説明

順方向リンク中継器遅延ウォータマーク入れシステム

【課題】順方向リンク中継器遅延ウォータマーク入れシステム。
【解決手段】中継器情報を有する中継器信号をウォータマーク入れすることにより、中継器が存在する領域において、移動局の正確な位置の配置を可能にさせる、順方向リンク中継器遅延ウォータマーク入れ(FLRFWM)システムおよび方法。中継器は、信号が中継器を通過する全ての時間に、(ユニークまたは非ユニーク)時間遅延変調波形ウォータマークを有する順方向リンク信号をウォータマーク入れする。移動局は、AFLTおよび/またはA−GPSシステムを使用して位置の配置を決定するネットワーク位置決定要素または移動局位置の配置システムを支援する中継器情報を決定するために、順方向リンク信号上の時間遅延ウォータマークを検出しおよび/または識別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
全体が参照してここに組み込まれる、「順方向リンク中継器周波数ウォータマーク入れ方式(FORWARD LINK REPEATER FREQUENCY WATERMARKING SCHEME)」と題する、2003年2月24日に出願された米国特許仮出願第60/449,774号に対する優先権が、本明細書によって請求されている。
【0002】
本発明は、電子式移動体装置の位置を決定するために無線信号を利用する位置決めシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
GPSに基づく既存の位置決め技術は、既知の時刻に信号を送信する地球軌道の衛星のネットワークを使用する。地上のGPS受信器は、これが「見る」ことのできる天空の各衛星からの信号の到着時刻を測定する。GPS受信器の位置を三角測量するために、各衛星の正確な位置と、各衛星から信号が送信された正確な時刻とに加えて、信号の到着時刻が使用される。GPS受信器は、三角測量を実施するために4個の衛星を必要とし、結果的に得られる位置決めの性能は、検出できる衛星の数が増加するにつれて向上する。
【0004】
単に3個(または以下)の衛星が発見できても、GPSベースの位置決め決定についての1つの問題が発生し、またこのような場合(そして他の補助的情報が欠如している場合)には、GPS受信器を正確に位置決めすることはできない。例えば、もしGPS受信器の天空の視界がさえぎられると(例えばコンクリートの建物の内部奥深くで)、受信器位置を決定するために十分なGPS測定値を得ることができない。
【0005】
無線通信受信器(すなわち、移動局)に関しては、GPS受信器のためのGPS衛星のネットワークと同様の仕方で、位置決め目的のために基地局の既存の無線ネットワークが使用できる。理論的に言えば、移動局の位置を三辺測量するために、各基地局の正確な位置と、基地局が送信している正確な時刻と、基地局の信号の移動局(例えば携帯電話)への到着時刻とが使用できる。この手法は、改良型順方向リンク三辺測量法(Advanced Forward Link Trilateration:AFLT)と呼ばれる。
【0006】
AFLT方式は、位置決め目的のために単独で使用できるが、代替としてGPSシステムの性能を向上させるために、無線通信基地局の既存のネットワークは、GPS機能のある移動局(すなわちGPSと無線通信受信器の両者を含む装置)における位置決め目的のための「衛星」の2次的ネットワークとして取り扱うことができる。GPSアルゴリズムと組み合わされたAFLT手法は、ハイブリッドまたは支援付きGPS(Assisted−GPS:A−GPS)と呼ばれる。
【0007】
AFLTは、各々が一意のパイロット信号を放射する複数の無線通信ネットワーク基地局を使用して移動局の位置を決定するための方法である。AFLT方式は、複数の基地局の各々からパイロット信号の複数のデータ測定値を取得することを含む。これらのデータ測定値の各々は、各パイロット信号に関する最も早い到着時刻推定値を含む。ある幾つかの実施形態ではデータ測定値は更に、RMSE推定値と、各到着時刻に関する測定時刻とパイロット信号の全ての解像可能な経路に関するエネルギー測定値(例えばEc/Io)とを含む。
【0008】
AFLTアルゴリズムによって取得されたデータ測定値は、移動局位置を決定するために単独で使用できるが、代替として移動局の位置を決定するために、代表的AFLT測定値の1つ以上が代表的GPS測定値と共に使用できる。ある幾つかの実施形態では、移動局は携帯電話を備えており、本方法は更にデータを取得するに先立ってセルラー基地局の1つにこの携帯電話を無線的に接続することを備える。基地局は、データ測定値が取得され得る地域内の全てのセルラー基地局の携帯電話にセル探索リストを供給する。GPSシステムを含む実施形態では、基地局はGPS探索リストも供給することができ、このリストは移動局がGPS探索を実施するために必要な時間を短縮するために、したがって確定時間を短縮するために使用できる。
【0009】
実際に、AFLT(A−GPSを含む)は、一部には無線ネットワークに使用される中継器がパイロット信号の送信点に関して不明確さを生じさせるので、位置決め目的のためにはほんの限られた成功にしかならないことが分かっている。言い換えれば、移動局は現在、受信された信号がドナー基地トランシーバ局(Base Transceiver Station:BTS)から、または中継器から送信されたかどうかを弁別できない。このような状況では、AFLT測定値は、パイロット信号の送信点が分からない(例えば、パイロット信号がドナーBTSから直接送信されたのか、中継器を経由して中継されたのかどうかが分からない)ため、位置を正確に決定するために使用できない。更に中継器は、典型的には、数100ナノ秒から数10マイクロ秒の範囲内の内部遅延を有し、その結果、約24.4メートル(100ナノ秒に付き)から約2.44キロメートル(10マイクロ秒に付き)の範囲内の位置決め誤差を生じる可能性がある。
【0010】
中継器の存在する場合の位置決定の問題に対する1つの提案される解決法は、中継器が存在する地域に移動局が在るときはいつでも、全てのAFLT測定値を単に除外することである。しかしながらこの解決法は、これらの地域でのAFLT位置決めを完全に排除し、また中継器が存在するときはいつでもA−GPSの如何なるAFLT部分も利用されることを妨げ、したがって位置決めの利用可能性と利益とを減少させ、GPS探索ウィンドウを増大させ、より長い確定時間という結果を招く。
【0011】
位置決定を支援するために米国特許第6,501,955号に記載されているように、逆方向リンク上に署名を導入することが提案されている。不都合なことに、RL署名は、移動局が位置決めのために(逆方向リンクよりもむしろ)順方向リンクからのAFLT測定値を使用するため、位置決めについての中継器の影響を弱める際に、ほんの限られた助けにしかなりそうもない。移動局へ戻る順方向リンクが移動局からの逆方向リンクと同じ経路をたどる(すなわち同じ中継器を経由する)という保証はないため、逆方向リンク署名は、位置決め目的のために中継器情報を識別することに関しては次善策になりそうである。米国特許第6,501,955号に記載されているように、FL信号に署名を導入することも提案されているが、実用的な解決法はまだ開発されていない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
中継された信号に中継器情報でウォータマークを入れる(watermarking)ことによって、中継器が存在する地域における位置決め決定を可能にする、順方向リンク中継器遅延ウォータマーク入れ(FLRDWM;forward link repeater delay watermarking)システムと方法とが開示される。このFLRDWMシステムは、FL信号が中継器を通過するときにこのFL信号に時間遅延変調波形でウォータマークを入れる中継器と、この時間遅延変調波形を検出して識別する移動局と、を含む。この時間遅延ウォータマーク(watermark)は、AFLTおよび/またはA−GPS位置決めシステムを使用して、中継器が存在する地域における移動局の位置を決定するために使用できる中継器情報を含む。この中継器情報は、信号が中継されたことを単に示すことができ、あるいはFL信号が通過した中継器を一意に識別することもできる。このウォータマークは、各AFLT測定値が中継器選別され得るように、またそれによって位置決めに使用され得るように、FL信号に導入される。本明細書において説明される順方向リンク中継器遅延ウォータマーク入れシステムは、FLとAFLTの性能に対する小さな影響と、好適な検出および識別の確率と、短い検出/識別時間と、良好な検出/識別感度とを達成するように実現され得る。
【0013】
FLRDWMシステムにおいて移動局の位置決めを決定するための方法が開示される。この方法は、順方向リンク信号上の中継器情報にウォータマークを入れるために、中継器を通過する順方向リンク信号を、時間的に変化する時間遅延要素で変調することによって開始される。ある幾つかの実施形態では、全ての中継器は、FL信号を同じ時間的に可変の時間遅延波形で変調し、それによって移動局における中継器検出だけを、すなわちFL信号が中継されたか否かだけの決定を可能にする。他の実施形態では、各中継器は、受信されたFL信号を一意の時間的に可変の時間遅延波形で変調し、それによって移動局における中継器の検出と識別、すなわち信号が中継されたか否かの決定、またもし中継されたのであれば、どの中継器からこの信号が来たのかの決定を、可能にする。
【0014】
移動局は、FL信号を受信し、信号のパイロット位相測定値を取得するためにAFLT探索を実行し、これらの信号に関する時間遅延対時間を推定する。ある幾つかの実施形態では、この時間遅延対時間推定は、FLパイロット信号強度に依存して、フィンガTTLおよび/または中継器探索器を使用して、順方向リンク信号に対して実行される。これらの実施形態において、時間遅延対時間推定のためにフィンガTTLを使用する利点は、これが中継器探索器によるように逐次的に(すなわちAFLT探索の後に)行われるよりも、むしろAFLT探索と並行して実行されることである。したがって、中継器探索器を使用して実行される時間遅延対時間推定は、フィンガTTLだけを使用することと比較して検出/識別時間を増加させる。このフィンガTTLベースのFLパイロット信号時間遅延対時間推定は、通信目的のために移動局に割り当てられた最も強い受信FLパイロット信号のために最も適しており、中継器探索器は、AFLT探索によって検出された、より弱いFLパイロット信号のために最も適している。
【0015】
次に移動局内の中継器識別システムは、FL信号上の推定時間遅延対時間に応じてFL信号上のウォータマークを検出および/または識別するために、中継器識別を実行する。中継器識別システムは、単に時間遅延ウォータマークの存在を探索することによって、例えばFL信号が中継されたかどうかを決定するために、推定信号時間遅延対時間を全ての可能な中継器時間遅延ウォータマークと相関させることによって、中継されたFL信号を検出する。この中継器識別システムはまた、例えば最善の相関という結果をもたらす中継器ウォータマークを識別することによって、推定信号時間遅延対時間を全ての可能な中継器時間遅延ウォータマークと相関させることに加えて、FL信号上の中継器IDを識別することもできる。
【0016】
それから移動局は、位置決め決定のために十分な中継器選別された順方向リンクパイロット位相測定値が取得されているかどうかを決定する。もし位置決め決定のために、十分な中継器選別された順方向リンクパイロット位相測定値がまだ取得されていなければ、位置決め決定のために十分な中継器選別されたパイロット位相測定値が取得されるまで、信号時間遅延対時間を推定して中継器識別を実行することによって、AFLT探索からの如何なる残りの検出された順方向リンクパイロット信号も中継器選別され得る。時間遅延ウォータマークは、中継されたと識別された全てのFL信号から除去され、また修正されたパイロット位相測定値は、前記移動局の位置を決定するために位置決定システムと位置決定エンティティとのうちの1つに中継器情報と共に供給される。
【0017】
中継器識別時に取得された中継器情報は、少なくとも、パイロット信号が首尾よく中継器選別されたか否か、もしそうであれば、このパイロット信号が中継されたか否かを示す情報を含む。一実施形態では中継器情報は、移動局位置決定システムまたはネットワーク位置決定エンティティが、中継されたパイロット信号から、また首尾よく中継選別されなかった如何なるパイロット信号からも測定値を除去することによって移動局の位置を決定できるように、パイロット信号が首尾よく中継器選別されたか否か、もしYESであればこの信号が中継されたか否かの指示だけを含む。他の実施形態では、中継器探索は、もし存在すればウォータマークから中継器IDを識別する。この実施形態では、中継器識別システムによって取得され、移動局位置決定システムまたはネットワーク位置決定エンティティに供給される中継器情報はまた、中継されたと識別された各パイロット信号に関する中継器IDを含んでおり、これは移動局の位置を計算する際に、中継された信号の測定値の使用を可能にする。
【0018】
位置決めを決定するためにA−GPSが使用される、ある幾つかの実施形態では、中継器探索を実行する前にGPS探索が実行される。もし位置決め決定のために十分なGPS測定値とTTL中継器選別されたパイロット位相測定値とが取得されれば、確定時間を短縮するために中継器探索はスキップできる。
【0019】
本発明のより完全な理解のために、添付図面に示されるように、本実施形態の以下の詳細な説明への参照がなされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、同様な符号が同じまたは類似の要素を表す図を参照しながら、下記の記述において説明される。
(用語および頭字語の用語解説)
下記の用語と頭字語は、詳細な説明全体を通して使用される。
「AFLT」 改良型順方向リンク三辺測量法。基地局からの無線信号の移動局が測定した到着時刻(および任意選択的に他の地上測定値)を利用する位置探索手法。
【0021】
「AFLT探索器」 視界内に在り得る各基地局からのパイロット信号の探索を実行する移動局の一部。
「A−GPS」 支援付き全地球測位システム。GPS擬似範囲測定値に基づくが、位置決定を支援するためにAFLTまたは類似のBTSベースの位置決め技術を利用する、位置探索技術。
【0022】
「基地局」 移動局と通信する装置であって、例えば基地局は、基地トランシーバ局(BTS)、移動体交換センター(MSC)、移動体位置決めセンター(MPC)、位置決定エンティティ(PDE)、およびネットワーク接続のために必要とされる任意の相互作用機能(IWF)を含むことができる。
【0023】
「BTS」 基地トランシーバ局。無線通信信号を送受信するためのアンテナを含む、移動局と通信するために使用される固定局。
「C/Aコード」 概略/取得コード。GPS衛星によって送信され、送信GPS衛星を識別して観測されたGPS衛星からGPS受信器までの擬似範囲を測定するために使用される周期的列。
【0024】
「CDMA」 符号分割多元接続。大容量ディジタル無線技術。
「CSM」 セルサイトモデム。無線基地局装置のためのチップセット。
「チップ(PN)」 1.2288McpsのPNチップレートでのPN列内の1ビット。
「FL」 順方向リンク。基地局(BTS)から移動局(MS)への伝送。
【0025】
「フィンガ」 単一の受信信号経路に割り当てられたレーキ受信器内のサブ受信器。
「GSM」 移動体通信のための全地球システム。
「MS」 移動局。加入者の送受器または無線端末を記述するために使用される用語。
「MSM」 移動局モデム。
【0026】
「PCS」 個人向け通信サービス。1.8GHzから2.0GHz範囲で動作する全てのディジタルセルラー伝送。
「PDE」 位置決定エンティティ。移動局の位置を管理するネットワークエンティティ。
「パイロットセット(アクティブ)」 移動局に現在割り当てられている順方向トラヒックチャネルに関連するパイロット信号。これらは、ローカルな基地局から移動局によって受信される最も強いパイロット信号であって、典型的には同じパイロット信号のマルチパスである。
【0027】
「パイロットセット(候補)」 その強度が移動局によって測定されると「無線放送」に与えられた閾値を超える、移動局によって見られ得る全てのパイロット信号。
「パイロットセット(近隣)」 当該基地局付近の基地局によって送信された全てのパイロット信号。
【0028】
「パイロット信号」 当該基地局を識別するローカル基地局から受信される無線信号。
「PNコード」 擬似ランダム雑音コード。セル(またはセルセクタ)のための、拡散のための、また音声とデータの伝送をスクランブルするための識別子として使用される、BTSによって送信されるある一定の列。PNコードはまた、観測されたBTSから移動局への擬似範囲を決定するために使用される。
【0029】
「PPM」 パイロット位相測定値。PNコード偏移の測定値を含む、AFLT探索から得られるパイロット信号の測定値。
「PRM」 擬似範囲測定値。C/Aコード偏移の測定値を含む、GPS衛星探索からのGPS衛星信号の測定値。
「中継器」 BTSと移動局との間で無線信号を受信し、増幅し、再送信する装置。
【0030】
「RL」 逆方向リンク。移動局(MS)から基地局(BTS)への送信。
「RMSE」 2乗平均誤差。RMSE推定値は、パイロット位相を報告するために使用される経路の強度に基づく測定値の不確実性を与える。
「SNR」 信号対雑音比。
【0031】
「TTL」 時間追跡ループ。移動局の動きによるFL信号のタイミングの測定される偏移に応じて、アクティブなパイロット信号のために内部フィンガタイミングを修正し、それによってFL信号の正確な復調を可能にする移動局の一部。
(変数の表)
下記の変数は、詳細な説明全体を通して使用される。
【0032】
sequence 1記号列の継続時間。
symbol 1記号の継続時間。
A 時間遅延の(例えば1記号の)振幅。
(環境)
図1は、複数の基地トランシーバ局(BTS)10と、建物に配置された中継器16を有する建物14と、GPS衛星18と、移動局22を保持する利用者20との斜視図である。
【0033】
BTS10は、移動局との接続のための無線通信ネットワークの一部として利用される基地局の、何らかの集まりを備える。BTSは典型的には、無線電話といった移動局が無線通信ネットワーク12上でもう1つの電話に接続することを可能にする通信サービスを提供するが、BTSはまた、他の装置によって利用でき、および/または、ハンドヘルドパーソナルディジタルアシスタント(PDA)とのインターネット接続といった他の無線通信目的のためにも利用できるであろう。
【0034】
一実施形態では、各BTS10は、CDMA無線通信ネットワークの一部であるが、他の実施形態では、GSMネットワークといった他のタイプの無線通信ネットワークが使用され得る。この実施形態では、各BTSは、それ自体を一意に識別する擬似ランダム列を周期的に放射する。この擬似ランダム列は、受信器がロックオン(自動追尾)するために有用である1連のビットである。CDMA技術では、この擬似ランダム列は「パイロット信号」と呼ばれ、ここで使用されるように、パイロット信号という用語はCDMAシステムばかりでなく任意の無線通信システムに適用できる。
【0035】
基本形の中継器16は、増幅器を備えており、BTSと移動局との間でパイロット信号を受信して再送信する。中継器は、BTSから更なるカバレージエリアへのパイロット信号を増幅することによって信号対雑音比を改善するために、そうでなければ(戦略的に配置されなければ)ギャップ、干渉および弱サービスが見られるセルラーネットワーク全体に亘って、戦略的に配置され得る。
【0036】
GPS衛星18は、GPS受信器の位置決め決定のために使用される任意のグループの衛星を備える。これらの衛星は、GPS受信器が検出できる無線信号を絶えず送出し続けており、GPS受信器は、受信された衛星C/Aコードとの相関を達成するまで、GPS衛星C/Aコードのローカルな複製を相関させて、それを時間的にシフトすることによって、この無線信号が衛星から受信器まで伝播するためにかかる時間の長さを測定する。無線信号が伝播する速度は既知であり、またこれらの衛星は「GPS時間」と一致する1ミリ秒ごとに自身の信号を周期的に放射するように同期しているので、信号が到着するためにどれほど長くかかったかを決定することによって、信号がどれほど遠くから伝播したかを決定することができる。オープンスペースに位置する利用者にとって、GPS受信器は典型的には、衛星の遮られていない視界を有しており、したがって利用者がオープンスペースにいるときには、GPS信号の到着時刻を測定することは、それが典型的には衛星から受信器への直線的な「視線」であるので簡単である。しかしながら無線通信関連では、利用者は、GPS位置決めをより困難にし得る建物または他の障害物を有する都市に位置する可能性がある。
【0037】
図2は、例示的セルラーBTSカバレージエリア構造を示す。このような例示的構造では、複数の6角形BTSカバレージエリア24は、対称にタイル張りされた配列になって相互に隣接している。各BTS10は、BTSカバレージエリア24の各々の内部にそれぞれ位置しており、これが位置するエリア内でカバレージを与える。特に、本明細書での説明目的のために、BTS10aはカバレージエリア24a内でカバレージを与え、BTS10bはカバレージエリア24b内でカバレージを与え、以下同様である。
【0038】
理想的なセルラー通信ネットワークでは、カバレージエリア24は、移動局が種々のカバレージエリアを通って走行しているときに連続したセルラーカバレージを移動局に与えるように、互いに隣接して構成される。しかしながら、大抵のセルラーカバレージエリアは、ギャップ、干渉およびセルラーカバレージによる問題を引き起こす他の障害物を有している。例えば、トンネル、ガレージ、およびスポーツ競技場のような環境は、セルラーサービスに関して問題を作り出す。他の例として、延長された高速道路と農村のカバレージは、1つのBTSで維持するには極めて高価であり得る。したがって、もう1つのBTSを設置することより遥かに低コストでBTSのカバレージを向上または拡大するために、カバレージエリア内に1つ以上の中継器16が配置される可能性がある。
【0039】
一実施形態では、中継器16は、図3を参照しながら更に詳細に説明されるように、アンテナと、移動局とBTSとの間で信号を送受信するトランシーバとを備える。1つの単純な例では、中継器は、受信された信号を増幅して同じ周波数でこれらの信号を再送信する。
【0040】
図2において、移動局22を保持する利用者20は、第1のカバレージエリア24a内に位置する。この移動局22は、大きな建物(図示せず)といった障害物からの干渉によって第1のBTS10aから十分に強いパイロット信号を受信できない可能性がある。更にこの移動局22は、比較的遠い距離のせいで第2のBTS10bから直接的に十分に強いパイロット信号を受信することもできない可能性がある。しかしながら、中継器16bは、そうでなければサービスのギャップを経験する移動局22の位置が十分にカバーされ得るように、カバレージエリア24b内に適切に配置される。言い換えれば、パイロット信号が第2のBTS10bから送信されると、この信号は中継器16bを経由して増幅され、移動局22で受信されるであろう。
【0041】
移動局22は、AFLTを含む前述のような位置決め能力を有しており、したがって移動局に現在割り当てられているパイロット信号(例えばアクティブセット)を利用できるばかりでなく、移動局の位置を決定する目的のためにこのアクティブセットを超えた他のパイロット信号を利用することもできる。
【0042】
CDMA技術を利用する一つの例示的な実施では、移動局はこの移動局によって受信可能である場合がある付近のパイロット信号のリストである近隣リスト29に存在するパイロット信号を探索する。この近隣リストは、例えば基地局から供給され得る。この近隣リストからのある幾つかのパイロット信号は、候補セット28(すなわち、その強度が移動局によって測定されたときに「電波放送」に与えられた閾値を超えている移動局によって見られ得るパイロット信号)に、あるいは現在のCDMA規格に従うアクティブセット27(すなわち、ローカルな基地局から移動局によって受信される最も強いパイロット信号であって、典型的には同じパイロット信号のマルチパスである、移動局に現在割り当てられている順方向トラヒックチャネルに関連するパイロット信号)に、含まれ得る。
【0043】
移動局22の位置決め決定においてAFLT測定値を使用するために、パイロット信号(アクティブセット、候補セットまたは近隣セットのいずれに含まれるかにかかわらず)は、中継器に関して首尾よく選別されなくてはならず、もし中継されたならば、移動局は、この信号がどの中継器から来たかを決定しなくてはならず、更に位置決め計算に際して中継されたAFLT測定値を使用するために、中継器の位置と内部遅延とが既知であって利用可能でなければならない。
【0044】
前述のように、移動局内の従来のAFLTおよびA−GPS位置決めシステムは、信号が中継されたか否かを検出および/または識別せず、これは中継器カバレージを有するエリアにおける位置決めに関して、パイロット位相測定値を実質的に無用にしている。この問題に取り組むために、順方向リンク信号に一意にウォータマーク入れできる中継器と、ウォータマーク入れされた中継信号を検出して識別できる移動局とが、ここに開示される。この移動局は、信号が中継されたか否かを、またもし中継されたのであればどの中継器からこの信号が来たかを検出して識別できるため、移動局によって受信されたFL信号のいずれかを使用して正確な位置情報が決定され得る。
【0045】
ある幾つかの実施では、信号を中継した特定の中継器を識別するよりはむしろ、パイロット信号が中継されたか否かを検出することだけが必要とされ得る。この目的のために、FL信号が中継されたかどうかだけを移動局が検出する(一意の中継器IDを識別することなく)代替の実施形態が開示される。この実施形態の移動局は信号が中継されたか否かを検出できるだけであるため、全ての中継されたパイロット信号(および首尾よく中継器選別されなかったパイロット信号)は、位置決め決定から除外されなくてはならない。
【0046】
(説明)
図3は、FLRDWMシステムを実現する通信システムのブロック図である。この通信システムは、基地トランシーバ局(BTS)10と、中継器16と、移動局(MS)22とを含む。BTS10は、そこから順方向リンクパイロット信号31を送信するためのアンテナ30を有する。中継器16は、BTS10からの順方向リンク信号31を受信するための第1のアンテナ32と、この信号を増幅するための増幅器33と、FL信号にウォータマークを入れるための時間的に変化する遅延要素34と、システム時間クロック35と、ウォータマークを入れられた順方向リンク信号37をMS22に送信するための第2のアンテナ36と、を有する。このMSは、中継器からのウォータマーク入れされた順方向リンク信号37を受信するためのアンテナ38を有する。
【0047】
BTS10は、無線通信のために使用される任意の適当な基地局を備え得る。一実施形態では、BTSはCDMAネットワーク用に構成されるが、他の実施形態では、BTSはTDMAおよびGSMといった他の無線通信ネットワーク用に実現され得る。信号を送信するための単に1個のアンテナ30が図示されているが、BTSが、信号を送受信するための1つ以上のトランシーバとアンテナとを含むBTSの典型的構成を有することは、理解されるべきである。CDMAの実施では、各BTSはシステム時間ベースと同期して送信を行う。
【0048】
中継器16は、電気通信信号を増幅するための増幅器33を有する任意の適当な中継器を備える。すなわち、中継器16は、BTS10とMS22とに出入りする電気通信信号を受信し、増幅し、再送信する任意の適当な構成を備える。更に、中継器は、例えば図4または図5を参照しながら更に詳細に論議されるように、時間遅延ウォータマークで順方向リンク信号31にウォータマークを入れる時間的に変化する遅延要素34を備える。したがって中継器はまた、時間的に可変の要素によってFL信号上に変調されるときに、システム時間への時間遅延ウォータマーク列の時間同期を遂行するシステム時間クロック(STC)35も備える。
【0049】
一実施形態では、中継器16は、第1、第2のアンテナ32、36を備える。第1のアンテナ32は順方向リンク信号31を受信するために使用され、第2のアンテナ36は中継器から順方向リンク信号37を再送信するために使用される。図3の中継器はこの中に増幅器と時間的に可変の遅延要素だけを示しているが、中継器16が任意の適当な構成において更なる構成要素を含むこと、例えば中継器はまた、アンテナ32、36を介して信号を中継器16内に受信し、また中継器16から再送信するように機能するトランシーバ(トランスミッタ/レシーバ)も備え得ることは理解されるべきである。中継器が代替の構成を備え得ること、例えば中継器が有線接続を介してBTSに接続され得ることは留意され得る。このような一例は、光信号(例えば光ファイバ信号)を受信し、それを増幅し(および/またはそれを再整形し、再時間調整し、周波数シフトし、そうでなければ再構成し)、そしてそれを無線で再送信する(同じまたは異なる周波数で)光中継器を含む。
【0050】
中継器16は、例えば図4または図5を参照しながら更に詳細に説明されるウォータマークのような時間遅延ウォータマークで順方向リンク信号31を変調する、時間的に可変の遅延要素34を含む。この時間遅延要素は、FL信号を中継された信号として識別するためにFL信号にウォータマークを入れ、またこのウォータマークは、信号が通過した中継器を識別する一意に符号化された列を含み得る。中継された順方向リンク信号にウォータマークを入れることによって、移動局はこれらのパイロットのうちのどれが中継されたかを決定でき、また中継された順方向信号に一意の列で一意的にウォータマークを入れることによって、この信号を中継した中継器が識別できる。この情報を使用すれば、AFLTまたは他の同様の位置決め技術を使用して正確な位置決め情報が取得できる。
【0051】
なお図3を参照すると、移動局22は、中継器16からのウォータマーク入り順方向リンク信号37のような、BTSおよび/または中継器からの電気通信信号を受信するためのアンテナ38を有する。図6から図8を参照しながら更に詳細に説明されるように、MS22はFL信号上の時間遅延ウォータマークを検出でき、もしあれば、信号が中継器から来たかどうかを弁別し、ある幾つかの実施形態では、どの特定の中継器がこの信号を送信したかを識別でき、こうして正確なAFLT測定値が得られることを可能にし、他のところで説明されるようにAFLT測定値が位置決め計算に使用されることを可能にする。
【0052】
図4、図5は、FL信号にウォータマークを入れるために使用できる2つの例示的時間遅延変調波形を示す。図4、図5のグラフでは、水平軸は時間(t)を表し、垂直軸はシステム時間クロックから測定される時間遅延変調波形の大きさ(D)を表す。したがってこれらのグラフは、関数D(t)、すなわち時間遅延変調波形対時間をプロットしている。
【0053】
図4は、中継器情報が一連の2進記号列に符号化された時間遅延ウォータマークの一例を示す。図4において、2進記号は、本明細書において更に詳細に説明されるように、+Aまたは−Aというピークの大きさを有する三角形状を有する。図5は、本明細書に更に詳細に説明されるように、各記号を形成する1つ以上の三角形状を含む、6進記号列を使用するウォータマーク内に中継器情報が符号化された、ウォータマークのもう1つの例を示す。
【0054】
図4、図5に示すような三角形状の波形を有する時間遅延ウォータマークに加えて、時間遅延を与えるために種々の異なる波形が利用できること、例えば階段波形、正弦波形、および/またはランプ(傾斜)波形が利用できることは留意されるべきである。
一実施形態では、波形D(t)は、N個の受信信号経路(ここでNは整数、例えば2である)において時間遅延波形を差分的に符号化することによって、通常、移動局の動きによって発生する自然発生現象(例えばコードドップラー(code Doppler)およびファットパス(fat path))とは更に区別するように設計できる。この実施形態では、中継器要素34(図3)は、受信されたFL信号を多数の時間遅延波形D1(t)、D2(t)、・・・、DN(t)で時間変調し、アンテナ36を介してFL信号を再送信する前にこれらの波形の合計を実行する、N個の遅延要素(例えば2個)を含むであろう。この場合、D(t)=D1(t)+D2(t)+・・・+DN(t)であるから、個々の時間遅延波形に対する要件は緩和され、あるいは代替として、移動局における検出確率は増加し得る。所望の検出確率を達成するために、移動局に更なる資源(すなわち更なるN−1個のフィンガ)が必要とされる可能性がある。
【0055】
更に、FL信号上に中継器情報を符号化するために任意のM進符号化方式(ここでMは整数である)が利用可能であり、また代替として、記号列を符号化するために種々の他の符号化方式、例えばPSK符号化方式(例えばBPSK、QPSKなど)が、または中継器IDを符号化する時間遅延波形の周波数を有する周期的時間遅延波形が、実施可能である。
【0056】
中継された信号の検出だけを必要とする(すなわち一意の中継器IDの識別は必要とされない)実施形態では、移動局は信号が通過した中継器を識別することなく、信号が中継されたか否かだけを検出すればよい。この場合、ウォータマークの存在はパイロット信号が中継されたことを示すだけであって追加の情報は必要でないので、全ての中継器は同じウォータマークを割り当てられることが可能であろう。しかしながら、中継された信号の検出と識別の両方が必要とされる他の実施形態では、移動局がウォータマークの存在を検出できるだけでなくFL信号を中継した中継器も識別できるように、各ウォータマーク内には各中継器に一意の中継器IDが符号化され得る。
【0057】
図4を参照すると、この図は、FL信号が中継器を通過するときにこのFL信号上に変調され得るウォータマーク40の一例を示す。図4のグラフは、時間の関数として遅延(D)を変化させることによって形成される記号列をプロットしており、ここでAは遅延のピークの大きさである。特に、ウォータマーク40は、FL信号を中継した中継器を一意に識別する列44を形成する、5個の変調記号42a、42b、42c、42d、42eからなる記号列を備えている。図4の例では、各記号は、正の時間遅延+Aまたは負の時間遅延−Aのいずれかによって定義されるピークを有する、ほぼ三角形の形状を有している。図4では、単純な2進符号化方式が使用されており、この場合、記号「0」は、ゼロ44から正のピーク45に上がるランプ(傾斜)を備え、続いて正のピーク45からゼロ46に下がるランプ(傾斜)を備える時間的に可変の遅延として符号化され、また記号「1」は、ゼロ46から負のピーク47に下がるランプと、続いて負のピーク47からゼロ48に上がるランプとして符号化される。
【0058】
図4の例示的実施形態では、ウォータマーク40は、5記号2進列を備え、これは2(すなわち32)個の可能な2進列、したがって32個の可能な中継器IDの符号化を可能にしている。如何なるn記号2進列も利用可能であることは明らかであり(ここでnは整数である)、言い換えれば、ウォータマークを定義する記号の数nは増加または減少でき、これは本実施形態で可能なウォータマークの数は2に等しいので、サポートされる中継器IDの数をこれに対応して増加または減少させるであろう。しかしながら、ウォータマークを定義する記号の数を増加または減少させることが、それぞれ検出時間を増加または減少させる可能性があることは、実施形態によってはあり得る。
【0059】
図4の三角形の記号が、+2A/Tsymbolまたは−2A/Tsymbolのいずれかのほぼ一定の傾斜(すなわち時間遅延の変化の一定の比率)を有することは留意され得る。例えば、図4の実施形態の一実施例では、各記号42は約1.5チップの最大時間遅延長さAを有する約1秒の継続時間Tsymbolを有し、したがって各ランプ(傾斜)は約3チップ/秒の傾斜を有する。5記号ウォータマークに関しては、列継続時間Tsequenceはこの実施例では約5秒になるであろう。
【0060】
如何なる特定の実施においても、遅延変調波形D(t)の選択とその特性、例えば記号継続時間Tsymbolと振幅A、および記号列継続時間Tsequenceに亘る最大振幅は、3つの条件を満足するように、すなわちFL性能に対する最小の影響と、移動局における最大の中継器検出/識別確率と、最小の検出/識別時間と、を満足するように選択される。例えば、移動局における中継器検出/識別確率を最大にするために、時間遅延波形の大きさと、これの傾斜と、これの継続時間は、移動局のせいで自然に発生する時間的変化から時間遅延ウォータマークを区別するために最大にされるべきである。
【0061】
このような一例では、この大きさは、ウォータマークの記号列継続時間中に蓄積される最大コードドップラーと、時間追跡ループのタイミングジッタと、受信信号ピーク位置に発生するジッタ(ファットパスの存在に起因する)とを考慮して選択され得るが、これら全ては移動局における検出の確率に寄与する。したがって、0.5チップ/秒という最悪なケースのコードドップラーと、0.0375チップという時間追跡ループの標準偏差と、1チップのファットパスに起因する受信信号ピークの変化とを仮定すると、記号42の振幅Aは、0.5秒という記号継続時間Tsymbolにおいて、少なくとも1.3625チップで設計され得る。もし結果として得られる傾斜と大きさとが、これよりもあまり大きくなければ、変調記号が自然に発生する現象からこれを区別する更なる特性を有するべきであることは、留意され得る(例えば、これは正しいランプとは反対の三角形の波形からなるべきである)。これがFL性能に対して有し得る如何なる影響も制限するために、遅延ウォータマークは、FL信号SNRを最小限に低下させ(例えば、CDMAシステムでは0.2dBを超える平均低下はない)、フィンガ再割当てまたは割当て解除の比率を最小限に増加させ、また中継されたPNが探索ウィンドウサイズ(例えば、CDMAシステムにおいてIS−98A/BとIS−2000で指定されるような)の外側に出る確率を最小限に増加させなくてはならず、それによってFL測定値生成を減少させなくてはならない。これらの要件は、変調波形のタイプ(例えばランプ、階段、三角形など)を賦課し、また最大許容記号傾斜と大きさ(例えば図4のAと2A/Tsymbol、図5の2Aと4A/Tsymbol)と、記号列継続時間Tsequenceに亘る最大許容ピーク間変化(例えば図4の2A、図5の4A)とに対して、上限を設定し、変調記号と符号化方式の許容可能なタイプを狭くするであろう。最後に、検出/識別時間を最小にするために、前に論じた全ての要件を満足する最小記号継続時間Tsymbolが選択されるべきである。
【0062】
さて図5を参照すると、この図はFL信号が中継器を通過するときに、このFL信号上に変調され得るウォータマーク50のもう1つの例を示す。図5のグラフは、時間の関数として遅延(D)を変化させることによって形成される記号列をプロットしており、ここで2Aは遅延のピークの大きさである。特にウォータマーク50は、FL信号を中継した中継器を一意に識別する列56を形成する、6個の変調記号54a、54b、54c、54d、54e、54fからなる記号列を備えている。6進符号化のこの例では、ランプアップ(上昇傾斜)は、1/4記号継続時間52(記号「0」においてゼロから+Aに示されたような)または1/2記号継続時間53(記号「4」においてゼロから+2Aに示されたような)の傾斜を備え、ランプダウン(下降傾斜)は、1/4記号継続時間52(記号「0」において+Aからゼロに示されたような)または1/2記号継続時間53(記号「4」において+2Aからゼロに示されたような)の傾斜を備えることができる。したがって、全記号継続時間Tsymbolは、上述のような、また図5の参照により示される1つ以上の三角形状を形成するランプアップ、ランプダウンの組合せを備える。
【0063】
図5の例では、ウォータマーク50は、6記号6進列を備え、これは6(すなわち46656)個の可能なウォータマークを可能にし、したがって46656個の可能な中継器IDの符号化を可能にしている。如何なるn記号6進列も利用可能であることは明らかであり(ここでnは整数である)、言い換えれば、ウォータマークを定義する記号の数nを増加または減少させることができ、これは本実施形態で可能なウォータマークの数は6に等しいので、サポートされる中継器IDの数をこれに対応して増加または減少させるであろう。しかしながら、ウォータマークを定義する記号の数(n)を増加または減少させることが、それぞれ検出時間を増加または減少させる可能性があることは、実施例によってはあり得る。
【0064】
ウォータマークを作成するために2進符号化が使用された図4の実施形態と比較すると、図5では、この6進符号化の最大傾斜変化と記号継続時間Tsymbolは、2進符号化の約2倍であり、各記号は前述の2進符号化実施形態におけるような単に2個の可能な値とは反対に6個の可能な値を有する。図4に示すウォータマークと同様に、この実施形態のウォータマークの振幅の最大変化は列内の記号の数nとは無関係であるが、振幅は図4の実施形態のものの2倍の大きさになり得る(例えば±2A=±3チップ)。6進符号化によってサポートされる一意の列の数は、同じ列継続時間に関して2進符号化方式の列数より著しく大きい。例えば、4秒という2記号6進列継続時間に関しては、サポートされる記号列の数は6=36、したがって36個の一意のウォータマークであり、6秒という3記号6進列に関しては、サポートされる記号列の数は6=216、したがって216個の一意のウォータマークになる。それから図5の6記号6進列の例示的実施では中継器を識別するために6=46656個の一意のウォータマークが使用可能である。
【0065】
図4、図5を参照しながら説明されたウォータマークは、多数の理由から有利である。例えば図4、図5の実施形態で使用された記号のための三角形の波形(例えばランプと反対の)の選択は、フィンガ位置における正味ドリフトがゼロという結果になる。すなわち全ての記号はゼロで始まり、ゼロで終わる。正味ゼロのドリフト位置は、移動局における信号時間遅延対時間の正確な推定を可能にし、順方向リンク測定値生成への最小の影響を可能にする。更に、図4、図5のウォータマークを形成する波形の三角形状は、その特性が自然に発生する現象とは区別されて、より高い中継器検出/識別確率という結果を生じるので少なくとも部分的に有利である。更に、ランプの傾斜は自然に発生する現象の傾斜より大きくなるように設計でき、すなわちより高い傾斜は、他の源から発生する可能性のあるランダムな予測時間遅延からのその弁別性の故に、移動局におけるウォータマークのより高い検出確率を可能にする。ランプ傾斜の上限は、FL信号への影響を最小にするために順方向リンクSNRへの、またはフィンガの割当て解除または再割当て比率への最大許容可能な影響に対する基準によって設定され得る。
【0066】
CDMAシステムにおける実施の幾つかの例がここに与えられているが、時間遅延変調がTDMA、GSMといった種々の無線通信システムにおいて実現可能であることは留意され得る。
(移動局)
図6は、AFLTとGPSベースの位置決め能力を組み込んだ、またFL信号上のウォータマークを検出することのできる(すなわち、もし信号が中継された場合)中継器識別システムを含む、移動局22の一実施形態のブロック図である。もしウォータマークがFL信号上で検出されれば、移動局は、このウォータマークを入れられ中継されたFL信号から、中継器ID情報を抽出することもできる。図6の実施形態は位置を決定するためにGPSおよび/またはAFLTの両者を利用しているが、代替実施形態がAFLTだけを使用できることは留意され得る。
【0067】
図6において、無線通信システム59は、アンテナ58に接続されている。一実施形態では、この無線通信システム59は、無線BTSのCDMAネットワークと通信するために適したCDMA通信システムを備えるが、他の実施形態では、この無線通信システムは、TDMAまたはGSMといった他のタイプのネットワークを備えることもあり得る。無線通信システム59は、FL信号を受信するための受信器60と、順方向リンク信号のために適当なタイミングを確立して維持する時間追跡ループ(TTL)61とを含めて、BTSと通信するための、および/またはBTSからの信号を検出するための適当な装置とハードウエアとソフトウエアとを備える。
【0068】
受信器60は、FL信号を受信して、これらのFL信号の初期の処理を行う。一実施形態では、受信器60は、多数のパイロット信号を並行して受信するための多数のフィンガを有するレーキ(熊手)型受信器であり得る。幾つかの設計では信号ダイバーシティを得るために、任意選択的に追加の受信器が設けられることもあり得ることが留意され得る。
【0069】
時間追跡ループ(TTL)61は、移動局の各フィンガ内に実現され、FL信号の時間遅延対時間を推定する時間遅延推定器(TDE)62を含む。このTTLは、内部フィンガタイミングを修正して着信するFL信号のタイミングを正確に推定するために、TDEによって推定された時間遅延を使用し、それによって正確な復調を可能にする。TTLによって行われる修正は、例えば基地局と比較した加入者の変化する位置とある幾つかのマルチパス条件との結果から生じるコードドップラーによる、着信FL信号に加えられる時間遅延または偏移の原因となる。更に、もし着信するFL信号がここで説明されたような時間遅延ウォータマークを含んでいれば、TDEはまたこの時間遅延波形を推定することができ、それにしたがってTTLは、この順方向リンク信号を修正できる。
【0070】
時間遅延推定器(TDE)62は、FL信号の時間遅延対時間を推定するためにTTL内に設けられる。TDEは、TDEが時間遅延の波形を適切に推定することを可能にするレート(速度)で時間遅延を推定する。同じ順方向リンク信号を追跡するフィンガに関して、追跡は、最も早く到着する経路で行われる。
【0071】
TDEは、時間の関数としての遅延を含む波形として時間遅延を出力する。もし時間遅延が存在しなければ波形が実質的にゼロであることは注目され得る。もし何らかの時間遅延が存在すれば、それにしたがって波形は時間の関数としての遅延を含むであろう。
【0072】
移動局制御システム63は、典型的には、標準的処理機能ならびに必要とされるMS処理を実行するために必要な他の計算・制御システムを備える、マイクロプロセッサを含む。移動局制御システム63は、一般にMSの種々のシステム同士を接続する。
AFLT探索器64は、無線通信システム59と移動局制御システム63とに接続される。AFLT探索器は、パイロットを検出し、移動局の見つけたパイロット信号にパイロット位相測定を実行し、そしてこれらの測定値をパイロット位相測定値(PPM)データベース65に供給する。
【0073】
制御システム63に接続されたパイロット位相測定値(PPM)データベース65は、AFLT探索器からの観測されたデータ測定値に関する、例えば到着時刻とRMSEとEc/Ioとに関する情報を記憶するために設けられる。パイロットIDは、それぞれのパイロット信号をデータベースにおいて一意的に識別する。
【0074】
移動局内に任意選択的に設けることができる位置決定システム(PDS)66は、移動局制御システム63とPPMデータベース65とに接続され、この位置決定システム66は、他のシステム(例えばGPS通信システム75、PPMデータベース65、および中継器識別システム72)からの適当な情報と動作とを要求し、そして何らかの適当なAFLTアルゴリズム、GPSアルゴリズム、またはAFLTアルゴリズムとGPSアルゴリズム(A−GPSにおける)との組合せによって得られる測定値を使用して移動局の位置を決定するために必要な計算を実行する。このためにPDS66はまた、各BTSとそのパイロット信号が中継された中継器との位置と内部遅延のデータベース(図示せず)を備える。
【0075】
PDS66がネットワーク位置決定エンティティ(PDE)なしで単独に機能し得ることは留意されるべきである。すなわち、MSは、MSの外部の資源からの支援なしでこのMS自身の位置を決定できる(スタンドアロンモード)。代替として、PDS66は、ネットワーク内の他の場所に常駐するPDEと共に機能することもできる。例えばPDEは、MSが位置計算を実行できる(MSベースモード)のに対して、GPS探索リストを生成する際に(例えばGPSの天体暦と天体位置表とをMSに供給することによって)MSを支援できる。しかしながら、ある幾つかの代替実施形態では、移動局制御システム63は、外部のPDEからGPS取得支援(例えば、コードと周波数の両方で探索ウィンドウを有するGPS探索リスト)を受信し、位置測定情報(例えば、AFLTとGPSの測定値、中継器情報など)の一部または全部をMSの外部のPDEに伝達することができ、このPDEはMSの位置を計算して、おそらくこの位置を無線通信ネットワーク経由でMSに送り返す。PDEは、移動局と通信するためにネットワーク接続された1つ以上の外部の処理システム上に常駐できる。更に他の代替実施形態では、PDEシステムは、サービス中の基地局にとって利用可能である中継器支援情報を、例えばある特定のPN上の可能な中継器とこれらの中継器IDとこれらの内部遅延(と、もし位置決めがMSで行われることになっていれば、潜在的にこれらの位置)との全てを、MSに送ることを含むように修正できるであろう。これは、中継器識別時間の短縮に役立ち、したがって確定時間を短縮する可能性がある。
【0076】
ユーザインタフェース67は、MSとのユーザ対話を可能にするマイクロフォン/スピーカ68、キーパッド69、表示装置70のような、何らかの適当なインタフェースシステムを含む。マイクロフォン/スピーカ68は、無線通信システムを使用する音声通信サービスに備えている。キーパッド69は、ユーザ入力のための何らかの適当なボタンを備える。表示装置70は、バックライト付きLCD表示装置のような何らかの適当な表示装置を備える。
【0077】
GPS通信システム75は、移動局制御システム63とアンテナ76とに接続され、GPS信号を受信して処理するための何らかの適当なハードウエアとソフトウエアとを備える。
中継器探索器73は、移動局制御システムに接続され、正規のAFLT探索器64によって発見された、選択されたFL信号のパイロット信号サンプルに簡単な中継器AFLT探索を実行するために適した、ハードウエアとソフトウエアとを備える。中継器探索器は、信頼性のある検出/識別のために必要な処理利得を達成するためにAFLT探索器64と比較してより長い累積時間を含み得る。
【0078】
時間遅延推定器(TDE)74は、TTL61内のTDE62と同様の仕方で、中継器探索されたFL信号の時間遅延対時間を推定するために、中継器探索器73内に設けられる。すなわち、TDEは、このTDEが時間遅延の波長を適切に推定することを可能にするレートで、各FL信号時間遅延を推定する。TDEは、時間の関数として遅延を表す波形として時間遅延を出力する。もし時間遅延が存在しなければ、波形は実質的にゼロであることが留意され得る。もし何らかの時間遅延が存在すれば、波形はそれにしたがって時間の関数としてこの時間遅延を含むであろう。
【0079】
中継器識別(ID)システム72は、制御システム63に接続されており、時間遅延推定器(TDE)62、74から出力された時間遅延に中継器識別を実行する、何らかの適当なハードウエア、ファームウエアおよび/またはソフトウエアを備える。すなわち、移動局制御システム63は、TTL61内のTDE62から、および/または中継器探索器73内のTDE74から推定FL信号時間遅延対時間を受信し、この推定FL信号時間遅延対時間を中継器IDシステム72に送る。一実施形態では、中継器IDシステムは、中継器情報を決定するために時間遅延データを既知のウォータマークと相関させることによって、推定FL信号時間遅延対時間から中継器情報を決定する相関器を含む。例えば、一実施形態では、整合フィルタベースのアルゴリズムは、時間遅延データから中継器識別の抽出を遂行できる。
【0080】
ある幾つかの実施形態では、中継器IDデータベース71は、任意選択的に設けられることができ、検出と位置決めの助けとなるように移動局付近の中継された信号に関する情報を保持できる。中継器IDシステム72に接続された中継器IDデータベース71は、中継器を識別することに助けとなるために有用であり得る。例えば、中継器IDデータベース内の情報は、MSの位置を決定する際に、中継されたパイロット信号を使用するために、移動局の内部のPDSに、またはMSの外部のネットワークPDEに送られ得る。中継器データベースに記憶された情報は、任意選択的に、PDS66を参照しながら説明されたようにMSの外部のPDEに収容され得ることが留意されうる。
【0081】
次に、FL信号を中継器選別する際に含まれる2つの中核ステップを示す流れ図である図7と、移動局内で中継器選別がどのように実現され得るかの2つの例を示す流れ図である図8、図9とを参照する。
77から始まる図7の流れ図は、移動局によるFL信号の中継器選別を示す。特に、本明細書において説明される中核ステップは、時間遅延ウォータマークを備えるウォータマークでウォータマーク入れされた中継信号を、移動局が受信できる無線ネットワークにおいて実現できる。
【0082】
78で、移動局においてFL信号に時間遅延推定が行われる。この時間遅延推定は、もしあればこのFL信号から時間遅延波形を決定するために62と74とで図6に示すような時間遅延推定器(TDE)によって実行される。
79で、時間遅延データから中継器情報を識別するために、時間推定ステップから受信された時間遅延データに、中継器識別アルゴリズムが実行される。この中継器識別は、例えばブロック72で図6に示されたような中継器IDシステムによって実行され得る。
【0083】
80で、中継器が存在する地域でも移動局位置がパイロット位相測定値を使用して決定され得るように、移動局PDSまたはPDEの1つに中継器情報が供給される。
中継器情報は、信号が中継されたか、中継されなかったか、または不明であるかという指示を含むことができ、更にある幾つかの実施形態では、中継器情報は、どの中継器がこのFL信号を中継したかを識別する一意の中継器IDを含むこともできる。例えば、もし時間遅延がTsequenceにほぼ等しい期間中、約ゼロであれば、この中継器情報はFL信号が中継されなかったことを示すが、もし時間遅延が約ゼロより大きければ、この中継器情報は中継器IDシステムによって決定されたような中継器IDを含む可能性がある。
【0084】
ウォータマーク内に中継器IDが符号化される実施形態では、中継器識別処理は、1セットの既知のウォータマークに時間遅延波形を相関させることによって時間遅延波形から中継器情報を決定することを含む。もしある一定の閾値より上で一致が発見されれば、この中継器IDは既知である。次にこれらの実施形態では、PDSまたはPDEは、含まれた中継信号のPPMで移動局の位置を計算するために識別された中継器に関する情報(例えばこれらの位置と内部遅延)を利用できる。
【0085】
次にFL信号を中継器選別する一例示的実施形態を示す流れ図である、81から始まる図8を参照すると、ここでは時間遅延推定は移動局の時間追跡ループ(TTL)によって実行される(図6)。
82で、FL信号の時間遅延対時間を決定するために時間遅延推定が実行される。この実施形態では、時間遅延推定は、FL信号の時間遅延対時間を推定してこの時間遅延データを出力する、TTLの時間遅延推定器(TDE)によって実行される(図6のブロック62を参照のこと)。
【0086】
84で、時間遅延推定ステップからの時間遅延は、中継器識別のために中継器IDシステムに送られる。時間遅延データはMS内の制御システムまたは他の手段を介して処理され得ること、または処理のために中継器IDシステムに直接送られ得ることが留意される。
【0087】
86で、図7のブロック79を参照しながら更に詳細に説明されたように、FL信号から中継器情報を決定するために時間遅延推定ステップから受信された時間遅延に、中継器識別アルゴリズムが実行される。
88で、中継器が存在する地域でも移動局位置がパイロット位相測定値を使用して決定できるように、移動局PDSまたはPDEの1つに中継器情報が供給される。
【0088】
次にFL信号を中継器選別するもう1つの例示的実施形態を示す流れ図である、90から始まる図9が参照され、ここでは時間遅延波形推定は移動局の中継器探索器によって実行される(図6)。
92で、FL信号の時間遅延対時間を決定するために時間遅延推定が実行される。この実施形態では、時間遅延推定は、FL信号の時間遅延対時間を推定してこの時間遅延データを出力する、中継器探索器の時間遅延推定器(TDE)によって実行される(図6)。
【0089】
94で、時間遅延推定ステップからの時間遅延データは、中継器識別のために中継器IDシステムに送られる。時間遅延データはMS内の制御システムまたは他の手段を介して処理され得ること、または処理のために中継器IDシステムに直接送られ得ることが留意されうる。
【0090】
96で、図7のブロック79を参照しながら更に詳細に説明されたように、FL信号から中継器情報を決定するために時間遅延推定ステップから受信された時間遅延データに中継器識別アルゴリズムが実行される。
98で、中継器が存在する地域でも移動局位置がパイロット位相測定値を使用して決定できるように、移動局PDSまたはPDEの1つに中継器情報が供給される。
【0091】
100から始まる図10は、中継器が存在する地域における位置決めのために、十分な中継器選別測定値を取得するための、一例示的方法を示す流れ図である。
102で、図8を参照しながら説明されたように、移動局のTTLにおいて実行された時間遅延推定を含めて、アクティブなFL信号にTTL中継器選別が実行される。
【0092】
103で、アクティブなFL信号のTTLベースの中継器選別(102)と並行してパイロット信号にAFLT探索が実行され、正規のAFLT探索からの測定値はデータベースに記憶され得る。
任意選択的に104で、GPS探索が実行されることもある。
【0093】
105で、位置決め決定のための十分なGPS測定値(もし適用可能であれば)と、TTL中継器選別測定値との決定が実行される。A−GPSシステムでは、位置決め決定のために(GPSからのPRM測定値と組み合わせて)単に1個か2個の追加のPPMが必要とされ得るのに対して、他のAFLTだけのシステムでは、位置決め決定のために十分な測定値を取得するために4個以上のPPMが必要とされる可能性があることは留意され得る。もし十分な測定値が取得されていれば、処理はブロック108に進む。もし十分な測定値が取得されていなければ、処理はブロック106に移行する。
【0094】
106で、もし位置決めのための十分な測定値がアクティブなFL信号にTTL中継器選別を使用して取得されなければ、図9を参照しながら説明されたように、移動局の中継器探索器において実行された時間遅延推定を含めて、AFLT探索からの他のFL信号に中継器選別が実行される。次に処理の流れは、105に戻り、この処理は、位置決め決定のための十分なGPS測定値(もし適用可能であれば)と、中継器選別されたパイロット位相測定値とが取得されるまで、繰り返される。
【0095】
一つの例示的なCDMAの実施では、中継器探索器を使用する中継器選別は、アクティブなパイロット信号の中継器選別が、ブロック102で説明されたようにTTLを使用して既に実行されているので、時間節約のためにアクティブなセットにないFL信号のパイロット信号サンプルに対してだけ実行される。しかしながら他の実施形態では、中継器探索器を使用する中継器選別はまた、アクティブなパイロット信号にも実行され、これは、ある幾つかの実施でFL信号時間遅延対時間のより正確な推定を達成することができる。
【0096】
108で、いったん十分な数のFL信号が位置決め決定のために中継器選別されると、正確なパイロット位相測定値が位置決めのために供給され得るように、中継されたと識別されたFL信号に関するAFLT測定値に対して、時間遅延の除去が実行される(すなわちAFLT測定値は、TDEによって測定された時間遅延ウォータマークを補正するように調整されなくてはならない)。AFLT測定値から時間遅延ウォータマークを除去するために、移動局は、対応する時刻(データベースに記憶された)に、またはその時刻付近でパイロット位相測定値から推定時間遅延を減算することができ、これは時間的に修正されたパイロット位相測定値という結果をもたらす。
【0097】
109で、GPS(もし適用可能であれば)からのPRMと、AFLT探索からのPPMと、中継器識別ステップから得られた中継器情報とを含む、全ての測定値は、移動局の位置を処理するために適当なシステム(例えばPDSまたはPDE)に送られる。
【0098】
ほかの所で更に詳細に説明されたように、中継器情報は、信号が首尾よく中継器選別されたか否か(例えば中継器探索が試みもされなかった、または中継器探索が試みられたが、不成功であった、または中継器探索が首尾よく実行された)、また信号が中継されたと検出されたか否か、またある幾つかの実施形態では中継された信号に関連する一意の中継器IDの、指示を備えることができる。この中継器情報は、もし信号の一部または全部が中継されたとしても、移動局の位置を正確に決定する際にMS位置決定システム、またはPDEを支援するであろう。
【0099】
110から始まる図11は、中継器が存在するセルラーカバレージエリアにおいてAFLTまたはA−GPSを使用して移動局の位置決めを決定する、一例示的方法の流れ図である。ここに開示された中継器識別システムを使用して、位置を決定する多くの異なる方法が実現可能であることは明らかである。
【0100】
111で、セルのBTS近隣の探索リストが取得される。このセル探索リストは、リスト上のセルラー局からのパイロット信号を探索するために使用されるであろうし、またこのリストは、リスト上の局のパイロット信号を見つける際に有用な情報を含むであろう。
【0101】
セル探索リストは種々の仕方で取得でき、単純な一実施形態では、セル探索リストは、1セルラーシステム内の全ての可能なパイロット信号を含むが、全ての可能なパイロット信号を探索することは、望ましくない長さの時間を消費する可能性がある。一実施形態では、時間を節約するために、移動局と通信するローカルなセルラー基地局は、各パイロット信号に関して探索すべき探索ウィンドウを含む、移動局に関するセル探索リストを与えることができる。セル探索リストは、もしあれば、このリスト内のPN上の全ての可能な中継器、これらのID、これらの内部遅延(およびもし位置決めがMSにおいて実行されることになっていれば潜在的にこれらの位置)のような、サービス中の基地局に利用可能である、如何なる中継器支援情報をも含むように修正できるであろうことに留意されたい。これは中継器識別時間の、したがって確定時間の短縮に助けとなり得る。
【0102】
112で、セル探索リスト上の各セルラーBTSからパイロット信号のAFLT測定値が採取される。AFLT探索と並行して、アクティブなFL信号は、図8を参照して更に詳細に説明されたように、TTL中継器選別される。
一実施形態では、AFLT測定値は、最も早い到着時刻(TOA)推定値と、この最も早いTOAを与える経路のRMSE推定値と、パイロット信号に関してEc/Ioを更新するために使用されるパイロット信号の全ての解像可能な経路に関するEc/Io推定値と、を含む。これらの測定値は、各パイロット信号が複数の関連測定値と関連する、図6に示されたようなPPMデータベースに記憶され得る。たとえパイロット信号の強度が通信を確立するためには不十分であっても、このパイロット信号が、検出されるために十分な、そして到着時刻および他の品質を測定できるために十分な強度を有する可能性があることは注目され得る。
【0103】
113で、GPS衛星探索リストが取得され得る。これは、好都合にも衛星を探索するためにGPSシステムによって使用できる探索リストを提供する任意選択的動作であって、これによって位置を確定するために十分な衛星を位置決めするために必要な時間を短縮する。代替として、GPSシステムは全天空を単に探索できるが、このような全天空探索は典型的には遥かに長時間を消費する。
【0104】
114で、適当なGPS手順にしたがってGPS測定値が取得される。一実施形態では、GPS通信システムは、先ずリスト内で指定された探索ウィンドウ上で観測可能な衛星リストにおいて指定された衛星を探索するが、これは、十分なGPS信号を取得するために必要とされる時間を大幅に短縮することができる。
【0105】
115で、MSは、位置決めを決定するために、十分なGPS測定値とTTL中継器選別された測定値とが取得されているかどうかを決定する。もし十分な測定値が取得されていれば、MS内で更なる処理を背負い込む理由はなくなり、処理は如何なる中継信号からも時間遅延ウォータマークを除去するために、流れ図のブロック117に進む。もし十分な測定値が取得されていなければ、処理は116に進み、中継器探索は下記のように実行される。
【0106】
116で、FL信号は、図9を参照して更に詳細に説明されたように、中継器探索器を使用して中継器選別される。この中継器探索は、AFLT探索において既に見つけられているパイロットに対して実施されるので、探索は小さな探索ウィンドウ上で実行され、中継器探索器はこれらを同時に行うことができる。それから処理の流れは115に戻り、この処理は、位置決め決定のために十分なGPS測定値と中継器選別されたAFLT測定値とが取得されるまで、繰り返される。
【0107】
117で、いったん位置決め決定のために十分な数のPPMが中継器選別されると、中継されたと識別されたFL信号に関するAFLT測定値上の時間遅延ウォータマークは、上記の図10のブロック108を参照して更に詳細に説明されたように、除去されなくてはならない。
【0108】
118で、GPS探索からの擬似範囲測定値(PRM)と、正規のAFLT探索からのパイロット位相測定値(PPM)と、中継器識別ステップからの中継器情報は、MS内部に収容されているPDSに供給されるか、またはMSの外部の場所に在るがこれらと無線通信するPDEに供給され得る。このPDSまたはPDEは、他の所で更に詳細に説明されたように、MS位置決めを取得するためにこれらの測定値全てを処理する。
【0109】
より正確なGPS支援情報(より小さなGPSウィンドウ)を作成する目的のためにAFLT測定値に基づく最初の概略位置(すなわち、事前決定)の計算を含む呼の流れに関しては、より正確な最初の概略位置とGPS探索ウィンドウとを与えるために、事前決定の計算において正規のAFLT探索測定値を使用するに先立って、TTLおよび/または中継器探索器を使用する中継器選別が実行されるべきである(および検出されたウォータマークが、中継器FL信号のAFLT結果から除去されるべきである)。移動局初期概略位置決定(すなわち、事前決定)の一例は、(任意選択的GPS探索なしで)図10の流れ図に従うことができるであろう。移動局最終位置決定(すなわち最終決定)は、図11の流れ図に従うことができるであろう。
【0110】
最後に、ある幾つかの実施形態では、好適な応答特性という考えが組み込まれており、この場合、種々の好適な応答特性値は、所望の中継器探索感度と、目標確率と、範囲/歩留りと、最大許容可能識別時間とに一致している。この仕方で本発明者らは、初期概略位置決定(すなわち、事前決定)中継器探索と最終位置決定(すなわち、最終決定)中継器探索との間の異なる最大識別時間要件を可能にするために、これら二つの中継器探索に関して異なる好適な応答特性値を有することができる。更に本発明者らは、中継器検出処理への適用の種々のタイプの可能な異なる要件を可能にするために、最終決定に関しても、異なる好適な応答特性値を有することができる。
【0111】
本発明の精神または範囲から逸脱することなく代替の実施形態が実現可能であることは、これらの教示を考慮して、当業者によって認められるであろう。本発明は、上記の明細書および添付の図面と関連して見られるときにこのような実施形態と修正版の全てを含む、前述の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】複数の無線通信ネットワーク基地局と、中継器を配置した建物と、GPS衛星と、移動局を保持する利用者との斜視図である。
【図2】例示的セルラー基地局カバレージエリア構造の説明図である。
【図3】基地トランシーバ局(BTS)と中継器と移動局(MS)とを含む、順方向リンク中継器遅延ウォータマーク入れ(FLRDWM)システムのブロック図である。
【図4】FL信号にウォータマークを入れるために時間的に可変の遅延要素(図3)によって利用され得る波形の一例である、2進符号化変調波形を示すグラフである。
【図5】FL信号にウォータマークを入れるために6進符号化を利用する変調波形の一例を示すグラフである。
【図6】無線通信機能と位置決め機能とを組み込んだ、中継器識別システムを含む移動局の一実施形態のブロック図である。
【図7】FL信号を中継器選別することに含まれる2つの中核ステップを示す流れ図である。
【図8】TTLを使用するアクティブなFL信号の中継器選別のための一例示的実施形態を示す流れ図である。
【図9】中継器探索器を使用する、FL信号の中継器選別のための他の例示的実施形態を示す流れ図である。
【図10】中継器選別測定値を使用する位置決めのために十分な測定値を取得する一例示的方法を示す流れ図である。
【図11】中継器が存在するセルラーカバレージエリア内でAFLTシステムまたはA−GPSシステムを使用して、移動局の位置を決定する一例示的方法を示す流れ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局において順方向リンクパイロット信号を中継器選別するための方法であって、
ある期間中の時間遅延を推定するために前記期間に亘って前記移動局において前記順方向リンクパイロット信号を監視することと、
前記期間中の前記推定された時間遅延に応じて、前記順方向リンク信号が中継されたか否かを識別することと、を備える、方法。
【請求項2】
前記識別するステップは、中継器情報を識別するために前記期間中の前記時間遅延推定値を1セットの既知の時間遅延ウォータマークと相関させるステップを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記識別するステップは、一意の中継器IDを識別することを更に備える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記監視するステップは、時間追跡ループを使用して前記期間中の前記時間遅延を推定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記順方向リンク信号の最も早い到着時刻を検出して測定するためにAFLT探索を実行することと、
前記期間中の前記時間遅延を推定するために、前記順方向リンク信号を監視する前記ステップを含めて、前記順方向リンク信号に中継器探索を実行することと、を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
中継器情報を決定するために、順方向リンクパイロット信号を中継器選別することを含む、前記順方向リンクパイロット信号を使用して移動局の位置決めを決定するための方法であって、
順方向リンク信号の中継器情報にウォータマークを入れるために、中継器において時間的に変化する遅延要素で複数の順方向リンク信号を変調することと、
前記順方向リンク信号からパイロット位相測定値を取得することを含めて、前記移動局において複数の順方向リンクパイロット信号を受信することと、
ある期間に亘る前記複数の順方向リンクパイロット信号の時間遅延を推定することと、
前記順方向リンク信号が中継されたかどうかを識別するために、ある期間に亘る前記時間遅延に応じて前記移動局において中継器識別を実行することと、
位置決め決定のために、十分な中継器選別された順方向リンクパイロット位相測定値が取得されたかどうかを決定することと、
もし位置決め決定のために十分な中継器選別された順方向リンクパイロット位相測定値が取得されていなければ、位置決め決定のために十分な中継器選別されたパイロット位相測定値が取得されるまで、時間遅延を推定する前記ステップと、1つ以上の他の受信された順方向リンク信号に中継器識別を実行する前記ステップとを繰り返すことと、
中継されたと識別された順方向リンク信号から、前記推定された時間遅延を実質的に除去することを含む、前記パイロット位相測定値を修正することと、
前記移動局の位置を決定するために、位置決定システムと位置決定エンティティとのうちの1つに、前記順方向リンク信号に関する、もしあれば、パイロット位相測定値と中継器情報とを供給することと、を備える、方法。
【請求項7】
中継器識別を実行する前記ステップは、中継器情報を識別するために、前記時間遅延推定値を1セットの既知の時間遅延ウォータマークと相関させることを備える、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
中継器識別を実行する前記ステップは、一意の中継器IDを識別することを更に備える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
擬似範囲測定値を検索するために、時間遅延を推定する前記ステップに先立ってGPS探索を実行することを更に備える、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
時間遅延を推定する前記ステップに先立って、位置決め目的のために十分なGPS擬似範囲測定値が取得されたかどうかを決定するステップを実行することを更に備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
時間遅延を推定する前記ステップは、時間追跡ループを使用して前記時間遅延を推定することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
時間遅延を推定する前記ステップは、中継器探索器を使用して前記時間遅延を推定することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記時間遅延を推定する前記ステップは、複数の順方向リンクパイロット信号を受信する前記ステップと並行して、時間追跡ループを使用してアクティブな順方向リンクパイロット信号のために行われ、
1つ以上の他の受信された順方向リンク信号の時間遅延を推定する前記ステップは、中継器探索器を使用して行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
擬似範囲測定値を検索するために、位置決め決定のために十分な中継器選別された順方向リンクパイロット位相測定値が取得されたかどうかを決定する前記ステップに先立って、GPS探索を実行することを更に備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
位置決め決定のために十分な中継器選別された順方向リンクパイロット位相測定値が取得されたかどうかを決定する前記ステップは、位置決めのために十分なGPS擬似範囲測定値と十分な中継器選別された順方向リンクパイロット位相測定値とが取得されたかどうかを決定することを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
基地局から移動局への順方向リンク信号を増幅するための中継器であって、
前記基地局から前記移動局への前記順方向リンク信号を増幅するための増幅器と、
前記順方向リンク信号が前記中継器を通過するときに、時間遅延記号列によって符号化された中継器情報を定義する識別時間遅延ウォータマークによって、前記順方向リンク信号を変調する時間的に可変の遅延要素と、を備える、中継器。
【請求項17】
Mが整数であるとした場合に、前記ウォータマークはM進符号化を含む、請求項16に記載の中継器。
【請求項18】
前記ウォータマークは、2記号6進符号化を備える、請求項17に記載の中継器。
【請求項19】
前記ウォータマークは、移動局が前記ウォータマークを自然に発生する時間遅延現象から区別することを可能にするように設計された波形を備える、請求項16に記載の中継器。
【請求項20】
前記自然に発生する時間遅延現象は、コードドップラーとファットパスとのうちの少なくとも1つである、請求項19に記載の中継器。
【請求項21】
前記波形は、自然に発生する時間遅延現象より高い傾斜を備える、請求項19に記載の中継器。
【請求項22】
前記波形は、自然に発生する時間遅延現象より大きな振幅を備える、請求項19に記載の中継器。
【請求項23】
前記波形は、自然に発生する時間遅延現象とは異なる形状を備える、請求項19に記載の中継器。
【請求項24】
順方向リンク信号に関する中継器情報を決定するために前記順方向リンク信号を中継器選別することを含む、位置決めを決定するための移動局であって、
パイロット位相測定値を取得することを含めて複数の順方向リンクパイロット信号を受信する受信器と、
前記複数の順方向リンクパイロット信号上の時間遅延波形を推定する時間遅延推定器と、
前記時間遅延波形を受信し、中継された信号を識別するために前記時間遅延波形を中継器情報と相関させ、前記移動局の位置を決定するために、位置決定システムとネットワーク位置決定エンティティとのうちの1つに中継器情報とパイロット位相測定値とを送る前に、中継されたFL信号の前記パイロット位相測定値から前記時間遅延波形を除去する、中継器識別システムと、を備える、移動局。
【請求項25】
前記中継器識別システムは、中継器情報を識別するために、前記時間遅延波形推定値を1セットの既知の時間遅延ウォータマークと相関させる相関器を含む、請求項24に記載の移動局。
【請求項26】
前記相関器は、中継器IDを識別するために、前記時間遅延波形推定値を1セットの既知の時間遅延ウォータマークと相関させる、請求項25に記載の移動局。
【請求項27】
時間追跡ループ内に位置する前記時間遅延推定器を含む、前記順方向リンク信号上でタイミングを追跡する時間追跡ループを更に備える、請求項24に記載の移動局。
【請求項28】
前記中継器探索器内に位置する前記時間遅延推定器を含む、時間遅延波形に関して受信された順方向リンクパイロット信号を再探索する中継器探索器を更に備える、請求項24に記載の移動局。
【請求項29】
前記時間追跡ループ内に位置する前記時間遅延推定器を含む、前記順方向リンク信号上でタイミングを追跡する時間追跡ループと、
前記中継器探索器内に位置する第2の時間遅延推定器を含む、時間遅延波形に関して、1つ以上の他の受信された順方向リンクパイロット信号を再探索する中継器探索器と、を更に備える、請求項24に記載の移動局。
【請求項30】
GPS信号を受信するためのGPS受信器を更に備える、請求項24に記載の移動局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2006−518974(P2006−518974A)
【公表日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503809(P2006−503809)
【出願日】平成16年2月24日(2004.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/005315
【国際公開番号】WO2004/077698
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(595020643)クゥアルコム・インコーポレイテッド (7,166)
【氏名又は名称原語表記】QUALCOMM INCORPORATED
【Fターム(参考)】