説明

頭部保護エアバッグ装置

【課題】膨張を完了させたエアバッグが、中間ピラー部に対して前後に位置ずれすることを的確に抑制可能な頭部保護エアバッグ装置を提供すること。
【解決手段】頭部保護エアバッグ装置Mは、前後にサイドウィンドW1,W2を配置させた中間ピラー部CPを有する車両Vに搭載される。サイドウィンドW1,W2の上縁側に折り畳まれて収納されるエアバッグ19が、膨張完了時の前縁側を、サイドウィンドW1,W2の上縁側より下方となる位置で、フロントピラー部FP側に連結される。エアバッグ19が、遮蔽膨張部21と、膨張完了時に遮蔽膨張部21から車外側に突出するように膨張して中間ピラー部CPの前後両側に配置される支持膨張部22F,22Bと、を備える。支持膨張部22F,22Bが、膨張完了時の遮蔽膨張部21の中間ピラー部CPに対する前後方向へのずれを抑制可能に、中間ピラー部CPに位置規制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前後にサイドウィンドを配置させた中間ピラー部を有する車両に搭載されて、サイドウィンドの上縁側に折り畳まれて収納され、上縁側をサイドウィンドの上縁側に位置する車両のボディ側部材に取付固定されるとともに、インフレーターからの膨張用ガスを流入させて、中間ピラー部の車内側を含めて、サイドウィンドの車内側を覆うように展開膨張するエアバッグを、有した頭部保護エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記構成の頭部保護エアバッグ装置としては、サイドウィンドの車内側を、中間ピラー部を含めて覆うように膨張するエアバッグが、膨張完了形状を略板状とされるとともに、膨張完了時において中間ピラー部の車内側を覆う部位を、内部に膨張用ガスを流入させない構成としているものがあった。この従来の頭部保護エアバッグ装置では、中間ピラー部の車内側を覆う部位の前後の膨張部位によって、中間ピラー部を挟み込むような構成としていた(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−63345公報
【特許文献2】特表2001−518860公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の頭部保護エアバッグ装置では、いずれも、膨張完了時に中間ピラー部の車内側を覆う部位を、内部に膨張用ガスを流入させない構成とし、中間ピラー部の前後に配置される部位を、内部に膨張用ガスを流入させる膨張部位から構成していることから、両者の厚みの差が小さかった。また、従来の頭部保護エアバッグ装置では、いずれも、中間ピラー部の前後に配置される膨張部位が、中間ピラー部の車内側に配置される上端側の領域で、内部に膨張用ガスを流入させるように相互に連通されていることから、エアバッグの膨張完了時に、この中間ピラー部の前後に配置される膨張部位が、車内側へ浮き上がりやすく、エアバッグが、中間ピラー部に対して前後に位置ずれする場合があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、膨張を完了させたエアバッグが、中間ピラー部に対して前後に位置ずれすることを的確に抑制可能な頭部保護エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置は、前後にサイドウィンドを配置させた中間ピラー部を有する車両に搭載されて、サイドウィンドの上縁側に折り畳まれて収納され、上縁側を前後方向に沿って複数配置される取付部の部位でサイドウィンドの上縁側に位置する車両のボディ側部材に取付固定されるとともに、インフレーターからの膨張用ガスを内部に流入させて、中間ピラー部の車内側を含めて、サイドウィンドの車内側を覆うように展開膨張するエアバッグを、有した頭部保護エアバッグ装置であって、
エアバッグが、
膨張完了時の前縁側を、サイドウィンドの上縁側より下方となる位置で、前側のサイドウィンドの前側に配置されるフロントピラー部側に、連結される構成とされるとともに、
膨張完了時に、サイドウィンドの車内側を覆うとともに膨張完了形状を略板状とされる遮蔽膨張部と、
膨張完了時に、サイドウィンドの下縁側を構成するベルトラインより上方となる位置において、遮蔽膨張部から車外側に突出するように膨張して、中間ピラー部の前後両側に配置されるとともに、膨張完了時の遮蔽膨張部の中間ピラー部に対する前後方向へのずれを抑制可能に、中間ピラー部に位置規制される支持膨張部と、
を備える構成とされていることを特徴とする。
【0007】
本発明の頭部保護エアバッグ装置では、エアバッグにおいて、膨張完了時の遮蔽膨張部の中間ピラー部に対する前後方向へのずれを抑制するように、中間ピラー部の前後両側に配置される支持膨張部が、板状の遮蔽膨張部から車外側に突出するように配置されていることから、従来の頭部保護エアバッグ装置と比較して、支持膨張部の遮蔽膨張部からの突出量を大きく確保することができる。換言すれば、本発明の頭部保護エアバッグ装置では、支持膨張部において、サイドウィンドから車内側に突出している中間ピラー部と車内外方向(車幅方向)側で重なる領域を、大きく確保することができることから、膨張完了時の遮蔽膨張部が仮に車内側に浮き上がるように移動したとしても、支持膨張部が中間ピラー部から離れるように浮き上がることを防止できて、支持膨張部を、中間ピラー部により位置規制させることができる。
【0008】
また、本発明の頭部保護エアバッグ装置では、エアバッグ(遮蔽膨張部)は、上縁側を、前後方向に沿って複数配置される取付部により車両のボディ側部材に取付固定されるとともに、膨張完了時の前縁側を、サイドウィンドの上縁側より下方となる位置で、フロントピラー部側に、連結される構成であることから、膨張完了時の遮蔽膨張部に、このフロントピラー部との連結部位から上縁後端側の取付部にかけて、前後方向に略沿ったテンションを発生させることができ、遮蔽膨張部が前後方向側で弛むことを的確に防止できる。そのため、本発明の頭部保護エアバッグ装置では、中間ピラー部より前方に配置される座席に着座している乗員の頭部が、エアバッグの膨張完了時に、遮蔽膨張部を車外側へ強く押圧することとなっても、中間ピラー部の後側に配置される支持膨張部が、前面側を中間ピラー部に支持されることとなって、遮蔽膨張部全体が前方に大きく位置ずれすることを抑制でき、かつ、遮蔽膨張部全体の車外側への移動も抑制することができる。また、逆に、中間ピラー部より後方に配置される座席に着座している乗員の頭部が、遮蔽膨張部を車外側へ強く押圧することとなっても、中間ピラー部の前側に配置される支持膨張部が、後面側を中間ピラー部に支持されることとなって、遮蔽膨張部全体が後方に大きく位置ずれすることを抑制でき、かつ、遮蔽膨張部全体の車外側への移動も抑制することができる。その結果、乗員の頭部の車外側への移動を的確に抑制することができる。
【0009】
したがって、本発明の頭部保護エアバッグ装置では、膨張を完了させたエアバッグが、中間ピラー部に対して前後に位置ずれすることを的確に抑制できる。
【0010】
また、本発明の頭部保護エアバッグ装置において、支持膨張部を、遮蔽膨張部の膨張完了後に、膨張を完了させる構成とすれば、エアバッグの内部に膨張用ガスを供給するインフレーターの作動開始から所定時間経過した後のロールオーバー時にも、支持膨張部の内圧をある程度確保することができる。そのため、エアバッグの膨張完了後におけるロールオーバー時にも、高い内圧を保持された支持膨張部を、中間ピラー部により支持させることができて、ロールオーバー時にも、遮蔽膨張部が中間ピラー部に対して前後に位置ずれすることを防止できて、好ましい。
【0011】
具体的には、本発明の頭部保護エアバッグ装置において、エアバッグを、
平らに展開した状態で、支持膨張部を、遮蔽膨張部の下縁側から下方に突出させるように、支持膨張部と遮蔽膨張部とを一体的に、構成させたバッグ本体と、
支持膨張部側から延びて、遮蔽膨張部における支持膨張部の上方側に連結されるとともに、バッグ本体の膨張完了時に、支持膨張部を遮蔽膨張部の下方から車外側に引き上げるように保持可能なテザーと、
を備える構成とすることが好ましい。
【0012】
上記構成の頭部保護エアバッグ装置では、支持膨張部が遮蔽膨張部と一体的に構成されることから、支持膨張部を遮蔽膨張部と別体に形成して、別途遮蔽膨張部側に取り付ける場合と比較して、製造工数及びコストを低減させることができる。
【0013】
また、エアバッグを、支持膨張部を遮蔽膨張部の車外側に重なって配設させて、内部に膨張用ガスを流入可能に遮蔽膨張部と連通させる構成とすれば、テザーを使用しなくともよい。
【0014】
また、上記構成の頭部保護エアバッグ装置において、支持膨張部の外表面側に、中間ピラー部に対する摩擦力を向上させるような抵抗付与層を配設させる構成とすれば、支持膨張部が中間ピラー部からずれ難く、支持膨張部を中間ピラー部により一層的確に支持させることができて、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態である頭部保護エアバッグ装置を車内側から見た概略正面図である。
【図2】実施形態の頭部保護エアバッグ装置で使用するエアバッグを平らに展開した状態の正面図である。
【図3】図2のエアバッグを、支持膨張部を遮蔽膨張部の車外側に位置させるように折り返して、平らに展開した状態を示す正面図である。
【図4】実施形態の頭部保護エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態を車内側から見た概略正面図である。
【図5】実施形態の頭部保護エアバッグ装置において、遮蔽膨張部の膨張後に支持膨張部が膨張した状態を示す左右方向(車幅方向)に沿った概略縦断面図である。
【図6】実施形態の頭部保護エアバッグ装置において、遮蔽膨張部の膨張後に支持膨張部が膨張した状態を示す前後方向に沿った概略横断面図である。
【図7】本発明の他の形態のエアバッグを平らに展開した状態を示す正面図である。
【図8】図7のエアバッグを使用した頭部保護エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態を車内側から見た概略正面図である。
【図9】図7のエアバッグを使用した頭部保護エアバッグ装置において、遮蔽膨張部の膨張後に支持膨張部が膨張した状態を示す左右方向に沿った概略縦断面図である。
【図10】本発明のエアバッグにおいて、支持膨張部の外表面側に貼着可能な吸着層を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mは、図1に示すように、中間ピラー部としてのセンターピラー部CPの前後に2つの窓(サイドウィンド)W1,W2を配置させた2列シートタイプの車両Vに搭載されている。実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mを搭載する車両Vでは、センターピラー部CPを構成するインナパネル2の車内側を覆うピラーガーニッシュ6は、前後の窓W1,W2よりも車内側Iに突出するように、配置されている(図6参照)。
【0017】
実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mは、エアバッグ19と、インフレーター14と、取付ブラケット11,15と、エアバッグカバー9と、を備えて構成されている。エアバッグ19は、図1に示すように、車両Vの車内側における窓(サイドウィンド)W1,W2の上縁側において、フロントピラー部FPの下縁側から、ルーフサイドレール部RRの下縁側を経て、リヤピラー部RPの上方の領域まで折り畳まれて収納されている。
【0018】
エアバッグカバー9は、図1,5に示すように、フロントピラー部FPに配置されるフロントピラーガーニッシュ4と、ルーフサイドレール部RRに配置されるルーフヘッドライニング5と、のそれぞれの下縁から、構成されている。フロントピラーガーニッシュ4とルーフヘッドライニング5とは、合成樹脂製として、フロントピラー部FPとルーフサイドレール部RRとにおいて、それぞれ、ボディ1側のインナパネル2(ボディ側部材)の車内側に、取付固定されている。また、エアバッグカバー9は、折り畳まれて収納されたエアバッグ19の車内側を覆うように配設されるとともに、展開膨張時のエアバッグ19を車内側下方へ突出可能とするために、エアバッグ19に押されて車内側に開き可能な構成とされている。
【0019】
インフレーター14は、エアバッグ19に膨張用ガスを供給するもので、図1に示すように、略円柱状のシリンダタイプとして、先端側に、膨張用ガスを吐出可能な図示しないガス吐出口を、配設させている。インフレーター14は、ガス吐出口付近を含めた先端側を、エアバッグ19の後述するガス流入口部26に挿入させ、ガス流入口部26の周囲を、実施形態の場合、前後で分割される取付ブラケット15の前側の部位を利用して、エアバッグ19に対して連結されている。また、インフレーター14は、インフレーター14を保持する取付ブラケット15と、取付ブラケット15をボディ1側のインナパネル2(ボディ側部材)に固定するためのボルト16と、を利用して、インナパネル2において、窓W2の上方となる位置に、取り付けられている。インフレーター14は、図示しないリード線を介して、車両の図示しない制御装置と電気的に接続されており、制御装置が、車両Vの側面衝突を検知した際に、制御装置からの作動信号を入力させて、作動するように構成されている。
【0020】
各取付ブラケット11は、2枚の板金製のプレートから構成されるもので、エアバッグ19の後述する各取付部40を表裏から挟むようにして、各取付部40に取り付けられ、ボルト12を利用して、各取付部40を、ボディ側部材としてのインナパネル2に取付固定している。
【0021】
エアバッグ19は、図4に示すように、インフレーター14からの膨張用ガスを流入させて、折り畳み状態から展開して、窓W1,W2や、窓W1,W2の間に配置されるセンターピラー部CPのピラーガーニッシュ6、及び、窓W2の後側に配置されるリヤピラー部RPのピラーガーニッシュ7の車内側を覆うように、展開膨張する構成とされている。また、エアバッグ19は、図5,6に示すように、膨張完了形状を略板状として窓W1から窓W2にかけての車内側を覆う遮蔽膨張部21と、遮蔽膨張部21から車外側Oに突出するように膨張してセンターピラー部CPの前後両側に配置される2つの支持膨張部22F,22Bと、を備えている。支持膨張部22F,22Bは、窓W1,W2の下縁側を構成するベルトラインBLより上方となる位置に、配置されることとなる(図4参照)。遮蔽膨張部21は、後述する区画部41,42,43,44を内部の領域に配置させることにより、膨張完了時の形状を略板状とされている。また、実施形態のエアバッグ19では、遮蔽膨張部21において、支持膨張部22F,22Bより前方と後方とに配置される部位が、それぞれ、膨張完了時に、下縁を、ベルトラインBLより下方に位置させるように、構成されている(図4参照)。
【0022】
また、実施形態のエアバッグ19は、バッグ本体20とテザー45とを備えている。バッグ本体20は、図2に示すように、平らに展開した状態で、遮蔽膨張部21と支持膨張部22F,22Bとを、一体的に構成して、上下で連ならせるように配置させて、構成されている。すなわち、各支持膨張部22F,22Bは、バッグ本体20を平らに展開した状態で、遮蔽膨張部21の下縁側から部分的に下方に突出するように、形成されている。なお、実施形態の場合、バッグ本体20は、ポリアミド糸やポリエステル糸等を使用した袋織りによって、製造されている。
【0023】
バッグ本体20は、図2に示すように、膨張完了時に車内側に位置する車内側壁部24aと車外側に位置する車外側壁部24bとを離すようにしてインフレーター14からの膨張用ガスを内部に流入させて膨張するガス流入部24と、膨張用ガスを流入させない非流入部38と、から、構成されている。
【0024】
ガス流入部24は、実施形態の場合、遮蔽膨張部21におけるガス案内流路25及びガス流入口部26及び保護膨張部28と、支持膨張部22F,22Bと、支持膨張部22と遮蔽膨張部21とを連通させる連通路部36と、を備えて構成されている。なお、支持膨張部22は、バッグ本体20の膨張完了時に、遮蔽膨張部21の車外側Oに位置するように、遮蔽膨張部21に対して車外側Oに折り返されるような状態で、配置されることから、エアバッグ19の膨張完了時には、遮蔽膨張部21における車内側壁部24aから連なるように配置される壁部を車外側若しくは下方に向け、遮蔽膨張部21における車外側壁部24bから連なるように配置される壁部を車内側若しくは上方に向けるように、構成されることとなる(図5参照)。
【0025】
ガス案内流路25は、図2に示すように、遮蔽膨張部21の上縁21a側において、前後方向に略沿って延びるように、前後の略全域にわたって配設されるもので、インフレーター14から吐出される膨張用ガスGを、ガス案内流路25の下方に配置される保護膨張部28の領域に、案内する構成である。実施形態の場合、ガス案内流路25における前後の中央から若干前方にずれて、後述する縦セル30Aの上方となる位置には、インフレーター14と接続されるガス流入口部26が、ガス案内流路25と連通されて、ガス案内流路25から上方に突出するように、配設されている。実施形態の場合、ガス流入口部26は、ガス案内流路25に対して後上がりに傾斜して形成されて、後端26a側を、インフレーター14を挿入可能に開口させている。そして、ガス流入口部26は、インフレーター14に外装された状態で、前後で分割される取付ブラケット15の前側の部位を利用して、インフレーター14に連結されることとなる。
【0026】
保護膨張部28は、図2に示すように、窓W1,W2の側方に配置される座席に着座した乗員の頭部を拘束する2つの頭部拘束部29A,29Bと、頭部拘束部29A,29Bの間に配置されて頭部拘束部29A,29Bの膨張完了後に膨張する補助膨張部32と、を有している。
【0027】
頭部拘束部29A,29Bは、車両Vの側面衝突時に、インフレーター14から吐出される膨張用ガスGを、ガス案内流路25を経て内部に流入させて膨張して、座席に着座した乗員の頭部を保護する部位であり、窓W1,W2に対応して、前後方向に沿った2箇所に配設されている。
【0028】
前側の座席の側方に配置される頭部拘束部29Aは、前側においてベルトラインBLの下方まで延びるように構成される前側部位29aと、後側において下縁をベルトラインBLの上方に位置させるように構成される後側部位29bと、を備える構成とされ、後側部位29bの領域内には、上下方向に略沿った2つの縦セル30A,30Bが、前後で並設されている。前側部位29aは、上端側をガス案内流路25と連通されて、上端側から内部に膨張用ガスを流入させる構成である。後側部位29bを構成する縦セル30A,30Bは、後述する区画部41により、上端側をガス案内流路25に対して閉塞されている。そして、前側の縦セル30Aは、下端側を前側部位29aと連通されて下端側から内部に膨張用ガスを流入させる構成とされ、後側の縦セル30Bは、上端側を前側の縦セル30Aと連通されて上端側から内部に膨張用ガスを流入させる構成である。この後側部位29bは、膨張完了時に、センターピラー部CPの車内側を覆う部位である。後側の座席の側方に配置される頭部拘束部29Bは、膨張完了形状を、略長方形状として構成されている。
【0029】
補助膨張部32は、頭部拘束部29A,29B間において、頭部拘束部29A,29B間の隙間を埋めるように、配設されている。詳細に説明すれば、補助膨張部32は、上端側を、前側の頭部拘束部29Aにおける縦セル30Bの上端近傍に連通させるとともに、後下がりに傾斜して、下端側を、後側の頭部拘束部29Bの下側に位置させるように、構成されている。また、補助膨張部32は、エアバッグ19の膨張完了時に、下縁をベルトラインBLの下方に位置させるように構成されている。そして、この補助膨張部32は、縦セル30Bと連通される上端側の連通路部33から、膨張用ガスを内部に流入させる構成とされている。この補助膨張部32は、側面衝突後に発生する車両Vのロールオーバー時に、乗員の車外放出を抑制するために膨張させる部位であり、頭部拘束部29A,29Bより膨張開始を遅らせるように、構成されている。具体的には、補助膨張部32は、縦セル30Bの上端付近と連通される連通路部33の開口幅寸法(開口面積)を小さくすることにより、頭部拘束部29A,29Bよりも膨張用ガスGの流入開始を遅らせるように、構成されている。具体的には、各頭部拘束部29A,29Bが、車両Vの側面衝突検知から20ms程度で膨張を完了させるのに対し、補助膨張部32は、車両Vの側面衝突検知から20msまでは、内部に膨張用ガスGを流入させず、車両Vの側面衝突検知から30ms〜100msの間で、内部に膨張用ガスGを流入させるように、連通路部33の開口幅寸法(開口面積)を設定されている。
【0030】
支持膨張部22F,22Bは、バッグ本体20を平らに展開した状態で、遮蔽膨張部21の下縁21b側から下方に突出するように、形成されている。詳細には、支持膨張部22F,22Bは、エアバッグ19の膨張完了時にセンターピラー部CPの車内側を覆っているピラーガーニッシュ6の前後両側に位置するように、ピラーガーニッシュ6の車内側に配置される頭部拘束部29Aの後側部位29bの前方に位置する前側部位29aの後端近傍の下方と、後側部位29bの後方に位置する補助膨張部32の前端近傍の下方と、に、それぞれ、配置されている。また、実施形態の場合、各支持膨張部22F,22Bは、膨張完了時に、センターピラー部CPに対する前後方向へのずれを規制可能に、センターピラー部CP(ピラーガーニッシュ6)に位置規制されるように、バッグ本体20を平らに展開した状態での外形形状を、前後方向側を若干幅広とした略長方形状とされている。
【0031】
各支持膨張部22F,22Bは、それぞれ、バッグ本体20を平らに展開した状態で上端側に配置される連通路部36F,36Bにより、遮蔽膨張部21に連通されている。具体的には、前側の支持膨張部22Fは、連通路部36Fにより、頭部拘束部29Aの前側部位29aと連通されている。後側の支持膨張部22Bは、連通路部36Bにより、補助膨張部32と連通されている。そして、実施形態の場合、各支持膨張部22F,22Bは、遮蔽膨張部21の膨張完了後に、膨張を完了するように、構成されている。支持膨張部22Bは、頭部拘束部29A,29Bより遅れて膨張を開始する補助膨張部32と連通されていることから、頭部拘束部29A,29Bの膨張完了後に、膨張を完了させることができる。支持膨張部22Fは、補助膨張部32と同様に、頭部拘束部29Aと連通される連通路部36Fの開口幅寸法(開口面積)を小さくし、かつ、この連通路部36Fの部位で車外側に折り返されることにより、頭部拘束部29Aよりも膨張用ガスGの流入開始を遅らせるように、構成されている。詳細には、支持膨張部22Fも、補助膨張部32と同様に、車両Vの側面衝突検知から20msまでは、内部に膨張用ガスGを流入させず、車両Vの側面衝突検知から30ms〜100msの間で、内部に膨張用ガスGを流入させるように、連通路部36Fの開口幅寸法(開口面積)を設定されている。
【0032】
非流入部38は、図2に示すように、バッグ本体20の周縁を構成する周縁部39と、エアバッグ19をボディ側部材としてのインナパネル2に取り付ける取付部40と、保護膨張部28の領域内に配置される区画部41,42,43,44と、を、備えて構成されている。
【0033】
周縁部39は、ガス流入口部26の後端26a側を除いて、ガス流入部24の周囲を全周にわたって囲むように、配置されている。取付部40は、遮蔽膨張部21の上縁21a側を、車両Vのボディ側部材としてのインナパネル2に取付固定するための部位であり、遮蔽膨張部21の上縁21a側から上方に向かって突出するとともに、前後方向に沿って複数個(実施形態の場合、7個)形成されている。各取付部40には、ボルト12を挿通可能な取付孔(図符号省略)が、形成されている。区画部41は、周縁部39における下縁側の領域から斜め前上方に延び、頭部拘束部29Bと補助膨張部32とを区画しつつ、補助膨張部32及び頭部拘束部29Aの後側部位29bとを区画するように前方に延びて、先端側を、頭部拘束部29Aの前側部位29aと後側部位29bとを区画するように、斜め前下方に延ばすように、構成されている。区画部42は、縦セル30A,30B間を区画するように、周縁部39における下縁側の領域から上方に向かって延びるように、形成されている。区画部43は、縦セル30Bと補助膨張部32とを区画するように、周縁部39における下縁側の領域から上方に向かって延びるように、形成されている。区画部44は、頭部拘束部29Bの後側の領域とガス案内流路25とを区画するように、周縁部39における後縁側の領域から前方に向かって延びて、先端を下方に向けるような略L字状とされている。各区画部41,42,43,44の端末は、エアバッグ19の膨張時に応力集中を生じさせないように、なだらかに拡開して周縁を略円弧状とするように、構成されている。そして、区画部43の端末と区画部41との間の隙間が、補助膨張部32内に膨張用ガスを流入させる連通路部33を構成している。
【0034】
テザー45は、バッグ本体20を平らに展開した状態の各支持膨張部22F,22Bの下縁側から延びるような帯状として、2箇所に配設されるもので、それぞれ、実施形態の場合、先端45b側を、遮蔽膨張部21の上縁21a側に連結されて、バッグ本体20の膨張完了時に、支持膨張部22F,22Bを遮蔽膨張部から車外側Oに突出させるように規制している。詳細には、実施形態の場合、テザー45は、バッグ本体20と別体とされて、バッグ本体20と同様に、ポリアミド糸やポリエステル糸等からなる織布から構成される帯状とされるもので、元部45a側を、支持膨張部22F,22Bの下縁側を構成する周縁部39の部位に縫着させ、先端45b側を、遮蔽膨張部21の上縁21aから突出している取付部40とともに、取付ブラケット11とボルト12とを利用して、遮蔽膨張部21の上縁21a側に位置するボディ側部材としてのインナパネル2に連結されている。各テザー45の先端45b側には、ボルト12を挿通可能な挿通孔(図符号省略)が、形成されている。このテザー45は、長さ寸法を、エアバッグ19の膨張完了時に、支持膨張部22F,22Bを、遮蔽膨張部21の下方から車外側Oに引き上げるように、略水平面に沿った状態で車外側Oに突出させて配置可能な寸法に、設定されている。実施形態の場合、各テザー45は、支持膨張部22F,22Bを、それぞれ、連通路部36F,36Bの部位で車外側に折り返し、上方に延ばした状態で、先端45bを、対応する取付部40より僅かに上方に突出させるように、構成されている(図3参照)。
【0035】
また、実施形態のエアバッグ19では、遮蔽膨張部21の前縁側に、バッグ本体20と別体の連結ベルト47が、配設されている。この連結ベルト47は、バッグ本体20と同様に、ポリアミド糸やポリエステル糸等からなる織布から形成されるもので、元部側を遮蔽膨張部21の上下の中央よりやや下方となる領域の前縁側に縫着させて、前方に突出するように、配置されている。連結ベルト47は、エアバッグ19の膨張完了時に、前後方向に略沿って配置されることとなり、連結ベルト47の先端47a側は、取付部40と同様に、取付ブラケット11とボルト12とを利用して、インナパネル2におけるフロントピラー部FPの部位に、取付固定されることとなる。すなわち、実施形態では、エアバッグ19は、遮蔽膨張部21における膨脹完了時の前縁21c側を、連結ベルト47により、窓W1,W2の上縁側より下方となる位置(取付部40より下方となる位置)で、フロントピラー部FP側に連結されている。
【0036】
次に、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載について説明をする。連結ベルト47とテザー45とを予め縫着させておいたバッグ本体20を、車内側壁部24aと車外側壁部24bとを平らに展開した状態から、折り畳む。まず、平らに展開した状態のバッグ本体20において、支持膨張部22F,22Bを、連通路部36F,36Bの部位で前後方向に沿った折目をつけて車外側に折り返し(図3参照)、テザー45,45を、先端45b側を上方に向けるようにバッグ本体20の車外側に配置させる。その後、バッグ本体20を、テザー45,45ごと、上下方向の幅寸法を縮めるように折り畳む。具体的には、実施形態の場合、ガス案内流路25の領域を、前後方向に沿った複数の折目をつけて蛇腹折りし、ガス案内流路25の下方の保護膨張部28の領域を、下縁21bを車外側に向けて巻くようにして折り畳み、バッグ本体20の折り畳みを完了させる。エアバッグ19の折り畳み完了後には、破断可能な図示しない折り崩れ防止用のラッピング材により、所定箇所をくるんでおく。次いで、各取付部40及びテザー45と、連結ベルト47の先端と、に、取付ブラケット11を取り付ける。また、ガス流入口部26に挿入させた状態のインフレーター14の周囲に、取付ブラケット15を取り付けて、ガス流入口部26にインフレーター14を連結させ、エアバッグ組付体を形成する。
【0037】
その後、各取付ブラケット11,15を、インナパネル2の所定位置に配置させて、ボルト12,16を用いてインナパネル2に取付固定し、車両Vに搭載されている所定のインフレーター作動用の制御装置から延びる図示しないリード線を、インフレーター14に結線させる。その後、エアバッグカバー9を構成するフロントピラーガーニッシュ4やルーフヘッドライニング5をボディ1側のインナパネル2に取り付け、さらに、ピラーガーニッシュ6,7をボディ1側のインナパネル2に取り付ければ、頭部保護エアバッグ装置Mを車両Vに搭載することができる。
【0038】
そして、頭部保護エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載後において、車両Vの側面衝突時、制御装置からの作動信号を受けてインフレーター14が作動されれば、インフレーター14から吐出される膨張用ガスGが、図示しないラッピング材を破断させ、さらに、フロントピラーガーニッシュ4とルーフヘッドライニング5との下縁で構成されるエアバッグカバー9を押し開いて、下方へ突出しつつ、図1の二点鎖線及び図4〜6に示すごとく、窓W1,W2、センターピラー部CP、及び、リヤピラー部RPの車内側を覆うように、大きく膨張することとなる。
【0039】
なお、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、エアバッグ19の遮蔽膨張部21において、ガス案内流路25と頭部拘束部29A,29Bと、が、まず、膨張を完了させることとなり、ガス案内流路25と頭部拘束部29A,29Bの膨張完了後に、保護膨張部28における補助膨張部32と、支持膨張部22F,22Bと、が、内部に膨張用ガスGを流入させて膨張することとなる。
【0040】
そして、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、エアバッグ19において、膨張完了時の遮蔽膨張部21のセンターピラー部CP(中間ピラー部)に対する前後方向へのずれを抑制するように、センターピラー部CPの前後両側に配置される支持膨張部22F,22Bが、板状の遮蔽膨張部21から車外側Oに突出するように配置されていることから(図4,5参照)、従来の頭部保護エアバッグ装置と比較して、支持膨張部22F,22Bの遮蔽膨張部21からの突出量を大きく確保することができる。換言すれば、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、支持膨張部22F,22Bにおいて、サイドウィンドとしての窓W1,W2から車内側Iに突出しているセンターピラー部CPのピラーガーニッシュ6と車内外方向側で重なる領域を、大きく確保することができることから、膨脹完了時の遮蔽膨張部21が仮に車内側Iに浮き上がるように移動したとしても、支持膨張部22F,22Bがセンターピラー部CPから離れるように浮き上がることを防止できて、支持膨張部22F,22Bを、センターピラー部CP(ピラーガーニッシュ6により位置規制させることができる。
【0041】
また、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、エアバッグ19(遮蔽膨張部21)は、上縁21a側を、前後方向に沿って複数配置される取付部40により車両Vのボディ側部材としてのインナパネル2に取付固定されるとともに、膨張完了時の前縁21c側を、連結ベルト47により、窓W1,W2の上縁側より下方となる位置で、フロントピラー部FP側に、連結される構成であることから、膨張完了時の遮蔽膨張部21に、このフロントピラー部FPとの連結部位(連結ベルト47の先端47a)から上縁後端側の取付部40Bにかけて、前後方向に略沿ったテンションTを発生させることができ(図4参照)、遮蔽膨張部21が前後方向側で弛むことを的確に防止できる。
【0042】
そのため、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、センターピラー部CPより前方に配置される座席に着座している乗員の頭部が、エアバッグ19の膨張完了時に、頭部拘束部29Aを車外側Oに押圧するようにして、遮蔽膨張部21を車外側Oへ強く押圧することとなっても、センターピラー部CPの後側に配置される支持膨張部22Bが、前面側をセンターピラー部CPの車内側Iを覆うピラーガーニッシュ6に支持されることとなって、遮蔽膨張部21全体が前方に大きく位置ずれすることを抑制でき、かつ、遮蔽膨張部21全体の車外側への移動も抑制することができる。また、逆に、センターピラー部CPより後方に配置される座席に着座している乗員の頭部が、頭部拘束部29Bを車外側Oに押圧するようにして、遮蔽膨張部21を車外側Oへ強く押圧することとなっても、センターピラー部CPの前側に配置される支持膨張部22Fが、後面側をセンターピラー部CPの車内側Iを覆うピラーガーニッシュ6に支持されることとなって、遮蔽膨張部21全体が後方に大きく位置ずれすることを抑制でき、かつ、遮蔽膨張部21全体の車外側への移動も抑制することができる。その結果、乗員の頭部の車外側Oへの移動を的確に抑制することができる。
【0043】
したがって、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、膨張を完了させたエアバッグ19が、中間ピラー部としてのセンターピラー部CPに対して前後に位置ずれすることを的確に抑制できる。
【0044】
また、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、支持膨張部22F,22Bを、遮蔽膨張部21における頭部拘束部29A,29Bの膨張完了後に、膨張を完了させる構成としていることから、エアバッグ19の内部に膨張用ガスを供給するインフレーター14の作動開始から所定時間経過した後のロールオーバー時にも、支持膨張部22F,22Bの内圧をある程度確保することができる。そのため、エアバッグ19の膨張完了後におけるロールオーバー時にも、高い内圧を保持された支持膨張部22F,22Bを、センターピラー部CPにより支持させることができて、ロールオーバー時において、乗員の頭部が、遮蔽膨張部21を車外側Oへ強く押圧することとなっても、遮蔽膨張部21がセンターピラー部CPに対して前後に位置ずれすることを防止できる。すなわち、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、側面衝突後のロールオーバー時等において、遮蔽膨張部21における乗員の頭部を拘束している部位が、車外側Oに向かって大きく突出することを的確に防止できることから、乗員の頭部の車外側への大きな移動を抑制して、乗員を車内側に拘束して保護することができる。
【0045】
また、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、エアバッグ19が、支持膨張部22F,22Bを遮蔽膨張部21の下縁側から下方に突出させるように、支持膨張部22F,22Bと遮蔽膨張部21とを一体的に構成したバッグ本体20から、構成されており、支持膨張部22F,22Bは、支持膨張部22F,22B側から延びて遮蔽膨張部21の上縁21a側に連結されるテザー45によって、バッグ本体20の膨張完了時に、遮蔽膨張部21から車外側Oに引き上げられて、車外側Oに突出するように配置される構成である。そのため、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、支持膨張部22F,22Bが遮蔽膨張部21と一体的に構成されることから、支持膨張部を遮蔽膨張部と別体に形成して、別途遮蔽膨張部側に取り付ける場合と比較して、製造工数及びコストを低減させることができる。なお、実施形態では、テザー45の長さ寸法を、バッグ本体20の膨張完了時に、支持膨張部22F,22Bを略水平面に沿って配置可能な寸法に、設定しているが、テザーの長さ寸法はこれに限られるものではなく、支持膨張部は、先端を車外側上方に向けるように配置される構成としてもよい。また、実施形態では、テザー45の先端45b側を遮蔽膨張部21の上縁21a側に連結させているが、テザーの遮蔽膨張部側への連結位置はこれに限られるものではなく、支持膨張部を遮蔽膨張部の下方から車外側へ引き上げ可能であれば、遮蔽膨張部の上縁より下方となる位置に連結させる構成としてもよい。
【0046】
また、図7〜9に示すエアバッグ19Aのように、支持膨張部22FA,22BAを、遮蔽膨張部21と別体の袋状として、遮蔽膨張部21の車外側Oに重なって配設させ、連通路部36FA,36BAの周縁で、遮蔽膨張部21に連結させ、遮蔽膨張部21に連通させる構成してもよい。エアバッグ19Aをこのような構成とすれば、テザーを使用しなくともよい。なお、この図7〜9に示すエアバッグ19Aは、支持膨張部22FA,22BAの形状及び連結態様以外は、上述のエアバッグ19と同様の構成であることから、同一の部材には同一の図符号を付して詳細な説明を省略する。
【0047】
また、エアバッグ19における支持膨張部22F,22Bの外表面側に、センターピラー部CP(ピラーガーニッシュ6)に対する摩擦力を向上させるような抵抗付与層を配設させる構成としてもよい。具体的には、支持膨張部22F,22Bにおける少なくともセンターピラー部CP側となる前後の中央側の部位の外表面側に、抵抗付与層として、図10に示すような吸着層50を、形成してもよい。この吸着層50は、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーンゴム、スチレン−ブタジエン系ゴム、ニトリルゴム等の高分子弾性体からなる発泡層51を備えるもので、この発泡層51は、表面側に多数の開口した気泡51aを有して構成され、開口した気泡51aを設けた表面側を、ピラーガーニッシュ6に押し付けることによって、気泡51a内の圧力を大気圧に比べて低下させる等により、吸着性能を発揮するものである。この吸着層50は、ポリエステル、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂製シート材からなるベース52に、発泡層51を形成して、構成されるもので、図10に示すように、図示しない接着剤層を介して、支持膨張部22F,22Bを構成する車内側壁部24a,車外側壁部24bの所定位置に貼着されている。このように、支持膨張部22F,22Bの外表面に抵抗付与層としての吸着層50を形成すれば、支持膨張部22F,22Bがセンターピラー部CPの車内側に配置されるピラーガーニッシュ6に接触した後に、ピラーガーニッシュ6からずれ難く、支持膨張部22F,22Bをピラーガーニッシュ6(センターピラー部CP)により一層的確に支持させることが可能となる。
【0048】
なお、実施形態では、中間ピラー部(センターピラー部CP)を1つ備える二列シートタイプの車両を例に採り説明しているが、本発明の頭部保護エアバッグ装置を適用可能な車両はこれに限られるものではなく、3つのサイドウィンドと、2つの中間ピラー部と、を備える三列シートタイプの車両に、本発明を適用してもよい。本発明の頭部保護エアバッグ装置を三列シートタイプの車両に適用する場合、支持膨張部は、各中間ピラー部の前後に、それぞれ、配置させてもよく、また、どちらか一方の中間ピラー部の前後にのみ配置させる構成としてもよい。また、実施形態では、エアバッグ19,19Aにおいて、センターピラー部CPの車内側を覆う部位(支持膨張部22F,22B間の部位)は、頭部拘束部29Aの後側部位29bから構成されて、内部に膨張用ガスを流入させて膨張する構成とされているが、この部位を、内部に膨張用ガスを流入させない非流入部の部位から、構成してもよい。
【0049】
また、実施形態では、エアバッグ19,19Aにおける膨張遮蔽部21,21Aが、膨張完了時に、ベルトラインBLよりも下方に突出する部位を備えているが、本発明は、膨張遮蔽部全体が膨張完了時にベルトラインの上方に配置されるタイプのエアバッグにも適用可能であり、そのような構成のエアバッグであっても、乗員の東部の車外側への移動を的確に抑制することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…ボディ、
2…インナパネル(ボディ側部材)、
6…センターピラーガーニッシュ、
14…インフレーター、
19,19A…エアバッグ、
20,20A…バッグ本体、
21,21A…膨張遮蔽部、
21a…上縁、
21c…前縁、
22F,22B,22FA,22FB…支持膨張部、
45…テザー、
47…連結ベルト、
50…吸着層(抵抗付与層)、
BL…ベルトライン、
FP…フロントピラー部、
CP…センターピラー部(中間ピラー部)、
V…車両、
W1,W2…窓(サイドウィンド)、
M…頭部保護エアバッグ装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後にサイドウィンドを配置させた中間ピラー部を有する車両に搭載されて、前記サイドウィンドの上縁側に折り畳まれて収納され、上縁側を前後方向に沿って複数配置される取付部の部位で前記サイドウィンドの上縁側に位置する車両のボディ側部材に取付固定されるとともに、インフレーターからの膨張用ガスを内部に流入させて、前記中間ピラー部の車内側を含めて、前記サイドウィンドの車内側を覆うように展開膨張するエアバッグを、有した頭部保護エアバッグ装置であって、
前記エアバッグが、
膨張完了時の前縁側を、前記サイドウィンドの上縁側より下方となる位置で、前側のサイドウィンドの前側に配置されるフロントピラー部側に、連結される構成とされるとともに、
膨張完了時に、前記サイドウィンドの車内側を覆うとともに膨張完了形状を略板状とされる遮蔽膨張部と、
膨張完了時に、前記サイドウィンドの下縁側を構成するベルトラインより上方となる位置において、前記遮蔽膨張部から車外側に突出するように膨張して、前記中間ピラー部の前後両側に配置されるとともに、膨張完了時の前記遮蔽膨張部の前記中間ピラー部に対する前後方向へのずれを抑制可能に、前記中間ピラー部に位置規制される支持膨張部と、
を備える構成とされていることを特徴とする頭部保護エアバッグ装置。
【請求項2】
前記支持膨張部が、前記遮蔽膨張部の膨張完了後に、膨張を完了させる構成とされていることを特徴とする請求項1に記載の頭部保護エアバッグ装置。
【請求項3】
前記エアバッグが、
平らに展開した状態で、前記支持膨張部を、前記遮蔽膨張部の下縁側から下方に突出させるように、前記支持膨張部と前記遮蔽膨張部とを一体的に、構成させたバッグ本体と、
前記支持膨張部側から延びて、前記遮蔽膨張部における前記支持膨張部の上方側に連結されるとともに、前記バッグ本体の膨張完了時に、前記支持膨張部を前記遮蔽膨張部の下方から車外側に引き上げるように保持可能なテザーと、
を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の頭部保護エアバッグ装置。
【請求項4】
前記支持膨張部が、前記遮蔽膨張部の車外側に重なって配設されて、内部に膨張用ガスを流入可能に、前記遮蔽膨張部と連通されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の頭部保護エアバッグ装置。
【請求項5】
前記支持膨張部が、外表面側に、前記中間ピラー部に対する摩擦力を向上させるような抵抗付与層を、配置させて構成されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の頭部保護エアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−245897(P2012−245897A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119474(P2011−119474)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】