することができる。これにより、伝播時間を正確に算出することができる。
【0152】
以上に本発明の好適な実施形態及びその変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0153】
上記実施形態では、複数の振動子24が出力する波形信号をすべて積算するように説明したが、必ずしもすべての波形信号を積算する必要は無い。例えば、ある振動子24に表面伝播波が到来しないことが予め判っている場合、当該振動子24からの波形信号は積算しなくても良い。
【0154】
また、例えば、直接波、表面からの反射波、裏面からの反射波及び表面伝播波のピークが、図16に示すような関係となる場合がある。図16に示すように、表面伝播波と表面からの反射波は、ある位置から連続的に分離し、表面伝播波の方が先に到達するようになる。これに対して、裏面からの反射波は、ある位置から表面伝播波に近づいてきて重なってくる。従って、表面伝播波の情報は、図16のグラフにおいて破線で囲んだ部分に最も良好に含まれている(この部分は表面伝播波のピークが他の波のピークと重なっていない)。そこで、波形信号を積算する場合には、この破線で囲んだ部分を含む波形信号のみを選択して積算すれば、精度の良い音速測定を行うことができる。
【0155】
なお、表面伝播波と表面からの反射波とが分離する位置は、皮質骨の表面形状から予測することができるので、積算する波形信号を選択する際に利用することができる。一方、表面伝播波と裏面からの反射波とが重なる位置は、予測が困難である。しかし、表面伝播波と表面からの反射波が分離した位置からの全ての波形信号を積算しても(裏面からの反射波が重なっている波形信号を積算しても)、本発明の音速測定方法によればノイズ波形の影響を抑えることができるので、適切に音速を導出することができる。
【0156】
上記の演算部は、超音波送受波器側に備えるように変更しても良い。また、超音波送受波器と装置本体と別々とする構成に限らず、超音波送受波器と装置本体とを一体化しても良い。
【0157】
上記実施形態において、仮定伝播時間算出部51は屈折表面波の伝播経路及び仮定伝播時間を求める構成としたが、漏洩表面波の伝播経路及び仮定伝播時間を求めるように構成しても良い。この場合であっても、波形信号同士を積算することにより当該漏洩表面波のピークに焦点を合わせることができるので、適切に音速を測定することができる。
【0158】
形状検出部40は、表面反射波に基づいて皮質骨10の表面形状を検出する際に、裏面反射波に基づいて皮質骨10の裏面形状を検出しても良い。この場合、表面形状と裏面形状に基づいて、皮質骨厚さを求めることができる。求めた皮質骨厚さは、骨の健全性の指標の1つとして用いることができる。
【0159】
また、形状検出部40による被測定体の表面形状の検出方法は、複数の振動子24から同時に送波して平面波を発生させる方法に代えて、例えば以下の方法を用いても良い。即ち、アレイ振動子22の端から、1つ又は複数の振動子24による超音波の送波を順次行う。そして、それぞれの送波を行ってから表面反射波を受信するまでの時間に基づいて、皮質骨10の表面形状を求める。
【0160】
上記の形状検出方法によれば、複数の振動子24から超音波を順次送波するため、測定に若干の時間が掛かるものの、被測定体の表面が凹状の場合でも表面形状を正しく検出することができる。一方、実施形態で説明したように複数の振動子24から同時に送波して平面波を発生させる方法では、測定時間は短縮できるものの、被測定体の表面が凹状の場合は表面形状を測定することができない。脛骨断面の形状は様々であり、一部に凹形状を含む場合もあるため、上記実施形態の骨強度診断装置1では、皮質骨10の表面形状を正確に求めることができないことがある。
【0161】
そこで、平面波を発生させる上記実施形態の方法で皮質骨10の表面形状を測定し、エラーが発生した場合(皮質骨10の断面形状に凹部が含まれる場合)に、アレイ振動子22の端の振動子24から超音波を順次送波する上記の方法を用いるように構成すれば特に好適である。
【0162】
上記実施形態において、波形積算部52は、妥当性指標値として積算波形のエンベロープの振幅を求める構成としたが、これに限らない。例えば、積算波形の振幅自体を妥当性指標値とする構成でも、波形信号のピークが強め合っているか否か(即ち、音速仮定値が正しいか否か)を検出することは可能である。また例えば、積算波形の積分値(面積)を妥当性指標値とするように構成しても良い。
【0163】
また、上記実施形態及び変形例においては、波形信号をズラしてから積算波形又は乗算波形を求め、その後仮定伝播時間の妥当性を判断する構成としたが、この構成に限らない。即ち、各振動子24が出力した波形信号をズラすことなく、仮定伝播時間曲線(t−x曲線)と直接比較して音速を決定することもできる。この場合、波形信号は、そのまま用いても良いし、振幅を取り出すという処理を行っても良い。
【0164】
例えば、図3に示すような波形信号のデータを2次元画像と見て、図8に示すようなt−x曲線と比較し、一致度を示す指標(妥当性指標値)を求める。上記のように波形信号とt−x曲線とを直接比較する方法としては、従来のデジタル画像処理で用いられている特徴抽出法(一般化ハフ変換など)や、パターン認識技術(ニューラルネットワークを用いたものなど)を用いることができる。そして、音速仮定値を変化させながら、図12に示すような様々なt−x曲線についての一致度を求め、最も一致度の高いt−x曲線の音速仮定値を、音速の測定値として採用する。
【0165】
以上の方法であっても、波形信号をズラして積算又は乗算する方法と同様に、ノイズの影響を抑えて安定した音速測定が可能である。即ち、それぞれの波形信号にノイズが含まれていたとしても、複数の振動子24からの波形信号を用いて上記の特徴抽出やパターン認識等を行うことができるので、ノイズの影響が低減され、妥当性指標値を良好に求めることができる。また、t−x曲線との一致度を見るという構成であるため、波形信号からピーク位置を厳密に求めなくても、仮定伝播時間が妥当であるか否かを判断することができる。
【0166】
軟組織中の音速については、軟組織の厚みに応じて変更するように構成しても良い。なお、一般的に厚い軟組織の方が脂肪を多く含むため、軟組織が厚いほど当該軟組織中の音速は遅くなる。
【0167】
上記実施形態において、各振動子24の出力する波形信号には窓関数が乗じられているが、窓関数を使用した演算は省略することもできる。
【0168】
また、前記形状検出工程を省略し、例えば皮質骨10の断面輪郭形状が直線状であると仮定して仮定伝播時間の算出を行っても良い。ただし、骨の円周方向に音速を測定する際には、皮質骨10表面の断面輪郭が曲線状であるので、上記のように伝播経路を仮定すると誤差が大きくなってしまう。従って、皮質骨表面の形状を検出し、当該表面形状に基づいて仮定伝播時間の算出を行うことが好ましい。
【0169】
積算波形のエンベロープの振幅が極大値をとる音速仮定値は、図13のグラフのように複数生じる場合がある。この場合に何れを測定値として採用するかの判断材料として、積算波形の振幅が最大になる時間を補助的に使用しても良い。図17は、図13のグラフに対し、積算波形の振幅が最大になる時間を追加的にプロットしたものである。積算波形のエンベロープの振幅が極大値をとる音速仮定値が(図17のグラフのように)2つある場合、一方は表面伝播波のピークが強め合ってエンベロープの振幅が大きくなった場合であり、他方は、例えば裏面からの反射波のピークが強め合ってエンベロープの振幅が大きくなった場合であると考えられる。図17のように積算波形の振幅が最大になる時間(即ち、強め合うピークが検出された時間)をプロットすると、強められているピークが切り替わったことを容易に確認することができる。これを、表面伝播波に焦点が合っているか否かの指標とすることもできる。
【0170】
また、本発明の音速測定方法及び音速測定装置は、骨以外の音速を測定する用途にも広く使用することができる。特に、本発明の音速測定方法及び音速測定装置は、ノイズが多い環境下で、表面形状が非直線状である被測定体の音速を測定する際に極めて有効である。
【符号の説明】
【0171】
1 骨強度診断装置(音速測定装置)
2 超音波送受波器
3 装置本体
10 皮質骨
21 送波専用振動子(送波部)
22 アレイ振動子
24 振動子(受波部)
35 演算部
40 形状検出部
50 音速検出部
51 仮定伝播時間算出部
52 波形積算部(妥当性指標値算出部)
53 音速導出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定体の表面に向けて超音波を送波する送波部と、
前記被測定体からの超音波を受波し、当該受波した超音波に応じた波形信号を出力する複数の受波部と、
前記送波部が送波した超音波が、前記被測定体の表面又は当該被測定体の内部を伝播した後で前記各受波部に到達するまでの伝播時間を、当該被測定体内の音速の仮定値と、当該被測定体の表面形状と、に基づいて算出する仮定伝播時間算出部と、
前記複数の受波部のうち少なくとも2つが出力した波形信号に基づいて、前記伝播時間の妥当性の指標となる妥当性指標値を求める妥当性指標値算出部と、
前記妥当性指標値に基づいて、前記被測定体内の音速を求める音速導出部と、
を備えることを特徴とする音速測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の音速測定装置であって、
前記妥当性指標値算出部は、前記複数の受波部のうち少なくとも2つが出力した波形信号を、前記伝播時間に対応する時間だけそれぞれズラし、当該ズラした波形信号同士を積算した積算波形を求め、当該積算波形に基づいて前記妥当性指標値を求めることを特徴とする音速測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の音速測定装置であって、
前記妥当性指標値算出部は、前記複数の受波部のうち少なくとも2つが出力した波形信号を、前記伝播時間に対応する時間だけそれぞれズラし、当該ズラした波形信号同士を乗算した乗算波形を求め、当該乗算波形に基づいて前記妥当性指標値を求めることを特徴とする音速測定装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の音速測定装置であって、
前記仮定伝播時間算出部は、前記音速の仮定値として複数通りの値を用いて前記伝播時間を算出し、
前記妥当性指標値算出部は、前記複数通りの音速の仮定値に応じて、それぞれの場合の妥当性指標値を求め、
前記音速導出部は、前記複数通りの音速の仮定値それぞれの場合の妥当性指標値に基づいて、前記被測定体内の音速を求めることを特徴とする音速測定装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の音速測定装置であって、
前記仮定伝播時間算出部は、予め測定された被測定体表面の形状に基づいて前記伝播時間を算出することを特徴とする音速測定装置。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の音速測定装置であって、
形状検出部を備え、
前記複数の受波部のうち少なくとも一部は、被測定体の表面に向けて超音波を送波することができるように構成され、
前記形状検出部は、超音波が送波されてから前記被測定体の表面で反射して前記各受波部に到達するまでの時間に基づいて、前記被測定体表面の形状を検出し、
前記仮定伝播時間算出部は、前記形状検出部が検出した前記被測定体表面の形状に基づいて前記伝播時間を算出することを特徴とする音速測定装置。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の音速測定装置であって、
前記複数の受波部は、略等間隔で1列に並べられたリニアアレイを構成するとともに、前記複数の受波部のうち少なくとも何れか1つは、前記送波部として機能することを特徴とする音速測定装置。
【請求項8】
受波した超音波に応じて波形信号を出力する複数の受波部を備えた音速測定装置を用いる音速測定方法であって、
被測定体の表面に向けて超音波を送波する送波工程と、
当該被測定体からの超音波を前記各受波部によって受波する受波工程と、
前記送波工程で送波した超音波が、前記被測定体の表面又は当該被測定体の内部を伝播した後で前記各受波部に到達するまでの伝播時間を、当該被測定体内の音速の仮定値と、当該被測定体の表面形状と、に基づいて算出する仮定伝播時間算出工程と、
前記複数の受波部のうち少なくとも2つが出力した波形信号に基づいて、前記伝播時間の妥当性の指標となる妥当性指標値を求める妥当性指標値算出工程と、
を含み、
前記音速の仮定値を変化させながら、前記仮定伝播時間算出工程と前記妥当性指標値算出工程とを繰り返し行うことで、複数通りの音速の仮定値それぞれの場合の妥当性指標値を求め、前記それぞれの場合の妥当性指標値に基づいて、前記被測定体内の音速を求めることを特徴とする音速測定方法。
【請求項9】
請求項8に記載の音速測定方法であって、
前記妥当性指標値算出工程において、前記複数の受波部のうち少なくとも2つが出力した波形信号を、前記伝播時間に対応する時間だけそれぞれズラし、当該ズラした波形信号同士を積算した積算波形を求め、当該積算波形に基づいて前記妥当性指標値を求めることを特徴とする音速測定方法。
【請求項10】
請求項8に記載の音速測定方法であって、
前記妥当性指標値算出工程において、前記複数の受波部のうち少なくとも2つが出力した波形信号を、前記伝播時間に対応する時間だけそれぞれズラし、当該ズラした波形信号同士を乗算した乗算波形を求め、当該乗算波形に基づいて前記妥当性指標値を求めることを特徴とする音速測定方法。
【請求項11】
請求項8から10までの何れか一項に記載の音速測定方法であって、
前記被測定体の表面形状を検出する形状検出工程を含み、
前記仮定伝播時間算出工程において、前記表面形状に基づいて前記伝播時間を算出することを特徴とする音速測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−246692(P2010−246692A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98414(P2009−98414)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】