説明

食品または化粧料の原料およびこれを配合した食品または化粧料

【課題】
本発明の目的は、食品や化粧品の付加価値を高め、真珠或いはアコヤ貝貝殻の利用をより有効的に利用し、真珠養殖の効率を高め、ひいては産業廃棄物の減量にも寄与することが目的である。
【解決手段】
黄色系真珠および/または黄色系アコヤ貝貝殻の真珠層を粉末化、或いはそのなかの色素を含む部分を分画した成分を食品または化粧料原料として利用することによって、上記の目的が達せられることがわかった。これらは色素としての有効性以外にも効果があるので利用価値が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真珠或いはアコヤ貝等の貝殻真珠層に含まれる黄色色素を食品または化粧品の原料として利用する発明に関する。
【背景技術】
【0002】
真珠或いはアコヤ貝真珠層を食品または化粧品に利用することは古くより行われてきた。(特許文献1〜4)
【0003】
【特許文献1】特開2002−338430号公報
【特許文献2】特開2003−081750号公報
【特許文献3】特開2003−160440号公報
【特許文献4】特開2003−300822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、食品や化粧品の付加価値を高め、真珠或いはアコヤ貝等の貝殻の利用をより有効的に利用し、真珠養殖の効率を高め、ひいては産業廃棄物の減量にも寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
真珠(或いは貝殻真珠層)の色は実体色と干渉色(構造色)によって決定される。実体色は真珠に含まれる黄色色素含量の多寡により決定され、黄色系と白色系の真珠に大きく分けられる。一般的に、黄色系は白色系に比べて装飾品としての商品価値が低いことが知られている。
このように装飾品としての価値の低い黄色系真珠を他の用途、すわなち、食品や化粧品分野においては、逆に色素として利用できることのみならず、この色素が持つ優位性が発揮されることがわかった。
以下に実際の利用方法について記載する。
まず、黄色系アコヤ貝とは黄色系真珠を産する可能性があるアコヤ貝のことで、これを選別する方法は、貝殻の内面の真珠層を目視で観察すればよい。
選択された、真珠および/または黄色系アコヤ貝貝殻の処理として真珠は核を取り除き、アコヤ貝貝殻は稜柱層より外層を取り除く。
稜柱層より外層を取り除く方法として、グラインダーを用いる方法、塩酸を用いる方法(特開昭62−120319号参照)や次亜塩素酸ソーダを用いる方法(特開2006−052183号参照)等公知の方法で取り除く。
【0006】
これを用途に応じて粉砕する。粉砕方法はカッターミル、ハンマーミル、ローラミル、クラッシャ、ロータリーカッタ、ボールミル、スクリーンミル、ジェットミル、サイクロンミル等を適宜組み合わせて必要な大きさまで粉砕する。
以上のような粉末を食品に用いれば、色素としてのみならず、カルシウム剤としての有効性さらにはコンキオリンも含まれているのでその有効性もあり、食品の用途によっては利用価値の高いものとなる。
また、化粧品においても、ファンデーション等のカラー化粧品等に応用可能である。
【0007】
さらに、真珠や貝殻真珠層の粉末より色素を取り出して利用する方法もある。
これは色素のみ取り出す方法もあるが、脱灰のみを行い、コンキオリン等の有効物質を含んだまま色素を取り出し利用する方法もある。いずれにせよ、脱灰する必要がある。
脱灰の方法は、塩酸、酢酸、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸等の無機酸、有機酸、キレート剤の1種または2種以上を用いて炭酸カルシウムを溶解させ、不溶部分を集め、この不溶部分を利用する。
さらに精製する場合は、無機酸、有機酸から選択される1種以上の酸の水溶液または親水性有機溶媒或いは水と1種以上の水性有機溶媒の混合溶媒で抽出する。酸は各種利用できるが、その後工程で酸を除去する場合が多いので、除去しやすい塩酸がよく利用される。親水性有機溶媒溶液は例示すればメタノール、エタノール、アセトン等が挙げられる。
【0008】
このような精製方法を用いる場合は前記工程の脱灰は充分に行っておかないと、酸と反応し、色素が、酸の親水性有機溶媒溶液に溶解しない場合があるので注意する必要がある。
酸の親水性有機溶媒溶液で抽出し、不溶物を遠心分離やろ過で取り除き、必要により、酸、水や親水性有機溶媒を加熱や減圧濃縮、中和等の方法で取り除き食品または化粧料に利用する。
【実施例】
【0009】
以下に実施例を記すがこれに限定されるものではない。
【0010】
実施例1
黄色系アコヤ貝貝殻を金ブラシで付着物を取り除き、グラインダーで真珠層以外(主として稜柱層)を削りとった。これをハンマーミルで粉砕し、平均380μの粉末とした。
【0011】
実施例2
黄色系真珠の核を取り除き、乳鉢で平均58μの粉末とした。
【0012】
実施例3
実施例1の粉末、1000gに5N塩酸を1.8リットルを撹拌しながら徐々に加えた。
さらに撹拌しつつ1N塩酸を1リットル加え2日間撹拌した。
これを遠心分離(6000rpm、10分間)し、沈殿に0.5N塩酸1リットルを加え、3日間撹拌した。
これを遠心分離(6000rpm、10分間)し、沈殿に精製水1リットルを加え、1時間撹拌し、遠心分離(6000rpm、10分間)した。これを3回繰り返した。
沈殿を60℃で1日間乾燥させた。
【0013】
実施例4
実施例3により得られた物質20gに1N塩酸メタノール溶液を1リットル加え、3時間撹拌した後、濾過し、濾液を減圧乾燥した。
【0014】
実施例5
黄色系アコヤ貝貝殻10kgを6%次亜塩素酸ソーダを20kgのなかに入れ、3日間放置後、水洗した。真珠層部分を取り出し、50℃で1日乾燥させた。
これをこれをハンマーミルで粉砕し、平均300μの粉末とした。
【0015】
実施例6
実施例5の粉末、1000gに0.5MのEDTA水溶液(pH8.0に調整、含0.01Nアジ化ナトリウム)40リットルを撹拌しながら加え、5日間ゆっくり撹拌した。これを遠心分離(6000rpm、10分間)し、沈殿に精製水1リットルを加え、1時間撹拌し、遠心分離(6000rpm、10分間)した。これを3回繰り返した。
これに90%アセトンを1リットル加え3時間撹拌し、遠心分離(6000rpm、10分間)した。
沈殿に1N塩酸メタノール溶液を2リットル加え、3時間撹拌した後、濾過し、濾液を減圧乾燥した。
【0016】
これらの実施例を食品や化粧品に配合するが、特に実施例1、2、5はファンデーションをはじめとするカラー化粧品に配合すると、今までの真珠粉末や真珠層粉末では得られない色調を得ることができ、食品の場合は、色素としての効果以外にも、カルシウム剤として、また、コンキオリン等の有効成分も含まれるので種々の効果が期待できる。
実施例3はコンキオリン等の有機質も色素とともに含むので用途によっては利用価値が高い。
実施例4と6は色素成分の割合が高く、色素としての利用にはよい。また、この色素の構造は未知であるが、以下の配合例と配合比較例(配合比較例は配合例の実施例4を水に置換えその他は配合例と同様に作成したクリーム)女性20名に左右半顔づつ1ヶ月間使用してもらった結果、肌理の改善効果、しっとり感の向上が認められた。
【0017】
(配合例) クリーム
A 重量部
スクワラン 20.0
ホホバ油 5.0
ミツロウ 5.0
セトステアリルアルコール 2.0
グリセリンモノステアレート 1.0
ソルビタンモノステアレート 2.0
実施例4 1.0

精製水 55.9
ポリオキシエチレン(20E.O.)
ソルビタンモノステアレート 2.0
ポリオキシエチレン(60E.O.)硬化ヒマシ油 1.0
グリセリン 5.0
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
AとBをそれぞれ計量し、70℃まで加温し、BにAを攪拌しつつ徐々に加えたのち、ゆっくり攪拌しつつ30℃まで冷却した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黄色系真珠および/または黄色系アコヤ貝貝殻の真珠層を粉末化した真珠粉末および/または貝殻真珠層粉末を成分とする食品または化粧料原料。
【請求項2】
真珠および/またはアコヤ貝貝殻より得られた色素を成分とする食品または化粧料原料。
【請求項3】
真珠および/またはアコヤ貝貝殻より、酸−水溶性有機溶媒により抽出した色素を成分とする食品または化粧料原料。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1つ以上の原料を配合した食品または化粧料。

【公開番号】特開2012−167036(P2012−167036A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27421(P2011−27421)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000166959)御木本製薬株式会社 (66)
【出願人】(304026696)国立大学法人三重大学 (270)
【Fターム(参考)】