説明

食品用接着組成物および該接着組成物を用いて接着してなる接着食品。

【課題】優れた接着力を有しつつ変色や異味・異臭がなく、接着猶予時間の制御が容易に行える新規食品接着用組成物を提供する。
【解決手段】アルギン酸塩及び特定のカルシウム溶出濃度を有す硬化油脂被覆カルシウム塩からなる食品用接着組成物であって、硬化油脂被覆カルシウム塩のカルシウム溶出濃度が1および2である食品用接着組成物を提供する。1.硬化油脂被覆カルシウム塩をカルシウム塩として1%となるように水に分散させ、分散後3分経過時にカルシウム溶出濃度が50ppm以下である。2.硬化油脂被覆カルシウム塩をカルシウム塩として1%となるように水に分散させ、分散後120分経過時にカルシウム溶出濃度が18ppm以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品原料や食品片を、同種又は異種の組み合わせにおいて接着することにより新しい食感や味のバランスをもった接着食品に加工するに当たって、その接着時間が制御できる新規食品接着用組成物並びに該組成物を用いて接着して得られる接着食品に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、魚介類採取時における規格外での小型魚介類・軟体動物・甲殻類等や畜産加工時に発生する不定形・小型の加工残肉など、また、そのままでは商品価値がない産卵の終わったサケや廃鶏肉などの有効利用のため、昭和40年代に本出願人らにより開発された食品接着用組成物が広く普及し、現在に到るも実用されており、この食品接着用組成物を用いた肉、魚、野菜などの食品原料や食品片を同種または異種の組み合せにおいて接着してなる多くの接着食品が開発され、市場に提供されている。
【0003】
しかし、従来の食品接着用組成物及びこれを用いた接着技術には種々の問題があった。即ち、従来の食品接着用組成物を用いる場合にはアルカリ性下または酸性下の接着になるため、接着食品の変色などの問題から応用範囲に限界があるうえ、いったん接合したものを外力を加えて剥離させてもなお再接着が可能な猶予時間(以下、「接着猶予時間」という)が短いことによる作業性の制約から満足する接着成型物が得難く、かつ、機械で連続成型するなどの大量生産には不向きであった。
【0004】
例えば、特公昭63−5065号公報には、カルボキシル基を含有する蛋白質あるいは多糖類等と、卵殻、貝殻または骨粉の焼成粉末あるいはアルカリ土類金属水酸化物などを油脂・脂肪酸・界面活性剤・糖質・天然ガムなどで被覆して得られる物質とを有効成分とした組成物を用いて接着・成型品を量産する食品接着技術が開示されている。
しかしながら、この組成物はアルカリ剤が主体であるため野菜等の変色や独特な異味・異臭の発生が避けられなかった。本発明者らは、前記問題に鑑み、食品本来のpHに影響することなく接着を行なう方法としてカルシウムなどの2価の金属塩と容易に結合してゲルを形成するアルギン酸塩に着目した。
【0005】
アルギン酸塩を接着組成物の基本物質とする接着技術がいくつか提案されており、特公昭47−8980号公報、特公昭58−32858号公報、特公昭63−5065号公報、特公昭47−22255号公報および特公昭47−22256号公報には、いずれも水酸化カルシウムや酸化カルシウムなどのアルカリ剤との組み合わせにおいてアルギン酸又はアルギン酸塩が食品用接着剤として用いることができると記載されている。しかしながら、アルギン酸又はアルギン酸塩とカルシウムとの反応はあまりにも速やかであり接着猶予時間が確保できないことから接着力が乏しく、また、アルカリ性による変色や異味や異臭の問題がある。
【0006】
アルギン酸塩と中性カルシウムとの組み合わせによる粉末の接着方法として、特公昭47−22258号公報および特公昭47−22259号公報の提案があるが、これらも接着猶予時間の制御ができず、接着力にも乏しい。また、接着猶予時間を延ばす方法として特表昭62−502238号公報の提案があり、該公報には、被接着肉に溶解速度の遅い酸(グルコノデルタラクトン、クエン酸、乳酸、など)を添加した後、次にアルギン酸塩を添加し、最後にカルシウム塩(炭酸塩など)を加えて混合した後、該混合物を型に入れ冷蔵することによって肉類を結着・成形することによって、アルギン酸塩とカルシウムの反応を遅効性とする方法が開示されている。この方法は、共存する難溶性の酸を利用して除々にカルシウム塩を可溶化してアルギン酸塩とのゲル化を遅らせ、結着或いは接着を遅効性とするものであるが、該製法では酸剤、アルギン酸塩、カルシウム塩を各工程順に別々に添加する必要があるとともに、接着速度は酸の溶解速度に依存し固定的であるため、接着猶予時間を任意に制御することは極めて困難である。
【0007】
また、特開平10−290670号公報には、アルギン酸塩と油脂や蛋白質で被覆した酸性剤、アルカリ性のpH調整剤、水難溶解性カルシウム塩を配合してなる、接着猶予時間の制御が容易な食品接着用組成物の接着技術が本出願人らにより開示されている。当該組成物では、配合される被覆酸性剤の被覆の程度とアルカリ性のpH調整剤量を調整することで、接着猶予時間を制御しているが、当該組成物を用いた食品の接着成型が完了した時点では、接着面は酸性状態であり、接着する食品が肉類の場合、肉類のpH低下にともなう赤身が変色(黒ずむ)と、食した際の酸味による商品価値の低下が課題となっている。
【特許文献1】特公昭63−5065号公報
【特許文献2】特公昭47−8980号公報
【特許文献3】特公昭58−32858号公報
【特許文献4】特公昭63−5065号公報
【特許文献5】特公昭47−22255号公報
【特許文献6】特公昭47−22256号公報
【特許文献7】特公昭47−22258号公報
【特許文献8】特公昭47−22259号公報
【特許文献9】特表昭62−502238号公報
【特許文献10】特開平10−290670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明は酸剤、アルギン酸塩、カルシウム塩を各工程順に別々に添加する複雑な工程を経ずに接着猶予時間の制御が容易に行うことができるともに、接着層が目立たず、優れた接着力を有しつつ、接着する食品に変色や異味および異臭を生じさせない食品用接着組成物と該食品用接着組成物を用いて接着してなる接着食品を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は上記課題を解決するものとして、第1には、アルギン酸塩及び特定のカルシウム溶出濃度を有す硬化油脂被覆カルシウム塩からなる食品用接着組成物において、硬化油脂被覆カルシウム塩のカルシウム溶出濃度が1および2であることを特徴とする食品用接着組成物を提供するものである。
1.硬化油脂被覆カルシウム塩をカルシウム塩として1%となるように水に分散させ、分散後3分経過時にカルシウム溶出濃度が50ppm以下である。
2.硬化油脂被覆カルシウム塩をカルシウム塩として1%となるように水に分散させ、分散後120分経過時にカルシウム溶出濃度が18ppm以上である。
第2には、アルギン酸塩と特定のカルシウム溶出濃度を有す硬化油脂被覆カルシウム塩及びカルシウム溶出促進剤からなるカルシウム混合物を含む食品用接着組成物であって、硬化油脂被覆カルシウム塩およびカルシウム溶出促進剤からなるカルシウム混合物のカルシウム溶出濃度が1および2であることを特徴とする食品用接着組成物を提供するものである。
1.硬化油脂被覆カルシウム塩をカルシウム塩として1%、カルシウム溶出促進剤を0.1%以下となるようにカルシウム混合物を水に分散させ、分散後3分経過時にカルシウム溶出濃度が50ppm以下である。
2.硬化油脂被覆カルシウム塩をカルシウム塩として1%、カルシウム溶出促進剤を0.1%以下となるようにカルシウム混合物を水に分散させ、分散後120分経過時にカルシウム溶出濃度が18ppm以上である。
第3には、アルギン酸塩がアルギン酸ナトリウム及び/又はアルギン酸カリウムおよび前記記載の特定のカルシウム溶出濃度を有す硬化油脂被覆カルシウム塩並びに前記記載の特定のカルシウム溶出濃度を有す硬化油脂被覆カルシウム塩及びカルシウム溶出促進剤からなるカルシウム混合物を含む食品用接着組成物を提供するものである。
また、第4には、上記のカルシウム溶出促進剤が乳化剤である食品用接着組成物である。
さらに、第5には、上記の特定された食品用接着組成物を食品に対して、アルギン酸塩0.2%〜2%、硬化油脂被覆カルシウム塩をカルシウム塩として0.1〜1%、カルシウム溶出促進剤0〜1%となるように用いて接着した接着食品を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本願発明は食品用接着組成物において、用いる硬化油脂被覆カルシウム塩並びに硬化油脂被覆カルシウム塩およびカルシウム溶出促進剤からなるカルシウム混合物のカルシウム溶出濃度を特定して用いることによりゲル化時間、即ち接着猶予時間を容易に制御でき、食品材料或いは食品片の性質や接着作業時間にとらわれることなく、変色や異味及び異臭の無い優れた組み合わせ接着食品を複雑な加工工程を経ずに製造することができるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本願発明はアルギン酸塩を主剤とした食品接着用組成物において硬化油脂被覆カルシウム塩のカルシウム溶出濃度を制御することにより食品原料や食品片を同種又は異種の組み合わせにおいて接着する際にその接着時間が任意に制御できるとともに変色や異味及び異臭の無い接着食品を複雑な加工工程を経ずして製造できることを見出したものである。以下、本願発明を詳細に説明する。
なお、食品業界では複数の食品片同志または粒状の食品同志の結合或いは接合に当たって「結着」と「接着」という二用語が用いられているが「結着」は、ハム・ソーセージ業界において不定型のブロック肉片を一定形状に成形する場合の如く、主として接合面よりも保型性を重視する集合食品の結合或いは接合に当たって用いられており、一方、「接着」は、主として接合後の外見の形状よりも接合面を重視する場合や広い接合面を有する食品同志の結合或いは接合に当って用いられている。本願発明における接着とは、上記の「結着」と「接着」を包含するものである。
【0012】
本願発明においてアルギン酸塩としては、その水溶液がカルシウムなどの2価のイオンによってゲル形成能を有するアルギン酸のカリウム或いはナトリウムなどの塩類が使用できる。通常、アルギン酸塩は海草、特に褐藻類に多く含まれ、β−D−マンヌロン酸とα−L−グルロン酸からなる高粘性のポリウロン酸であり、これらのカリウム塩やナトリウム塩が使用できる。本発明における接着猶予時間を制御する重要な要素は特定のカルシウム溶出濃度を有す硬化油脂被覆カルシウム塩並びに特定のカルシウム溶出濃度を有す硬化油脂被覆カルシウム塩とカルシウム溶出促進剤からなるカルシウム混合物を食品用接着組成物として用いる点にあり、硬化油脂被覆カルシウム塩並びにカルシウム混合物を水に分散させた際の経過時間とカルシウム溶出濃度が特定の範囲にあることが接着猶予時間を制御する要素となる。
【0013】
本発明における硬化油脂被覆カルシウム塩としては、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム、硫酸カルシウム等の水溶性のカルシウム塩を硬化油脂の被膜剤で被覆して水に分散させた際の経過時間とカルシウム溶出濃度を特定の範囲に調整したものが使用でき、炭酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸三カルシウム、未焼成貝カルシウム、未焼成骨カルシウム、未焼成卵殻カシウム等の水難溶性カルシウム塩は水に分散させた際のカルシウム溶出濃度が少ないため使用できない。カルシウム塩を硬化油脂で被覆するに当っては通常知られている方法で行うことができる。即ち、スプレイドライヤー、流動コーティング装置、パンコーティング装置、転動コーティング装置などが本発明に適用できるが、前2者が微粒体の被覆に適しているので、特に好ましい。
【0014】
通常、被覆剤の被覆が厚くなるに従って硬化油脂被覆カルシウム塩のカルシウム溶出濃度は減少する。また、硬化油脂被覆カルシウム塩を水に分散させた際の経過時間とカルシウム溶出濃度の関係において、カルシウム溶出濃度は経過時間とともに増加してゆくが、硬化油脂被覆カルシウム塩をカルシウム塩として1%、水に分散させ分散後3分経過時にカルシウム溶出濃度が50ppm以下で且つ硬化油脂被覆カルシウム塩をカルシウム塩として1%水に分散させ分散後120分経過時にカルシウム溶出濃度が18ppm以上となるようにカルシウム塩の種類によって適宜被覆剤の被覆の程度を調整する必要がある。食品用接着組成物に配合されたアルギン酸塩は、接着対象とする食品原料又は食品片に塗布された後、カルシウムと反応する前に十分吸水・膨潤していなければ、カルシウムと反応しても満足にゲル化しない。食品用接着組成物に用いる硬化油脂皮膜カルシウム塩がカルシウム塩として1%水に分散させ分散後3分経過時にカルシウム溶出濃度が50ppmを超えるものである場合には、食品の接着工程において、高濃度のカルシウムイオンが、接着に必要な状態にまでまだ十分吸水・膨潤していないアルギン酸塩と速やかに反応してしまうため、接着猶予時間が得られないとともに均一な接着層が得られず接着力が弱くなり、また、分散後120分経過時にカルシウム溶出濃度が18ppm未満である場合にはカルシウムイオンが少なすぎるためアルギン酸塩とカルシウムイオンとの反応が不十分となって、いずれの場合も充分な接着力が得られないこととなる。
【0015】
本願発明の食品用接着組成物を用いて接着食品を製造する方法としては、被接着食品原料又は被接着食品片と本願発明の食品用接着組成物とを均一混合するためには通常約3分間必要となる。その後に型詰、成型して接着させることとなる。(生産効率上120分以内で接着が完了することが望ましい。)本発明では、接着猶予時間並びに接着強度の特性を表す為に、混合後3分経過時並びに120分経過時の硬化油脂被覆カルシウムのカルシウム溶出濃度で特定することとした。
【0016】
硬化油脂としては、牛脂、豚油、植物油脂、それらの水添油脂、或いは乳化剤などの融点30℃以上のもの、好ましくは45℃〜70℃の硬化油脂が用いられる。また、カルシウム溶出促進剤は硬化油脂被覆カルシウム塩を水に分散させた際の経過時間とカルシウム溶出濃度の関係において、カルシウム溶出濃度を増加させる働きがあるため、硬化油脂被覆カルシウム塩をカルシウム塩として1%、カルシウム溶出促進剤を0.1%以下となるようにカルシウム混合物を水に分散させ分散後3分経過時にカルシウム溶出濃度が50ppm以下で且つ硬化油脂被覆カルシウム塩をカルシウム塩として1%、カルシウム溶出促進剤を0.1%以下となるようにカルシウム混合物を水に分散後120分経過時にカルシウム溶出濃度が18ppm以上となるようにカルシウム溶出促進剤を調整して用いる必要がある。
【0017】
硬化油脂被覆カルシウム塩をカルシウム塩として1%、水に分散させ分散後3分経過時にカルシウム溶出濃度が50ppm以下で且つ硬化油脂被覆カルシウム塩をカルシウム塩として1%水に分散させ分散後120分経過時にカルシウム溶出濃度が18ppm以上である場合において、カルシウム溶出促進剤を更に用いると分散後3分経過時にカルシウム溶出濃度が50ppm以上となって本発明から不適となる場合がある。カルシウム溶出促進剤としては、シュガーエステル、レシチン、ソルビタンエステルなどの乳化剤及び、フマル酸、クエン酸、グルコノデルタラクトン等の酸性剤が用いられ、特に乳化剤としてはシュガーエステル、酸性剤としてはグルコノデルタラクトンが望ましい。
【0018】
カルシウム塩として1%、水に分散させ分散後3分経過時にカルシウム溶出濃度が50ppmを超える硬化油脂被覆カルシウム塩Aとカルシウム塩として1%水に分散させ分散後120分経過時にカルシウム溶出濃度が18ppm未満である硬化油脂被覆カルシウム塩Bとを適宜配合した硬化油脂被覆カルシウム塩Cをカルシウム塩として1%、水に分散させ分散後3分経過時にカルシウム溶出濃度が50ppm以下で且つカルシウム塩として1%水に分散させ分散後120分経過時にカルシウム溶出濃度が18ppm以上となる場合には硬化油脂被覆カルシウム塩Cは本願発明の食品用接着組成物の硬化油脂被覆カルシウム塩に適合することとなる。
【0019】
図1に後に記述する実施例、比較例に使用した硬化油脂被覆カルシウム塩並びに硬化油脂被覆カルシウム塩及びカルシウム溶出促進剤からなるカルシウム混合物をそれぞれの条件に於いて水に分散させたときのカルシウム溶出濃度と経過時間の関係を図示する。図中3分経過時に50ppmを超える場合、又は120分経過時に18ppm未満である場合には本願発明からは不適となる。
【0020】
本発明の食品用接着組成物を用いて接着食品を作成する場合には、接着しようとする食品に対して、アルギン酸塩0.2%〜2%、硬化油脂被覆カルシウム塩をカルシウム塩として0.1%〜1%、カルシウム溶出促進剤0〜1%となるように配合を調整した食品用接着組成物を用いて接着する必要がある。アルギン酸塩が0.2%未満では得られた接着食品の接着強度が不充分となり、2%を超えた場合には接着食品にぬめりが生じ、食感の低下や呈味性の点から好ましくない。
【0021】
また、接着しようとする食品に対して硬化油脂被覆カルシウム塩処理物がカルシウム塩として0.1%未満だと、食品に添加した際、食品の局所に吸収されてしまい、溶出したカルシウムが食品全体に均一に行き渡りにくくなり、1%を超えた場合にはカルシウム塩の被覆に用いた硬化油脂の影響による風味の点から好ましくなく、また、食品に対してカルシウム溶出促進剤が1%を超えた場合には食感の低下や呈味性の点から好ましくない。
なお、本発明の実施に当たって、本発明に係る食品接着用組成物の希釈剤或いは増量剤として、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、とうもろこし澱粉などの澱粉類やコーンフラワー、ポテトフラワー、米粉、小麦粉などの穀粉類を接着能力が低下しない範囲で添加でき、また、必要に応じて調味料や香辛料なども接着能力が低下しない範囲で添加することができる。
【0022】
本願発明に係る食品接着用組成物が適用できる被接着食品原料又は被接着食品片は、牛、豚、馬、マトン、鶏などの鶏・畜肉類、鮪、鮭、鯖、鱈、海老、帆立、いか、たこ、メルルーサ、キャットフィッシュなどの魚介類、アスパラ、キャベツ、玉葱、玉蜀黍、春菊、青豆、ニンジン、ジャガイモ、トマトなどの野菜類、リンゴ、梨、桃、柿などの果物類、及び、それらの加工品であるハム、ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、チーズ、魚の干物や塩蔵物などであり、これらを適宜組み合わせた食品を作製することができる。
【0023】
本願発明に係る食品接着用組成物を用いて得られる接着食品は、作業処理時間に合わせ適宜接着猶予時間を制御できるため充分な接着力を得ることができ、結着強度も充分であり、且つ、通常の調理、即ち、煮る、焼く、蒸す、炒める、揚げるなどの調理によって容易に剥がれることはなく、風味、食感においても優れた接着食品が得られる。本願発明に係る食品接着用組成物の食品原料又は食品片に対する接着の作用は次のようであると想定される。即ち、食品接着用組成物に配合されたアルギン酸塩は、接着対象とする食品原料又は食品片に塗布された後に周囲の水分を吸収して膨潤(水和)し、次にカルシウムイオンとの反応によってゲル化することにより接着するプロセスを経る。
【0024】
硬化油脂被覆カルシウム塩の初期のカルシウム溶出濃度が高い場合には食品接着用組成物に配合されたアルギン酸塩は接着対象とする食品原料又は食品片に塗布された後に吸水や膨潤するための時間的な余裕がなくカルシウムとの反応が優先し、充分な接着力は得られないばかりか、接着作業時間を確保することが不充分なため量産には適さない。
一方、硬化油脂被覆カルシウム塩のカルシウム溶出濃度が低いと、アルギン酸塩はカルシウムイオンが少なくなるためゲル化が進まず充分な接着力は得られない。
【0025】
アルギン酸塩及び硬化油脂被覆カルシウム塩からなる食品用接着組成物において、硬化油脂被覆カルシウム塩のカルシウム溶出濃度を下記の1および2となるようにカルシウム塩の種類、被覆の程度を適宜調整することにより、接着猶予時間を制御でき、充分な接着力を得ることができ食品用接着組成物を得ることができる。
1.硬化油脂被覆カルシウム塩をカルシウム塩として1%となるように水に分散させ、分散後3分経過時にカルシウム溶出濃度が50ppm以下である。
2.硬化油脂被覆カルシウム塩をカルシウム塩として1%となるように水に分散させ、分散後120分経過時にカルシウム溶出濃度が18ppm以上である。
【0026】
アルギン酸塩と特定のカルシウム溶出濃度を有す硬化油脂被覆カルシウム塩およびカルシウム溶出促進剤からなるカルシウム混合物のカルシウム溶出濃度を下記の1および2となるようにカルシウム塩の種類、被覆の程度、カルシウム溶出促進剤を適宜調整することにより、接着猶予時間を制御できるだけでなく充分な接着力を得ることができ食品用接着組成物を得ることができるものである。
1.硬化油脂被覆カルシウム塩をカルシウム塩として1%、カルシウム溶出促進剤を0.1%以下となるようにカルシウム混合物を水に分散させ、分散後3分経過時にカルシウム溶出濃度が50ppm以下である。
2.硬化油脂被覆カルシウム塩をカルシウム塩として1%、カルシウム溶出促進剤を0.1%以下となるようにカルシウム混合物を水に分散させ、分散後120分経過時にカルシウム溶出濃度が18ppm以上である。
【0027】
<硬化油脂被覆カルシウム塩中のカルシウム塩量計算方法>
本発明において、「カルシウム塩として」という表記をよく使用しているが、例えば、カルシウム塩と各種硬化油脂を、9:1の割合で、各種硬化油脂被覆カルシウム塩を作成した場合、カルシウム塩としては、1gあたりに、硬化油脂被覆カルシウム塩中に、0.9g含まれるので、硬化油脂被覆カルシウム塩をカルシウム塩として、1g添加したい場合には、1/0.9=1.111・・となり、約1.1g程度添加することとなる。
また、被覆率の異なる各種硬化油脂被覆カルシウム塩を混合して使用する場合も同様の考え方に基づき、各硬化油脂被覆カルシウム塩中のカルシウム塩量を計算して、所定量添加することとする。例えば、被覆率の異なる各種硬化油脂被覆カルシウム塩を使用して、カルシウム塩として、1g添加したい場合には、カルシウム塩と硬化油脂を、9:1で作成した硬化油脂被覆カルシウム塩(A)と、カルシウム塩と硬化油脂8:2で作成した硬化油脂被覆カルシウム塩(B)とを、A:B=7:3の割合で使用した場合の混合した硬化油脂被覆カルシウム塩のカルシウム塩量の計算式は、
(A)0.7/0.9+(B)0.3/0.8=約1.153となり、約1.1
5g添加することとなる。
【0028】
<カルシウム溶出濃度の測定法>
200mLトールビーカーに150mLのイオン交換水を入れ、そこに、各種硬化油脂被覆カルシウム塩をカルシウム塩として1(w/v)%、各種カルシウム促進剤を添加する場合には0.1(w/v)%を添加して水に分散させ、室温(20℃)で分散後3分経過時及び120分経過時のカルシウム溶出濃度をイオンメーター(東亜ディーケーケー社)で測定する。
【0029】
<接着強度測定法>
約1cm角にカットした牛外もも肉300gにアルギン酸塩0.8%、各種硬化油脂被覆カルシウム塩0.4%(カルシウム塩として)、各種乳化剤、各種酸性剤を追加する場合にはそれぞれ1%追加して、全体が均一に混ざるよう3分間手で混合し、11cm×7.5cm×3.5cmの型に詰め120分放置後、冷凍する。これを冷凍のままバンドソーで3cm×3cm×1cmのサイズにカットし、接着強度測定用の接着製型品を得た。これを10枚解凍し、レオメーター(サン科学社製)を用い、クリップで挟んで引っ張り、接着強度を測定する。
【0030】
<カルシウム塩の被覆方法>
各種カルシウム塩を、ハイスピードミキサー5J型(深江工業製)に入れた後、70℃で加温攪拌しながら、75℃に加温して溶解した所定量の各種硬化油脂を噴霧しながら加える。所定量の各種硬化油脂を噴霧し終えたら、次に25℃まで除々に冷却し、硬化油脂被覆カルシウム塩を得た。カルシウム塩と油脂との比が、9:1の場合には90Rと記載する。
【実施例】
【0031】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。なお、本発明において特記しない限り、%とは重量%、部とは重量部を意味する。
【0032】
〈実施例1〉
クエン酸カルシウム(扶桑化学(株)製)9部量を、ハイスピードミキサー5J型(深江工業製)に入れた後、70℃で加温攪拌しながら、75℃に加温して溶解した所定量の菜種硬化油脂(日油(株)製、融点約65〜72℃)1部量を噴霧しながら加える。菜種硬化油脂を噴霧し終えたら、次に25℃まで除々に冷却し、硬化油脂被覆カルシウム塩を得た。(以降90Rクエン酸Caと記載する)。次に、アルギン酸ナトリウム((株)キミカ製)2部、90Rクエン酸Ca1部(カルシウム塩として)を混合して食品用接着組成物を得た。このとき用いた90Rクエン酸Caをカルシウム塩として1%となるように水に分散させた時のカルシウム溶出濃度は、水に分散させ、分散後3分経過時に1.3ppm、分散後120分経過時に28.6ppmであった。次に、この食品用接着組成物を用いて、約1cm角にカットした牛外もも肉300gに対して前述の接着強度測定法により測定したところ、接着強度は671g/cmであった。また、接着した牛外もも肉をフライパンで焼成し、試食したところ接着層が目立たず風味もよかった。この結果を表1に示す。
【0033】
〈実施例2〉
アルギン酸ナトリウム((株)キミカ製)2部、実施例1で用いた90Rクエン酸Ca1部(カルシウム塩として)、シュガーエステル(三菱化学フーズ製 S−770)2.5部を混合して食品用接着組成物を得た。このとき用いた90Rクエン酸Caをカルシウム塩として1%、シュガーエステル0.1%となるように水に分散させた時のカルシウム混合物のカルシウム溶出濃度は、水に分散させ、分散後3分経過時に1.7ppm、分散後120分経過時に85.9ppmであった。次に、この食品用接着組成物を用いて、約1cm角にカットした牛外もも肉300gに対して前述の接着強度測定法により測定したところ、接着強度は884g/cmであった。また、接着した牛外もも肉をフライパンで焼成し、試食したところ接着層が目立たず風味もよかった。この結果を表1に示す。
【0034】
〈実施例3〉
クエン酸カルシウム(扶桑化学(株)製)8部量を、ハイスピードミキサー5J型(深江工業製)に入れた後、70℃で加温攪拌しながら、75℃に加温して溶解した菜種硬化油脂(日油(株)製、融点約65〜72℃)2部量を噴霧しながら加える。菜種硬化油脂を噴霧し終えたら、次に25℃まで除々に冷却し、硬化油脂被覆カルシウム塩を得た。(以降80Rクエン酸Caと記載する)。次に、アルギン酸ナトリウム((株)キミカ製)2部、80Rクエン酸Ca1部(カルシウム塩分として)を混合して食品用接着組成物を得た。このとき用いた80Rクエン酸Caをカルシウム塩として1%となるように水に分散させた時のカルシウム溶出濃度は、水に分散させ、分散後3分経過時に0.8ppm、分散後120分経過時に18.4ppmであった。次に、この食品用接着組成物を用いて、約1cm角にカットした牛外もも肉300gに対して前述の接着強度測定法により測定したところ、接着強度は450g/cmであった。また、接着した牛外もも肉をフライパンで焼成し、試食したところ接着層が目立たず風味もよかった。この結果を表1に示す。
【0035】
〈実施例4〉
アルギン酸ナトリウム((株)キミカ製)2部、実施例3で用いた80Rクエン酸Ca1部(カルシウム塩として)、シュガーエステル(三菱化学フーズ製 S−770)2.5部を混合して食品用接着組成物を得た。このとき用いた80Rクエン酸Caをカルシウム塩として1%、シュガーエステル0.1%となるように水に分散させた時のカルシウム混合物のカルシウム溶出濃度は、水に分散させ、分散後3分経過時に0.8ppm、分散後120分経過時に55.6ppmであった。この食品用接着組成物を用いて、牛外もも肉300gに対して前述の接着力測定法により引っ張り強度を測定したところ476g/cmであった。また、接着した牛外もも肉をフライパンで焼成し、試食したところ接着層が目立たず風味もよかった。この結果を表1に示す。
【0036】
〈実施例5〉
硫酸カルシウム(富田製薬(株)製)8部を、ハイスピードミキサー5J型(深江工業製)に入れた後、70℃で加温攪拌しながら、75℃に加温して溶解した所定量の菜種硬化油脂(日油(株)製、融点約65〜72℃)2部量を噴霧しながら加える。菜種硬化油脂を噴霧し終えたら、次に25℃まで除々に冷却し、硬化油脂被覆カルシウム塩を得た。(以降80R硫酸Caと記載する)。次に、アルギン酸ナトリウム((株)キミカ製)2部、80R硫酸Ca1部(カルシウム塩として)を混合して食品用接着組成物を得た。このとき用いた80R硫酸Caをカルシウム塩として1%となるように水に分散させた時のカルシウム溶出濃度は、水に分散させ、分散後3分経過時に27.8ppm、分散後120分経過時に58.6ppmであった。次に、この食品用接着組成物を用いて、牛外もも肉300gに対して前述の接着力測定法により引っ張り強度を測定したところ703g/cmであった。また、接着した牛外もも肉をフライパンで焼成し、試食したところ接着層が目立たず風味もよかった。この結果を表1に示す。
【0037】
〈実施例6〉
乳酸カルシウム(扶桑化学(株)製)7部を、ハイスピードミキサー5J型(深江工業製)に入れた後、70℃で加温攪拌しながら、75℃に加温して溶解した菜種硬化油脂(日油(株)製、融点約65〜72℃)3部量を噴霧しながら加える。菜種硬化油脂を噴霧し終えたら、次に25℃まで除々に冷却し、硬化油脂被覆カルシウム塩を得た。(以降70R乳酸Caと記載する)。次に、アルギン酸ナトリウム((株)キミカ製)2部、70R乳酸Ca1部(カルシウム塩として)を混合して食品用接着組成物を得た。このとき用いた70R乳酸Caをカルシウム塩として1%となるように水に分散させた時のカルシウム溶出濃度は、水に分散させ、分散後3分経過時に32.1ppm、分散後120分経過時に68.9ppmであった。次に、この食品用接着組成物を用いて、牛外もも肉300gに対して前述の接着力測定法により引っ張り強度を測定したところ538g/cmであった。また、接着した牛外もも肉をフライパンで焼成し、試食したところ接着層が目立たず風味もよかった。この結果を表1に示す。
【0038】
〈実施例7〉
アルギン酸ナトリウム((株)キミカ製)2部、実施例1で用いた90Rクエン酸Ca1部(カルシウム塩として)、グルコノデルタラクトン(扶桑化学(株)製)2.5部を混合して食品用接着組成物を得た。このとき用いた90Rクエン酸Caをカルシウム塩として1%、グルコノデルタラクトン0.1%となるように水に分散させた時のカルシウム混合物のカルシウム溶出濃度は、水に分散させ、分散後3分経過時に21.3ppm、分散後120分経過時に185.8ppmであった。この食品用接着組成物を用いて、牛外もも肉300gに対して前述の接着力測定法により引っ張り強度を測定したところ919g/cmであった。また、接着した牛外もも肉をフライパンで焼成し、試食したところ接着層は目立たなかった。この結果を表1に示す。
【0039】
〈実施例8〉
アルギン酸ナトリウム((株)キミカ製)2部、実施例3で用いた80Rクエン酸Ca1部(カルシウム塩として)、グルコノデルタラクトン(扶桑化学(株)製)2.5部を混合して食品用接着組成物を得た。このとき用いた80Rクエン酸Caをカルシウム塩として1%、グルコノデルタラクトン0.1%となるように水に分散させた時のカルシウム混合物のカルシウム溶出濃度は、水に分散させ、分散後3分経過時に3.5ppm、分散後120分経過時に56.6ppmであった。この食品用接着組成物を用いて、牛外もも肉300gに対して前述の接着力測定法で引っ張り強度を測定したところ937g/cmであった。また、接着した牛外もも肉をフライパンで焼成し、試食したところ接着層が目立たず風味もほとんど変わらなかった。この結果を表1に示す。
【0040】
〈実施例9〜10〉
アルギン酸ナトリウム((株)キミカ製)2部、実施例5、実施例6で用いた硬化油脂被覆カルシウム塩1部(カルシウム塩として)、グルコノデルタラクトン(扶桑化学(株)製)2.5部をそれぞれ混合して食品用接着組成物を得た。次に実施例7と同様にして硬化油脂被覆カルシウム塩のカルシウム混合物のカルシウム溶出濃度の測定並びに接着試験を行い、このときの結果を表1に示す。
【0041】
〈実施例11〉
実施例1と実施例5の被覆カルシウム塩を使用し、アルギン酸ナトリウム((株)キミカ製)2部、90Rクエン酸Ca0.5部(カルシウム塩として)、80Rクエン酸Ca0.5部(カルシウム塩として)を混合して食品用接着組成物を得た。このとき用いた90Rクエン酸Caと80R硫酸Caとをカルシウム塩として1:1となるように混合したものを、カルシウム塩として1%となるように水に分散させた時のカルシウム溶出濃度は、水に分散させ、分散後3分経過時に13.2ppm、分散後120分経過時に48.7ppmであった。次に、この食品用接着組成物を用いて、牛もも肉300gに対して前述の接着力測定法により引っ張り強度を測定したところ724g/cmであった。また、接着した牛もも肉をフライパンで焼成し、試食したところ接着層が目立たず風味もよかった。この結果を表1に示す。
【0042】
〈比較例1〉
90Rクエン酸Caの代わりに乳酸カルシウム(扶桑化学(株)製)を用いた以外は実施例1と同様にして食品用接着組成物を得た。次に実施例1と同様にして乳酸カルシウムのカルシウム溶出濃度の測定並びに接着試験を行った。接着試験では殆んど接着していなかったので接着強度は測定できなかった。このときの結果を表1に示す。
【0043】
〈比較例2〉
90Rクエン酸Caの代わりに硫酸カルシウム(富田製薬(株)製)を用いた以外は実施例1と同様にして食品用接着組成物を得た。次に実施例1と同様にして硫酸カルシウムのカルシウム溶出濃度の測定並びに接着試験を行った。接着試験では殆んど接着していなかったので接着強度は測定できなかった。このときの結果を表1に示す。
【0044】
〈比較例3〉
90Rクエン酸Caの代わりにクエン酸カルシウム(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)を用いた以外は実施例1と同様にして食品用接着組成物を得た。次に実施例1と同様にしてクエン酸カルシウムのカルシウム溶出濃度の測定並びに接着試験を行った。接着試験では引っ張り強度が低く実用性に乏しかった。このときの結果を表1に示す。
【0045】
〈比較例4〉
クエン酸カルシウム(扶桑化学(株)製)7部とハイスピードミキサー5J型(深江工業製)に入れた後、70℃で加温攪拌しながら、75℃に加温して溶解した所定量の菜種硬化油脂(日油(株)製、融点約65〜72℃)3部量を噴霧しながら加える。菜種硬化油脂を噴霧し終えたら、次に25℃まで除々に冷却し、硬化油脂被覆カルシウム塩を得た。(以降70Rクエン酸Caと記載する)。次に、アルギン酸ナトリウム((株)キミカ製)2部、70Rクエン酸Ca1部(カルシウム塩分として)を混合して食品用接着組成物を得た。次に実施例1と同様にして70Rクエン酸Caのカルシウム溶出濃度の測定並びに接着試験を行った。接着試験では引っ張り強度が低く実用性に乏しかった。このときの結果を表1に示す。
【0046】
〈比較例5〉
アルギン酸ナトリウム((株)キミカ製)2部、比較例4で用いた70Rクエン酸Ca1部(カルシウム塩として)、シュガーエステル(三菱化学フーズ製 S−770)2.5部を混合して食品用接着組成物を得た。次に実施例2と同様にして硬化油脂被覆カルシウムをカルシウム塩として1%、シュガーエステル0.1%となるように水に分散させた時のカルシウム混合物のカルシウム溶出濃度の測定並びに接着試験を行った。接着試験では引っ張り強度が低く実用性に乏しかった。このときの結果を表1に示す。
【0047】
〈比較例6〉
硫酸カルシウム(富田製薬(株)製)9部を、ハイスピードミキサー5J型(深江工業製)に入れた後、70℃で加温攪拌しながら、75℃に加温して溶解した所定量の菜種硬化油脂(日油(株)製、融点約65〜72℃)1部量を噴霧しながら加える。菜種硬化油脂を噴霧し終えたら、次に25℃まで除々に冷却し、硬化油脂被覆カルシウム塩を得た。(以降90R硫酸Caと記載する)。次に、次に実施例1と同様にして90R硫酸Caのカルシウム溶出濃度の測定並びに接着試験を行った。接着試験では引っ張り強度が低く実用性に乏しかった。このときの結果を表1に示す。
【0048】
〈比較例7〉
90Rクエン酸Caの代わりに炭酸カルシウム(白石カルシウム製)を用いた以外は実施例1と同様に炭酸カルシウムのカルシウム溶出濃度の測定並びに接着試験を行った。接着試験では引っ張り強度が低く実用性に乏しかった。このときの結果を表1に示す。
【0049】
〈比較例8〉
90Rクエン酸Caの代わりに70Rクエン酸Caを用いた以外は実施例7と同様にして食品用接着組成物を得た。次に実施例2と同様にして硬化油脂被覆カルシウム塩をカルシウム塩として1%、グルコノデルタラクトン0.1%となるように水に分散させた時のカルシウム混合物のカルシウム溶出濃度の測定並びに接着試験を行った。接着試験では引っ張り強度が低く実用性に乏しかった。このときの結果を表1に示す。
【0050】
〈比較例9〉
90Rクエン酸Caの代わりに90R硫酸Caを用いた以外は実施例7と同様にして食品用接着組成物を得た。次に実施例7と同様にして硬化油脂被覆カルシウム塩をカルシウム塩として1%、グルコノデルタラクトン0.1%となるように水に分散させた時のカルシウム混合物のカルシウム溶出濃度の測定並びに接着試験を行った。接着試験では引っ張り強度が低く実用性に乏しかった。このときの結果を表1に示す。
【0051】
〈比較例10〉
90Rクエン酸Caの代わりに炭酸カルシウム(白石カルシウム製)用いた以外は実施例7と同様にして食品用接着組成物を得た。次に実施例7と同様にして炭酸カルシウム1%、グルコノデルタラクトン2.5%となるように水に分散させた時のカルシウム混合物のカルシウム溶出濃度の測定並びに接着試験を行った。接着試験では引っ張り強度が低く実用性に乏しかった。このときの結果を表1に示す。
【0052】
〈実施例12〉
比較例4と比較例6の被覆カルシウム塩を使用し、アルギン酸ナトリウム((株)キミカ製))2部、90R硫酸酸Ca0.1部(カルシウム塩として)、70Rクエン酸Ca0.9部(カルシウム塩として)、シュガーエステル(三菱化学フーズ製 S−770)2.5部を混合して食品用接着組成物を得た。このとき用いた90R硫酸酸Caと70Rクエン酸Caとを1:9で混合したものを、カルシウム塩として1%、シュガーエステル0.1%となるように水に分散させた時のカルシウム混合物のカルシウム溶出濃度は、水に分散させ、分散後3分経過時に16.6ppm、分散後120分経過時に28.9ppmであった。
この食品用接着組成物を用いて、牛もも肉300gに対して前述の接着力測定法により引っ張り強度を測定したところ437g/cmであった。また、接着した牛もも肉をフライパンで焼成し、試食したところ接着層が目立たず風味もよかった。この結果を表1に示す。
【0053】
〈実施例13〉
クエン酸カルシウム(扶桑化学(株)製)9部とハイスピードミキサー5J型(深江工業製)に入れた後、70℃で加温攪拌しながら、75℃に加温して溶解した所定量の牛硬化油脂(ミヨシ油脂(株)製、融点約55℃)1部を噴霧しながら加える。牛硬化油脂を噴霧し終えたら、次に25℃まで除々に冷却し、硬化油脂被覆カルシウム塩を得た。(以降90RBクエン酸Caと記載する)。次に、アルギン酸ナトリウム((株)キミカ製)2部、90RBクエン酸Ca1部(カルシウム塩として)を混合して食品用接着組成物を得た。このとき用いた90RBクエン酸Caをカルシウム塩として1%となるように水に分散させた時のカルシウム溶出濃度は、水に分散させ、分散後3分経過時に1.8ppm、分散後120分経過時に26.8ppmであった。次に、この食品用接着組成物を用いて、牛もも肉300gに対して前述の接着力測定法により引っ張り強度を測定したところ637g/cmであった。また、接着した牛もも肉をフライパンで焼成し、試食したところ接着層が目立たず風味もよかった。この結果を表1に示す。
【0054】
表1

【0055】
〈実施例14〜実施例19〉
アルギン酸ナトリウム((株)キミカ製))の代わりにアルギン酸カリウム((株)キミカ製))を用いた以外は実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、実施例6と同様にして食品用接着組成物を得た。次に、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、実施例6と同様にしてカルシウム溶出濃度の測定並びに接着試験を行った。このときの結果を表2に示す。
【0056】
表2

【0057】
〈比較例11〜17〉
アルギン酸ナトリウム((株)キミカ製))の代わりにアルギン酸カリウム((株)キミカ製))を用いた以外は比較例1〜7と同様にして食品用接着組成物を得た。次に比較例1〜7と同様にしてカルシウム溶出濃度の測定並びに接着試験を行った。このときの結果を表2に示す。
【0058】
〈実施例20〜26、比較例18〜21〉
組成の異なる食品用接着組成物を種々の条件で野菜、魚、肉などの食品素材に用いて接着食品を作成した。その結果を下記に示す。
【0059】
〈実施例20〉<マグロ成型ステーキ−1>
実施例1で用いたアルギン酸ナトリウム((株)キミカ製) 94.8 %、実施例1で用いた90Rクエン酸カルシウム5.2 %からなる食品用接着組成物を不定形マグロ小片肉1000gに対し 21.1g添加し、手で3分間混合後、7cm×7cm×28cmのリテーナーに詰め、冷蔵で、120分放置の後、冷凍してマグロ成型品を得た。このときの食品用接着組成物中の不定形マグロ小片肉に対する各成分の使用割合は、不定形マグロ小片肉に対し、アルギン酸ナトリウム2%、90Rクエン酸カルシウム(カルシウム塩として)0.1%となる。次にマグロ成型品を凍結したままスライサーで10mmの厚さにカットし、マグロ成型ステーキとした後、接着力、接着層の評価を行い、フライパンで焼成し、再び接着力、風味について評価を行なった。その結果を次に記載する。

<マグロ成型ステーキの接着力、接着層、風味について評価方法>

接着力
焼成前に接着品の端を手で持ち、持ち上げようとすると接着面から剥がれる。
・・・0
焼成前に接着品の端を手で持ち持ち上げても、接着面から剥がれない。
・・・1
焼成前に接着品の端を手で持ち、振っても剥がれない。
・・・2
焼成後に接着品の端を手で持ち、振っても剥がれない。
・・・3
接着層 接着層が目立つ。 0
接着層がやや分る。 1
接着層がほとんど分らない。 2
接着層が分からない。 3
風味 明確に異味を感じる。 0
異味をやや感じる。 1
異味をほとんど感じない。 2
異味を感じない。 3
【0060】
〈実施例21〉<マグロ成型ステーキ−2>
実施例1で用いたアルギン酸ナトリウム((株)キミカ製)78.4%、実施例1で用いた90Rクエン酸カルシウム21.6%からなる食品用接着組成物を実施例20で用いたマグロ小片肉1000gに対し10.2g添加し、手で、3分間混合後、7cm×7cm×28cmのリテーナーに詰め、冷蔵で、120分放置の後、冷凍してマグロ成型品を得た。このときの食品用接着組成物中のマグロ小片肉に対する各成分の使用割合は、マグロ小片肉に対し、アルギン酸ナトリウム0.8%、90Rクエン酸カルシウム(カルシウム塩として)0.2%となる。次にマグロ成型品を凍結したままスライサーで10mm厚にカットし、マグロ成型ステーキとした後、接着力、接着層の評価を行い、フライパンで焼成し、再び接着力、風味について実施例20と同様にして評価を行なった。その結果を次に記載する。

【0061】
〈実施例22〉 <かき揚げ−1>
実施例1で用いたアルギン酸ナトリウム((株)キミカ製) 32%、実施例3で用いた80Rクエン酸カルシウム20%、ショ糖エステル(三菱化学フーズ(株)S-1670)48%からなる食品用接着組成物をかき揚げを想定し、半月切りで、5〜8mm厚にカットした玉葱40%、千切りで、3mmにカットした人参30%、10cm程度にカットした春菊5%、小エビ(2〜3cm程度)25%の割合で混合したもの100gに対し0.625g添加し、手で3分間混合後、直径15cm円筒の金型にて手成型し、冷蔵で、24時間放置の後、天ぷらバッター液をバッタリングし、油調してかき揚げを作成した。このときの食品用接着組成物中のカット野菜とエビに対する各成分の使用割合は、カット野菜とエビに対し、アルギン酸ナトリウム0.2%、80Rクエン酸カルシウム(カルシウム塩として)0.1%、ショ糖エステル(三菱化学フーズ(株) S-1670)0.3%となる。次に、かき揚げを油調した後、試食をし、風味について評価を行なった。尚、接着力に関しては、バッタリング時に評価を行なった。その結果を次に記す。

<かき揚げの接着力、風味について評価方法>
接着力 野菜、エビがバラバラになってバッタリング出来ない。
・・・0
野菜、エビの一部が剥がれ落ちてバッタリング出来ない。
・・・1
野菜、エビが接着した状態を保ってバッタリング出来る。
・・・2
風味 明確に異味を感じる。 0
異味をやや感じる。 1
異味をほとんど感じない。 2
異味を感じない。 3
【0062】
〈実施例23〉<かき揚げ−2>
実施例1で用いたアルギン酸ナトリウム((株)キミカ製) 19.4%、実施例3で用いた80Rクエン酸カルシウム80.6%からなる食品用接着組成物をかき揚げを想定し、半月切りで、5〜8mm厚にカットした玉葱40%、千切りで、3mmにカットした人参30%、10cm程度にカットした春菊5%、小エビ(2〜3cm程度)25%の割合で混合したもの100gに対し1.55g添加し、手で3分間混合後、直径15cm円筒の金型にて成型し、冷蔵で、24時間放置の後、天ぷらバッター液をバッタリングし、油調してかき揚げを作成した。このときの食品用接着組成物中のカット野菜とエビに対する各成分の使用割合は、カット野菜とエビに対し、アルギン酸ナトリウム0.3%、80Rクエン酸カルシウム(カルシウム塩として)1%となる。次に、かき揚げを油調した後、試食をし、風味について実施例22と同様に評価を行なった。尚、接着力に関しては、バッタリング時に実施例22と同様に評価を行なった。その結果を次に記す。

【0063】
〈実施例24〉<野菜入り牛ばら肉成型ステーキ−1>
実施例1で用いたアルギン酸ナトリウム((株)キミカ製) 57.1%、実施例5で用いた80R硫酸カルシウム14.3%、シュガーエステル28.6%(三菱化学フーズ(株)製 S-1670)からなる食品用接着組成物を1〜3cm角の牛ばら肉80%、市販のミックスベジタブル(人参、青豆、玉蜀黍)20%の割合で混合したもの1000gに対し、17.5g添加し、手で3分間混合後、7cm×7cm×28cmのリテーナーで成型し、120分冷蔵後、冷凍して野菜入り牛ばら肉成型品を作成した。このときの食品用接着組成物中の野菜入り牛ばら肉成型品に対する各成分の使用割合は、野菜入り牛ばら肉成型ステーキに対し、アルギン酸ナトリウム((株)キミカ製)1.0%、80R硫酸カルシウム0.2%(カルシウム塩として)、シュガーエステル(三菱化学フーズ(株)製 S-1670)0.5%となる。次に野菜入り牛ばら肉成型品を凍結したままスライサーで10mmにカットし、野菜入り牛ばら肉成型ステーキとした後、接着力、接着層の評価を行い、フライパンで焼成し、再び接着力、風味について評価を行なった。その結果を次に記載する。

<野菜入り牛ばら肉成型ステーキの接着力、接着層、風味について評価方法>
接着力
焼成前に接着品の端を手で持ち、持ち上げようとすると接着面から剥がれる。
・・・0
焼成前に接着品の端を手で持ち、持ち上げても、接着面から剥がれない。
・・・1
焼成前に接着品の端を手で持ち、振っても剥がれない。
・・・2
焼成後に接着品の端を手で持ち、振っても接着面から剥がれない。
・・・3
接着層・接着層が目立つ。 0
接着層がやや分る。 1
接着層がほとんど分らない。 2
接着層が分からない。 3
風味 明確に異味を感じる。 0
異味をやや感じる。 1
異味をほとんど感じない。 2
異味を感じない。 3
【0064】
〈実施例25〉 <野菜入り牛ばら肉成型ステーキ−2>
実施例1で用いたアルギン酸ナトリウム((株)キミカ製) 26.7 %、実施例5で用いた80R硫酸カルシウム20%、シュガーエステル53.3%(三菱化学フーズ(株)製 S-770)からなる食品用接着組成物を1〜3cm角の牛ばら肉80%、市販のミックスベジタブル(人参、青豆、玉蜀黍)20%の割合で混合したもの1000gに対し、18.75g添加し、手で3分間混合後、7cm×7cm×28cmのリテーナーで成型し、120分冷蔵後、冷凍して野菜入り牛ばら肉成型品を作成した。このときの食品用接着組成物中の野菜入り牛ばら肉成型品に対する各成分の使用割合は、野菜入り牛ばら肉成型品に対し、アルギン酸ナトリウム((株)キミカ製)0.5%、80R硫酸カルシウム0.3%(カルシウム塩として)、シュガーエステル(三菱化学フーズ(株)製 S-770)1%からなる食品用接着組成物となる。次に野菜入り牛ばら肉成型品を凍結したままスライサーで10mmにカットし、野菜入り牛ばら肉成型ステーキとした後、接着力、接着層の評価を行い、フライパンで焼成し、再び接着力、風味について実施例24と同様にして評価を行なった。その結果を次に記載する。

【0065】
〈実施例26〉<ホタテ成型ステーキ−1>
実施例14で用いたアルギン酸カリウム((株)キミカ製)47%、実施例3で用いた80Rクエン酸カルシウム29.5%、シュガーエステル23.5%(三菱化学フーズ(株)製 S-770)からなる食品用接着組成物を加熱済みベビーホタテ(1〜3cm程度のもの)100gに対し、4.25g添加し、手で3分間混合後、直径5cmのケーシングで成型し、120分冷蔵後、冷凍してホタテ成型品を作成した。このときの食品用接着組成物中のホタテ成型品に対する各成分の使用割合は、ホタテ成型品に対し、アルギン酸カリウム((株)キミカ製)2%、80Rクエン酸カルシウム1%(カルシウム塩として)、シュガーエステル(三菱化学フーズ(株)製 S-770)1%からなる食品用接着組成物となる。次にホタテ成型品を凍結したままスライサーで10mmにカットし、ホタテ成型ステーキとした後、接着力、接着層の評価を行い、フライパンで焼成し、再び接着力、風味について評価を行なった。その結果を次に記載する。

<ホタテ成型ステーキの接着力、接着層、風味について評価方法>
接着力
焼成前に接着品の端を手で持ち、持ち上げようとすると接着面から剥がれる。
・・・0
焼成前に接着品の端を手で持ち、持ち上げても、接着面から剥がれない。
・・・1
焼成前に接着品の端を手で持ち、振っても剥がれない。
・・・2
焼成後接着品の端を手で持ち、振っても接着面から剥がれない。
・・・3
接着層 接着層が目立つ。 0
接着層がやや分る。 1
接着層がほとんど分らない。 2
接着層が分かれない。 3
風味 明確に異味を感じる。 0
異味をやや感じる。 1
異味をほとんど感じない。 2
異味を感じない。 3
【0066】
〈比較例18〉<マグロ成型ステーキ−3>
実施例1で用いたアルギン酸ナトリウム((株)キミカ製)64.1%、実施例1で用いた90Rクエン酸カルシウム35.9%からなる食品用接着組成物を不定形マグロ小片肉1000gに対し1.56g添加し、手で3分間混合後、7cm×7cm×28cmのリテーナーで成型し、冷蔵で、120分放置の後、冷凍してマグロ成型品を得た。このときの食品用接着組成物中のマグロ小片肉に対する各成分の使用割合は、マグロ小片肉に対し、アルギン酸ナトリウム0.1%、90Rクエン酸カルシウム(カルシウム塩として)0.05%となる。次にマグロ成型品を凍結したままスライサーで10mmにカットし、マグロ成型ステーキとした後、接着力、接着層の評価を行い、フライパンで焼成し、再び接着力、風味について実施例20と同様に評価を行なった。その結果を次に記載する。

【0067】
〈比較例19〉<マグロ成型ステーキ−4>
実施例1で用いたアルギン酸ナトリウム((株)キミカ製)97.5%、実施例1で用いた90Rクエン酸カルシウム2.5%からなる食品用接着組成物を不定形マグロ小片肉1000gに対し 22.56g添加し、手で3分間混合後、7cm×7cm×28cmのリテーナーで成型し、冷蔵で、120分放置の後、冷凍してマグロ成型品を得た。このときの食品用接着組成物中のマグロ小片肉に対する各成分の使用割合は、マグロ小片肉に対し、アルギン酸ナトリウム2.2%、90Rクエン酸カルシウム(カルシウム塩として)0.05%となる。次にマグロ成型品を凍結したままスライサーで10mmにカットし、マグロ成型ステーキとした後、接着力、接着層の評価を行い、フライパンで焼成し、再び接着力、風味について実施例20と同様に評価を行なった。その結果を次に記載する。

【0068】
〈比較例20〉<ホタテ成型ステーキ−2>
実施例1で用いたアルギン酸ナトリウム((株)キミカ製)7 %、実施例1で用いた90Rクエン酸カルシウム93%からなる食品用接着組成物を加熱済みベビーホタテ(1〜3cm程度のもの)1000gに対し、14.3g添加し、手で3分間混合後、直径5cmケーシング成型し、120分冷蔵後、冷凍してホタテ成型品を作成した。このときの食品用接着組成物中のベビーホタテ成型品に対する各成分の使用割合は、ベビーホタテ成型品に対し、アルギン酸ナトリウム((株)キミカ製)0.1%、90Rクエン酸カルシウム1.2%(カルシウム塩として)となる。次にホタテ成型品を凍結したままスライサーで10mmにカットし、ホタテ成型ステーキとした後、接着力、接着層の評価を行い、フライパンで焼成し、再び接着力、風味について実施例26と同様に評価を行なった。その結果を次に記載する。

【0069】
〈比較例21〉<牛肉成型ステーキ−1>
実施例14で用いたアルギン酸カリウム((株)キミカ製)46.5%、実施例3で用いた80Rクエン酸カルシウム28.1%、シュガーエステル(三菱化学フーズ(株)製 S-770)25.4%からなる食品用接着組成物を2〜3cm角の牛モモ肉1000gに対し47.3g添加し、手で3分間混合後、7cm×7cm×28cmのリテーナーに詰め、冷蔵で、120分放置の後、冷凍して牛肉成型品を得た。このときの食品用接着組成物中の2〜3cm角の牛モモ肉に対する各成分の使用割合は、2〜3cm角の牛モモ肉に対し、アルギン酸カリウム2.2%、90Rクエン酸カルシウム(カルシウム塩として)1.2%、シュガーエステル(三菱化学フーズ(株)製 S-770)1.2%となる。次に牛肉成型品を凍結したままスライサーで10mmにカットし、牛肉成型ステーキとした後、接着力、接着層の評価を行い、フライパンで焼成し、再び接着力、風味について評価を行なった。その結果を次に記載する。

<牛肉成型ステーキの接着力、接着層、風味について評価方法>
接着力
焼成前に接着品の端を手で持ち、持ち上げようとすると接着面から剥がれる。
・・・0
焼成前に接着品の端を手で持ち、持ち上げても、接着面から剥がれない。
・・・1
焼成前に接着品の端を手で持ち、振っても剥がれない。
・・・2
焼成後に接着品の端を手で持ち、振っても接着面から剥がれない。
・・・3
接着層 接着層が目立つ。 0
接着層がやや分る。 1
接着層がほとんど分らない。 2
接着層が分かれない。 3
風味 明確に異味を感じる。 0
異味をやや感じる。 1
異味をほとんど感じない。 2
異味を感じない。 3
本願発明の食品用接着組成物が従来の食品用接着組成物に比較して接着力も風味も優れたものであることは上記のデータから理解できる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、食品原料や食品片を、同種又は異種の組み合わせにおいて接着することにより新しい食感や味のバランスをもった接着食品を複雑な加工工程を経ずに製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本願発明の実施例、比較例に使用した硬化油脂被覆カルシウム塩並びに硬化油脂被覆カルシウム塩及びカルシウム溶出促進剤からなるカルシウム混合物をそれぞれの条件に於いて水に分散させたときのカルシウム溶出濃度と経過時間の関係を表したものである。
【符号の説明】
【0072】
1a,1b:実施例3に使用した硬化油脂皮膜カルシウム塩の、水に分散後3分経過時及び120分経過時のカルシウム溶出濃度を表す。
2a,2b:実施例7に使用した硬化油脂皮膜カルシウム塩及びカルシウム溶出促進剤からなるカルシウム混合物の、水に分散後3分経過時及び120分経過時のカルシウム溶出濃度を表す。
3a,3b:実施例10に使用した硬化油脂皮膜カルシウム塩及びカルシウム溶出促進剤からなるカルシウム混合物の、水に分散後3分経過時及び120分経過時のカルシウム溶出濃度を表す。
4a,4b:実施例11に使用した硬化油脂皮膜カルシウム塩(2種類混合物)の、水に分散後3分経過時及び120分経過時のカルシウム溶出濃度を表す。
5a,5b:比較例7に使用した硬化油脂皮膜カルシウム塩の、水に分散後3分経過時及び120分経過時のカルシウム溶出濃度を表す。
6a,6b:比較例10に使用した硬化油脂皮膜カルシウム塩及びカルシウム溶出促進剤からなるカルシウム混合物の、水に分散後3分経過時及び120分経過時のカルシウム溶出濃度を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルギン酸塩および特定のカルシウム溶出濃度を有す硬化油脂被覆カルシウム塩からなる食品用接着組成物であって、硬化油脂被覆カルシウム塩のカルシウム溶出濃度が1および2であることを特徴とする食品用接着組成物。
1.硬化油脂被覆カルシウム塩をカルシウム塩として1%となるように水に分散させ、分散後3分経過時にカルシウム溶出濃度が50ppm以下である。
2.硬化油脂被覆カルシウム塩をカルシウム塩として1%となるように水に分散させ、分散後120分経過時にカルシウム溶出濃度が18ppm以上である。
【請求項2】
アルギン酸塩と特定のカルシウム溶出濃度を有す硬化油脂被覆カルシウム塩およびカルシウム溶出促進剤からなるカルシウム混合物を含む食品用接着組成物であって、硬化油脂被覆カルシウム塩およびカルシウム溶出促進剤からなるカルシウム混合物のカルシウム溶出濃度が1および2であることを特徴とする食品用接着組成物。
1.硬化油脂被覆カルシウム塩をカルシウム塩として1%、カルシウム溶出促
進剤を0.1%以下となるようにカルシウム混合物を水に分散させ、分散後3分
経過時にカルシウム溶出濃度が50ppm以下である。
2.硬化油脂被覆カルシウム塩をカルシウム塩として1%、カルシウム溶出促進剤を0.1%以下となるようにカルシウム混合物を水に分散させ、分散後120分経過時にカルシウム溶出濃度が18ppm以上である。
【請求項3】
アルギン酸塩がアルギン酸ナトリウム及び/又はアルギン酸カリウムからなることを特徴とする請求項1または2に記載の食品用接着組成物。
【請求項4】
カルシウム溶出促進剤が乳化剤であることを特徴とする請求項2または3記載の食品用接着組成物。
【請求項5】
請求項1ないし4に記載の食品用接着組成物を食品に対してアルギン酸塩0.2%〜2%、硬化油脂被覆カルシウム塩をカルシウム塩として0.1〜1%、カルシウム溶出促進剤0〜1%となるように用いて接着することを特徴とする接着食品。

















【図1】
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【公開番号】特開2010−81920(P2010−81920A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257914(P2008−257914)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000199441)千葉製粉株式会社 (11)
【Fターム(参考)】