説明

顕微鏡

【課題】種々の形状を有する標本載置部材を安定して、かつ簡単に保持することができ、標本載置部材に載置された標本を良好に観察することができる顕微鏡を提供すること。
【解決手段】シャーレ100aとスライドガラス100bとを個別に保持する保持ユニット30を備えた顕微鏡において、円形状の開口321を覆う態様で開口縁部321aの上面にシャーレ100aが載置された場合に該シャーレ100aを保持するシャーレ保持部材32と、矩形状の開口311を有し、開口311を臨む態様で付設されたスライドガラス支持部313によりスライドガラス100bが支持された場合にスライドガラス100bを保持するスライドガラス保持部材31と、
シャーレ保持部材32がスライドガラス保持部材31に対して相対的に移動可能となる態様で、シャーレ保持部材32とスライドガラス保持部材31とを係合する係合手段とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡に関し、より詳細には、例えばシャーレやスライドガラス等のような標本載置部材を個別に保持する保持ユニットを備えた顕微鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば生体細胞や細胞片等の生物標本を観察する場合には、この生物標本が載置された標本載置部材を顕微鏡に設置して行うのが一般的である。生体細胞を生きたままで観察する場合には、シャーレのような円形状の底面を有する標本載置部材の底面に標本(生体細胞)を載置し、培養してから観察を行う。細胞片等を観察する場合には、スライドガラスのような矩形状の底面を有する標本載置部材の底面に標本(細胞片等)を載置し、カバーガラスを接着させてから観察を行う。このように標本載置部材には種々の形状等があり、これら標本載置部材を個別に保持する次のような保持ユニットを備えた顕微鏡が知られている。
【0003】
かかる顕微鏡に適用される保持ユニットは、基板と、スライドガラス保持部と、シャーレ保持部とを備えて構成されている。
【0004】
基板は、顕微鏡のステージに取り付けられており、開口が形成されている。この開口は、標本載置部材に載置された標本の観察を行うためのものである。スライドガラス保持部は、基板の開口近傍となる個所に設けられており、上記開口を臨む態様でスライドガラスを保持するためのものである。シャーレ保持部は、一対のシャーレ保持部材を有している。一対のシャーレ保持部材は、一方のシャーレ保持部材が他方のシャーレ保持部材に対して近接離反する態様で移動することにより、両者の間隔を増減するものである。このようなシャーレ保持部では、一方のシャーレ保持部材を移動させて他方のシャーレ保持部材とともに、シャーレをその底面が上記開口を臨む態様で挟持して保持するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平11−202213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上述したような特許文献1に提案されているような顕微鏡では、保持ユニットを構成するシャーレ保持部においてシャーレを一対のシャーレ保持部材で挟持して保持していたので、シャーレの径が異なるたびに一対のシャーレ保持部材の間隔を調整しなければならず煩雑なものとなる。しかも、一対のシャーレ保持部材で挟持してシャーレを保持していたために、挟持力が充分でないとシャーレを安定して保持することが困難になり、転倒してしまう虞れがあった。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、種々の形状を有する標本載置部材を安定して、かつ簡単に保持することができ、標本載置部材に載置された標本を良好に観察することができる顕微鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る顕微鏡は、円形状の底面に標本が載置された第1標本載置部材と、矩形状の底面に標本が載置された第2標本載置部材とを個別に保持する保持ユニットと、前記標本を観察する対物レンズとを備えた顕微鏡において、前記保持ユニットは、形成された円形状の開口を覆う態様で開口縁部の上面に前記第1標本載置部材が載置された場合に該第1標本載置部材を保持し、前記対物レンズの光軸上で前記第1標本載置部材に載置された標本の観察を可能にする第1保持部材と、矩形状の開口を有し、付設された支持部材により前記第2標本載置部材が前記開口を臨む態様で支持された場合に該第2標本載置部材を保持し、前記対物レンズの光軸上で前記第2標本載置部材に載置された標本の観察を可能にする第2保持部材と、前記第1保持部材が前記第2保持部材に対して相対的に移動可能となる態様で、第1保持部材と第2保持部材とを係合する係合手段とを備え、前記係合手段は、前記第1保持部材に保持された第1標本載置部材の標本の観察を行う場合には、前記第1保持部材と前記第2保持部材とを互いの開口が対向する態様で重なった状態にする一方、前記第2保持部材に保持された第2標本載置部材の標本の観察を行う場合には、前記第2保持部材の外方域に前記第1保持部材を退避移動させた状態にすることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に係る顕微鏡は、上述した請求項1において、前記保持ユニットに保持された第1標本載置部材、あるいは第2標本載置部材に対して前記対物レンズを近接離反する態様で変位させる変位機構を備え、前記係合手段は、前記変位機構が前記対物レンズを予め決められた変位量だけ変位するまで前記第1保持部材の相対的な移動を規制することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に係る顕微鏡は、上述した請求項1において、前記第1保持部材が前記第2保持部材に対して退避移動させた状態、あるいは重なった状態にあるかを検知する検知手段と、切換指令が与えられ、かつ前記検知手段により退避移動させた状態にあることが検知された場合に、前記第1保持部材を前記第2保持部材に重なった状態になるまで移動させる一方、切換指令が与えられ、かつ前記検知手段により重なった状態にあることが検知された場合に、前記第1保持部材を退避移動させる制御手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項4に係る顕微鏡は、上述した請求項3において、前記保持ユニットに保持された第1標本載置部材、あるいは第2標本載置部材に対して前記対物レンズを近接離反する態様で変位させる変位機構を備え、前記制御手段は、切換指令が与えられた場合であっても前記変位機構が前記対物レンズを予め決められた変位量だけ変位するまで前記第1保持部材の相対的な移動を規制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の顕微鏡によれば、第1保持部材が、円形状の開口を覆う態様で開口縁部の上面に第1標本載置部材が載置された場合に該第1標本載置部材を保持し、第2保持部材が、矩形状の開口を有し、付設された支持部材により第2標本載置部材が上記開口を臨む態様で支持された場合に該第2標本載置部材を保持し、第1保持部材が第2保持部材に対して相対的に移動可能となる態様で、第1保持部材と第2保持部材とを係合する係合手段が、第1保持部材に保持された第1標本載置部材の標本の観察を行う場合には、第1保持部材と第2保持部材とを互いの開口が対向する態様で重なった状態にする一方、第2保持部材に保持された第2標本載置部材の標本の観察を行う場合には、第2保持部材の外方域に第1保持部材を退避移動させた状態にするので、第1標本載置部材の標本を観察する場合には、第1保持部材の開口を覆う態様で開口縁部の上面に第1標本載置部材を載置するだけで良く、第1標本載置部材が転倒する虞れがない。第2標本載置部材の標本を観察する場合には第1保持部材を退避移動させて第2保持部材に第2標本載置部材を保持させれば良い。従って、種々の形状を有する標本載置部材を安定して、かつ簡単に保持することができ、標本載置部材に載置された標本を良好に観察することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る顕微鏡の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
<実施の形態1>
図1及び図2は、それぞれ本発明の実施の形態1である顕微鏡の構成を示すものであり、図1は顕微鏡を正面から示した概略図、図2は制御系を示す接続図である。ここで例示する顕微鏡は、倒立型顕微鏡であり、顕微鏡の骨格を成す顕微鏡本体1に、ステージ2、レボルバ3、第1ランプハウス4、ミラーユニット5、ミラー6、鏡筒7及び第2ランプハウス8を設けて構成してある。
【0015】
ステージ2は、顕微鏡本体1の中位の高さレベルに設けてある。ステージ2は、例えばシャーレやスライドガラスのような底面に標本が載置された標本載置部材100を保持する保持ユニット30を搭載するものである。このステージ2には、複数(図示の例では2つ)のモータ2a,2bが内蔵されており、1つはステージ2を左右方向(X方向)に移動させるための駆動源、もう1つはステージ2を前後方向(Y方向)に移動させるための駆動源である。つまり、ステージ2は、X方向及びY方向に移動可能なものである。かかるモータ2a,2bは、それぞれ制御装置40にケーブルC1で接続してある。この制御装置40については後述する。
【0016】
レボルバ3は、ステージ2の下方域にレボルバ保持台9に回転自在に固定されている。このレボルバ3は、倍率の異なる複数の対物レンズ10を固定配置しており、自身が回転することにより択一的に選択された対物レンズ10をステージ2にある標本載置部材100の直下に位置させて標本載置部材100に載置された標本の観察を行うものである。
【0017】
レボルバ保持台9は、図示せぬラック−ピニオン機構を介して回転焦準部11に接続されており、回転焦準部11での回転運動により、レボルバ3をステージ2に対して近接離反する態様で上下方向に沿って変位させるものである。この回転焦準部11にはモータ11aが内蔵してある。このモータ11aは、顕微鏡本体1に設けられた制御基板1aを介して制御装置40にケーブルC2で接続してあり、かかる制御装置40から指令が与えられることにより駆動する駆動源であり、かつ制御装置40に対してステージ2のXY方向の位置情報を伝達するものである。このモータ11aが駆動することにより、回転焦準部11が回転運動を行い、この結果、レボルバ保持台9がレボルバ3を上下方向に沿って変位させることになる。
【0018】
第1ランプハウス4は、光源4aを内蔵した筐体であり、投光管12を介して顕微鏡本体1に着脱可能となる態様で配設してある。投光管12は、第1ランプハウス4の光源4aが発した光の通過を許容するものである。
【0019】
ミラーユニット5は、励起フィルタ5a、ダイクロイックミラー5b及び吸収フィルタ5cを有したものであり、ミラーカセット13の内部で該ミラーカセット13に内蔵された図示せぬモータにより、第1ランプハウス4の光源4aが発した光の光路に対して進入、あるいは離脱する態様で挿脱可能に構成してある。
【0020】
ミラー6は、ミラーカセット13の下方域に設けてあり、結像レンズ14から射出された光を反射させるものである。ここで、結像レンズ14は、対物レンズ10から射出された平行光を収束させて標本の観察像を結像させるものである。
【0021】
鏡筒7は、顕微鏡本体1に着脱可能に設けたものであり、内部にプリズム7aを有している。この鏡筒7は、ミラー6で反射され、かつリレーレンズ15を通過した光を偏向し、接眼レンズ16に伝達させるものである。
【0022】
第2ランプハウス8は、光源8aを内蔵した筐体であり、顕微鏡本体1を構成する透過照明支柱1bに支持されている。この透過照明支柱1bには、ミラー17が内蔵してあり、このミラー17は、第2ランプハウス8の光源8aが発した光を反射させるものである。
【0023】
図1中の符号18はコンデンサであり、符号19はプリズムである。コンデンサ18は、透過照明支柱1bに上下方向に移動可能に配設されており、第2ランプハウス8の光源8aが発した光をステージ2上の標本に照射させるものである。このコンデンサ18は、透過照明支柱1bに設けたハンドル1cが操作されることにより上下方向に沿って移動可能である。プリズム19は、結像レンズ14とミラー6との間における光路に配置してある。このプリズム19は、制御基板1aにケーブル(図示せず)により接続された図示せぬモータの駆動により、結像レンズ14から射出された光の光路に進入、あるいは離脱する態様で挿脱可能に設けてあり、光路に進入した場合には、結像レンズ14から射出された光を図1において紙面手前方向に延在する円筒部20に通過させるよう偏向させるものである。この円筒部20の端部は、例えばカメラやCCDカメラのような撮影機器の一部を固定することが可能であり、プリズム19で偏向させた光により形成される像を撮影することが可能である。
【0024】
図3〜図5は、それぞれ上記ステージ2に搭載された保持ユニット30を拡大して示すものであり、図3は、平面図であり、図4は、図3中のC−D線断面図及びE−F線断面図を連続して示したものであり、図5は、図3に示した保持ユニットの側面図である。これら図3〜図5を適宜参照しながら保持ユニット30について説明する。尚、図3において、紙面上右方を右側、紙面上左方を左側とし、紙面上上方を奥側、紙面上下方を手前側として説明する。
【0025】
ここで例示する保持ユニット30は、スライドガラス保持部材(第2保持部材)31と、シャーレ保持部材(第1保持部材)32と、ロック部材33とを備えて構成してある。
【0026】
スライドガラス保持部材31は、土台310に開口311、ガイド部312及びスライドガラス支持部313を設けて構成してある。土台310は、ステージ2に形成された開口21を覆う態様で配設してあり、下方に突設されたピン310aがステージ2に形成された図示せぬピン孔に挿通することによりステージ2に対して回転方向の位置決めがされている。
【0027】
開口311は、土台310の中央領域に形成してあり、矩形状を成している。この開口311は、詳細は後述するが、スライドガラス支持部313にスライドガラス100bが支持された場合に、このスライドガラス100bの略全域が該開口311を通じて下方から臨むことができる大きさを有している。
【0028】
ガイド部312は、開口311の両側縁部に上方に突出する態様で形成された左右一対のものであり、前後方向が長手方向となる長尺状のものである。これらガイド部312には、前後方向に延在する溝部312aが形成してある。溝部312aは、シャーレ保持部材32の端部の進入を許容する大きさを有しており、より詳細にはシャーレ保持部材32の端部の厚みよりも僅かに大きい幅を有している。
【0029】
これらガイド部312のうち、左側のガイド部312には、左方に突出する突出片312bが設けてある。かかる突出片312bの下面には磁石312cが配設してある。つまり、突出片312bは、磁石保持部材である。また、左側のガイド部312の奥側端部における上面には、2つのネジ312dが前後に並ぶよう並設してある。かかるネジ312dについては後述する。
【0030】
スライドガラス支持部313は、左右一対のガイド部312の略中央領域に設けた台状部であり、例えばスライドガラス100bのような矩形状の底面に標本が載置された標本載置部材(第2標本載置部材)を支持する支持部材である。このようなスライドガラス支持部313は、二点差線で例示するスライドガラス100bの左右両端部を載置させて支持するものである。より詳細には、スライドガラス支持部313は、択一的に選択された対物レンズ10、あるいはコンデンサ18から射出された光(照明光)がスライドガラス100bに載置された標本に照射され、かつ標本の各点から発せられた光が択一的に選択された対物レンズ10を通過することが可能な位置にスライドガラス100bを支持するものである。
【0031】
シャーレ保持部材32は、例えば板状のシャーレ保持板部材320に、開口321、ツマミ322、ガイド孔323、磁石保持片324及びガイド部325を設けて構成してある。開口321は、シャーレ保持板部材320の略中央領域に形成してあり、円形状を成している。この開口321は、スライドガラス保持部材31に形成された開口311よりも面積が小さいものであるが、かかる開口321を覆う態様で開口縁部321aの上面の領域に例えばシャーレのような円形状の底面に標本が載置された標本載置部材(第1標本載置部材)が載置された場合に、シャーレ100aの底面の大部分が該開口321を通じて下方から臨むことができる大きさを有している。
【0032】
ツマミ322は、シャーレ保持板部材320の手前側端部の上面に突設してあり、検鏡者が掴むのに充分な大きさを有している。
【0033】
ガイド孔323は、シャーレ保持板部材320の左側端部において形成されたコ字状の孔であり、前後方向が長手方向となる態様で形成されたガイド孔部323aと、ガイド孔部323aの手前側端部よりガイド孔部323aの延在方向に直交する方向、すなわち右方に向けて延在する第1規制孔部323bと、ガイド孔部323aの奥側端部よりガイド孔部323aの延在方向に直交する方向、すなわち右方に向けて延在する第2規制孔部323c(図6参照)とを有している。ガイド孔部323aの延在長さは、詳細は後述するシャーレ保持部材32の移動量を規定するものであり、予め必要十分な移動量を確保する観点から決められている。第1規制孔部323bの延在長さと第2規制孔部323cの延在長さとは略等しい。
【0034】
磁石保持片324は、シャーレ保持板部材320の奥側端部より左方に突出する態様で形成された舌片状のものである。この磁石保持片324の下面には磁石324aが配設してある。この磁石保持片324に配設された磁石324aと、上記磁石312cとは、同一直線上に配置されている。
【0035】
ガイド部325は、シャーレ保持板部材320の奥側端部の上面に設けてあり、ジグ325aと、ガイド325bと、ツマミ325cとを備えて成るものである。ジグ325aは、シャーレ保持板部材320の上面から上方に突出する態様で設けられたロッド状のものであり、その中心軸を軸心にして回転可能なものである。ガイド325bは、基端がジグ325aに接続され、先端が当接部と成るものである。このガイド325bは、ジグ325aの回転に応じてジグ325aの軸心回りに回動するものである。ツマミ325cは、ガイド325bから側方に突出して設けられた操作部分である。
【0036】
このようなガイド部325は、図3に示すようにガイド325bがジグ325aより手前側に位置して前後方向に沿って延在している場合に、一般的に良く用いられる大きさのシャーレ100aを、その側面を当接部に当接させた状態で開口321を覆う態様で開口縁部321aの上面に載置すると、該シャーレ100aの底面の中心が開口321の中心に一致させることができる大きさに調整してある。つまり、ガイド部325は、位置合わせを補助する役割を有している。また、ガイド部325は、一般的なシャーレ100aよりも径の大きいシャーレ(以下、拡径のシャーレともいう)を載置する場合には、ツマミ325cが操作されてジグ325aの軸心回りにガイド325bを例えば90°回動されることにより、開口321を覆う態様で開口縁部321aの上面に拡径のシャーレを載置することができるようにしてある。
【0037】
ロック部材33は、板状のロック板部材330にツマミ331、係合突起332及び長孔333を設けて構成してある。ツマミ331は、ロック板部材330の左側端部の上面に上方に突出する態様で設けた操作部分である。係合突起332は、ロック板部材330の右側端部の下面より下方に突出する態様で設けた突起であり、シャーレ保持部材32を構成するガイド孔323に進入している。長孔333は、複数(図示の例では2つ)あり、ロック板部材330の中央領域に左右方向が長手方向となるよう前後に並んで設けてある。各長孔333には、左側のガイド部312の奥側端部における上面に設けたネジ312dが貫通している。
【0038】
このような構成のロック部材33は、図示せぬバネのような付勢手段により常時右方に向けて付勢されており、これにより、係合突起332がガイド孔323の第2規制孔部323cの右縁部に当接し、左側ガイド部312に設けたネジ312dが長孔333の左縁部に当接している。
【0039】
また、上記ロック部材33は、ロック板部材330に磁石334が設けて構成してある。かかる磁石334は、ロック板部材330の下面であって、ロック部材33がバネにより付勢されて図3のような状態にある場合、つまり、係合突起332がガイド孔323の第2規制孔部323cの右縁部に当接し、左側ガイド部312に設けたネジ312dが長孔333の左縁部に当接している場合に、上記突出片312bに配設された磁石312c及び上記磁石保持片324に配設された磁石324aと前後方向に沿って同一直線上に配置される。
【0040】
このような保持ユニット30が搭載されたステージ2には、突出片312bに配設された磁石312c、磁石保持片324に配設された磁石324a、並びにロック部材33を構成するロック板部材330に配設された磁石334、つまり、同一直線上に並ぶ磁石312c,324a,334に対向する位置にセンサ22が設けてある。センサ22は、対向する磁石312c,324a,334の存否を検知するものであり、その旨をケーブルC3を通じて制御装置40に信号として与えるものである。
【0041】
制御装置40は、例えばパーソナルコンピュータを用いて実現され、記憶部41に記憶されたデータやプログラムに従って顕微鏡の動作を統括的に制御するものである。この制御装置40は、キーボードやマウスのような入力部42、並びにモニターのような出力部43に接続してある。また、制御装置40は、ステージ2に設けられたモータ11aやセンサ22にケーブルC1,C2を介して接続されるとともに、顕微鏡本体1に設けられた制御基板1aを介して回転焦準部11、ミラーカセット13、プリズム7aを駆動させるモータ(11a)に接続されている。
【0042】
以上のような構成を有する顕微鏡においては、次のようにしてシャーレ100aに載置された標本が観察される。ここで、保持ユニット30は、図3〜図5に示す状態、すなわちシャーレ保持部材32とスライドガラス保持部材31とが互いの開口311,321が対向する態様で重なった状態にある。
【0043】
シャーレ100aがシャーレ保持部材32の開口321を覆う態様で開口縁部321aの上面に載置されることにより、シャーレ保持部材32はシャーレ100aを保持する。そして、入力部42が操作されることにより、制御装置40は、モータを駆動させてプリズムを光路から退避させる。その後第1ランプハウス4の光源4aが発した光は、励起フィルタ5aを通過してダイクロイックミラー5bで反射され、択一的に選択された対物レンズ10を通り、シャーレ100aの底面に載置された標本に照射される。この標本の各点から発せられた光(蛍光)が、対物レンズ10、ダイクロイックミラー5b、吸収フィルタ5c、結像レンズ14を通り、ミラー6で反射されて、リレーレンズ15、プリズム7aを通り接眼レンズ16で観察される。
【0044】
シャーレ100aに載置された標本の観察を行う場合、ステージ2のセンサ22によりスライドガラス保持部材31、シャーレ保持部材32及びロック部材33の磁石312c,324a,334はすべて検知されており、その旨が信号として制御装置40に与えられる。これにより、制御装置40は、記憶部41に予め記憶されたストローク量、すなわちシャーレ100aに載置された標本の観察に支障がない程度に規制されたストローク量でステージ2を移動、回転焦準部11によるレボルバ保持台9を移動させることができる。
【0045】
次に、顕微鏡でスライドガラス100bに載置された標本を観察する場合について説明する。検鏡者によりロック部材33のツマミ331が操作されて、ロック部材33がバネによる付勢力に抗して左方に移動する。図6に示すように、ロック部材33が距離kだけ左方に移動するときに、ロック部材33に配設された磁石334は、センサ22の検知範囲(上方域)から逸脱する。これによりセンサ22は、ロック部材33に配設された磁石334の移動を検知し、その旨が制御装置40に与えられる。その旨が与えられた制御装置40は、記憶部41に記憶された退避変位量に従って回転焦準部11のモータ11aを駆動させ、回転焦準部11が回転運動することによりレボルバ保持台9によって対物レンズ10が下方に向けて変位する。ここで退避変位量は、シャーレ保持部材32の下面(シャーレ保持板部材320の下面)からシャーレ100aに載置された標本に至る距離に、保持ユニット30の寸法公差を加えた大きさの量である。
【0046】
ところで、検鏡者の操作により左方に向けて移動するロック部材33が距離Lだけ移動すると、係合突起332がガイド孔部323aに進入可能となるために、シャーレ保持部材32が奥側に向けて退避移動することが可能になる。そこで、ロック部材33が距離L−kを左方に移動する間に対物レンズ10が退避変位量だけ変位する必要がある。よって、シャーレ保持部材32を構成するガイド孔部323aの第2規制孔部323cの延在長さは、ロック部材33(係合突起332)が距離L−kを左方に移動するときに対物レンズ10を退避変位量だけ下方に変位させることができるのに十分な大きさを有している。
【0047】
左方に向けて移動するロック部材33が距離Lだけ移動した後、ツマミ331が操作されることにより、シャーレ保持部材32は、図7及び図8に示すように奥側に向けて退避移動する。ここでシャーレ保持部材32の退避移動量は、ガイド孔部323aの延在長さにより規定される。そして、ロック部材33を構成する係合突起332がガイド孔部323aの手前側端部に至ると、バネの付勢力により第1規制孔部323bに進入する結果、ロック部材33が右方に移動する。これにより、シャーレ保持部材32は、スライドガラス保持部材31の外方域、すなわち奥側に退避移動した状態となる。また、ロック部材33を構成する磁石334と、スライドガラス保持部材31を構成する磁石312cとが同一直線上に配置され、ステージ2のセンサ22により検知される。
【0048】
このようにしてシャーレ保持部材32を退避移動させた後に、スライドガラス100bの両端部をスライドガラス支持部313に載置して支持されることにより、スライドガラス保持部材31はスライドガラス100bを保持する。そして、入力部42が操作されることにより、制御装置40は、モータ11aを駆動させてプリズム19を光路から退避させる。その後第1ランプハウス4の光源4aが発した光は、励起フィルタ5aを通過してダイクロイックミラー5bで反射され、択一的に選択された対物レンズ10を通り、スライドガラス100bの底面に載置された標本に照射される。この標本の各点から発せられた光(蛍光)が、対物レンズ10、ダイクロイックミラー5b、吸収フィルタ5c、結像レンズ14を通り、ミラー6で反射されて、リレーレンズ15、プリズム7aを通り接眼レンズ16で観察される。
【0049】
スライドガラス100bに載置された標本の観察を行う場合、ステージ2のセンサ22によりスライドガラス保持部材31及びロック部材33の磁石312c,334のみが検知されることになり、その旨が信号として制御装置40に与えられる。これにより、制御装置40は、記憶部41に予め記憶されたストローク量、すなわちスライドガラス100bに載置された標本の観察に支障がない程度に規制されたストローク量でステージ2を移動、回転焦準部11によるレボルバ保持台9を移動させることができる。
【0050】
ここで、センサ22が検知範囲から逸脱したロック部材33の磁石334、すなわち該磁石334の移動を検知してから予め決められた時間内に当該磁石334を検知できない場合には、制御装置40は誤操作である旨を判断し、その旨を出力部43により出力して報知しても良い。
【0051】
以上のような本発明の実施の形態1における顕微鏡においては、シャーレ保持部材32が第1保持部材を構成し、スライドガラス保持部材31が第2保持部材を構成し、ガイド孔323、ネジ312d及びロック部材33が、第1保持部材が2保持部材に対して相対的に移動可能となる態様で第1保持部材と第2保持部材とを係合し、第1保持部材に保持された第1標本載置部材の標本の観察を行う場合には、第1保持部材と第2保持部材とを互いの開口が対向する態様で重なった状態にする一方、第2保持部材に保持された第2標本載置部材の標本の観察を行う場合には、第2保持部材の外方域に第1保持部材を退避移動させた状態にする係合手段を構成している。
【0052】
ところで、再びシャーレ100aに載置された標本の観察を行う場合には、ロック部材33のツマミ331が操作されて、ロック部材33がバネによる付勢力に抗して左方に移動する。ここで、第1規制孔部323bの延在長さは、第2規制孔部323cの延在長さと略等しいから、ロック部材33(係合突起332)が第1規制孔部323bを移動するときに対物レンズ10を退避変位量だけ下方に変位させることができる。左方に向けて移動するロック部材33が距離Lだけ移動した後、ツマミ331が操作されることにより、シャーレ保持部材32が手前側に押圧されることにより、シャーレ保持部材32は、手前側に移動する。そして、ロック部材33を構成する係合突起332がガイド孔部323aの奥側端部に至ると、バネの付勢力により第2規制孔部323cに進入する結果、ロック部材33が右方に移動する。これにより、シャーレ保持部材32は、スライドガラス保持部材31と重なった状態となる。そして、シャーレ保持部材32の開口321を覆う態様で開口縁部321aの上面にシャーレ100aを載置することにより、シャーレ100aに載置された標本の観察を行うことができる。
【0053】
以上説明したように本発明の実施の形態1における顕微鏡によれば、シャーレ保持部材32が、開口321を覆う態様で開口縁部321aの上面にシャーレ100aが載置された場合にシャーレ100aを保持し、スライドガラス保持部材31が、開口321を臨む態様で付設されたスライドガラス支持部313によりスライドガラス100bが支持された場合にスライドガラス100bを保持し、シャーレ保持部材32がスライドガラス保持部材31に対して相対的に移動可能となる態様でスライドガラス保持部材31に係合され、シャーレ100aの標本の観察を行う場合には、シャーレ保持部材32がスライドガラス保持部材31と互いの開口311,321が対向する態様で重なった状態になり、スライドガラス100bの標本の観察を行う場合には、スライドガラス保持部材31の奥側域にシャーレ保持部材32を退避移動させた状態になるので、シャーレ100aの標本を観察する場合には、シャーレ保持部材32の開口321を覆う態様で開口縁部321aの上面にシャーレ100aを載置するだけで良く、シャーレ100aが転倒する虞れがない。スライドガラス100bの標本を観察する場合にはシャーレ保持部材32を退避移動させてスライドガラス保持部材31にスライドガラス100bを保持させれば良く、この保持は、スライドガラス100bの両端部をスライドガラス支持部313に載置して成り立つものであり、しかもスライドガラス保持部材31の開口311はシャーレ保持部材32の開口321よりも面積を大きくしてあることから、スライドガラス100bの略全域を観察することが可能である。従って、シャーレ100aやスライドガラス100b等の種々の形状を有する標本載置部材を安定して、かつ簡単に保持することができ、標本載置部材に載置された標本を良好に観察することができる。
【0054】
上記顕微鏡によれば、シャーレ保持部材32を構成するガイド孔323の第1規制孔部323b及び第2規制孔部323cは、略等しい延在長さを有し、その延在長さは、ロック部材33(係合突起332)が該孔部を移動するときに対物レンズ10を退避変位量だけ下方に変位させることができるのに十分な大きさを有していることから、シャーレ保持部材32をスライドガラス保持部材31に対して移動させる際に、これらと対物レンズ10が衝突してしまうことがなく、装置機器の破損を招来する虞れがない。
【0055】
また、上記顕微鏡によれば、センサ22により検知される磁石312c,324a,334の数によりシャーレ保持部材32とスライドガラス保持部材31との位置関係を認識できるため、シャーレ100aに載置された標本の観察、並びにスライドガラス100bに載置された標本の観察を行う場合には、駆動部位を必要十分な量だけ駆動させれば良く、これにより安全な装置を検鏡者に提供することができる。
【0056】
以上、本発明の好適な実施の形態1について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。例えば、図9に示すように、シャーレ保持部材32′を構成するガイド孔326は、前後方向が長手方向となる態様で形成されたガイド孔部326aと、ガイド孔部326aの手前側端部より右方手前側に向けて斜めに延在する第1規制孔部326bと、ガイド孔部326aの奥側端部より右方奥側に向けて斜めに延在する第2規制孔部326cとを有して成るものであっても良い。ここで、ガイド孔部326aの延在長さは、シャーレ保持部材32′の移動量を規定するものであり、予め必要十分な移動量を確保する観点から決められている。第1規制孔部326bの延在長さと第2規制孔部326cの延在長さとは略等しい。このようなガイド孔326を有するシャーレ保持部材32′を適用した場合、第1規制孔部326bの縁部及び第2規制孔部326cの縁部がカムとして作用し、ロック部材33をバネの付勢力に抗して左方に移動させなくても、ツマミ331を操作してシャーレ保持部材32を奥側に向けて押圧するだけで、シャーレ保持部材32を退避移動させることができる。また逆に、シャーレ保持部材32が退避移動した状態にある場合には、ツマミ331を操作してシャーレ保持部材32を手前側に押圧するだけで、シャーレ保持部材32を移動させることができ、スライドガラス保持部材31と重なった状態にすることができる。このような構成によっても、上述した実施の形態1の顕微鏡と同様の作用効果を奏することができる。
【0057】
また、上述した実施の形態1では、スライドガラス保持部材31、シャーレ保持部材32及びロック部材33のそれぞれに設けた磁石312c,324a,334の検知パターンにより、シャーレ保持部材32の位置、並びにシャーレ保持部材32の移動開始の有無を検知するようにしていたが、本発明では、3つの磁石312c,324a,334を必ずしも必要とするものではなく、2つの磁石の検知パターンによって、シャーレ保持部材の位置、並びにシャーレ保持部材の移動開始の有無を検知するようにしても構わない。
【0058】
<実施の形態2>
図10及び図11は、それぞれ本発明の実施の形態2における顕微鏡を構成する保持ユニットを拡大して示すものであり、図10は、平面図であり、図11は、図10のG−G線断面図である。尚、上述した実施の形態1と同様の構成を有するものには同一の符号を付してその説明を省略する。
【0059】
ここに例示する保持ユニット50は、スライドガラス保持部材51と、シャーレ保持部材52とを備えて構成してある。
【0060】
スライドガラス保持部材51は、土台310に開口321、ガイド部312、スライドガラス支持部313、モータ514、センサ515を設けて構成してある。つまり、上述した実施の形態1におけるスライドガラス保持部材31とモータ514及びセンサ515を備える点で異なる。モータ514は、右側ガイド部312の奥側上面に配設した正逆回転のものである。かかるモータ514は、後述する制御装置40から指令が与えられることにより駆動し、連結される歯車514aを正方向、あるいは逆方向に回転させるものである。
【0061】
センサ515は、左側ガイド部312の奥側端部の上面に配設されたものである。このセンサ515は、後述するシャーレ保持部材52を構成する磁石522,523,524を検知し、その旨を制御装置40に検知信号として与えるものである。
【0062】
シャーレ保持部材52は、例えば板状のシャーレ保持板部材320に、開口321、ガイド部312、ラック部521及び磁石522,523,524を設けて構成してある。ラック部521は、シャーレ保持板部材320の右側端部において前後方向が長手方向となる態様で配設された長尺状のものである。このラック部521は、スライドガラス保持部材51を構成するモータ514の歯車514aと噛合するものである。
【0063】
磁石522,523,524は、複数(図示の例では3つ)設けてあり、シャーレ保持板部材320の左側領域における手前側に2つの手前側磁石522,523が左右に並んで設けてあり、該左側領域の奥側に1つの奥側磁石524が設けてある。これら磁石522,523,524は、シャーレ保持部材52が移動した際にスライドガラス保持部材51を構成するセンサ515と対向可能になっている。
【0064】
図12は、本発明の実施の形態2である顕微鏡の制御系を示すブロック図であり、特徴的な構成要素のみを示している。顕微鏡は、エンコーダ45及び制御装置40を備えている。
【0065】
エンコーダ45は、レボルバ保持台9の位置を検知するものである。このエンコーダ45は、レボルバ保持台9が上記所定の退避変位量、すなわちシャーレ保持部材52の下面(シャーレ保持板部材320の下面)からシャーレ100aに載置された標本に至る距離に、保持ユニット50の寸法公差を加えた大きさの量だけ変位した場合、つまり対物レンズ10が退避変位量分だけ変位した場合にその旨の信号を制御装置40に与えるものである。
【0066】
制御装置40は、本実施の形態2の特徴的なものとして移動制御部46を備えている。移動制御部46は、後述する移動制御処理を実施するものであり、入力処理部461、第1モータ駆動処理部462及び第2モータ駆動処理部463を備えている。入力処理部461は、センサ515やエンコーダ45、あるいは入力部42から与えられる種々の信号を入力処理するためのものである。第1モータ駆動処理部462は、回転焦準部11に内蔵されたモータ11aを駆動させるものである。第2モータ駆動処理部463は、スライドガラス保持部材51を構成するモータ514を正方向、あるいは逆方向に駆動させるものである。
【0067】
図13は、上記制御装置を構成する移動制御部が実施する移動制御処理の処理内容を示すフローチャートである。かかる移動制御処理を説明することにより、シャーレ保持部材52がスライドガラス保持部材51に対して相対的に変位する保持ユニット50の動作について説明する。
【0068】
検鏡者により入力部42が操作されて標本載置部材100の切換指令を、入力処理部461を通じて入力した場合(ステップS101:Yes)、より具体的には、モニター等に表示された標本載置部材交換ボタンがタッチされることにより切換指令が与えられた場合、移動制御部46は、第1モータ駆動処理部462を通じて回転焦準部11に内蔵されたモータ11aを駆動させてレボルバ保持台9を下方向に変位させ(ステップS102)、その後エンコーダ45からの応答待ちとなる。
【0069】
そして、入力処理部461を通じてエンコーダ45からレボルバ保持台9が退避変位量分だけ変位した旨の信号を入力した場合(ステップS103:Yes)、移動制御部46は、入力処理部461を通じてセンサ515が奥側磁石524を検知しているか否かを判断する。そして、センサ515が奥側磁石524を検知している場合(ステップS104:Yes)、すなわち図10及び図11に示すようにシャーレ保持部材52がスライドガラス保持部材51に重なった状態にある場合、移動制御部46は、第2モータ駆動処理部463を通じてモータ514を正方向に回転させる(ステップS105)。かかるモータ514が正方向に回転することにより、歯車514aを介して噛合するラック部521を奥側方向に移動、つまりシャーレ保持部材52を奥側に向けて退避移動させる。
【0070】
そして、入力処理部461を通じてセンサ515が手前側磁石522,523を検知した場合(ステップS106:Yes)、移動制御部46は、第2モータ駆動処理部463を通じてモータ514の駆動を停止させ(ステップS107)、その後に手順をリターンさせて今回の処理を終了する。
【0071】
これによれば、図14に示すようにシャーレ保持部材52を予め決められた移動量分だけ退避移動させることができる。
【0072】
一方、上記ステップS104において、センサ515が奥側磁石524を検知しておらず、手前側磁石522,523を検知している場合(ステップS104:No)、すなわち図14に示すようにシャーレ保持部材52がスライドガラス保持部材51から退避移動した状態にある場合、移動制御部46は、第2モータ駆動処理部463を通じてモータ514を逆方向に回転させる(ステップS108)。かかるモータ514が逆方向に回転することにより、歯車514aを介して噛合するラック部521を手前側方向に移動、つまりシャーレ保持部材52を手前側に向けて退避移動させる。
【0073】
そして、入力処理部461を通じてセンサ515が奥側磁石524を検知した場合(ステップS109:Yes)、移動制御部46は、第2モータ駆動処理部463を通じてモータ514の駆動を停止させ(ステップS107)、その後に手順をリターンさせて今回の処理を終了する。
【0074】
これによれば、図10及び図11に示すようにシャーレ保持部材52をスライドガラス保持部材51に重なった状態にすることができる。
【0075】
以上説明したような第2の実施の形態における顕微鏡においては、シャーレ保持部材52が第1保持部材を構成し、スライドガラス保持部材51が第2保持部材を構成し、モータ514、歯車514a、ラック部521が、第1保持部材が2保持部材に対して相対的に移動可能となる態様で第1保持部材と第2保持部材とを係合し、第1保持部材に保持された第1標本載置部材の標本の観察を行う場合には、第1保持部材と第2保持部材とを互いの開口が対向する態様で重なった状態にする一方、第2保持部材に保持された第2標本載置部材の標本の観察を行う場合には、第2保持部材の外方域に第1保持部材を退避移動させた状態にする係合手段を構成し、センサ515及び磁石522,523,524が第1保持部材が第2保持部材に対して退避移動した状態、あるいは重なった状態にあるかを検知する検知手段を構成し、制御装置40が切換指令が与えられ、かつ検知手段により退避移動した状態にあることが検知された場合に、第1保持部材を第2保持部材に重なった状態になるまで移動させる一方、切換指令が与えられ、かつ検知手段により重なった状態にあることが検知された場合に、第1保持部材を退避移動させる制御手段を構成している。
【0076】
以上説明したような本発明の実施の形態2である顕微鏡によれば、上述した実施の形態1である顕微鏡が奏する効果に加え、次のような効果を奏する。すなわち、制御装置40によりシャーレ保持部材52の移動を自動的に行うようにしたので、検鏡者は入力部42を通じて切換指令を与えて、シャーレ100a又はスライドガラス100bを載置すればよく、操作が煩雑なものにならない。
【0077】
<実施の形態3>
図15〜図17は、それぞれ本発明の実施の形態3である顕微鏡を構成する保持ユニットを拡大して示すものであり、図15は、平面図であり、図16は、図15のB−B線断面図であり、図17は、図15のB′−B′線断面図である。尚、上述した実施の形態1と同様の構成を有するものには同一の符号を付してその説明を省略する。
【0078】
ここに例示する保持ユニット60は、スライドガラス保持部材61と、シャーレ保持部材62と、切換部材63とを備えて構成してある。
【0079】
スライドガラス保持部材61は、土台310に開口311、ガイド部612及びスライドガラス支持部313を設けて構成してある。ガイド部612は、開口311を囲繞するよう上方に突出して形成されたものであり、土台310との間にシャーレ保持部材62の進入を許容する中空部612aが設けてある。
【0080】
シャーレ保持部材62は、例えば板状のシャーレ保持板部材320に、開口321、ツマミ622及び突起部623を設けて構成してある。ツマミ622は、シャーレ保持板部材320の手前側端部の上面に左右一対となる態様で突設してあり、検鏡者が掴むのに充分な大きさを有している。突起部623は、シャーレ保持板部材320の下面におけるツマミ622の突設個所に対応する部分に下方に突出する態様で設けてある。この突起部623の突出高さは、上述した退避変位量に相当する大きさを有している。また、図15〜17に例示するようにシャーレ保持部材62がスライドガラス保持部材61に重なった状態にある場合には、突起部623は、スライドガラス保持部材61を構成する土台310に形成された孔部610aに挿入されている。
【0081】
切換部材63は、複数(図示の例では2つ)設けてあり、シャーレ保持部材62の両側域に設けてある。この切換部材63は、シャーレ保持部材62の臨む端部631が、その上面が下方に向けて漸次傾斜した楔状を成している。この切換部材63には左右方向が長手方向となる長孔632が複数形成してあり、それぞれの長孔632には、土台310に形成されたピン610bが挿通している。
【0082】
このような構成を有する保持ユニット60では、シャーレ100aに載置された標本の観察を行う場合には、スライドガラス保持部材61に重なった状態にあるシャーレ保持部材62の開口321を覆う態様で開口縁部321aの上面にシャーレ100aを載置すればよい。
【0083】
そして、シャーレ100aではなくスライドガラス100bに載置された標本の観察を行う場合には、次のようにしてスライドガラス保持部材61に重なった状態にあるシャーレ保持部材62を退避移動させればよい。すなわち、切換部材63をシャーレ保持部材62に向けてスライド移動させることにより、切換部材63の楔状の端部631によりシャーレ保持部材62は上方に向けて移動することになる。ここで切換部材63のスライド移動は、長孔632にピン610bが挿通していることにより、長孔632の左右方向の長さの分だけに規制されている。
【0084】
このようにシャーレ保持部材62が上方に向けて移動することにより、突起部623が孔部610aから離脱する。突起部623が孔部610aから離脱する場合には、シャーレ保持部材62は上述した退避変位量に相当する分だけ上方に移動したことになる。
【0085】
そして、ツマミ622が操作されることにより、シャーレ保持部材62は奥側に向けて退避移動し、図18に示すような状態になる。このシャーレ保持部材62の退避移動では、突起部623が土台310の上面に摺接する結果、その高さレベルが保持される。従って、対物レンズ10を退避変位量分だけ下方に変位させなくても移動するシャーレ保持部材62と対物レンズ10とが接触することを回避することができる。
【0086】
シャーレ保持部材62を退避移動させた後、スライドガラス100bの両端部がスライドガラス支持部313に載置されて支持されることにより、スライドガラス保持部材61はスライドガラス100bを保持する。そして、上述した手順によりスライドガラス100bに載置された標本の観察を行うことができる。
【0087】
その後、シャーレ100aに載置された標本の観察を行う場合には、シャーレ保持部材62を手前側に移動させて、突起部623を孔部610aに進入させればよい。
【0088】
以上説明したように本発明の実施の形態3における顕微鏡によれば、シャーレ保持部材62が、開口321を覆う態様で開口縁部321aの上面にシャーレ100aが載置された場合にシャーレ100aを保持し、スライドガラス保持部材61が、開口311を臨む態様で付設されたスライドガラス支持部313によりスライドガラス100bが支持された場合にスライドガラス100bを保持し、シャーレ保持部材62がスライドガラス保持部材61に対して相対的に移動可能となる態様でスライドガラス保持部材61に係合され、シャーレ100aの標本の観察を行う場合には、シャーレ保持部材62がスライドガラス保持部材61と互いの開口311,321が対向する態様で重なった状態になり、スライドガラス100bの標本の観察を行う場合には、スライドガラス保持部材61の奥側域にシャーレ保持部材62を退避移動させた状態になるので、シャーレ100aの標本を観察する場合には、シャーレ保持部材62の開口321を覆う態様で開口縁部321aの上面にシャーレ100aを載置するだけで良く、シャーレ100aが転倒する虞れがない。スライドガラス100bの標本を観察する場合にはシャーレ保持部材62を退避移動させてスライドガラス保持部材61にスライドガラス100bを保持させれば良く、この保持は、スライドガラス100bの両端部をスライドガラス支持部313に載置して成り立つものであり、しかもスライドガラス保持部材61の開口311はシャーレ保持部材62の開口321よりも面積を大きくしてあることから、スライドガラス100bの略全域を観察することが可能である。従って、シャーレ100aやスライドガラス100b等の種々の形状を有する標本載置部材を安定して、かつ簡単に保持することができ、標本載置部材に載置された標本を良好に観察することができる。
【0089】
以上、本発明の実施の形態1〜3について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。例えば、シャーレ100aの代わりにウェルプレートを載置するようにしても良い。また、オートフォーカスユニットを顕微鏡に付加して、効率的に観察を行うようにしても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施の形態1である顕微鏡を正面から示した概略図である。
【図2】本発明の実施の形態1である顕微鏡の制御系を示す接続図である。
【図3】図1に示したステージに搭載された保持ユニットを拡大して示す平面図である。
【図4】図3中のC−D線断面図及びE−F線断面図を連続して示したものである。
【図5】図3に示した保持ユニットの側面図である。
【図6】図3に示した保持ユニットの要部を拡大して示す拡大平面図である。
【図7】図3に示した保持ユニットを拡大して示す平面図である。
【図8】図7に示した保持ユニットの側面図である。
【図9】図3に示した保持ユニットの変形例の要部を示す説明図である。
【図10】本発明の実施の形態2における顕微鏡を構成する保持ユニットを拡大して示す平面図である。
【図11】図10のG−G線断面図である。
【図12】本発明の実施の形態2である顕微鏡の制御系を示すブロック図である。
【図13】制御装置を構成する移動制御部が実施する移動制御処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図14】本発明の実施の形態2における顕微鏡を構成する保持ユニットを拡大して示す平面図である。
【図15】本発明の実施の形態3である顕微鏡を構成する保持ユニットを拡大して示す平面図である。
【図16】図15のB−B線断面図である。
【図17】図15のB′−B′線断面図である。
【図18】本発明の実施の形態3である顕微鏡を構成する保持ユニットを拡大して示す平面図である。
【符号の説明】
【0091】
1 顕微鏡本体
2 ステージ
22 センサ
30 保持ユニット
31 スライドガラス保持部材
310 土台
311 開口
312 ガイド部
313 スライドガラス支持部
32 シャーレ保持部材
320 シャーレ保持板部材
321 開口
321a 開口縁部
322 ツマミ
323 ガイド孔
325 ガイド部
33 ロック部
330 ロック板部材
331 ツマミ
332 係合突起
333 長孔
334 磁石
40 制御装置
41 記憶部
42 入力部
43 出力部
100a シャーレ
100b スライドガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形状の底面に標本が載置された第1標本載置部材と、矩形状の底面に標本が載置された第2標本載置部材とを個別に保持する保持ユニットと、
前記標本を観察する対物レンズと
を備えた顕微鏡において、
前記保持ユニットは、
形成された円形状の開口を覆う態様で開口縁部の上面に前記第1標本載置部材が載置された場合に該第1標本載置部材を保持し、前記対物レンズの光軸上で前記第1標本載置部材に載置された標本の観察を可能にする第1保持部材と、
矩形状の開口を有し、付設された支持部材により前記第2標本載置部材が前記開口を臨む態様で支持された場合に該第2標本載置部材を保持し、前記対物レンズの光軸上で前記第2標本載置部材に載置された標本の観察を可能にする第2保持部材と、
前記第1保持部材が前記第2保持部材に対して相対的に移動可能となる態様で、第1保持部材と第2保持部材とを係合する係合手段と
を備え、
前記係合手段は、前記第1保持部材に保持された第1標本載置部材の標本の観察を行う場合には、前記第1保持部材と前記第2保持部材とを互いの開口が対向する態様で重なった状態にする一方、前記第2保持部材に保持された第2標本載置部材の標本の観察を行う場合には、前記第2保持部材の外方域に前記第1保持部材を退避移動させた状態にすることを特徴とする顕微鏡。
【請求項2】
前記保持ユニットに保持された第1標本載置部材、あるいは第2標本載置部材に対して前記対物レンズを近接離反する態様で変位させる変位機構を備え、
前記係合手段は、前記変位機構が前記対物レンズを予め決められた変位量だけ変位するまで前記第1保持部材の相対的な移動を規制することを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項3】
前記第1保持部材が前記第2保持部材に対して退避移動させた状態、あるいは重なった状態にあるかを検知する検知手段と、
切換指令が与えられ、かつ前記検知手段により退避移動させた状態にあることが検知された場合に、前記第1保持部材を前記第2保持部材に重なった状態になるまで移動させる一方、切換指令が与えられ、かつ前記検知手段により重なった状態にあることが検知された場合に、前記第1保持部材を退避移動させる制御手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項4】
前記保持ユニットに保持された第1標本載置部材、あるいは第2標本載置部材に対して前記対物レンズを近接離反する態様で変位させる変位機構を備え、
前記制御手段は、切換指令が与えられた場合であっても前記変位機構が前記対物レンズを予め決められた変位量だけ変位するまで前記第1保持部材の相対的な移動を規制することを特徴とする請求項3に記載の顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−54850(P2010−54850A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220291(P2008−220291)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】