説明

風力発電設備

少なくとも1つの風車と、1つの発電装置とを備える風力発電設備において、発電装置は、少なくとも2つの発電機を備えている。これらの発電機は、少なくとも1つの差動装置を介して、互いに結合されており、風車は、差動装置のピニオン歯車に配置されている。各発電機の回転子は、差動装置の軸歯車に連結されており、発電機の固定子は互いに結合されて1つの受けを形成しており、該受けに、差動装置の差動支持部が回転運動可能に収容されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの風車と、1つの発電装置を備える風力発電設備に関する。
【0002】
公知の風力発電設備では、風の追跡はサーボモータによって行われる。このサーボモータを用いて、風力発電設備のナセルヘッド全体が、いわゆるアジマス軸受を介して垂直軸を中心に回転させられる。回転数の調節は、風車の迎え角を変更するサーボモータによって行われることが好ましい。全てのサーボモータは、その制御信号を制御装置から受信する。制御装置は、ナセルヘッドの上に配置された風速計を利用するものである。しかし、風速計は、戸外のナセルヘッドの上に配置されているため、絶えず天候の影響にさらされるという欠点がある。特に、凍結や衝突による妨害により、風速計が動作しなくなったり、または、動作が限定されてしまったりすることになる。加えて、風速計は、例えば風の関係が変わりやすいことに起因する妨害を受ける。この妨害を解消するため、および、サーボモータを駆動するために、手間のかかる駆動回路および調節回路が必要になる。特に、出力が30キロワットまでの小さい風力発電設備を取り換える場合には、この手間のかかる制御および調節技術は、明らかに投資のリスクとなる場合が多い。
【0003】
従って、本発明の課題は、風の追跡および回転数の調節が著しく容易な、冒頭部分に記載した種類の風力発電設備を提供することにある。
【0004】
この課題は、本発明によれば、特許請求項1の特徴により解決される。本発明の有効な発展形態は、従属請求項に示されている。
【0005】
本発明にかかる風力発電設備は、発電装置が、少なくとも2つの発電機を備え、上記発電機は、少なくとも1つの差動装置を介して互いに結合されており、上記発電機の回転子は、それぞれ、上記差動装置の軸歯車に連結されており、風車は上記差動装置のピニオン歯車に配置されており、各上記発電機の固定子が互いに結合されて1つの受けを形成しており、該受けに、上記差動装置の差動支持部が回転運動可能に収容されていることを特徴とする。
【0006】
他の差動装置と同様に、本発明にかかる風力発電設備の差動装置も、差動支持部を備えている。この差動支持部では、両方の軸歯車で、各ピニオン歯車を一噛合位置において把持している。本発明にかかる風力発電設備の差動装置では、ピニオン歯車が、その本来の課題である、回転モーメントを軸歯車に半分ずつに分配することに加えて、さらに、風車に連結された動輪としての機能も有している。その結果、これらの軸歯車に割り当てられた発電機は、互いに対向する回転方向に駆動される。自動車の軸差動装置に当てはめると、この発電機の回転子は、駆動車輪の駆動軸に相当する。自動車の軸差動装置では変速機の出力軸によって駆動される差動支持部は、本発明にかかる風力発電設備の場合では、軸差動装置に用いられるピニオン歯車の平衡化機能を引き受ける。自動車に用いられる軸差動装置では、曲線走行によって駆動車輪の駆動軸に生じる回転数の差は、ピニオン歯車によって平衡にされるが、本発明にかかる風力発電設備の差動装置では、軸歯車に生じる回転モーメントの差は、差動支持部によって平衡にされる。ここで、風の方向が変わった時に風車が斜めに風を受けることにより、回転モーメントに差が生じるか、あるいは、互いに反対の方向に回転する、発電装置の発電機の抵抗が異なることにより、異なる回転モーメントが生じる。差動支持部を回転運動可能に受けに収容するために必要な回転軸受は、同じ出力の、公知の風力発電設備のアジムス軸受よりも、明らかに小型かつ安価に実施可能であるという利点を有している。
【0007】
本発明の第1の発展形態によれば、発電機は、リング型発電機として構成される。これらの発電機の、固定子によって構成された受けは、少なくとも1つの、導線支持体として機能する中空軸部を備えている。この中空軸部により、有利にも、互いに反対の方向に回転する発電機の電気的結合を改善することが実現される。
【0008】
本発明の次の発展形態によれば、各発電機は、風車の回転軸にほぼ直角に向けられた回転軸を有している。このため、差動装置は、傘歯車差動装置として構成されていることが有効である。しかしながら、発電機の回転軸と風車の回転軸とを互いに平行に配置することも、本発明の範疇である。このためには、差動装置は、平歯車差動装置として構成されていることが有効である。
【0009】
本発明の特に有効な発展形態によれば、発電機は、少なくとも1つの集電調節器を介して、互いに連結されている。この集電調節器によって、発電機に異なる抵抗を誘導的に設定することが可能であるので、これに応じて生じる回転モーメントの差は、差動支持部がその受けにおいて自動回転する運動によって平衡にされ、風車は、風から所定の角度だけ外に回転する。このようにして、安価であると同時に高効率な回転数の調節が行われる。有利にも、高価なサーボモータや、手間のかかる制御回路および調節回路を省くことができる。
【0010】
機械的に簡素かつ安価な風の追跡を構成するために、風車を風下タービンとして構成し、風車が自動的に風の中に配向するように構成する。ここでも、高価なサーボモータや、手間のかかる制御回路および調節回路を省くことができる。当然ながら、風車を、差動支持部に風向計が配置された風上タービンとして構成することも想定可能である。風向計は、この風上タービンを比較的容易に風の中に保持する。また、さらに、風下タービンに対向して風上タービンを配置する構成、および、差動装置を多数のピニオン歯車を有して構成することも、本発明の範疇である。
【0011】
本発明のさらなる特徴を有する本発明の一実施形態が、図面に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明にかかる風力発電設備を概略的に示す図である。
【0013】
この図は、本発明にかかる風力発電設備を概略的に示す図である。風力発電設備は、風車1と、リング型発電機として構成された2つの発電機2、3とを備えている。2つの発電機2、3は、差動装置4を介して互いに機械的に結合されている。発電機2、3の、互いに反対の方向に回転する各回転子5、6は、差動装置4の軸歯車7、8に連結されている。ここで、風車1は、差動装置4のピニオン歯車もしくは補償歯車9に配置されている。発電機2、3の固定子10、11は中空軸部12を介して互いに結合されて受けを形成しており、この受けには、差動装置4の差動支持部13が回転運動可能に収容されている。各発電機2、3は、風下タービンとして構成された風車1の回転軸に直角に向けられた回転軸を有している。発電機2、3は、集電調節器14を介して、互いに電気的に接続されている。この接続のために、発電機の電気接続線15、16が、導線支持体として機能する中空軸部12を通って導かれている(図示されていない)。さらに、集電調節器14は、発電機2、3によって供給された電流を供給網に放出する供給線17を備えている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの風車と、1つの発電装置とを備える風力発電設備であって、
上記発電装置は、少なくとも2つの発電機(2、3)を備え、
上記発電機(2、3)は、少なくとも1つの差動装置(4)を介して、互いに連結されており、
上記発電機(2、3)の各回転子(5、6)は、それぞれ上記差動装置(4)の軸歯車(7、8)に結合されており、
上記風車(1)は、上記差動装置(4)の補償歯車(9)に配置されており、
上記発電機(2、3)の固定子(10、11)が互いに結合されて1つの受けを形成しており、該受けに、上記差動装置(4)の差動支持部(13)が回転運動可能に収容されていることを特徴とする、風力発電設備。
【請求項2】
上記発電機(2、3)は、リング型発電機に構成されており、上記固定子(10、11)によって構成された上記リング型発電機の受けは、導線支持体として機能する少なくとも1つの中空軸部(12)を備えることを特徴とする、請求項1記載の風力発電設備。
【請求項3】
各上記発電機(2、3)は、上記風車(1)の回転軸にほぼ直角に向けられた回転軸を有することを特徴とする、請求項1または2記載の風力発電設備。
【請求項4】
上記発電機(2、3)は、少なくとも1つの集電調節器(14)を介して、互いに連結されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の風力発電設備。
【請求項5】
上記風車(1)は、風下タービンとして構成されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の風力発電設備。

【図1】
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【公表番号】特表2013−510982(P2013−510982A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538190(P2012−538190)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【国際出願番号】PCT/DE2010/001242
【国際公開番号】WO2011/057598
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(512123488)イーイーエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【Fターム(参考)】