説明

顔認識装置及び顔器官の特徴点特定方法

【課題】顔を構成する器官の特徴点を高精度に特定する顔認識装置を得る。
【解決手段】画像内から検出された顔器官に対応する複数の特徴点候補を配置する特徴点候補配置部2と、二次元の特徴点候補の配置が三次元の基準点配置に一致するようにして、二次元の顔画像を三次元の顔画像に正規化する三次元正規化部3と、正規化された顔画像と、複数の顔画像から予め作成された基準顔画像との類似度を測定する類似度測定部4と、前回探索時の類似度と今回測定類似度の変化量を算出する変化量算出部5と、類似度又は/及び変化量に基づき、探索終了又は探索継続を判定する比較部(検索終了判定部)6と、探索終了判定時の特徴点候補を探索特徴点として確定する収束判定部7と、前記検索終了判定部における探索継続判定時に、前記類似度の変化量に基づき、前記特徴点候補の配置を変化させる特徴点候補補正部8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像画像から正面の顔画像を自動的に認識する装置に関し、特に、瞳・鼻孔・口の端点等、顔を構成する器官の特徴点を精度良く特定することで顔を認識する装置及び顔を構成する器官の特徴点の特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、撮影された画像から顔を自動的に認識し、予め登録されている顔と同一人物であるか否かを比較して、本人認証を行う装置がある。また、被写体の表情を認識して、笑顔の時にカメラのシャッターを切る装置がある。
前者の装置では個人を決定付ける顔器官から特徴量を抽出するために、また後者の装置では口角が上がった等の顔の内部状態の変化を識別するために、まず瞳・鼻孔・口の端点等の顔を構成する器官の特徴点を特定する処理が行われる。
【0003】
例えば、顔を構成する器官の特徴点を特定する処理として代表的な方法としては、下記の特許文献1に記載された形状認識装置における特徴点特定方法が挙げられる。
特許文献1の形状認識装置によれば、分離度フィルタにより円形領域を特徴点候補として抽出する。分離度フィルタは、図6(a)に示すように二つの円形領域から成り、下記の数1によって算出される分離度S(0.0<S≦1.0)を出力する。
【0004】
【数1】

【0005】
ここで、Nは領域内の全画素数、n1、n2は領域1および領域2の画素数、Pkは位置kにおける輝度、Pmは領域全体での輝度平均値、P1、P2は領域1及び領域2における輝度の平均値を示す。
【0006】
特許文献1の顔を構成する器官の特徴点特定方法では、顔領域内の各画素に対して、フィルタの位置と半径を変化させながら分離度を算出し、分離度の局所最大点を特徴点の候補とする。抽出された特徴点の候補は、例えば図6(b)における複数の丸印箇所となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−73544
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した特許文献1に記載の特徴点特定方法によれば、顔を構成する器官の特徴点の候補を抽出できるものの、図6(b)に示すように、目頭や目尻、前髪により輝度差が生じる位置で誤った点が特徴点の候補として抽出される可能性があった。
したがって、抽出された候補点の中から真の特徴点を特定するためには、さらに目鼻パターンとの類似性を検証する必要がある。また、特徴点特定方法の検証精度の如何によっては、本来目では無いが、目に類似したパターンを有する眉等が、誤って目として特定される可能性もあった。更に、閉じた目を特徴点として特定できない現象が生じることがあった。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みて提案されたもので、顔を構成する器官の特徴点の候補を抽出する場合に、高精度に特徴点を特定することができる顔認識装置及び顔器官の特徴点特定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため本発明は、顔を構成する器官における瞳だけを特定するといったような単独の器官の特定ではなく、複数の器官の配置関係を考慮して複数の器官の特徴点を同時に特定する処理を行うものである。
【0011】
すなわち、本発明の顔認識装置(請求項1)は、
画像内から検出された顔器官に対応する複数の特徴点候補を配置する特徴点候補配置部と、
予め記憶した顔の三次元の形状モデルを使用し、二次元の特徴点候補の配置が三次元の基準点配置に一致するようにして、二次元の顔画像を三次元の顔画像に正規化する三次元正規化部と、
正規化された顔画像と、複数の顔画像から予め作成された基準顔画像との類似度を測定する類似度測定部と、
前回探索時の類似度と今回測定類似度の変化量を算出する変化量算出部と、
類似度又は/及び変化量に基づき、探索終了又は探索継続を判定する検索終了判定部と、
前記検索終了判定部における探索終了判定時の特徴点候補を探索特徴点として確定する収束判定部と、
前記検索終了判定部における探索継続判定時に、前記類似度の変化量に基づき、前記特徴点候補の配置を変化させる特徴点候補補正部と、
を具備することを特徴としている。
【0012】
本発明の顔器官の特徴点特定方法(請求項2)は、次の各手順を含むことを特徴としている。
第1の手順として、撮像された画像から二次元の顔画像を検出する。
第2の手順として、検出した顔画像に対して、予め設定された顔器官に対応する複数の特徴点候補の座標を初期配置として貼り付ける。
第3の手順として、予め記憶した顔の三次元形状モデルを使用し、前記特徴点候補が対応する三次元形状モデルの基準点配置に一致するようにして、二次元の顔画像を三次元正規化して正規化顔画像を得る。
第4の手順として、前記正規化顔画像と複数の顔画像から予め作成された基準顔画像とを比較することで前記正規化画像が正面向き画像であるかを判断するための類似度を算出する。
第5の手順として、前記類似度により前記正規化顔画像における特徴点候補の配置が真正であるか否かを判断する。
前記第5の手順における類似度により前記正規化顔画像における特徴点候補が真正でないと判断した場合に、前記特徴点候補の配置を補正し、補正された特徴点候補に基づいて前記第3〜第5の手順を繰り返して真正の特徴点候補の探索継続処理を行う。
【0013】
請求項3の顔器官の特徴点特定方法は、請求項2における第5の手順は、前記類似度を設定された閾値(閾値1)と比較することにより、特徴点配置の探索終了又は探索継続を判断することを特徴としている。
【0014】
請求項4の顔器官の特徴点特定方法は、請求項2における第5の手順は、算出された類似度に対する前回探索時からの変化量を算出し、この変化量を設定された閾値(閾値2)と比較することにより、特徴点配置の探索終了又は探索継続を判断することを特徴としている。
【0015】
請求項5の顔器官の特徴点特定方法は、請求項2において、前記探索継続処理を行う場合において、算出された類似度に対する前回探索時からの変化量を算出し、この変化量が設定された閾値(閾値3)より小さい場合に、特徴点配置についての探索位置の移動距離を小さくして探索することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、顔画像における各器官の特徴点を特定する場合において、瞳だけを特定するといったような単独の器官の特定ではなく、複数の器官の配置関係を考慮して特徴点を特定するため、例えば眉等を誤って目として特定するような従来の装置で起こりうる誤特定を排除し、高精度に各器官の特徴点を特定することができる。
また、複数の器官の特徴点を同時に特定するため、複数の特徴点を特定したい場合は処理効率を上げることができる。
更に、従来使用されていた分離度フィルタだけでは特定できなかった閉じた目についても、他の器官の特徴点との配置関係を考慮することで特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態の顔認識装置のブロック図である。
【図2】特徴点配置の初期配置を行う場合の基準点を示す基準顔画像説明図である。
【図3】本発明の特徴点特定方法における入力顔画像(二次元顔画像)と正規化顔画像と基準顔画像との関係を示す説明図である。
【図4】本発明の特徴点特定方法において特徴点配置を補正する場合の探索位置を説明するための説明図である。
【図5】本発明の顔認識装置において顔の器官の特徴点を特定する手順を示すフローチャート図である。
【図6】従来の特徴点特定方法を示すもので(a)は分離度フィルタの円形分離度マスクのモデル図、(b)は顔画像における特徴点候補の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図1〜図5を参照しながら説明する。
本発明の顔認識装置は、撮像した画像から顔画像(この顔画像は斜め方向からの撮像により得られた画像を含む)を検出し、この顔画像について顔器官の特徴点に基づく正規化処理を行って仮想正面顔の画像を得ることで顔認識を行う装置である。
この顔認識装置は、撮像した画像から顔画像を検出する顔検出部1と、検出された二次元顔画像に対して特徴点候補の位置を配置する特徴点候補配置部2と、二次元顔画像の特徴点候補配置から三次元正規化を行う三次元正規化部3と、三次元正規化された正規化顔画像と基準顔画像との類似度を測定する類似度測定部4と、類似度の変化量を計算する変化量算出部5と、類似度又は変化量を閾値と比較する比較部(検索終了判定部)6と、正規化顔画像を仮想正面顔画像と決定する収束判定部7と、特徴点候補の位置の補正を行う特徴点候補正部8と、顔認識装置において各処理を行うに際して基準となる基準顔画像を作成する基準顔画像作成部9を備えて構成されている。
【0019】
基準顔画像作成部9で生成される基準顔画像は、(1)特徴点候補配置部2において二次元顔画像に対して特徴点候補の初期配置を行うに際して、(2)三次元正規化部3において二次元顔画像を三次元正規化する変換に際して使用される三次元形状モデルの作成のために、(3)類似度測定部4において正規化顔画像の類似度を測定する場合の比較対象の基準として、それぞれ使用されるものである。
基準顔画像作成部9では、予め統計的に多数の人物から顔画像と三次元の形状情報を取得しておき、顔画像には輝度値が、三次元形状情報にはカメラから被写体方向への奥行の情報が画素値として格納されている。
【0020】
被写体の位置と大きさは画像ごとに異なるため、例えば、両目間の距離を一定にした大きさの正規化を行い、また両目位置が常に同じ位置で重なるように位置の正規化を行う。例えば単純に、取得した全顔画像の平均を基準顔画像とする。同様に、全三次元形状情報の平均を取って三次元形状モデルとする。
【0021】
得られた基準顔画像20(図2)から、特徴点候補となる器官の基準点A〜Nのx座標及びy座標を手動で抽出して記憶する。すなわち、検出された顔の幅fw及び高さfhをそれぞれ100画素とした場合に、各基準点位置の座標が(x, y)で記録されている(1≦x, y<100)。図2の基準顔画像20の例では、後述する特徴点の安定的な特定を目的として、各器官について全部で14点を基準点としている。更に、これらのx座標及びy座標に対応する位置の奥行の値を三次元形状情報から抽出し、合わせて基準点として記憶させておく。
【0022】
顔検出部1は、撮像画像を取り込み、図3に示すように、撮像画像内に含まれる顔領域を二次元顔画像30として検出し、その存在位置座標と大きさを出力する。撮像画像から顔画像を検出する手法は、公知の顔画像検出方法を使用する。例えば、下記の文献1に記載された顔画像検出方法のように、顔領域が長方形で規定される場合、顔領域の左上座標(fx,fy)を位置座標として、幅fw及び高さfhが大きさとして出力されることで行われる。
【0023】
撮像画像から顔領域を検出する具体的な方法は、次の手順で行われる。
先ず、予め多数の顔画像から共通する特徴をいくつか取り出し、その特徴群が含まれるか否かを判定する識別規則を作成しておく。
次に、撮像画像内にある与えられた矩形領域が作成された識別規則を満たすか否かで、顔であるか顔でないかを判定する。
また、撮像画像内の矩形領域の位置及び大きさを様々に変化させて、画像内に写っている顔領域を二次元顔画像として検出する。
文献1:P. Viola, M.J. Jones, "Robust real-time object detection," in: Second International Workshop on Theories of Visual Modeling, Learning, Computing, and Sampling, 2001.
【0024】
特徴点候補配置部2は、画像内から検出された二次元顔画像30に特徴点候補となる点を配置するもので、検出された顔画像に初めて特徴点候補を配置する場合は特徴点候補の初期配置となる。
顔画像における特徴点候補は、図2の基準顔画像内に示されるように、右眉内A(xrb, yrb)、左眉内B(xlb, ylb) 、右目尻C(xret, yret)、右瞳D(xrec, yrec)、右目頭E(xreh, yreh) 、左目尻F(xret, yret) 、左瞳G(xrec, yrec)、左目頭H(xreh, yreh)、鼻突I(xn, yn)、右鼻孔J(xrn, yrn)、左鼻孔K(xln, yln)、右口端L(xrm, yrm)、口中心M(xm, ym)、左口端N(xlm, ylm) の14点を使用する。また、特徴点候補に関しては、顔画像内に輪郭を追加して特徴点数を増加させたり、逆に特徴点数を減少させたりすることも可能である。
【0025】
顔画像に初めて特徴点候補を配置(初期位置の配置)する場合、基準顔画像作成部9で生成された基準顔画像(図2)内に示された14点の基準位置の座標を図3の二次元顔画像30に貼り付けることで行われる。図3の初期配置に対応する二次元顔画像30内に白十字で示された位置が、基準顔画像(図2)内の14点の基準位置A〜Nの座標となっている。
顔検出部1により検出された二次元顔画像30は、正面向き又は斜め向きであるかはこの時点では不明であるため、特徴点候補が初期配置された顔画像は、正面向きの顔に対しては特徴点候補の初期配置と実際の特徴点の配置との乖離が少なく、横向きの顔に対しては乖離が大きくなる。
【0026】
三次元正規化部3は、顔検出部1で検出された二次元顔画像30の三次元正規化を行って正規化顔画像40を得るものである。
二次元顔画像を三次元正規化する技術については、顔の三次元形状モデルを用い、二次元顔画像の特徴点配置が三次元形状モデルの基準点配置に一致するようにして二次元顔画像から正規化顔画像を得る公知の方法を使用する。
正規化顔画像を得る方法として、例えば、下記の文献2に記載された処理を用いると、顔向き等の変化がある二次元の顔画像であっても、三次元の形状モデル上では任意の視点方向から見た顔画像を再構成できるため、正面向きの顔画像を仮想的に再現することが可能となる。
【0027】
この場合、二次元顔画像から各器官の特徴点配置が正しく特定できた場合に限り、二次元顔画像の三次元正規化方法によって正面向きの正しい正規化顔画像が生成される。すなわち、特徴点配置が正しく特定できていない場合は、生成された正規化画像は正面を向いていないばかりか、顔を成していない可能性もある。
文献2:Tatsuo Kozakaya and Osamu Yamaguchi, "Face Recognition by Projection-based 3D Normalization and Shading Subspace Orthogonalization," Proc. of FGR'06, 2006.
【0028】
本発明の顔認識装置では、前記した二次元顔画像の三次元正規化方法を利用して、特徴点の配置の特定を行うものである。二次元顔画像上で配置された特徴点候補に対して、二次元顔画像の三次元正規化方法を適用し、生成された正規化画像が顔を成しているか、また正面向きかどうかを確認して、特徴点候補が真の特徴点を特定できているかどうかを判定する。また、正規化画像から真の特徴点が特定できていないと判定された場合には、特徴点候補の位置の補正を繰り返し行い、真の特徴点の特定を行う。
【0029】
二次元顔画像の三次元正規化方法を利用して、二次元顔画像から正規化顔画像を得る場合の具体的な処理の手順について、簡単に説明する。
先ず、二次元顔画像上に配置されたN個の特徴点候補を2×Nの特徴点行列Wと定義する。
【0030】
【数2】

【0031】
数2のWにおける(u´,v´)は、次数で与えられる。
【0032】
【数3】

【0033】
数3における(u,v)は、i番目の特徴点の座標を意味している。
数3における(uの平均,vの平均)は、全特徴点の重心を意味している。
数2におけるNは、前述の通り、N=14を仮定している。
次に、三次元形状モデル上の基準点を3×Nの基準点行列Sと定義する。
【0034】
【数4】

【0035】
数4のSにおける(x´,y´ ,z´)は、次式で与えられる。
【0036】
【数5】

【0037】
数5における(x,y,z)は、i番目の基準点の三次元座標を意味している。
数5における(xの平均,yの平均,zの平均)は、全基準点の重心を意味している。
このとき、特徴点行列Wと基準点行列Sとの間で、2×3の射影行列Mにより次の式が成り立つ。

W=MS
【0038】
さらに、射影行列MはSの疑似逆行列Sから次式により求まる。

M=WS
=W{S(SS−1
【0039】
三次元形状モデル上の任意の点(x,y,z)における画素値に対応する入力顔画像内の点(u,v)は、射影行列Mを用いることによって次式の通り求められる。
【0040】
【数6】

【0041】
上記の処理により、二次元顔画像の特徴点配置が三次元形状モデルの基準点配置に一致し、初期配置による正規化画像40が得られる(図3)。生成された正規化顔画像が顔を成しているか、また正面向きかどうかの確認は、基準顔画像作成部9で生成され記憶してある基準顔画像20との類似度から判定する。すなわち、三次元正規化された正規化顔画像40は、類似度測定部4において、基準顔画像20との類似度が測定される。
具体的には、二次元顔画像の三次元正規化方法により正規化された正規化顔画像Aと、あらかじめ作成した基準顔画像Bとの間で、次式で算出される類似度Simを測定する。

Sim=(A,B)/(|A||B|)
【0042】
ただし、(A,B)は正規化顔画像Aと基準顔画像Bをそれぞれベクトルと見た場合の内積を意味し、|A|および|B|はそれぞれ大きさを意味する。
また、変化量算出部5では、後述する特徴点候補の補正が行われた場合に、前回探索時の類似度と今回測定類似度との変化量ΔSimを算出する。
【0043】
類似度又は変化量を閾値と比較する比較部(検索終了判定部)6では、類似度Simの大小に基づき、又は、変化量ΔSimに基づき、特徴点候補の配置の信頼性を判定し、探索終了又は探索継続を判定する。
例えば、類似度Simが予め設定された閾値T1を上回る場合、現探索時の特徴点候補により基準顔画像に非常に類似した正規化顔画像が得られたと考えられるため、特徴点候補の探索を終了させる。
また、変化量ΔSimが予め設定された閾値T2を下回る場合、これ以降の探索によりさらに真の特徴点に近い特徴点の候補が無いと考えられるため、特徴点候補の探索を終了させる。
【0044】
比較部(検索終了判定部)6で特徴点候補の探索終了が判定されると、収束判定部7において、そのときの特徴点候補が探索されるべき特徴点として確定し、正規化顔画像を仮想正面顔画像と決定する処理が行われる。
【0045】
比較部(検索終了判定部)6で特徴点候補の探索継続が判定されると、特徴点候補正部8において特徴点候補の位置の補正が行われ、特徴点候補配置部2において、画像内から検出された二次元顔画像に対して補正された特徴点候補となる点の再配置が行われる。また、特徴点候補正部8における特徴点候補の位置の補正は、前回探索と現探索での類似度の変化量ΔSimに基づき、次探索の特徴点候補の配置についての移動距離が変更されるようにしている。
【0046】
すなわち、図4の中心画素(斜線部分)が特徴点候補の一つである場合、類似度の変化量ΔSimが閾値T3以上である場合は、今後の探索でも大きな変化が見られる可能性が高いため、次探索する特徴点候補の位置を画素1とする(特徴点候補の探索位置を大きく変化させる)。
逆に、類似度の変化量ΔSimが閾値T3未満である場合は、今後の探索でも大きな変化が見られない可能性が高いため、次探索する特徴点候補の位置を画素21とする(特徴点候補の探索位置を小さく変化させる)。
1回の特徴点候補の補正処理においては、類似度の変化量ΔSimが閾値T3以上である場合は、図4の画素1〜画素16で類似度が一番大きい画素位置を新たな特徴点候補の配置とする処理が行われ、類似度の変化量ΔSimが閾値T3未満である場合は、図4の画素21〜画素28で類似度が一番大きい画素位置を新たな特徴点候補の配置とする処理が行われる。
【0047】
特徴点候補正部8において特徴点候補の位置の補正を行う場合、効率的に探索を行うため、先ず、特徴点候補となる基準点A〜Nの内の一つに限定し、前述した方法で位置を移動させて収束判定基準を満たすまで探索を繰り返す。
次に、別の基準点に限定し、位置を移動させて前述の収束判定基準を満たすまで探索を繰り返す。以降、さらに別の基準点に対して同様の探索を行い、全ての基準点に対する探索が収束するまで続ける(Sequential Forward 探索)。
【0048】
続いて、図1の顔画像認識装置を使用して顔器官の特徴点を特定する方法の手順について、図3及び図5のフローチャート図を参照しながら説明する。
二次元の人物画像を撮像し(ステップ51)、撮像された画像から二次元顔画像30を検出する(ステップ52)。
【0049】
検出した二次元顔画像30に対して、基準顔画像20に予め設定された顔器官に対応する複数の特徴点候補となる基準点A〜Nの14点の座標を初期配置として貼り付ける(ステップ53)。
【0050】
予め記憶した顔の三次元形状モデルを使用し、前記特徴点候補が対応する三次元形状モデルの基準点配置に一致するようにして、二次元の顔画像を三次元正規化して正規化顔画像40を得る(ステップ54)。
【0051】
正規化顔画像40と基準顔画像20とを比較し(ステップ55)、前記正規化画像40が正面向き画像であるかを判断するための類似度Simを算出し(ステップ56)、算出された類似度に対する前回探索時からの類似度の変化量ΔSimを算出する(ステップ57)。
【0052】
次に、算出された類似度について、予め設定された閾値T1と比較することにより正規化顔画像40における特徴点候補の配置が真正であるか否かを判断する(ステップ58)。
類似度により正規化顔画像40における特徴点候補が真正であると判断した場合(正規化顔画像の類似度が閾値T1より高い場合)には、収束判定基準を満たす画像として判断し、仮想正面顔画像として決定する(ステップ59)。
【0053】
ステップ58における類似度により正規化顔画像40における特徴点候補が真正でないと判断した場合には、類似度の変化量ΔSimを閾値T3と比較し、類似度の変化量ΔSimが閾値T3以上である場合は、基準点A〜Nのいずれかの基準点に対応する特徴点候補について、その周辺画素である図4の画素1〜画素16で類似度が一番大きい画素位置を新たな特徴点候補の配置とする処理が行われる(ステップ61)。
【0054】
類似度の変化量ΔSimが閾値T3未満である場合は、基準点A〜Nのいずれかの基準点に対応する特徴点候補について、その周辺画素である図4の画素21〜画素28で類似度が一番大きい画素位置を新たな特徴点候補の配置とする処理が行われる(ステップ62)。
【0055】
そして、補正された特徴点候補の座標を二次元顔画像30に貼り付ける処理(特徴点候補の再配置)が行われ(ステップ53)、この二次元顔画像30を三次元正規化して正規化顔画像が得られる(ステップ54)。
【0056】
ステップ53〜ステップ61(ステップ62)の手順を繰り返すことで、図3に示すように、探索10回目、探索50回目、探索100回目で特徴点候補の座標が補正された各二次元顔画像30を得て、これを三次元正規化することで正規化顔画像41,42,43を得る。例えば、探索100回目で特徴点候補の座標が補正された二次元顔画像30から基準顔画像20との類似度が大きい正規化顔画像43が得られた場合に、収束判定基準を満たす画像として判断し、仮想正面顔画像として決定する(ステップ59)。
【0057】
上記例では、ステップ58において、ステップ56で測定された類似度Simを設定された閾値T1と比較することにより、特徴点配置の探索終了又は探索継続を判断するようにしたが、ステップ57で算出された類似度の変化量ΔSimを設定された閾値T2と比較することにより、特徴点配置の探索終了又は探索継続を判断するようにしてもよい。
【0058】
上述した顔器官の特徴点特定方法によれば、顔画像における各器官の特徴点を特定する場合において、14点の特徴点候補を特徴点として特定するので、複数の器官の配置関係を考慮して特徴点が特定されるため、高精度に各器官の特徴点を特定することができる。
また、複数の器官の特徴点を同時に特定するため、複数の特徴点を特定したい場合は処理効率を上げることができる。
また、複数の器官の配置関係を考慮して特徴点が特定されるため、目が閉じている二次元顔画像であっても、他の器官の特徴点との配置関係を考慮することで瞳の位置を特定することができる。
【0059】
上述した顔器官の特徴点特定方法は、顔認識を利用しているシステムのほぼ全てに適用可能であるため、幅広い分野での利用が期待できる。例えば、出勤退勤の勤務管理システム、携帯電話の所有者認証装置、撮影した顔写真からの似顔絵作成装置、テレビ映像に登場する顔に基づいた出演者メタ情報付与装置、似ている有名人等の類似顔検索システムにおける顔認識に使用することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1…顔検出部、 2…特徴点候補配置部、 3…三次元正規化部、 4…類似度測定部、 5…変化量算出部、 6…比較部(検索終了判定部)、 7…収束判定部、 8…特徴点候補正部、 9…基準顔画像作成部、 20…基準顔画像、 30…二次元顔画像、 40…正規化顔画像。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像内から検出された顔器官に対応する複数の特徴点候補を配置する特徴点候補配置部と、
予め記憶した顔の三次元の形状モデルを使用し、二次元の特徴点候補の配置が三次元の基準点配置に一致するようにして、二次元の顔画像を三次元の顔画像に正規化する三次元正規化部と、
正規化された顔画像と、複数の顔画像から予め作成された基準顔画像との類似度を測定する類似度測定部と、
前回探索時の類似度と今回測定類似度の変化量を算出する変化量算出部と、
類似度又は/及び変化量に基づき、探索終了又は探索継続を判定する検索終了判定部と、
前記検索終了判定部における探索終了判定時の特徴点候補を探索特徴点として確定する収束判定部と、
前記検索終了判定部における探索継続判定時に、前記類似度の変化量に基づき、前記特徴点候補の配置を変化させる特徴点候補補正部と、
を具備することを特徴とする顔認識装置。
【請求項2】
撮像された画像から二次元の顔画像を検出する第1の手順と、
検出した顔画像に対して、予め設定された顔器官に対応する複数の特徴点候補の座標を初期配置として貼り付ける第2の手順と、
予め記憶した顔の三次元形状モデルを使用し、前記特徴点候補が対応する三次元形状モデルの基準点配置に一致するようにして、二次元の顔画像を三次元正規化して正規化顔画像を得る第3の手順と、
前記正規化顔画像と複数の顔画像から予め作成された基準顔画像とを比較することで前記正規化画像が正面向き画像であるかを判断するための類似度を算出する第4の手順と、
前記類似度により前記正規化顔画像における特徴点候補の配置が真正であるか否かを判断する第5の手順と、
前記第5の手順における類似度により前記正規化顔画像における特徴点候補が真正でないと判断した場合に、前記特徴点候補の配置を補正し、補正された特徴点候補に基づいて前記第3〜第5の手順を繰り返して真正の特徴点候補の探索継続処理を行う
ことを特徴とする顔器官の特徴点特定方法。
【請求項3】
前記第5の手順は、
前記類似度を設定された閾値と比較することにより、特徴点配置の探索終了又は探索継続を判断する請求項2に記載の顔器官の特徴点特定方法。
【請求項4】
前記第5の手順は、
算出された類似度に対する前回探索時からの変化量を算出し、この変化量を設定された閾値と比較することにより、特徴点配置の探索終了又は探索継続を判断する請求項2に記載の顔器官の特徴点特定方法。
【請求項5】
前記探索継続処理を行う場合において、
算出された類似度に対する前回探索時からの変化量を算出し、この変化量が設定された閾値より小さい場合に、特徴点配置についての探索位置の移動距離を小さくして探索する請求項2に記載の顔器官の特徴点特定方法。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−231354(P2010−231354A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76382(P2009−76382)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】