説明

顔料分散体の製造方法

【課題】酸化亜鉛、酸化チタンに代表される無機顔料の分散体において、分散性および経時安定性が良好で、且つ塗布したときの透明性に優れる、とりわけ化粧料用途に好適な顔料分散体の製造方法を提供する。
【解決手段】無機顔料と液状のシリコーンとを含む混合物を、円筒状の混練シリンダ内に設けた環状の固定円盤と、前記円筒状の混練シリンダの軸心回りを回転する駆動軸と一体回転し、前記固定円盤と同心の回転円盤との間隙部分に形成された粉砕空間を有する連続混練機にて混練処理することを特徴とする顔料分散体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機顔料の分散安定性および塗布したときの透明性に優れ、とりわけ化粧料用途に好適な顔料分散体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料においては多種多様な無機顔料が用いられているが、中でも酸化亜鉛や酸化チタンは、約3eVという紫外線領域の光のエネルギーに相当するバンドギャップを有し紫外線を吸収・散乱する性質をもつことから、白色顔料としての着色用途のみならず、有機系の紫外線吸収剤に代わる紫外線遮蔽材料として、日焼け止め化粧料等に用いられている。
これらの紫外線遮蔽能力を有効に利用する為には、酸化亜鉛や酸化チタンの表面積を増やすことが最も有効な手段の一つとして挙げられる。しかしながら、これらの材料は屈折率が約2.0〜2.7であり、化粧料に用いられる一般的な配合材料の屈折率との乖離が大きい為、高い紫外線遮蔽能を得る為に高濃度で使用すると、塗布時の透明性が得られず白浮きするといった問題がある。
【0003】
粒子の可視光散乱強度は、その粒子と媒質が有する屈折率にも依存するが、一般的に粒径が波長の1/2付近で最大となり、それよりも粒径が小さくなるとレイリーの散乱式から示される様に、粒径の6乗に比例して散乱強度は小さくなっていく。よって、可視光(波長が400〜800nmの光)に対しては、粒径が200〜400nmの時に散乱強度が最大となり、それより小さくなるにつれて散乱強度が低下(透明化)していくことになる。即ち、一次粒子径の小さな粒子を高度に分散することが、表面積と透明性の確保に関しては不可欠となる。
【0004】
しかしながら、酸化亜鉛や酸化チタンの様な無機粒子を溶剤やポリマー中に分散することを考えた場合、無機粒子の表面張力は媒質の表面張力に比べて大きい為、両者の表面張力の乖離が大きくなる程、粒子と媒質との界面エネルギーも大きくなり、界面エネルギーを小さくしようと粒子は凝集する。また、一次粒子径の小さな無機粒子を使用するということは、同時に粒子の比表面積が増大することを意味し、結果として粒子同士の接触機会が増え、凝集傾向が強くなり、安定した分散体を得ることが更に難しくなる。
【0005】
これらの問題に対し、特許文献1には、アミン変性シリコーン樹脂やカルボキシル変性シリコーン樹脂を分散剤として酸化亜鉛や酸化チタンをシリコーンオイルに分散する方法が記載されている。しかしながら分散手法に関する部分について詳細な記述はなく、実施例に超音波分散やメディア型分散機による分散が例示されているが、超音波分散では分散エネルギーが弱いため十分な分散度が得られない場合が多く、またメディア型分散機を用いた場合でも顔料に対する分散剤の吸着が不十分な場合には粒子同士が再凝集してしまう問題がある。
【0006】
特許文献2には、脂肪酸処理された酸化チタンとアミン変性のシリコーン樹脂用とシリコーンオイルのスラリーを三本ローラーで予備混練し、その他の配合剤に分散する方法が記載されている。しかしながら、こちらについても、スラリー混練のみでは分散剤の吸着が不十分な場合には白浮きや再凝集の問題が起こる。
【特許文献1】特開2002−80771号公報
【特許文献2】特開2001−207060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、無機顔料の分散体について、分散性および経時安定性が良好で、且つ塗布したときの透明性に優れる、とりわけ化粧料用途に好適な顔料分散体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、無機顔料と液状のシリコーンとを含む混合物を、円筒状の混練シリンダ内に設けた環状の固定円盤と、前記円筒状の混練シリンダの軸心回りを回転する駆動軸と一体回転し、前記固定円盤と同心の回転円盤との間隙部分に形成された粉砕空間を有する連続混練機にて混練処理することを特徴とする顔料分散体の製造方法に関する。
【0009】
更に本発明は、揮発性溶剤の存在下に混練を行う上記請顔料分散体の製造方法に関する。
【0010】
更に本発明は、顔料分散体が、混練処理して得られた混練物を溶剤に分散したものである上記顔料分散体の製造方法に関する。
【0011】
更に本発明は、分散処理がメディア型分散機を使用する上記顔料分散体の製造方法に関する。
【0012】
更に本発明は、混練処理後の無機顔料の平均一次粒子径が5〜100nmであることを特徴とする上記顔料分散体の製造方法に関する。
【0013】
更に本発明は、無機顔料が、酸化亜鉛および/または酸化チタンである上記顔料分散体の製造方法に関する。
【0014】
更に本発明は、シリコーンが官能性置換基を有するシリコーンであることを特徴とする上記顔料分散体の製造方法に関する。
【0015】
更に本発明は、官能性置換基を有するシリコーンが、アミノ変性シリコーン、ヒドロキシル変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーンおよびリン酸変性シリコーンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記顔料分散体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の顔料分散体の製造方法により製造された顔料分散体は、無機顔料が高度に分散されている為、分散安定性に優れる。また、化粧料に配合した場合には、透明性や伸びなどに優れた化粧料を得ることができる。
また、本発明の顔料分散体の製造方法では、微細な無機顔料と、分散剤として働くシリコーンとを含む混合物を、環状の固定円盤と、駆動軸の軸心回りに一体回転する前記固定円盤と同心の回転円盤との間隙部分に形成された粉砕空間を有する連続混練機にて混練処理した後、溶剤に分散する為、メディア型分散機のみで顔料を塗膜形成性材料に分散する場合に比べて、はるかに短時間で、分散性および経時安定性が良好で、且つ塗布した時の透明性に優れる顔料分散体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明における連続混練機について説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る連続混練機の一実施形態を示す側面視の断面図である。因みに、本発明において好適に使用される連続混練機としては、特公平2−92号公報に記載されているものであり、例えば、浅田鉄工社製の連続混練機10(「ミラクルK.C.K.」)を好適なものとして挙げることができる。
【0019】
図1において、連続混練機10は、フイード部1、混練部2、排出部3および定量フィーダー部4とを備えた基本構成を有している。前記フイード部1は、水平方向に延びる筒状のケーシング11と、このケーシング11に同心、かつ、摺接状態で嵌挿されたスパイラルロッド12とを備えている。前記ケーシング11の上流側の上面には、定量フィーダー部4からの原料を受け入れる原料受入口111が開口されている。前記スパイラルロッド12は、その基端部(図1の右方)が図略の駆動モータの駆動軸121に同心で固定され、駆動モータの駆動で駆動軸121を介して軸心回りに回転するようになっている。かかるスパイラルロッド12の外周面には、所定方向に螺設されたスパイラルフィン122が設けられ、定量フィーダー部4から供給された原料は、このスパイラルフィン122の軸心回りの回転によって混練部2へ向けて圧送されるようになっている。
【0020】
前記定量フィーダー部4は、連続混練処理の対象物(本発明においては、無機顔料、液状のシリコーンを含む混合物)をフイード部1へ供給するためのものであり、原料を収容する原料ホッパー41と、この原料ホッパー41の底部から切り出された原料をフイード部1へ向けて送り出すスパイラルフィーダ42と、このスパイラルフィーダ42の下流端を覆うように前記ケーシング11に原料受入口111の周縁部から立設された連絡筒体43とを備えて構成されている。
前記スパイラルフィーダ42は、原料ホッパー41の底部開口と連絡筒体43の上部開口との間に介設された介設筒体44内にスパイラルフィンが摺接した状態で装着され、基端側(図1の右方)が図略のフィードモータの駆動軸に同心で連結されている。したがって、フィードモータの駆動によるスパイラルフィーダ42の軸心回りに回転で、原料ホッパー41内の原料がスパイラルフィーダ42によって搬送され、介設筒体44および連絡筒体43を介してケーシング11内へ予め設定された搬送量で供給されるようになっている。
【0021】
前記混練部2は、複数の固定円盤21と、この固定円盤21間に挟持された状態で固定円盤21と交互に配設される環状の混練シリンダ22と、表裏面(図1における左右の面)が前記固定円盤21と対向した状態で前記混練シリンダ22に同心で嵌挿される回転円盤23とを備えて構成されている。前記複数の固定円盤21および混練シリンダ22には、図略のタイロッドが貫通され、このタイロッドの基端部がフイード部1のケーシング11に固定されることにより、固定円盤21および混練シリンダ22がフイード部1と一体化している。
前記各回転円盤23は、スパイラルロッド12の先端面から同心で突設された図略のスプライン軸に外嵌されている。隣設された回転円盤23間には筒状の中間スクリュー24が介設され、これによってスプライン軸には回転円盤235とスクリュー24とが交互に装着された状態になっている。かかる回転円盤23は、外径寸法が固定円盤21の内径寸法より僅かに小さく設定されているとともに、中間スクリュー24は、外径寸法が回転円盤23の内径寸法より僅かに小さく設定され、これによって各回転円盤23および各中間スクリュー24は、前記スプライン軸に交互に外嵌された状態で、外周面が混練シリンダ22および固定円盤21の内周面に対して原料が通過し得る隙間を介してそれぞれ対向するようになされている。
【0022】
かかる連続混練機10の構成によれば、原料ホッパー41に装填された原料は、スパイ
ラルフィーダ42の駆動によって原料ホッパー41の底部から払い出され、介設筒体44および連絡筒体43を介してフイード部1のケーシング11内に導入される。ケーシング11内に導入された原料は、スパイラルロッド12の駆動回転によるスパイラルフィン122の回転によって順次下流側の混練部2へ向けて搬送される。
そして、混練部2へ搬送された原料は、まず、軸心回りに回転している最上流側(図1の右方)の中間スクリュー24の外周面と、最上流側の駆動軸121の内周面との間を通過し、引き続き最上流側の固定円盤21の図1における左側面と、軸心回りに回転している最上流側の回転円盤23の右側面との間を通過し、これらの隙間の通過に際して当該原料に混練処理が施される。かかる原料に対する混練操作が固定円盤21、混練シリンダ22、回転円盤23および中間スクリュー24の設置分だけ複数段で繰り返され、これによって原料の複数種類の構成要素(本発明においては、無機顔料、液状のシリコーン)に対し混練処理が施される。混練処理の完了により得られた製品は、最下流側の回転円盤23の外周面と、同固定円盤21の内周面との隙間、すなわち排出部3から外部に排出される。
【0023】
図2は、図1に示す連続混練機に適用される固定円盤および回転円盤の一実施形態を示す正面図(図1の右方から見た図)または背面図(図1の左方から見た図)であり、(a)はキャビティー扇型固定円盤21a、(b)はキャビティー扇型回転円盤23b、(c)はキャビティー菊型固定円盤21c、(d)はキャビティー菊型回転円盤23d、(e)はキャビティー臼型固定円盤21e、(f)はキャビティー臼型回転円盤23fをそれぞれ示している。
【0024】
図2に示すように、固定円盤21には、同心で穿設された中間スクリュー24に遊嵌させるための遊嵌孔211が設けられているとともに、固定円盤21の表裏面(正面側および背面側)には、この遊嵌孔211から径方向に向けて凹設された周方向に等ピッチの複数の凹部(キャビティー(粉砕空間)212)が設けられている。一方、回転円盤23には、同心で穿設された図略のスプライン軸に密着状態で外嵌するための外嵌孔231が設けられているとともに、回転円盤23の表裏面には、前記固定円盤21のキャビティー212に対応するキャビティー(粉砕空間)232が凹設されている。回転円盤23のキャビティー232は、周縁部が開放状態になっている。
そして、固定円盤21および回転円盤23間の隙間に導入された原料は、前記スパイラルロッド12の駆動により押圧されることにより各キャビティー212,232内に順次入り込み、この状態で回転円盤23が軸心回りに回転することによって各キャビティー212,232間の界面を境にして各キャビティー212,232内の原料に対し剪断力が付与されるようになされている。すなわち、対向する固定円盤21と回転円盤23との各キャビティー212,232内の原料は、各キャビティー212,232の山部の稜線でスライスされて原料に剪断力と置換(剪断された原料が各キャビティー212,232から出されるとともに、新たな原料が各キャビティー212,232に入り込むこと)とが作用し、これによって原料が混練されるようになっている。
【0025】
かかる固定円盤21および回転円盤23を、キャビティー212,232の形状によって図2(a)および図2(b)に示すキャビティー扇型固定円盤21aおよびキャビティー扇型回転円盤23bと、図2(c)および図2(d)に示すキャビティー菊型固定円盤21cおよびキャビティー菊型回転円盤23dと、図2(e)および図2(f)に示すキャビティー臼型固定円盤21eおよびキャビティー臼型回転円盤23fとの複数種類に分けているのは、混練処理の進行に応じて原料に対する剪断力を大きくしていくためである。
【0026】
すなわち、各キャビティー212,232の空隙率(固定円盤21および回転円盤23の表面の面積に対する各キャビティー212,232の面積の割合(%))は、扇型のキ
ャビティー212,232、菊型のキャビティー212,232および臼型のキャビティー212,232の順に低くなっているが、空隙率が小さくなるに従って原料に対する剪断力が大きくなる。
【0027】
そして、本実施形態においては、原料に対する混練処理の進行に伴い原料に対する剪断力を大きくしていくべく、上流側から下流側に向けてキャビティー212,232が扇型の固定円盤21および回転円盤23、キャビティー212,232が菊型の固定円盤21および回転円盤23、キャビティー212,232が臼型の固定円盤21および回転円盤23を順次配設するようにしている。
【0028】
こうすることによって、原料にいきなり大きな剪断力が作用するのではなく、混練処理の進行に伴って原料に対する剪断力が順次増大していくため、原料に対して無理のない円滑な混練処理が施される。
また、かかる構成の連続混練機10によれば、原料の構成要素の一つである無機顔料が微細粒子の凝集物からなる場合、当該凝集物が固定円盤21と回転円盤23との隙間(特に各キャビティー212,232)に導入されることにより、回転円盤23の回転によって当該凝集物を確実に解砕させつつ、粒子表面にシリコーンを吸着せることができる。
【0029】
次に本発明における混練処理について説明する。
本発明の混練処理に用いられる無機顔料としては、化粧料で一般的に使用されている無機顔料が使用できる。例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、弁柄、群青、紺青、酸化クロム、水酸化クロム、雲母チタン、シリカ、タルク、カオリン、白雲母、絹雲母、その他雲母類、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、クレイ等が挙げられる。中でも、日焼け止め等の紫外線遮蔽性が求められる用途については、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化鉄が使用できるが、得られる塗膜が無色になることから、酸化亜鉛、酸化チタンを使用するのが好ましい。また、酸化亜鉛や酸化チタンについては、それらが有する触媒活性を抑制する為に、粒子表面をシリカ、アルミナ、ジルコニア等の金属酸化物やその水和物で表面処理したものを使用することもできる。
【0030】
無機顔料は、予めカップリング剤、オルガノシリコーン、高級脂肪酸、リン酸エステル、高級アルコール等で疎水化処理されていても良い。カップリング剤は、シラン系、チタネート系、アルミキレート系のいずれでも良い。シラン系カップリング剤としては、例えば、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3、4−エ
ポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0031】
チタネート系カップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオク
チルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N-アミドエチル・アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等が挙げられる。
アルミキレート系カップリング剤としては、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
【0032】
無機顔料の疎水化処理は、従来公知の方法で行うことができる。すなわち、カップリング剤等の処理剤と無機顔料を各種混合分散機に入れ、湿式または乾式で、混合、粉砕、加熱等の処理をする。具体的には、湿式処理では、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル、ホモミキサー、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」等)、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)等を使用できる。また乾式処理では、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、アトライター、ニーダー、ローラーミル、石臼式ミル、ハイブリダイザー((株)奈良機械製作所)、メカノマイクロス((株)奈良機械製作所)、メカノフュージョンシステムAMS(ホソカワミクロン(株))等が使用できる。各種混合分散機は、こられに限定されるものではない。また、疎水化処理された市販の無機顔料を使用することもできる。各種表面処理の有無によらず酸化亜鉛、酸化チタンについては、テイカ社、石原産業社ならびに堺化学社等より多数のグレードが市販されており、これらを用いることができる。
【0033】
塗膜の可視光(波長が400〜800nmの光)に対する透明性を考えた場合には、塗膜中に含まれる粒子の分散粒径を波長の1/2 (200〜400nm)以下、さらには100nm以下にすることが好ましい。即ち、一次粒子径の細かい粒子を高度に分散することが、塗膜の透明性の確保に関しては不可欠となる。よって、本発明においては、平均一次粒子径が5〜100nmの無機顔料を用いることが好ましい。無機顔料が針状粒子である場合は、長軸の平均長さが5〜100nmのものを用いることが好ましい。平均一次粒子径が100nmよりも大きな無機顔料を使用すると、光の散乱が顕著となり、透明な膜を得ることが難しくなる。また、平均一次粒子径が5nmを下回る無機顔料を用いた場合には、粒子の凝集力が強く分散が困難となる。
【0034】
また、本発明の混練処理に用いられる液状のシリコーンとは、25℃で液状であるシリコーンであり、単体で液状のシリコーン、もしくは溶液でも良い。また、シリコーンとはオルガノポリシロキサンであり、とりわけ官能性置換基を有するオルガノポリシロキサンが好ましく、中でも官能性置換基を有するジメチルポリシロキサンが好ましい。また、感応性置換基としては、スルホン基、カルボキシル基、リン酸基、アミノ基、およびこれ等の塩で構成される置換基や、水酸基、フェノール基、メルカプト基、エポキシ基等が挙げられるが、中でも、カルボキシル基またはその塩から構成される置換基を有するカルボキル変性シリコーン、アミノ基またはその塩で構成される置換基を有するアミノ変性シリコーン、リン酸基またはその塩から構成される置換基を有するリン酸変性シリコーン、および水酸基を有するヒドロキシル変性シリコーンからなる群から選ばれる少なくとも1種の反応性置換基を有するシリコーンの使用が好ましい。
【0035】
また、官能性置換基を有するシリコーンは、オルガノポリシロキサンの少なくとも1つのケイ素原子が、下記一般式(1)〜(4)で示される基で修飾された反応性シリコーンを含むことが好ましい。
一般式(1) −(CH−(OC−A
一般式(2) −(CH−(OC−NR−(CH−A
一般式(3) −(CH−COOM
一般式(4) −[−(CH−(OC−O−]P(O)(−OM)
(式中、aおよびcは1〜20の整数を表し、bは0〜20の整数を表す。また、dおよびeは1または2を表し、d+e=3である。Aは−N(R、−N(R、または−OHを表し、RおよびRは水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基を表し、Xはハロゲン化物イオンもしくは炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基を有するカルボン酸のアニオンを表す。Mは、水素原子、4級アミンまたはアルカリ金属を表す。)
【0036】
より具体的には、官能性シリコーンとして、下記一般式(5)〜(10)で示される官能性シリコーンを1種以上含むことができるが、シリコーンの側鎖に官能性置換基を有する下記一般式(5)、シリコーンの末端に官能性基を有する下記一般式(7)および下記一般式(10)で示される官能性シリコーンの使用が分散効果の観点から好ましい。
一般式(5)
【0037】
【化1】

【0038】
一般式(6)
【0039】
【化2】

【0040】
一般式(7)
【0041】
【化3】

【0042】
一般式(8)
【0043】
【化4】

【0044】
一般式(9)
【0045】
【化5】

【0046】
一般式(10) [Z−(CH−(OC−O−]P(O)(−
OM)
【0047】
式中、Yは、上記一般式(1)〜(3)および下記一般式(11)より選ばれる任意の置換基であり、aおよびcは、1〜20の整数を表し、bは0〜20の整数を表す。Aは−N(R、−N(R、または−OHを表し、RおよびRは水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基を表し、Xはハロゲン化物イオンもしくは、炭素
数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基を有するカルボン酸のアニオンを表す。Mは、水素原子、4級アミンまたはアルカリ金属を表す。また、Zは下記一般式(12)で表されるシリコーン構造を表す。また、fおよびgは正の整数を表し、f+gは、20〜2000を表し、gは1〜20を表す。また、hは20〜2000の整数を表す。f+gまたはhが20を下回ると官能性シリコーンの立体障害による分散効果が小さくなり、f+gまたはhが2000を越えると、無機顔料粒子間での架橋に起因すると思われる分散効果の低下が懸念される。
一般式(11) −(CH−(OC−O−P(O)(−OM)
一般式(12)
【0048】
【化6】

【0049】
官能性置換基を有するシリコーンとしては、信越化学工業社、チッソ社、東芝シリコーン社、東レダウコーニング社等より市販されている各種反応性シリコーンを使用しても良い。例えば、信越化工業社製「KF−8010、X22−161A、X22−161B、X22−1660B−3、KF−8008、KF−8012、KF−393、KF−859、KF−860、KF−861、KF−865、KF−867、KF−867S、KF−869、KF−880、KF−8015、KF−8002、KF−8004、KF−8005、KF−858、KF−864、KF−865、KF−868、KF−8003(アミノ変性シリコーン)、X−22−162C、X−22−3701E、X−22−3710(カルボキシル変性シリコーン)、X−22−160AS、KF−6001、KF−6002、KF−6003、X−22−4015、X−22−170DX、X−22−176DX、X−22−176F(ヒドロキシル変性シリコーン)」、チッソ社製「サイラプレーンFM−3311、FM−3321、FM−3325(アミノ変性シリコーン)、FM−4411、FM−4421、FM−4425、FM−0411、FM−0421、FM−0425、FM−DA11、FM−DA21、FM−DA26(ヒドロキシル変性シリコーン)」等が上げられるがこれらに限定されない。
【0050】
シリコーンは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。また、官能性シリコーンと非官能性のシリコーンとを併用しても良い。非官能性の変性シリコーンとしては、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、フッ素化アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン等が挙げられる。
【0051】
本発明における混練処理は、上記連続混練機よるせん断力を利用して無機顔料粒子の凝集体を解砕しつつ、粒子表面に液状のシリコーンを吸着させるものである。無機顔料と液状のシリコーンとの混練処理を行うときには、先ず、無機顔料100重量部に対し、液状のシリコーンを5〜60重量部 (有効成分換算)、好ましくは10〜55重量部、更に好
ましくは15〜50重量部添加する。無機顔料に対する液状のシリコーン量が5重量部を下回ると、顔料分散体の分散安定性が低下する。また、材料の組合せにもよるが、60重
量部を上回る液状のシリコーンを使用しても顕著な分散効果が得られないことがある。無機顔料および液状のシリコーンは、連続混練処理機に個々に投入しても差し支えないが、通常、常温もしくは加熱下で無機顔料および液状のシリコーンを混合し、均質な混合物とした後に混練処理することが好ましい。
【0052】
また、無機顔料と液状のシリコーンの混合物を作るときには、溶剤を加えることができる。このとき溶剤としては特に限定されない。例えば、メチルエチルケトン等のケトン類、エチルアルコール等のアルコール類、酢酸エチル等のエステル類、その他エーテル類、セロソルブ類、カルビトール類、芳香族類、揮発性のシリコーンオイル等の溶剤が使用できるが、最終的な用途に合わせて溶剤を選択することが好ましい。
【0053】
溶剤の添加量は、用いる無機顔料や反応性置換基を有するシリコーンの種類によって異なるが、無機顔料100重量部に対して、溶剤1〜50重量部を添加することが好ましい。溶剤の添加によるシリコーン粘度の低下、および無機顔料のシリコーンに対する濡れの向上等により混合物の均一性が向上することで、分散促進の効果が期待される。
【0054】
混合の方法としては、溶剤を使用する場合は、先ず溶剤にシリコーンを溶解または分散したものに、攪拌しながら無機顔料を添加するか、無機顔料を攪拌しながら、溶剤にシリコーンを溶解または分散したものを添加することが、混合物の均一性を向上させる上で好ましい。また、攪拌や混合については、ヘラ等を使用して手で混合してもよいが、ディスパー、自動乳鉢、ニーダー、プラネタリーミキサー、フェンシェルミキサー等の公知の攪拌混合装置を用いることもできる。
こうして得られた無機顔料とシリコーンの混合物を、上記の連続混練機にて混練処理し、塊状もしくは粉状の混練物を得る。
【0055】
このとき、混練物の不揮発分を75重量%以上、好ましくは85重量%以上、更に好ましくは90重量%以上にすることが、分散効果を得る上で好ましい。混練物の不揮発分が75重量%を下回ると、混練物が過剰に軟化し、混練時に十分なせん断力が掛からず無機顔料粒子の凝集が十分に解砕されないことがある。
混練物の不揮発分を75重量%以上に上げる方法としては、不揮発分が75重量%未満である混合物中の溶剤分を、混練処理前もしくは混練処理中に揮発または留去させることにより、混練物の不揮発分を75重量%以上にしても良い。
【0056】
本発明における連続混練機の運転条件については特に制限はないが、混練物の品質をコントロールする為には、混合物の配合比、混練温度、機械的エネルギー投入量(主軸(駆動軸121)回転数、原料の供給量、主軸動力負荷等)を調整することにより可能となる。また、混練物の配合比については、連続混練機の途中に原料の投入部を設けて連続混練工程の途中でシリコーンや溶剤を添加して混練組成物の配合比を変化させたり、複数台の連続混練機を直列に連結させて個々の連続混練機の運転条件を別々に設定することで、全体の混練条件を調整することもできる。混練温度については、通常は0℃〜200℃の範囲で行うことが好ましい。また一定の温度下で混連処理を行ってもよいし、混練部に温度傾斜を持たせて混練処理を行うこともできる。また、連続混練機の途中に排気部を設け、加熱混練処理により溶剤を揮発させることで、混練物の不揮発分を調整することもできる。
【0057】
本発明における顔料分散体は、上記混練処理により得られた混練物を、溶剤に分散させ他モノであってもよい。
上記混練物を、溶剤に分散する方法としては、上記混練物をディゾルバー等の高速攪拌機を用いて溶剤に分散し、その後各種分散機で更に分散処理をすることが、均一且つ微細に無機顔料が分散した分散体を得ることができるため好ましい。
分散機としては、通常顔料分散に用いる分散機、例えば、ペイントコンディショナー(
レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル、ホモミキサー、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」等)、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)等を用いることができる。コスト、処理能力等を考えた場合、メディア型分散機を用いることが好ましい。また、メディアとしては、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、磁性ビーズ、ステンレスビーズ等を用いることができる。
連続混練機による混練処理と、湿式メディア型分散機による分散処理を併用すると、メディア型分散機単独で長時間分散を行う場合に比べて、分散時間が大幅に短縮されるとともに、ベッセルやメディアの摩耗等に起因するコンタミネーションを大幅軽減できるため好ましい。
【0058】
本発明の顔料分散体の製造に用いられる溶剤としては、シリコーンを溶解する溶剤であれば特に限定はないが、顔料分散体の使用される用途によりこれを選択する。特に化粧料用途に用いる場合は、パラフィン系の溶剤やシリコーンオイル系の溶剤の使用が好ましく、更に好ましくは、非反応性シリコーンを使用する。具体的には、ジメチルポリシロキサンやメチルフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、並びに、オクタメチルシクロテトラシロキサンやデカメチルシクロペンタシロキサン等の環状ポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、フッ素化アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン等が挙げられる。
また、溶剤の添加量は、用途によって異なるが、無機顔料100重量部に対して、40〜1000重量部の量で用いることができる。
【0059】
本発明方法により製造された顔料分散体は、分散性に優れる為、とりわけ化粧料に用いると、塗布時の透明性および伸びに優れた化粧料を製造できる。
化粧料は、上記顔料分散体に、目的に応じて通常化粧品に使用される成分を配合することで得られる。通常化粧品に使用される成分としては、例えば、オリーブ油、ヤシ油、サフラワー油、ヒマシ油などの油脂類、ラノリン、ホホバ油、カルナバロウ等のロウ類、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン等の炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、オクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピルなどのエステル油、ジメチルポリシロキサンなどのシリコーンオイル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、ヒアルロン酸等の保湿剤、トコフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン等の酸化防止剤、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等の防腐剤、各種界面活性剤、増粘剤、消炎剤、ビタミン、ホルモン等の薬剤、香料等が挙げられるがこれらに限定されない。
顔料分散体に上記成分を配合する方法としては、ディスパー等の攪拌機を用いて顔料分散体に各種成分を配合しても良いし、前記混練物を溶剤に分散するときに配合することもできる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。実施例中、部は重量部、%は重量%を表す。また、混練処理によって得られた混練物の不揮発分は、該混練物を140℃の熱風オーブンで1時間乾燥したときの乾燥前後の重量差から求めた。分散粒度は、累積頻度で50%および99%の平均粒子径(
50およびD99)を動的光散乱方式の粒度分布計(日機装社製「マイクロトラックUPA」)を用いて測定した。また、塗膜の透明性(ヘイズ)については、基材(100μm
のPETフィルム)に塗布した塗膜をヘイズメーター(日本電色社製「COH−300A
」)で評価した。
【0061】
<顔料分散体の作製と評価>
(実施例1)
無機顔料として微粒子酸化亜鉛(平均一次粒子径:約20nm、堺化学社製「FINEX50」:アルミナ、シリカ処理)100部と、シリコーンとして一般式(5)で示されるアミノ変性シリコーン(信越化学工業社製「KF−867S」)30部を、室温下、プラネタリーミキサー(浅田鉄工社製)にて予備混合した。
この混合物をスクリュー式定量フィーダー(定量フィーダー部4(図1))で連続混練機1(浅田鉄工社製の「ミラクルK.C.K.−42型」)に供給し、混練処理を行い、塊状の混練物Aを得た。連続混練機1の条件は、フィード部スクリュー径120mmφ、固定円盤と回転円盤からなる混練部組数8組で、混練組成物の押出量60kg/時、主軸回転数80rpm、混練温度は60℃で運転した。
続いて、デカメチルシクロペンタシロキサン92部に、混練物A 130部を、高速デ
ィスパーを用いて分散した後にガラス瓶に仕込み、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーで更に2時間分散し、顔料分散体Aを得た。
【0062】
(実施例2)
無機顔料として微粒子酸化亜鉛(平均一次粒子径:約20nm、テイカ社製「MZ−505S」:メチルハイドロジェンポリシロキサン処理品)100部と、シリコーンとして一般式(5)で示されるアミノ変性シリコーン(信越化学工業社製「KF−867S」)25部を用いた以外は、実施例1と同様にして、塊状の混練物Bを得た。
続いて、デカメチルシクロペンタシロキサン75部に、混練物B125部を、高速ディスパーを用いて分散した後にガラス瓶に仕込み、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーで更に2時間分散し、顔料分散体Bを得た。
【0063】
(実施例3)
シリコーンとして一般式(5)で示されるカルボキシル変性シリコーン(信越化学工業社製「X−22−3701E」)25部を用いた以外は、実施例2と同様にして、塊状の混練物Cを得た。
続いて、デカメチルシクロペンタシロキサン208部に、混練物C125部を、高速ディスパーを用いて分散した後にガラス瓶に仕込み、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーで更に2時間分散し、顔料分散体Cを得た。
【0064】
(実施例4)
シリコーンとして下記一般式(13)で表されるリン酸変性シリコーン(樹脂A)25部を用いた以外は、実施例2と同様にして、塊状の混練物Dを得た。
続いて、デカメチルシクロペンタシロキサン75部に、混練物D125部を、高速ディスパーを用いて分散した後にガラス瓶に仕込み、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーで更に2時間分散し、顔料分散体Dを得た。
【0065】
一般式(13)
【0066】
【化7】

【0067】
(実施例5)
シリコーンとして、シリコーンの末端にヒドロキシル基を有するヒドロキシル変性シリコーン(チッソ社製「FM−0425」)25部を用いた以外は、実施例4と同様にして、顔料分散体Eを得た。
【0068】
(実施例6)
無機顔料として微粒子酸化チタン(平均一次粒子径:短径約10nm、長径約60nm、石原産業社製「TTO−V3」:Al(OH)3処理品)100部と、シリコーンとし
て一般式(5)で示されるアミノ変性シリコーン(信越化学工業社製「KF−867S」)40部を用いた以外は、実施例1と同様にして、塊状の混練物Fを得た。
続いて、デカメチルシクロペンタシロキサン110部に、混練物F140部を、高速ディスパーを用いて分散した後にガラス瓶に仕込み、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーで更に2時間分散し、顔料分散体Fを得た。
【0069】
(実施例7)
無機顔料として微粒子酸化チタン(平均一次粒子径:短径約10nm、長径約60nm、石原産業社製「TTO−V4」:Al(OH)3、ステアリン酸処理品)100部と、
シリコーンとして一般式(5)で示されるアミノ変性シリコーン(信越化学工業社製「KF−867S」)30部を用いた以外は、実施例1と同様にして、塊状の混練物Gを得た。
続いて、デカメチルシクロペンタシロキサン120部に、混練物G130部を、高速ディスパーを用いて分散した後にガラス瓶に仕込み、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーで更に2時間分散し、顔料分散体Gを得た。
【0070】
(実施例8)
無機顔料として微粒子酸化チタン(平均一次粒子径:約10nm、テイカ社製「MTY−02」:アルミナ、シリカ、メチルハイドロジェンポリシロキサン処理品)100部と、シリコーンとして一般式(5)で示されるアミノ変性シリコーン(信越化学工業社製「KF−867S」)35部を用いた以外は、実施例1と同様にして、塊状の混練物Hを得た。
続いて、デカメチルシクロペンタシロキサン115部に、混練物H135部を、高速ディスパーを用いて分散した後にガラス瓶に仕込み、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーで更に2時間分散し、顔料分散体Hを得た。
【0071】
(実施例9)
シリコーンとして一般式(5)で示されるカルボキシル変性シリコーン(信越化学工業社製「X−22−3701E」)35部を用いた以外は、実施例8と同様にして、塊状の混練物Iを得た。
続いて、デカメチルシクロペンタシロキサン198部に、混練物 I 135部を、高速ディスパーを用いて分散した後にガラス瓶に仕込み、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーで更に2時間分散し、顔料分散体 I を得た。
【0072】
(実施例10)
シリコーンとしてリン酸変性シリコーン(樹脂A)35部を用いた以外は、実施例8と同様にして、顔料分散体Jを得た。
【0073】
(実施例11)
シリコーンとしてシリコーン末端にヒドロキシル基を有するヒドロキシル変性シリコーン(チッソ社製「FM−0425」)35部を用いた以外は、実施例8と同様にして、顔料分散体Kを得た。
【0074】
(比較例1)
無機顔料として微粒子酸化亜鉛(平均一次粒子径:約20nm、テイカ社製「MZ−505S」:メチルハイドロジェンポリシロキサン処理品)100部と、シリコーンとして一般式(5)で示されるアミノ変性シリコーン(信越化学工業社製「KF−867S」)25部および、溶剤としてデカメチルシクロペンタシロキサン125部をガラス瓶に仕込み、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーで4時間分散し、顔料分散体Lを得た。
【0075】
(比較例2)
無機顔料として微粒子酸化亜鉛(平均一次粒子径:約20nm、テイカ社製「MZ−505S」:メチルハイドロジェンポリシロキサン処理品)100部と、シリコーンとして一般式(5)で示されるアミノ変性シリコーン(信越化学工業社製「KF−867S」)25部およびデカメチルシクロペンタシロキサン125部を混合した後、70℃に加熱した3本ロールで混練処理し、ペースト状の混練物Nを得た。混練物Mの不揮発分は、55.0%であった。続いて、混練物M227.3部およびデカメチルシクロペンタシロキサン22.7部をガラス瓶に仕込み、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーで更に2時間分散し、顔料分散体Mを得た。
【0076】
(比較例3)
無機顔料として微粒子酸化亜鉛(平均一次粒子径:約20nm、テイカ社製「MZ−505S」:メチルハイドロジェンポリシロキサン処理品)100部と、シリコーンとして一般式(5)で示されるカルボキシル変性シリコーン(信越化学工業社製「X−22−3701E」)25部および、溶剤としてデカメチルシクロペンタシロキサン125部を混合した後、70℃に加熱した3本ロールで混練処理し、ペースト状の混練物Nを得た。混練物Nの不揮発分は、54.3%であった。続いて、混練物O 230.2部およびデカメチルシクロペンタシロキサン102.8部をガラス瓶に仕込み、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーで更に2時間分散し、顔料分散体Nを得た。
【0077】
(比較例4)
無機顔料として微粒子酸化亜鉛(平均一次粒子径:約20nm、テイカ社製「MZ−505S」:メチルハイドロジェンポリシロキサン処理品)100部と、シリコーンとしてリン酸変性シリコーン(樹脂A)25部および、溶剤としてデカメチルシクロペンタシロキサン125部を混合した後、70℃に加熱した3本ロールで混練処理し、ペースト状の混練物Pを得た。混練物Oの不揮発分は、55.7%であった。続いて、混練物O 22
4.4部およびデカメチルシクロペンタシロキサン25.6部をガラス瓶に仕込み、ジル
コニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーで更に2時間分散し、顔料分散体Oを得た。
【0078】
(比較例5)
無機顔料として微粒子酸化亜鉛(平均一次粒子径:約20nm、テイカ社製「MZ−505S」:メチルハイドロジェンポリシロキサン処理品)100部と、シリコーンとしてシリコーン末端にヒドロキシル基を有するヒドロキシル変性シリコーン(チッソ社製「FM−0425」)25部および、溶剤としてデカメチルシクロペンタシロキサン125部を混合した後、70℃に加熱した3本ロールで混練処理し、ペースト状の混練物Qを得た。混練物Pの不揮発分は、56.8%であった。続いて、混練物P220.1部および
デカメチルシクロペンタシロキサン29.9部をガラス瓶に仕込み、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーで更に2時間分散し、顔料分散体Pを得た。
【0079】
(比較例6)
無機顔料として微粒子酸化チタン(平均一次粒子径:約15nm、テイカ社製「MTY−02」:アルミナ、シリカ、メチルハイドロジェンポリシロキサン処理品)100部と、シリコーンとして一般式(5)で示されるアミノ変性シリコーン(信越化学工業社製「KF−867S」)35部および、溶剤としてデカメチルシクロペンタシロキサン115部を混合した後、70℃に加熱した3本ロールで混練処理し、ペースト状の混練物Rを得た。混練物Qの不揮発分は、60.1%であった。続いて、混練物Q 224.6部およ
びデカメチルシクロペンタシロキサン25.4部をガラス瓶に仕込み、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーで更に2時間分散し、顔料分散体Qを得た。
【0080】
実施例1〜11および比較例1〜6で得られた顔料分散体の初期分散粒度(D50、D99)、および当該顔料分散体を50℃で10日の促進経時試験にかけたときの分散粒度(D50、D99)を測定した。また、 厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに、バーコーターを用いて、実施例1〜11および比較例1〜6で得られた顔料分散体を塗布し、熱風オーブンで加熱乾燥することより乾燥膜厚が3μmの塗膜を形成し、塗膜のヘイズを測定した。結果を表1に示す。尚、表中のメチコンとは、メチルハイドロジェンポリシロキサンを示す。また、表中のヘイズの値は、基材であるPETフィルムのヘイズを差し引いた値である。
【0081】
【表1】

【0082】
<化粧料の調整>
実施例1〜11および比較例1〜7で得られた顔料分散体A〜Rを、それぞれ表2に示した組成で配合して、日焼け止め化粧料を得た。尚、表中の数字は重量部を示す。
【0083】
【表2】

【0084】
成分1)〜3)を混合したものに、予め混合した成分4)〜6)の混合物を、ホモジナイザーで攪拌しながら徐々に添加して日焼け止め化粧料を調整した。
<化粧料の評価>
20〜50歳代の女性10名に実施例12〜22および比較例8〜14で調整した日焼け止め化粧料を使用してもらい、塗布時の白浮きの程度(透明性)および肌上での伸びの良し悪しを、相互に評価してもらった。白浮き、伸びの評価は、それぞれ5段階(1〜5)評価で行い、数値が大きい程状態が良好であることを意味する。以上の評価結果を下表3に示す。なお、表3中の値は、10人の評価の平均値である。
【0085】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の方法により製造された顔料分散体は、無機顔料の分散性に優れる為、化粧料、およびシリコーンゴム等のシリコーン系材料での使用が可能である。
本発明の方法により、無機顔料をパラフィンオイル系やシリコーンオイル系に高度に分散できる為、上記の用途において、色彩だけでなく紫外線吸収等の光学特性など、無機顔料が有する性能を効果的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明に係る連続混練機の一実施形態を示す側面視の断面図である。
【図2】図1に示す連続混練機に適用される固定円盤および回転円盤の一実施形態を示す正面図または背面図であり、(a)はキャビティー扇型固定円盤、(b)はキャビティー扇型回転円盤、(c)はキャビティー菊型固定円盤、(d)はキャビティー菊型回転円盤、(e)はキャビティー臼型固定円盤、(f)はキャビティー臼型回転円盤をそれぞれ示している。
【符号の説明】
【0088】
10 連続混練機 1 フイード部
11 ケーシング 111 原料受入口
12 スパイラルロッド 121 駆動軸
122 スパイラルフィン 2 混練部
21 固定円盤
21a キャビティー扇型固定円盤
21c キャビティー菊型固定円盤
21e キャビティー臼型固定円盤
211 遊嵌孔 212 キャビティー(粉砕空間)
22 混練シリンダ 23 回転円盤
23b キャビティー扇型回転円盤
23d キャビティー菊型回転円盤
23f キャビティー臼型回転円盤
231 外嵌孔 232 キャビティー(粉砕空間)
3 排出部 4 定量フィーダー部
41 原料ホッパー 42 スパイラルフィーダ
43 連絡筒体 44 介設筒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機顔料と液状のシリコーンとを含む混合物を、円筒状の混練シリンダ内に設けた環状の固定円盤と、前記円筒状の混練シリンダの軸心回りを回転する駆動軸と一体回転し、前記固定円盤と同心の回転円盤との間隙部分に形成された粉砕空間を有する連続混練機にて混練処理することを特徴とする顔料分散体の製造方法。
【請求項2】
揮発性溶剤の存在下に混練を行う請求項1記載の顔料分散体の製造方法。
【請求項3】
顔料分散体が、混練処理して得られた混練物を溶剤に分散したものである請求項1又は2記載の顔料分散体の製造方法。
【請求項4】
分散処理がメディア型分散機を使用する請求項3記載の顔料分散体の製造方法。
【請求項5】
混練処理後の無機顔料の平均一次粒子径が5〜100nmであることを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載の顔料分散体の製造方法。
【請求項6】
無機顔料が、酸化亜鉛および/または酸化チタンである請求項1ないし5いずれか記載の顔料分散体の製造方法。
【請求項7】
シリコーンが官能性置換基を有するシリコーンであることを特徴とする請求項1ないし6記載の顔料分散体の製造方法。
【請求項8】
官能性置換基を有するシリコーンが、アミノ変性シリコーン、ヒドロキシル変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーンおよびリン酸変性シリコーンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1ないし7いずれか記載の顔料分散体の製造方法。






























【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−291302(P2007−291302A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125750(P2006−125750)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】