説明

飛行体捕捉システムおよび飛行体捕捉方法

【課題】 従来よりも容易・迅速にステルス化された目標を捕捉し得る飛行体捕捉システムを提供することを目的とする
【解決手段】 本発明に係る飛行体捕捉システムは、飛行体が飛行することにより発生する飛行機雲を捕捉する飛行機雲レーダ装置と、飛行する飛行体を捕捉する捜索レーダ装置と、前記飛行機雲レーダ装置により飛行機雲が捕捉され、かつ前記捜索レーダ装置により飛行体が捕捉されない場合に前記飛行機雲を発生する飛行体がステルス飛行体であると判断するステルス飛行体判断装置とを具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体捕捉システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電波吸収材としてフェライトを塗ったりするなどしてステルス(stealth)化された航空機や飛翔体が存在する。このようなステルス化された航空機等を捕捉するため、従来の飛行体捕捉システムとして、レーダによる航空機、飛翔体等の目標捕捉追尾機能に赤外線シーカを用いた熱検知による目標捕捉追尾機能を付加して、ステルス化、電波妨害等に対処するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来の飛行体捕捉システムでは、発射器(例えば銃、砲等の対空火器)個々に赤外線シーカを搭載することにより、複数の目標を同時に捕捉、追尾することができることも特徴としている。
【特許文献1】 実開平5−8291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上に述べた従来の飛行体捕捉システムは、赤外線シーカをレーダと併用してステルス化した目標を捕捉しようとするものである。
しかしながら、上記従来の飛行体捕捉システムの場合、目標(飛行体)の発する赤外線を広い上空の中で検知するのは容易でないという問題がある。
【0004】
本発明は上記問題に鑑み、従来よりも容易・迅速にステルス化された目標を捕捉し得る飛行体捕捉システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る飛行体捕捉システムは、飛行体が飛行することにより発生する飛行機雲を捕捉する飛行機雲レーダ装置と、飛行する飛行体を捕捉する捜索レーダ装置と、前記飛行機雲レーダ装置により飛行機雲が捕捉され、かつ前記捜索レーダ装置により飛行体が捕捉されない場合に前記飛行機雲を発生する飛行体がステルス飛行体であると判断するステルス飛行体判断装置と、を具備することを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る飛行体捕捉システムは、前記飛行機雲レーダ装置により捕捉された飛行機雲に係る情報に基づいて前記飛行機雲の位置情報を算出する位置算出装置をさらに具備し、前記捜索レーダ装置は前記位置情報に基づいて得られる方角について飛行体の捕捉を試みることを特徴とする請求項1記載の飛行体捕捉システムである。
【0007】
また、本発明に係る飛行体捕捉システムは、電波反射剤を内蔵する飛翔体を発射する発射装置をさらに具備し、この発射装置は前記飛翔体を目標空間へ発射し、前記目標空間において前記飛翔体を破裂させることにより前記電波反射剤を飛散させ、前記目標空間を飛行するステルス飛行体に電波反射剤を付着させることにより前記ステルス飛行体の電波反射量を増大させ、前記捜索レーダ装置による前記ステルス飛行体の捕捉を容易ならしめることを特徴とする請求項1または2記載の飛行体捕捉システムである。
【0008】
また、本発明に係る飛行体捕捉システムは、前記ステルス飛行体を捕捉するための赤外線カメラ装置をさらに具備することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の飛行体捕捉システムである。
【0009】
また、本発明に係る飛行体捕捉システムは、前記ステルス飛行体を迎撃するための誘導弾システムをさらに具備することを特徴とする請求項1ないし4記載の飛行体捕捉システムである。
【0010】
また、本発明に係る飛行体捕捉方法は、飛行体が飛行することにより発生する飛行機雲を捕捉し、飛行する飛行体の捕捉を試み、飛行機雲が捕捉され、かつ飛行体が捕捉されない場合に前記飛行機雲を発生する飛行体がステルス飛行体であると判断することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る飛行体捕捉システムは、前記捕捉された飛行機雲に係る情報に基づいて前記飛行機雲の位置情報を算出し、前記飛行体の捕捉の試みは前記位置情報に基づいて得られる方角について行われることを特徴とする請求項6記載の飛行体捕捉システムである。
【0012】
上記課題解決手段による作用は次の通りである。すなわち、ステルス化された航空機又は飛翔体であっても、寒冷で多湿の大気中を飛行する飛行機又は飛翔体の航跡には飛行機雲が発生する。飛行機雲は主として、排気ガスが心核となって水蒸気が凝結して生ずるために気象レーダシステムで瞬時に雲の生じる時間計測及び軌跡計測を行い、飛行機雲か否かの判断を行い、飛行機雲と判断した場合、別のレーダで航空機又はミサイルを検知しようとするが、検知出来ない場合にステルス機が飛来していると判断することができる。
【発明の効果】
【0013】
ステルス化された飛行体を従来より容易に捕捉することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
電波吸収材としてフェライトを塗ったりするなどしてステルス化された航空機又は飛翔体(以下、ステルス飛行体と称す)であっても、寒冷で多湿の大気中を飛行する飛行機及びミサイルの航跡には飛行機雲が発生する。飛行機雲は主として排気ガスが心核となって水蒸気が凝結して生ずる。そこで、本発明では気象レーダシステムで瞬時に雲の生じる時間計測及び軌跡計測を行い、飛行機雲か否かの判断を行い、飛行機雲と判断された場合、別のレーダで航空機又はミサイルを検知することを試み、検知出来ない場合にステルス飛行体が飛来していると判断する。
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図1に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施の形態に係る飛行体捕捉システム並びにステルス飛行体及びその飛行機雲の関係の例を示す図である。
同図に示すように、飛行体捕捉システムは飛行機雲レーダ装置3と、位置算出装置4と、捜索レーダ装置5と、ステルス飛行体であるか否かを判断するステルス判断装置6と、赤外線カメラ装置10と、飛翔体13を装備する発射装置12とを含んで構成される。
なお、ステルス判断装置6は、位置算出装置4とケーブル7を介して、捜索レーダ装置5とケーブル8を介して、それぞれ接続される。さらにステルス判断装置6は赤外線カメラ装置10とケーブル9を介して、発射装置12とケーブル11を介して、それぞれ接続される。
【0016】
飛行機雲レーダ装置3は例えば気象観測用レーダであり、飛行機雲2を捕捉するためのものであ。
位置算出装置4は飛行機雲レーダ装置3が捕捉した飛行機雲2の位置を算出するものである。
捜索レーダ装置5は飛行体を捕捉するためのレーダ装置であり、位置算出装置4で算出して得られた飛行機雲2の位置情報を受けて飛行体の捕捉を試みるものである。
赤外線カメラ装置10は飛行体の発する赤外線を検知するためのものであり、本発明において必須のものでは無いが、付属的に用いられることによってステルス飛行体1の捕捉をより正確に行うために有効である。
発射装置12は飛翔体(砲弾を含む)13を発射させるためのものであり、飛翔体13は例えば電波発射剤を内蔵する。なお、発射装置12と飛翔体13も本発明において必須のものではないが、赤外線カメラ装置10の代わりに或いは赤外線カメラ装置10と共に用いることで、ステルス判断装置6がステルス飛行体1の飛行を判断した場合に、ステルス飛行体1の捕捉をより正確に行うために有効である。
【0017】
以上のような構成を有する飛行体捕捉システムの動作について以下に説明する。
飛行機雲レーダ装置3は上空の雲の様子を観測し、捕捉した雲の状況が飛行機雲2か否かを判断する。飛行機雲レーダ装置3により飛行機雲2の存在が捉えられると、その飛行機雲2の位置情報が位置算出装置4により算出される。算出された飛行機雲2の位置情報はケーブル7を介してステルス判断装置6に与えられる。
次に、捜索レーダ装置5はステルス判断装置6から飛行機雲2の位置情報をケーブル8を介して受け、この位置情報に基づいて飛行機雲2の端部位置または時間的経過に伴う飛行機予測位置に対して飛行体の捕捉を試みる。
飛行体捕捉可否の情報は捜索レーダ装置5からステルス判断装置6にケーブル8を介して与えられる。ステルス判断装置6は飛行機雲レーダ装置3及び位置算出装置4からの情報に基づき飛行機雲2が存在するにも関わらず、捜索レーダ装置5では飛行体の捕捉ができなかった旨(飛行体が存在しない旨)の情報を受け取った場合は、飛行機雲2がステルス飛行体1によるものとの推測から、ステルス飛行体1が飛行していると判断する。
なお、飛行機雲2の存在が認められ、飛行体も捕捉された場合は、その飛行機雲2が当該飛行体によるものと推測し、ステルス飛行体1が飛行しているとは判断しない。
【0018】
より正確にステルス飛行体1を捕捉するために、飛行体捕捉システムは赤外線カメラ装置10を用いるようにしてもよい。ステルス判断装置6は上記のようにステルス飛行体1が飛行していると判断すると、ケーブル9を介して飛行機雲2の位置情報に基づくステルス飛行体1が存在すると考えられる位置情報を赤外線カメラ装置10に与える。赤外線カメラ装置10は与えられた位置情報に基づいて所定の位置(方向)にカメラを向け飛行体が発する赤外線を検知することによりステルス飛行体1を捕捉する。
このようにステルス飛行体1が発する赤外線を検知することにより、より確実にステルス飛行体1が飛行していることが判断でき、その飛行を捕捉することが可能となる。
【0019】
上記赤外線カメラ装置10によりステルス飛行体1が発する赤外線が検知された場合は当該検知に基づいて捕捉したステルス飛行体1に向けて、又はケーブル11を介してステルス判断装置6から与えられた、飛行機雲2の位置情報に基づくステルス飛行体1の存在すると考えられる位置情報に基づく所定の位置(方向)に向けて、発射装置12から飛翔体13を発射するようにしてもよい。
ステルス飛行体1が飛行している領域に飛翔体13が到達した時点で飛翔体13を破裂(自爆)させ、内蔵の電波反射剤を散布させる。
この電波反射剤の散布により電波反射剤がステルス飛行体1に付着すれば、捜索レーダ装置5によりステルス飛行体1を捕捉することが可能になる。
【0020】
なお、図示しないが、さらに詳細なデータを得るために、飛行機雲2の捕捉とステルス飛行体1の捕捉の補助として可視カメラを用いて、飛行機雲2の識別の画像処理と、ステルス飛行体1の識別の画像処理をおこなうことでより詳細なデータを得てもよい。
【0021】
図2は上記(図1に基づいて)で説明した本発明の一実施の形態に係る飛行体捕捉システムに誘導弾システム20をさらに具備してステルス飛行体1を迎撃する本発明の一実施の形態に係る飛行体捕捉システム、ステルス飛行体1、飛行機雲2及び誘導弾システム20の関係の例を示す図である。
【0022】
誘導弾システム20は射撃統制装置14、ミサイル発射装置15及びミサイル16から構成され、ステルス判断装置6にはアンテナ17が、射撃統制装置14にはアンテナ18が、ミサイル発射装置15にはアンテナ19設けられている。
【0023】
ステルス判断装置6のアンテナ17から送信されたステルス飛行体1の飛行情報を射撃統制装置14のアンテナ18で受信した射撃統制装置14はステルス飛行体1を射撃統制装置14に設けられたレーダ装置で再度確認し、ステルス判断装置6のステルス飛行体1の情報と射撃統制装置14に設けられたレーダ装置で再度確認したステルス飛行体1の情報をもとに、射撃統制装置14はアンテナ18からミサイル発射装置15にミサイル16の発射指令を送信し、この発射指令をミサイル発射装置15のアンテナ19で受信したミサイル発射装置15はミサイル16をステルス飛行体1に向けて発射させ、ステルス飛行体1を迎撃する。なお、情報の送受信をアンテナで行うように前記したが、それぞれの情報の伝達はケーブルを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】 本発明の実施形態の一例を示す概略図。
【図2】 本発明の実施形態に誘導弾システムを具備した一例を示す概略図。
【符号の説明】
【0025】
1 ステルス飛行体
2 飛行機雲
3 飛行機雲レーダ装置
4 位置算出装置
5 捜索レーダ装置
6 ステルス判断装置
7 ケーブル
8 ケーブル
9 ケーブル
10 赤外線カメラ装置
11 ケーブル
12 発射装置
13 飛翔体
14 射撃統制装置
15 ミサイル発射装置
16 ミサイル
17 アンテナ
18 アンテナ
19 アンテナ
20 誘導弾システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体が飛行することにより発生する飛行機雲を捕捉する飛行機雲レーダ装置と、
飛行する飛行体を捕捉する捜索レーダ装置と、
前記飛行機雲レーダ装置により飛行機雲が捕捉され、かつ前記捜索レーダ装置により飛行体が捕捉されない場合に前記飛行機雲を発生する飛行体がステルス飛行体であると判断するステルス飛行体判断装置と、
を具備することを特徴とする飛行体捕捉システム。
【請求項2】
前記飛行機雲レーダ装置により捕捉された飛行機雲に係る情報に基づいて前記飛行機雲の位置情報を算出する位置算出装置をさらに具備し、
前記捜索レーダ装置は前記位置情報に基づいて得られる方角について飛行体の捕捉を試みることを特徴とする請求項1記載の飛行体捕捉システム。
【請求項3】
電波反射剤を内蔵する飛翔体を発射する発射装置をさらに具備し、この発射装置は前記飛翔体を目標空間へ発射し、前記目標空間において前記飛翔体を破裂させることにより前記電波反射剤を飛散させ、前記目標空間を飛行するステルス飛行体に電波反射剤を付着させることにより前記ステルス飛行体の電波反射量を増大させ、前記捜索レーダ装置による前記ステルス飛行体の捕捉を容易ならしめることを特徴とする請求項1または2記載の飛行体捕捉システム。
【請求項4】
前記ステルス飛行体を捕捉するための赤外線カメラ装置をさらに具備することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の飛行体捕捉システム。
【請求項5】
前記ステルス飛行体を迎撃するための誘導弾システムをさらに具備することを特徴とする請求項1ないし4記載の飛行体捕捉システム。
【請求項6】
飛行体が飛行することにより発生する飛行機雲を捕捉し、
飛行する飛行体の捕捉を試み、
飛行機雲が捕捉され、かつ飛行体が捕捉されない場合に前記飛行機雲を発生する飛行体がステルス飛行体であると判断する
ことを特徴とする飛行体捕捉方法。
【請求項7】
前記捕捉された飛行機雲に係る情報に基づいて前記飛行機雲の位置情報を算出し、
前記飛行体の捕捉の試みは前記位置情報に基づいて得られる方角について行われることを特徴とする請求項6記載の飛行体捕捉システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−300063(P2009−300063A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177364(P2008−177364)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(501428855)
【Fターム(参考)】