説明

食品用酸化防止剤及び該食品用酸化防止剤を含有する乾燥食品。

【課題】
食品用酸化防止剤及び保存中における酸化安定性の高い乾燥食品を提供する。
【解決手段】
本発明は、乾燥食品中に添加することで抗酸化効果を有する組成物、α-リポ酸単独、又は、α-リポ酸とビタミンC並びに/若しくはビタミンE並びに/若しくはレシチン、すなわちビタミンC、ビタミンE若しくはレシチンから選ばれる1以上とリポ酸で構成される食品用酸化防止剤について提供する。また、乾燥食品を製造する際に本発明の食品用酸化防止剤を原料へ添加し、酸化安定性の高い乾燥食品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥食品の酸化を防止する食品用酸化防止剤に関する。
また、本発明は酸化安定性の高い乾燥食品に関する。
本発明は、α-リポ酸単独、又は、α-リポ酸とビタミンC並びに/若しくはビタミンE並びに/若しくはレシチン、すなわちビタミンC、ビタミンE若しくはレシチンから選ばれる1以上とリポ酸で構成される食品用酸化防止剤に関し、乾燥食品を製造する際に本発明の食品用酸化防止剤を原料へ添加し、酸化安定性の高い乾燥食品を提供する。
【背景技術】
【0002】
油脂含量の多い食品に限らず、油脂含量の比較的少ない食品においても、食品の輸送中や貯蔵中に食品中の油脂が酸化して品質が劣化し、食品としての価値を著しく低下することがある。例えば、乾燥食品は多孔質であり表面積が広いため、その食品と空気中の酸素との接触面積が増大し、その結果、短時間で食品中に含まれる脂質が酸化されやすく、該酸化脂質に起因した食品風味の変化、異臭発生など、保存中の品質劣化が問題になっている。したがって、食品の酸化を防止することは非常に重要である。
【0003】
原生動物の発育因子として発見されたα-リポ酸は、生体内では肝臓、腎臓、心臓などに多く存在し、タンパク質と結合した状態で補酵素として働くことが知られている。さらに食品に関しては、α-リポ酸のタンパク質と結合していない状態での植物油や豚脂などの酸化に対する効果はすでに調べられている(非特許文献1参照)。
【非特許文献1】DrindaらZ Lebensm Unters Forsch A (1999) 208:270-276
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、食品の酸化防止の目的で、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)などのフェノール系合成酸化防止剤が多く使用されてきていたが、安全性の点で問題があり、近年では、トコフェロール等の天然物が多く使用されるようになってきた。しかしながら、BHA等のような安定した酸化防止効果を有し、しかも、トコフェロールのような安全性の高い食品用酸化防止剤の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、長期間の保存や品質の劣化が少ない食品を得るべく鋭意研究を重ねた結果、食品の原料に、食品用酸化防止剤として少なくともα-リポ酸を使用し、又は、α-リポ酸と、ビタミンC、ビタミンE並びにレシチンの群から選ばれる一種以上を使用することで、酸化安定性を長期間高く維持し、品質劣化がない食品が得られることを見出し。さらに、本発明は、α-リポ酸、ビタミンC、ビタミンE、レシチンを、本発明の食品用酸化防止剤として使用し、α-リポ酸を含有する二成分若しくは三成分以上、即ちα-リポ酸及びビタミンCの組合せ、α-リポ酸及びビタミンEの組合せ、α-リポ酸、ビタミンC並びにビタミンEの組合せ、α-リポ酸及びレシチンの組合せ、α-リポ酸、レシチン及びビタミンEの組合せなどで使用し、乾燥食品を製造するための原料に添加することで酸化防止効果が得られ、各物質の組合せにより奏した酸化防止効果が高いことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
したがって、本発明は、α-リポ酸単独、α-リポ酸とビタミンC並びに/若しくはビタミンE並びに/若しくはレシチンとの組合せにより、すなわち、α-リポ酸単独、又は、α-リポ酸とビタミンC並びに/若しくはビタミンE並びに/若しくはレシチン、すなわちビタミンC、ビタミンE若しくはレシチンから選ばれる1以上とリポ酸の組合せにより酸化を防止する方法を提供することを課題とする。また、本発明は、酸化防止効果を付与した食品を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、乾燥食品中に添加することで抗酸化効果を有する組成物、α-リポ酸、またはα-リポ酸及びビタミンC並びに/若しくはビタミンE並びに/若しくはレシチンの組合せから成る食品用酸化防止剤について提供する。また、該食品用酸化防止剤を含有する乾燥食品を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明における食品は、食品自体及び各種食品を製造するための食品素材である原料をも意味し、本発明の食品用酸化防止剤を内在および含有など用いてなる食品を含む。例えば、トマト、タマネギ、ニンジン、大根、ジャガイモ、ゴボウ、カボチャ、ピーマン、キャベツ、カリフラワー、アスパラガス、オクラ、ネギ、キュウリ、カボチャ、ナス、スイカ、ほうれん草、カリフラワーなどの野菜、豆などの穀物、イチゴ、柿、リンゴ、レモン、サクランボ、梨、桃、ブルーベリー、メロンなどなどの果物類、種実類、鮭、鯛、鰈、いか、えび、ホタテなどの魚介類、獣鳥肉類、卵類、乳類、きのこ類、藻類、菓子類、嗜好アルコールや茶などの嗜好飲料類、ソースなどの調味料類、香辛料類、また、豆腐、蒟蒻、寒天などの加工品等が挙げられ、またはこれらを煮沸調理などの加工、調理した食品をも含む。
【0009】
本発明のα-リポ酸は、α-リポ酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を意味し、食品に添加でき、酸化防止効果を有するものであれば、特に限定されない。α-リポ酸は、チオクト酸ともいわれる含硫ビタミン様作用物質であり、化学的に1,2-ジオラン-3-ペンタン酸(1,2-Dithiolane-3-pentanoic acid [CAS No.62-46-4])として、動植物界に広く分布する。該α-リポ酸の誘導体としては、例えばα-リポ酸、ジヒドロリポ酸、そのアルキル又はアルケニルエステル及びアミド等が挙げられる。また、該α-リポ酸の塩としては、ナトリウム塩,カリウム塩等のアルカリ金属の塩の他、アミン塩,アンモニウム塩等が挙げられる。本発明の食品用酸化防止剤において、α-リポ酸若しくはその誘導体又はそれらの塩は単独で含有することもできるし、二種以上を組み合わせて含有することもでき、適宜選択して用すればよい。本発明のα-リポ酸を、原料重量若しくは浸漬液重量に対し5重量%以下、好ましくは0.001〜1.0重量%以下、より好ましくは0.001〜0.5重量%を含有する。配合量は種類、剤形、用途等によって変化するが、適宜選択して使用すればよい。
【0010】
本発明のビタミンCは、アスコルビン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を意味し、食品に添加でき、酸化防止効果を有するものであれば、特に限定されない。アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸エステルなどのアスコルビン酸誘導体が挙げられ、アスコルビン酸エステルは、アスコルビン酸を脂肪酸でエステル化したモノエステルであり、アスコルビン酸ステアレート、アスコルビン酸パルミテート等が挙げられる。アスコルビン酸の誘導体としては、アスコルビン酸のリン酸エステル、又はアスコルビン酸の配糖体なども含む。本発明においては、前記より1種又は2種以上を適宜選択して用いればよい。アスコルビン酸又はその誘導体は、塩であってもよい。塩としても、食品に許容されるものであれば特段の限定は無く使用することができ、例えば、ナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩やマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩やトリエチルアミン塩などの有機アミン塩、リジン塩やアルギニン塩などの塩基性アミノ酸塩などが挙げられる。本発明の食品用酸化防止剤において、ビタミンCはアスコルビン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を単独で含有することもできるし、二種以上を組み合わせて含有することもでき、適宜選択して使用すればよい。本発明のビタミンCの含量は、原料重量若しくは浸漬液重量に対し10重量%以下、好ましくは1.0重量%、より好ましくは0.005〜0.5重量%を含有する。配合量は種類、剤形、用途等によって変化するが、適宜選択して使用すればよい。
【0011】
本発明のビタミンEは、2−メチル−6−クロマノール構造の各種化合物の総称を意味し、食品に添加でき、酸化防止効果を有するものであれば、特に限定されない。例えば、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、δ-トコトリエノールの8種類の同族体からなり、各々の構造異性体に対しd、l、dl体の光学異性体がある。また、トコフェロールの誘導体は酢酸エステルやカルボン酸エステル、燐酸エステル類やその塩類、燐脂質複合体等公知の化合物が挙げられる。トコフェロール同族体の中では、α-トコフェロールの生理活性が強いことから、生体内に効果的であり、医薬用や栄養強化目的で使用され、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロールは酸化防止効果が強いことから食品などの酸化防止剤として広く利用されている。本発明の食品用酸化防止剤において、ビタミンEはトコフェロール若しくはその誘導体又はそれらの塩を単独で含有することもできるし、二種以上を組み合わせて含有することもでき、適宜選択して使用すればよい。本発明のビタミンEの含量は、原料重量若しくは浸漬液重量に対し10重量%以下、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.001〜0.5重量%を含有する。配合量は種類、剤形、用途等によって変化するが、適宜選択して使用すればよい。
【0012】
本発明のレシチンは、ホスファチジルコリン若しくはその誘導体を主成分とするリン脂質を意味し、食品に添加でき、酸化防止効果を有するものであれば、特に限定されない。例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、及びこれらのリゾ体が挙げられ、本発明においては、前記より1種又は2種以上を組み合わせて含有することのでき、適宜選択して使用すればよい。また、レシチンは動物、植物、微生物に由来するレシチンのいずれを用いても構わない。粗製レシチン、精製レシチン、粉末レシチン、分別技術により含有するリン脂質を分別した分別レシチン、及びホスホリパーゼなどの酵素で処理して得られる酵素分解レシチンなどを用いても良いし、植物油や脂肪酸などを添加し成分を調製したレシチンを使用しても良い。本発明のレシチンの含量は、原料重量若しくは浸漬液重量に対し10重量%以下、好ましくは5.0重量%以下、より好ましくは0.01~3.0重量%を含有する。配合量は、種類、剤形、用途等によって変化するが、適宜選択して使用すればよい。
【0013】
本発明において、食品用酸化防止剤を乾燥食品に添加する方法は限定されるものではないが、食品に添加する際の食品用酸化防止剤は、粉末状あるいは顆粒状などの固体であっても良く、液状であっても良く、水・油などの液体基材に溶解、分散、懸濁、または乳化させた状態であっても良い。食品の原料に、食品用酸化防止剤を添加する際、本食品用酸化防止剤を含有する液体の形態で添加する方が、酸化を防止する上でより効果的であり、処理工程や取扱いが容易であり好ましい。該食品用酸化防止剤を含有する液体とは、液状の食品用酸化防止剤、あるいは食品用酸化防止剤を水・油などの液状基材に溶解、分散、懸濁、または乳化して含有させた状態のいずれもが含まれる。本発明の食品用酸化防止剤の有効成分であるα-リポ酸、ビタミンCの誘導体であるアスコルビン酸エステル、ビタミンE、レシチンは、疎水性であるが、酸化防止処理の際、原料への浸透性を高めるために水溶化して使用する場合、エタノールのような食品に使用可能な極性溶媒に予め溶解した後、原料に直接添加、あるいは水などの液状基材に溶解、分散、懸濁した液体を原料に添加し、溶媒除去を行う。また、乳化剤を加えて乳濁液にしたものを添加しても良い。また、脂質を多く含有する原料に食品用酸化防止剤を添加する場合、本発明の食品用酸化防止剤の有効成分であるα-リポ酸、ビタミンCの誘導体であるアスコルビン酸エステル、ビタミンE、レシチンのような脂溶性酸化防止剤を原料に直接添加しても良いが、α-リポ酸、ビタミンCの誘導体であるアスコルビン酸エステルのように脂質への溶解度が低い物質を添加する場合、原料への分散性を良くするために、エタノールのような食品に使用可能な極性溶媒に予め溶解した後、原料に直接添加、あるいは油などの液状基材に溶解、分散、懸濁した液体を原料に添加し、溶媒除去を行う方がより効果的である。若しくは、食品用酸化防止剤を少量の油脂に一旦溶解させてから原料に添加するのが好ましい。溶解させる油脂は、食品に添加出来るものならいずれの油脂を使用しても構わないが、食品用酸化防止剤が溶解し易い油脂、例えば、炭素数2〜12の短鎖脂肪酸や中鎖脂肪酸のトリグリセライドなどに食品用酸化防止剤を溶解して、原料へ添加すれば良い。
【0014】
本発明の食品用酸化防止剤の添加方法は、原料の性状によって適宜選択すれば良く、特定の添加方法に限定されない。原料が液体の場合、本発明の食品用酸化防止剤を含有する液体を原料に直接添加混合すれば良い。原料そのもの、あるいは適当なサイズに切断したものである場合、原料に本発明の食品用酸化防止剤を含有する液体を直接散布する方法、食品用酸化防止剤を含有する液体に原料を短時間浸漬する方法、煮熟液に食品用酸化防止剤を添加する方法が挙げられ、本発明の食品用酸化防止剤を含有する液体に短時間浸漬した後、同液で煮熟する方法が望ましい。また、原料が冷凍品であれば、グレーズ用水に食品用酸化防止剤を添加すれば一層効果的である。
【0015】
本発明の食品用酸化防止剤の有効成分であるα-リポ酸を添加する際、処理温度は60℃以下が好ましい。より好ましくは50℃以下である。処理温度が60℃以上では、α-リポ酸が重合・分解する恐れがある為、処理温度はそれ以下の温度であることが望ましい。よって、α-リポ酸以外の食品用酸化防止剤であるビタミンC、ビタミンE若しくはレシチンをα-リポ酸と併用添加する場合、2成分若しくは3成分からなる食品用酸化防止剤を混合し、煮熟液に添加しても構わないが、α-リポ酸以外の食品用酸化防止剤であるビタミンC、若しくはビタミンC及びビタミンEを含有する浸漬液で原料を煮熟した後、原料温度を50℃以下に冷却させてから、α-リポ酸を添加した方が更に好ましい。
【0016】
本発明の乾燥食品に含まれる食品用酸化防止剤は、少なくともα-リポ酸を含有する、あるいはα-リポ酸を含有する2成分若しくは3成分以上、例えば、少なくともα-リポ酸及びビタミンCを含有する組合せ、少なくともα-リポ酸及びビタミンEを含有する組合せ、少なくともα-リポ酸及びビタミンC及びビタミンEを含有する組合せ、少なくとも、α-リポ酸及びレシチンの組合せ、少なくともα-リポ酸、レシチン及びビタミンEの組合せなどを混合するだけで得られる。添加濃度としては、その添加方法にもよるが、原料重量若しくは浸漬液重量に対し、α-リポ酸を5重量%以下、ビタミンCを10重量%以下、ビタミンEを10重量%以下含有すればよい。また、原料重量若しくは浸漬液重量に対し、好ましくはα-リポ酸を1.0重量%以下、ビタミンCを0.001〜1.0重量%、ビタミンEを1.0重量%以下含有すればよい。さらに、原料重量若しくは浸漬液重量に対し、より好ましくはα-リポ酸を0.001〜0.5重量%、ビタミンCを0.005〜0.5重量%、ビタミンEを0.001〜0.5重量%含有すればよい。配合量は種類、剤形、用途等によって変化するが、適宜選択して使用すればよい。
【0017】
本発明の食品用酸化防止剤を使用してなる食品である乾燥食品は、原料を加熱並びに膨化など乾燥して得る乾燥食品を含み、そのまま喫食する食品、または、粉末、錠剤、糖衣錠、顆粒状等に加工し、例えばパンおよびケーキ類、味噌、豆腐、キャンディー、ヨーグルト、即席麺、ふりかけ、おむすび、お茶漬け、雑炊の素、炒飯の素、だしの素、スープの素、粉末醤油、ドレッシング、たれ、惣菜、菓子、乳製品、飲料などの即席食品及び調味食品などの各種食品の原料中の具材や、栄養保持食品として使用することもできる。原料は単品であっても2種類以上の原料が混合されていてもよい。乾燥食品の水分は、具材の組成、目的とする物性により異なり、適宜選択しるため、特に限定されるものではないが、一般的には15%以下、更に好ましくは0.01〜8%である。本発明の食品用酸化防止剤を使用した乾燥食品は、上記の食品に、α-リポ酸を、原料重量若しくは浸漬液重量に対し好ましくは、0.001〜1.0重量%、より好ましくは0.001〜0.5重量%を含有する。また、ビタミンCを、原料重量若しくは浸漬液重量に対し好ましくは0.001〜1.0重量%、より好ましくは0.005〜0.5重量%を含有する。ビタミンEを原料中の原料重量若しくは浸漬液重量に対し好ましくは0.001〜1.0重量%、より好ましくは0.001〜0.5重量%を含有する。レシチンを原料中の原料重量若しくは浸漬液重量に対し好ましくは0.001〜5.0重量%、より好ましくは0.01〜0.3重量%を含有する食品用酸化防止剤を使用していることを特徴とする。その結果、良好な食感を持つ新規な乾燥食品を提供可能である。本発明の食品用酸化防止剤の上記の配合量は、種類、剤形、用途、また酸化防止方法等によって変化するが、適宜選択して使用すればよい。例えば、液状の食品用酸化防止剤を浸漬液若しくは煮熟液等に使用する場合、または、脂質含量の低い原料に使用する場合は、本発明の食品酸化防止剤と、原料との接触効率、浸透効率が悪いため、上記配合量から適宜選択し、添加量を決定することが好ましい。
【0018】
本発明の食品用酸化防止剤を使用してなる乾燥食品の原料は、牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉等一般に食用とされる畜肉、家禽肉及びそれらの加工品の畜産素材、ウナギの肝などの魚介系内臓、カレイ、ハモ、ヒラメ、スズキ、カワハギ、スケトウダラ、サケ、マダラ、アンコウ、鯛、鯉、シジミ、アサリ、ホタテ、蛤、蟹、ホッキ、蛎、エビなどの魚介類及びそれらの魚介類より得られたすり身及びそれらの加工品の水産素材(ワカメ、ノリ及びコンブなどの海草類等を含む)、キャロット、パンプキン、マロン、小麦、大豆などの穀類及びそれらの加工品の農産素材が挙げられる。前記の群から単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもでき、必要に応じて副材料を使用することができ、適宜選択して使用すればよい。
本発明の食品用酸化防止剤を使用してなる乾燥食品の上記原料は、加熱などの加工処理が行われていても、例えば鶏卵をスプレードライなどにより粉末化するなどの加工処理が行なわれていてもよい。また、本発明の乾燥食品の形状及びサイズは、乾燥食品の食品の用途に応じた適当な大きさであればよいので特に限定しないが常識的な範囲が好ましい。例えば、原料は、そのまま乾燥してもよいが、所望により、粉体、フレーク状、薄片、ブロック、切身等へ切断し、本発明の食品用酸化防止剤の添加、味付け、風味付け若しくは加熱などの前処理を施してから乾燥に使用してもよい。本発明の乾燥食品をミンチ状若しくは細切する態様は、例えばチョッパー、サイレントカッター、細断機、スライサー等を使用して、ミンチ状又は細切れ状等に加工することが出来る、例えば、本発明の乾燥食品の大きさは縦×横×幅=1.0〜100mm×5.0〜100mm×5.0〜100mmの範囲、好ましくは肉様のスライス状である1.0〜10mm×5.0〜20mm×5.0〜30mmが好ましい。乾燥食品の形状は、粒状、棒状、円筒状、どのような形状でも欲する形状で使用すればよい。本発明の乾燥食品を得るための乾燥方法は、使用する原料の性状及び目的とする製品の所望形状によって適宜選択すれば良く、ドラム乾燥法、凍結真空乾燥法、噴霧乾燥法などいずれの方法で製造しても構わない。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例において、各種性状の測定および評価は以下の方法により行った。
乾燥食品中の脂質の抽出は、Bligh-Dyer法に準じて行った。POVの測定方法は、AOCS(AOCSCd86-90)に準じて行った。官能評価は、ビーカーに1gの各実施例で得た乾燥食品を入れ、この中に90℃の湯100mLを注ぎ入れ、5人のパネルに外観、官能、試食から製品性を考慮した官能評価試験を行った。評価の採点は、1(不良)〜5(良好)の5段階で行った。
(実施例1)
【0020】
食品用酸化防止剤として、α-リポ酸(100%、degussa社製)、ビタミンC(100%)、ビタミンE(20%乳化粉末)、レシチン(33%酵素分解レシチン乳化粉末)を使用し、表1に示す組合せのうち、α-リポ酸を除く2成分を、表1に示す濃度で水に溶解させた浸漬液を作成した。各々の該浸漬液250mLに、生ウナギの肝100gを、4℃で1時間浸漬させた。該浸漬後、該生ウナギの肝を浸漬したままで85℃達温後10分保持した。該加熱後ウナギの肝を分別し、α-リポ酸のみを水に溶解させた浸漬液250mlに室温1時間浸漬した。該浸漬後液とウナギの肝を分別した後、真空凍結乾燥し、凍結乾燥食品(ウナギの肝)を得た。各々の凍結乾燥食品(ウナギの肝)10gを密封式アルミパウチに充填し、40℃2週間静置保存した後、官能評価、並びに該凍結乾燥食品から抽出した脂質のPOV(過酸化脂質)の測定による酸化安定性試験を行った。なお、表1の各重量%は、原料である生ウナギの肝重量に対する重量%で示した。結果を表1に示した。
【0021】
【表1】

【0022】
凍結乾燥食品(ウナギの肝)における本発明の食品用酸化防止剤の酸化安定性試験を行った結果、食品用酸化防止剤としてα-リポ酸のみであっても、抗酸化効果が安定しており官能評価結果が良かった。また、α-リポ酸及びビタミンCを使用したサンプル5、α-リポ酸及びビタミンEを使用したサンプル6、α-リポ酸、ビタミンC及びビタミンEを使用したサンプル7においても、抗酸化効果が安定しており、風味が保存前と変らず官能評価結果も良好であり、食品用酸化防止剤として優れていることが示された。なお、凍結乾燥直後の、サンプル1のPOVは、1.4であった。
(実施例2)
【0023】
鶏ミンチ肉にプロテアーゼ(市販品)を添加し50℃で30分酵素反応を行い、鶏肉を液状にした後、加熱して該プロテアーゼを酵素失活し、品温を50℃以下までに冷却させ、原料である鶏肉エキス得た。該鶏肉エキスに、食品用酸化防止剤として、α-リポ酸(100%、degussa社製)、ビタミンCパルミテート(100%)、レシチン(33%酵素分解レシチン乳化粉末)を使用し、表2に示す組合せ並びに濃度で添加、混合した。次いで、ドラムドライ処理を行い、乾燥粉末(鶏肉エキスパウダー)を得た。各々の乾燥粉末(鶏肉エキスパウダー)100gを密封式アルミパウチに充填し、40℃3ヶ月静置保存した後、官能評価、並びに該ドラムドライ食品から抽出した脂質のPOV(過酸化脂質)の測定による酸化安定性試験を行った。なお、表2の各重量%は、原料である鶏肉重量に対する重量%で示した。結果を表2に示した。
【0024】
【表2】

【0025】
乾燥粉末(鶏肉エキスパウダー)における本発明の食品用酸化防止剤の酸化安定性試験を行った結果、食品用酸化防止剤としてα-リポ酸及びビタミンCパルミテートを使用したサンプル2、α-リポ酸及びレシチンを使用したサンプル3において、抗酸化効果が安定しており、風味が保存前と変らず官能評価結果も良好であった。鶏肉エキスパウダーの乾燥食品にも、本発明の食品酸化防止剤は効果があることが明らかとなり、食品用酸化防止剤として優れているばかりか、商品価値の高い乾燥食品を提供可能であるが示された。なお、ドラムドライ直後の、サンプル1のPOVは、0.8であった。
(実施例3)
【0026】
食品用酸化防止剤として、α-リポ酸(100%、degussa社製)、ビタミンC(100%)、ビタミンE(20%乳化粉末)、レシチン(33%酵素分解レシチン乳化粉末)を使用し、表3に示す組合せのうち、α-リポ酸を除く3成分を、表1に示す濃度で水に溶解させた浸漬液を作成した。各々の該浸漬液150mLに、生キャロット100gを、室温で10分間浸漬させた。該浸漬後、該生キャロットを浸漬したままで90℃達温後1分保持した。該加熱後キャロットを分別し、α-リポ酸のみを水に溶解させた浸漬液150mlに室温10分間浸漬した。該浸漬後液とキャロットを分別した後、該キャロットを真空凍結乾燥し、凍結乾燥食品(キャロット)を得た。各々の凍結乾燥食品(キャロット)5gを密封式透明パウチに充填し、室温で1週間、蛍光灯照射下で静置保存した後、目視による退色試験として、1(不良)〜5(良好、乾燥直後の色と同等)の5段階評価試験を行った。なお、表3の各重量%は、原料であるキャロットの原料重量に対する重量%で示した。結果を表3に示した。
【0027】
【表3】

【0028】
凍結乾燥食品(キャロット)における本発明の食品用酸化防止剤の酸化安定性試験を行った結果、食品用酸化防止剤としてα-リポ酸のみであっても退色防止効果を示した。また、α-リポ酸及びビタミンCを使用したサンプル3、α-リポ酸、ビタミンC及びビタミンEを使用したサンプル4、α-リポ酸、レシチン及びビタミンEを使用したサンプル5においても、退色評価が良く、乾燥直後の色と同等の効果で、かつ安定していた。風味についての官能評価結果も良好であり、食品用酸化防止剤として優れているばかりか、商品価値の高い乾燥食品を提供可能であるが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-リポ酸を含有してなる食品用酸化防止剤。
【請求項2】
α-リポ酸と、ビタミンC並びに/若しくはビタミンE並びに/若しくはレシチンを含有してなる食品用酸化防止剤。
【請求項3】
α-リポ酸を使用してなる食品用酸化防止剤の調整方法。
【請求項4】
請求項1〜2に記載の食品用酸化防止剤を使用してなる乾燥食品。
【請求項5】
原料が、畜産物、水産物、農産物の群から選択される少なくとも一種からなる請求項4記載の乾燥食品。

【公開番号】特開2006−333791(P2006−333791A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163318(P2005−163318)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000210067)池田食研株式会社 (35)
【Fターム(参考)】