説明

風味付けマイクロカプセルを含有する食用製品

風味成分又は風味組成物を内包する微生物マイクロカプセルの形の風味付けデリバリーシステムを含有する食用製品を記載する。本発明の食用製品という目的物は、風味付けデリバリーシステムを含有する食用組成物の高温での熱処理を含む方法によって製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は食品工業に関する。殊に、本発明は、微生物マイクロカプセルの形の風味付けデリバリーシステムを含有する食品に関する。本発明の食用製品は、その加工の間に、風味付けデリバリーシステムを含有する食用組成物が高温での熱処理に供されたという事実を特徴とする。予想外にも、この加工は、予想される風味の低下又は損失をもたらすどころか、カプセル化された風味剤が特に評価される官能的な効果及び調様を与えた製品を得ることを可能にする。
【0002】
背景技術と先行技術
様々な種類の不安定な活性成分を保護するために微生物をカプセル化材料として使用したカプセル化されたシステムは先行技術において広範に開示されている。JP5−253464号、JP7−289885号、JP8−243378号、EP085805号、EP453316号又はEP242135号は、脂肪酸、リン脂質、長鎖疎水性液体又は芳香剤及び風味剤のような様々な種類の活性成分をカプセル化した酵母マイクロカプセルを記載している。微生物でカプセル化された材料を製造するための公知法は、通常は、菌類、細菌又は藻類のような微生物と、カプセル化されるべき液体材料及び水とを混合して、エマルジョンを形成させ、そして混合を維持することで、カプセル化されるべき液体材料を拡散により微生物の細胞壁を通過して吸収させ、そうして該微生物内に留めることからなる。開示されたシステムは、微生物細胞と、カプセル化されるべき活性物質とを必須のものとして含んで成る。しかしながら、食品工業では、この種の微生物マイクロカプセルで風味付けされた製品の官能的特性と、安定性と、収量とが総合的に満足のいくものではなく、従って未だ改善の余地があった。
【0003】
更に近年では、WO03/041509号では、外因性材料を内包した微生物マイクロカプセルが開示されており、その際、該カプセルは、そこにカプセル化された外因性材料の放出の速度と、放出の強さと、放出の維持の改善を示すことが記載されている。前記のシステムにおいて、微生物(カプセル)の表面の全体又は一部が、糖類、高い甘みを有する甘味料、タンパク質及び多価アルコールからなる群から選択される少なくとも1種の材料で被覆されている。好ましくは、使用される微生物には溶離が行われている、すなわち内因性の菌糸内成分は外因性材料のカプセル化前に溶離されている。前記のシステムは、長期に亘り口腔内に保持される用途、特にチューインガム、ソフトキャンディー及び咀嚼剤のようなガムにおいて使用される。チューインガム以外の用途も一般的には挙げられているが、実施例は示されていない。更に、前記文献においては、マイクロカプセルが風味成分のような熱により悪影響が与えられ易い外因性材料を内包している場合に、そのカプセルは、熱による外因性材料の変性を避けるために、食用製品の加工の間に、製造工程の終盤近くで添加する必要があると明記されている。換言すると、前記文献は、微生物システムは、高い温度で熱処理に供される用途では、これらが変性するので使用できないことを教示している。従って、前記出願に記載されるチューインガムの製造例は、微生物カプセルを工程の終盤に添加することを明記している。
【0004】
ここで、先行技術の教示の点で総合的に予想外なように、風味付け成分又は組成物をカプセル化している微生物細胞マイクロカプセルが使用され、かつ該カプセルを含有する食用組成物の加工の間に高温に供された食用製品を製造することが可能となった。これらのシステムは予想外にも、熱安定性を示し、特に良好な官能的特性を提供することが判明した。
【0005】
説明
このように本発明は、カプセル化された風味成分又は風味組成物と、微生物からなるカプセル化材料と、少なくとも1種の炭水化物材料とから形成された風味付けマイクロカプセルを含む食用製品であって、該マイクロカプセルを含有する食用組成物を少なくとも70℃の温度で熱処理に供するといった方法によって製造されたことを特徴とする食用製品に関する。本発明の第二の実施態様では、該食用製品は、他の成分のなかでも、風味成分又は風味組成物をカプセル化したマイクロカプセルを含有する食用組成物を、少なくとも100℃の温度での熱処理を実施することで加工することによって製造される。第三の実施態様は、マイクロカプセルを含有する食用組成物を、170℃より高い温度での熱処理を含む加工を行うことによって製造された食用製品に関する。
【0006】
先行技術の教示の点で予想できることとは反対に、本発明の製品は、風味調様及び風味効果の点で特に評価されるものと判明した。特に、典型的な噴霧乾燥による風味付け粉末で風味付けされた製品と比較して、以下の実施例に示されるように、本発明の製品は、それと同等の風味付け特性を示すか、時として更に良好な風味付け特性を示した。従って、マイクロカプセル中にカプセル化された風味を低下させるどころか、その熱処理は、最終用途における風味効果の質と幾つかの調様の知覚とによって裏付けられる最終用途における風味安定性を高めると思われる。従って、カプセル化されたシステムは熱処理に耐える。
【0007】
本発明の食用製品という目的物は、カプセル化された風味成分又は風味組成物とカプセル化材料とから形成されるマイクロカプセルを含有する食用組成物の加工により得られる。
【0008】
本発明によるカプセル化材料は、微生物と、少なくとも1種の炭水化物材料とからなる。本発明の目的に適した微生物は、例えば酵母、細菌又は菌類である。しかしながら、これらの微生物は例として示すのみで、本発明を制限するものではない。活性風味剤を内包するカプセル化材料は、更に少なくとも1種の炭水化物材料を含有する。その炭水化物材料は、以下に記載されるようにマイクロカプセルの製造工程の遅い段階で添加される。前記工程での炭水化物担体材料の添加は、提供されるデリバリーシステム又はカプセル化されたシステムにおいて風味成分又は風味組成物をより良好に留めることを可能にし、これによりEP242135号に記載されるような従来法に説明されていた遠心分離工程を必要なくする。
【0009】
本発明の目的に適した炭水化物材料に関しては、天然のデンプン類、例えばトウモロコシ由来、コメ由来、タピオカ由来、ジャガイモ由来、コムギ由来、そして他の穀類由来、かつ他の多糖由来のデンプン類、化工デンプン類、例えばデンプンエーテル、デンプンエステル、架橋デンプン、酸化デンプン;物理的に変性されたデンプン、例えば機械的に損傷されたデンプン、押し出されたデンプン、デキストリン化デンプン、又はアルファ化デンプン、及び煮込まれた薄い(thin boiling)デンプン、又は酵素加水分解デンプン及び酸加水分解デンプン、例えば、低いデキストロース当量(DE)のマルトデキストリン、20未満のDEを有するマルトデキストリン及び、20より高いDEを有するグルコースシロップを使用することができる。単糖類、二糖類又は多糖類を、微生物マイクロカプセルのためのカプセル化材料として使用してもよい。これらの皮膜形成材料は例として示したのみで、本発明を制限するものと考慮されるべきでない。
【0010】
該炭水化物材料が、微生物と一緒に、本発明のマイクロカプセルのカプセル化材料の異質な部分を形成することは明らかである。こうして炭水化物材料は、微生物それ自身に存在する可能性がある炭水化物、例えば微生物の細胞壁に存在する炭水化物とは区別する必要がある。従って、本発明の食用製品の一実施態様では、添加される炭水化物材料は、微生物由来の炭水化物とは別の炭水化物材料である。
【0011】
担体材料又はカプセル化材料は、マイクロカプセルの全質量に対して50〜95質量%にわたる割合で使用される。有利には、使用される量は70〜90質量%である。
【0012】
微生物と少なくとも1種の炭水化物材料の他に、カプセル化材料は随意の成分を含有してよく、その目的は、例えば風味の残留を高めることである。特に、マイクロカプセルの全質量に対して1〜5質量%にわたる割合でタンパク質を使用することができる。この目的に適したタンパク質の例は、例えばゼラチン(高ブルーム及び低ブルーム)、植物タンパク質及びその分画、カゼインタンパク質、ホエイタンパク質、ホエイとトウモロコシのタンパク質及びその分画である。ガムは、別の種類の追加的な成分をなし、該成分は本発明の食用製品中に存在するマイクロカプセルを形成するカプセル化材料に添加することができる。これらのガムは、マイクロカプセルの全乾燥質量に対して0.1〜2質量%にわたる割合で使用され、例えばペクチン、キサンタン、寒天、藻類ガム(algae gum)(例えばアルギニン酸塩、カラギナン、フルセラルム(Furcellarm)など)、ガッチゴム、トラガントゴム、グァーガム、セルロース及びその誘導体、微生物デキストラン及びプルランである。前記のガムの列記は例として示したもので、本発明を制限するものではない。
【0013】
前記のカプセル化材料は、風味成分又は風味組成物を内包する。本願で使用される“風味成分又は風味組成物”という用語は、食品工業で一般的に使用される、天然由来と合成由来の両方の様々な風味成分又は風味組成物を定義するものと考えられる。これらには、単独化合物及び混合物が含まれる。本発明で使用されるマイクロカプセルは、液体形の、有利には−2〜7のlogPを有する揮発性又は不安定な成分をカプセル化することができる。かかる成分の特定の例は、一般的な文献、例えばFenaroli's Handbook of flavour ingredients, 1975, CRC Press; Synthetic Food adjuncts, 1947、M.B.Jacobs著、Van Nostrand編;又はPerfume and Flavor Chemicals、S.Arctander著、1969年、Montclair、ニュージャージー州(米国)に見出すことができる。これらの物質は、風味付け又は芳香付けの消費製品の技術分野、匂い又は風味又は味覚を本来の風味が付いた消費製品に付与するか又は該消費製品の味覚を改変することにあたる当業者によく知られている。天然の抽出物を該システム中にカプセル化して、これにより本発明の製品に風味付けをすることができる。これらの抽出物は、とりわけ例えば柑橘類の抽出物、例えばレモンオイル、オレンジオイル、ライムオイル、グレープフルーツオイル又はマンダリンオイル又はコーヒーオイル、紅茶オイル、ミントオイル、ココアオイル、バニラオイル又はハーブとスパイスの精油である。
【0014】
マイクロカプセル中の風味成分又は風味組成物の割合は、一般に、カプセルの全質量に対して、5〜50質量%、有利には10〜30質量%である。
【0015】
本発明の食用製品の組成物において使用されるマイクロカプセルの製造方法は、先行技術文献、例えばEP242135号、EP453316号又はEP085805号に記載されている。これらの製造方法は全て、微生物と液体形のカプセル化可能な材料とを水性媒体の存在下に混合し、こうして液状風味剤が水性媒体中でエマルジョンを形成し、良好な分散を達成し、そして微生物と風味剤との良好な接触を達成することを含み、幾つかの方法によれば、脂質拡張物質(lipid-extending substance)中に溶解させてよい。カプセル化されるべき液状風味剤を、洗浄された微生物又は微生物の水性ペーストもしくはスラリーと混合させるか、又はカプセル化可能な風味剤を、少量の水中で乾燥微生物と混合させてもよい。少量の水性媒体だけを使用してよい。その場合には、液状風味剤は微生物中に拡散し、そして微生物の細胞壁内又は微生物カプセル内に留まる。
【0016】
従って、本発明の食用製品の一実施態様では、微生物は完全な細胞壁を有し、かつ風味成分はその完全な細胞壁内に少なくとも部分的にカプセル化されている。本発明の文脈において用語“少なくとも部分的に”とは、有利には疎水性の風味剤が微生物中に拡散して蓄積するという事実を指す。殆ど疎水性でない風味剤又は親水性の風味剤は、反対に、微生物の細胞壁内の内腔中に部分的にのみ拡散することが観察されるに過ぎない。
【0017】
特定の実施態様では、酵母細胞の細胞内成分を外部に溶離させることはEP453316号に記載されるように達成できる。
【0018】
混合操作により水性エマルジョンを生成して保持するのに適した処理の例は低剪断力混合及び、例えば180rpmでの軌道振盪である。カプセル化可能な液状風味剤の予備乳化は必要がない。
【0019】
前記処理は、通常の大気温度で実施できるが、有利には温度を、少なくとも処理の初期段階の間に、例えば少なくとも初めの30分の間に高めるか、又は処理を速める。好適な高められた温度は、35〜60℃の範囲であってよい。
【0020】
前記処理は、1つ以上の材料球が微生物細胞内にあることでカプセル化が顕微鏡により確認できるまで数時間にわたり継続される。
【0021】
カプセル化工程のこの段階(約30分〜16時間)で、少なくとも1種の炭水化物材料をカプセル化混合物に添加し、そして均質になるまで約5〜30分間混合する。次いで得られた試料を噴霧乾燥させる。有利には、カプセル化法の前記実施態様では、EP242135号に記載される方法で必要とされる分離工程と洗浄工程はもはや実用的でない。こうして炭水化物材料は、風味成分を包含する微生物の周りに層を形成し、こうして更に風味付け成分をカプセル化する。
【0022】
前記のように製造されたマイクロカプセルは、5μm〜2mmの範囲の平均直径の範囲の平均直径を有する。有利には、その直径は40μm〜1mm、より有利には60μm〜500μmの範囲である。平均という用語は算術平均を指す。
【0023】
本発明の一実施態様では、前記のように製造されたマイクロカプセルは、本発明の食用製品の風味付けのために、食用製品と、達成が望まれる官能的効果とに応じて、0.01〜2.00%にわたる割合で使用される。
【0024】
殊には、該マイクロカプセルは、本発明の食用製品に加工が予定される食用組成物の一部である。食用組成物中に存在する他の成分の詳細な説明はここでは不必要である。それというのもこれらの成分は、本発明の枠組みのなかで製造できる食用製品の性質と同様に様々だからである。例として、本発明の食用製品という目的物は、例えばスープのような高い水分活性における用途;クラッカー、パン、ケーキのような焼き製品;生パスタ及び乾燥パスタのような高温で茹でる用途;シリアルフレーク、押出スナック、例えばフレンチフライ又は組立ポテトチップスのようなフライ製品である。当業者、つまりは食品製造業者は、必要な成分を選択して、前記の風味付けシステムを用いて風味付けされた食用基材を製造し、最終消費製品に加工することができる。
【0025】
本発明により包含される食用製品は、通常は、相応の出発食用組成物の加工が少なくとも70℃、あるいは少なくとも100℃又は少なくとも170℃での熱処理を含むという事実と、そこでは前記の風味付けマイクロカプセルが食用製品に加工されるべき食用組成物へと熱処理前に添加されるという事実を有する。
【0026】
高温で熱処理することを含む食品加工技術は、多数存在する。当業者は、これらの種類の方法をよく知っている。かかる方法の例としてはレトルト処理を引用でき、この処理は熱処理を含み、それにより食用組成物は1秒〜20分(かけられる温度と食品の種類に応じて)にわたり100〜140℃の温度に供される。ロゼンジ法(lozenges process)は、本発明の製品の製造に適した方法のもう一つの例である。その方法では、砂糖とガム溶液が混合される。このペーストを生地とし、一定量に切り取る。これらの一定量を70℃〜190℃のトンネル中で1〜60分間熱気にかける。もう一つの例は、穀類を基礎とする製品、例えばコーンフレークス(登録商標)の製造であり、該方法はコーングリットを加圧調理し、フレーク状にして、トーストすることを含む。他方で、コーングリットを90〜200℃の範囲の温度で押出す押出スナックの製造のための押出法、又は150〜240℃の空気温度で焼く焼き製品の製造;又は小麦粉と卵と追加的な穀類とタンパク源とを混合し、所望の形状に押出す乾燥パスタの製造が他の例をなす。前記の湿ったパスタ製品を次いで70〜140℃で1〜8時間にわたり乾燥させる。
【0027】
これらの全ての方法は例として示したのみで、本発明はまた高温条件が用いられる他の食品加工をも含む。これらの全ての方法は、前記の微生物マイクロカプセルを含有する食用組成物に対して実施されるが、それに対して先行技術では、該カプセルは高温に晒すことを避けるために加工終盤で添加する必要がある。以下の実施例に示されるように、本発明の食用製品は、風味の効果と調様に関して非常に効果的であると判明した。
【0028】
本発明を以下の実施例においてより詳細に記載し、その際、温度は摂氏温度であり、省略形は当業者において慣用の意味を有する。
【0029】
図面の簡単な説明
図1a)から1d)はビーフ風味付けされたフレンチフライの評価の結果を棒グラフで示している。
【0030】
図2a)から2d)は、ガーリック風味付けされたクラッカーの評価の結果を棒グラフで示している。
【0031】
図3a)から3d)は、混合ハーブ風味付けされた生パスタの評価の結果を棒グラフで示している。
【0032】
殊に、図1、2及び3は、8人の訓練を受けたパネリストに行った知覚パネルの結果を記載しており、そこでは盲検法において各試験ごとに3種のサンプル、つまり本発明による2種のサンプル(様々な種類のマイクロカプセルで風味付けした)と噴霧乾燥された粉末で風味付けされた1種の製品の評価を尋ねた。これらの図面は以下のパラメータ:a)匂い、b)最初の咀嚼後の効果;c)飲み込んだ後の持続性、d)風味付けされていないサンプルとの差異を通じて評価した結果を示している。
【0033】
1(弱い)ないし5(強い)の評点で示した。
【0034】
本発明の実施様式
実施例1
フレンチフライ
風味付けデリバリーシステムの製造
本発明によるデリバリーシステムの製造
組成
成分 %乾燥質量
風味剤1) 20
酵母2) 40
マルトデキストリン 40
合計 100
1)ビーフ風味剤 参照番号505443AH、ガーリック風味剤 参照番号905097、混合ハーブ風味剤 参照番号700167.01T;製造元:Firmenich SA社(ジュネーブ、スイス在)
2)エタノール酵母(“酵母1”と呼称する)、パン酵母(“酵母2”と呼称する)
製造
400gの固形酵母を2200gの水で水和した。次いで200gの風味剤を添加し、40℃で4時間混合した。次いで該カプセル化混合物に400gのマルトデキストリンを添加し、均質になるまで混合した。次いで該混合物をNiro Minor社製ホイールアトマイザ上で乾燥させた。
【0035】
比較サンプルの製造
比較のために等コスト製品を用いた。この場合には噴霧乾燥された粉末を選択した。特に、噴霧乾燥された粉末を用いて、まず良い味覚の程度を決定した。次いで、本発明に規定されるデリバリーシステムをその製造コストに応じて添加した。
【0036】
原理
評価は、盲検法の形を適用して試験した8人のパネルで実施した。風味付けされていないサンプルを明らかにして参照として用いた。8人の訓練されたパネリストは各試験ごとに3種のサンプルを評価した(第一のサンプルは酵母1を基礎とするマイクロカプセルで風味付けされた製品;第二のサンプルは酵母2を基礎とするマイクロカプセルで風味付けされた製品;第三のサンプルは噴霧乾燥された粉末で風味付けされた製品である)。これらのサンプルを、匂い、最初の咀嚼後の効果、飲み込んだ後の持続性、風味付けされていないサンプルとの差異について1(弱い)ないし5(強い)の尺度で評価した。
【0037】
結果を、分散分析法(ANOVA)とフィッシャーの最小有意差法(LSD)によって有意水準5%(幾つかの場合に10%)で処理した。
【0038】
ビーフ風味付けされたフレンチフライでの適用
フレンチフライの製法:
成分 質量部
水 60.00
塩 1.00
基礎バッター 39.00
合計 100.00
適用量:
【0039】
【表1】

【0040】
ビーフ風味剤を内包するカプセル化された風味剤(微生物マイクロカプセルを2サンプルと噴霧乾燥された粉末を1サンプル)をバッターに添加し、水と配合する前にそこに混合させた。混合は、Hobartミキサ中でスピード2において5分間滑らかになるまで続行した。得られたバッターでフレンチフライを覆い、そしてそれを180℃で60秒間パーム油中でパーフライ(parfry)した。急速冷凍を実施した。最後に、パーム油中で180℃において2.5分かけて戻した。
【0041】
結果
図1a)、b)、c)及びd)は、棒グラフにおいて、匂いの強さ(a)、最初の咀嚼後の効果(b)、飲み込んだ後の持続性(c)、風味付けされていないものとの差異(d)に関してパネルによってなされた評価の結果を示している。同じ文字を有する製品は有意差があるとは言えない。
【0042】
図1a)は、本発明による製品の1つが最も高い匂いの強さをもたらすことを示している。図1b)、c)及びd)は、本発明の両方のシステムが全ての他のパラメータに関して、噴霧乾燥された粉末で風味付けされた製品より優れていることを示している。嗜好的意見は、本発明の両方のシステムが最も評価された風味であり、最も確かな風味を有することを示している。
【0043】
同じ製品を他の風味調様、特にガーリック及び混合ハーブで製造した。特に、長期持続効果の点で同様の結果が得られ、その効果は本発明により風味付けされた製品では本当に強いものであった。
【0044】
実施例2
クラッカー
原理
デリバリーシステム(3種のサンプル)を実施例1に記載のように製造した。
【0045】
評価は、実施例1に記載されるのと同じ原理で実施した。
【0046】
ガーリック風味付けされたクラッカーにおける適用
クラッカーの製法:
第1部:膨張剤
【0047】
【表2】

【0048】
第2部:クラッカー生地
【0049】
【表3】

【0050】
第3部:コーティング
【0051】
【表4】

【0052】
適用量:
【0053】
【表5】

【0054】
第1部は別々に配合した。溶かしたショートニング油脂をHobbart中で第1部と配合し、そして砂糖シロップを添加した。小麦粉と、カプセル化された風味剤を含む他の乾燥成分を添加した。熱水を添加し、そして内容物を5〜10分間混合した。生地をビニール袋中に入れ、平らに延ばした。次いで製麺機を用いて、生地を2mmに圧延した。クラッカーを210℃で5分間焼いた。ターニング装置にオイルコーティングを添加した。最後にクラッカーをアルミ袋に入れた。
【0055】
結果
図2a)、b)、c)及びd)は、ガーリック風味についての結果を棒グラフにおいて示し、かつ匂いの強さ(a)、最初の咀嚼後の効果(b)、飲み込んだ後の持続性(c)、風味付けされていないものとの差異(d)に関してパネルによってなされた評価の結果を示している。同じ文字を有する製品は有意差があるとは言えない。
【0056】
これらの図面は、全ての試料が全てのパラメータに関して有意差があるとは言えないことを示している。従って、本発明により風味付けされた製品は噴霧乾燥された粉末で風味付けされた製品と同様の性能である。
【0057】
嗜好的意見は、本発明により風味付けされた両方の製品が最も確かな風味を有し、その1つが最も評価されていることを示している。
【0058】
実施例3
生パスタ
原理
デリバリーシステム(3種のサンプル)を実施例1に記載のように製造した。
【0059】
評価は、実施例1に記載されるのと同じ原理で実施した。
【0060】
混合ハーブ風味付けされたパスタにおける適用
パスタ生地:
成分 質量部
小麦粉11%タンパク質 32.22
デュラム小麦 34.47
塩 0.58
水 15.79
全卵 16.75
酵母1) 0.20
合計 100.00
1)ギステックス;製造元:DSM、オランダ在
適用量:
【0061】
【表6】

【0062】
製造
デュラム小麦と小麦粉とを混合した。次いで全ての成分を添加し、Hobart中でスピード2において6分間混合した。次いで風味剤を含有するデリバリーシステムを添加し、十分に分散するまで1分間混合した。生地を30分間放置した。次いで製麺機を用いて、この生地を1mmに圧延し、これを最終的に切断して、タリアテッレとした。低温殺菌を、オーブン中で75℃でフルスチーム下に20分間実施した。製品を包装し、次いで沸騰水中で2分間茹でた。
【0063】
結果
図3a)、b)、c)、d)は、棒グラフにおいて、匂いの強さ(a)、最初の咀嚼後の効果(b)、飲み込んだ後の持続性(c)、風味付けされていないものとの差異(d)のパネルによる評価の結果を示している。同じ文字を有する製品は有意差があるとは言えない。
【0064】
これらの図面は、全ての試料が全てのパラメータに関して有意差があるとは言えないことを示している。従って、本発明により風味付けされた製品は噴霧乾燥された粉末で風味付けされた製品と同様の性能である。
【0065】
他方で、パネリストからの嗜好的意見は、本発明の製品の1つは、それが最も確かな混合ハーブ風味を有すると記載されているので明らかに有利であることを概説している。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1a】図1a)は、ビーフ風味付けされたフレンチフライの評価の結果を棒グラフで示している
【図1b】図1b)は、ビーフ風味付けされたフレンチフライの評価の結果を棒グラフで示している
【図1c】図1c)は、ビーフ風味付けされたフレンチフライの評価の結果を棒グラフで示している
【図1d】図1d)は、ビーフ風味付けされたフレンチフライの評価の結果を棒グラフで示している
【図2a】図2a)は、ガーリック風味付けされたクラッカーの評価の結果を棒グラフで示している
【図2b】図2b)は、ガーリック風味付けされたクラッカーの評価の結果を棒グラフで示している
【図2c】図2c)は、ガーリック風味付けされたクラッカーの評価の結果を棒グラフで示している
【図2d】図2d)は、ガーリック風味付けされたクラッカーの評価の結果を棒グラフで示している
【図3a】図3a)は、混合ハーブ風味付けされた生パスタの評価の結果を棒グラフで示している
【図3b】図3b)は、混合ハーブ風味付けされた生パスタの評価の結果を棒グラフで示している
【図3c】図3c)は、混合ハーブ風味付けされた生パスタの評価の結果を棒グラフで示している
【図3d】図3d)は、混合ハーブ風味付けされた生パスタの評価の結果を棒グラフで示している

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセル化された風味成分又は風味組成物と、微生物からなるカプセル化材料と、少なくとも1種の炭水化物材料とから形成された風味付けマイクロカプセルを含む食用製品であって、該マイクロカプセルを含有する食用組成物を少なくとも70℃の温度での熱処理に供する方法によって製造されたことを特徴とする食用製品。
【請求項2】
微生物が完全な細胞壁を有し、かつ風味成分がその完全な細胞壁内に少なくとも部分的にカプセル化されている、請求項1記載の食用製品。
【請求項3】
添加される炭水化物材料が、微生物由来の炭水化物とは別の炭水化物である、請求項1又は2記載の食用製品。
【請求項4】
食用組成物を少なくとも170℃の温度で熱処理に供した、請求項1記載の食用製品。
【請求項5】
0.01〜2.00質量%のマイクロカプセルを含有する、請求項1記載の食用製品。
【請求項6】
炭水化物材料が、デンプン、加水分解デンプン、単糖類、二糖類又は多糖類及び酵母からなる群から選択される、請求項1記載の食用製品。
【請求項7】
フライ製品、生地を基礎とする製品又は乾燥パスタもしくは生パスタの形における、請求項1記載の食用製品。
【請求項8】
請求項1記載の風味付けマイクロカプセルを含有する食用製品の製造方法において、該マイクロカプセルを含有する食用組成物を、それを食用製品に加工する間に、少なくとも70℃の温度での熱処理に供することを特徴とする方法。
【請求項9】
食用組成物を、少なくとも100℃の温度での熱処理に供する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
食用組成物を、少なくとも170℃の温度での熱処理に供する、請求項8記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【公表番号】特表2007−505619(P2007−505619A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526803(P2006−526803)
【出願日】平成17年1月3日(2005.1.3)
【国際出願番号】PCT/IB2005/000018
【国際公開番号】WO2005/067733
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1、route des Jeunes、 CH−1211 Geneve 8、 Switzerland
【Fターム(参考)】