説明

飽和色素を用いたアンプリコン溶融解析

少なくとも部分的に二本鎖である標的核酸を少なくとも50%の飽和%を有するdsDNA結合色素と混合して、混合物を形成する、核酸解析のための方法が提供される。一態様において、核酸を、dsDNA結合色素の存在下にて増幅し、そして別の態様においては、混合物を加熱するあいだ、dsDNA結合色素からの蛍光を測定することにより、標的核酸についての融解曲線を作成する。核酸解析において使用するための色素および色素を作製するための方法もまた、提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の属する技術分野
本発明は、二本鎖核酸結合性色素の存在下で、核酸解析を行う方法に関する。
【0002】
発明の背景
DNA配列変化を解析するための方法は、2種類の一般的なカテゴリーに分けることができる:1)既知配列変異体についての遺伝子型を決定すること、そして2)未知の変異体をスキャンすること。既知の配列変異体について遺伝子型を決定する方法は多数存在し、そして蛍光プローブを使用する一工程の均質的な閉鎖的チューブで行われる方法が利用可能である(Lay MJ, et al. , Clin. Chem 1997;43: 2262-7)。対照的に、未知変異体に関するほとんどのスキャン技術には、PCR後にゲル電気泳動またはカラム分離が必要とされる。これらには、一本鎖構造多型(Orita O, et al., Proc Natl Acad Sci USA 1989;86: 2766-70)、ヘテロ二本鎖移動度(Nataraj AJ, et al. , Electrophoresis 1999;20: 1177-85)、変性性勾配ゲル電気泳動(Abrams ES, et al., Genomics 1990;7: 463-75)、温度勾配ゲル電気泳動(Wartell RM, et al. , J Chromatogr A 1998 ;806: 169-85)、酵素または化学的切断方法(Taylor GR, et al. , Genet Anal 1999;14: 181-6)、ならびにDNA配列決定が含まれる。配列決定により新たな変異を同定するためには、PCR後に複数の工程、すなわち、サイクルシークエンシングおよびゲル電気泳動、も必要とされる。変性性高速液体クロマトグラフィー(Xiao W, et al., Hum Mutat 2001 ;17: 439-74)には、カラム中にPCR産物を注入することが含まれる。
【0003】
最近、均質的な蛍光的方法が、変異のスキャンのために報告された。SYBR(商標)Green I(Molecular Probes, Eugene, Oregon)は、二本鎖特異的なDNA色素であり、しばしばリアルタイムPCRにおける生成物の形成(Wittwer CT, et al., BioTechniques 1997;22: 130-8)および溶融温度(Ririe KM, et al., Anal. Biochem 1997;245: 154-60)をモニターするために使用される。ヘテロ接合性の一塩基変異の存在は、SYBR(商標)Green Iを用いた融解曲線解析により、167 bpまでの生成物で検出された(Lipsky RH, et al. , Clin Chem 2001;47: 635-44)。しかしながら、増幅に引き続いて、そして溶融解析の前に、PCR生成物を精製し、そして高濃度のSYBR(商標)Green Iを添加した。この方法において検出のために使用されたSYBR(商標)Green Iの濃度は、PCRを阻害し(Wittwer CT, et al., BioTechniques 1997;22: 130-1,134-8);したがって、色素は、増幅後に添加された。ヘテロ接合性一塩基変異の存在を検出するために使用することができそしてPCRの前に添加することができる色素が望まれている。
【0004】
一塩基多型(SNPs)は、ヒトおよびその他の種において観察された間違いなく最も一般的な遺伝子変異である。これらの多型において、一塩基のみが個体間で変化している。この変化は、タンパク質中のアミノ酸の変化をもたらす場合、転写の速度に変化をもたらす場合、mRNAスプライシングに影響する場合、または細胞のプロセスに一見すると何の影響ももたらさない場合、が存在する。しばしば、変化がサイレントである場合(例えば、その変異がコードするアミノ酸が変化しない場合)、その変異が別の遺伝子変化により生じる独特の表現型に連鎖する(関連する)場合に、SNP遺伝子型決定はそれでも価値がある場合がある。
【0005】
SNPsを遺伝子型決定するための方法は多数存在する。ほとんどのものは、PCRまたはその他の増幅技術を使用して、目的の鋳型を増幅する。ゲル電気泳動、マススペクトル、および蛍光を含む、同時的なまたは逐次的な分析技術を利用することができる。均質的でありかつ増幅の開始後に試薬を添加する必要または解析のために反応物を物理的にサンプリングする必要がない蛍光的技術が魅力的である。典型的な均質的技術では、目的の領域を特定するためのオリゴヌクレオチドプライマー、そしてシグナルの生成のための蛍光標識または蛍光色素を使用する。例示的なPCR-ベースの方法は、DNA変性温度に安定な熱耐性酵素を使用して、完全に閉鎖的なチューブに入れ、その結果加熱が開始した後、何も添加する必要がない。
【0006】
いくつかの閉鎖的チューブの均質的、蛍光的PCR法が、SNPsを遺伝子型決定するために利用可能である。これらには、2種の相互作用性発色団を有するFRETオリゴヌクレオチドプローブを使用する系(隣接型ハイブリダイゼーションプローブ、TaqManプローブ、モレキュラービーコン、Scorpions)、ただ一つの発色団を有する一つのオリゴヌクレオチドプローブを使用する系(G-消光プローブ、Crockett, A. O. and C. T. Wittwer, Anal. Biochem. 2001;290: 89-97およびSimpleProbes, Idaho Technology)、および共有結合した蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブではなくdsDNA色素を使用する技術、が含まれる。色素技術は魅力的なものである。というのも、標識オリゴヌクレオチドプローブが必要とされず、設計のための時間やアッセイのコストを減少させることができるからである。
【0007】
dsDNA色素を使用したSNPタイピングのための2種の技術が公開されている。dsDNA色素の存在下におけるアリル特異的増幅を使用して、リアルタイムPCRにより遺伝子型決定することができる(Germer S, et al. , Genome Research 2000;10: 258-266)。Germerの文献の方法において、2種のアリル特異的プライマーは、それぞれの3'-塩基が異なっており、そして共通のリバースプライマーの存在下において一方のアリルまたは他方のアリルを差別的に増幅する。蛍光標識オリゴヌクレオチドは必要とされない一方で、遺伝子型決定には、3種のプライマーと、それぞれのSNP遺伝子型のための2個のウェルが必要である。さらに、各サイクルの蛍光をモニターするリアルタイムPCR装置が必要である。
【0008】
別の色素ベースの方法は、リアルタイムモニタリングを必要とせず、SNP遺伝子型当たり1つのウェルのみを必要とし、そして溶融解析を使用する(Germer, S, et. al., Genome Research 1999;9: 72-79)。この方法において、前述のGermerの方法と同様に3種のプライマーを必要とするアリル特異的増幅も使用する。さらに、プライマーの一つには、1つのアンプリコン溶融温度を上昇させるGC-クランプテイル(clamp tail)が含まれ、1ウェル中での溶融温度による差異化が可能になる。蛍光は、PCR増幅後にモニターされ、リアルタイムの捕捉は必要とはされない。
【0009】
発明の概要
本発明の一側面において、標準的なPCR試薬、プライマー、PCRの前に“飽和状態の”二本鎖(ds)DNA結合性色素を添加することのみを必要とする方法が提供される。本発明の目的のための“飽和状態の”色素は、色素の不在下においてPCRにより典型的に生成されるdsDNAの量(例示するならば約1O ng/μL)に対して最大の蛍光シグナルをもたらす濃度で存在する場合に、PCRを顕著には阻害しない色素である。色素は、ほぼ飽和状態の濃度でPCRにそれらが適合していることにより同定されるが、色素をもっと低い濃度で使用することができることは理解される。増幅のあいだまたは増幅に引き続いて、色素を使用して、標識プライマーを使用する様式と同様の様式の融解曲線解析により、ヘテロ二本鎖とホモ二本鎖とを識別することができる。ヘテロ二本鎖とホモ二本鎖の同定は、変異スキャニングおよびSNP遺伝子型決定を含む様々な解析のために使用することができる。用語“スキャニング”は、核酸断片を参照核酸断片と比較して、配列中の何らかの変化の存在を検出する方法のことをいう。配列の相違が存在することを示す積極的な回答は、配列変化の正確な性質または核酸断片上のその位置を必ずしも反映するわけではない。用語“遺伝子型決定”には、SNPs、塩基の欠損、塩基挿入、配列重複、再構成、逆位、塩基メチル化、短いタンデムリピートの数;および二倍体ゲノムの場合、ゲノムが配列変化についてホモ接合性であるかヘテロ接合性であるか、ならびにDNA鎖上の2またはそれ以上の配列変化のシス/トランス位置的関係(ハプロタイプ)が含まれる(しかしこれらには限定されない)、既知の核酸配列変化の検出および決定が含まれる。
【0010】
本発明の別の側面において、様々なdsDNA結合性色素が同定される。本発明のdsDNA結合色素は、増幅のあいだまたは増幅の後のDNAに関して、十分に飽和性な条件であるが、PCRの阻害は最小にする条件で、存在することができる。例えば、最大PCR-適合性濃度では、dsDNA結合色素は、少なくとも50%の飽和%である。別の態様において、飽和%は、少なくとも80%、そしてより具体的には、少なくとも90%である。さらに別の態様において、飽和%は、少なくとも99%である。飽和%は、飽和性の濃度(すなわち、予め決められた量のdsDNAの存在下にて可能な最高の蛍光強度をもたらす濃度)で、同一の色素の蛍光と比較した蛍光%であると理解される。説明するならば、予め決められた量のdsDNAは、100 ng/10μLであり、この量はプラトーに達した典型的なPCRで最終的に生成されるDNAの量である。色素調製物は、増幅を阻害する不純物を含有していてもよいことが、さらに理解される。このような不純物は、飽和%の測定の前に除去すべきものである。飽和%に関する蛍光強度の決定は、dsDNAに結合した色素の検出のために十分に適合した波長でおこない、そして可能であれば、遊離の色素由来の高いバックグラウンドの蛍光を検出する波長ではなく、または高い色素:bp比で生じうる色素結合の二次的形態(例えば、dsDNA-色素複合体に対する色素の結合または一本鎖核酸に対する色素の結合)ではなく、行うこともまた、理解される。
【0011】
本発明のさらに別の側面において、dsDNA結合色素は、最大PCR適合性濃度における50%より高い飽和度を有し、そして標準的なリアルタイムPCR装置との適合性を示唆しない励起/放射スペクトルとを有する。リアルタイムPCR解析のための“標準的な”装置は、約450〜490 nmの励起範囲および約510〜530 nmの放射検出範囲を有する。特定の“青色”色素は、それらの励起/放射スペクトルから適合しないと示唆されていたものの、これらのシステムと適合性であることが見いだされた。このように、本発明のこの側面において、dsDNAの存在下にてPCRバッファー中にて測定する様に、標準的なリアルタイムPCR装置、および410〜465 nmの範囲に、より具体的には430〜460 nmの範囲に励起極大を有し、そして450〜500 nmの範囲に、より具体的には455〜485 nmの範囲に放射極大を有するdsDNA結合色素を使用するPCRのあいだまたはPCRに引き続く、解析を提供する。適切な装置は、上述の励起/検出範囲を使用することができ、または色素の励起極大/放射極大にしたがって修飾することができる。本発明の“青色”色素を検出するためのそしてフルオレセインやSYBR(商標)Green Iなどのこれまでも存在していた色素を検出するための適切な範囲は、励起に関して440〜470 nmが含まれ、そして検出に関して500〜560 nmが含まれうる。
【0012】
一態様において、色素は、LightCycler Green(または、同義的に、LC Green)として同定された色素である。LC Greenの合成は以下に教示され、そして、LC Greenの励起/放射スペクトルは、図11中に示される。LC Greenの追加的な特性は、表1中に示される。同様に、表1において機能可能であるとして同定されたその他の色素を、本発明の範囲内において使用することができる。これらの色素のうちのあるものの正確な構造はこれまでのところ未知であるが、それらは非対称性シアニン類であると考えられており、そして、これらの蛍光核酸色素の様々な特性は、表1中に示される。
【0013】
本明細書中で提供される事例が融解曲線解析に関するものであるのに対して、本発明の色素は、核酸の定量、初期濃度の測定、核酸の存在についての試験、標識プローブによる多重化、そしてその他のPCRベースの方法、を含む、様々なリアルタイム定量的PCR解析のために使用することができることが理解される。
【0014】
さらに、PCRについての言及がなされているのに対して、その他の増幅方法が本発明の色素と適合性であってもよい。そのような適切な手順には、鎖置換増幅(SDA);核酸配列ベースの増幅(NASBA);カスケードローリングサークル増幅(CRCA)、Qβレプリカーゼ媒介性増幅;等温性かつキメラプライマーで開始される核酸増幅(ICAN);転写媒介性増幅(TMA)などが含まれる。したがって、用語PCRが使用される場合、その他の代替的増幅方法が含まれることを理解すべきである。
【0015】
さらに、dsDNA結合色素には、インターカレーター、ならびに色素が二本鎖および一本鎖核酸に対して差別的に結合する限り、またはそうでない場合には二本鎖核酸の量に基づいて差別的なシグナルを発生する限り、核酸に結合するその他の色素、が含まれることが、理解される。
【0016】
このように、本発明には、定量的増幅解析および定性的増幅解析において使用するための、本明細書中で記載される1またはそれ以上の二本鎖結合性色素が含まれる。本発明の一側面において、標的核酸、PCR試薬、標的核酸を増幅する様に設計されたオリゴヌクレオチドプライマー、および少なくとも50%の飽和%を有するdsDNA結合色素を含むPCR反応混合物が提供される。
【0017】
本発明の別の側面において、核酸解析のための方法が提供される。一態様において、少なくとも50%の飽和%を有するdsDNA結合色素の存在下にて標的核酸を増幅する工程、増幅された標的核酸を融解して融解曲線を作成する工程、そして融解曲線から遺伝子型を同定する工程、を含む、遺伝子型決定の方法が提供される。別の態様において、少なくとも50%の飽和%を有するdsDNA結合色素を標的核酸を含むサンプルに対して添加する工程、dsDNA結合色素の存在下にて標的核酸を増幅する工程、増幅された標的核酸を溶解して融解曲線を作成する工程、第2のサンプルに対して工程(b)および工程(c)を繰り返して第二の融解曲線を得る工程、そしてこれらの融解曲線を比較する工程、を含む、変異スキャニングの方法が提供される。さらに別の態様において、少なくとも50%の飽和%を有するdsDNA結合色素を標的核酸および標的核酸を増幅するために設計されたプライマーを含むサンプルと混合する工程、dsDNA結合色素の存在下にて標的核酸を増幅する工程、そしてdsDNA結合色素の蛍光をモニターする工程、を含む、PCR解析の方法が提供される。モニタリングは、増幅のあいだ、増幅に引き続いて、またはその両方で行うことができる。
【0018】
本発明のさらに別の側面において、dsDNA結合色素を標的核酸および標的核酸を増幅するために設計されたプライマーを含むサンプルと混合する工程、dsDNA結合色素の存在下にて標的核酸を増幅する工程、dsDNA結合色素の蛍光をモニターする工程、標的核酸について融解曲線を作成する工程、融解曲線を正規化する工程、混合、増幅、正規化、および作成の工程を少なくとも1つの追加の標的核酸を用いて繰り返す工程、そして正規化された融解曲線を比較する工程、を含むPCR解析の方法の工程を含む方法が提供される。
【0019】
本発明のさらなる側面において、少なくとも一部が二本鎖である標的核酸を少なくとも50%の飽和%を有するdsDNA結合色素と混合して混合物を形成する工程、そして混合物を加熱するにしたがってdsDNA結合色素から得られる蛍光を測定することにより標的核酸についての融解曲線を作成する工程、を含む核酸解析のための方法が提供される。
【0020】
さらなる側面において、増幅試薬、標的核酸を増幅する様に設計されたオリゴヌクレオチドプライマー、および少なくとも50%の飽和%を有するdsDNA結合色素を含むキットが提供される。本明細書で検討された色素のいずれがキット中で使用されていてもよい。
【0021】
本明細書中で記載するように、様々なdsDNA結合性色素を本発明の態様において使用することができる。
本発明のさらなる特徴は、例示的態様についての以下の詳細な説明を考慮すれば、当業者にとって明らかであろう。
【0022】
詳細な説明
SYBR(商標)Green Iは、PCRのあいだに大幅な蛍光の変化を示すため、融解解析のために広範囲にわたって使用されている色素である(Wittwer CT, et al., Biotechniques 1997;22: 130-1, 134-8;Wittwer CT, et al. , Real-Time PCR. In: Persing D, et al., eds. Diagnostic Molecular Microbiology: Principles and Applications. ASM Press, 2004: in press)。考えられる所では、そのような色素は、ホモ接合性の遺伝子型決定およびヘテロ接合性配列変化についてのスキャニングの両方について使用することができた。SYBR(商標)Green Iをはじめに融解解析において使用して、Tmが2℃またはそれ以上異なる異なるPCR生成物を識別した(Ririe KM, et al., Anal Biochem 1997;245: 154-160)。次に、SYBR(商標)Green Iを使用して、欠失を同定し(Aoshima T, et al. , Clin Chem 2000;46: 119-22)、ジヌクレオチドリピートを遺伝子型決定し(Marziliano N, et al. , Clin Chem 2000 ;46: 423-5)、そして様々な配列変化を同定した(Lipsky RH, et al. , Clin Chem 2001. ;47: 635-44;Pirulli D, et al. , Clin Chem 2000 ;46: 1842-4;Tanriverdi S, et al. , J Clin Microbiol. 2002;40: 3237-44;Hladnik U, et al. , Clin Exp Med. 2002;2: 105-8)。しかしながら、遺伝子型間でのTmの相違は小さいはずであり、そして現在の装置の解像度には要求が高いかもしれない。実際、SYBR(商標)Green Iは、“ルーチンの遺伝子型決定の用途のためには使用すべきでない”(von Ahsen N, et al. , Clin Chem 2001;47: 1331-1332)と示唆された。一般的に使用される二本鎖特異的DNA色素を用いた融解曲線遺伝子型決定には、融解転移の拡大を伴ったTmの上昇が含まれていてもよく(Douthart RJ, et al., Biochemistry 1973;12: 214-20)、そして遺伝子型間でのTmの差異の圧縮が含まれていてもよい(図5D)。これらの因子は、遺伝子型決定に関するSYBR(商標)Green Iの潜在能力を低下させる。
【0023】
ヘテロ接合性DNAの増幅は、変性しそして冷却すると、4種の異なる一本鎖を生成し、それらが2種のホモ二本鎖生成物および2種のヘテロ二本鎖生成物を作成する。理論的には、4種の生成物すべては、異なるTmを有し、そして融解曲線は、一本鎖転移に対する4種の二本鎖すべての構成物であるべきである。しかしながら、二本鎖特異的DNA色素は、融解のあいだで再分配される場合があり(Aktipis S, et al. , Biochemistry 1975;14: 326-31)、低融解性ヘテロ二本鎖からの色素の放出およびより高い融解性ホモ二本鎖への再分配が生じる可能性がある。SYBR(商標)Green IはPCRに適合性の濃度では飽和性ではないため(Wittwer CT, et al., Biotechniques 1997;22: 130-1, 134-8;図9)、そのような再分配は、もっともらしくそしてヘテロ二本鎖転移が存在しないことと一致している(図5D)。
【0024】
本発明のLightCycler Greenおよびその他の色素を、遺伝子型決定の用途およびスキャニングの用途のために使用することができる。唯一のPCR生成物が増幅され、その配列がホモ接合性である場合、ホモ二本鎖のみが形成される。本発明の色素を用いると、異なるホモ二本鎖遺伝子型間でのTmの差異が圧縮され(図5C)、そして遺伝子型間の明確な差別化が可能になる。本発明の色素は、反応物中に存在する複数の生成物(具体的にはホモ接合性である複数の部位またはホモ接合性である複数の標的の増幅から生成されたホモ二本鎖)を同定しそして識別することもできる。対照的に、ほとんどの時間は、SYBR(商標)Green Iを用いて数種の生成物のみを観察することができる。これはおそらく、色素再分布のためである(図7Aを参照)。
【0025】
1またはそれ以上のヘテロ接合性の標的が増幅される場合、本発明の色素を用いて、ヘテロ二本鎖生成物を容易に観察することができる。ヘテロ二本鎖を検出しそして同定する能力は、ヘテロ接合性遺伝子型を検出するため、ならびに未知の変異をスキャニングするため、特に有用である。このことは、リアルタイムPCRで使用される従来のdsDNA色素であってヘテロ二本鎖生成物を観察することができないもの、例えばSYBR(商標)Green I、SYBR(商標)Gold、およびエチジウムブロマイドでは、可能ではない。
【0026】
ヘテロ二本鎖は、それらの完全な相補性により再会合し、そして融解中にホモ二本鎖を形成することができる。PCRの最後の時点での生成物濃度が高いため、この再会合は、迅速に生じる。再会合は、時間を限定することにより最小化することができ、生成物は、特にヘテロ二本鎖生成物のTmとホモ二本鎖生成物のTmとのあいだでは、ほぼそれらの溶融温度である。融解中の鎖の再会合に加えて、ある鎖と完全に適合した鎖とのハイブリダイゼーションまたはある鎖とミスマッチがある相補鎖とのハイブリダイゼーションは、冷却速度により影響を受ける。本明細書中で提示した条件下では、ヘテロ二本鎖形成は迅速に冷却することによりもっとも好ましい状態になり、そしてしばしば-0.1℃/s未満のゆっくりした速度ではしばしば消失する(図2)。冷却速度がずっとゆっくり(-0.01〜約-0.02℃/s)であるが、しかし、ヘテロ二本鎖は、効率的に形成される場合、このことは、変性性HPLC技術とは対照的である(Xiao W, et al. , Hum Mutat 2001;17: 439-74)。おそらくは、ホモ二本鎖形成とヘテロ二本鎖形成の相対的速度は、生成物のサイズに強力に依存しており、そして小型のアンプリコンを使用して得られた結果は、dHPLCにおいてより一般的に使用されるより大型の生成物については、典型的ではない可能性がある。
【0027】
ホモ接合性の遺伝子型間での識別は、よりゆっくりとした速度で、より長い解析時間を使いながら融解することにより、改善することができる。融解曲線遺伝子型決定における可能性のある誤差の一つの源は、Tmに対するDNA濃度の作用である。50%GC含量のランダムな100 bpアンプリコンをPCR条件下で使用して、0.05μMおよび0.5μMでの生成物間のTmの差異は、約0.7℃である(von Ahsen N, et al. , Clin Chem 2001;47: 1956-61;Wetmur JG, Crit Rev Biochem Mol Biol 1991;26: 227-59)。この変化は、異なるホモ接合性の遺伝子型のTmが非常に近接している場合に重要になる場合がある。しかしながら、異なるPCRサンプルは、同一の生成物濃度でプラトーに達する傾向があり、そのため増幅後濃度の相違は、通常最小である。同様に、リアルタイム蛍光によりアンプリコン濃度を推定することができ、そしてより高い厳密さでの遺伝子型決定についてTmを調整することができる。あるいは、非対称性PCRを使用して、PCR生成物の最終濃度を自動的に限定することができる。
【0028】
LightCycler Greenにより、すべての1塩基ヘテロ接合体をホモ接合体から識別することができる。ヘテロ接合体の検出において、絶対的な溶融温度およびDNA濃度の影響は、ホモ接合性遺伝子型間の差別化に関する方法におけるよりも、重要ではない。ヘテロ二本鎖は、融解曲線の形状に、特に転移の“初期”の低温の時の形状に、影響を与える。異なる融解曲線は、X-軸を転移の“後期の”高温度部分を追加するように平行移動させることにより、温度に適合性なものにすることができる。その後、ヘテロ二本鎖の存在または非存在を、より高い正確性を伴って推測することができる。
【0029】
装置の厳密性にかかわらず、いくつかの遺伝子型は、Tmがほぼ同一になるだろう。同一のTmを有するホモ接合性変異体を検出する一つの方法は、その変異体を一緒に混合することである。得られたヘテロ二本鎖は、ホモ二本鎖よりも低い温度で溶融し、主要な融解転移よりも前に正規化された融解曲線の低下として示されるだろう。
【0030】
このように、現在利用可能なPCR増幅装置を使用して、LightCycler Greenは、SYBR(商標)Green Iを用いては現在のところ同定することができない融解曲線転移におけるヘテロ二本鎖を、同定することができる。SYBR(商標)Green Iが低融解性転移を容易には同定することができない理由の一つの可能性は、図7A中に示される。安定性が増大するいくつかのDNA断片が存在する場合、低温でのピークは、LightCycler Greenと比較した場合、SYBR(商標)Green Iでは非常に小さい。融解のあいだ、SYBR(商標)Green Iは、低温の二本鎖から放出され、より高い温度で融解する二本鎖に結合するのみである可能性がある。このことは、もし検出可能なのであれば、それぞれが、前にでてきたピークよりも高いような継続的なピークを引き起こし、もっとも低い温度でのピークが非常に小さいものである。図7Bにおいて示されるように、低温融解生成物は、LightCycler Greenでは容易に検出されるが、SYBR(商標)Green Iによっては検出されない。
【0031】
LC Greenを使用する利点により、PCRに適合性でありPCR適合性濃度での遺伝子型決定に適しているその他のdsDNA色素が同定された。本発明の方法において有用である色素の多くが、シアニンのファミリーに属する。シアニン色素は、2つの窒素含有ヘテロ環を連結する鎖で配列された、1またはそれ以上の二価の部分“-C (R) =”を含有する色素である。基“R”は、水素またはいずれかの炭素置換基であってもよく、そして例示的には、水素またはC1-6アルキルを含む、場合により置換されていてもよいアルキルである。1つ以上の二価部分“-C (R) =”を有するシアニン色素においては、それぞれの“R”は独立して選択されていてもよいことが理解される。さらに例示的な本明細書中で記載される一般式により定義されているように、このようなシアニン色素は、単量体または二量体であってもよい。シアニン色素に加えて、本明細書中では、dsDNA結合性色素のその他のファミリーもまた、本明細書中で記載されるPCR反応混合物、方法、およびフェナントリジニウム(phenanthridinium)インターカレーターおよびフェナントロリン(phenanthroline)ベースのメタロインターカレーターを含む(これらには限定されない)組成物において有用であることが企図される。
【0032】
本発明のPCR反応混合物、方法および組成物において有用な例示的な色素には、PO-PROTM-1、BO-PROTM-1、SYTO(商標)43、SYTO(商標)44、SYTO(商標)45、SYTOX(商標)Blue、POPOTM-1、POPOTM-3、BOBOTM-1、BOBOTM-3、LO-PROTM-1、JO-PROTM-1、YO-PROTM-1、TO-PROTM-1、SYTO(商標)11、SYTO(商標)13、SYTO(商標)15、SYTO(商標)16、SYTO(商標)20、SYTO(商標)23、TOTOTM-3、YOYOTM-3(Molecular Probes、Inc., Eugene, OR)、GelStar(商標)(Cambrex Bio Science Rockland Inc., Rockland, ME)、チアゾールオレンジ (Aldrich Chemical Co. , Milwaukee, WI)および本明細書中で記載される新規な色素G5、H5、D6、E6、P6、R6、Y6、Z6、およびD8が含まれる。
【0033】
本明細書中で記載するPCR反応混合物、方法、および組成物において使用するための例示的なシアニン色素には、ピリジニウム、ピリミジニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、またはプリニウムのコア構造を有する非対称性のシアニン単量体または二量体、および以下の式Iにより一般的に記載されるものも含まれる:
【0034】
【化1】

【0035】
ここで、部分
【0036】
【化2】

【0037】
は、場合により置換され融合されている単環式または多環式芳香環または窒素-含有ヘテロ芳香環を示し;
Xは、酸素、イオウ、セレニウム、テルリウム、またはC(CH32およびNR1から選択される基であり、ここでR1は水素またはC1-6アルキルまたはC2-6アルキルを含むアルキルであり;
R2は、C1-6アルキルおよびC2-6アルキルを含むアルキル、C3-8シクロアルキルを含むシクロアルキル、アリール、アリール(C1-2アルキル)を含むアリールアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキルおよびジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキル、アルキルおよびアリールカルボニル、アルキルおよびアリールカルボキサミド、アルキルおよびアリールスルホニル、アルキレンカルボキシレート、アルキレンカルボキサミド、アルキレンスルホネート、アルキレンスルホン酸など、環状ヘテロ原子-含有部分、または非環状ヘテロ原子-含有部分であり、これらのそれぞれは、場合により置換されていてもよく;
例示的なヘテロ原子含有部分には、メトキシメチル、エトキシエチルなどを含む場合により置換されたヘテロアルキル、ピペリジニルなどを含むヘテロシクリル、メチルスルホネート、4-クロロフェニルスルホネートなどを含むアルキルおよびアリールスルホネート、メトキシ、エトキシなどを含むアルコキシ、メチルアミノ、ジメチルアミノなどを含むアミノ、アルキルおよびアリールカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アルコキシカルボニルなどを含むカルボニル誘導体、アルケニルアミノアルキル、アルケニルオキシアルキル、アルキルアミノアルケニル、アルキルオキシアルケニル、アルキリデンアミノアルキルなどを含むヘテロアルケニル、ヘテロアリル、エステル類、アミン類、アミド類、リン-酸素、およびリン-イオウ結合が含まれ;およびU. S.特許No. 5,658,751およびPCT国際公開WO 00/66664中に記載されるヘテロ原子-含有部分を含むものが含まれ;それぞれの開示は、全体を本明細書中に援用する;
t = 0または1であり;
Zは、0または1から選択される電荷であり;
R3、R9、およびR10は、それぞれ独立して水素およびC1-6アルキルおよびC2-6アルキルを含むアルキルから選択され;
n=0、1、または2であり;そして
Qは、ピリジニウム、ピリミジニウム、キノリニウム、またはプリニウムなどのヘテロ環であり、それらのそれぞれは場合により置換されていてもよい。
【0038】
本明細書中で使用する場合、用語“アルキル”は、例示的には、メチル(Me)、エチル、プロピル、ブチル、ドデシル、4-エチルペンチルなどを含む(しかしこれらには限定されない)、直鎖または場合により分岐鎖の1〜約12個の炭素分子を含む炭化水素部分のことを一般的にはいう。
【0039】
本明細書中で使用する場合、用語“シクロアルキル”は、例示的には、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、2,3-ジメチルシクロペンチル、3,5-ジメチルシクロヘキシルエチルなどを含む(しかしこれらには限定されない)、少なくともその一部が1または2環を形成する、3〜約14炭素原子を含む直鎖または場合により分岐鎖の炭化水素部分のことを一般的にはいう。
【0040】
本明細書中で使用する場合、用語“アリール”は、例示的には、フェニル(Ph)、ナフチル、フリル、チエニル、ピロロ、ピラゾロ、イソキサゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、キナザリニルなどを含む(しかしこれらには限定されない)、環状芳香族部分のことを一般的にはいう。
【0041】
本明細書中で使用する場合、用語“場合により置換される”は、炭素原子、窒素原子、酸素原子、またはイオウ原子上に存在するものも含め、親基上に存在する1またはそれ以上の水素原子を、置換基、たとえば、ハロ;ヒドロキシ;アミノ;チオ;アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、ハロシクロアルキル;アルコキシ、シクロアルコキシ、ハロアルコキシ;モノアルキルおよびジアルキルアミノ;アミノアルキル;モノアルキルおよびジアルキルアミノアルキル;アルキルチオ;アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、およびアリールカルボニル;アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、およびアリールカルボニルオキシ;アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、およびアリールスルホニル;およびカルボニル誘導体、カルボン酸類、エステル類、およびアミド類など、により場合により置換したもののことを一般的にはいう。一つの原子に1対の原子が結合した(geminal)水素および2個以上の原子が隣接関係にある(vicinal)水素を含む隣接する水素原子の置換は、そのような隣接する水素を置換する置換基は、一緒になってそれぞれスピロ環または融合環を形成する様なものであってよいことが認識される。
【0042】
上述した用語のそれぞれは、本明細書中で定義されるアルキル基に結合される本明細書中で定義されるアリール基を意味するアリールアルキルなどのその他の部分のことをいうために化学的に相応の方法において混合して使用することができ、ベンジル、フェネチル、ピコリニル、3,5-ジメトキシピコリン-4-イルなどを含む(しかし、これらのものには限定されない)構造を形成することができることが、認識される。
【0043】
本明細書中に記載するシアニン色素構造は、キラル中心を含有していてもよいことが、認識される。そのような場合、すべての立体異性体は、特に別の記載がある場合以外は、これらのシアニン色素構造の記載中に含まれるものと理解される。そのような立体異性体には、純粋で場合により活性な異性体、ラセミ混合物、およびいずれかの相対量の1またはそれ以上の立体異性構造を含有する、ジアステレオマーの混合物が含まれる。
【0044】
本明細書中に記載するシアニン色素構造は、幾何学的中心を含有していてもよいこともまた、認識される。そのような場合、すべての幾何学的異性体は、特に別の記載がある場合以外は、シアニン色素構造の記載に含まれるものと理解される。そのような幾何学的異性体には、純粋な形態で、または様々な幾何学的構造の混合物で、シス、トランス、E異性体およびZ異性体が含まれる。シアニン色素構造中に含有される二重結合の性質に依存して、そのような二重結合異性体が、シスとトランスとのあいだで、またはE構造とZ構造とのあいだで、溶媒組成、溶媒極性、イオン化強度などの条件に依存して、互いに置換されうることもまた、理解される。
【0045】
電荷Zが0よりも大きい場合、式Iの化合物のいくつかの互変異性体がそのような互変異性体の混合物を含む形状で存在しうることが、さらに認識される。例示的には、電荷Zは、式Iにおいて示される場合には、外見上は窒素原子上に位置するか、または2種のヘテロ環を連結するポリエンリンカーを形成する炭素原子の一つ上に位置するか、あるいはこの電荷は、ヘテロ環Q上に位置するかであってもよい。式Iの電荷を有する化合物の互変異性体は、式Iの化合物の二重結合-一重結合構造を再配列させることにより、示すことができ、例えば、例示的な構造:
【0046】
【化3】

【0047】
ここで
【0048】
【化4】

【0049】
、X、R2、R3、R9、R10、およびQは、式Iについて定義したとおりであり、そしてt=l、Z=1、およびn=1である。本明細書中に記載するシアニン色素化合物には、いくつかの可能性のある互変異性体、またはそれらの互変異性体の様々な平衡な混合物のいずれかが含まれる。外見上の電荷の位置は、部分:
【0050】
【化5】

【0051】
、X、R2、R3、R9、R10、およびQの性質により影響を受けることが理解される。好ましい互変異性体または互変異性体の平衡な混合物は、溶媒組成、溶媒極性、イオン化強度、製剤などの条件に依存しうることがさらに理解される。用語“共鳴構造”もまた、これらの様々な電荷局在のことを言い、そして同様に上述した式の既述であることが理解される。
【0052】
式Iの化合物は、Zが1であるなどの正味の電荷を有する場合、あるいは式Iの化合物上にアンモニウム基やまたはスルホン酸基などの荷電置換基が存在する場合、式Iのこれらの化合物は、対イオンを付随することが理解される。1価、2価または多価の対イオンのいずれかが、本明細書中に含有されるシアニン色素構造の記載に含まれる。例示的な対イオンには、ヨウ化物、塩化物、臭化物、水酸化物、オキシド、アセテート、トリフルオロアセテート、モノホスフェート、ジホスフェート、トリホスフェートなどの負に荷電した対イオン、およびリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、アンモニウム、ポリアルキルアンモニウムなどの正に荷電した対イオンが含まれる。そのような対イオンは、使用した合成方法、精製プロトコル、またはその他のイオン交換工程に起因する可能性がある。
【0053】
対イオンの性質およびタイプは、本明細書中で記載されるシアニン色素の機能性には影響を与えないようであることが理解される。本明細書中に記載する色素が、溶媒または本明細書中に記載されるPCR反応混合物、方法、および組成物を実施するために使用される溶媒またはその他の媒体中に溶解される場合、付随する対イオンは、溶媒中またはその他の媒体中に存在するその他の対イオンと交換され得ることが認識される。そのような追加的な対イオンは、溶媒イオン、塩、バッファー、および/または金属であってもよい。
【0054】
基R2が、t=Z=0である式Iの親化合物:
【0055】
【化6】

【0056】
と式R2-Lを有する化合物(ここでLは、適切な脱離基であり、そしてR2は上記に定義した通りである)とのあいだでの求核性の反応に起因する事実上どのような基であってもよいことが認識される。例示的には、R2は、場合により置換されたアルキル、アシル、アリール、スルホン酸、またはスルホニル基であり、そのそれぞれは場合により置換されていてもよい。例示的な脱離基Lには、ハロゲン化物(塩化物および臭化物)、アシレート(acylate)(アセテート、ホルメート(formate)、およびトリフルオロアセテートなど)、スルホネート(メチルスルホネート、トリフルオロメチルスルホネート、トリルスルホネート)、スルフェート(メチルスルフェートなど)が含まれるが、これらには限定されない。
【0057】
例示的な一態様において、Qは、以下の式:
【0058】
【化7】

【0059】
ここで、R4、R5、R6、R7、R8、R11、R12、R13およびR14は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルケニル、ポリアルケニル、アルキニル、ポリアルキニル、アルケニルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、およびジアルキルアミノからなる群から選択され、そのそれぞれは場合により置換されていてもよい;
のヘテロ環であるが、これらには限定されない。
【0060】
例示的な別の態様において、R4、R5、R6、R7、R8、R11、R12、R13、およびR14の一つは、U. S. 特許No. 5,658,751に記載されるヘテロ原子-含有部分である。例示的な別の態様において、R4、R5、R6、R7、R8、R11、R12、R13、およびR14の一つは、ハロゲン類、ヒドロキシ類、アルコキシド類、アミン類、カルボン酸類、ハロゲン化物類、アルコール類、アルデヒド類、チオール類、アルキル類、およびアリールチオール類、アルキル類およびアリールスルホニル類、スクシンイミジルエステル類、ケトン類、およびイソチオシアネート類であって例示的には炭素-炭素結合の形成を通じて部分を色素のコア構造に対して結合するために使用することができるもの、アミン類、アミド類、エーテル類、チオエーテル類、ジスルフィド類、ケトン類、チオウレア類、およびSchiff塩基類を含む、(しかしこれらには限定されない)反応基である。例示的な別の態様において、R4、R5、R6、R7、R8、R11、R12、R13、およびR14の一つは、以下の式:を有するBRIDGE-DYEである
【0061】
【化8】

【0062】
ここで、
【0063】
【化9】

【0064】
、X、R2、t、Z、R3、R9、R10、Q、およびnは、式Iについて定義した通りであり、そしてBRIDGEは、一重共有結合、または炭素、窒素、ホスフェート、酸素、およびイオウなどの1-16個の非-水素原子を有する、直鎖または分岐鎖、環状またはヘテロ環状、飽和または不飽和である共有結合であり、その結果、結合が、アルキル、エーテル、チオエーテル、アミン、エステル、またはアミド結合;一重、二重、三重、または芳香族炭素-炭素結合;リン-酸素、リン-イオウ、窒素-窒素、または窒素-酸素結合;あるいは芳香族またはヘテロ芳香族結合のいずれかの組み合わせを含有する。いくつかの態様において、この二量体構造は、BRIDGEに関して対称性であり、そして別の態様において、この二量体構造は、BRIDGEに関して非対称性であることが認識され、ここで、例えば、
【0065】
【化10】

【0066】
、X、R2、t、Z、R3、R9、R10、およびnのいずれかが、それぞれ独立して、BRIDGEのどちらかの側でのそれぞれの場合に選択される。
本発明において使用するための例示的な色素には、ピリジニウムまたはピリミジニウムコア構造を有する式Iのシアニン色素も含まれ、ここでXは酸素またはイオウであり;部分
【0067】
【化11】

【0068】
は、場合により置換され融合されているベンゾ、場合により置換融合されているナフタレノ、場合により置換融合されているピリジノ、場合により置換融合されているミリミジノ、場合により置換融合されているキノリノなどを示し;n = 0または1であり;t = 0または1であり;R2はメチルおよびエチルなどのアルキル、フェニルまたはトリルなどの場合により置換されたアリール、プロピレンスルホン酸などのアルキレンスルホネート、またはCH3(CH2mSO2(ここでmは0、1、2、または3である)などのアルキルスルホニル;およびQは以下のものからなる構造の群から選択されるヘテロ環であり:
【0069】
【化12】

【0070】
ここで、R4は、水素;メトキシ、エトキシ、プロピルオキシなどを含むアルコキシ;メチルチオ、エチルチオなどを含むアルキルチオ;場合により置換されたピペリジニル、ピロリジニル、ピペラジニルなどを含むヘテロシクリルアルキル;または、4,4-ジメチルピペラジニウム-1-イルなどを含む荷電された基を含むヘテロシクリルアルキル;またはハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、チオ、アルキルおよびアリールチオ、アルキルおよびアリールスルホニル、アミノ、ホルミル、アルキルおよびアリールカルボニル、カルボキシル誘導体などを含む反応性基であり;
R5は、メチル、エチル、ブチル、sec-ブチル、イソブチルなどを含むC1-6アルキル;場合により置換されたフェニル;または(CH23N+(Me)3;そして
R6、R7、およびR8はそれぞれ独立して、水素またはメチルである。
【0071】
本明細書中で使用するための例示的な色素にはまた、ピリジニウムまたはピリミジニウムのコア構造を有する式Iのシアニン色素が含まれ、ここでXは酸素またはイオウであり;部分
【0072】
【化13】

【0073】
は、場合により置換されたベンゾキサゾリウムまたはベンズチアゾリウム環を形成する場合により置換され融合されているベンゾを示し、または場合により置換されたナフトキサゾリウムまたはナフトチアゾリウム環を形成する場合により置換され融合されているナフトを示し;n = 0または1であり;t = 0または1であり;R2はメチルなどのアルキル、フェニルまたはトリルなどのアリール、プロピレンスルホン酸などのアルキレンスルホネート、またはCH3(CH2mSO2(ここでmは0、1、2、または3である)などのアルキルスルホニルであり;そしてQは4-ピリジニウムまたは4-ピリミジニウムヘテロ環である。
【0074】
本明細書中で使用するための例示的な色素にはまた、本明細書中に記載するPCR反応混合物、方法、および組成物において有用な、キノリニウムコア構造を有し、および式IIにより一般的に記載される、シアニン色素も含まれる:
【0075】
【化14】

【0076】
ここで、部分
【0077】
【化15】

【0078】
は、場合により置換され融合されている単環式または多環式芳香環または窒素-含有ヘテロ芳香環を示し;
Xは、酸素、イオウ、またはC(CH32、およびNR1(ここでR1は水素またはC1-6アルキルである)から選択される基であり;
R2はC1-6アルキルおよびC2-6アルキルを含むアルキル、C3-8シクロアルキルを含むシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキレンスルホネート、環状ヘテロ原子-含有部分、または非環状ヘテロ原子-含有部分であり、このそれぞれは場合により置換されていてもよく;
t = 0または1であり;
Zは0または1から選択される電荷であり;
R3、R9、およびR10はそれぞれ独立して、水素およびC1-6アルキルを含むアルキルから選択され;
n=0、1、または2であり;そして
R4、R5、R8、R11、R12、R13、およびR14は、式Iについて本明細書中で記載した通りであり、ただしR4は、約115よりも少ない分子量を有するか、または例示的には約105よりも少ない分子量を有する部分である。
【0079】
本発明中で使用するための例示的な色素には、式IIのシアニン色素もまた含まれ、ここで部分
【0080】
【化16】

【0081】
は、場合により置換され融合されているベンゾを示し、それによりベンズオキサゾリウムまたはベンズチアゾリウム環を形成し;
Xは酸素またはイオウであり;
n = 0または1であり;
t = 0または1であり;
R2はメチルであり;
R4は水素、メチルを含むC1-6アルキル、または場合により置換されているフェニルであり;
R5はメチルを含むC1-6アルキル、または場合により置換されているフェニルであり;
R8は水素であり、そして
R11、R12、R13、およびR14は、水素またはメトキシを含むアルコキシである。
【0082】
別の態様において、本発明中で使用するための色素にはまた、例示的に式IIのシアニン色素もまた含まれ、
ここで部分
【0083】
【化17】

【0084】
は、1-メチルピリドおよび3-ブロム-1-メチルピリドを含む場合により置換されているヘテロ環を示し;
Xは、酸素またはイオウであり;
n = 0または1であり;
t = z = 0であり;
R4は水素またはメチルを含むC1-6アルキルであり;
R5はメチルを含むC1-6アルキル、場合により置換されているフェニルまたは基-(CH23N(Me)3などの荷電された基を有するヘテロアルキルを含むヘテロアルキルであり;
R8は水素であり;そして
R11、R12、R13、そしてR14は、水素、メチルを含むアルキル、またはメトキシを含むアルコキシである。
【0085】
別の態様において、式Iの2種の化合物は、一緒になって、二量体を形成する。この2種の化合物は、式Iの化合物のそれぞれの上に、1つの2価のリンカーと共に存在する、置換基R2、R5、R6、R7、R8、R11、R12、R13、およびR14(上記に定義したもの)の一つを置換することにより互いに結合する。
【0086】
例示的には、式Iの2種の化合物は、一緒になって、二量体を形成し、ここで式Iの2種の化合物上に存在する2つのR5置換基は、1つの2価リンカーにより置換される。式Iの化合物の対称的二量体および非対称的二量体の両方ともが、本明細書中で企図されることが認識される。式Iの化合物の非対称的二量体の場合、そのような非対称性は、異なる置換パターンを有するか、または異なるヘテロ環Qを有する式Iの化合物から二量体を形成することにより、生じる可能性があることが理解される。さらに、そのような非対称性は、異なる置換基が二価のリンカーにより置換され、例えば例示的には式Iの第1の化合物のR5が二価のリンカーにより置換されそして式Iの第2の化合物のR8が二価のリンカーにより置換される場合の式Iの化合物から二量体を形成することにより生じる可能性がある。
【0087】
別の態様において、式IIの2種の化合物は、一緒になって、二量体を形成する。この2種の化合物は、式IIの化合物のそれぞれに存在する置換基R4、R5、R8、R11、R12、R13、およびR14(上述で定義したもの)の一つを、1つの二価リンカーにより置換することにより、互いに結合される。例示的には、式IIの2種の化合物は、一緒になって、二量体を形成し、ここで式IIの2種の化合物に存在する2種のR5置換基は、1つの二価のリンカーにより置換される。式IIの化合物の対称的二量体および非対称的二量体の両方ともが、本明細書中において企図されることが認識される。式IIの化合物の非対称的二量体の場合、そのような非対称性は、異なる置換パターンを有するか、または異なるヘテロ環Qを有する式IIの化合物から二量体を形成することにより生じる可能性があることが理解される。さらに、そのような非対称性は、式IIの化合物から二量体を形成することにより生じる可能性があり、ここで異なる置換基が二価のリンカーにより置換され、例えば例示的には、式IIの第1の化合物のR5が二価のリンカーにより置換されそして式IIの第2の化合物のR8が二価のリンカーにより置換される。
【0088】
式Iの化合物により形成される二量体シアニン色素構造は、式IIIによっても示される場合がある:
【0089】
【化18】

【0090】
ここで、部分
【0091】
【化19】

【0092】
および
【0093】
【化20】

【0094】
はそれぞれ、独立して選択される、場合により置換され融合されている単環式または多環式芳香環または窒素-含有ヘテロ芳香環を示し;
XおよびX'は、それぞれ独立して、酸素、イオウ、セレニウム、テルリウム、またはC(CH32、NR1、またはNR1'(ここでR1およびR1'はそれぞれ独立して水素またはC1-6アルキルである)から選択される基から選択され;
R2およびR2'は、それぞれ独立して、C1-6アルキルを含むアルキル、C3-8シクロアルキルを含むシクロアルキル、アリール、アリール(C1-2アルキル)を含むアリールアルキル、環状ヘテロ原子-含有部分、または非環状ヘテロ原子-含有部分から選択され、これらのそれぞれは場合により置換されていてもよく;
t=0または1であり;
t' = 0または1であり;
ZおよびZ'はそれぞれ、0または1から独立して選択される電荷であり;
R3、R9、R10、R3'、R9、およびR10'はそれぞれ、水素およびC1-6アルキルを含むアルキルから独立して選択され;
n = 0、1、または2であり;
n'= 0、1、または2であり;
BRIDGEは、アルキレン、ヘテロアルキレン、アルキルアミンジイル、アルキルアルキルアンモニウムジイルなど、例えば、(CH2p、(CH2pN+Me2(CH2q、(CH2pN+Me2(CH2qN+Me2(CH2rなど(ここで、p、q、およびrはそれぞれ独立して、1、2、および3から選択される)から選択される2〜約30個の二価ユニットを含む、二価のリンカーであり;そして
QおよびQ'は、以下のものからなる構造の基からそれぞれ独立して選択されるヘテロ環であり:
【0095】
【化21】

【0096】
ここで、R4、R5、R6、R7、R8、R11、R12、R13、およびR14は、それぞれの場合において、式IIIの化合物において、独立して、水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルケニル、ポリアルケニル、アルキニル、ポリアルキニル、アルケニルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、およびシクロアルキルからなる群から選択され、これらのそれぞれは場合により置換されていてもよい。
【0097】
本発明のPCR反応混合物、方法、および組成物において有用な例示的なシアニン色素にはまた、LightCycler Green、PO-PROTM-1、BO-PROTM-1、SYTO(商標)43、SYTO(商標)44、SYTO(商標)45、SYTOX(商標)Blue、POPOTM-1、POPOTM-3、BOBOTM-1、BOBOTM-3、および一般式IVを有するその他の色素:
【0098】
【化22】

【0099】
そして実施例14において示された色素G5、H5、D6、E6、P6、R6、Y6、Z6、およびD8が含まれ(しかし、これらには限定されない)、そして、一般式Vを有するその他の色素:
【0100】
【化23】

【0101】
ここで、nは0、1、または2であり;R2は、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキルおよびジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキル、アルキレンカルボキシレート、アルキレンカルボキサミド、アルキレンスルホネートなどであり;R5は、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、モノまたはジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキル、アルキレンカルボキシレート、アルキレンカルボキサミド、アルキレンスルホネート、場合により置換されたフェニルなどであり;Xは、酸素またはイオウであり;A、A'、およびBはそれぞれ、1またはそれ以上の独立して選択された場合による置換基、例えば、アルキル、ハロ、アミノ、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルキルおよびアリールスルホニル、ハロアルキルスルホニル、アルキルおよびアリールチオ、ホルミル、アルキルおよびアリールカルボニル、カルボキシル誘導体、モノおよびジアルキルアミノ、トリアルキルアンモニウム、ジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキル、またはピロリジノ、ピペリジノ、ピペラジノを含むヘテロ環を示し、これらのそれぞれは、アルキル、アミノ、モノまたはジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキルにより場合により置換されていてもよく、または、アルキル基などにより窒素上で4級化されていてもよく;そしてBRIDGEは、式(CH2pN+Me2(CH2q(ここでpおよびqは、独立して2または3である)を有する二価のリンカーであり、これには、二価のリンカー(CH23N+Me2(CH23が含まれる。これらの色素が正味の電荷を有している場合、それらは1またはそれ以上の対イオン、例えばハロゲン化物、アルカノエート、ホスフェートなどを含む対アニオン、およびリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、アンモニウムなどを含む対カチオンを伴っていることが理解される。
【0102】
本発明において使用するためのその他の例示的な色素には、、YO-PROTM-1、TO-PROTM-1、SYTO(商標)11、SYTO(商標)13、SYTO(商標)15、SYTO(商標)16、SYTO(商標)20、SYTO(商標)23、TOTOTM-3、YOYOTM-3(Molecular Probes、Inc.)、GelStar(商標)(Cambrex Bio Science Rockland Inc., Rockland, ME)、チアゾールオレンジ(Aldrich)、および一般式VI:
【0103】
【化24】

【0104】
を有するその他の色素が含まれ(しかし、これらには限定されない)、
ここで、nは、0、1、または2であり;R2は、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキルおよびジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキル、アルキレンカルボキシレート、アルキレンカルボキサミド、アルキレンスルホネートなどであり;R5は、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、モノまたはジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキル、アルキレンカルボキシレート、アルキレンカルボキサミド、アルキレンスルホネート、場合により置換されたフェニルなどであり;Xは、酸素またはイオウであり;A、B、およびB'はそれぞれ、1またはそれ以上の独立して選択された場合による置換基、例えばアルキル、ハロ、アミノ、モノおよびジアルキルアミノ、ピロリジノ、ピペリジノ、ピペラジノ、フェニル、ヒドロキシ、アルコキシ、チオ、およびアルキルチオを示し、これらのそれぞれは、アルキル、アミノ、モノまたはジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキルなどにより場合により置換されていてもよく;そしてBRIDGEは、式(CH2pN+Me2(CH2q(ここでpおよびqは独立して2または3である)を有する二価のリンカーであり、これには、二価のリンカー(CH23N+Me2(CH23が含まれる。これらの色素が正味の電荷を有する場合、それらには、ハロゲン化物、アルカノエート、ホスフェートなどを含む対アニオン、およびリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、アンモニウムなどを含む対カチオンなどの1またはそれ以上の対イオンを伴っていることが理解される。
【0105】
さらに、表1(以下の実施例13中に提示される)には、PCRのあいだまたはPCRの後に一般的に使用される、いくつかのdsDNA色素、ならびにPCR解析には以前には使用されなかった様々な色素の比較が示される。初期の結果は、LC Green、PO-PROTM-1、JO-PROTM-1、BO-PROTM-1、G5、H5、D6、P6、Y6およびD8が、ヘテロ二本鎖検出のために極めて有望な色素であることが示された。これらの色素には、いくつかの驚くべき特徴が存在する。第一に、それらは、50%飽和にてPCRを顕著には阻害しない、と言うことである。事実、100%に極めて近いレベルの飽和度では、これらの色素のうちの3種類を用いたPCRで適合性である。第二に、これらの色素のいくつかは青色領域の放射をするが、それらは現在利用可能な様々な装置の蛍光チャンネルを使用することにより適合性である。これらの色素の励起/放射スペクトルによりよく適合する様に光学系を調整することにより、定量的または定性的増幅解析において使用するためのそれらの感受性をさらに向上させることができる。
【0106】
上述のシアニン色素が例示的であり、そしてその他のシアニン色素が本明細書中で記載した方法において有用である可能性があることが理解される。
SYBR(商標)Green I、SYTOX(商標)Green、SYTO(商標)14、SYTO(商標)21、SYTO(商標)24、SYTO(商標)25、TOTOTM-1およびYOYOTM-1など(しかし、これらには限定されない)のキノリニウムベースの非対称性シアニン類のいくつかは、ヘテロ二本鎖を検出するために、または閉鎖チューブシステム内での複数の生成物を検出するために、有用であるとは証明されていない。色素が、キノリニウムベースのシアニンのモノマーである場合、キノリニウム環の窒素の隣にある炭素(R4に対応する位置)での大型の(bulky)置換により、本発明の方法において機能する色素の能力を阻害することも可能である。大型(Bulky)の置換は、例えば、MWが約105より大きな分岐鎖脂肪族部分により置換された、長鎖分岐鎖ヘテロ原子含有の脂肪族部分または芳香族部分である。しかしながら、この限定は、前述したピリジニウムシアニン類またはピリミジニウムシアニン類のいずれにも適用されない。キノリニウムベースのシアニン二量体の場合、二価の断片:
【0107】
【化25】

【0108】
により定義された左の環系と右の環系とのあいだの距離は、機能性を決めているようでもある。機能性は、実施例13〜14において教示するように、ヘテロ二本鎖検出により、決定することができる。PCRのリアルタイムモニタリングにおいて有用であるとして以前に記載されたその他の色素、例えば、SYBR(商標)Gold、Pico Green、およびエチジウムブロマイドは、閉鎖チューブPCR系におけるヘテロ二本鎖検出においては、有効ではないこともまた、示された。
【0109】
本発明中で使用するための色素は、SNP遺伝子型決定のための色素ベースの方法において使用することができ、2種の非標識オリゴヌクレオチドプライマーおよびそれぞれのSNP遺伝子型のための1つのウェルのみを必要とし、そして、リアルタイムPCRを必要としない。dsDNA色素を使用して、その結果増幅後融解曲線の形状を変化させるヘテロ二本鎖の存在により、ヘテロ接合体が同定される。異なるホモ接合性遺伝子型は、それらのTmの相違により、または、既知のホモ接合性DNサンプルを未知のものと混合しそしてヘテロ二本鎖を探索することにより、差別化される。例示的には、非常に短いアンプリコンを、好ましくはSNPのすぐ隣に隣接するものを、使用することができるため、PCRプライマーデザインは、非常に簡単なものである。そのような短いアンプリコンもまた、非常に効率よく増幅し、代わりの標的を増幅するリスクを減少させ、そして非常に迅速な温度循環を可能にする。
【0110】
PCRプライマーの設計は、精密科学ではなく、しばしば試行錯誤が必要である。PCRプライマー設計についてのいくつかの規則が一般的に受け入れられているが、これらの規則の有効性は、試されていない。異なる遺伝子型の融解曲線に対する影響が、短いアンプリコンを用いた場合に大きいため、短いアンプリコンが好ましく(≦100 bp)、そして可能性があるもっとも短いアンプリコンが、しばしばもっともよいものである(≦5O bp)。したがって、dsDNA色素を用いて遺伝子型決定を行うためのプライマーを設計するため、当業者は、例示したとおり、SNP位置のすぐ隣の互いに隣接したプライマーにより開始する。すなわち、アンプリコンの長さは、プライマー1の長さ、プラスプライマー2の長さ、プラス試験するために必要とされる領域の長さであろう(SNPの長さは1)。効率的な増幅のため、2種のプライマーの溶融温度(Tm)は、ほぼ同一であるべきである。プライマーについての都合のいいTmは、50℃〜70℃でありうる。もっとも高いTmを有するプライマーでは、例示的には、最速の温度循環が可能になり、一方より低いTmを有するプライマーでは、それほど費用がかからず、そして最小のアンプリコンを産生し、結果としてより大きな遺伝子型決定の差異が生じる。12〜30塩基のプライマー長が通常使用される。例示的には、それぞれのプライマーは、Tm計算値が所望のTmに最も近くなるまで、SNPから離れて作成される。Tm計算の方法は、当該技術分野において周知である(例えば、Clin. Chem. 2001;47: 1956-61)。一般的には、Tmができるだけ近くなるように適合する場合、プライマー長は、同一ではない場合もある。例えば、第V因子のSNPアッセイ(図1)において使用されるプライマー長は、17塩基長および24塩基長であり、両方ともほぼ62℃の適合Tm計算値を有する。
【0111】
増幅についての温度循環パラメータは非常に短くてもよい。というのも、そのような短いアンプリコンについては、プライマー伸長がほとんど必要とされないからである。温度循環の前のゲノムDNAの最初の変性ののち、変性温度およびアニーリング温度が維持されていることは必要ではなく、そして伸長の時間は、10秒またはそれ未満であってもよい。プログラムされた伸長時間をゼロに減らすことさえも可能であり、その場合それぞれのサイクルを20秒未満で行うことが可能になる。あるいは、1秒の伸長時間を使用することができる。アンプリコンが非常に短いため、大量のポリメラーゼは必要とされない(10μlあたり<0.6単位を使用することができる)。
【0112】
このように、本発明のSNP遺伝子型決定のために、以下の例示的な工程をその後行ってもよい:
1.標的Tmを選択し、そしてSNP位置にすぐ隣のそれぞれのプライマーの3'-末端から開始する。場合により、一つのプライマーを、SNP位置から若干離すように移動させ、プライマー間の3'相補性を避け、プライマー二量体形成のリスクを減少させることができる。
【0113】
2. Tm計算値が標的Tmができるだけ接近するまで、それぞれのプライマーを外側に設計する。
3. PCR試薬およびヘテロ二本鎖検出を可能にするdsDNA色素の存在下にて、サンプルを迅速に温度循環させる。
【0114】
4.変性の後、少なくとも-0.1℃/s、好ましくは少なくとも-2℃/s、そしてもっとも好ましくは少なくとも-5℃/sの速度で、急速に冷却することにより、ヘテロ二本鎖を形成する。
【0115】
5. 0.1〜0.5℃/sで加熱し、そして融解曲線を得る。
6.増幅がうまくいかない場合、プライマーの一つの3'-末端を1塩基外側に移動させ、そしてうまく行くまですべての工程を繰り返す。
【0116】
説明された事例において、すべてのヘテロ接合体は、ヘテロ二本鎖の融解曲線に対する効果により検出することができる(図4)。さらに、6つのホモ接合性相違のうちの4つ(A vs C、A vs G、C vs T、およびG vs T)は、非常に容易に、Tmシフトにより識別される(図4、矢印)。しかしながら、A vs Tホモ接合体を識別するため、高い分解能の融解が必要である可能性があり、そしていくつかの場合には、C vs Gホモ接合体は高い分解能の融解によっても差別化することができない。ホモ接合体の差別化が困難である場合、既知のホモ接合性遺伝子型のサンプルを、増幅前または増幅後のいずれかに、未知の遺伝子型と、ほぼ等量で混合することができる。混合物を増幅し(以前に増幅させていないにせよ)、変性させ、そして融解させる。遺伝子型が同一である場合、混合物の融解曲線は、既知のホモ接合性遺伝子型の融解曲線と同一になるであろう。遺伝子型が異なっている場合、ヘテロ二本鎖が生成され、そして融解曲線の形状が変化していることにより同定される。例示的には、既知の配列変異体についての遺伝子型決定を行う場合、小型のアンプリコンを使用することができる。未知の変異体についてスキャニングする場合、大型のアンプリコンが好ましい。
【0117】
非対称性シアニン色素は、分子のベンズアゾリウム部分をピリジニウム(またはキノリニウム、ピリミジニウム、プリニウム)部分に対して、1またはそれ以上の“-C (R) =”基を介して結合する一般的な方法により、調製することができる。U. S.特許No. 5,436,134およびその中で引用されている文献に記載されているように、“-C (R) =”基の数は、合成において使用される具体的な合成試薬により決定される。LC Greenなどのモノメチン(monomethine)色素(R=H、n=0)の合成において、試薬の組み合わせが使用され、ここでメチン炭素原子は、メチルであるベンズアゾリウム塩上のAまたはピリジニウム塩上のBのいずれか、そして典型的にはメチルチオ、メチルスルホニル、またはクロロであるが、十分な反応性を提供し、反応を完了するいずれかの脱離基であってもよい反応性脱離基であるAまたはBの他方、に起因する。LC Greenおよびその他の同様な色素を調製するための一つの可能性のある方法は、以下のものである:
【0118】
【化26】

【0119】
開始物質である化合物1は、4-メチル-2-ピリジノン(Aldrich)を加熱して、銅粉、炭酸カリウムおよびヨードベンゼンと共に、48時間環流することにより調製される。反応物を室温まで冷却し、水と酢酸エチルとのあいだで分割し、濾過し、そして有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させる。粗生成物をシリカゲルカラムで精製し、1:1の酢酸エチル/ヘキサンで溶出し、化合物1を得る。
【0120】
別の開始物質である化合物2は、DMF中で2-(メチルチオ)ベンズオキサゾールをヨウ化メチルに対して添加し、そしてシールしたチューブ中で150℃にて1時間加熱して、化合物2をヨウ化塩として得ることにより調製する。
【0121】
塩化メチレン中化合物1、オキシ塩化リン、および触媒量のDMFの混合物を加熱して、24時間環流させる。この混合物を室温まで冷却し、そして別容量の塩化メチレンを添加し、その後化合物2と1等量のトリエチルアミンを添加する。この混合物を、室温にて6時間攪拌する。固体を濾過により分離し、そしてシリカゲルカラムを使用して、酢酸エチル/クロロホルム/メタノールの混合液で溶出することにより精製する。次いで、精製された化合物をメタノール中に再溶解し、そして過剰量の水中ヨウ化ナトリウムに添加する。化合物3を、ヨウ化塩として濾過しそして減圧下にて乾燥させることにより単離する。
【0122】
次いで、化合物3を1,2-ジクロロエタン中1-メチルピペラジンと混合し、55℃にて2時間加熱する。次いで、得られた化合物(化合物4)を過剰量のヨウ化メチルおよびProton Sponge(Aldrich)を添加することにより四級化し、そしてLightCycler Green(化合物5)を2ヨウ化塩として得ることが予想される。
【0123】
実施例1 PCRプロトコル
標識オリゴヌクレオチドおよび非標識オリゴヌクレオチドを、IT Biochem(Salt Lake City, UT)、Qiagen Operon(Alameda, CA)、またはSynthegen(Houston, TX)から入手した。PCRを、これ以外に記載しなければ、10μl容量で、LightCycler(商標)(Roche Applied Systems, Indianapolis, IN)中で、20℃/sの遷移プログラムにより行った。増幅混合物には、これ以外に記載しなければ、鋳型としての50 ngのDNA、200μMの各dNTP、3 mMのMgCl2、100 mMの2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、pH 8.8、0.04 U/μlのTaqポリメラーゼ(Roche)、500μg/mlのウシ血清アルブミン、そして0.5μMの各プライマーが含まれた。遺伝子型決定されたヒトゲノムDNAは、以前の研究に基づいて(Gundry CN, et al., Genetic Testing, 1999;3: 365-70;Herrmann M, et al., Clin Chem 2000;46: 425-8)またはCoriell Cell Repositories(Camden, NJ)から、入手した。LightCycler Greenは、これ以外に記載しなければ、PCR反応物中に、10μMで含まれた。SYBR(商標)Green Iを指示薬として使用した場合、Molecular Probesのストックからの1:10,000の最終希釈を使用した。色素をPCRの前に添加し、増幅を行い、そしてアンプリコンの融解転移を、LightCycler(商標)上でモニターするかまたは高分解能の融解解析によりモニターする。異なるホモ接合体を、アンプリコン溶融温度(Tm)により識別する。ヘテロ接合体は、低温度融解性のヘテロ二本鎖により同定され、それにより総体的な融解転移が広げられる。融解解析には、約1分間が必要とされ、そしてPCR後にはサンプル処理が何も必要とされない。
【0124】
LC Green、SYBR(商標)Green I、およびその他のdsDNA結合性色素の感度を研究するため、第V因子Leiden、嚢胞性線維症(F508del、F508C、I507del、I506V)、およびHTR2A(T102C)遺伝子の多型を解析した。さらに、操作されたプラスミドを使用して、可能性のある一塩基変化のすべてを系統的に研究した。ヘテロ接合性DNAの増幅により生成されたヘテロ二本鎖は、変性生成物の迅速な冷却(少なくとも-2℃/s)、それに続いて融解解析のあいだの迅速な加熱(0.2〜0.4℃/s)によりもっともよく検出された。すべてのヘテロ接合体は、より幅広い融解転移により、ホモ接合体から識別された。異なるホモ接合体を、しばしばそれらのTmにより識別することができた。AからTへの塩基変化を有するホモ接合体を高分解能の融解解析により、またはホモ接合体を混合することにより、識別することができた。ホモ接合性のGからCへの塩基変化は、ホモ接合体を混合することなく、高分解能の解析を用いても、再現性をもって識別することができなかった。アンプリコンは、長さが44〜331 bpまで変化した。
【0125】
本明細書中で提示される実施例においては、LC Greenが使用されるが、本発明のその他の色素を使用することができることは理解される。
【0126】
実施例2 融解曲線解析
融解解析を、温度循環の後すぐにLightCycler(商標)で行うかまたはそれに引き続いて高分解能融解装置(HR-1, Idaho Technology, Salt Lake City, UT)で行った。しかしながら、増幅しない場合に、融解曲線解析を行うことができることが理解される。LightCycler(商標)を使用した場合、サンプルを、はじめに94℃まで加熱し、-20℃/sのプログラム設定で60℃まで冷却し、その後0.2℃/sで蛍光を連続的に取得しながら融解した。高分解能の融解のため、これ以外に記載しなければ、サンプルを、はじめにLightCycler(商標)中で増幅し、次いでLightCycler(商標)中で94℃まで瞬間的に加熱し、そして40℃まで迅速に冷却した。(-20℃/sのプログラム設定で)。次に、これ以外に記載しなければ、LightCycler(商標)毛細管を、高分解能装置に1本ずつ移し、そして0.3℃/sで加熱した。HR-1は、アルミニウムシリンダーにより1本のLightCycler(商標)毛細管を取り囲む、1サンプル装置である。このシステムは、シリンダーの外側に巻かれたコイルを介してジュール加熱することにより加熱される。サンプルの温度は、やはりシリンダー中に配置された熱電対によりモニターされ、そして16-ビットのデジタル信号に変換される。蛍光は、毛細管の先端の落射照明(epi-illumination)によりモニターされ(Wittwer CT, et al., BioTechniques 1997;22: 176-81)、それはシリンダーの底部に位置し、そしてこれも16-ビット信号へ変換される。およそ50のデータ点が、すべてのCについて得られる。
【0127】
いくつかの場合、PCRの後、融解曲線取得の前に、生成物を変性させないことが利点である。例えば、目的がリピート配列(例えばSTRs、VNTRs)の数を分類することである場合、増幅を、プラトーに達する前の反応の指数増幅期のあいだに伸長工程を終了させることができ、その後、融解解析を行う。この方法により、ホモ二本鎖伸長生成物を解析することができる。リピートの分類において、ホモ二本鎖生成物は、特に、多数の異なるヘテロ二本鎖生成物を複数のリピートの異なるアラインメントから形成することができるので、ヘテロ二本鎖生成物よりも、情報性が高いものであり得る。いくつかの場合、ホモ二本鎖融解曲線(事前の変性を行わない)およびヘテロ二本鎖融解曲線(変性を行い、そして可能性のあるすべての二本鎖の組み合わせを形成する)の両方を得るためには、有用である可能性がある。これらの2種の融解曲線の相違により、“ホモ二本鎖対照”としての同一サンプルを使用して、形成される可能性があるヘテロ二本鎖の程度を測定する。
【0128】
LightCycler(商標)および高分解能融解データを、LabViewにより作成された特注ソフトウェアにより解析した。蛍光vs温度のプロットを、それぞれのサンプルの融解転移の前および後に、まず直線のベースラインを規定することにより、0〜100%のあいだで正規化した。それぞれのサンプル中において、それぞれの得られた蛍光を、上端ベースラインと下端ベースラインとのあいだで、取得の温度での蛍光%として計算した。いくつかの場合において、二次的な融解曲線プロットを、それぞれの点で、Savitsky-Golay多項式より計算した(Press WH, et al., eds. Numerical recipes in C, 2nd ed. New York: Cambridge University Press, 1992: 650-5)。Savitsky-Golay解析では、二次多項式、および1℃間隔でのすべての点を含むデータウィンドウが使用された。ピーク領域および溶融温度は、非線形最小二乗回帰を用いて多重ガウス分布に適合させることにより得た。いくつかの場合において、それぞれの正規化融解曲線についてのX軸を、トレーシングが特定の蛍光領域内で重複する様に、平行移動させた。この“温度シフト”は、作業間の(inter-run)いずれかの軽微な温度変化について修正し、そして、ヘテロ接合体をホモ接合体から識別する能力を増大させる。それぞれの温度での遺伝子型間の蛍光の差異をプロットすることにより、遺伝子型間での相違を、誇張することもできる。
【0129】
実施例3 LightCycler Greenを用いた一塩基多型遺伝子型決定
第V因子Leiden変異の遺伝子型決定
43 bpのアンプリコンを、第V因子Leiden変異の位置にすぐ隣接する18塩基および24塩基の長さのプライマーから形成した。プライマーは両方とも、Tmが62℃であると推定された。サンプルを、以下のプロトコルにより35サイクル行った:94℃で保持時間なし、60℃で保持時間なし、そして72℃で10秒間保持。増幅の後、サンプルをLightCycler(商標)中で瞬間的に94℃まで加熱し、60℃まで急速に冷却し(-20℃/sのプログラム設定)、そして連続的に蛍光を取得しながら、0.2℃/sでPCR生成物を融解した。
【0130】
第V因子遺伝子のLeiden座での、異なる遺伝子型から増幅されたPCR生成物の二次的な融解曲線を、図1に示す。LightCycler Greenを、二本鎖生成物と一本鎖生成物とのあいだでの融解転移を蛍光モニタリングするために使用した。Leiden変異は、アンプリコンの一つの末端から19塩基のところに位置している。10種のホモ接合性の野生型遺伝子型、2種のヘテロ接合性遺伝子型、および1種のホモ接合性のLeiden遺伝子型由来の結果が示される。ホモ接合性変異体のアンプリコン溶融温度は、ホモ接合性の野生型溶融温度よりも約1℃低い。ヘテロ接合性のサンプルは、ヘテロ二本鎖形成に寄与しうる二次的な低温融解転移を示す。SYBR(商標)Green Iを使用した同様の実験では、ヘテロ接合体におけるこの二次的融解転移を検出することができなかった(データは示していない)。
【0131】
冷却速度および加熱速度の影響は、ヘテロ接合性の第V因子Leiden DNAを用いてLightCycler(商標)上で調べられた。冷却速度の影響を調べるため、サンプルを上述したように増幅し、85℃まで加熱し、そしてその後85℃から60℃まで-20℃/s、-2℃/s、-1℃/s、-0.5℃/s、または-0.1℃/sの速度で冷却し、融解曲線を得るため、0.2℃/sの定常的な加熱速度で加熱した。急速な冷却は、顕著なヘテロ二本鎖形成のために必要であった(図2)。冷却速度が-0.1℃/sまたはそれよりも遅かった場合に、ヘテロ二本鎖は観察されなかった。最大のヘテロ二本鎖形成は、毛細管サンプルを熱湯から氷冷水に急速に移した場合に生じた(データは示していない)。LightCycler(商標)上で冷却することにより、ヘテロ二本鎖形成は、-5℃/sよりも早いプログラム化速度でプラトーに達する様であった(図2)。しかしながら、実際のサンプル温度の測定から、冷却速度が、-5℃/sよりもはやいプログラム化速度により、ほんのわずか上昇したことを示した:装置を-20℃/sで冷却するようにプログラム化した場合、実際の速度は約-6℃/sであった。
【0132】
加熱速度の効果を、-20℃/sのプログラム化速度で冷却し、その後0.05℃/s、0.1℃/s、0.3℃/s、または0.5℃/sで融解することにより調べた。観察されたヘテロ二本鎖の相対的割合は、より高い加熱速度を用いた場合に、より大きかった(図3)。見かけTmも、速度が上昇するにつれそして融解プロセスが平衡状態からより逸脱するにつれ、より高い温度にシフトする(Gundry CN, et al. , Genetic Testing, 1999;3: 365-70)。
【0133】
実施例4 プラスミドを用いたSNP遺伝子型決定の系統的研究
遺伝子操作されたプラスミドを、すべての可能性のある一塩基変化の融解曲線遺伝子型決定を系統的に研究するために使用した。プラスミド(DNA Toolbox, Cambrex Bio Science Rockland Inc.)は、40%GC含量の状況下で、決められた位置にA、C、G、またはTのいずれかを含有した(Highsmith WE, et al., Electrophoresis 1999;20: 1186-94)。62±1℃のTmを有するプライマーは、多型位置のすぐ隣に位置していた。DNA鋳型を105コピーで使用し、そしてPCRを、94℃で保持時間なし、60℃で保持時間なし、そして75℃で5秒を1サイクルとして、35サイクル行った。LightCycler(商標)を融解解析のために使用した。
【0134】
図4は、一塩基多型から形成されたすべての可能性のあるヘテロ二本鎖を、ホモ二本鎖サンプルから識別することができることを示す。それぞれの場合において、ヘテロ二本鎖の存在は、結果として二次的融解曲線プロットの低温の肩の部分を生じる。サンプルにホモ接合体の増幅から形成されるホモ二本鎖のみが含まれる場合、低温の肩の部分は存在しない。さらに、AAまたはTTホモ接合体は、それらの溶融温度により、CCまたはGGホモ接合体から明確に識別される。すべてのヘテロ接合体を互いに識別することができるかどうか、またはAAをTTから差別化することができるかどうか、およびCCをGGから差別化することができるかどうか、は、これらの“低分解能”プロット(LightCycler(商標)で得られたもの)からは明らかではない。しかしながら、高分解能データ(示していない)は、AAをTTから識別することができ、そしてほとんどの(すべてではないが)ヘテロ接合体を識別することができることを示す。CCおよびGGホモ接合体の安定性は非常に似ているようであり、そしていずれかの相違は、ホモ接合体を混合することなく、現在の装置で分離することは困難である。
【0135】
実施例5 標識プライマーを使用した嚢胞性線維腫遺伝子の遺伝子型決定:
LightCycler GreenまたはSYBR(商標)Green I
KlenTaqlポリメラーゼ(0.04 U/μl, AB Peptides, St. Louis, MO)、88 ngのTaqStart抗体(ClonTech, Palo Alto, CA)、および50 mM Tris、pH 8.3を、Taqポリメラーゼおよび2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールの代わりに、PCRにおいて使用した。44 bpの断片を、プライマーGGCACCATTAAAGAAAATAT(SEQ ID NO 1)およびTCATCATAGGAAACACCA(SEQ ID NO 2)を用いて増幅した。第一のプライマーは、Oregon Greenで5'-標識されているか、またはSYBR(商標)Green IまたはLightCycler Greenの存在下で反応を行った。プライマーは、F508del、I507del、およびF508C変異体を含有する変異多発点に隣接する。PCRを、85℃および58℃(保持時間0秒)を40サイクルすることにより行った。6種のサンプルを、LightCycler(商標)上で、融解曲線取得のあいだモニターした。
【0136】
嚢胞性線維腫遺伝子のI507/F508領域での異なる遺伝子型から増幅されたPCR生成物の二次的融解曲線を、図5B〜Dに示す。
PCR生成物は、41塩基または44塩基の長さであった(図5A)。5'-標識プライマー(図5B)、LightCycler Green(図5C)、またはSYBR(商標)Green I(図5D)のいずれかを、二本鎖生成物と一本鎖生成物とのあいだの融解転移を蛍光的にモニタリングするために使用した。2種のホモ接合性の遺伝子型および3種のヘテロ接合性の遺伝子型から得た結果を示す。
【0137】
異なる遺伝子型の二本鎖安定性は、理論的な計算に従っており(von Ahsen N, et al., Clin Chem 2001;47: 1956-61)、F508del〜I507del<野生型<F508Cである。F508delとI507delを除き、遺伝子型は、それらのTmが大きく転移することにより識別可能である。10回繰り返した野生型サンプルのTmの標準偏差は、LightCycler(商標)で融解した場合、0.12℃であった。高分解能装置で融解した場合、同一の10サンプルのTmの標準偏差は、0.04℃であった。
【0138】
ヘテロ接合性のサンプルをPCRにより増幅する場合、2種のホモ二本鎖生成物および2種のヘテロ二本鎖生成物が予想される(Nataraj AJ, et al. , Electrophoresis 1999;20: 1177-85)。しかしながら、SYBR(商標)Green Iを蛍光指示薬として使用した場合、それぞれの遺伝子型について、わずか1つの融解ピークしか明らかではなかった(図5D)。対照的に、標識プライマーまたはLightCycler Greenを同一条件下で使用する場合、2種の明りょうに特定されるピークが現れた(図5Bおよび5C)。より低温側のピークは、より高温側のピークよりも常に小さく、そしてこのことはおそらく、ヘテロ二本鎖生成物の一方または両方の融解転移を示している。予想され得る様に、3 bpが欠損したヘテロ接合体(F508delおよびI507del)は、結果としてヘテロ二本鎖ピークを生じるが、これは一塩基変化(F508C)から得られるヘテロ二本鎖ピークよりも不安定であった。F508Cヘテロ接合体由来の主要なピークは、野生型よりもより高い温度であったが、これはTからGへの転換の安定性がより高いことを反映している(Gundry CN, et al. , Genetic Testing, 1999;3: 365-70)。
【0139】
実施例6 LC Greenを用いた変異スキャニング
HTR2A一塩基多型を調べた。PCRを、嚢胞性線維腫座位について記載したように、KlenTaq、TaqStart、およびTrisを用いて行った。ヒドロキシトリプタミン受容体2A(HTR2A)遺伝子の331 bpの断片が、エクソン1内に共通の多型(T102C)を含んだ(Lipsky RH, et al. , Clin Chem 2001;47: 635-44)。反応は、95℃で保持時間なし、62℃で2秒保持、そして74℃で20秒保持を1サイクルとして、40回のサイクルにより行った。高分解能融解曲線を得た。
【0140】
図6は、LightCycler Greenを使用して、配列変異体をスキャンすることができることを示す。すなわち、配列変異の位置は、既知である必要はない。いずれかの変異体の存在を、大型のアンプリコン内部で検出することができる。図6に示すように、HTR2A遺伝子中の一塩基多型の3種の遺伝子型のすべて(ホモ接合性のT、ホモ接合性のCおよびヘテロ接合性のT/C)を、331 bpのアンプリコン中で差別化することができる。融解曲線の厳密さおよび異なる遺伝子型を識別する能力は、温度および装置の蛍光分解能に依存する。
【0141】
実施例7 DNAサイズラダーの融解曲線解析:
SYBR(商標)Green IとLightCycler Greenとの比較
6種の別個のdsDNA種を有する100 ngのDNAサイズラダー(Low Mass DNA Ladder, Gibco BRL)を、3 mMのMgCl2、100 mMの2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、pH 8.7のバッファー中、SYBR(商標)Green I(1:10,000)またはLightCycler Green(10μM)のいずれかと混合した。融解曲線は、0.1℃/sで高分解能の装置で得られた。
【0142】
上述したように、LightCycler Greenは、SYBR(商標)Green Iとは異なり、PCRに適合する濃度で、融解曲線転移におけるヘテロ二本鎖を同定することができる。SYBR(商標)Green Iが低融解転移を容易には同定することができない理由の一つが、図7中に示される。安定性が上昇したいくつかのDNA断片が存在する場合、LightCycler Greenと比較した場合、SYBR(商標)Green Iを使用した場合の低温のピークは非常に小さい。一つの説明は、融解のあいだ、SYBR(商標)Green Iは、低温二本鎖から放出され、より高い温度で融解する二本鎖にのみ結合しうる、というものである。このことにより、もしすべてのものを観察可能であれば、最低温度のピークは非常に小さいものであるが、最後のピークよりもより高い連続的なそれぞれのピークを引き起こす。ずっと高い飽和レベルで存在するLightCycler Greenは、低温二本鎖でさえ、可視のピークを有する。本実施例において、LC Greenがほぼ飽和レベルで存在したが、驚くべきことに、LC Greenを、飽和レベルを5〜20%にまで希釈した場合にも、低温のピークを検出できる。例えば、図13中に示されるデータを、1μMの濃度のLC Greenを用いて得た。このように、メカニズムは理解されないが、LC Greenおよび本発明の様々なその他の飽和性色素は、融解のあいだに再分配されないようである。
【0143】
図7におけるそれぞれのピーク領域が検出され、そして既知量のそれぞれのDNA種に分割される場合、それぞれのDNA種についての相対的感受性を評価することができる(図8)。図8において示されるように、LightCycler Greenを用いた場合、低温融解性ピークが好ましいが、SYBR(商標)Green Iを用いた場合、シグナルの大幅な向上が高温で得られる。
【0144】
実施例8 一般的dsDNA色素の滴定曲線とPCRにおけるLightCycler Greenの有用な濃度範囲の決定
100 ngの低質量DNAラダーを、10μlの最終容量中3 mMのMgCl2、50 mMのTris、pH 8.3、250μg/mlのBSAおよび各200μMのdNTPの存在下、様々な濃度の一般的dsDNA色素と混合した。サンプルを、LightCycler(商標)チューブに移し、そして蛍光を、40℃でリアルタイム蛍光計にて測定した。蛍光を、特定の色素のそれぞれにより得られた最大蛍光に対して正規化した。
【0145】
希釈化研究を、3 mMのMg2+、50 mMのTris-HCl、pH = 8.3、500μg/mlのBSA、200μMの各dNTP、0.5μMの各プライマー、50 ngのゲノムDNA、0.4 UのTaqポリメラーゼ、および88 ngのTaqStart抗体を含む10μl容量中、2μM〜100μMの範囲のLC Green希釈物と共に152 bpのHTR2Aアンプリコンを使用して行った。95℃で10秒の最初の変性の後、95℃で0秒、62℃で2秒、そして72℃で20秒を1サイクルとして40サイクルを行った。LightCycler(商標)での追加の温度条件付け(95℃で0秒、55℃で0秒)の後、サンプルを高分解能装置で、0.3℃/secの勾配で融解した。
【0146】
図9A〜Bは、PCRに適合性であるSYBR(商標)Green IおよびLC Greenの濃度を示す。PCRに適合性の濃度では、SYBR(商標)Green Iは、PCRの最後に典型的に存在するDNA量を飽和するにはほど遠い。対照的に、LightCycler Greenを、飽和されている濃度も含め、幅広い範囲の濃度にわたって使用することができる。50倍範囲のLightCycler Green濃度にわたる典型的な融解曲線が、図10に示される。
【0147】
実施例9 SYBR(商標)Green IおよびLightCycler Greenの蛍光スペクトル
DNAに結合したSYBR(商標)Green IおよびLightCycler Greenの励起スペクトルおよび放射スペクトルを、Photon Technology蛍光計(FL-1)を用いて測定した。LightCycler Green(10μM)またはSYBR(商標)Green 1(1:10,000)を、最終容量60μl中3 mMのMgCl2、50 mMのTris、pH 8.3、250μg/mlのBSAおよび200μMの各dNTPの存在下にて、100 ngのDNA(Low Mass DNA Ladder)に対して添加した。
【0148】
LightCycler(商標)光学系は、SYBR(商標)Green Iの励起および放射に十分に適合している(図11)。LightCycler GreenがLightCycler(商標)光学系にあまり適合していないとしても、いくつかのPCR-適合性濃度でのLightCycler GreenによりLightCycler(商標)で得られる蛍光シグナルが、SYBR(商標)Green Iから通常観察される蛍光シグナルよりも大きい(データは示していない)。
【0149】
実施例10 X軸調整および蛍光差解析を用いた、β-グロビン遺伝子の遺伝子型決定
110 bpの断片を、染色体11上のヒトβグロビン領域から増幅した(アクセッション番号NG_000007)。110 bp生成物には、一般的なβ-グロビン変異、HbSとHbCの部位が含まれた。DNAは、共通の遺伝子型それぞれの4個体の異なる個体の乾燥血液スポットから抽出した。遺伝子型には、3種のホモ接合性の(AA、SS、およびCC)の型および3種のヘテロ接合性の(AS、AC、およびSC)型が含まれた。フォワードプライマーおよびリバースプライマーは、それぞれ、ACACAACTGTGTTCACTAGC(SEQ ID NO 3)およびCAACTTCATCCACGTTCACC(SEQ ID NO 4)であった。各10μlの反応物は、50μgのゲノムDNA、0.50μMの各プライマー、10μMのLC Green、3 mMのMgCl2、50 mMのTris、pH 8.3、500μg/mlのウシ血清アルブミン、0.2 mMの各dNTP、0.04 U/μlのKlentaqTM(AB Peptides, St. Louis, MO)、88 ngのTaqStartTM抗体(CloneTech, Palo Alto, CA)を含有した。PCR反応条件は、以下の通りであった:95℃で5秒間のサイクル前変性を1回;2℃/secの温度勾配で94℃で0秒、50℃で2秒、72℃で2秒を1サイクルとして、35サイクル行う。1回の蛍光取得は、2秒の伸長の後にそれぞれのサンプルについて行った。PCR増幅の後、サンプルを-20℃/secのプログラム化速度で冷却した。急速な冷却のすぐ後に、特注の16-ビット高分解能融解装置で、0.30℃/secの速度で70℃から93℃まで、蛍光を継続的に取得しながら、融解を行った。
【0150】
サンプルの温度を上昇させるにつれて、蛍光を測定することにより高分解能融解曲線データを得る。βグロビンの6遺伝子型について4回繰り返したサンプルから得られた元データを、図12Aに示す。サンプル容量の相違および毛細管光学系が可変であるため、蛍光の強度が様々なサンプル間で可変であることに留意すべきである。
【0151】
サンプル間の相違の程度は、大幅な転移の前および後に、それぞれの曲線の直線ベースラインを使用して正規化することができる。具体的には、2本の直線領域が選択され、一方は大幅な転移の前であり、もう一方は大幅な転移の後である。これらの領域は、それぞれの曲線について2本の線を規定し、上は100%の蛍光の直線であり、そして下は0%の蛍光の直線である。転移の内部の蛍光%(2つの領域のあいだ)は、外挿された上部線および下部線のあいだの距離%として、それぞれの温度で計算される。βグロビンのデータについての正規化された結果は、図12Bに示される。それぞれの遺伝子型について4回繰り返したサンプルは、明らかに一緒に分類され、もっとも明らかなものは84〜85℃のあたりの場合に見られた。作業(run)間の温度の差引きの次に、それでもそれぞれの遺伝子型内でいくらかの多様性が存在する(10〜20%の蛍光周辺の遺伝子型内には、約0.2℃の幅が存在することに注目すべきである)。2種の異なるサンプル間でまたは同一サンプルの2種の異なる作業(run)間でさえ、このサンプル多様性は生じうる。様々な塩濃度での調製を含む様々な調製物を、温度の差引きを提供もできる。しかしながら、少なくとも最初の近似に対して、これらの相違は曲線の形状に影響を与えない。
【0152】
作業間の温度差引きは、それぞれの曲線の温度軸をシフトさせ、その結果それらを所定の蛍光間隔にわたって重ね合わせることにより、修正することができる。例示的には、一つのサンプルを標準として選択し、そして蛍光間隔の複数の点を、二次的に適合させる。それぞれの残りの曲線について、蛍光間隔内のそれぞれの点を二次的に平行移動させるために必要とされる温度シフトが計算される。次に、それぞれの曲線は、平均シフトにより平行移動され、選択された蛍光間隔内での曲線の重ね合わせが可能になる。ヘテロ接合体の増幅は、ヘテロ二本鎖の低温融解転移を生じると共に、ホモ二本鎖のより高い融解転移も生じる。曲線をシフトさせて高温のホモ二本鎖領域(低%の蛍光)と重ね合わせる場合、図12Cに見られるように、ヘテロ二本鎖を、より低温での蛍光の初期の落ち込みにより同定することができる。しかしながら、異なるホモ二本鎖の形状があまり大きく変化しないため、異なるホモ二本鎖をシフトさせる温度は、それらのあいだの相違を曖昧なものにする可能性がある。
【0153】
最終的には、様々な遺伝子型は、正規化した(そして場合により温度シフトさせた)融解曲線間での蛍光の相違をプロットすることにより、もっとも容易に観察される。標準的な遺伝子型が最初に選択される(例示的には、βグロビン野生型AAが使用される)。その後、図12Dに示すように、それぞれの曲線と標準との間の相違を温度に対してプロットする。標準(それ自体から差し引く)は、すべての温度を通じてゼロである。その他の遺伝子型は、独特の経路をたどり、そして視覚的パターン適合化により同定することができる。特徴的な抽出の自動化方法を使用して、遺伝子型を指定することも出来る。さらに、例示的な事例では飽和性色素とヘテロ二本鎖検出を使用するが、温度シフトおよび温度相違プロットを、ヘテロ二本鎖が存在しない場合に、遺伝子型決定のために、例示的には、ゲノムが半数体であるウィルス遺伝子型決定において使用するために、使用することができることが理解される。そのような高分解能の遺伝子型決定の事例には、C型肝炎遺伝子型決定、ヒトパピローマウィルス遺伝子型決定、HIV遺伝子型決定、およびリボゾームDNA増幅による細菌同定が含まれる。
【0154】
遺伝子型と相関する一つのパラメータを、編み出すことができる。例えば、正規化曲線を使用して、異なる遺伝子型が例えば10%融解(90%蛍光)である温度を決定することができる。これにより、明らかにいくつかの遺伝子型を識別するが、しかし他のものは識別しない(図12B)。あるいは、曲線の最大勾配を使用して、ホモ接合体をヘテロ接合体から識別することができたが、しかし異なるホモ接合体は、しばしば、最大勾配が同様である。最終的に、異なる曲線の曲線下領域(図12D)を使用して、遺伝子型を決定することができたが、しかしそのような曲線は、同様な領域を有する可能性があるが、しかし異なる経路をたどる可能性がある。パラメータの組み合わせが、自動化遺伝子型決定のために有効であることが証明される可能性があるが、この技術は、視覚的パターン化適合に十分に適している。
【0155】
その他の正規化技術が利用可能でありそして本発明の範囲内のものであると理解される。例えば、HR-1(Idaho Technology, Salt Lake City, UT)は、蛍光値を予め決定した温度で自動的に調整しうる設定を有し(例示的には、40℃での蛍光値を100とする)、そしてすべてのサンプル由来の融解曲線を、同一の蛍光値から整列させることができる。上述した正規化とこの機械制御の正規化との差異は、機械制御の正規化により転移前後の曲線の勾配が、平坦にならないことである。
【0156】
実施例11 より大型のアンプリコンの解析
短いアンプリコンはしばしば、結果として遺伝子型決定のより大きな差異を生じるが、LightCycler Greenを使用して、より大きなアンプリコンを遺伝子型決定することもできる。DNA融解ドメインは、通常、50〜500 bpの長さであり、そして例えば500〜800 bpのより大きなアンプリコンは、複数の融解ドメインを有する。1つのドメインにおける配列変化は、その他のドメインの融解に影響を与えることはなく、そしてあるドメイン中で見られる多様性は、アンプリコンの長さとは無関係である可能性がある。このように、400〜650 bpの範囲で事例が提示されるが、配列変化の存在に関してスキャンすることができるPCR生成物のサイズに上限は存在しないようである。
【0157】
さらに、一つのドメインの融解がその他のドメインの融解とは無関係であるようであるため、装置および/またはサンプルの作業を変化させることにより、不変ドメインをX軸(温度軸)を調整するための内部対照として使用することができる。ヘテロ接合体は、互いに識別可能でありそしてホモ接合体からも識別可能である。というのも、融解曲線の形状が異なるからである。融解曲線の形状は、存在するヘテロ二本鎖およびホモ二本鎖の安定性および/または動態融解速度により規定される。複数の融解ドメインがより大きなアンプリコン中に存在するため、形状の変化が、曲線のどの様な場所においても生じうる。複数の曲線のX軸の位置取りを曲線の不変部分を重ね合わせる様に調整することにより、曲線の可変部分をより容易に認識することができる。あるいは、曲線の可変部分を重ね合わせることにより、様々な遺伝子型が存在する場合、曲線の残りの部分が変化しうる。あるいは、X軸調整を、(1)外部対照核酸、または(2)核酸とは相互作用しないが、その蛍光は、PCR前のまたは融解前のそれぞれのサンプルに対する温度に依存している第二の放射波長を有する色素(Cy5などの、良好な温度係数を有する色素)を添加することにより行うことができる。温度軸シフトを、対照核酸の融解転移の位置あるいは対照色素の強度プロファイルにしたがって、行うべきである。
【0158】
図13Aおよび14は、より大きなアンプリコンの解析の2つの事例を説明する。図13Aは、544 bpの断片をヒト5-ヒドロキシトリプタミン受容体2A(HTR2A)遺伝子のエクソン2(アクセッション番号NM_000621.1)から増幅したことを示す。フォワードプライマーおよびリバースプライマーは、それぞれ、CCAGCTCCGGGAGA(SEQ ID NO 5)およびCATACAGGATGGTTAACATGG(SEQ ID NO 6)であった。各10μlの反応物は、50 ngのゲノムDNA、0.50μMの各プライマー、1μMのLC Green、2 mMのMgCl2、50 mMのTris、pH 8.3、500μg/mlのウシ血清アルブミン、0.2 mMの各dNTP、0.4 UのKlentaqTM(AB Peptides, St. Louis, MO)、および88 ngのTaqStartTM抗体(CloneTech, Palo Alto, CA)を含有した。
【0159】
PCR反応条件は、以下の通りであった:92℃で0秒、60℃で2秒、74℃で25秒を1サイクルとして40サイクル。PCR増幅の後、サンプルを、-20℃/secのプログラム化速度で冷却した。急速な冷却のすぐ後、特注の16-ビット高分解能融解装置上で、70℃から93℃まで、0.30℃/secの速度で、連続的に蛍光を取得しながら、融解を行った。
【0160】
各遺伝子型(CC、TC、およびTT)の2つにわけたサンプルを、図13Aに示す通り、増幅しそして解析した。曲線を10〜20%の蛍光のあいだで重ね合わせたこと以外は、データを、実施例10に記載するように、正規化しそして温度シフトさせた。図13Bは、ホモ二本鎖の予想融解マップ、そしてより低い融解ドメインにおける多型の位置を示す。実験データは、2種の明らかな融解ドメインを示す。すべての遺伝子型は、より高い融解ドメインにおいて類似している。遺伝子型は、より低い融解ドメインで相違しており、ここではヘテロ接合体は、ヘテロ接合体曲線がより低い融解性のホモ接合体曲線と交叉し、および温度が上昇するにつれてより高い温度のホモ接合体に近づく、という低融解性ヘテロ二本鎖の典型的な動きを示す。
【0161】
図14は、嚢胞性線維腫膜貫通コンダクタンス制御因子(CFTR)遺伝子のエクソン10(アクセッション番号M55115)から612 bpの断片を増幅することについての曲線の差異を示す。フォワードプライマーおよびリバースプライマーは、それぞれ、AGAATATACACTTCTGCTTAG(SEQ ID NO 7)およびTATCACTATATGCATGC(SEQ ID NO 8)であった。各10μlの反応物は、50 ngのゲノムDNA、0.50μMの各プライマー、10μMのLC Green、3 mMのMgCl2、50 mMのTris、pH 8.3、500μg/mlのウシ血清アルブミン、0.2 mMの各dNTP、0.4 UのKlentaqTM(AB Peptides, St. Louis, MO)、そして88 ngのTaqStartTM抗体(CloneTech, Palo Alto, CA)を含有した。PCR反応条件は、以下の通りであった;89℃で0秒、58℃で8秒、74℃for 35秒を1サイクルとして35サイクル。35秒間の伸長の後、各サンプルについて1回の蛍光取得を行った。PCR増幅の後、サンプルを-20℃/secのプログラム化速度で冷却した。急速に冷却したすぐ後に、特注の16-ビット高分解能融解装置で、60℃から87℃まで0.30℃/secの速度で、連続的に蛍光を取得しながら、融解を行った。この事例において、ヘテロ接合体の差別化は、曲線の中央部分(30〜40%の蛍光)をX軸調整のために使用する場合に最良であった。最終的に、各プロットの蛍光を野生型プロットの一つから差引いて図14に示す差異プロットを作成した。各配列変化は、野生型とは明らかに異なっており、そしてすべての遺伝子型を差別化することができる。
【0162】
実施例12 LightCycler Greenを用いた標的化検出および多重化
LightCycler Greenをドナーとして使用して、オリゴヌクレオチドプローブに結合したアクセプター色素を励起することができる。LightCycler Greenを飽和性の濃度またはそれに近い濃度で使用して、ハイブリダイゼーションされたプローブに高密度に結合させることができるため(3塩基対毎に約2色素分子)、蛍光共鳴エネルギー移動について二本鎖DNAの長さ全体にわたって、色素を利用可能である。アクセプター色素を伴うプローブをPCR前に反応物に対して添加し、増幅し、そして生成物に対してハイブリダイズした場合に検出される。高密度での二本鎖に対するLightCycler Greenの結合は、プローブ上のアクセプター色素に対して好ましい励起を与え、その結果、高い程度のアクセプター蛍光を生成する。以前は、高いbp/色素比を有する色素を使用し、そして低レベルのアクセプター蛍光を生成するのみであった。
【0163】
複数色の実験を、複数のプローブを用いて行うことができる。例えば、全アンプリコン融解を、470 nmでモニターすることができ、蛍光標識プローブの放射を、515 nmでモニターすることができ、HEX-標識プローブ(プライマーに対してDNA内部の異なる部分に対してハイブリダイズする)を第三の波長でモニターしそしてTET標識プローブ(プライマーに対してさらに異なる部分に対してハイブリダイズする)を第4の波長でモニターする。当該技術分野において周知であるように、色彩比較を使用して、重複する4種のシグナルを逆重畳積分(deconvolute)することができる。結果は、第一のシグナルを使用してアンプリコン全体にわたる変異をスキャンすることができ、一方第2、第3、および第4のシグナルにより、アンプリコン内部のより小さな領域を遺伝子型決定することができる。
【0164】
実施例13 その他のdsDNA結合性色素
表1は、37種の異なる色素の特徴および特性をまとめたものである。試験されたこれらの色素のうち12種は、ヘテロ接合性のデルタF508遺伝子型が増幅された場合(非-機能的)、ヘテロ二本鎖ピークを形成しなかった。ヘテロ二本鎖ピークを、37種の異なる色素のうちの25種(機能的)により検出した。もっとも強いヘテロ二本鎖シグナルは、LightCycler Greenを使用した場合に生じたが、いくつかのその他の色素も良好なヘテロ二本鎖シグナルを示した。ヘテロ二本鎖を示した色素のほとんどは、飽和性の濃度あるいは飽和性に近い濃度で、PCRに適合性であった。この相関関係により、融解曲線解析によりヘテロ二本鎖を検出することができる色素を合理的に予想することが可能になる。50%飽和は、ヘテロ二本鎖検出の合理的な予想を提供する。いくつかの機能的な色素が失われるあいだ、約80%、90%の飽和%、または99%の飽和%でさえも、使用して、ヘテロ二本鎖を検出することができる色素を同定することができる。
【0165】
同様に、機能的な非対称性シアニン色素の多くは、50%飽和で低いbp/色素比を有し、具体的には4.0 bp/色素以下、そしてより具体的には2.0 bp/色素以下を有する。この低いbp/色素比のため、再分配が、融解の初期段階のあいだ阻害されるかまたは最小化され、そしてその結果、ヘテロ二本鎖をより容易に検出することができた、と最初は考えられた。しかしながら、表1に見られるように、いくつかの色素は、実質的により高いbp/色素比を有していても、ヘテロ二本鎖を検出することができることが見いだされた。さらに、低いbp/色素比を有する色素は、飽和レベルよりも実質的に低い濃度で存在する場合でも、ヘテロ二本鎖を検出することができる。このように、低いbp/色素比は、ヘテロ二本鎖形成に適した色素を同定する差異の一つの因子に過ぎない。
【0166】
蛍光は、モル吸光係数が高い(>30,000)場合に、好ましくはより強力である。上位2種の色素(ヘテロ二本鎖検出に関して)は、430〜455 nmで励起極大をそして450〜480 nmで放射極大を示す。一般的には、これらは、典型的なリアルタイム装置の蛍光チャンネルにおいて通常使用される波長よりもより短波長である。そうであっても、LightCycler Greenからの蛍光シグナルは、SYBR(商標)Green Iから得られるものよりも強く、これはSYBR(商標)Green Iが使用されたフィルターとの波長適合性が非常によいことを考慮すると驚くべき知見である(図11)。
【0167】
【表1−1】

【0168】
【表1−2】

【0169】
1 製造者のデータにしたがったモル吸光係数。
2. 製造者により提示された蛍光スペクトル、または(上付きa)2.5μM bp(100 ng/60μl)のdsDNAおよびPCRバッファー(3 mMのMgCl2、50 mMのTris、pH 8.3、200μMの各dNTP、500μg/mlのBSA)中最大PCR適合性濃度での色素を使用して蛍光計にて得られる蛍光スペクトル。Ex-励起極大;Em=放射極大。
【0170】
3. 顕著な阻害なく増幅が可能な、PCR混合物中に存在しうる色素の最大濃度。いくつかの色素濃度は、製造者より供給される物質からの希釈倍率として現される(上付b)。
4.飽和性濃度(すなわち、可能な限り最高の蛍光強度を与える濃度)での同一の色素の蛍光と比較した、最大PCR適合性色素濃度での%蛍光。すべては15μM bp DNA(100 ng dsDNA/10μl)およびPCRバッファーの存在下。
【0171】
5. 取得可能な最大蛍光強度(すなわち、飽和時の強度)の50%を産生するために必要とされる色素の濃度、またはbp/色素比。15μM bp DNAの存在下。
6. 実施例5のdel F508ヘテロ接合体の44 bpのアンプリコンの融解曲線を使用し、加熱勾配0.3℃/sで得た、HR-1高分解能装置での450〜490 nm励起および510〜530 nm検出光学系を用いて測定した場合の、ヘテロ二本鎖特徴的ピークの%ピーク領域。
【0172】
実施例14 ピリミジニウムベースのDNA結合性色素の調製と使用
以下のピリミジニウムコア構造を有する色素の特定の態様が調製された:
【0173】
【化27】

【0174】
ここで、
【0175】
【化28】

【0176】
、X、R2、R3、およびR5は、式Iについて本明細書中で定義したとおりであり、そしてBは式Vにおいて定義したとおりである。
この式を有する色素を調製する方法は多数存在するが、一つの方法は以下の通りのものである:
【0177】
【化29】

【0178】
ここで、化合物6は、商業的に入手可能であり、または従来法により調製することができる。化合物7aは、アルキルリチウム、芳香族アミン類および脂肪族アミン類、K2C03などを含む、アルキルハロゲン化物、アルキルスルフェートなどのアルキル化剤を、中性または塩基性条件下で用いることにより、化合物6をN(3)でアルキル化することにより調製される。同様に、化合物7aは、芳香族ハロゲン化合物、ボロネートなど、銅、パラジウム、プラチナ、類似する触媒などの金属化合物により触媒されるものの芳香族カップリング反応により、化合物6をN(3)でアリール化することにより調製される。化合物7bは、過酸化水素、ni-CPBAなどを含む過酸を用いる反応などの従来法の酸化により、化合物7aから調製される。いくつかの場合、化合物7aまたは化合物7bは、商業的に入手可能である。化合物8は、商業的に入手可能であり、または上述した様にN(1)でアルキル化またはアリール化することにより、従来法により調製される。あるいは、化合物8は、適切に置換された1,3-ジオン類および尿素またはチオ尿素の縮合により調製される。さらに、本明細書中で定義されそしてC(2)にてハロゲン化物、アルキルスルホニル、アリールスルホニルなどを含む、脱離基を有する化合物8は、窒素-、酸素-、およびイオウ-ベースの求核試薬などの求核試薬を、中性または塩基性条件下で、C(2)に導入することにより修飾することができる。さらに、C(2)に酸素またはイオウ求核基を有する化合物8は、C(2)のヒドロキシまたはチオールにアルキル化剤またはアシル化剤を、中性または塩基性条件下で導入することにより、修飾することができる。化合物9は、本明細書中で記載されるように、中性または塩基性条件下で、化合物7および化合物8を反応させることにより調製される。
【0179】
この式を有する例示的な化合物は、本明細書中で記載されたように調製され、トリエチルアミン-酢酸アンモニウムを移動相として使用するHPLCにより精製し、そしてそれらの対応する酢酸塩として単離された。これらの例示的な化合物を、表2中に示す。
【0180】
【表2−1】

【0181】
【表2−2】

【0182】
化合物D6を、最初に、アセトニトリル中、4-メチルピリミジンを(3-ブロモプロピル)臭化トリメチルアンモニウムと環流させて反応させることにより調製した。アセトニトリル中の得られた生成物(化合物A6)を、3-メチル-2-メチルスルホニルヨウ化ベンゾチアゾリウム(Aldrichから入手可能)と、無水ピリジンおよびトリエチルアミンの存在下、アルゴン条件下での環流にて反応させた。
【0183】
化合物E6を、3-メチル-2-メチルスルホニルヨウ化ベンズオキサゾリウム(2-メチルスルホニルベンズオキサゾールをジメチル硫酸と反応させることにより調製したもの)および化合物A6から化合物D6を調製するために使用される一般的方法にしたがって調製した。
【0184】
化合物G5を、2-メチルチオ-3-フェニルベンゾチアゾリウム(Aldrich)および化合物A6から化合物D6を調製するために使用される一般的方法にしたがって調製した。
化合物H5を、5-ジフルオロメチルスルホニル-3-メチル-2-メチルチオベンゾチアゾリウムメチル硫酸(Aldrichから入手可能な5-ジフルオロメチルスルホニル-2-メチルチオベンゾチアゾールを、ジメチル硫酸と反応させることにより調製したもの)および化合物A6から化合物D6を調製するために使用される一般的方法にしたがって調製した。
【0185】
化合物P6を、5-クロロ-2-(メチルチオ)-3-(3-スルホプロピル)-ベンゾチアゾリウムヒドロキシド(Aldrich)および化合物A6から化合物D6を調製するために使用される一般的方法にしたがって調製した。
【0186】
化合物R6を、6-アミノ-3-メチル-2-メチルチオベンゾチアゾリウムメチル硫酸(Aldrichから入手可能な6-アミノ-2-メチルチオベンゾチアゾールを、ジメチル硫酸と反応させることにより調製したもの)および化合物A6から化合物D6を調製するために使用される一般的方法にしたがって調製した。
【0187】
化合物Y6を、3-メチル-2-メチルスルホニルナフト[1,2-d]オキサゾリウムメチル硫酸(Chem Bridge Product List(San Diego, CA)から入手可能な2-メチルスルホニルナフト[1,2-d]オキサゾールを、ジメチル硫酸と反応させることにより調製したもの)および化合物A6から化合物D6を調製するために使用される一般的方法にしたがって調製した。
【0188】
化合物Z6を、3-メチル-2-メチルスルホニルナフト[1,2-d]チアゾリウムメチル硫酸(Specs(Rijswijk, The Netherlands)から入手可能な2-メチルスルホニルナフト[1,2-d]チアゾールを、ジメチル硫酸と反応させることにより調製したもの)および化合物A6から化合物D6を調製するために使用される一般的方法にしたがって調製した。
【0189】
化合物D8を、HCl/EtOH中のN-フェニルチオ尿素および2,4-ペンタンジオン溶液を環流して加熱することにより調製した。得られたピリミジンチオンを、クロロホルム/メタノール(10:1)中のトリエチルアミンの存在下にて、一晩環流して3-メチル-2-メチルスルホニルヨウ化ベンゾチアゾリウムと反応させ、化合物D8を得た。
【0190】
化合物I5、K5、L5、G8、K8、L8、I8、M8、N8、C8、E8、F7、および08を、上述したのと同様の方法により調製することができる。これらの色素が、ヘテロ二本鎖の検出に有用であることが予想される。
【0191】
本明細書中に記載されるピリミジニウムベースのシアニン色素は、例示的には、G5、H5、D6、E6、P6、R6、Y6、Z6、およびD8であるが、これらは新規なものであり、そしてヘテロ二本鎖の検出、変異スキャニングおよび遺伝子型決定のために使用することができる。これらの色素をヘテロ二本鎖の検出において使用した結果を、表3中にまとめる。LC Greenに関するヘテロ二本鎖%は、表3において、表1におけるよりも高いことに注目すべきである。この相違は、表3に示すデータを得る際に使用されたより大きなアンプリコンによる様である。
【0192】
【表3】

【0193】
1. 2.5μM bp(100 ng/60μl)のdsDNAおよびPCRバッファー(3 mMのMgCl2、50 mMのTris、pH 8.3、200μMの各dNTP、500μg/mlのBSA)中、最大PCR適合性濃度での色素を使用して、蛍光計において得られた励起極大(Ex)および放射極大(Em)。いくつかの色素は、幅広い放射ピークまたは励起ピークに基づく範囲を有する。
【0194】
2.顕著な阻害なく増幅を可能にする、PCR混合物中に存在しうる最大量の色素。飽和性濃度、すなわち可能な最高の蛍光強度を与える濃度での同一の色素の蛍光と比較した蛍光%として現される。すべては、15μM bp DNA(100 ng dsDNA/10μl)およびPCRバッファーの存在下である。
【0195】
3. 0.3℃/sの加熱勾配で得られたdel F508ヘテロ接合体融解曲線を使用して、420〜490 nmの励起および450〜530 nmの検出光学系を用いて測定したヘテロ二本鎖特徴的ピークの%ピーク領域。実験のこの組み合わせで使用されたアンプリコンは、プライマーGGCACCATTAAAGAAAATAT(SEQ ID NO: 23)およびTCTGTATCTATATTCATCATAGG(SEQ ID NO: 24)により生成された57 bpの長さのものであった。得られた最大%を記録した。
【0196】
実施例15 遺伝子型比較のための高分解能融解曲線解析
本発明の色素を使用して、2個体のいずれもが遺伝子断片上の同一の対立遺伝子共有しているかどうかを決定することができる。以前の事例において、参照サンプルの遺伝子型(正確な対立遺伝子、ヘテロ接合性、およびハプロタイプを含む)が既知であった。いくつかの用途において、参照サンプルの正確な遺伝子型は、高分解能融解曲線解析により別の個体のサンプル(または未知の起源のサンプル)が参照サンプルと同一かどうかを決定することができる限りにおいて、既知である必要はない。例示的な実施例は、ファミリー構成員間で共有されるHLA対立遺伝子を同定することである。
【0197】
ヒト白血球抗原(HLA)は、白血球細胞および免疫認識において中心的な働きをし、そしてその結果、移植寛容性または拒絶において中心的な働きをする、身体のその他の組織の細胞表面タンパク質である。ドナーとレシピエントとのあいだのHLA対立遺伝子の適合性が、臓器移植には重要である。HLAタンパク質は、2種の主要な群:クラスIおよびクラスIIを形成する。それぞれの群は、複数遺伝子によりコードされる。組織のHLA対立遺伝子形質を決定するために現在のところ受け入れられている技術には、特異的抗体試薬を用いた血清型決定、核酸プローブとのハイブリダイゼーション、そしてHLA遺伝子の直接的配列決定が含まれる。非常に多数の遺伝子および遺伝子座を調べる必要があるため、HLA対立遺伝子形質を決定するためのコストは、1人当たり$1,000を超える。HLAの完全な遺伝子型決定は、ドナーおよびレシピエントが非血縁者である場合に必要とされる。しかしながら、兄弟間で完全にHLAが適合するのは、約25%の確率であり、そしてそのために兄弟間での臓器移植は、HLA適合性が移植可能であることを示している場合には好ましい。この場合、ドナーおよびレシピエントの血縁者は、同一のHLA対立遺伝子を共有していることが示されることのみが必要とされる。共有されている対立遺伝子の正確な同定を行うことは必要とされない。
【0198】
CEPH/家系のUtahの家族1331のゲノムDNAサンプルは、Coriell Instituteから得た。血縁内の祖父・祖母4人、2人の親、そして11人の子供を含むこの家系には、3世代にわたって、17人がいる(家族1331の家系は、図15に示す)。周知のホモ接合性の遺伝子型を有する2種のその他のサンプル、HLA-A BM15(0101)およびBM16(0202)もまた、Coriellから得た。
【0199】
HLA-A遺伝子の2種のエクソンの増幅を、以下の様にして行った:HLAクラスI遺伝子は、それらのコード化エクソンの長さにわたって非常に類似しているため、HLA-A遺伝子のみを増幅し、関連するクラスI遺伝子を増幅しないPCRプライマーを設計することは困難である。最初のPCRラウンドでHLA-A遺伝子の大型の(948 bp)断片を特異的に増幅し、その後内部プライマーを使用してその生成物の2回目の増幅を行うネスト化PCR戦略を採用した。1回目のPCRにおいて使用したプライマーは、HLA-Aイントロン1(フォワードプライマー5'-GAAAC(C/G)GCCTCTG(C/T)GGGGAGAAGCAA(SEQ ID NO 9、SEQ ID NO 10、SEQ ID NO 11、SEQ ID NO 12))およびイントロン4(リバースプライマー5'-TGTTGGTCCCAATTGTCTCCCCTC(SEQ ID NO 13))にハイブリダイズした。2回目のPCRにおいて、フォワードプライマー5'AGCCGCGCC(G/T)GGAAGAGGGTCG(SEQ ID NO 14、SEQ ID NO 15)およびリバースプライマー5'GGCCGGGGTCACTCACCG(SEQ ID NO 16)を使用して、HLA-Aエクソン2の335 bp部分を増幅させた。フォワードプライマー5'CCC(G/A)GGTTGGTCGGGGC(SEQ ID NO 17、SEQ ID NO 18)およびリバースプライマー5'ATCAG(G/T)GAGGCGCCCCGTG(SEQ ID NO 19、SEQ ID NO 20)を使用して、HLA-Aエクソン3の366 bp断片を増幅した。本実施例のプライマー配列において、(N/N')は、プライマーが、等しい割合のNとN'とをその位置に有するヌクレオチド配列の混合物であることを示す。例えば、HLA-Aエクソン2の335 bp部分についてのフォワードプライマーは、SEQ ID NO 17およびSEQ ID NO 18により示される様に、GまたはAのいずれかを4番目の位置に有する2ヌクレオチドの等量混合物を含有する。HLA-Aイントロン1のためのフォワードプライマーは、そのような部位を2箇所有し、そしてその結果、SEQ ID NO 9、SEQ ID NO 10、SEQ ID NO 11およびSEQ ID NO 12により示されるように、4ヌクレオチドの等量混合物である。
【0200】
すべてのPCRを、RocheのLightCycler(商標)を用いてガラス毛細管中で行った。最初のPCRは、1Oμl中3 mM Mg++、50 mM Tris-HCl、pH 8.3、500μg/mlのBSAおよび20μMの色素D6のバッファー中、0.5μMのフォワードプライマーおよびリバースプライマー、50 ngのゲノムDNAを含有した。循環条件は、94℃で20秒の後、94℃で1秒、62℃で0秒、72℃で1分を1サイクルとして40サイクルであった。二回目のネスト化PCRは、2 mM Mg++を含有する同一のバッファー中、0.25μMのフォワードプライマーおよびリバースプライマー、1回目のPCR生成物の1/10000を含有した。循環条件は、94℃で5秒の後、94℃で1秒、65℃で0秒、72℃で8秒を1サイクルとして25サイクルであった。
【0201】
2回目の増幅の後、ガラス毛細管を高分解能融解装置HR-1に移し、そして融解を行った。60℃から95℃まで、0.3℃/sの速度で加熱し、そして蛍光(450 nmの励起/470 nmの放射)および温度測定を、40秒毎に取得した(図16A〜B)。ネスト化された配列決定用生成物を、ABI 3700により配列決定した。Sequencher version 4.0を、配列解析のために使用した。
【0202】
融解曲線解析結果と配列決定の結果との一致が、以下のように決定された:CEPH/家系Utah家族1331の17人の構成員から増幅されたエクソン2およびエクソン3のPCR生成物の融解曲線解析を、6種の異なる群に分類した(図16A〜B)。このことから、この家族において6種の異なるHLA-A遺伝子型が存在することが示唆された。エクソン2およびエクソン3のPCR生成物を配列決定し、そしてその結果から、融解曲線解析により、6種の遺伝子型:家族構成員1、4、7、12についてHLA-A 02011/3101(本明細書中では、遺伝子型ABと呼ぶ);家族構成員3、5、6、11、17についてHLA-A 3101/2402101(遺伝子型BC);家族構成員2、9、10、16についてHLA-A 02011/2402101(遺伝子型AC);家族構成員13、14についてHLA-A 02011/03011(遺伝子型AD);家族構成員8についてHLA-A 02011/02011(遺伝子型AA);そして家族構成員15についてHLA-A 2402101/01011(遺伝子型CE)が同定されることを確認した(エクソン2についての結果を、図16A〜Bに示す)。
【0203】
いくつかの場合において、兄弟からの増幅生成物が、異なる遺伝子型を有しているにもかかわらず、同一またはほぼ同一の融解曲線を示す場合がある。そのような場合において、最初のPCR前に2人の兄弟から採取したゲノムDNAを混合し、2回の増幅工程および融解曲線解析を行ったところ、非同一遺伝子型から、同一な遺伝子型を差別化することができる。特に、兄弟が同一の遺伝子型を有している場合、混合された融解曲線は、別々に行われた融解曲線と同一であろう。兄弟が異なる遺伝子型を有する場合、混合された融解曲線は個々の融解曲線のものとは異なるだろう。それぞれの群内の実験を混合すると、それぞれの群の構成員が、同一の遺伝子型を共有することが確認された。
【0204】
混合解析技術の別の事例は、2種のホモ接合性のサンプル、BM15(0101)およびBM16(0201)により示された。この場合において、2種の対立遺伝子が、HLA-Aエクソン2の全長にわたり全部で15ヌクレオチドの差異を有しているが、しかしそれらが類似した融解曲線を有している。混合サンプルPCRにおいてHLA-Aエクソン2から作成されたヘテロハイブリッド体中に存在する15個のミスマッチのため、混合サンプルの融解曲線は、顕著に左方にシフトした(より低い溶融温度)(図17を参照)。
【0205】
実施例16 飽和性色素を用いたリアルタイムにおける増幅のモニタリング
HTR2A遺伝子の60 bpの断片を、フォワードプライマーおよびリバースプライマーとして、それぞれACCAGGCTCTACAGTAA(SEQ ID NO 21)およびGTTAAATGCATCAGAAG(SEQ ID NO 22)を用いて増幅した。増幅を、実施例11に記載した試薬を使用して、しかしLightCycler(商標)を用いて、95℃で0秒、62℃で2秒、74℃で20秒にしたというように温度循環パラメータに修飾をして、行った。様々な濃度のSYBR(商標)Green I、GelStar(商標);、およびSYTO(商標)16は、独立して反応混合物中に存在した。蛍光データを、各増幅サイクル毎に、40サイクルまで取得した。増幅プロット(x軸上にプロットされたサイクル数に対して、y軸上の蛍光強度)の第二の誘導された極大として計算された蛍光が交叉する点(Cp)は、以下のように得た:
【0206】
【表4】

【0207】
シグナルがバックグラウンドから上昇するサイクル数を示すCp値は、反応物中に存在する阻害剤が増幅の効率に影響を与える場合、増大すると予想される。しかしながら、これらの実験条件下では、色素量の増加による阻害の結果、Cpの漸増ではなく、増幅の急激かつ完全な消去となる。アンプリコンのサイズが小さいため(より大きなアンプリコンと比較してより小さなシグナルを生じる)、SYBR(商標)Green I色素を、リアルタイムモニタリングのための2倍濃度の範囲でのみ使用することができる。対照的に、GelStar(商標)およびSYTO(商標)16を、8倍濃度の範囲内で使用することができる。多数の飽和性色素が、増幅のリアルタイムモニタリングにおいて使用することができる幅広い範囲の濃度を有することが企図される。
【0208】
以下の検討において、本発明の単なる例示的な態様を開示しそして記載する。当業者は、そのような検討から、そして添付する図面や請求の範囲から、請求の範囲に記載される本発明の思想および範囲から離れることなく、この中で、様々な変更、修飾、そして多様性をなす事ができることを、容易に理解するだろう。
【0209】
本明細書中で引用されたすべての文献は、参考文献として、完全に記載されたものとして援用される。
【図面の簡単な説明】
【0210】
【図1】図1は、LightCycler Greenを使用した、第V因子Leidenの遺伝子型決定を示す。融解曲線の陰性な一次導関数(-dF/dT)が示される。
【図2】図2は、融解解析の前の冷却速度がヘテロ二本鎖の検出に与える作用について示す。
【図3】図3は、融解解析のあいだの加熱速度がヘテロ二本鎖の検出に与える作用について示す。
【図4】図4は、ヘテロ二本鎖の6種の組み合わせを検出するためのモデルシステムを示す。
【図5−1】図5A〜Dは、遺伝子型決定方法の比較を示す;図5Aは、プライマー上の任意の標識の位置を表示した(星形)嚢胞性線維腫マップを示す。図5Bは、標識プライマーを使用した遺伝子型決定を示す。
【図5−2】図5A〜Dは、遺伝子型決定方法の比較を示す;図5Cは、LightCycler Greenを使用した遺伝子型決定を示す。そして図5Dは、SYBR(商標)Green Iを使用した遺伝子型決定に対する試みを示す。
【数1】

【図6】図6は、より長いアンプリコンについてのLightCycler Greenを用いた遺伝子型決定を示す。
【数2】

3個体についての融解曲線(導関数ではない)を示す。
【図7】図7A〜Bは、SYBR(商標)Green I(図7A)そしてLightCycler Green(図7B)を使用した、DNA混合物の導関数融解曲線を示す。
【図8】図8は、複数のDNA種が存在する場合の蛍光変化の非線形性を示す。LightCycler Green(白丸)およびSYBR(商標)Green I(黒四角)が示される。
【図9】図9A〜Bは、飽和%を調べるための色素滴定を示す。図9Aでは、黒菱形-SYBR(商標)Green、黒四角-SYBRX(商標)Gold、黒三角-Pico Green、図9Bでは、白丸-LightCycler Green、黒四角-SYTOX(商標)Green。SYBR(商標)Green IおよびLightCycler Greenについての例示的なPCR範囲は、陰付き四角により示される。
【図10】図10は、色素濃度の溶融温度に対する作用を示す。
【図11】図11A〜Bは、LightCycler Green(図11A)およびSYBR(商標)Green I(図11B)についての励起スペクトルおよび放射スペクトルを示す。
【図12−1】図12A〜Dは、βグロビンの110 bp断片内での6種の異なる遺伝子型についての、4つに分けたサンプルの高分解能融解曲線解析を示す。
【数3】

図12Aは、各遺伝子型について4つに分けたサンプルの高分解能融解から得られた生データを示す。
【図12−2】図12A〜Dは、βグロビンの110 bp断片内での6種の異なる遺伝子型についての、4つに分けたサンプルの高分解能融解曲線解析を示す。図12Bは、6種の遺伝子型について4つに分けたサンプルの正規化された高分解能融解曲線を示す;
【図12−3】図12A〜Dは、βグロビンの110 bp断片内での6種の異なる遺伝子型についての、4つに分けたサンプルの高分解能融解曲線解析を示す。図12Cは、6種の遺伝子型について4つに分けたサンプルの温度シフトさせ、正規化した、高分解能融解曲線を示す。これらのサンプルを温度シフトさせ、5および10%蛍光のあいだで曲線を重複させる。
【図12−4】図12A〜Dは、βグロビンの110 bp断片内での6種の異なる遺伝子型についての、4つに分けたサンプルの高分解能融解曲線解析を示す。図12Dは、図12Cのデータから得られた蛍光差異曲線を示す。それぞれの差異曲線を、正常(AA)曲線からそれぞれのサンプルを差し引いて、差異データを得ることにより得た。4つに分けたサンプルを実行する一方、重複のために、4つよりも少ないサンプルがいくつかの事例では生じる。
【図13−1】図13Aは、ヒト5-ヒドロキシトリプタミン受容体2A(HTR2A)遺伝子の544 bp断片の3種の遺伝子型の2つに分けたサンプルの融解曲線解析を示す。
【数4】

データは、10〜20%蛍光の部分を使用して、正規化し、そして温度シフトさせた。
【図13−2】ホモ二本鎖の理論的融解マップを、図13B中に示す。一塩基多型の位置を表示する(X)。
【図14】図14は、嚢胞性線維腫膜貫通コンダクタンス制御因子(CFTR)遺伝子の612 bp断片の6種の遺伝子型の差異曲線を示す。プロットは、30〜40%蛍光の部分を重複させることにより、正規化し、そして温度シフトさせ、そして野生型プロットの一つから差し引いた。
【図15】図15は、Utah家族1331と呼ばれるCEPHの家系を示す。Utah家族1331のHLA-Aの遺伝子型は、以下の通りである:A:02011;B:3101;C:2402101;D:03011;E:01011。それぞれの個体には番号を付ける。女性(丸);男性(四角)。
【図16−1】図16AおよびBは、Utah家族1331構成員の融解曲線を示す。HLA-Aエクソン2中の6種の遺伝子型を示す6種の異なる融解曲線は、17人の家族構成員間で存在する。図16Aは、完全な融解曲線を示し、そして図16Bは、拡大部分(図16A中で四角で示される)を示し、遺伝子型の表示およびかっこ内に個体の表示を伴う。
【図16−2】図16AおよびBは、Utah家族1331構成員の融解曲線を示す。HLA-Aエクソン2中の6種の遺伝子型を示す6種の異なる融解曲線は、17人の家族構成員間で存在する。図16Aは、完全な融解曲線を示し、そして図16Bは、拡大部分(図16A中で四角で示される)を示し、遺伝子型の表示およびかっこ内に個体の表示を伴う。
【図17】図17は、混合することによる、2種類のサンプル遺伝子型の決定を示す。
【数5】

2種のホモ接合性のサンプル、BM15(0101)およびBM16(0201)は、HLA-Aエクソン2上に15-bpの差異を有する。BM15およびBM16の融解曲線は、別々に採取したときには同様であるが、混合した場合には、15-bpのミスマッチが融解曲線をシフトさせる。
【配列表】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的核酸、
PCR試薬、
標的核酸を増幅するために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー、および
少なくとも50%の飽和%を有するdsDNA結合色素、
を含むPCR反応混合物。
【請求項2】
dsDNA結合色素が、少なくとも80%の飽和%を有する、請求項1に記載のPCR反応混合物。
【請求項3】
dsDNA結合色素が、少なくとも90%の飽和%を有する、請求項1に記載のPCR反応混合物。
【請求項4】
dsDNA結合色素が、少なくとも99%の飽和%を有する、請求項1に記載のPCR反応混合物。
【請求項5】
色素が、約410〜460 nmのあいだに励起極大を有し、そして約450〜500 nmのあいだに放射極大を有する、請求項1に記載のPCR反応混合物。
【請求項6】
色素が、約430〜460 nmのあいだに励起極大を有し、そして約460〜490 nmのあいだに放射極大を有する、請求項1に記載のPCR反応混合物。
【請求項7】
色素が、溶融温度解析のあいだにヘテロ接合体を検出することができるシアニン色素である、請求項1に記載のPCR反応混合物。
【請求項8】
シアニン色素が、ピリジニウム、ピリミジニウム、またはキノリニウムのコア構造を有する、請求項7に記載のPCR反応混合物。
【請求項9】
シアニン色素が、以下の式:
【化1】

ここで、部分
【化2】

は、場合により置換され融合されている単環式または多環式芳香環または窒素-含有ヘテロ芳香環を示し;
Xは、酸素、イオウ、セレニウム、テルリウム、またはC(CH32およびNR1から選択される基であり、ここでR1は、水素またはアルキルであり;
R2はアルキルであり;
t=0または1であり;
Zは、0または1から選択される電荷であり;
R3、R9、およびR10のそれぞれは、独立して水素およびアルキルから選択され;
n=0、1、または2であり;そして
Qは、ピリジニウム、ピリミジニウム、キノリニウム(キノリニウム)、またはプリニウム(purinium)などのヘテロ環であり、そのそれぞれは場合により置換されていてもよい;
を有する化合物である、請求項7に記載のPCR反応混合物。
【請求項10】
シアニン色素が、以下の式:
【化3】

ここで、部分
【化4】

は、場合により置換され融合されている単環式または多環式芳香環または窒素-含有ヘテロ芳香環を示し;
Xは、酸素、イオウ、またはC(CH32、およびNR1から選択される基であり、ここでR1は水素またはC1-6アルキルであり;
R2はアルキルであり;
t=0または1であり;
Zは0または1から選択される電荷であり;
R3、R9、およびR10は、それぞれ独立して水素およびアルキルから選択され;
n=0、1、または2であり;そして
R4、R5、R8、R11、R12、R13、およびR14は、式Iに関して本明細書中に記載される通りであり、ただし、R4は、約115未満の分子量を有する部分であるか、または具体的には約105未満の分子量を有する部分である、
を有する化合物である、請求項7に記載のPCR反応混合物。
【請求項11】
シアニン色素が、LightCycler Greenである、請求項7に記載のPCR反応混合物。
【請求項12】
シアニン色素が、以下の式:
【化5】

を有する化合物である、請求項7に記載のPCR反応混合物。
【請求項13】
色素が、JO-PROTM-1、GelStar(商標)、SYTO(商標)44、SYTO(商標)45、POPOTM-3、SYTO(商標)12、TOTOTM-3、SYTO(商標)16、SYTOX(商標)Blue、Thiazole Orange、YOYO(商標)-3、SYTO(商標)43、SYTO(商標)11、SYTO(商標)13、SYTO(商標)15、BOBOTM-3、LO-PROTM-1、SYTO(商標)23、SYTO(商標)20、BOBOTM-1、POPOTM-1、G5、H5、D6、E6、P6、R6、Y6、Z6、およびD8からなる群から選択される、請求項1に記載のPCR反応混合物。
【請求項14】
色素が、PCRに適合性の最大濃度の少なくとも50%の濃度で存在する、請求項1に記載のPCR反応混合物。
【請求項15】
色素が、PCRに適合性の最大濃度の90〜100%の濃度で存在する、請求項1に記載のPCR反応混合物。
【請求項16】
色素が、PCRに適合性の最大濃度の高々20%の濃度で存在する、請求項1に記載のPCR反応混合物。
【請求項17】
少なくとも50%の飽和%を有するdsDNA結合色素の存在下にて、標的核酸を増幅する工程;
増幅された標的核酸を融解して融解曲線を作成する工程;そして
融解曲線から遺伝子型を同定する工程;
を含む、遺伝子型を決定する方法。
【請求項18】
融解曲線を450〜490 nmの励起範囲および510〜530 nmの放射検出範囲を有する蛍光計を用いて作成し、そして色素が410〜465 nmの範囲の励起極大および450〜500 nmの範囲の放射極大を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
色素の励起極大が430〜460 nmの範囲であり、そして放射極大が450〜500 nmの範囲である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
標的核酸が一塩基多型を含み、そして同定工程が結果として得られるヘテロ二本鎖およびホモ二本鎖を同定することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
融解工程が、増幅に引き続いて生じる、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
融解工程が、増幅の間に生じる、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
(a)標的核酸を含むサンプルに対して、少なくとも50%の飽和%を有するdsDNA結合色素を添加する工程;
(b)dsDNA結合色素の存在下にて、標的核酸を増幅する工程;
(c)増幅された標的核酸を融解して融解曲線を作成する工程;
(d)第二のサンプルについて工程(b)および(c)を繰り返して第二の第二の融解曲線を得る工程;そして
(e)両融解曲線を比較する工程;
を含む、変異スキャニングのための方法。
【請求項24】
少なくとも50%の飽和%を有するdsDNA結合色素を、標的核酸と標的核酸を増幅する様に設計されたプライマーとを含むサンプルと混合する工程;
dsDNA結合色素の存在下にて標的核酸を増幅する工程;そして
dsDNA結合色素の蛍光をモニターする工程;
を含む、PCR解析の方法。
【請求項25】
標的核酸についての融解曲線を作成する工程;
融解曲線の規模(magnitude)を正規化する工程;
混合工程、増幅工程、作成工程および正規化工程を少なくとも1つの追加の標的核酸を用いて繰り返す工程;そして
正規化された融解曲線を比較する工程;
をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
正規化された曲線間での温度差をプロットする工程をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
それぞれの曲線の部分を重ね合わせる(superimposing)ことにより、融解曲線を温度シフトさせる工程をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
温度シフトされた曲線間での温度差をプロットする工程をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
色素が、LC Green、Gel Star、およびSYTO(商標)16からなる群から選択される、請求項24または25に記載の方法。
【請求項30】
色素が、PO-PROTM-1、JO-PROTM-1、BO-PROTM-1、SYTO(商標)44、SYTO(商標)45、YO-PROTM-1、POPOTM-3、SYTO(商標)12、TOTOTM-3、SYTOX(商標)Blue、Thiazole Orange、YOYOTM-3、SYTO(商標)43、SYTO(商標)11、SYTO(商標)13、SYTO(商標)15、BOBOTM-3、LO-PROTM-1、SYTO(商標)23、TO-PROTM-1、SYTO(商標)20、BOBOTM-1、POPOTM-1、G5、H5、D6、E6、P6、R6、Y6、Z6、およびD8からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
蛍光を、増幅のあいだモニターする、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
蛍光を、増幅の後の融解曲線解析のあいだにモニターする、請求項24に記載の方法。
【請求項33】
サンプルが、標的核酸にハイブリダイズする様に設計されたプローブをさらに含み、このプローブはdsDNA結合色素からの蛍光共鳴エネルギー転移を許容するアクセプター色素により標識され、そしてアクセプター色素からの蛍光をモニターする工程をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項34】
標的核酸が、高々100 bpである、請求項24に記載の方法。
【請求項35】
標的核酸が、高々50 bpであり、そして一つの融解ドメインのみを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
標的核酸が、可変の融解ドメインと不変の融解ドメインを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項37】
標的核酸に関する融解曲線を作成する工程;
混合工程、増幅工程、および作成工程を、少なくとも1つの追加の標的核酸を用いて繰り返す工程;
温度軸調整(temperature axis adjustment)のために不変の融解ドメインを使用する工程;そして
標的核酸についての融解曲線を、追加の標的核酸についての融解曲線と比較する工程;
をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
色素が、LC Green、PO-PROTM-1、JO-PROTM-1、およびBO-PROTM-1からなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項39】
増幅工程およびモニター工程が閉鎖性のチューブ中で生じ、そして増幅の開始の後は試薬を全く追加しない、請求項24に記載の方法。
【請求項40】
モニター工程が、増幅工程に引き続いて生じ、そして融解曲線解析を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項41】
モニター工程が、増幅のあいだに生じる、請求項24に記載の方法。
【請求項42】
増幅後の融解曲線解析を行う工程をさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
請求項1〜17のいずれか1項に記載のPCR混合物を少なくともアニーリング温度と変性温度とのあいだで循環させる工程;
標的核酸を増幅し、標的核酸について融解曲線を作成する工程;そして
融解曲線を使用して標的核酸が第二の核酸として同一の配列を有するかどうかを決定する工程;
を含む、PCR解析の方法。
【請求項44】
作成工程の循環が閉鎖系のチューブ中で生じ、そして増幅の開始の後はチューブに対して試薬を全く追加しない、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
dsDNA結合色素を、標的核酸と標的核酸を増幅するために設計されたプライマーとを含むサンプルと混合する工程;
dsDNA結合色素の存在下にて、標的核酸を増幅する工程;
dsDNA結合色素の蛍光をモニターする工程;
標的核酸についての融解曲線を作成する工程;
融解曲線を正規化する工程;
混合工程、増幅工程、正規化工程、そして作成工程を、少なくとも1つの追加の標的核酸を用いて繰り返す工程;そして
正規化された融解曲線どうしを比較する工程
を含む、PCR解析の方法。
【請求項46】
正規化された曲線間での温度差をプロットする工程をさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
それぞれの曲線の部分を重ね合わせることにより、融解曲線を温度シフトさせる工程をさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
温度シフトされた曲線間での温度差をプロットする工程をさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
以下の式:
【化6】

ここで、部分
【化7】

は、場合により置換され融合されている単環式または多環式芳香環、または場合により置換され融合されている単環式または多環式窒素-含有ヘテロ芳香環を示し;
Xは、酸素、イオウ、セレニウム、テルリウムまたはC(CH32およびNR1から選択される部分であり、ここでR1は、水素またはC1-6アルキルであり;
R2は、C1-6アルキル、C3-8シクロアルキル、アリール、アリール(C1-2アルキル)、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキルおよびジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキル、アルキレンカルボキシレート、アルキレンカルボキサミド、アルキレンスルホネート、場合により置換された環状ヘテロ原子-含有部分、および場合により置換された非環状ヘテロ原子-含有部分からなる群から選択され;
t=0または1であり;
Zは、0または1から選択される電荷であり;
R3、R9、およびR10は、それぞれ独立して、水素およびC1-6アルキルからなる群から選択され;
n=0、1、または2であり;そして
Qは、以下のもの:
【化8】

からなる構造の群から選択されたヘテロ環であり、
ここでR4、R5、R6、R7、およびR8は、独立して、水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルケニル、ポリアルケニル、アルキニル、ポリアルキニル、アルケニルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、およびジアルキルアミノ(これらのそれぞれは場合により置換されていてもよい);非環状ヘテロ原子-含有部分または環状ヘテロ原子-含有部分;BRIDGE- DYE;および反応性基(reactive group);からなる群から選択され、これらのそれぞれは場合により4級アンモニウム部分を含む;
を有する化合物。
【請求項50】
部分
【化9】

は、場合により置換されたベンゾおよび場合により置換されたナフトから選択された、場合により置換され融合されている単環式または多環式芳香環を示す、請求項49に記載の化合物。
【請求項51】
部分
【化10】

は、ハロ、アルキル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルスルホニル、ハロアルキルスルホニル、および場合により置換されたフェニルスルホニルからなる群から選択される置換基を有するベンゾまたはナフトを示す、請求項49に記載の化合物。
【請求項52】
Xが、酸素またはイオウである、請求項49に記載の化合物。
【請求項53】
R2が、C1-6アルキル、C3-8シクロアルキル、アリール、アリール(C1-2アルキル)、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキル、アルキレンスルホネート、場合により置換された環状ヘテロ原子-含有部分、および場合により置換された非環状ヘテロ原子-含有部分からなる群から選択される、請求項49に記載の化合物。
【請求項54】
R3、R9、およびR10は、それぞれ独立して、水素およびメチルからなる群から選択される、請求項49に記載の化合物。
【請求項55】
Qが、ヘテロ環:
【化11】

である、請求項49に記載の化合物。
【請求項56】
R4、R5、R6、R7、およびR8は、独立して、水素、ハロゲン、チオール、アルキル、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキル、ピペリジノ、ピペラジノ、4-メチルピペラジニウム-1-イル、およびアリールからなる群から選択される、請求項49に記載の化合物。
【請求項57】
tが1であり、n=0であり、そしてR4、R5、R6、R7、およびR8の少なくとも1つが、ハロゲン、チオール、C2-6アルキル、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキル、ピペリジノ、ピペラジノ、4-メチルピペラジニウム-1-イル、およびアリールからなる群から選択される、請求項49に記載の化合物。
【請求項58】
R5が、ハロゲン、チオール、C2-6アルキル、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキル、ピペリジノ、ピペラジノ、4-メチルピペラジニウム-1-イル、およびアリールからなる群から選択される、請求項57に記載の化合物。
【請求項59】
部分
【化12】

は、ハロ、アルキル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルスルホニル、ハロアルキルスルホニル、および場合により置換されたフェニルスルホニルからなる群から選択される置換基を有するベンゾまたはナフトを示しを示し;そして
Xは、酸素またはイオウである、
請求項57に記載の化合物。
【請求項60】
R2が、C1-6アルキル、アリール、アリール(C1-2アルキル)、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキル、およびアルキレンスルホネートからなる群から選択される、請求項57に記載の化合物。
【請求項61】
R3、R9、およびR10が、それぞれ水素であり;そしてR2が、C1-6アルキル、アリール、アリール(C1-2アルキル)、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキル、およびアルキレンスルホネートからなる群から選択される、請求項57に記載の化合物。
【請求項62】
R5が、C2-6アルキル、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキル、ピペリジノ、ピペラジノ、4-メチルピペラジニウム-1-イル、およびアリールからなる群から選択される、請求項57に記載の化合物。
【請求項63】
少なくとも部分的に二本鎖である標的核酸を、少なくとも50%飽和%を有するdsDNA結合色素と混合して、混合物を形成する工程、そして
混合物を加熱するにしたがって、dsDNA結合色素から出る蛍光を測定することにより、標的核酸についての融解曲線を作成する工程
を含む、核酸を解析する方法。
【請求項64】
標的核酸についての融解曲線を、第二の核酸についての融解曲線と比較する工程をさらに含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
標的核酸が、第一の個体に由来するHLA遺伝子座位であり、そして第二の核酸が、第二の個体に由来するHLA遺伝子の同一の座位である、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
標的核酸についての融解曲線が第二の核酸についての融解曲線に類似しており、そして
標的核酸と第二の核酸との混合物についての融解曲線を作成する工程、そして
標的核酸についての融解曲線または第二の核酸についての融解曲線を、標的核酸と第二の核酸との混合物についての融解曲線と比較する工程
をさらに含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
標的核酸と第二の核酸とを混合して混合物を作製する工程、
dsDNA結合色素を添加する工程、
混合物を加熱および冷却する工程、
混合された標的核酸と第二の核酸についての融解曲線を作成する工程、そして
混合された標的核酸と第二の核酸についての融解曲線を標的核酸についての融解曲線と比較する工程、
をさらに含む、請求項63に記載の方法。
【請求項68】
1対のオリゴヌクレオチドプライマーおよび増幅試薬を混合物に対して添加する工程、
混合物を増幅する工程、
をさらに含み、ここで増幅工程が融解曲線作成工程の前に生じる、請求項63に記載の方法。
【請求項69】
増幅試薬、
標的核酸を増幅するように設計したオリゴヌクレオチドプライマー、および
少なくとも50%の飽和%を有するdsDNA結合色素、
を含む、標的核酸を増幅するためのキット。
【請求項70】
dsDNA結合色素が、少なくとも90%の飽和%を有する、請求項69に記載のキット。
【請求項71】
dsDNA結合色素が、少なくとも99%の飽和%を有する、請求項69に記載のキット。
【請求項72】
色素がLC Greenである、請求項69に記載のキット。
【請求項73】
色素が、JO-PROTM-1、GelStar(商標)、SYTO(商標)44、SYTO(商標)45、POPOTM-3、SYTO(商標)12、TOTOTM-3、SYTO(商標)16、SYTOX(商標)Blue、Thiazole Orange、YOYOTM-3、SYTO(商標)43、SYTO(商標)11、SYTO(商標)13、SYTO(商標)15、BOBOTM-3、LO-PROTM-1、SYTO(商標)23、SYTO(商標)20、BOBOTM-1、POPOTM-1、G5、H5、D6、P6、Y6およびD8からなる群から選択される、請求項69に記載のキット。
【請求項74】
色素が、約410〜460 nmの励起極大、および約450〜500 nmの放射極大を有する、請求項69に記載のキット。
【請求項75】
増幅試薬が、熱安定性ポリメラーゼを含む、請求項69に記載のキット。
【請求項76】
以下の式:
【化13】

を有する色素を調製する方法であって、この方法は、以下の式:
【化14】

を有する化合物を、以下の式:
【化15】

を有する化合物と反応させる工程を含み、ここで:
Wは、-C(R8)=または-N=であり;
Aは水素であるか、またはAは、アルキル、ハロ、アミノ、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルキルスルホニル、ハロアルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルチオ、アリールチオ、ホルミル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、カルボン酸誘導体、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアンモニウム、ジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキル、ピペリジノ、ピペラジノからなる群からそれぞれ独立して選択される1またはそれ以上の置換基を示し、これらのそれぞれは、アルキル、アミノ、モノまたはジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキルにより場合により置換されていてもよいか、またはアルキル基により窒素上で場合により4級化(quaternized)されていてもよく;
Bは水素であるか、またはBは、アルキル、ハロ、アミノ、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルキルスルホニル、ハロアルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルチオ、アリールチオ、ホルミル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、カルボン酸誘導体、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアンモニウム、ジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキル、ピペリジノ、ピペラジノからなる群からそれぞれ独立して選択される1またはそれ以上の置換基を示し、これらのそれぞれは、アルキル、アミノ、モノまたはジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキルにより場合により置換されていてもよいか、またはアルキル基により窒素上で場合により4級化されていてもよく;
R2は、C1-6アルキル、C2-6アルキル、C3-8シクロアルキル、アリール、アリール(C1-2アルキル)、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキレンカルボキシレート、アルキレンカルボキサミド、アルキレンスルホネート、およびアルキレンスルホン酸からなる群から選択され;
R5は、C1-6アルキル、C2-6アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアンモニウム、ジアルキルアミノアルキル、およびトリアルキルアンモニウムアルキル、アリール、ヘテロアリールからなる群から選択され、これらのそれぞれは置換されていてもよく;
R8は、水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルケニル、ポリアルケニル、アルキニル、ポリアルキニル、アルケニルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、およびジアルキルアミノ(これらのそれぞれは場合により置換されていてもよい);非環状ヘテロ原子-含有部分または環状ヘテロ原子-含有部分;BRIDGE-DYE;および反応性基からなる群から選択され;
Xは酸素またはイオウであり;そして
Lは脱離基である;
である、前記方法。
【請求項77】
反応工程が、以下の式:
【化16】

ここでLは、ハロ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニル、またはアリールスルホニルである;
を有する化合物を反応させることを含む、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
反応工程が、以下の式:
【化17】

ここで、R5は、C2-6アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアンモニウム、ジアルキルアミノアルキル、およびトリアルキルアンモニウムアルキル、アリール、ヘテロアリールであり、これらのそれぞれは場合により置換されていてもよい;
を有する化合物を反応させることを含む、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
反応工程が、以下の式:
【化18】

ここで、R4は、ハロ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニル、およびアリールスルホニルからなる群から選択される;
を有する化合物を反応させることを含む、請求項76に記載の方法。
【請求項80】
以下の式:
【化19】

を有する化合物を、基R4を置換することができる求核分子と反応させる工程をさらに含む、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
Wが-CH=である、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
R5が、C2-6アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアンモニウム、ジアルキルアミノアルキル、およびトリアルキルアンモニウムアルキル、アリール、ヘテロアリールからなる群から選択され、これらのそれぞれが場合により置換されていてもよい、請求項76に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも50%の飽和%を有するdsDNA結合色素を、標的核酸と標的核酸を増幅する様に設計されたプライマーとを含むサンプルと混合する工程;
dsDNA結合色素の存在下にて標的核酸を増幅する工程;そして
dsDNA結合色素の蛍光をモニターする工程;
を含む、PCR解析の方法。
【請求項2】
標的核酸についての融解曲線を作成する工程;
融解曲線の規模(magnitude)を正規化する工程;
混合工程、増幅工程、作成工程および正規化工程を少なくとも1つの追加の標的核酸を用いて繰り返す工程;そして
正規化された融解曲線を比較する工程;
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
色素が、LC Green、Gel Star、SYTO(商標)16、PO-PROTM-1、JO-PROTM-1、BO-PROTM-1、SYTO(商標)44、SYTO(商標)45、POPOTM-3、SYTO(商標)12、TOTOTM-3、SYTOX(商標)Blue、YOYO(商標)-3、SYTO(商標)43、SYTO(商標)11、SYTO(商標)13、SYTO(商標)15、BOBOTM-3、LO-PROTM-1、SYTO(商標)23、TO-PRO(商標)-1、SYTO(商標)20、BOBOTM-1、POPOTM-1、G5、H5、D6、E6、P6、R6、Y6、Z6、およびD8からなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
モニターする工程が、
増幅された標的核酸を融解して、融解曲線を作成する工程;そして
融解曲線から遺伝子型を同定する工程;
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
モニターする工程を、450〜490 nmの励起範囲および510〜530 nmの放射検出範囲を有する蛍光計を用いて行い、そして色素が410〜465 nmの範囲の励起極大および450〜500 nmの範囲の放射極大を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記方法が変異スキャニングを含み、前記モニターする工程が増幅された標的核酸を融解して融解曲線を作成する工程を含み、そして前記方法が
第二のサンプルについて前記増幅の工程およびモニターする工程を繰り返して第二の融解曲線を得る工程、そして
両融解曲線を比較する工程
とをさらに含む、前記方法。
【請求項7】
サンプルが、標的核酸にハイブリダイズする様に設計されたプローブをさらに含み、このプローブはdsDNA結合色素からの蛍光共鳴エネルギー転移を受容するアクセプター色素により標識され、そしてアクセプター色素からの蛍光をモニターする工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記モニターする工程が、
標的核酸について融解曲線を作成する工程;そして
融解曲線を使用して標的核酸が第二の核酸として同一の配列を有するかどうかを決定する工程;
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
dsDNA結合色素を、標的核酸と標的核酸を増幅するために設計されたプライマーとを含むサンプルと混合する工程;
dsDNA結合色素の存在下にて、標的核酸を増幅する工程;
dsDNA結合色素の蛍光をモニターする工程;
標的核酸についての融解曲線を作成する工程;
融解曲線を正規化する工程;
混合工程、増幅工程、正規化工程、そして作成工程を、少なくとも1つの追加の標的核酸を用いて繰り返す工程;そして
正規化された融解曲線どうしを比較する工程
を含む、PCR解析の方法。
【請求項10】
正規化された曲線間での蛍光差をプロットする工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
それぞれの曲線の部分を重ね合わせることにより、融解曲線を温度シフトさせる工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
以下の式:
【化1】

ここで、部分
【化2】

は、場合により置換され融合されている単環式または多環式芳香環、または場合により置換され融合されている単環式または多環式窒素-含有ヘテロ芳香環を示し;
Xは、酸素、イオウ、セレニウム、テルリウムまたはC(CH32およびNR1から選択される部分であり、ここでR1は、水素またはC1-6アルキルであり;
R2は、C1-6アルキル、C3-8シクロアルキル、アリール、アリール(C1-2アルキル)、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキルおよびジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキル、アルキレンカルボキシレート、アルキレンカルボキサミド、アルキレンスルホネート、アルキルスルホネート、場合により置換された環状ヘテロ原子-含有部分、および場合により置換された非環状ヘテロ原子-含有部分からなる群から選択され;
t=0または1であり;
Zは、0または1から選択される電荷であり;
R3は、水素、C1-6アルキルおよび-C(O)Phからなる群から選択され;
R9およびR10は、それぞれ独立して、水素およびC1-6アルキルからなる群から選択され;
n=0、1、または2であり;そして
Qは、以下のもの:
【化3】

からなる構造の群から選択されたヘテロ環であり、
ここでR4、R5、R6、R7、およびR8は、独立して、水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルケニル、ポリアルケニル、アルキニル、ポリアルキニル、アルケニルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、およびジアルキルアミノ(これらのそれぞれは場合により置換されていてもよい);非環状ヘテロ原子-含有部分または環状ヘテロ原子-含有部分;BRIDGE- DYE;および反応性基(reactive group);からなる群から選択され、これらのそれぞれは場合により4級アンモニウム部分を含む;
を有する化合物。
【請求項13】
標的核酸が、第一の個体に由来するHLA遺伝子座位であり、そして第二の核酸が、第二の個体に由来するHLA遺伝子の同一の座位である、請求項8に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図12−3】
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【図12−4】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図14】
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【図15】
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【図16−1】
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【図16−2】
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【図17】
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【公表番号】特表2006−503590(P2006−503590A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−501646(P2005−501646)
【出願日】平成15年10月22日(2003.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2003/033429
【国際公開番号】WO2004/038038
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(504260058)ザ・ユニバーシティ・オブ・ユタ・リサーチ・ファウンデイション (19)
【出願人】(502420379)アイダホ テクノロジー インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】