説明

風力発電装置

【課題】構造が簡易で低コストで製造可能としつつ、強風時にプロペラをフェザリング状態にし得る風力発電装置を提供する。
【解決手段】メインシャフト14の回転に伴い発電する発電機12と、メインシャフト14に取付けられると共にブレード22の基端部22Aを回動可能に支持するハブ20と、ハブ20の前方に配置されて風を受ける受風材24と、ハブ20と受風材24との間に配置されて弾性変形により受風材24を移動可能とする圧縮コイルスプリング36と、ブレード22の基端側部分と受風材24との間を連結し、受風材24の移動に伴いブレード22のピッチを変化させるリンク38とにより風力発電装置10が構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造が簡素で低コストで製造可能としつつ、強風時にプロペラをフェザリング状態にし得る風力発電装置に関し、特に小型の風力発電装置に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、クリーンなエネルギーによって発電する装置として、風力を用いた風力発電装置が開発されている。この風力発電装置としては、発電機に接続されたメインシャフトの端部にプロペラを設置し、風力をこのプロペラが受けることによりメインシャフトを回転させて、発電機にて発電させるプロペラ型の風車等が知られている。
【0003】
このプロペラ型の風車等の風力発電装置の運転中には、プロペラのメインシャフトが風向き方向に合致しなければならないだけでなく、強風時にはプロペラの回転数が異常に高くなって風力発電装置が破損するおそれがあるため、プロペラをフェザリング状態にして回転を停止あるいは低下させる必要がある。
【0004】
従来、大型の装置においては、風向き方向を検知してモータ等の駆動源の作用により風の方向にプロペラを向ける動作を行う他に、上記のような操作を行うため、プロペラの現回転数の検出に基づき制御装置が判断して可変ピッチ装置によりプロペラの各ブレードのピッチを変化させ、プロペラをフェザリング状態にするような風力発電装置が知られている(特許文献1〜3参照)。
【0005】
しかし、以上のようなプロペラのピッチを変化させるために、制御装置や可変ピッチ装置を持つことは大型の風力発電装置においては一般的なことであるが、小型の風力発電装置では発生する動力が小さいため、高価な制御装置や可変ピッチ装置を持つことは経済的に困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−303255公報
【特許文献2】特開2002−31031公報
【特許文献3】特開2007−224879公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、構造が簡素で低コストで製造可能としつつ、強風時にプロペラをフェザリング状態にし得る風力発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決した請求項1記載の発明は、プロペラが風を受けてメインシャフトが回転し、その回転に伴い発電する発電機を搭載した風力発電装置であって、
メインシャフトに取付けられると共にプロペラブレードの基端部をピッチ可変に回動可能に支持するハブと、
ハブの前方に配置されて風を受ける受風材と、
ハブと受風材との間に配置されて弾性変形する弾性部材と、
前記弾性部材の弾性力に抗する受風材の移動に従って、ブレードの基端部をハブによる支持軸線周りに回転させてブレードのピッチを変化させるリンク機構と、
を有することを特徴とする風力発電装置である。
【0009】
請求項1に係る風力発電装置によれば、発電機のメインシャフトに取付けられるハブが、ブレードの基端部を回動可能に支持して、このハブがプロペラの回転可能な中心部を構成している。また、予め設定された以上の力が加わった場合には、ハブの前方に配置されて風を受ける受風材とハブとの間に配置される弾性部材が弾性変形して受風材が移動し、ブレードの基端側部分と受風材との間を連結するリンク機構が、この受風材の移動に伴いブレードのピッチを変化させる。
【0010】
従って、通常使用時には、弾性部材の付勢力により受風材の位置が変化しないために、ブレードは回転状態のピッチに維持される。これに対し、強風時には、弾性部材の弾性力に抗する受風材の移動に従って、リンク機構によってブレードのピッチが変化して、ブレードがフェザリング状態になる。
【0011】
以上のように、本発明に係る風力発電装置によれば、受風材の移動とリンク機構とを用いた簡素な構造としたことで、低コストで製造可能としつつ、強風時にプロペラをフェザリング状態にできるようになる。なお、上記の際の通常使用時と強風時との間の調整は、受風材の風を受ける面積の変更や、弾性部材の強さ、弾性部材の抗力調整部材による位置調整などの予圧の設定・変更で行うことができる。
【0012】
請求項2の発明は、ブレードの基端側部分からアーム材が突出して設けられ、このアーム材の先端部にリンク機構の一端が回動可能に連結されている請求項1記載の風力発電装置である。
このアーム材を適切な長さにすることで、小さな力でもブレードをハブに対して回動できるので、強風時に合わせて容易にブレードのピッチを変更可能となり、風力発電装置の最適な設計ができるようになる。
【0013】
請求項3の発明は、受風材が、板状に形成された受風板と、受風板の後方に固定されたブラケットとを有し、前記ブラケットと前記ハブとの間に前記弾性部材が介装され、前記受風材が前記弾性部材の弾性力に抗して前後方向に移動可能に前記メインシャフトに支持されている請求項1または2記載の風力発電装置である。
メインシャフトに対して前後移動可能に支持される受風材が、上記の受風板とブラケットとを有することで、受風材が必要以上に大型化したり、受風材の強度を必要以上に高めたりする必要が無くなり、結果として風力発電装置の製造コストが低減される。
【0014】
請求項4の発明は、弾性部材が圧縮コイルスプリングにより形成され、この圧縮コイルスプリングの密巻状態でブレードが風向方向と平行となる構成とされた請求項1〜3のいずれか1項に記載の風力発電装置である。
弾性部材である圧縮コイルスプリングが密巻状態となった時に、ブレードが風向方向と平行になることで、圧縮コイルスプリングがこれ以上変形しないのに伴い、強風時におけるフェザリング状態の維持が確実になる。
【0015】
発電機、ハブ、受風材、弾性部材及びリンク機構を含んで装置本体が構成され、
対地固定の支持台から立設された支持シャフトに、前記装置本体が縦軸周りに回転可能に支持されると共に、装置本体の後部に垂直尾翼が取付けられている請求項1〜4のいずれか1項に記載の風力発電装置である。
後部に垂直尾翼が取付けられた装置本体がシャフトに対して回転可能に支持されることで、垂直尾翼に風が作用してハブが常時風上に向く形で装置本体が回転し、風力を最大源利用可能な風力発電装置となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、構造が簡素で低コストで製造可能としつつ、強風時にプロペラをフェザリング状態にし得る風力発電装置が提供されるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係る風力発電装置の斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る風力発電装置の要部分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る風力発電装置の正面図である。
【図4】図3の中心部分拡大図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る風力発電装置の側面断面図である。
【図6】図4の要部拡大図であって通常使用時を表わす図である。
【図7】図4の要部拡大図であって強風時を表わす図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る風力発電装置の一実施の形態を、以下に図面を参照しつつ説明する。
図1及び図5に示すように、本実施の形態に係る風力発電装置10の本体カバー16内には、発電機12が備えられていて、この発電機12の発電軸12Aに水平方向に伸びるように配置されたメインシャフト14が連結されている。このため、このメインシャフト14の回転に伴い発電機12が発電するようになっていて、このメインシャフト14は、本体カバー16内においてベアリング18により回転可能に支持されると共に、先端が本体カバー16の外側に突出している。
【0019】
本実施の形態では、図2から図4に示すように、たとえば4枚とされる複数枚のブレード22の円筒形に形成された基端部22Aを回動可能、かつ間隔の各90°の角度でそれぞれ嵌合されるハブ20が、これら4枚のブレード22の中心部に位置している。そして、このハブ20がメインシャフト14と一体的に回転するようにこのメインシャフト14がハブ20に貫通しつつ連結されている。
【0020】
メインシャフト14は、ハブ20だけでなくこのハブ20を覆っている筒状の保護カバー材20Aを貫通し、さらに伸びて、ハブ20の前方に風を受けるために配置された受風材24が、このメインシャフト14に支持されている。具体的には、この受風材24は、金属材により円形で板状に形成された受風板26、及びこの受風板26に4つのビス30でネジ止められて固定される金属材による十字形状のブラケット28を有している。これらの中心をメインシャフト14が貫通して、メインシャフト14の他端に設けられた雄ねじ14Aにワッシャ32を介してナット34がネジ止められていて、これらワッシャ32及びナット34がメインシャフト14から受風材24が外れないようにするためのストッパとしての機能を奏している。
【0021】
他方、弾性部材例である圧縮コイルスプリング36がメインシャフト14の外周側に巻き掛けられる形で、ブラケット28とハブ20との間に配置されていて、この圧縮コイルスプリング36が常時これらを離間するように付勢している。この結果、これら受風板26及びブラケット28の中心部分が、メインシャフト14に前後移動可能に支持されているものの、通常は圧縮コイルスプリング36により図5及び図6における左端側に押しつけられている。
【0022】
この一方、4枚のブレード22の基端部22A寄りの箇所である基端側部分からは、アーム材22Bが放射状に各1本突出して設けられていて、これら4本のアーム材22Bの先端部には、円弧状に形成された4本のリンク38の各一端が回動可能に連結されている。そして、十字形状に形成されたブラケット28の4つの外端には、これら4本のリンク38の各他端が回動可能に連結されている。
【0023】
このことで、各リンク38がブレード22の基端側部分と受風材24との間を連結することになる。このため、圧縮コイルスプリング36の付勢力に抗しつつ受風材24が移動するに伴い、リンク38が図6に示す位置から図7に示す位置に移動して、ブレード22のピッチが変化し、図7に示す圧縮コイルスプリング36の密巻状態において、ブレード22が風向方向Wとほぼ平行になる。
【0024】
さらに、本実施の形態では、これら発電機12、ハブ20、ブレード22、受風材24、圧縮コイルスプリング36、リンク38及び本体カバー16等により、風力発電装置10の装置本体40が形成されている。また、図1及び図3に示すように、接地面Aに配置された金属製で円盤状の支持台42から垂直に伸びる支持シャフト44が、装置本体40の下部に形成する連結案内部46内に挿入されて、この連結案内部46内に配置されているベアリング48により装置本体40と支持シャフト44との間が相対回転可能になっている。
【0025】
したがって、支持台42及び支持シャフト44に対して装置本体40が回転可能に支持されていることになる。そして、一端が装置本体40の後部にネジ止められた連結具50を介して、板状に形成されて装置本体40寄りの箇所がテーパ状に形成された垂直尾翼52が、装置本体40の後部に取付けられている。なお、装置本体40の発電機12からは、電力を送り出すための送電線54が支持シャフト44や支持台42内を貫通して、本実施の形態の風力発電装置10外にまで伸びていて、外部に電力を供給可能となっている。
【0026】
次に、本実施の形態に係る風力発電装置10の作用を以下に説明する。
本実施の形態に係る風力発電装置10によれば、風速が正常な範囲である通常使用時には、図6に示す圧縮コイルスプリング36の付勢力により受風材24の位置が変化しないのに伴い、ハブ20に支持されるブレード22のピッチが維持される。
【0027】
これに対して、正常な範囲を越えた強風時には、ハブ20の前方に配置されて風を受けるための受風材24が押され、この受風材24とハブ20との間に配置される圧縮コイルスプリング36が弾性変形して縮まることで、受風材24が移動する。この受風材24が図7に示すストロークSだけ移動して位置が変化するのに伴って、ブレード22の基端側部分から突出したアーム材22Bと受風材24との間を連結するリンク38の作用により、ブレード22の基端部22Aが回転してブレード22のピッチが変化する。つまり、リンク38が移動することでブレード22のピッチが変化して、角度が最大90°程度変化してブレード22が図7に示すフェザリング状態になる。
【0028】
以上より、本実施の形態に係る風力発電装置10によれば、受風材24の移動とリンク機構とを用いた単純な構造としたことで、構造が簡易で低コストで製造可能としつつ、強風時にプロペラをフェザリング状態にできるようになる。
【0029】
この際、圧縮コイルスプリング36の密巻状態でブレード22が風向方向と平行になる。このように圧縮コイルスプリング36が密巻状態となった時に、ブレード22が風向方向Wと平行になることで、圧縮コイルスプリング36がこれ以上変形しないのに伴い、強風時におけるフェザリング状態の維持が確実になる。
【0030】
さらに、このアーム材22Bを適切な長さにすることで、小さな力でもブレード22をハブ20に対して回動できるので、強風時に合わせて容易にブレード22のピッチを変化可能となり、風力発電装置10の最適な設計ができるようになる。また、メインシャフト14に前後移動可能に支持される受風材24が、円形で板状に形成された受風板26とリンク38の他端が回動可能に連結されるブラケット28とから形成されることで、受風材24が必要以上に大型化したり、受風材24の強度を必要以上に高めたりする必要が無くなり、結果として風力発電装置10の製造コストが低減される。
【0031】
他方、本実施の形態に係る風力発電装置10によれば、発電機12、ハブ20、ブレード22、受風材24、圧縮コイルスプリング36及びリンク38により装置本体40が形成され、接地面Aに配置された支持台42から垂直に伸びる支持シャフト44に、装置本体40が回転可能に支持されると共に、この装置本体40の後部に垂直尾翼52が取付けられている。
従って、垂直に伸びる支持シャフト44の頂点にプロペラが360°方向にわたって水平方向に回転するように位置するのに伴い、垂直尾翼52に風が作用してハブ20が常時風上に向く形で装置本体40が回転することで、風力を最大源利用可能な風力発電装置10となる。
【0032】
これら通常使用時と強風時との間の調整は、受風材24を構成する受風板26の風を受ける面積の変更や、圧縮コイルスプリング36の強さや予圧の設定変更等で行うことができる。具体的には、風速が20m/秒のときには風圧が20N/m2程度であり、風速が30m/秒のときには風圧が45N/m2程度であることから、例えば受風板26の面積を1m2とし圧縮コイルスプリング36の予圧を20Nと設定しておけば、少なくとも風速20m/秒までが受風材24が固定された状態の通常使用時となる。
【0033】
これに対して、風速20m/秒を越えたときが強風時となり、風速20m/秒を越えると受風板26が徐々に風圧で押されて、ブレード22のピッチが変化する。さらに、風速30m/秒以上の強風時にブレード22をフェザリング状態にする場合には、45Nの力が加わったときに、圧縮コイルスプリング36が密巻状態になるように設定することが考えられる。
【0034】
なお、上記実施の形態では、ブレード22を4枚としたが、2、3あるいは5枚以上の他の枚数としても良い。この場合には、ブラケット28を十字形状にする替りに、ブレードが2、3枚であれば2方向に突出した形状や3方向に突出した形状にブラケットをすることが考えられ、ブレードが5枚であれば星形の形状にすることが考えられる。また、弾性部材も圧縮コイルスプリング以外の他の金属製のスプリングや金属製以外のゴム製等のものとすることが考えられる。受風板26の形状も加工性や面積確保の観点から円形としたが、円形以外の形状としても良く、大きさも検出が必要な風速に合わせて変更することが考えられる。
【0035】
他方、各部材の材質としては、鋼材等の金属材とすることが考えられるが、軽量化のためにアルミニウム等の他の金属材としたり、さらに強度の維持が可能であればFRP等の樹脂材料を用いても良い。
以上、本発明に係る実施の形態を説明したが、本発明は係る実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、小型の風力発電装置に適用可能となる。
【符号の説明】
【0037】
10 風力発電装置
12 発電機
14 メインシャフト
20 ハブ
22 ブレード
22B アーム材
24 受風材
26 受風板
28 ブラケット
36 圧縮コイルスプリング(弾性部材)
38 リンク
40 装置本体
42 支持台
44 シャフト
52 垂直尾翼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロペラが風を受けてメインシャフトが回転し、その回転に伴い発電する発電機を搭載した風力発電装置であって、
メインシャフトに取付けられると共にプロペラブレードの基端部をピッチ可変に回動可能に支持するハブと、
ハブの前方に配置されて風を受ける受風材と、
ハブと受風材との間に配置されて弾性変形する弾性部材と、
前記弾性部材の弾性力に抗する受風材の移動に従って、ブレードの基端部をハブによる支持軸線周りに回転させてブレードのピッチを変化させるリンク機構と、
を有することを特徴とする風力発電装置。
【請求項2】
ブレードの基端側部分からアーム材が突出して設けられ、このアーム材の先端部にリンク機構の一端が回動可能に連結されている請求項1記載の風力発電装置。
【請求項3】
受風材が、板状に形成された受風板と、受風板の後方に固定されたブラケットとを有し、前記ブラケットと前記ハブとの間に前記弾性部材が介装され、前記受風材が前記弾性部材の弾性力に抗して前後方向に移動可能に前記メインシャフトに支持されている請求項1または2記載の風力発電装置。
【請求項4】
弾性部材が圧縮コイルスプリングにより形成され、この圧縮コイルスプリングの密巻状態でブレードが風向方向と平行となる構成とされた請求項1〜3のいずれか1項に記載の風力発電装置。
【請求項5】
発電機、ハブ、受風材、弾性部材及びリンク機構を含んで装置本体が構成され、
対地固定の支持台から立設された支持シャフトに、前記装置本体が縦軸周りに回転可能に支持されると共に、装置本体の後部に垂直尾翼が取付けられている請求項1〜4のいずれか1項に記載の風力発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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