説明

食品液体から泡を作るための器具及び方法

【課題】衛生的構造で、容易に洗浄できるミルクベースの液体から泡を作るための器具を提供する。
【解決手段】泡立てられる液体を受け、その液体中に回転可能な攪拌器4が位置されるタンク21と、タンクに関連付けられたスタンド20と、攪拌器を駆動させるためのシステム5とを備える器具。攪拌器駆動システム及び攪拌器4、5は、攪拌器をタンク21内で磁気的に回転駆動させることができる磁気要素を備える。タンクの中央垂直軸を中心とする液体の対称的な循環を壊し或いは防止するために擾乱手段4、5も設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミルク等の食品液体から泡を作るための器具及び方法に関し、例えば、カプチーノ、ミルキーコーヒー、カフェラッテ、マキアート、ホットチョコレート及び他の特殊ホット飲料等の飲料の生成との関連で使用されることを目的とする。
【背景技術】
【0002】
少なくとも一部が泡から成る特殊飲料は益々大流行している。最も良く知られたこの種の飲料はカプチーノタイプのコーヒーである。このコーヒーは、その非常に低い密度により液体の表面の上に浮く泡だったミルクの層によって覆われたコーヒーから成る液体部分を備える。一般に、このコーヒーを作るには、時間と、巧みな操作と、洗浄とを要する。
【0003】
ミルクベースの泡を作る最も一般的な方法は、所望量のミルクを容器内に注ぎ、コーヒーメーカーからの蒸気出口パイプを容器内に浸すとともに、このパイプを上下に攪拌させて、泡を形成するために必要な空気を導入することである。
【0004】
この方法に伴う第1の欠点は、蒸気出口を備えるコーヒーメーカーを有することを必要とするという点であり、全てのコーヒーメーカーがこれを有しているとは限らない。
【0005】
他の欠点は、2つの別個の流体回路、すなわち、コーヒーを抽出する1つの流体回路と蒸気を生成する他の流体回路とを有する複雑で高価な機械が利用できなければコーヒーを作るのと同時に泡を作ることが一般にできないという事実にある。
【0006】
蒸気出口を有するコーヒーメーカーの使用に関連する他の欠点は、待つ必要なく蒸気を生成するために、これらのコーヒーメーカー内で水を加熱するためのシステム、殆どの場合、サーモブロックが絶えずONに切り換えられた状態に維持されなければならないという事実から生じる。したがって、これらのコーヒーメーカーは多量の電力を消費し、それにより、これらのコーヒーメーカーを動作させるのが非常に不経済になる。また、使用される水が硬水である場合には蒸気パイプが直ぐにスケールアップしてしまい、これにより、パイプを良好な状態に保つために規則的なメンテナンスが必要になるということにも留意しなければならない。
【0007】
このタイプの機械に伴う他の欠点は、泡の品質がユーザの技能に依存しており、そのため、これらの機械が得られた泡に再現可能な特性及び均一な品質を持たせることができないという事実から生じる。
【0008】
他の欠点は、ミルクと接触するパイプを洗浄することが難しく且つ非常に現実的ではないという事実から生じる。
【0009】
また、卵、氷、ジュース等の多かれ少なかれ粘り気がある食品から泡を形成するために一般に家庭での使用を対象にしている機械的な攪拌器具も存在する。これらの器具に伴う問題は様々な種類からなり、そのため、これらの器具は、飲料を生成するためにミルクベースの液体から泡を形成するのに適していない。1つの欠点は、例えば、これらの器具が液体又はペーストを冷えた状態で攪拌し、そのため、それらの可能な使用がかなり制限されるという事実から生じる。また、ミルクは、冷たい時又は室温にある時には、納得のいくように泡立たない。
【0010】
他の欠点は、これらの器具がミルク等の微生物学的に繊細な液体を泡立たせるのに適していないという事実から生じる。任意の固体食品残留物を除去するためには、器具のタンクの規則的な洗浄を想定しなければならない。また、ミルクの加熱は、熱処理された或いは焼かれた蛋白質が表面上に堆積して付着する度合いを増大させる傾向がある。既存の器具の大部分は、洗浄を厄介にするこの固体残留物の堆積を減少させるのにあまり適していない。
【0011】
また、これらの器具は、固定されてタンク内に侵入する攪拌・駆動機構も有しており、これが幾つかの欠点を与える。すなわち、取り外し/再取り付け時間が決して短いとはいえず、器具が更に急速に汚れる傾向があり、多数の構成要素の結果として器具が更なるコストを伴い、また、攪拌手段を洗浄することが難しい。
【0012】
これらの器具に伴う他の欠点は、攪拌手段の構成に関連する理由により、これらの器具の泡立てが最適ではないという事実から生じる。一部の器具では、攪拌手段がタンクの中央に位置されている。このような構成は、所定量のミルクベースの液体を豊富な泡へ急速に変えるのに効果的ではない。
【0013】
他の器具は幾つかの攪拌器を有している。これらの構成は、一般に、攪拌器の回転を調整するために必要とされるギア手段を伴う機械的なものであり、また、これにより、システムが侵入的となり、したがって、あまり衛生的でなくなるとともに、部品の数が増大し、洗浄が骨の折れる作業となる。
【0014】
米国特許第6 318 247号は、攪拌によって例えばホットチョコレート等のホット飲料又は食品を作るための器具に関するものである。この器具は、磁気作用型の攪拌器を駆動させるためのシステムを備えている。しかしながら、この器具は幾つかの欠点を有している。第1に、このような器具では、液体又は泡がタンクの中心軸に対して同軸に攪拌され、これにより、攪拌器によって形成される遠心作用に起因して、液体又は泡の幾つかの層、特に周辺の層が、他の層、特に中央付近の層ほど広範囲にわたって攪拌されないといった循環が引き起こされる。したがって、このような循環は、十分な品質の泡の生成又はこの泡を形成するのに必要な時間の減少に適していない。また、器具の構造は、ミルクベースの液体を処理するために衛生的ではなく、このような構造により洗浄が容易でなくなる。
【0015】
ほぼ同じ欠点を有する食品を攪拌するための他の装置は、国際公開公報第2004/043213 A1号又は独国特許第196 24 648 A1号に記載されている。
【0016】
磁気係合タイプの他の攪拌システムは米国特許第2 932 493号、独国特許第1 131 372号、米国特許第4 537 332号及び米国特許第6 712 497号に記載されているが、これらのいずれも短時間で衛生的に良質の泡を生成するのに適する解決策を与えていない。
【0017】
独国実用新案特許第89 15 094号は、ミルクベースの飲料を分配するための冷蔵ポットに関するものである。このポットは、冷蔵手段と磁気ロータの形態を成す強制対流手段とを備えている。このような装置は、液体を泡に変えるのに適していないが、保存のために液体を冷蔵温度で均一に簡単に維持する。
【0018】
米国特許第3 356 349号は、加熱タンクと、タンクの中央に位置されたハブを駆動させるためにタンクの下側に位置された磁気駆動手段とを備える攪拌装置に関するものである。ハブは、ハブに対してオフセットされた攪拌要素に関連付けられており、これにより攪拌要素が振動する動きをする。攪拌のこのような原理は、駆動手段の回転軸に対する攪拌手段のオフセット位置により生成される慣性の高いモーメントにより、磁気結合の損失をもたらす可能性がある。この問題は速度の増加と共に増大する。したがって、このような攪拌装置は、特定の液体又は他の物質を低速で攪拌するように作用し得るが、十分に高速で液体を泡へ変えるのには適していないと分かる。因みに、この文献は、この装置を使用した液体の泡への変換について言及していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、本発明の主な目的は、ミルクベースの食品液体からの泡の生成により適した特に飲料を製造するための器具を提案することにより従来技術の欠点を軽減することである。
【0020】
したがって、本発明の目的は、より衛生的な構造であり、容易に洗浄できるとともに、使用が簡単な器具を提供することである。
【0021】
本発明の他の目的は、最も短い可能な生成時間で再現性のある特性及び品質を有する泡を製造する器具を提供することである。
【0022】
本発明の他の目的は、ユーザの介入量を制限することにより生成方法を簡略化することである。
【0023】
本発明の他の目的は、経済的に使用できる器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
この目的のため、本発明は、ミルクベースの液体から泡を作るための器具であって、
泡立てられる液体を受け、この液体中に回転可能な攪拌器が位置されるタンクと、
タンクに関連付けられたスタンドと、
攪拌器を駆動させるための手段と、
を備えるとともに、駆動手段に電力を供給するための給電手段を更に備えている器具に関する。
【0025】
器具における1つの改良は、壁を通じて侵入する機械的な接続部材を伴うことなく駆動手段による磁気駆動作用を介して攪拌器が駆動されるように駆動手段及び攪拌器が構成されているという事実に端を発している。
【0026】
本発明の原理のうちの1つは、器具が、実際に、特に加熱時にタンクの壁に対して容易に堆積するようになる食品液体を受けて処理するように意図されており、そのため、攪拌器を駆動させるように意図されたシステムが非侵入的であり、したがって、より衛生的で簡単であるという事実に基づいている。
【0027】
他の特徴は、タンクの中央垂直軸を中心とする対称的で且つほぼ同軸な液体循環を壊し或いは防止するために擾乱手段が設けられているという点である。このような構成により、タンク内の流体の循環が十分に乱され、したがって、泡を形成するために必要な時間が減少されるとともに、より高い泡/液体比率が得られる。このような構成によれば、本発明の非侵入的なシステムを使用して、したがって1つの攪拌器だけを用いて結果を得ることができ、それにより、器具が大きく簡略化され、器具のコストは低減される。
【0028】
好ましくは、加熱手段は、タンク内の液体を加熱するためにタンクに関連して位置される。加熱手段により、液体及び泡を加熱することができると同時に、泡が生成される。
【0029】
本発明の一実施形態において、器具は、タンクの中央垂直軸に対してオフセットされる少なくとも1つの磁場を生成する駆動手段を備える。したがって、このようなオフセット磁場は、タンクの中央からオフセットされる攪拌器を駆動することにより擾乱手段として作用する。
【0030】
したがって、攪拌器のオフセット位置の結果として、液体、泡又は液体/泡攪拌器の軸と同軸の層は、非対称形態で遠心作用により攪拌される。
【0031】
このような手段は非侵入的なものであり、そのため、駆動手段を攪拌器に対して接続するため或いはタンクに対して攪拌器を接続する又は案内するためにタンクを貫通する伝達要素が不要となり、それにより、器具がより衛生的となり、また、器具を洗浄することが容易になる。
【0032】
好ましくは、また、攪拌器位置決め要素は、攪拌器を前記駆動手段と係合した状態でタンクの中央垂直軸に対してオフセットされる回転軸に沿って位置決めするように構成され、これにより、攪拌器は、回転駆動されると、前記中央垂直軸に対して非同軸な液体の循環を形成する。位置決め要素により、攪拌器は、このように規定された磁場で局所的に所定位置に正確に位置決めされる。位置決め要素は、攪拌動作前、攪拌動作中又は攪拌動作後に攪拌器が磁場から離れることを防止する。位置決め要素は、攪拌器の位置を簡単な方法でユーザに知らせるとともに、攪拌器の特別な取り外し/再取り付けを必要としない。また、タンクの内容物があふれ出ると、攪拌器と駆動手段との間に形成される磁気作用が攪拌器をタンク内の所定の位置に保持する。
【0033】
一実施形態において、位置決め要素は、タンクの表面に形成された起伏部であって、攪拌器をほぼ補完する形状を少なくとも成している。したがって、攪拌器は上記起伏部又は凹部に係合できる。過度な摩擦を伴うことなく攪拌器を回転駆動させることができるように十分な間隔が設けられてもよい。別な方法として、摩擦係数が低い材料により形成された表面が設けられてもよい。
【0034】
このように、攪拌器は、任意の特別な道具を要することなく単なる形状の係合によってのみ所定位置に置かれる。攪拌器は、接続されていなくてもよく、或いは、好ましくは急速結合型の接続手段によって接続されてもよい。
【0035】
起伏部又は凹部及びタンクの底部は共に一体の壁を形成する。したがって、シール要素を用いる必要がなく、そのため、複雑度が減少されるとともに、器具が更に衛生的になる。タンクの底部とは、タンクの底部にあり且つこの部分でタンクの全幅をほぼ形成する表面全体を意味するものと理解される。
【0036】
起伏部は、例えば、タンクの内側へ向けた窪みとしてタンクの実際の壁に設けられ、そのため、この壁には外側に凹部が形成される。したがって、このようにしてタンクの外側に形成される凹部は、攪拌器がタンクの底部からある程度の距離だけ上昇した所定の位置に保持されるように駆動手段の磁気駆動部を収容するのに役立つことができ、それにより、タンクの底部に隣接する攪拌器位置と比べると攪拌効果が向上される。好ましくは、攪拌器は、タンク内の起伏部の周囲に嵌合する環状要素である。
【0037】
1つの可能な変形において、位置決め手段はタンクの内面の凹部であってもよく、この凹部内に攪拌器が部分的に位置される。
【0038】
いずれにしても、位置決め手段は、このようにして、水平軸に沿って且つ垂直軸に沿ってタンク内で位置決めするのに役立つ。また、位置決め手段は、攪拌器を案内するとともに、攪拌動作中に攪拌器が誤って磁場から離れることを防止する働きがある。
【0039】
攪拌器は様々な構成を採用してもよい。これらのうちの1つにおいて、攪拌器は、位置決め手段としての機能を果たし且つタンクの底部から突出する起伏部に嵌合する中心スロットを有する環状の形状を成し、上記中心スロットの周囲近傍に位置された少なくとも1つの磁気追従部分を有する。このような構成は効果的である。なぜなら、このような構成により、攪拌器をタンク内に簡単に取り付けることができるからである。また、このような構成により、攪拌器をタンクの底部から一定の距離で離間させたまま維持することができ、それにより、良好な発泡が促される。
【0040】
一実施形態において、駆動手段は、タンクの外側で且つ起伏部の内側に係合する磁気駆動部を備える。したがって、磁気駆動部は、攪拌器の少なくとも上記磁気追従部分と協働する。そのため、磁気駆動部は、電気モータに関連付けられたスピンドルによって回転される。したがって、駆動部材と攪拌器との間の磁気的な協働はより密接であり、これにより、高速であっても離脱する危険又は駆動不全が減少する。
【0041】
攪拌器の1つの構成において、攪拌器は、攪拌要素を持つ外周部分を有している。
【0042】
したがって、攪拌要素は、以下の要素、すなわち、トロイダル形状のワイヤから成る巻回部、インペラ、ブレード、格子又はニードルのうちの1つ以上から成っていてもよい。例えば液体の性質にしたがって、特定の要素が他の要素よりも有効であると分かる場合がある。
【0043】
好ましい実施形態において、タンクは、円筒状又は略円筒状である。しかしながら、本発明の1つの想定し得る変形において、タンク内の流体の同軸的な動きを防止し或いは壊すための擾乱手段は、その構造が中央垂直軸に対して非円筒状のタンクを備える。タンクは、本発明の範囲から逸脱することなく、多くの異なる形状を採用してもよい。
【0044】
1つの可能な実施形態において、擾乱手段は、中央垂直軸に対してオフセットされるかたちでタンク内へと起伏状態で延びる壁及び/又は他の障害物を備える。したがって、これらの要素は、タンク内の流体の任意の全く同軸な循環的な動きを壊す手段を形成する。これらの要素は、例えば、タンクの内部に向かって径方向に且つ水平に及び/又は垂直に延びるフィン又は他の障害物であってもよい。好ましくは、これらの要素は、一体部品として形成され或いはタンクの残りの部分と一体に形成される。
【0045】
他の実施形態において、擾乱手段は、液体が泡立てられる間に攪拌器の回転方向を数回切り換えるようにプログラムされた制御手段を備える。具体的には、タンク内の攪拌器の対称的な回転形態において、1つの回転方向だけが維持される場合、内容物(液体及び泡)は攪拌器に対して同軸にタンクの周囲を動きまわり、また、様々な層は、同じ速度で常に同じ半径に沿って移動し、したがって泡を形成するべく混ざり合わない。これは、泡の生成を中断させる効果がある。したがって、この問題を防ぐためには、前述した遠心作用が規則的な間隔又は不規則な間隔で中断されるように不連続な攪拌が想定される。0.3〜1Hz程度の周波数を有することが好ましい、回転方向におけるこれらの規則的な中断により、液体−泡混合物は下方に落下して元のように攪拌器と接触することができ、それにより、攪拌が反対方向で再開すると直ぐに再び混ぜ合わされる。
【0046】
本発明の1つの態様において、タンクは、液体を収容するように構成された部分において、2つの部分の間に接合線又は接続部を伴わず且つ開口を画定する任意の線を伴わない表面を有する。特に、ミルク等の液体は、固体の堆積により任意の隙間領域を非常に急速に汚す傾向がある。この現象は、液体が加熱され当該液体がその後に拭き取ることが困難な幾分熱処理された或いは焼かれた層を形成する傾向がある場合に顕著となる。固体の蓄積を促すこれらの領域を回避することにより、衛生上の危険が減少し、洗浄が容易に行なわれる。したがって、タンクは、液体を受けるための一体部分である表面を備えることが好ましい。そのため、タンクは、一緒に溶接されるが最終的に一体部分を形成する幾つかの要素から成っていてもよい。
【0047】
泡の形成を促すと同時に攪拌時間を減少させるため、攪拌中にチャンバ内の液体を加熱させるべく加熱手段が設けられる。これらの加熱手段は、タンクを直接に加熱するための手段であることが好ましい。一実施形態において、これらの加熱手段は、タンクの少なくとも底部と接触する電気的に絶縁された抵抗素子である。これらの素子は、
− タンクの外面と接触する「厚膜」型の少なくとも1つの加熱回路、又は、
− タンクの表面と接触するシールド抵抗型の加熱抵抗素子、
から選択されてもよい。
【0048】
他の加熱要素は、
− 誘導加熱手段又は赤外線加熱手段、又は、
− 加熱抵抗素子を有するこれらの手段の組み合わせ、
であってもよい。
【0049】
好ましい実施形態において、加熱手段は、タンクの底部の外面上に直接にプリントされる電気的に絶縁された「厚膜」型の加熱回路を備える。このような構成により、タンク表面に対する電力密度を増大させることができ、したがって、液体が泡立ちに最適な温度に急速に到達することから、泡を生成するために要する時間を減らすことができ、また、この全てが達成されると同時に、電力のより良好な分配に起因して焼き付きが回避される。
【0050】
使用するのに都合良く且つ任意の特定の技量又はユーザの監視を要しない装置を提供するため、制御手段は、予め設定された方式にしたがって加熱手段及び電気モータへの電力を自動的に遮断するように設定されている。さらに具体的には、制御手段は加熱手段に関連付けられる温度センサを備え、この場合、制御手段は、液体が予め設定された時間にわたって沸点未満に加熱されるように決定される設定点温度で加熱手段への給電を遮断するべく構成されている。制御手段に記憶された予め設定される方式は、液体(例えばミルク)の性質及びタンク内に蓄えることができる液体の体積すなわちタンクの容積及び予め設定された方式にしたがって最適な品質の所定量の泡を得るために液体における充填レベルをユーザに知らせるための結果として生じるタンクの満タンマークの使用によって決定される。
【0051】
本発明に係る器具は、一方でスタンドとタンクとを接続でき、他方で電源コンセントに接続可能な給電ベース支持体に対してスタンド及びタンクを接続できるコードレス電気接続アセンブリを備えると有益である。したがって、発泡ユニットの一部を形成するスタンド及びタンクは、充填、供給及び洗浄のためにあちこちに移動されてもよい。そうするために、コードレス接続アセンブリは、スタンドの底部に固定される第1のコネクタと、給電ベース支持体に固定される第2のコネクタとを備え、これらの2つのコネクタは、スタンドがベース支持体上に立っている間、スタンドの電気的な手段に給電するために互いに電気的に接続される。
【0052】
このように、他の態様において、本発明は、ミルクベースの液体から泡を作るための器具であって、
泡立てられる液体を受け、この液体中に回転可能な攪拌器が位置されるタンクと、
タンクに関連付けられたスタンドと、
攪拌器を駆動させるためのシステムと、
を備え、
攪拌器は、攪拌器駆動システムによってタンク内で磁気的に駆動されて保持されるよう
に構成され、
また、この攪拌器は、給電ユニットに対して取り外すことができるコードレス発泡ユニットを備えていることを特徴とする器具に関する。
【0053】
したがって、このような器具の1つの利点は、磁気ドライブとコードレス電源との組み合わせによって得られる発泡ユニットの移動性に関連付けられる。手段のこのような組み合わせにより、例えばカプチーノを作るためにマグカップ内に泡が注がれる際の泡の分配供給が更に容易になる。この場合、攪拌器は、磁気作用によってタンク内に保持されて抜け落ちず、また、泡が供給されている間、タンクから取り外される必要がない。また、磁気要素は、泡を注ぎ出すためにタンクがその開口を最も下側に向けた状態で傾けられるときに攪拌器が抜け落ちる危険を伴うことなくタンク内に保持されるように構成されている(サイジング、位置、サイズ等)。
【0054】
また、本発明は、
− 泡立てられる液体を受け、この液体中に回転可能な攪拌器が位置されるタンクと、
− 攪拌器を駆動するための手段と、
− 回転駆動手段に給電するための給電手段と、
を備える器具内でミルクベースの食品液体から泡を作るための方法であって、
特に、タンクの中央垂直軸に対して非対称に、タンクを通じた攪拌器接続部材の侵入を伴うことなく、磁気駆動作用により攪拌器を駆動させることを特徴とする方法に関する。
【0055】
好ましくは、方法は、攪拌中にタンク内の液体を加熱することを含む。加熱は、タンクの外面に対して加熱要素を直接的に分配して適用することにより行なわれることが好ましい。加熱要素の分配は、加熱面積1cm当たり15〜25ワット/電力密度を加熱面に生成することが好ましい。また、加熱要素によって覆われる加熱面全体の面積は、この面積の少なくとも40%、好ましくは40〜60%であることが好ましい。提案されるような加熱要素の電力の分配に関連付けられる直接的な適用により、熱い泡をタンク内で急速に得ることができると同時に、タンクの底部に固体残留物がこびりつく恐れが減少する。その結果、これにより、安定した熱い泡がもたらされると同時に、タンクの壁に対する固体残留物が最小限に抑えられ、したがって、器具の洗浄が容易になる。このような方法は、コーヒーメーカーと組み合わせて或いはコーヒーメーカーに組み込んでカプチーノ等の飲料を作る際に特に適した用途を見出す。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る器具の斜視図を示す。
【図2】図1の器具のA−A線に沿う断面図を示す。
【図3】図1の器具のA−A線に沿う斜視断面図を示す。
【図4】器具の一部、特に分離してとられたタンク及びスタンドのA−A線に沿う斜視断面図を示す。
【図5】器具の攪拌器を示す。
【図6】攪拌器を断面で示す。
【図7】器具のタンクの底部に関連付けられる直接的な加熱手段を示す。
【図8】タンクの攪拌器を伴うタンクの異なる形状を上から見た図を示す。
【図9】流体の循環を分配するための起伏部を有する異なるタンクを上から見た図を示す。
【図10】図9のタンクの変形のB−B線に沿う断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図1を参照すると、ミルク泡を作るための器具が示されている。このような器具は、機械的な攪拌及び加熱の複合作用により乳化する特性を有する食品液体、例えばフレッシュミルク、殺菌ミルク又はUHTミルク、スキムミルク、半脱脂粉乳又は全乳、粉末及び水から再構成され或いはミルク濃縮物及び水或いはミルクとコーヒー等の何らかの他の材料との混合物から再構成されるミルク等のミルク製品から泡を形成するために使用される。
【0058】
本発明に係る器具1は、コードレス発泡ユニット2と電気ベースユニット3とを備えており、電気ベースユニット3には、発泡ユニット2が電気ベースユニット上に単に立たされることにより電気的に接続されている。電気ベースユニット3には、リード線30により電源コンセントから電流が給電される。コードレス発泡ユニット2は側面にハンドル28を備え、それにより、例えば発泡ユニットを持ち上げたり、泡立たせた後に内容物を出して発泡ユニットを空にしたり、或いは、内容物を出して発泡ユニットを空にした後に発泡ユニットを洗浄する等、たやすく扱うことができる。ユニットは、ハンドル28が取り付けられるスタンド20を備えており、このスタンドは取り外し可能な蓋22によって閉じられる。蓋は、例えば外部からの塵埃に対して内部を保護するとともに、内部から外部を保護して、特に、ユニットが攪拌動作中に作動される際に任意の液体又は泡が飛び散ることを防止する。
【0059】
ここで、図2及び図3を参照して器具について更に詳しく説明する。発泡ユニット2は、タンク21が取り付けられるスタンド20を備える。タンク21は、加熱されて泡立たされる液体を受ける。タンクは、シールされる必要があるとともに、形成される泡の体積に適した容量を有している必要がある。一般に、このような器具は、50〜100cmの範囲の体積を有するミルク泡を生成するように設計されており、カプチーノタイプの1〜3つの飲料においてミルク泡を供給できる。しかしながら、必要に応じて更に大きい容量のタンクを想定してもよい。無論、本発明の器具は、攪拌動作が排除されるときに或いはこの動作を行なうための手段の動作が停止されるときに熱い液体を生成するために使用されてもよい。
【0060】
タンクの内部(INT)には攪拌器4が位置される。攪拌器4を駆動させるための手段5は、これらに関する限り、タンクの外部(EXT)、好ましくはタンクとスタンド20の内部との間の空間内に位置される。攪拌器4及び駆動手段5は、タンクを横断する侵入的な手段を使用することなくタンク内で液体の強制攪拌を引き起こすように互いに対して位置される。これを行なうため、攪拌器及びその駆動手段は磁気タイプのものあり、これにより、駆動手段5は、磁場に追従する手段がそれ自体に設けられている攪拌器を駆動させる回転磁場を形成する。磁気手段はタンクの中心軸「I」に対してオフセットしたかたちで位置されており、それにより攪拌器が回転させられ、したがって、タンクの中心軸と同軸ではない経路で液体又は泡が循環される。実際には、このような構成により、液体、そしてその後に泡が循環する傾向があり、それにより、攪拌器の中心にほぼ中心付けられる非対称な円錐が多少なりとも形成される。これにより、同じ半径で循環したまま互いに混ざり合わない一定速度の層の形成を回避できる。それどころか、これらの層は互いに混ざり合う。なぜなら、これらの層は同じ半径において異なる速度で循環するからである。特に、所定の半径において、層は、攪拌器がタンクの縁部から最も離れている側ではより高速で循環し、攪拌器が縁部に最も近い側ではより低速で循環する。これは、全ての液体又は泡をタンクの内側で循環するように促して、液体又は泡の層の淀みを防止し、それにより、攪拌があまり行なわれない或いは全く行なわれない領域を減少させる。
【0061】
攪拌器が移動する恐れを伴うことなくタンク内での攪拌器の制御された回転を確保するため、したがって、磁場の制御の喪失を回避するため、攪拌器を位置決めするための手段6がタンクの底部210に設けられている。したがって、位置決め手段は、攪拌器が回転駆動できるように、タンク内であるが磁場の位置に対して偏心して位置されている。図に示されているような場合、位置決め手段6はタンクの壁に形成された起伏部であり、この起伏部の周囲で攪拌器4が過度の摩擦を伴うことなく回転案内される。位置決め手段は、他の構造を有することができ、例えば攪拌器の一部がその後に挿入される凹部であってもよい。
【0062】
侵入的でない駆動手段の1つの利点は、潜在的な衛生問題を与える領域及び/又は洗浄又は濯ぎが難しい領域を形成し得る接合線又は不連続接続部又は開口を形成する線等を液体受け部、少なくともその底部が含まないタンクを構成できるという点である。したがって、タンクの液体受け面は、一体部品として形成されることが好ましい。本発明の意味において、例えば2つの要素間に連続的な継ぎ目を形成する溶接部は、接合線又は不連続接続部と見なされない。これに対し、ネジ、リベット又は入れ子式嵌合を使用する接合部は、衛生的な問題を引き起こしやすい接合部又は不連続接続部と見なされる。特に、食品固体残留物が接合部の隙間に埋め込まれて定着するようになる可能性がある場合には、洗浄の問題が生じ得る。したがって、立ち上がり面211と底部210とから成るタンク21は、蛋白質等の固体食品物質の付着を促す領域を伴わないほぼ滑らかな液体接触面を形成する。このようなタンクは、ステンレススチール、銅又はアルミニウム等の良好な熱伝導体である金属によって形成することができる。タンクは、例えば単一部品として成形されてもよい。図4に示される構造において、タンク21は、タンク21の上縁部230が、溶接、蝋付け、接着又はクリッピング等の任意の適当な接続手段によりスタンド20の縁部200に接続されている。また、タンクを食器洗い機内で洗浄するために容易に取り外すことができるように、タンクだけがスタンドに対して取り外し可能に装着されていてもよい。蓋22は、係合縁部220及び変形可能なエラストマー又はプラスチックガスケット221を介して密接嵌合としてタンクに接続されている。ネジ締結又は弾性クリッピング等、蓋22を閉じるための他の手段も考えられる。
【0063】
攪拌器を駆動させるため、駆動手段5は、タンクの内部(INT)に起伏部60を形成する位置決め手段6を通り抜ける磁場を生成するようになっている。そうするために、駆動手段5は、タンクの外部(EXT)から見て凹部又は窪み61を形成する部分内に収容される磁気駆動部50を備える。したがって、この磁気駆動部は強磁性体から成る1又は複数の要素500を備える。磁気駆動部50は、それ自体、位置決め手段6と垂直に位置合わせされる電気モータ52に接続された駆動スピンドル51によって直接回転で駆動される。泡生成に関して有利な結果を得るために、攪拌器の回転速度は少なくとも1500回転/分に達するように制御される。好ましくは、速度は少なくとも1650回転/分であり、より好ましくは更に1800〜2500rpmである。
【0064】
図5及び図6によって示されるように、本発明の一実施形態に係る攪拌器4は、起伏部形成位置決め手段の周囲に自由に取り付くことができる環状の形状を全体的に有している。起伏部は円筒形状を成していることが好ましい。したがって、攪拌器4には、相補的な形状を成し且つ起伏部60の外面の外径Dよりも僅かに大きい内径Dを有する中心スロット40が設けられている。したがって、径は、過度な摩擦を伴うことなく或いは少なくとも最小限の摩擦で回転できると同時に駆動手段との有効な磁気接続を確保するように相対的に決定される。攪拌器は、プラスチック支持体43内に収容される例えば一対の磁石41、42等の強磁性体から成る要素を有する少なくとも1つの磁気追従部分を備えており、プラスチック支持体43は、磁石の周囲で射出成形されてもよく、或いは、クリッピング、接着又は任意の他の手段により幾つかの部分430、431に組み立てられてもよい。攪拌器は、厳密な意味での実際の攪拌要素を備える外側部分又は外周部分44を有する。図示の実施形態において、これらの要素は、全体が円環状を成すワイヤから成る一連の巻回部45によって形成されている。巻回部の変形を防止するため、巻回部45は内側環状補強要素46によって所定位置に保持されている。回転駆動時、このような要素は、特に泡立ち温度が同時に得られるときに液体、特にミルクの急速な乳化を引き起こす。
【0065】
しかしながら、攪拌要素の他の同等な構成を図示の構成と置き換えてもよい。これらは、例えばインペラ、ブレード、格子又はニードル又は更に他のものを含んでもよい。
【0066】
したがって、モータが給電されると、モータのスピンドルは磁気駆動部50を回転駆動させ、これにより磁石41、42と協働する回転局所磁場が形成され、その結果、攪拌器が起伏部を中心に回転される。したがって、攪拌器の回転速度は、モータスピンドルの回転速度に調整される。
【0067】
本発明の一態様においては、攪拌中にタンクを加熱するために加熱手段が設けられる。加熱は、泡の生成を容易にするとともに、攪拌時間をかなり減少させる。また、特にカプチーノ等の熱い飲料を対象としている場合には、泡が熱いうちに供給されることが好ましい。そうするために、本発明の一実施形態では、タンクの直接加熱のための手段が設けられる。直接加熱手段は、電気的に絶縁されるがタンクの表面と熱的に直接関連付けられる加熱抵抗型の手段又は等価物を意味するものとして理解されるべきである。
【0068】
本発明の一実施形態において、直接加熱手段は、タンクの外面上、好ましくはタンクの底部の外面上に直接にプリントされる「厚膜」型の加熱回路を備える。この技術に伴う利点は、タンクに伝えられる電力の良好な分配が行なわれる(すなわち、それにより、1平方センチメートル当たりのワット密度が大きくなる)という点である。その結果、液体がタンクの表面にこびりつくのが防止されると同時に、液体への優れた熱伝達が確保される。
【0069】
図7は、この種のプリント加熱回路の1つのタイプの一例を示す。1つの可能な実施形態において、回路は、ちょうどタンクの底部の全体にわたって延びている(例えば、図7の実施形態の場合のように)。他の可能な実施形態において、回路は、タンクの底部及び側壁にわたって延びている。他の可能な実施形態では、幾つかの回路が設けられ、これらのうちの少なくとも1つが底部上にあり、少なくとも1つがタンクの側面上にある。
【0070】
したがって、図示の回路7は、タンクの加熱面の外面に関連付けられた絶縁層70と、使用時に下側を向く抵抗加熱プリントトラック71とを備える。トラック71は、加熱面に対して印加される約250〜1200ワット、好ましくは400ワットの総電力を生成するように配置されている。したがって、加熱面又は回路7に対する平均電力密度は、5〜30ワット/cm、好ましくは15〜25ワット/cmである。トラック71は、加熱面にわたる総電力の適切な分布を生み出すために好ましくは加熱面の少なくとも40%を覆い、より好ましくは加熱面の50%を超えて覆っており、それにより、ミルクがタンクの内面にこびりついて褐変することを防止する。平均密度は、以下の式、すなわち、平均密度=総電力/総表面積(7)を使用して計算される。
【0071】
回路のための電気的な接続を行なうため、トラックの端部には電気接点72、73、74が配置されている。本発明の1つの態様において、電気接点の数は3つの端部に関連して3つであり、したがって、ニュートラルに関連付けられる1つの接点72が存在し、ライブに関連付けられる1つの接点73が存在し、最後に、所要電圧(例えば図示の例では8.2ボルト)で低電圧電気モータに給電するために低電圧電気モータに接続される第3の接点74が存在する。このような構成によれば、モータを動作させるためのトランスを省くことができ、それにより、コスト及びシステムの複雑度を減少させることができる。1つの可能な実施形態において、プリント加熱回路は、絶縁層をタンクの底部から分離する中間金属バッキングプレートを備える。この場合、バッキングプレートは、できる限り薄く、1mm以下の厚さであることが好ましい。底部とは別個のバッキングプレートは、タンクがスタンドに対して取り外し可能に装着される実施形態において必要とされてもよい。しかしながら、タンクが取り外し不能に装着される実施形態では、回路がタンクに対して直接にプリントされることが好ましい。
【0072】
例えばシールドレジスタ等の他の技術が「厚膜」型の加熱回路に取って代わってもよい。しかしながら、この技術は、電力がそのような大きな表面積にわたって伝送されない(しかし、シンプルな母面にわたってほぼ伝送される)ためあまり好ましくなく、また、タンクの表面に対して直接にレジスタを蝋付けする更なる作業を必要とする。その結果、同じ電力を伝えるためにレジスタを加熱しなければならず、これにより、ミルクがタンクの表面に局所的にこびりつきやすくなる領域が形成される。他の加熱手段は、誘導加熱又は赤外線加熱を備える。これらの手段は、組み合わされてもよく或いは抵抗手段の代わりに使用されてもよい。
【0073】
本発明の一実施形態では、タンクの温度を測定するために温度センサが設けられる。センサは、好ましくはタンクの底部の中央付近で「厚膜」回路7の絶縁された接点75に対して取り付けられてもよい。センサは、電子コントローラ8に接続されるNTC型のものであってもよい。また、センサは、あまり精密ではなく再現性も低いが関連する制御エレクトロニクスを必要としないバイメタルストリップ型の単純なセンサであってもよい。加熱手段の接触器は、それら自体、ブレード、ワイヤ及び/又は他の手段によってコントローラ8に対して電気的に接続される。温度が所定の設定点温度に達すると、コントローラは加熱手段への給電回路を遮断する。設定点温度は、液体がその沸点未満まで加熱され、好ましくは液体を泡立たせるのに最適な温度範囲に液体が加熱されるように決定される。例えばミルクの場合、液体温度は、40秒足らずで60〜80℃の温度にされ、好ましくは約30秒足らずで65〜75℃の温度にされる。無論、温度上昇動態は、加熱される体積や液体の初期温度等のファクタに部分的に依存している。
【0074】
スタンドは、ユーザが動作できる「on」ボタン80を備える。任意の他の手段によってこのボタンが押され或いは作動されると、ボタンは、加熱手段に対する電源及び攪拌器を回転させるための電気モータに対する電源を一緒にONに切り換える。したがって、液体が直接に加熱されると同時に攪拌される。電気モータを自動的にOFFに切り換えるため、タイマが制御手段に関連付けられる。電気モータの作動期間は、泡立てられる液体及びその体積に応じて制御手段内にプログラムされる。ミルクの場合、作動期間は、約30秒〜60秒の範囲の期間内で固定される。タンクは、タンク内に満たされる液体の量をユーザに対して視覚的に示すために満杯マークを備えていることが好ましい。満杯マークは、泡立てられる液体の所定の高さと、最適な泡を供給するようになっているプログラムされた作動期間とに対応している。例えば、約50mlの量のミルクは、75℃において30秒足らずで安定した泡へと変換することができる。
【0075】
コードレス発泡ユニット2及び電気ベースユニット3は、「コードレス」コネクタとして知られる一般的なコネクタの収集体9によって接続される。第1のコネクタはスタンド20の中央下部に接続されている。第1のコネクタは、発泡ユニットの電気要素及び制御要素に対して、特にコントローラ、電気モータ、加熱手段に対して電気的に接続されている。相補的な形状の第2のコネクタは、電気リード線によって電源コンセントに接続できる電気ベースユニットに関連付けられている。
【0076】
第1のコネクタ90は、第2のコネクタ91の電気ソケットと同軸に配置され且つ当該ソケットと協働できる電気端子、一般的にはニュートラル、ライブ、アースを備える。第1及び第2のコネクタは、形状に関しては、第1のコネクタ90の電気端子(ライブ、ニュートラル、アース)が第2のコネクタ91の対応する電気ソケット(ライブ、ニュートラル、アース)と接触して接続するように電気ベースユニット上に発泡ユニットを垂直(或いは、ほぼ垂直)に立たせるだけで互いに係合して協働するよう構成されている。それ自体知られているこの種のコネクタの収集体の一例は、米国特許第5 971 810号に詳しく記載されている。このようなシステムの利点は、本発明の適用において、泡を供給でき且つタンクを洗浄できるように発泡ユニットを簡単に取り外すことができるという点である。また、そのようなシステムによれば、より良好な加熱効率のため、ひいては、泡生成時間を短くするために、加熱手段に直接に関連付けられた加熱手段を備えるタンクを設計することができる。本発明の範囲から逸脱することなく、他の可能な周知のタイプのコードレスコネクタが同等な手段として使用されてもよい。
【0077】
図8は、タンクが垂直軸Iに対して非円筒状である一実施形態を示す。この実施例において、タンク21は、2つの凸状の第1の側面215、216と、第1の側面に対して90°を成す2つの第2の凹状の側面217、218とを有する細長い形状を有する。この場合、攪拌器4及び位置決め手段6は、図示のようにタンクの中央に位置され、或いは、中央からオフセットされてもよい。タンクの形状は、液体及び泡の乱された循環を生成するような形状を成しており、それにより、泡の急速な生成が促進されて、液体の任意の想定し得る残存量が減少される。
【0078】
図9及び図10は本発明の他の実施形態を示し、この実施形態において、タンク21は、中央垂直軸Iからオフセットされた起伏部として延びる壁及び/又は障害物を有する。特に、図示の実施例では、流体の循環を乱すための複数の突起212が底部に存在し、また、同様のもの213がタンクの側面上に存在する。これらの壁は、ほぼ径方向にタンクのある部分のみに沿って延びている。これらの壁は、タンク内の流体が曲がりくねった経路に沿って流れるよう仕向けるためにオフセットされていることが好ましい。多くの異なる同等な構成が、当業者の能力の範囲内にあり、したがって本発明の範囲から逸脱しないことは言うまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミルクベースの液体又はミルクから泡を作るための器具(1)であって、
泡立てられる前記液体を受け、この液体中に回転可能な攪拌器(4)が位置されるタンク(21)と、
前記タンク(21)に関連付けられたスタンド(20)と、
前記攪拌器(4)を駆動させるための手段(5)と、
前記タンク(21)に関連付けられて前記タンク内の前記液体を加熱するための加熱手段(7)と、攪拌中に加熱手段(7)を作動させるための制御手段(8)と、
を備えるとともに、駆動手段(5)に電力を供給するための給電手段(3)を更に備え、
前記駆動手段(5)及び前記攪拌器(4)は、前記タンクの壁を通じて侵入する機械的な接続部材を伴うことなく前記駆動手段(5)による磁気駆動作用を介して泡を生成するべく前記攪拌器(4)が駆動されるように構成されている器具において、
前記タンクの中央垂直軸を中心とする前記液体の対称的な循環を壊し或いは防止するために擾乱手段が設けられ、この擾乱手段は、前記タンク(21)の中央垂直軸に対してオフセットされる少なくとも1つの磁場を生成する駆動手段(5)を備え、前記制御手段(8)は、前記駆動手段(5)を駆動させるように、したがって、前記液体が加熱される際に前記液体を泡へ変えることができる十分に高速で前記攪拌器(4)を磁気的に駆動させるように構成されていることを特徴とする器具。
【請求項2】
攪拌器位置決め要素(6)は、前記攪拌器(4)を前記駆動手段(5)と係合した状態で前記タンク(21)の中央垂直軸に対してオフセットされる回転軸に沿って位置決めするように構成され、これにより、前記攪拌器(4)は、前記オフセット回転軸を中心に回転駆動されると、前記中央垂直軸に対して非同軸な液体の循環を形成することを特徴とする、請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記位置決め要素は、前記タンクの内面に形成された起伏部(60)又は凹部であるとともに、回転係合状態で前記攪拌器(4)を受け入れるために前記攪拌器(4)をほぼ補完する形状を少なくとも有することを特徴とする、請求項2に記載の器具。
【請求項4】
前記起伏部(60)又は凹部及び前記タンクの底部が共に一体の壁を形成することを特徴とする、請求項3に記載の器具。
【請求項5】
前記攪拌器(4)は、前記起伏部(60)と係合するように構成された中心スロット(40)を有する環状の形状を有し、前記起伏部(60)は前記タンク(21)の底部から前記タンクの内部(INT)へと突出しており、前記攪拌器(4)は、前記中心スロットの周囲近傍に位置された少なくとも1つの磁気追従部分を有することを特徴とする、請求項3又は4に記載の器具。
【請求項6】
前記駆動手段(5)は、前記攪拌器(4)の少なくとも前記磁気追従部分と協働するために前記タンク(21)の外(EXT)側で且つ前記起伏部(60)の内側に係合する磁気駆動部(50)を備え、この磁気駆動部(50)は、電気モータに関連付けられたスピンドルによって回転されることを特徴とする、請求項3〜5のいずれか一項に記載の器具。
【請求項7】
前記攪拌器(4)は、攪拌要素(45)を持つ外周部分(44)を有することを特徴とする、請求項6に記載の器具。
【請求項8】
前記攪拌要素(45)は、以下の要素、すなわち、トロイダル形状のワイヤから成る巻回部、インペラ、ブレード、格子又はニードルのうちの1つ以上から成ることを特徴とする、請求項7に記載の器具。
【請求項9】
前記擾乱手段は、構造が前記中央垂直軸に対して非円筒状であるタンク(21)を備えることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の器具。
【請求項10】
前記擾乱手段は、前記中央垂直軸に対してオフセットされるかたちで前記タンク(21)内へと起伏状態で延びる壁及び/又は他の障害物を備えていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の器具。
【請求項11】
前記擾乱手段は、前記液体が泡立てられる間に前記攪拌器(4)の回転方向を数回切り換えるようにプログラムされた制御手段(8)を備えていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の器具。
【請求項12】
前記タンク(21)は、一体部分として形成される底部及び立ち上がり縁部から少なくとも成る液体受け面(210,211)を有していることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の器具。
【請求項13】
前記受け面(210,211)は、接合部又は不連続接続線を有さないとともに、任意の何らかの開口部を画定する線を有さないことを特徴とする、請求項12に記載の器具。
【請求項14】
前記加熱手段(7)は、前記タンク(21)の少なくとも底部と接触する電気的に絶縁された加熱抵抗素子(71)を備えることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の器具。
【請求項15】
前記加熱手段(7)は、前記タンク(21)の外面と接触する「厚膜」型の少なくとも1つの加熱回路から成ることを特徴とする、請求項14に記載の器具。
【請求項16】
前記加熱手段(7)は、
− 壁と接触するシールド抵抗型の加熱抵抗素子(7)、又は
− 誘導加熱手段又は赤外線加熱手段、
− 又は、これらの手段の組み合わせ、
から成ることを特徴とする、請求項14に記載の器具。
【請求項17】
一方で前記スタンド(20)と前記タンク(21)とを接続でき、他方で電源コンセントに接続可能な給電ベース支持体(3)に対して前記スタンド(20)及び前記タンク(21)を接続できるコードレス電気接続アセンブリ(9)を備えていることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載の器具。
【請求項18】
前記コードレス接続アセンブリは、前記スタンド(20)の底部に固定される第1のコネクタと、前記給電ベース支持体(3)に固定される第2のコネクタとを備え、これらの2つのコネクタは、前記スタンド(20)がベース支持体(3)上に立っている間、前記スタンド(20)の電気的な手段に給電するために互いに電気的に接続されることを特徴とする、請求項17に記載の器具。
【請求項19】
前記制御手段(8)は前記加熱手段(7)に関連付けられる温度センサを備え、前記制御手段(8)は、前記液体が予め設定された時間にわたって沸点未満に加熱されるように決定される設定点温度で前記加熱手段(7)への給電を遮断するように構成されていることを特徴とする、請求項1〜18のいずれか一項に記載の器具。
【請求項20】
− 泡立てられる液体を受け、この液体中に回転可能な攪拌器が位置されるタンク(21)と、
− 前記タンクを通じた攪拌器接続部材の侵入を伴うことなく前記攪拌器(4)を駆動するための磁気手段と、
− 前記回転駆動手段に給電するための給電手段と、
を備える器具内でミルクベースの食品液体から泡を作るための方法であって、
特に、前記タンクの中央垂直軸に対してオフセットされた回転軸を中心に、前記液体を泡へ変えることができる十分に高速で、磁気駆動作用により前記攪拌器(4)を駆動させるとともに、攪拌中に前記液体を加熱させることを特徴とする方法。
【請求項21】
加熱は、前記タンク(21)の外面に対して加熱要素(7)を直接的に分配して適用することにより行なわれることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記加熱要素(7)の分配は、前記加熱要素(7)による加熱面の被覆面積が少なくとも40%のとき、15〜25ワット/cmの電力密度を前記加熱面に生成することを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記攪拌器(4)が少なくとも1500回転/分の速度で回転駆動されることを特徴とする、請求項20〜22のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−245315(P2011−245315A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−142131(P2011−142131)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【分割の表示】特願2007−540557(P2007−540557)の分割
【原出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】