説明

風力発電設備

【課題】外面に従来設けられていた保護被膜(TBT)を排除できる海上風力発電設備の水中建造物を提供する。
【解決手段】海上風力発電設備の水中建造物であって、水中建造物の外面上の第1の保護層であって水中建造物内への海水の浸入を阻止するための第1の保護層と、この第1の保護層上に設けられた粗面構造体であって、第1の保護層の外面で、イガイおよび甲殻類といった海洋動物の成長を促進するための凹凸を有する粗面構造体とを具備してなり、海洋動物の成長は、パウンディング波および腐食性のある海水からの天然の防護物を提供するようになっている水中建造物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は海上風力発電設備か陸上風力発電設備のいずれかの風力発電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
そうした海上風力発電設備は既に建造されているが、現時点でさらに多くのものが計画されている。人工建造物が海に構築されるときはいつでも、水面下に存在する、この建造物の付随する構造体には、建造物を保護する被膜が設けられる。それらが外部に保護被膜(TBT)を備えることは特に船舶から知られており、この被膜は化学的に極度の問題をはらむだけでなく、海上風力発電設備に関連する海洋動植物(イガイ、フジツボおよびその他の海洋生物)の付着を可能な限り抑止するよう機能する。
【0003】
従来技術として、現時点では、概して特許文献1ないし特許文献3が注目される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許発明第199 46 899号明細書(DE 199 46 899)
【特許文献2】P 27 19 081
【特許文献3】独国特許発明第298 14 313号明細書(DE 298 14 313)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで本発明は海上風力発電設備に関して、海域の建造物に関してこれまでなされてきたこととは、まさに反対のことを実施すること、さらに詳しくは、たとえば特に海洋動植物の定着を抑止する外部構造体を提供するのではなく、逆にそれを大いに促進することを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下のような知見に基づくものである。すなわち、海上風力発電設備の場合のパイロン構造体あるいは水面以下に存在する風力発電設備の他の種類の構造体はまた、海洋生物がその上に十分に定着するという事実によって極めて良好な防護物を獲得する。たとえば、水面以下に存在する海上風力発電設備の構造体の表面がイガイで覆われた場合、そうしたイガイの成長は既に波のパウンディングからの優れた防護物を提供し、同時にまたかなり腐食性のある海水による腐食を阻止する天然の層を形成する。
【0007】
それゆえ好ましくは、海上風力発電設備の水面下に存在する構造体は、構造体内への海水の浸入を阻止する第1の保護層を備えるべきであり、さらにまた、海洋動植物の成長を大いに促進するさらなる構造体、たとえば天然花こう岩または砂岩クリフまたは砂岩の凹凸など比較的大きな凹凸からなる、たとえば非常に凹凸に富んだ層が、上記保護層に対して付加される。さらなる第2の保護層を上記二つの層間に設け、上記さらなる構造体の上で成長する海洋動植物が、この構造体自体の第1の保護層を侵食するのを阻止することもできる。
【0008】
その上に海洋動植物が定着するのを促進する層は、イガイ、フジツボあるいは他の海洋動植物が、極めて短期間で、すなわち1年以内に、その上に十分に既に定着できるように構成されるべきである。
【0009】
代替案としてではなく、上記説明の補足として、風力発電設備のパイロンにその下部領域において受け装置を設けることができる。そうした受け装置はたとえば海上風力発電設備の場合、イガイ網、たとえばカキおよび魚類の養殖網を設けるのに役立てることができ、もしくは他のイガイおよび魚類養殖設備がその上で受けられるかあるいは保持される。したがって、海上風力発電設備は、魚類、イガイ、ザルガイなどの有益な養殖を促進するために大いに利用できる。したがって本発明による海上風力発電設備は上記海事目的のために設備を使用する可能性を提供する。外洋の水質は、通常、沿岸領域よりもまったく良好であることが知られているので、本発明による風力発電設備はまた、発電中にそして発電よりもむしろ海事目的で使用可能であるが、これは風力発電設備の有用性を全体的に向上させる。
【0010】
受け装置が、海上領域で網を保持するためのロッド、チューブあるいは他の装備を受けるよう構成される場合、これはまた、潮による網の相応の上下動のための備えがフロートを用いてなされる限り、当該網設備が同じレベルで海中に常に浮いているよう実施できる。図1にはこの点に関する例が示されており、ここで受け装置はフラップ構造体を有し、このフラップ構造体には網構造体が吊り下げられ、この網構造体はカウンターウエイトによって海中で同じレベルに保持される。
【0011】
適当なケーブル装置を用い、かつヒンジ設計によって、もし望むならば、装置全体を海中から引き上げることができる。
【0012】
最後に、海洋生物のために必要な量の飼料は風力発電設備内の空間に貯蔵でき、さらに自動飼料供給装置によって上記空間から自動で飼料を供給できる。この目的のため、たとえばネジ式押出しアセンブリが設けられ、これを用いて、風力発電設備内の飼料箱からの飼料を供給装置へと送り込むことができる。
【0013】
陸上風力発電設備の場合のさらに可能な選択肢は、上記受け装置により、(通常の狩猟状況から公知である)持ち上げられた隠しはしごが、受け装置により風力発電設備のパイロンの下部領域に設けられることである。
【0014】
受け装置が、隠しはしごまたはそれによって設けられる物品をパイロン上の所望の位置で案内あるいは固定できるよう設計されるならば、とりわけ有利である。
【0015】
野生動物は僻地の風力発電設備が危険の前兆であると、たいてい気付かない。むしろ、動物は風力発電設備の回転部分に、すなわち回転ローターを備えた最上部領域つまり回転装置ハウジングにより注目する。したがって風力発電設備のパイロンの最下部領域に隠しはしごを取り付けることは有利でさえある。なぜなら、ローターおよび装置ハウジングの注意をそらせる効果は、動物が、隠しはしごにのぼっている人に通常よりも視覚的に気付き難い、ということを意味するからである。
【0016】
風力発電設備のパイロンが、極めて実質的に周囲の自然と似通った緑色または灰緑色の塗膜(パイロン色彩形態)を最下部領域に有するならば、とりわけ有利である。隠しはしごの色は、下部領域におけるパイロンの色と調和させるべきである。
【0017】
本発明による態様の利点は、隠しはしごを、いかなる所望の位置にでも、すなわちパイロン周囲のいかなる位置にでも調整できることである。いつでも設備への進入を可能とするために、外部から利用可能な階段または外部から利用可能なドアが設けられる場所には凹所が設けられるべきである。
【0018】
その下端部において、はしごは地面から離間させられるが、これは、こうすることで、とにかく落雷がはしごを通って伝わるのを阻止するためである。好ましくは、この目的のために、受け装置は、金属から形成できる隠しはしごとパイロンとの間にプラスチック素材のブリッジが存在するように設計される。これは、プラスチックリングがパイロンと受け装置との間に配置されている限り保証できる。
【0019】
さらに、隠しはしごは好ましくは屋根を備え、この屋根は好ましくは、それによって隠しはしごに内部空間を提供するために金属からなり、それはファラデー箱のように遮蔽される。
【0020】
地面からのはしご下端部の距離を増大させるため、はしごのこの端部はまた折り畳み可能であるよう設計できる。この結果、隠しはしごをのぼった後、その下部は上方に回動させられ、これによって、はしごの下端部と地面との間の距離が相応に増大する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】風力発電設備の下部領域を示す図である。
【図2】受け装置がどのようにして、持ち上げられた隠しはしごを受けるかを示す図である。
【図3】受け装置がどのようにしてパイロンの下部領域においてキャリアを受けるかを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に風力発電設備の下部領域を示す。同図から、どのようにして、完全にまたは部分的にパイロン10の周囲に延びている周方向延在受け装置20が、下部領域に設けられているかが理解できる。
【0023】
図2には、どのようにして上記受け装置20が、持ち上げられた隠しはしごを受けることができるかが示されている。この目的のために、上記受け装置20は、実質的に、L形レールを具備してなり、このレールはパイロン10の外周面を取り囲み、かつこのレールには、適当な協働部分を用いて、隠しはしご30を嵌め込むことができ、そしてそれを、たとえばネジ70を用いて上記レールに固定できる。隠しはしご30は今度はパイロン10に対して中央領域で支持される。隠しはしご30はパイロン10の外周面のいかなる位置にでも配置することができる。
【0024】
図3は、どのようにしてパイロン10の下部領域において受け装置20がキャリア30を受けるかを示しており、このキャリア30には、たとえばイガイかご40が吊り下げられる。このイガイかご40は、ケーブル50および付随するウインチ60を用いて昇降させることができる。上記受け装置20の多数のさらなる変形例(だがこれは当業者には明白である)が存在することが分かるであろう。上記受け装置20はまた固定式連結ポイントを備えることができ、この連結ポイントには、個々の図示した物品を、ネジ70、割りピンあるいは他の固定手段のいずれかによって固定できる。
【符号の説明】
【0025】
10 パイロン
20 受け装置
30 隠しはしご
40 イガイかご
50 ケーブル
60 ウインチ
70 ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海上風力発電設備の水中建造物であって、
前記水中建造物の外面上の第1の保護層であって、前記水中建造物内への海水の浸入を阻止するための第1の保護層と、
前記第1の保護層上に設けられた粗面構造体であって、前記第1の保護層の外面で、イガイおよび甲殻類といった海洋動物の成長を促進するための凹凸を有する粗面構造体と、を具備してなり、
前記海洋動物の成長は、パウンディング波および腐食性のある海水からの天然の防護物を提供するようになっていることを特徴とする水中建造物。
【請求項2】
前記さらなる粗面構造体は、このさらなる粗面構造体が存在しない場合よりも、イガイおよび甲殻類の成長が促進されるか、あるいはイガイおよび甲殻類が良好に定着しかつ固着状態となることができるものであることを特徴とする請求項1に記載の水中建造物。
【請求項3】
前記第1の保護層と前記さらなる粗面構造体との間に第2の保護層をさらに具備してなり、この第2の保護層は、前記さらなる粗面構造体の上で成長する海洋動物が、前記第1の保護層を侵食するのを阻止するためのものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水中建造物。
【請求項4】
水中建造物はパイロン建造物であり、前記パイロンは、水面または水面下あるいは水面上の領域に吊下げ装置を有し、この吊下げ装置により、イガイ網を吊り下げることができるようになっていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の水中建造物。
【請求項5】
水中建造物はパイロン建造物であり、前記パイロンは、海面より上の下側部位に、網用保持具を受ける受け装置を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の水中建造物。
【請求項6】
前記受け装置はレール装置であって、このレール装置は実質的に完全にあるいは部分的に前記パイロンを取り囲みかつ前記網用保持具と係合状態とさせられるものであり、これによって前記網用保持具は、前記パイロンの周囲の所望のポジションに位置させられることを特徴とする請求項5に記載の水中建造物。
【請求項7】
前記受け装置は、ネジ、割りピンあるいは他の固定手段のうちの一つによって前記パイロンに連結されていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の水中建造物。
【請求項8】
前記受け装置はフックを有し、このフックには前記網用保持具を吊下げ式に掛止できるようになっていることを特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれか1項に記載の水中建造物。
【請求項9】
前記風力発電設備は、飼料用の空間と、海洋生物のための自動飼料供給装置と、を具備してなることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の水中建造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−213487(P2009−213487A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141553(P2009−141553)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【分割の表示】特願2006−515745(P2006−515745)の分割
【原出願日】平成16年3月19日(2004.3.19)
【出願人】(500017944)アロイス・ヴォベン (107)
【Fターム(参考)】