説明

顔認識装置及び顔認識方法

【課題】撮影して得られた画像から人物の顔等の被写体の所定領域を高い精度で認識することができる顔認識装置及び顔認識方法を提供する。
【解決手段】人物を撮影する撮影部101と、撮影された画像から人物の顔を検出する顔検出部102と、検出された顔内の特徴点位置を検出する特徴点位置検出部104と、検出された特徴点位置での特徴量を抽出する特徴量抽出部105と、検出された特徴点位置の間隔から撮影部101と顔との間の距離を推定する距離推定部106と、距離推定部106で推定された距離に応じて特徴量抽出部105で抽出された特徴量を更新する特徴量更新部107と、更新された特徴量をデータベース109に保持されている特徴量と比較し検索する検索部110と、を備え、検索部110での検索結果に基づき顔を認識する。これにより、撮影して得られた画像から人物の顔を高い精度で認識することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防犯や重要顧客の来客管理等のカメラシステムに用いられ、人物等の被写体を撮影して該被写体の認識を行う顔認識装置及び顔認識方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、連続した複数の顔画像を用いて顔認証することで個人を識別する技術として、例えば特許文献1〜3で明示されたものがある。まず特許文献1には、歩行者の顔面を安定して撮影できるカメラの設置及び撮影条件が明示されている。
【0003】
図25は、特許文献1に明示された歩行者観測装置の設置例を示す図である。同図は建物などの入り口を上から俯瞰(ふかん:高い所から見下ろすこと)した図である。人は入り口(左右両側の壁4001の間)に向かって(矢印4002で示す向きに)移動する。左右両側の壁4001を結ぶ入り口の通過ライン4003を跨ぐ位置に、幅A、高さBの必須観測領域4004を設定し、また必須観測領域4004の中央に通過ライン4003を設定している。通過ライン4003に対し、人の移動方向である矢印4002方向にカメラ4005の向き及び画角θが設定されている。またカメラ4005の焦点距離が同図に示すfからf+Dに設定されている。“カメラ設置位置”、“カメラの向き及び画角”、“カメラの焦点距離”の条件を設定することにより、カメラ4005は必須観測領域4004を撮影範囲内に収め、この撮影範囲内で焦点距離があった画像を撮影することができる。これにより、必須観測領域4004を通過する人物の顔を安定して撮影することが可能となる。なお、特許文献1には、同一人物に対し、複数のカメラにより撮影した顔向きが異なる複数枚の画像のそれぞれを顔認識することで、個人の識別精度を向上させるという記載がある。
【0004】
一方、特許文献2及び特許文献3には、同一人物に対し、複数のカメラにより撮影した顔向きの異なる複数枚の画像からアフィン変換やフィールドモーフィングにより人物の正面画像を合成し、その結果を用いて顔認証を行うことにより、個人識別を行う方法が明示されている。
【0005】
図26は、特許文献2に明示された顔特徴合成を説明するための図である。同図の(A)及び(B)は同一人物を異なるカメラから撮影した異なる顔向きの顔画像である。これらの(A)及び(B)の画像に対し、顔特徴点探索により同図中で×印で示す顔の特徴点を検出する。そして、検出した顔特徴点位置に基づき、アフィン変換により図26の(C)に示す正面画像を合成し、合成した正面画像を用いて顔認識を行うことにより、個人識別を行う。
【0006】
特許文献3では、アフィン変換ではなくフィールドモーフィングにより正面画像を合成し、合成した正面画像を用いて顔認識を行うことにより、個人識別を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−016573号公報
【特許文献2】特開2006−146323号公報
【特許文献3】特開2009−025874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来の顔認識技術には以下に示す課題がある。
特許文献1は、単に歩行者の顔面を安定して撮影できるカメラの設置及び撮影条件を明示しているにすぎず、明示された位置及び向きにカメラを設置できない場合や、明示された撮影条件では撮影できない場合があり、そのような場合、顔面を安定して撮影することができない。その結果、顔認識がうまく行かず個人識別の精度が低下してしまう。なお、同公報では、複数のカメラにより撮影した顔向きが異なる複数枚の画像からそれぞれ顔認識により個人識別し、その結果を用いて識別精度を向上させるとしているが、同結果をどのように用いて認識精度を向上されるかまでは明示されていない。
【0009】
特許文献2及び特許文献3では、検出した顔特徴点位置に基づきアフィン変換又はフィールドモーフィングにより正面画像を合成し、合成した正面画像を用いて顔認識を行うことにより個人識別を行っているが、顔の向きによっては顔特徴点を正確に検出することができない場合があり、そのような場合、正確な正面画像を得ることが難しく、特許文献1の場合と同様に個人識別の精度が低下してしまう。
【0010】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、精度の高い認識が可能な顔認識装置及び顔認識方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の顔認識装置は、被写体を撮影する撮影部と、前記撮影部での撮影結果としての画像から前記被写体の所定の領域を検出する領域検出部と、前記領域検出部で検出された前記所定の領域内の特徴量を抽出する特徴量抽出部と、前記撮影部と前記所定の領域との間の距離を推定する距離推定部と、前記特徴量抽出部で抽出された前記特徴量を前記距離推定部で推定された前記距離に応じて更新する特徴量更新部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、距離推定部が撮影部と被写体との間の距離を推定し、その距離に応じて、特徴量更新部が特徴量を更新するので、被写体の所定領域を高い精度で認識することができる。
【0013】
上記構成において、前記特徴量更新部で更新された前記特徴量を予め保持されている特徴量と比較し検索する検索部を備え、前記検索部での検索結果に基づき前記所定の領域を認識する。
【0014】
上記構成において、前記所定の領域内の特徴点位置を検出する特徴点位置検出部を備え、前記距離推定部は前記特徴点位置検出部で検出された前記特徴点位置の間隔から前記撮影部と前記所定の領域との間の距離を推定する。
【0015】
本発明の顔認識装置は、人物を撮影する撮影部と、前記撮影部での撮影結果としての画像から前記人物の顔を検出する顔検出部と、前記顔検出部で検出された前記顔内の特徴点位置を検出する特徴点位置検出部と、前記特徴点位置検出部で検出された前記特徴点位置での特徴量を抽出する特徴量抽出部と、前記撮影部と前記顔との間の距離を推定する距離推定部と、前記特徴量抽出部で抽出された前記特徴量を前記距離推定部で推定された前記距離に応じて更新する特徴量更新部と、前記特徴量更新部で更新された前記特徴量を予め保持されている特徴量と比較し検索する検索部と、を備え、前記検索部での検索結果に基づき前記顔を認識する。
【0016】
上記構成によれば、距離推定部が撮影部と人物の顔との間の距離を推定し、その距離に応じて、特徴量更新部が顔内の特徴点位置での特徴量を更新し、検索部が特徴量更新部で更新された特徴量と予め保持されている特徴量を比較検索するので、人物の顔を高い精度で認識することができる。
【0017】
上記構成において、前記距離推定部は前記特徴点位置検出部で検出された前記特徴点位置の間隔から前記撮影部と前記顔との間の距離を推定する。
【0018】
本発明の顔認識装置は、人物を撮影する撮影部と、前記撮影部での撮影結果としての画像から前記人物の顔を検出する顔検出部と、前記顔検出部で検出された前記顔内の特徴点位置を検出する特徴点位置検出部と、前記特徴点位置検出部で検出された前記特徴点位置での特徴量を抽出する特徴量抽出部と、前記特徴点位置検出部で検出された前記特徴点位置の間隔から前記撮影部と前記顔との間の距離を推定する距離推定部と、前記顔の向きを推定する角度推定部と、前記特徴量抽出部で抽出された前記特徴量を前記距離推定部で推定された前記距離及び前記角度推定部で推定された前記顔の向きに応じて更新する特徴量更新部と、前記特徴量更新部で更新された前記特徴量を予め保持されている特徴量と比較し検索する検索部と、を備え、前記検索部での検索結果に基づき前記顔を認識する。
【0019】
上記構成によれば、距離推定部が撮影部と人物の顔との間の距離を推定し、また角度推定部が顔の向きを推定し、推定された距離と顔の向きに応じて、特徴量更新部が顔内の特徴点位置での特徴量を更新し、検索部が特徴量更新部で更新された特徴量と予め保持されている特徴量を比較検索するので、人物の顔を高い精度で認識することができる。特に、顔の向きを考慮するので、更に高い精度で認識することができる。
【0020】
上記構成において、前記角度推定部は前記特徴点位置検出部で検出された前記特徴点位置の位置関係から前記顔の向きを推定する。
【0021】
本発明の顔認識装置は、人物を撮影する撮影部と、前記撮影部での撮影結果としての画像から前記人物の顔を検出する顔検出部と、前記顔検出部で検出された前記顔内の特徴点位置を検出する特徴点位置検出部と、前記特徴点位置検出部で検出された前記特徴点位置での特徴量を抽出する特徴量抽出部と、前記特徴点位置検出部で検出された前記特徴点位置の間隔から前記撮影部と前記顔との間の距離を推定する距離推定部と、前記特徴点位置検出部で検出された前記特徴点位置での明度を検出する明度検出部と、前記特徴量抽出部で抽出された前記特徴量を前記距離推定部で推定された前記距離及び前記明度検出部で検出された前記特徴点位置での明度に応じて更新する特徴量更新部と、前記特徴量更新部で更新された前記特徴量を予め保持されている特徴量と比較し検索する検索部と、を備え、前記検索部での検索結果に基づき前記顔を認識する。
【0022】
上記構成によれば、距離推定部が撮影部と人物の顔との間の距離を推定し、また明度検出部が顔内の特徴点位置での明度を検出し、推定された距離と検出された明度に応じて、特徴量更新部が顔内の特徴点位置での特徴量を更新し、検索部が特徴量更新部で更新された特徴量と予め保持されている特徴量を比較検索するので、人物の顔を高い精度で認識することができる。特に、特徴点位置での明度を考慮するので、更に高い精度で認識することができる。
【0023】
本発明の顔認識方法は、被写体を撮影する撮影ステップと、前記撮影ステップでの撮影結果としての画像から前記被写体の所定の領域を検出する領域検出ステップと、前記領域検出ステップで検出された前記所定の領域内の特徴量を抽出する特徴量抽出ステップと、前記撮影ステップと前記所定の領域との間の距離を推定する距離推定ステップと、前記特徴量抽出ステップで抽出された前記特徴量を前記距離推定ステップで推定された前記距離に応じて更新する特徴量更新ステップと、を備えることを特徴とする。
【0024】
上記方法によれば、距離推定ステップで撮影部と被写体との間の距離を推定し、その距離に応じて、特徴量更新ステップで特徴量を更新するので、被写体の所定領域を高い精度で認識することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、撮影して得られた画像から人物の顔等の被写体の所定領域を高い精度で認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態1に係る顔認識装置の概略構成を示すブロック図
【図2】図1の顔認識装置で撮影される人物と撮影部の関係を示す図
【図3】図1の顔認識装置において、時刻T1、時刻T2、時刻Tで撮影された画像を示す図
【図4】図1の顔認識装置が取得する顔の特徴点の一例を示す図
【図5】図1の顔認識装置の特徴量更新部が更新する特徴量の一例を示す図
【図6】図1の顔認識装置で撮影された時刻T,T,Tの撮影画像、特徴量及び評価空間上の範囲の一例を示す図
【図7】図6の(D)に示す時刻T,T,Tでの検索結果範囲を示すイメージに対し、データベースに保持される各個人の特徴量の位置をプロットした図
【図8】図1の顔認識装置のメイン処理を説明するためのフローチャート
【図9】図8のメイン処理におけるタスクAの処理を説明するためのフローチャート
【図10】本発明の実施の形態2に係る顔認識装置の概略構成を示すブロック図
【図11】図10の顔認識装置で撮影される人物と撮影部の関係を示す図
【図12】図10の顔認識装置において、時刻T1、時刻T2、時刻Tで撮影された画像を示す図
【図13】斜め左上を向いた顔を示す図
【図14】図10の顔認識装置の特徴量更新部が更新する特徴量の一例を示す図
【図15】図10の顔認識装置において、時刻T1、時刻T2、時刻Tの撮影画像、特徴量及び評価空間上の範囲の一例を示す図
【図16】図10の顔認識装置のメイン処理を説明するためのフローチャート
【図17】図16のメイン処理におけるタスクBの処理を説明するためのフローチャート
【図18】本発明の実施の形態3に係る顔認識装置の概略構成を示すブロック図
【図19】図18の顔認識装置で撮影される人物と撮影部の関係を示す図
【図20】図18の顔認識装置において、時刻T、時刻T、時刻Tで撮影された画像を示す図
【図21】図18の顔認識装置の特徴量更新部が更新する特徴量の一例を示す図
【図22】図18の顔認識装置において、時刻T、時刻T、時刻Tの撮影画像、特徴量及び評価空間上の範囲の一例を示す図
【図23】図18の顔認識装置のメイン処理を説明するためのフローチャート
【図24】図23のメイン処理におけるタスクCの処理を説明するためのフローチャート
【図25】従来の歩行者観測装置の設置例を示す図
【図26】従来の顔特徴合成を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る顔認識装置の概略構成を示すブロック図である。同図において、本実施の形態の顔認識装置100は、撮影部101と、顔検出部102と、追跡部103と、特徴点位置検出部104と、特徴量抽出部105と、距離推定部106と、特徴量更新部107と、記憶部108と、データベース109と、検索部110と、表示通報部111とを備える。
【0029】
撮影部101は、人物等の被写体を撮影する。顔検出部102は、撮影部101での撮影結果としての画像から人物の顔の領域を特定する。追跡部103は、同一人物の顔画像に対して同一のID番号を付与する。追跡部103は、連続して撮影される画像の顔領域を追跡することによりこの機能を実現する。特徴点位置検出部104は、顔の目や鼻や口などの特徴点位置を検出する。特徴量抽出部105は、特徴点位置検出部104で検出された各特徴点位置での特徴量を抽出する。距離推定部106は、特徴点位置検出部104で検出された顔の各特徴点位置同士の距離関係から撮影部101と撮影された顔との間の距離を推定する。特徴量更新部107は、距離推定部106で推定された距離に応じて特徴量抽出部105で抽出された特徴量を更新する。記憶部108は、追跡部103で同一ID番号が付与された各同一人物の顔画像において、特徴量抽出部105で抽出された特徴量を一時保持すると共に、特徴量の一部を更新する。データベース(DB)109は、顔認識に用いる各個人の顔特徴量を保持する。検索部110は、特徴量更新部107で更新された顔画像の顔特徴量をデータベース109で保持されている各個人の顔特徴量と比較し、検索して個人を特定する。表示通報部111は、検索部110での検索結果を表示し、利用者にその結果を通報する。検索結果の表示としては、例えば“顔画像のみ”、“顔画像とID”又は“顔画像とIDと警報”が挙げられる。
【0030】
図2は、実施の形態1の顔認識装置100で撮影される人物と撮影部101の関係を示す図である。人物201は撮影部101が設置されている方向に移動している。すなわち、撮影部101に向って同図左から右に移動している。撮影部101は、時刻T、時刻T、時刻Tの各時刻で人物201を撮影している。
【0031】
図3は、実施の形態1の顔認識装置100において、各時刻T、時刻T、時刻Tで撮影された画像を示す図である。同図において、(A1)は時刻Tにおける撮影画像、(B1)は時刻Tにおける撮影画像、(C1)は時刻Tにおける撮影画像である。撮影部101に近づくに従って撮影画像が大きくなり、且つ俯角が存在することから顔が徐々に下向きになる。
【0032】
次に、実施の形態1の顔認識装置100の動作を説明する。
撮影部101は、図2に示すように、時刻T、時刻T、時刻Tで人物201を撮影する。図3の(A1)は時刻Tで撮影された画像、図3の(B1)は時刻Tで撮影された画像、図3の(C1)は時刻Tで撮影された画像である。
【0033】
顔検出部102は、撮影部101が撮影した画像から顔の領域を検出する。顔検出分野では、AdaBoost学習法をベースとした検出方式により画像内から顔の領域を検出できることが報告されている(例えば非特許文献1:Paul Viola、Michael Jones、「Rapid Object Detection Using a Boosted Cascade of Simple Features」、IEEE Computer Society Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR)、2001年12月、ISSN:1063-6919、Vol.1、p.511−518)。顔検出部102はこの検出方式を用いて、撮影部101が撮影した画像内から顔領域を検出し、顔領域の画像を出力する。なお、この検出方式は一例であり、本発明で用いる顔検出の方式は上記検出方式に限るものではない。画像内から顔領域を特定することができる検出方式であればどのようなものでも良い。例えば、パターンマッチングなどでも顔を検出することは可能である。
【0034】
追跡部103は、顔検出部102が検出した顔領域の時間的な位置変化量をもとに各顔領域の顔が同一人物であるかどうかを判定する。この場合、撮影される人物が移動していたとしても撮影部101の撮影間隔が人物の移動量に対して十分に短ければ、各撮影画像上での顔領域の位置変化量は少ない。このため、複数の人物が撮影されたとしても各時刻Tの撮影画像上でお互い位置変化量が少ない顔領域同士は同一人物であると判定できる。追跡部103はこの追跡方法により、顔検出部102が出力する顔領域画像内の顔が同一人物であるかどうかを判定する。なお、この追跡方法は一例であり、本発明で用いる追跡方法はこの追跡方法に限るものではない。顔領域の顔が同一人物であると推定することができる方法であればどのようなものでも良い。また、この追跡方法に加え、顔領域下部に撮影される服の色や模様の一致具合、顔領域の時間的な位置変化向きなどの情報により、顔領域の顔が同一人物であると推定することも可能である。
【0035】
以上の追跡部103までの動作により、各時刻Tの撮影画像上の顔領域画像は同一人物毎に分類される。本実施の形態の動作では、分類された各人物の顔領域画像群のそれぞれに対して同一人物毎に分類される。
【0036】
特徴点位置検出部104は、各時刻Tの顔領域画像内の顔の特徴点位置を検出する。顔特徴点位置検出分野では、Adaptive Shape Model方式により顔画像から顔の特徴点を検出できることが報告されている(例えば非特許文献2:Stephen Milborrow、Fred Nicolls、「Locating Facial Features with an Extended Active Shape Model」、Lecture Notes Computer Science ;Vol.5303、Proceedings of the 10th European Conference on Computer Vision :PartIV)。
【0037】
図4は、顔の特徴点の一例を示す図である。同図において、401は顔、402は顔の特徴点である。顔の特徴点とは、目中心(または黒目)、目頭、目尻、鼻翼、鼻筋の頭、口中心、口両端、こめかみや顎先などの顎のライン上の点など、眉、目、鼻、口、顎などの顔のパーツの位置や輪郭特徴を示す点位置である。特徴点位置検出部104は上記検出方式を用いて、各時刻Tの顔領域画像内から図4に例を示す顔特徴点を検出し、同特徴点位置を出力する。なお、上記検出方式は一例であり、本発明で用いる顔特徴点位置検出の方式は上記検出方式に限るものではない。顔領域画像から顔の特徴点位置を特定することができる検出方式であれば、どのようなものでも良い。例えばパターンマッチングなどであっても顔の特徴点位置を検出することは可能である。
【0038】
特徴量抽出部105は、特徴点位置検出部104が検出した顔の各特徴点位置の特徴量を算出する。顔認識分野では、Gabor Wavelet変換により算出した特徴量により、顔を高精度に認識できることが報告されている(例えば非特許文献3:E. Elagin、J.Steffens、H.Neven、「Automatic Pose Estimation System for Human Faces Based on Bunch Graph Matching Technology」、Proceedings of the International Conference on Automatic Face and Gesture Recognition‘98. pp136-141、1998)。
【0039】
Gabor Waveletフィルタ係数を(式1)に示す(x、yは画素の水平及び垂直位置、kは周波数、θは方位、σはガウス関数の標準偏差であり2πである)。周波数k及び方位θを変化させ、各画素位置x、yの画素値に式により求められる係数を畳み込み演算することにより、Gabor Wavelet変換を行う。
【0040】
【数1】

【0041】
特徴量抽出部105は、上記Gabor Wavelet変換により、各周波数k成分及び各方位θに対してそれぞれ、特徴点位置検出部104が検出した顔の各特徴点位置の特徴量を算出する。なお、上記Gabor Wavelet変換による特徴量抽出は一例であり、本発明で用いる特徴量抽出の方式は上記方式に限るものではない。顔の各特徴点位置に対し、各周波数成分の特徴量を抽出するものであれば良い。
【0042】
距離推定部106は、特徴点位置検出部104で検出された顔の特徴点位置をもとに、撮影部101と人物の顔との間の距離を推定する。撮影部101と人物の顔との間の距離が離れていればいるほど、図4に示す顔401における各特徴点位置402間の距離は小さくなる。このことを利用して、各特徴点位置間の距離から、撮影部101と人物の顔との間の距離を推定することができる。また、撮影部101から顔までの距離が離れていればいるほど、撮影される顔のサイズは小さくなる。このことを利用し、顔検出部102で検出される顔領域のサイズから、撮影部101と人物の顔との間の距離を推定することもできる。このような推定方法を用いて距離推定部106は各時刻Tの顔領域画像における撮影部101と人物の顔との間の距離を推定し、その結果を出力する。なお、これらの距離推定方法は一例であり、本発明で用いる距離推定の方法は、上記距離推定方法に限るものではない。撮影部101と人物の顔との間の距離を推定することができる方法であれば、どのようなものでも良く、特徴点位置の間隔を利用しないステレオカメラや超音波センサなどを利用して距離を推定しても良い。
【0043】
特徴量更新部107は、特徴量抽出部105で抽出された同一人物の顔に対する特徴量の一部を更新する。図5は、特徴量更新部107が更新する特徴量の一例を示す図である。同図の(A2)、(B2)、(C2)は図3に示す撮影部101が各時刻Tに撮影した画像(A1)、(B1)、(C1)のそれぞれ対応している。図5の(A2)に示す時刻T撮影画像では、撮影部101と人物の顔との間の距離が長く、顔画像のサイズが小さい。このような場合、特徴点位置の低周波成分の特徴量501のみを更新する。これは、サイズが小さい顔画像には特徴量の中周波数成分及び高周波成分が多く含まれておらず、同成分の特徴量の信頼性が低いためである。
【0044】
図5の(B2)に示す時刻T撮影画像では、撮影部101と人物の顔との間の距離が(A2)に比べて短くなり、顔画像のサイズが大きくなっている。このような場合、特徴点位置の中周波成分の特徴量502のみを更新する。これは、顔画像のサイズが大きくなったために画像に中周波数成分が含まれ、特徴量の中周波数成分の信頼性が高くなったためである。図5の(C2)に示す時刻T撮影画像では、撮影部101と人物の顔との間の距離が(B2)に比べて短くなり、顔画像のサイズは大きい。このような場合、特徴点位置の高周波成分の特徴量503のみを更新する。これは、顔画像のサイズが大きいため、画像に更に高周波成分が含まれ、特徴量の高周波数成分の信頼性が高くなったためである。以上のように、特徴量更新部107は、信頼性が高い周波数成分の特徴量のみを更新する。
【0045】
記憶部108は、各時刻Tの更新した特徴量を保持する。そして、特徴量更新部107が現時刻に更新した特徴量、及び記憶部108に保持する現時刻以前に更新した特徴量は検索部110に出力される。検索部110は、特徴量更新部107が更新出力する特徴量とデータベース109に保持される各個人の特徴量を比較検索する。比較検索時に用いる評価式を(式2)に示す(Fn,θは特徴量更新部107が出力するn番目の特徴点における周波数θの特徴量、fn,θはデータベース109に保持される当該個人のn番目の特徴点における周波数θの特徴量、Sは当該個人の評価スコアである)。
【0046】
【数2】

【0047】
但し、特徴量更新部107が更新出力する特徴量において、未更新の特徴量点の周波数成分に対する演算は、(式2)の計算から除外する(同成分に対する演算結果を、Σで示す総和演算の要素値として含まない)。検索部110は、データベース109に保持される各個人データに対して、(式2)に示す評価式で求められる評価スコアを算出し、予め定めた値以上の評価スコアが算出された個人を検索する。そして、検索結果は表示通報部111を通じてユーザに通知される。
【0048】
図6は、各時刻Tの撮影画像、特徴量及び評価空間上の範囲の一例を示す図である。同図における(A1)、(B1)、(C1)は、図3に示す撮影部101が各時刻Tに撮影した画像(A1)、(B1)、(C1)である。図6の(A3)、(B3)、(C3)に示す各時刻Tの特徴量は、特徴量更新部107により更新された特徴量である。更新された特徴量が斜線(一点鎖線)で示されている。図6の(D)は、(式2)に示す評価空間での各時刻Tでの検索結果範囲を2次元空間に投影した場合のイメージ図である。
【0049】
以上説明した特徴量更新部107までの動作によれば、図6の(A3)、(B3)、(C3)に示すように、時間経過と共に、各特徴点位置の低周波成分、中周波成分、高周波成分の特徴量が順次更新される。検索部110は、未更新の特徴量点の周波数成分に対する演算は、(式2)の計算から除外し、予め定めた値以上の評価スコアが算出された個人を検索結果とするので、図6の(D)に示すように、評価空間上における検索結果として出力される範囲は徐々に狭くなって行くことになる。
【0050】
図7は、図6の(D)に示す各時刻Tでの検索結果範囲を示すイメージに対し、データベース109に保持される各個人の特徴量の位置をプロットした図である。時刻T1では、時刻T1検索結果範囲内の7人が検索結果となる。時刻Tではこの7人に対してのみ(式2)に示す評価スコアを算出する。そして、時刻Tでは、時刻T検索結果範囲内の4人が検索結果となる。同様に、時刻Tではこの4人に対してのみ(式2)に示す評価スコアを算出する。そして、時刻Tでは、時刻T検索結果範囲内の1人が検索結果となる。以上のように、検索部110は絞り込み検索する。これにより、高速に検索処理を行うことができる。また、検索部110は、上記絞り込み検索により、検索結果の人数が予め定めた一定数以下であれば、検索処理を打ち切り、その検索結果を、表示通報部111を通じてユーザに通知する。これにより、早い段階で検索結果をユーザに提供することも可能になる。
【0051】
図8は、実施の形態1の顔認識装置100のメイン処理を説明するためのフローチャートである。同図において、まず撮影部101が人物を撮影し画像を取り込む(ステップS1)。そして、撮影部101で取り込まれた画像から顔検出部102が人物の顔領域を検出する(ステップS2)。人物の顔領域が検出されると、追跡部103が顔領域を追跡し、同一人物かを特定する(ステップS3)。次いで、特徴点位置検出部104、特徴量抽出部105、距離推定部106、特徴量更新部107及び検索部110が同一人物毎に複数の顔領域画像に対し、タスクAの処理を行う(ステップS4)。タスクAの処理が行われた後、タスクAの処理による検索結果を表示し、ユーザに通知する(ステップS5)。
【0052】
図9は、前記タスクAの処理を説明するためのフローチャートである。同図において、特徴点位置検出部104は、顔検出部102で検出された人物の顔内の特徴点位置を検出する(ステップS31)。次いで、距離推定部106が特徴点位置検出部104で検出された特徴点位置の間隔から撮影部101と人物の顔との間の距離を推定する(ステップS32)。次いで、特徴量抽出部105が特徴点位置検出部104で検出された特徴点位置での特徴量を抽出する(ステップS33)。距離推定部106が撮影部101と人物の顔との間の距離を推定し、特徴量抽出部105が特徴点位置での特徴量を抽出した後、特徴量更新部107が距離推定部106で推定された距離に応じて特徴量抽出部105で抽出された特徴量を更新する(ステップS34)。撮影部101と人物の顔との間の距離に応じて特徴量が更新された後、検索部110が特徴量更新部107で更新された特徴量をデータベース109で保持された各個人の特徴量と比較し、検索する(ステップS35)。そして、検索部110は比較検索処理で個人を特定できたか否かを判定する(ステップS36)。この判定で個人を特定できた場合は本処理を終了し、特定できなかった場合は残りの顔領域画像があるか否かを判定する(ステップS37)。この判定で残りの顔領域画像がなければ本処理を終了し、残りの顔領域画像があればステップS31に戻り、上記同様の処理を繰り返す。
【0053】
このように実施の形態1の顔認識装置100によれば、距離推定部106が撮影部101と人物の顔との間の距離を推定し、その距離に応じて、特徴量更新部107が各特徴点位置の信頼性がある周波数成分の特徴量のみを更新し、検索部110が特徴量更新部107で更新された特徴量とデータベース109に保持された個人の特徴量を比較検索するので、人物の顔を高い精度で認識することができる。更に、検索部110は時間経過と共に更新される特徴量数の増加と共に、検索結果範囲が狭まり、前回の検索結果に対して絞り込み検索を行うため、高速に検索処理を行うことができる。また更に、検索部110は時間経過と共に狭まる検索結果範囲内の人数が、予め定めた一定数以下であれば、検索処理を打ち切り、その検索結果を、表示通報部111を通じてユーザに通知するので、早い段階で検索結果をユーザに提供することができる。
【0054】
(実施の形態2)
図10は、本発明の実施の形態2に係る顔認識装置の概略構成を示すブロック図である。なお、同図において前述した実施の形態1の顔認識装置100と共通する部分には同一の符号を付けている。
【0055】
図10において、実施の形態2の顔認識装置120は、前述した実施の形態1の顔認識装置100と同様の構成に角度推定部121を追加したものである。角度推定部121は、特徴点位置検出部104で検出された顔の各特徴点の位置関係から顔の向きを推定する。特徴量更新部122は、距離推定部106で推定された距離及び角度推定部121で推定された顔の向きに応じて特徴量抽出部105で抽出された特徴量を更新する。
【0056】
図11は、実施の形態2の顔認識装置120で撮影される人物と撮影部101の関係を示す図である。人物1201は、撮影部101が設置されている方向に移動している。すなわち、撮影部101に向って同図左から右に移動している。撮影部101は、時刻T、時刻T、時刻Tで人物1201を撮影している。
【0057】
図12は、実施の形態2の顔認識装置120において、各時刻T、時刻T、時刻Tで撮影された画像を示す図である。同図において、(A1)は時刻Tにおける撮影画像、(B1)は時刻Tにおける撮影画像、(C1)は時刻Tにおける撮影画像である。撮影部101に近づくに従って撮影画像が大きくなり、且つ俯角が存在することから顔が徐々に下向きになる。
【0058】
撮影部101は、図11における各時刻Tで人物1201を撮影する。図12の(A1)は時刻Tで撮影された画像、図12の(B1)は時刻Tで撮影された画像、図12の(C1)は時刻Tで撮影された画像である。
【0059】
角度推定部121は、前述したように、特徴点位置検出部104で検出された顔の各特徴点位置の位置関係から顔の向きを推定する。図13は、斜め左上を向いた顔1401を示す図である。同図中に示す各特徴点位置を通る各破線1403同士の角度や、各特徴点位置間の距離比率は顔の向きによって差が現れる。このことを利用することで、各特徴点位置により顔向きを推定することができる。
【0060】
また、各特徴点位置の3次元位置モデルを事前に用意し、(式3)に示す3次元姿勢式を当てはめた時に(X、Yは水平及び垂直方向の平行移動量、A、B、及びCは3次元位置モデルの各特徴点nの位置であり、θp、θt及びθrはそれぞれ3次元回転角であり、関数R( )は3次元回転関数である。Sはスケール係数、関数P( )は3次元位置を2次元位置へ投影する関数であり、Xn及びYnは同投影後の各特徴点nの2次元位置である)、(式4)に示す位置誤差評価(xn及びynは特徴点位置検出部104が検出した各特徴点nの水平及び垂直方向位置)が最小になるような角度θp、θt及びθr(及び、スケールS、平行移動量X及びY)を求めることによっても、顔向きを推定することができる。
【0061】
【数3】

【0062】
【数4】

【0063】
角度推定部121は、上記角度推定方法を用いて、各時刻Tの顔領域画像の顔向きを推定し、同向きを出力する。なお、上記角度推定方法は一例であり、本発明で用いる角度推定の方法は、上記角度推定方法に限るものではない。顔の角度を推定することができる方法であれば、どのようなものでも良く、特徴点位置を利用せずに超音波センサや人物に取り付けたジャイロセンサの情報を取得するなどして顔の角度を推定しても良い。
【0064】
特徴量更新部122は、特徴量抽出部105で抽出された同一人物の顔に対する特徴量の一部を更新する。図14は、特徴量更新部122が更新する特徴量の一例を示す図である。同図における(A2)、(B2)、(C2)は図12に示す撮影部101が各時刻Tに撮影した画像(A1)、(B1)、(C1)に対応している。図14の(A2)に示す時刻T撮影画像では、撮影部101と人物の顔との間の距離が長く、顔画像のサイズが小さい。このような場合、前述した実施の形態1と同様に、特徴点位置の低周波成分の特徴量501のみを更新する。また、図14の(A2)に示す時刻T撮影画像では、顔は撮影部101とほぼ正対し、顔の各パーツも撮影部101とほぼ正対している。このような場合、顔の全てのパーツに対する特徴点の特徴量を更新する。
【0065】
図14の(B2)に示す時刻T撮影画像では、撮影部101と人物の顔との間の距離が(A2)に比べて短くなり、顔画像のサイズが大きくなっている。このような場合、前述した実施の形態1と同様に、特徴点位置の中周波成分の特徴量502のみを更新する。図14の(B2)に示す時刻T撮影画像では、顔は右方向を向いており、顔の右部分のパーツのみ撮影部101とほぼ正対している。このような場合、顔の右部分のパーツに対する特徴点に対する特徴量のみ更新する。
【0066】
図14の(C2)に示す時刻T撮影画像では、撮影部101と人物の顔との間の距離が(B2)に比べて短くなり、顔画像のサイズは大きくなる。このような場合、前述した実施の形態1と同様に、特徴点位置の高周波成分の特徴量503のみを更新する。図14の(C2)に示す時刻T撮影画像では顔は下方向を向いており、顔の上部分のパーツのみ撮影部101とほぼ正対している。このような場合、顔の上部分のパーツに対する特徴点に対する特徴量のみ更新する。
【0067】
以上のように、特徴量更新部122は、前述した実施の形態1と同様に、信頼性が高い周波数成分の特徴量のみ、且つ、顔認証精度が良い撮影部101と正対した顔パーツ部分の特徴点位置の特徴量のみを更新する。
【0068】
記憶部108、データベース109、検索部110、表示通報部111の動作は前述した実施の形態1の顔認識装置100のものと同じである。図15は、各時刻Tの撮影画像、特徴量及び評価空間上の範囲の一例を示す図である。同図における(A1)、(B1)、(C1)は、図12に示す撮影部101が各時刻Tに撮影した画像(A1)、(B1)、(C1)である。図15の(A3)、(B3)、(C3)に示す各時刻T特徴量は、特徴量更新部122により更新された特徴量である。更新された特徴量が斜線(一点鎖線)で示されている。図15の(D)は、(式2)に示す評価空間での各時刻Tでの検索結果範囲を2次元空間に投影した場合のイメージを示す図である。
【0069】
以上説明した特徴量更新部122までの動作によれば、図15の(A3)、(B3)、(C3)に示すように、前述した実施の形態1と同様に、時間経過と共に各特徴点位置の低周波成分、中周波成分、高周波成分の特徴量が順次更新される。また、撮影部101と正対した顔パーツ部分の特徴点位置の特徴量のみが順次更新される。
【0070】
検索部110は、未更新の特徴点及び特徴量の周波数成分に対する演算は、(式2)の計算から除外し、予め定めた値以上の評価スコアが算出された個人を検索結果とするので、図15の(D)に示すように、評価空間上における検索結果として出力される範囲は徐々に狭くなって行くことになる。
【0071】
図16は、実施の形態2の顔認識装置120のメイン処理を説明するためのフローチャートである。同図において、まず撮影部101が人物を撮影し画像を取り込む(ステップS10)。そして、撮影部101が取り込んだ画像から顔検出部102が人物の顔領域を検出する(ステップS11)。人物の顔領域が検出されると、追跡部103が顔領域を追跡し、同一人物かを特定する(ステップS12)。次いで、特徴点位置検出部104、特徴量抽出部105、距離推定部106、角度推定部121、特徴量更新部122及び検索部110が同一人物毎に複数の顔領域画像に対し、タスクBの処理を行う(ステップS13)。タスクBの処理が行われた後、タスクBの処理による検索結果を表示し、ユーザに通知する(ステップS14)。
【0072】
図17は、前記タスクBの処理を説明するためのフローチャートである。同図において、特徴点位置検出部104は、顔検出部102で検出された人物の顔内の特徴点位置を検出する(ステップS131)。次いで、距離推定部106が特徴点位置検出部104で検出された特徴点位置の間隔から撮影部101と人物の顔との間の距離を推定する(ステップS132)。次いで、角度推定部121が特徴点位置検出部104で検出された特徴点位置の位置関係から人物の顔の向きを推定する(ステップS133)。更に、特徴量抽出部105が特徴点位置検出部104で検出された特徴点位置での特徴量を抽出する(ステップS134)。距離推定部106が撮影部101と人物の顔との間の距離を推定し、角度推定部121が特徴点位置から顔向きを推定し、更に特徴量抽出部105が特徴点位置での特徴量を抽出した後、特徴量更新部122が距離推定部106で推定された距離及び角度推定部121で推定された顔の向きに応じて特徴量抽出部105で抽出された特徴量を更新する(ステップS135)。撮影部101と人物の顔との間の距離に応じ、且つ撮影部101に正対する特徴点位置の特徴量が更新された後、検索部110が特徴量更新部122で更新された特徴量をデータベース109で保持された各個人の特徴量と比較し、検索する(ステップS136)。そして、検索部110は比較検索処理で個人を特定できたか否かを判定する(ステップS137)。この判定で個人を特定できた場合は本処理を終了し、特定できなかった場合は残りの顔領域画像があるか否かを判定する(ステップS138)。この判定で残りの顔領域画像がなければ本処理を終了し、残りの顔領域画像があればステップS131に戻り、上記同様の処理を繰り返す。
【0073】
このように実施の形態2の顔認識装置120によれば、距離推定部106が撮影部101と人物の顔との間の距離を推定し、また角度推定部121が顔内の特徴点位置の位置関係から顔の向きを推定し、推定された距離と顔の向きに応じて、特徴量更新部122が顔内の特徴点位置での特徴量を更新し、検索部110が特徴量更新部122で更新された特徴量とデータベース109に保持されている個人の特徴量を比較検索するので、人物の顔を高い精度で認識することができる。更に、前述した実施の形態1と同様に、検索部110は時間経過と共に更新される特徴量数の増加と共に検索結果範囲が狭まり、前回の検索結果に対して絞り込み検索を行うため、高速に検索処理を行うことができる。また更に、前述した実施の形態1と同様に、検索部110は時間経過と共に狭まる検索結果範囲内の人数が、予め定めた一定数以下であれば、検索処理を打ち切り、その検索結果を、表示通報部111を通じてユーザに通知するので、早い段階で検索結果をユーザに提供することができる。
【0074】
(実施の形態3)
図18は、本発明の実施の形態3に係る顔認識装置の概略構成を示すブロック図である。なお、同図において前述した実施の形態1の顔認識装置100と共通する部分には同一の符号を付けている。
【0075】
図18において、実施の形態3の顔認識装置130は、前述した実施の形態1の顔認識装置100と同様の構成に明度検出部131を追加したものである。明度検出部131は明度を検出するものであり、顔領域画像から特徴点位置検出部104で検出された顔の各特徴点の位置における明度を検出する。
【0076】
図19は、実施の形態3の顔認識装置130で撮影される人物と撮影部101の関係を示す図である。人物2201は撮影部101が設置されている方向に移動している。すなわち、撮影部101に向って同図左から右に移動している。撮影部101は、時刻T、時刻T、時刻Tで人物2201を撮影している。人物2201の上方には光源である太陽2204の光を遮る遮蔽物2205があり、人物2201の時刻T2での顔の一部には太陽2204からの光が当っていない。
【0077】
図20は、実施の形態3の顔認識装置130において、時刻T、時刻T、時刻Tで撮影された画像を示す図である。同図において、(A1)は時刻Tにおける撮影画像、(B1)は時刻Tにおける撮影画像、(C1)は時刻Tにおける撮影画像である。撮影部101に近づくに従って撮影画像が大きくなり、且つ俯角が存在することから顔が徐々に下向きになる。
【0078】
撮影部101は、図19における各時刻Tの人物2201を撮影する。これにより、時刻Tには図20の(A1)の撮影画像が撮影され、時刻Tには図20の(B1)の撮影画像が撮影され、時刻Tには図20の(C1)の撮影画像が撮影される。(B1)の時刻T撮影画像に示すように、人物2201の顔の半分より下の部分には光が当たっていないため、暗くなっている。
【0079】
顔検出部102、追跡部103、特徴点位置検出部104、特徴量抽出部105、距離推定部106の処理は前述した実施の形態1と同じであるので説明を省略する。
【0080】
明度検出部131は、特徴点位置検出部104で検出された顔の特徴点位置における明度を検出する。一般的にカメラ等の撮像装置で撮影される画像はRGBもしくは輝度(グレイスケール)画像である。RGBのG値及び輝度値は明度とほぼ等しく、画像のG値又は輝度値をそのまま明度としても問題はない。特徴点位置を中心に予め決めた範囲内の画素のG値又は輝度値の平均値を明度として利用する。明度検出部131は上記明度検出方法を用いて各特徴点位置の明度を検出し出力する。なお、この明度検出方法は一例であり、本発明で用いる明度検出方法はその明度検出方法に限るものではない。特徴点位置の明度を検出することができる方法であれば、どのようなものでも良い。
【0081】
特徴量更新部132は、特徴量抽出部105が抽出した同一人物の顔に対する特徴量の一部を更新する。図21は、特徴量更新部132が更新する特徴量の一例を示す図である。同図における(A2)、(B2)、(C2)は図20に示す撮影部101が各時刻Tに撮影する画像(A1)、(B1)、(C1)に対応している。図21の(A2)に示す時刻T1撮影画像では、撮影部101の顔との間の距離が長く、顔画像のサイズが小さい。このような場合、前述した実施の形態1と同様に、特徴点位置の低周波成分の特徴量501のみを更新する。また、図21の(A2)に示す時刻T撮影画像では、顔の各パーツに光が当っており、明度検出部131が出力する各特徴点の明度も予め定めた一定値以上の値となる。このような場合、顔の各パーツに対する特徴点の特徴量を更新する。これは、一般的な顔認証では一定値以上の明度の顔画像が入力されること想定しており、このような場合に顔認証精度が良いためである。
【0082】
図21の(B2)に示す時刻T撮影画像では、撮影部101と人物の顔との間の距離が(A2)に比べて短くなり、顔画像のサイズが大きくなっている。このような場合、前述した実施の形態1と同様に、特徴点位置の中周波成分の特徴量502のみを更新する。また、図21の(B2)に示す時刻T2撮影画像では、顔の上部分のパーツにのみ光が当っており、明度検出部131が出力する上部分のパーツに対する特徴点の明度のみ予め定めた一定値以上の値となる。このような場合、顔の上部分のパーツに対する特徴点に対する特徴量のみ更新する。
【0083】
図21の(C2)に示す時刻T撮影画像では、撮影部101と人物の顔との間の距離が(B2)に比べて短くなり、顔画像のサイズは大きくなる。このような場合、前述した実施の形態1と同様に、特徴点位置の高周波成分の特徴量503のみを更新する。また、図21の(C2)に示す時刻T3撮影画像では、顔の各パーツに光が当っており、明度検出部131が出力する各特徴点の明度も、予め定めた一定値以上の値となる。このような場合、顔の各パーツに対する特徴点の特徴量を更新する。以上のように、特徴量更新部132は、前述した実施の形態1と同様に信頼性が高い周波数成分の特徴量のみ、且つ、顔認証精度が良い、明度が予め定めた一定値以上の値となる特徴点位置の特徴量のみを更新する。
【0084】
記憶部108、検索部110、データベース109及び表示通報部111の動作は前述した実施の形態1の顔認識装置100と同じであり、以下に簡単に説明する。図22は、顔認識装置130で撮影された時刻T,T,Tの撮影画像、特徴量及び評価空間上の範囲の一例を示す図である。同図における(A1)、(B1)、(C1)は、図20に示す撮影部101で各時刻Tに撮影される画像(A1)、(B1)、(C1)である。図22の(A3)、(B3)、(C3)に示す各時刻T特徴量は、特徴量更新部132により更新された特徴量である。更新された特徴量が斜線(一点鎖線)で示されている。図22の(D)は、(式2)に示す評価空間での各時刻Tでの検索結果範囲を2次元空間に投影した場合のイメージを示す図である。
【0085】
以上説明した特徴量更新部132までの動作によれば、図22の(A3)、(B3)、(C3)に示すように、前述した実施の形態1と同様に、時間経過と共に各特徴点位置の低周波成分、中周波成分、高周波成分の特徴量が順次更新される。また、明度が予め定めた一定値以上の値となる特徴点位置の特徴量のみが更新される。検索部110は、未更新の特徴量点の周波数成分に対する演算は、(式2)の計算から除外し、予め定めた値以上の評価スコアが算出された個人を検索結果とするので、図22の(D)に示すように、評価空間上における検索結果として出力される範囲は徐々に狭くなって行くことになる。
【0086】
図23は、実施の形態3の顔認識装置130のメイン処理を説明するためのフローチャートである。同図において、まず撮影部101が人物を撮影し画像を取り込む(ステップS20)。そして、撮影部101が取り込んだ画像から顔検出部102が人物の顔領域を検出する(ステップS21)。人物の顔領域が検出されると、追跡部103が顔領域を追跡し、同一人物かを特定する(ステップS22)。次いで、特徴点位置検出部104、特徴量抽出部105、距離推定部106、明度検出部131、特徴量更新部132及び検索部110が同一人物毎に複数の顔領域画像に対し、タスクCの処理を行う(ステップS23)。タスクCの処理が行われた後、タスクCの処理による検索結果を表示し、ユーザに通知する(ステップS24)。
【0087】
図24は、タスクCの処理を説明するためのフローチャートである。同図において、特徴点位置検出部104は、顔検出部102で検出された人物の顔内の特徴点位置を検出する(ステップS231)。次いで、距離推定部106が特徴点位置検出部104で検出された特徴点位置の間隔から撮影部101と人物の顔との間の距離を推定する(ステップS232)。次いで、明度検出部131が特徴点位置検出部104で検出された特徴点位置での明度を検出する(ステップ233)。更に、特徴量抽出部105が特徴点位置検出部104で検出された特徴点位置での特徴量を抽出する(ステップS234)。
【0088】
距離推定部106が撮影部101と人物との間の距離を推定し、明度検出部131が特徴点位置の明度を検出し、更に特徴量抽出部105が特徴点位置での特徴量を抽出した後、特徴量更新部132が距離推定部106で推定された距離及び明度検出部131で検出された明度に応じて特徴量抽出部105で抽出された特徴量を更新する(ステップS235)。撮影部101と人物の顔との間の距離に応じ、且つ特徴点位置の明度に応じて特徴量が更新された後、検索部110が特徴量更新部132で更新された特徴量をデータベース109で保持された各個人の特徴量と比較し検索する(ステップS236)。そして、検索部110は比較検索処理で個人を特定できたか否かを判定する(ステップS237)。この判定で個人を特定できた場合は本処理を終了し、特定できなかった場合は残りの顔領域画像があるか否かを判定する(ステップS238)。この判定で残りの顔領域画像がなければ本処理を終了し、残りの顔領域画像があればステップS231に戻り、上記同様の処理を繰り返す。
【0089】
このように実施の形態3の顔認識装置130によれば、距離推定部106が撮影部101と人物の顔との間の距離を推定し、また明度検出部131が顔内の特徴点位置での明度を検出し、推定された距離と検出された明度に応じて、特徴量更新部132が顔内の特徴点位置での特徴量を更新し、検索部110が特徴量更新部132で更新された特徴量とデータベース109に保持されている個人の特徴量を比較検索するので、人物の顔を高い精度で認識することができる。更に、前述した実施の形態1と同様に、検索部110は時間経過と共に更新される特徴量数の増加と共に、検索結果範囲が狭まり、前回の検索結果に対して絞り込み検索を行うため、高速に検索処理を行うことができる。また更に、前述した実施の形態1と同様に、検索部110は時間経過と共に狭まる検索結果範囲内の人数が、予め定めた一定数以下であれば、検索処理を打ち切り、その検索結果を、表示通報部111を通じて通知するので、早い段階で検索結果をユーザに提供することができる。
【0090】
なお、上記実施の形態1〜3では、人物の顔を認識するものであったが、人物の顔に限定されるものではなく、それ以外の動く被写体であれば、どのようなものでも認識することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、撮影して得られた画像から人物の顔等の被写体の所定領域を高い精度で認識することができるといった効果を有し、防犯や重要顧客の来客管理等のカメラシステムへの適用が可能である。
【符号の説明】
【0092】
100、120、130 顔認識装置
101 撮影部
102 顔検出部
103 追跡部
104 特徴点位置検出部
105 特徴量抽出部
106 距離推定部
107、122、132 特徴量更新部
108 記憶部
109 データベース
110 検索部
111 表示通報部
121 角度推定部
131 明度検出部
201、1201、2201 人物
2204 太陽
2205 遮蔽物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮影する撮影部と、
前記撮影部での撮影結果としての画像から前記被写体の所定の領域を検出する領域検出部と、
前記領域検出部で検出された前記所定の領域内の特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
前記撮影部と前記所定の領域との間の距離を推定する距離推定部と、
前記特徴量抽出部で抽出された前記特徴量を前記距離推定部で推定された前記距離に応じて更新する特徴量更新部と、を備えることを特徴とする顔認識装置。
【請求項2】
前記特徴量更新部で更新された前記特徴量を予め保持されている特徴量と比較し検索する検索部を備え、前記検索部での検索結果に基づき前記所定の領域を認識する請求項1記載の顔認識装置。
【請求項3】
前記所定の領域内の特徴点位置を検出する特徴点位置検出部を備え、
前記距離推定部は前記特徴点位置検出部で検出された前記特徴点位置の間隔から前記撮影部と前記所定の領域との間の距離を推定する請求項1記載の顔認識装置。
【請求項4】
人物を撮影する撮影部と、
前記撮影部での撮影結果としての画像から前記人物の顔を検出する顔検出部と、
前記顔検出部で検出された前記顔内の特徴点位置を検出する特徴点位置検出部と、
前記特徴点位置検出部で検出された前記特徴点位置での特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
前記撮影部と前記顔との間の距離を推定する距離推定部と、
前記特徴量抽出部で抽出された前記特徴量を前記距離推定部で推定された前記距離に応じて更新する特徴量更新部と、
前記特徴量更新部で更新された前記特徴量を予め保持されている特徴量と比較し検索する検索部と、
を備え、前記検索部での検索結果に基づき前記顔を認識する顔認識装置。
【請求項5】
前記距離推定部は前記特徴点位置検出部で検出された前記特徴点位置の間隔から前記撮影部と前記顔との間の距離を推定する請求項4記載の顔認識装置。
【請求項6】
人物を撮影する撮影部と、
前記撮影部での撮影結果としての画像から前記人物の顔を検出する顔検出部と、
前記顔検出部で検出された前記顔内の特徴点位置を検出する特徴点位置検出部と、
前記特徴点位置検出部で検出された前記特徴点位置での特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
前記特徴点位置検出部で検出された前記特徴点位置の間隔から前記撮影部と前記顔との間の距離を推定する距離推定部と、
前記顔の向きを推定する角度推定部と、
前記特徴量抽出部で抽出された前記特徴量を前記距離推定部で推定された前記距離及び前記角度推定部で推定された前記顔の向きに応じて更新する特徴量更新部と、
前記特徴量更新部で更新された前記特徴量を予め保持されている特徴量と比較し検索する検索部と、
を備え、前記検索部での検索結果に基づき前記顔を認識する顔認識装置。
【請求項7】
前記角度推定部は前記特徴点位置検出部で検出された前記特徴点位置の位置関係から前記顔の向きを推定する請求項6記載の顔認識装置。
【請求項8】
人物を撮影する撮影部と、
前記撮影部での撮影結果としての画像から前記人物の顔を検出する顔検出部と、
前記顔検出部で検出された前記顔内の特徴点位置を検出する特徴点位置検出部と、
前記特徴点位置検出部で検出された前記特徴点位置での特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
前記特徴点位置検出部で検出された前記特徴点位置の間隔から前記撮影部と前記顔との間の距離を推定する距離推定部と、
前記特徴点位置検出部で検出された前記特徴点位置での明度を検出する明度検出部と、
前記特徴量抽出部で抽出された前記特徴量を前記距離推定部で推定された前記距離及び前記明度検出部で検出された前記特徴点位置での明度に応じて更新する特徴量更新部と、
前記特徴量更新部で更新された前記特徴量を予め保持されている特徴量と比較し検索する検索部と、
を備え、前記検索部での検索結果に基づき前記顔を認識する顔認識装置。
【請求項9】
被写体を撮影する撮影ステップと、
前記撮影ステップでの撮影結果としての画像から前記被写体の所定の領域を検出する領域検出ステップと、
前記領域検出ステップで検出された前記所定の領域内の特徴量を抽出する特徴量抽出ステップと、
前記撮影ステップと前記所定の領域との間の距離を推定する距離推定ステップと、
前記特徴量抽出ステップで抽出された前記特徴量を前記距離推定ステップで推定された前記距離に応じて更新する特徴量更新ステップと、を備えることを特徴とする顔認識方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2011−210030(P2011−210030A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77418(P2010−77418)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】