説明

風車羽根の引下げ導線のための測定システム

【課題】風車羽根の引下げ導線の電気抵抗の測定を改良する。
【解決手段】風車の羽根1の引下げ導線2のための測定システムにおいて、第1の端部11aにおいて引下げ導線2に直列に接続された測定ケーブル11が設けられており、該測定ケーブル11の第2の端部11bが、羽根1の下側ベース部分4における電気抵抗を測定するためにアクセス可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風車羽根の引下げ導線(down conductor)のための測定システム、及び、引下げ導線のための測定システムを備えた羽根及び風車に関する。特に、本発明は、引下げ導線の電気抵抗の測定に関する。
【背景技術】
【0002】
風車には、通常、落雷によって発生された大きな電流を、風車の構成要素を損傷することなく大地へ伝導することができるようにするための落雷保護システムが装備されている。
【0003】
最も落雷に曝される部分は、羽根である。従って、羽根には、1つ以上の内部引下げ導線が装備されている。各引下げ導線は、羽根の外面に配置された1つ以上の受雷体に接続されている。
【0004】
引下げ導線の適切な機能を保証するために、電気抵抗を知る必要がある。国際規格によれば、据え付けられた各引下げ導線の電気抵抗の登録が義務づけられている。
【0005】
羽根の引下げ導線の電気抵抗は、通常、外側先端受雷体から羽根の下側部分へ測定される。測定は、オーム計又は公知の電流及び検出ユニットを用いて行われる。時には、測定結果が、赤色灯又は緑色灯又はアラーム音又はベルによって示される。先端受雷体へのアクセスは、特に既に据え付けられた羽根の場合には困難である恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、風車羽根の引下げ導線の電気抵抗の測定を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明によれば、請求項1,10,11及び12の特徴によってそれぞれ解決される。発明の有利な変更及び/又は詳細は、従属請求項に開示されている。
【0008】
1つの態様において、発明は、第1の端部において引下げ導線に直列に接続された測定ケーブルを備えた、風車羽根の引下げ導線のための測定システムに関する。測定ケーブルの第2の端部は、羽根の下側ベース部分における電気抵抗の測定のためにアクセス可能である。この構成は容易な測定を許容する。なぜならば、両方の測定接点が羽根のベースに配置されているからである。ケーブルという用語は、その他の適切な導体も含んでいる。
【0009】
測定ケーブルの第1の端部は、羽根の上側部分において引下げ導線に接続されていてよい。第1の端部が羽根の上部若しくは先端において引下げ導線に接続されている場合、引下げ導線全体を測定することができる。第1の端部が例えば羽根の中間部において引下げ導線に接続されている場合、引下げ導線の半分を測定することができる。
【0010】
引下げ導線及び測定ケーブルは、受雷装置を介して接続されていてよい。雷電流が実際に伝達しているときの電気抵抗を測定することができる。受雷装置は、測定ケーブルの容易な据え付けも許容する。なぜならば、引下げ導線のために既に固定箇所が存在するからである。
【0011】
受雷装置は、アルミニウム、黄銅、ステンレス鋼、及び/又はこれらに関連する合金及び/又はカーボンのグループの導電性材料から成る。材料又は材料の組合せを、羽根又は風車の価格、重量又は設置場所に応じて選択することができる。
【0012】
引下げ導線及び測定ケーブルは、交換可能な受雷体を収容した受雷装置の受容ブロックを介して接続されていてよい。発明は、落雷後の交換労力が小さいので、広く使用されているこの受雷体タイプにおいて使用することもできる。
【0013】
引下げ導線のための測定システムは、2つ以上の測定ケーブルを有していてよく、これらの測定ケーブルはそれぞれ、引下げ導線に接続された複数の受雷装置のうちの1つに接続されている。これは、受雷装置からの雷電流のそれぞれの可能な形式の正確な測定を許容する。
【0014】
補償されたブリッジ測定のために、2つ以上の測定ケーブルが提供されていてよい。2つ以上の測定ケーブルを有することにより、様々なブリッジ測定の組合せが許容される。ブリッジ測定は、より正確であることができ、かつ/又は温度ドリフト又は供給ライン抵抗を補償することができる。
【0015】
シングル測定ケーブルは、1つ以上のマルチコア又はフラットリボンケーブルであってよい。これらのケーブルは、据付けの間により容易に取り扱うことができる。
【0016】
1つ又は複数の測定ケーブル及び/又は1つ又は複数の引下げ導線の第2の端部は、羽根のベース部分に配置された末端ブロックに接続されていてよく、1つ又は複数の測定ケーブルの第2の端部は、末端ブロックに取外し可能に接続されている。末端ブロックに接続されているが、測定ケーブルは、規定された電気状態にあり、不意の短絡を回避することができる。測定ケーブル及び引下げ導線は、1つの末端ブロックを共有することもできるし、2つ以上の末端ブロックを使用することもできる。例えば、測定ケーブル用の1つの末端ブロックと、1つ又は複数の引下げ導線用の1つの末端ブロックとを使用することができる。
【0017】
第2の態様において、発明は、引下げ導線と、上述のような引下げ導線のための測定システムとを含む風車のための羽根に関する。1つ以上の羽根が、交換部品として製造及び/又は設置される場合、据え付けられた1つ又は複数の測定システムを有することが有利である。
【0018】
別の態様において、発明は、上述のような1つ以上の羽根を有する風車に関する。完成した風車のために、1つ又は複数の羽根に据え付けられた1つ又は複数の測定システムを有することが有利である。
【0019】
別の態様において、発明は、測定ケーブルの第2の端部に電気抵抗測定装置を接続するステップと、引下げ導線の電気抵抗を測定するステップとを有する、上述のような羽根の引下げ導線の電気抵抗を測定する方法に関する。
【0020】
この方法は、オーム計等の電気抵抗測定装置が羽根のベース部分に接続される必要がありかつ単に羽根のベース部分において使用することができるので、引下げ導線の電気抵抗の容易な測定を許容する。
【0021】
引下げ導線及び測定ケーブルの組み合わされた電気抵抗が測定されてよく、引下げ導線の電気抵抗は、測定された組み合わされた電気抵抗から計算されてよい。組み合わされた電気抵抗が、測定されることができるか又は測定されるべきでありさえすれば、組み合わされた電気抵抗から、引下げ導線の電気抵抗が、例えば測定ケーブルの公知の電気抵抗を用いて、計算することができる。
【0022】
測定ケーブルのうちの2つは、補償されたブリッジ測定(compensated bridge measurement)のために利用されてよい。2つ以上の測定ケーブルを有することにより、様々なブリッジ測定の組合せが許容される。ブリッジ測定は、より正確であることができ、かつ/又は温度ドリフト又は供給ライン抵抗を補償することができる。
【0023】
添付の図面は、実施の形態のさらなる理解を提供するために添付されている。その他の実施の形態、及び意図した利点のうちの多くは、以下の詳細な説明を参照することによってさらによく理解されたときに、容易に認められるであろう。図面の構成要素は、必ずしも、互いに対して実寸ではない。同じ符号は、対応する同じ部材を示している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】風車の公知の羽根の概略図である。
【図2】本発明による引下げ導線のための測定システムを備えた羽根の先端の概略図である。
【図3】本発明による引下げ導線のための測定システムを備えた羽根のベース部分の概略図である。
【図4】本発明による引下げ導線のための測定システムを備えた羽根の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の詳細な説明において、明細書の一部を構成しかつ本発明が実施される特定の実施の形態が例示的に示されている添付の図面が参照される。これに関して、方向を表す用語、例えば「上」又は「下」等は、説明される図面の向きに関連して使用されている。実施の形態の構成要素は多くの異なる向きで配置することができるので、方向を表す用語は、例示のために使用されているのであり、それに限定するものではない。本発明の範囲から逸脱することなくその他の実施の形態が用いられてもよいし、構造的又は論理的な変更がなされてもよいことが理解されるであろう。従って、以下の詳細な説明は、限定する意味で解釈されるべきではなく、本発明の範囲は、添付の請求項によって規定されている。
【0026】
図1は、風車のための慣用の羽根1を示している。風車は、通常、回転する羽根ハブに取り付けられた1つから3つまでの羽根1を有している。羽根ハブは、タワーの上部に取り付けられた主軸を中心にして回転する。通常、ナセルは、主軸と、発電機等の電気系統を包囲している。
【0027】
羽根1は、羽根1の上部先端若しくは上部3から下側のベース部4まで達する、内部の引下げ導線2を有している。引下げ導線2は、通常、ケーブル又はバーの形態の、金属から形成された導体である。引下げ導線2の直径は、ほとんどの用途において、50平方ミリメートル以上である。
【0028】
複数の受雷体ブロック5が、引下げ導線2に接続されている。受雷体ブロック5は、引下げ導線2の長さにわたって分配されており、受雷体ブロック5の数は、羽根1の長さに依存する。受雷体ブロック5は、引下げ導線2に直接取り付けることもできるし、引下げ導線2の一部でもある短いスタブ2aを介して取り付けることもできる。
【0029】
受雷体ブロック5は、例えばアルミニウム等の導電性材料から成る。受雷体ブロック5は、2つの開口を有していて、これらの開口に受雷装置が結合されている。羽根1の2つの側面のそれぞれに対して1つの受雷体が設けられている。受雷体ブロック5と受雷体との組合せも、しばしば受雷装置と呼ばれる。
【0030】
引下げ導線2の下端部は、羽根1の引下げ導線と、風車の落雷保護システムの後続の別の部分との間の結合箇所である末端ブロック6に結合されている。
【0031】
図2は、羽根1の上側部分3をより詳細に示している。2つの受雷体7が受雷体ブロック5に配置されている。図示のように、羽根1のそれぞれの側面に対して1つの受雷体7が設けられている。引下げ導線2は、ボルト8及びワッシャ9を用いて受雷体ブロック5に結合されている。取外し可能な又は固定されたその他の結合を使用することもできる。
【0032】
羽根1には、引下げ導線2のための測定システム10が装備されている。測定システム10は、引下げ導線2に結合された第1の端部11aを有する測定ケーブル11を有している。第1の端部11aは、択一的に、導電性の受雷体ブロック5に結合されていてもよく、この受雷体ブロック5自体は引下げ導線2に関連している。従って、測定ケーブル11の第1の端部11aは、引下げ導線2に直接に又は間接的に結合されている。
【0033】
測定ケーブル11は、好適には、絶縁されたケーブルである。
【0034】
図3は、羽根1のベース部分3を示している。末端ブロック6には、引下げ導線2と、測定ケーブル11の第2の端部11bとが結合されている。第2の端部11bは、末端ブロック6に取外し可能に結合されており、測定プロセスのために測定ケーブル11を解放させるようになっている。
【0035】
測定ケーブル11の数は、受雷体ブロック5の数に依存する。測定方法に応じて、各受雷体ブロック5に対して1つ又は2つの測定ケーブル11が設けられている。単純な抵抗測定のためには、1つのケーブルで十分であるが、補償されたブリッジ測定のためには、2つのケーブルを設けることができる。
【0036】
図4は、測定システム10を備えた完成した羽根1を示している。理解しやすくするために、2つの受雷体ブロック5だけが示されている。各受雷体ブロック5は、末端ブロック6において終わった引下げ導線2に結合されている。各受雷体ブロック5は、さらに、測定ケーブル11の第1の端部11aに結合されている。測定ケーブル11の第2の端部11bは、末端ブロック6に取外し可能に結合されている。
【0037】
最上部の受雷体ブロック5に結合された測定ケーブル11の第2の端部11bは、引下げ導線2の電気抵抗の測定のために、末端ブロックから取り外される。オーム計等の電気抵抗測定装置12は、測定のために、測定ケーブル11の第2の端部11bと、引下げ導線2の下端又は末端ブロック6とに接続される。
【0038】
引下げ導線2と、測定ケーブル11とは、直列に接続されるので、引下げ導線2の電気抵抗の容易な測定が可能である。相互作用は、羽根1のベース部4においてのみ必要とされる。
【0039】
羽根1の中間部における受雷体ブロック5からの電気経路の電気抵抗も、他の測定ケーブルが末端ブロック6から取り外されてオーム計12に接続された場合、測定することができる。この場合、引下げ導線2の一部が測定される。
【0040】
引下げ導線という用語を明らかにするために、以下の説明が参照される。引下げ導線という用語は、上記では、最も上部の受雷体ブロック5から末端ブロック6までの導体の全長に対して使用される。引下げ導線の一部という用語は、中間部に設けられた受雷体ブロック5(又はあらゆるその他の受雷体ブロック)から末端ブロック6までの導体の部分的な長さに対して使用される。しかしながら、引下げ導線2の部分的長さを「引下げ導線」として意味することもできる。中間部の受雷体ブロック5又はその受雷体ブロック5において誘発される電流に関してみれば、引下げ導線の一部は、完全な引下げ導線である。
【0041】
様々な異なる測定方法を採用することができる。1つの方法は、図4に示されており、この場合、引下げ導線2の直列接続の電気抵抗が直接測定される。測定ケーブル11の(既知の)電気抵抗値によって測定結果を修正することが必要な場合もある。
【0042】
3つ以上のケーブルが設けられている場合、補償されたブリッジ測定も可能である。つまり、2つの測定ケーブル11が各受雷体ブロック5に接続されているか、又はそれぞれ異なる受雷体ブロック5からの2つ以上の測定ケーブル11が使用される。
【符号の説明】
【0043】
1 羽根、 2 引下げ導線、 2a スタブ、 3 上部、 4 ベース部、 5 受雷体ブロック、 6 末端ブロック、 7 受雷体、 8 ボルト、 9 ワッシャ、 10 測定システム、 11 測定ケーブル、 11a 第1の端部、 11b 第2の端部、 12 オーム計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車の羽根(1)の引下げ導線(2)のための測定システムにおいて、第1の端部(11a)において引下げ導線(2)に直列に接続された測定ケーブル(11)が設けられており、該測定ケーブル(11)の第2の端部(11b)が、羽根(1)の下側ベース部分(4)において電気抵抗を測定するためにアクセス可能であることを特徴とする、風車の羽根の引下げ導線のための測定システム。
【請求項2】
前記測定ケーブル(11)の第1の端部(11a)が、羽根(1)の上側部分(3)において引下げ導線(2)に接続されている、請求項1記載の引下げ導線(2)のための測定システム。
【請求項3】
引下げ導線(2)と、測定ケーブル(11)とが、受雷装置(5)を介して接続されている、請求項1又は2記載の引下げ導線(2)のための測定システム。
【請求項4】
前記受雷装置(5)が、アルミニウム、黄銅、ステンレス鋼、及び/又はこれらに関連する合金及び/又はカーボンのグループの導電性材料から成る、請求項3記載の引下げ導線(2)のための測定システム。
【請求項5】
引下げ導線(2)と、測定ケーブル(11)とが、交換可能な受雷体(7)を収容した受雷装置の受雷体ブロック(5)を介して接続されている、請求項3又は4記載の引下げ導線(2)のための測定システム。
【請求項6】
引下げ導線(2)に接続された複数の受雷装置(5)のうちの1つにそれぞれ接続された2つ以上の測定ケーブル(11)が設けられている、請求項3から5までのいずれか1項記載の引下げ導線(2)のための測定システム。
【請求項7】
測定ケーブル(11)のうちの2つが、補償されたブリッジ測定のために設けられている、請求項6記載の引下げ導線(2)のための測定システム。
【請求項8】
シングル測定ケーブル(11)が、1つ又は2つ以上のマルチコアケーブルの部分である、請求項6又は7記載の引下げ導線(2)のための測定システム。
【請求項9】
1つ又は複数の測定ケーブル及び/又は1つ又は複数の引下げ導線(2)の、第2の端部(11b)が、羽根(1)のベース部分(4)に配置された末端ブロック(6)に接続されており、1つ又は複数のケーブル(11)の第2の端部(11b)が、末端ブロックに取外し可能に接続されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の引下げ導線(2)のための測定システム。
【請求項10】
引下げ導線(2)と、請求項1から9までのいずれか1項記載の引下げ導線(2)のための測定システム(10)とが設けられていることを特徴とする、風車の羽根。
【請求項11】
請求項10記載の、1つ又は2つ以上の羽根(1)が設けられていることを特徴とする風車。
【請求項12】
請求項10記載の羽根(1)の引下げ導線(2)の電気抵抗を測定する方法において、
電気抵抗測定装置(12)を測定ケーブル(11)の第2の端部(11b)に接続するステップと、
引下げ導線(2)の電気抵抗を測定するステップとを含むことを特徴とする、請求項10記載の羽根(1)の引下げ導線(2)の電気抵抗を測定する方法。
【請求項13】
引下げ導線(2)と、測定ケーブル(11)との組み合わされた電気抵抗が測定され、引下げ導線(2)の電気抵抗が、測定された組み合わされた電気抵抗から計算される、請求項12記載の測定する方法。
【請求項14】
測定ケーブル(11)のうちの2つが、補償されるブリッジ測定のために利用される、請求項12又は13記載の測定する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−42473(P2012−42473A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−179005(P2011−179005)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】