説明

香料成分の選定方法及び調香方法

【課題】 任意の香料成分の中から、連用により嗜好性を向上することのできる香料成分を選定する方法を提供する。
【解決手段】 任意の香料成分について、下記(A)及び(B)の評価を行い、当該評価結果を指標として選定することを特徴とする香料成分の選定方法。
(A)初回接触時における香りの「濃さ」の印象評価、及び二回以上の接触後における香りの「濃さ」の印象評価。
(B)初回接触時における香りの「明るさ」の印象評価、及び二回以上の接触後における香りの「明るさ」の印象評価。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料成分の選定方法及び調香方法、特に連用により嗜好性の向上する香料成分を選定する方法の開発に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、社会心理学の分野においては、単純接触効果(mere exposure effect)といい、対象と繰り返し接触することにより、当該対象への嗜好性が向上することが知られている。より具体的には、(1)繰り返し刺激に接触すると、その刺激に好意的態度を形成するようになること、(2)接触回数が多いほど好意は増加すること、(3)好意が増加しやすい刺激と増加しにくい刺激があること等が報告されている。これらの知見は、人物写真(視覚)、メロディ(聴覚)、甘味、苦味(味覚)等において実証されているものの、香り(嗅覚)と繰り返し刺激との関係について科学的に検証された例は報告されておらず、すなわち、香りの連用により嗜好性が向上するとの知見は未だ得られていない。
【0003】
他方、メーキャップ化粧料等の化粧品やシャンプー等のトイレタリー製品は、ほぼ毎日のように使用されるものであり、消費者に好まれる香りを付与することが望まれている。しかしながら、これらの各種製品への賦香に関しては、従来、製品を連続的に使用した場合の香りの嗜好性の変化については、全く検討がなされていないというのが現状である。そして、これらの化粧料やトイレタリー製品において、連用により嗜好性の向上する香りを選択して賦香することができたとしたならば、消費者による製品の継続的な購入を期待することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前述のような従来技術の課題に鑑み行われたものであり、その目的は、任意の香料成分の中から、連用により嗜好性を向上することのできる香料成分を選定する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述の課題に鑑み、本発明者らが鋭意研究を行った結果、任意の香料成分について特定の評価を行い、これを指標とすることにより、連用により嗜好性の向上する香料成分のみを選定することができることを見出した。また、複数の香料成分を含有した香料組成物においても、組成物全体の香調について特定の評価を行い、これを指標として調香することにより、当該香料組成物の連用により嗜好性を向上することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明にかかる香料成分の選定方法は、任意の香料成分について、下記(X)の評価を行い、当該評価結果を指標として選定することを特徴とする。
(X)初回接触時における香りの嗜好評価、及び二回以上の接触後における香りの嗜好評価。
【0007】
また、本発明にかかる香料成分の選定方法は、任意の香料成分の中から、下記(x)の条件を満たす香料成分を選定することを特徴とする。
(x)二回以上の接触後における香りの嗜好評価が、初回接触時の嗜好評価と比較して増大していること。
【0008】
また、本発明にかかる香料成分の選定方法は、任意の香料成分について下記(A)及び/又は(B)の評価を行い、当該評価結果を指標として選定することを特徴とする。
(A)初回接触時における香りの「濃さ」の印象評価、及び二回以上の接触後における香りの「濃さ」の印象評価。
(B)初回接触時における香りの「明るさ」の印象評価、及び二回以上の接触後における香りの「明るさ」の印象評価。
【0009】
また、本発明にかかる香料成分の選定方法は、任意の香料成分の中から下記(a)及び/又は(b)の条件を満たす香料成分を選定することを特徴とする。
(a)二回以上の接触後における香りの「濃さ」の印象評価が、初回接触時の「濃さ」の印象評価と比較して減少していること。
(b)二回以上の接触後における香りの「明るさ」の印象評価が、初回接触時の「明るさ」の印象評価と比較して増大していること。
【0010】
また、本発明にかかる香料成分の選定方法において、さらに下記(c)の条件を満たす香料成分を選定することが好適である。
(c)初回接触時における香りの「濃さ」の印象評価が1〜7段階の評価で4以上であること。
また、本発明にかかる香料組成物は、前記香料成分の選定方法により選定された香料成分を含有することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明にかかる調香方法は、香料組成物全体の香調について、下記(X)の評価を行い、当該評価結果を指標として調香することを特徴とする。
(X)初回接触時における香りの嗜好評価、及び二回以上の接触後における香りの嗜好評価。
【0012】
また、本発明にかかる調香方法は、香料組成物全体の香調が、下記(x)の条件を満たすように調香することを特徴とする。
(x)二回以上の接触後における香りの嗜好評価が、初回接触時の嗜好評価と比較して増大していること。
【0013】
また、本発明にかかる調香方法は、香料組成物全体の香調について下記(A)及び/又は(B)の評価を行い、当該評価結果を指標として調香することを特徴とするものである。
(A)初回接触時における香りの「濃さ」の印象評価、及び二回以上の接触後における香りの「濃さ」の印象評価。
(B)初回接触時における香りの「明るさ」の印象評価、及び二回以上の接触後における香りの「明るさ」の印象評価。
【0014】
また、本発明にかかる調香方法は、香料組成物全体の香調が、下記(a)及び/又は(b)の条件を満たすように調香することを特徴とするものである。
(a)二回以上の接触後における香りの「濃さ」の印象評価が、初回接触時の「濃さ」の印象評価と比較して減少していること。
(b)二回以上の接触後における香りの「明るさ」の印象評価が、初回接触時の「明るさ」の印象評価と比較して増大していること。
【0015】
また、前記調香方法において、さらに下記(c)の条件を満たすように調香することが好適である。
(c)初回接触時における香りの「濃さ」の印象評価が1〜7段階の評価で4以上であること。
また、本発明にかかる香料組成物は、前記香料組成物の調香方法により調香されたことを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明にかかる嗜好性向上剤は、前記香料組成物からなることを特徴とするものである。
また、本発明にかかる化粧料は、前記香料組成物を含有することを特徴とするものである。
また、本発明にかかる商品の繰り返し使用による嗜好性を向上させる方法は、前記香料組成物を商品に配合することを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明にかかる香料組成物は、ガラクソリド、アンブロキサン、マンザネート、グレープフルーツ油、マジョーラム油、シナモン油、オーランチオール、トマトリーフ抽出液、スペアミント油、クローブ油、カモミール油、ペッパー油、トリプラール、ユズ油、オクチルアルデヒド、バニリン、ジャスミン油、ベルガモット油、アルモアズ油、ストロベリー抽出液、ゼラニウム油、ライム油、ナツメグ油、及びアリルカプロエートからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明にかかる嗜好性向上剤は、ガラクソリド、アンブロキサン、マンザネート、グレープフルーツ油、マジョーラム油、シナモン油、オーランチオール、トマトリーフ抽出液、スペアミント油、クローブ油、カモミール油、ペッパー油、トリプラール、ユズ油、オクチルアルデヒド、バニリン、ジャスミン油、ベルガモット油、アルモアズ油、ストロベリー抽出液、ゼラニウム油、ライム油、ナツメグ油、及びアリルカプロエートからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明にかかる化粧料は、ガラクソリド、アンブロキサン、マンザネート、グレープフルーツ油、マジョーラム油、シナモン油、オーランチオール、トマトリーフ抽出液、スペアミント油、クローブ油、カモミール油、ペッパー油、トリプラール、ユズ油、オクチルアルデヒド、バニリン、ジャスミン油、ベルガモット油、アルモアズ油、ストロベリー抽出液、ゼラニウム油、ライム油、ナツメグ油、及びアリルカプロエートからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明にかかる商品の繰り返し使用による嗜好性を向上させる方法は、前記香料組成物を商品に配合することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる香料成分の選定方法によれば、任意の香料成分について特定の評価を行い、当該評価結果を指標とすることにより、連用により嗜好性の向上する香料成分のみを選定することができる。また、本発明にかかる調香方法によれば、香料組成物全体の香調について特定の評価を行い、当該評価結果を指標として調香することにより、連用により嗜好性を向上するように調香することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本発明において、香料成分とは香料原料としての単一成分(精油を含む)のことを意味し、香料組成物とは二種以上の前記香料成分を含む混合物を意味する。
【0023】
香料成分の選定方法
本発明にかかる香料成分の選定方法は、任意の香料成分について、下記(X)の評価を行い、当該評価結果を指標として選定することを特徴とするものである。
(X)初回接触時における香りの嗜好評価、及び二回以上の接触後における香りの嗜好評価。
【0024】
以下、上記(X)の評価について説明する。
上記(X)における嗜好評価は、被験者が任意の香料成分の香りに対して好感が持てるかどうかを評価するものであり、例えば、以下に示す評価試験を用いて、任意の香料成分に対する香りの嗜好の評価値を決定することができる。
【0025】
嗜好評価:10名以上のパネラーにより、対象となる香料成分に対する「嗜好性」について、下記評価基準による1〜7段階の点数判定を行なってもらう。なお、各パネラーによる点数の総和をパネラー人数で割った平均値を、「嗜好性」の評価値とする。
【0026】
〈評価基準〉
非常に好き ・・・・・7
好き ・・・・・6
やや好き ・・・・・5
どちらとも言えない ・・・・・4
やや嫌い ・・・・・3
嫌い ・・・・・2
非常に嫌い ・・・・・1
【0027】
上記(X)においては、任意の香料成分について、「初回接触時」と「二回以上の接触後」とのそれぞれの条件下において、上記「嗜好性」の印象評価値を決定する。ここで、上記「初回接触時」の評価は、被験者に対象となる香料成分を被験時において初めて接触させる条件、すなわち、対象となる香料成分を被験者が予め嗅いでいない条件で「嗜好性」の評価を行なうことを意味する。
【0028】
また、上記「二回以上の接触後」の評価は、被験者に対象となる香料成分を被験時前に一回以上接触させた条件、すなわち、被験者が対象となる香料成分を予め一回以上嗅いでいる条件で「嗜好性」の評価を行なうことを意味する。なお、ここで、被験者は対象となる香料成分を被験時前に嗅いでいるということを認識していないことが好適である。すなわち、「二回以上の接触後」の「嗜好性」の評価においては、対象となる香料成分であることを被験者に明らかにしない状態で予め一回以上嗅がせ、その後、改めて同一の対象となる香料成分を嗅がせた際の香りの「嗜好性」の評価を行なうことが好適である。あるいは、被験者が対象となる香料成分を既に嗅いでいることを認識していたとしても、「初回接触時」及び「二回以上の接触後」の評価を非連続的に行なうこと(例えば、「初回接触時」と「二回以上の接触後」の嗜好性の評価の間に、評価を行なわずに当該香料成分を嗅ぐ期間を設ける)が好ましい。
【0029】
ここで、例えば、被験者に対象となる香料成分を明らかにした条件で、上記「初回接触時」及び「二回以上の接触後」の評価を連続的に行なった場合、香りに対する嗜好のみに意識が集中してしまうために適切な評価が行なうことができず、「初回接触時」と「二回以上の接触後」における嗜好性の変化が見られない場合がある。このため、任意の香料成分に対する「嗜好評価」を同一被験者に対して連続して行なったところで、連用により嗜好性の向上する香料成分を好適に選定することはできない。
【0030】
本発明にかかる香料成分の選定方法においては、任意の香料成分について上記(X)の評価を行なった結果、下記(x)の条件を満たす香料成分を、連用により嗜好性の向上する香料成分として選定することができる。
(x)二回以上の接触後における香りの嗜好評価が、初回接触時の嗜好評価と比較して増大していること。
【0031】
上記(x)においては、二回以上の接触後における香りの「嗜好性」の評価値が、初回接触時の「嗜好性」の評価値よりも大きいものであればよい。この減少の度合いについては特に限定されるものではなく、例えば、1〜7段階評価で0.1以上減少していればよい。
【0032】
また、本発明にかかる香料成分の選定方法は、任意の香料成分について下記(A)及び/又は(B)の評価を行い、当該評価結果を指標として選定することを特徴とするものである。
(A)初回接触時における香りの「濃さ」の印象評価、及び二回以上の接触後における香りの「濃さ」の印象評価。
(B)初回接触時における香りの「明るさ」の印象評価、及び二回以上の接触後における香りの「明るさ」の印象評価。
【0033】
以下、上記(A),(B)の評価について説明する。
上記(A),(B)において、香料成分の印象評価として規定される「濃さ」、「明るさ」といった各評価項目については、香りの感覚評価における適正な評価項目として、特開2001−174450号に記載されているものである。上記(A)及び(B)においては、例えば、以下に示す評価試験を用いて、「濃さ」、「明るさ」のそれぞれの香りの印象評価値を決定することができる。
【0034】
「濃さ」:10名以上のパネラーにより、対象となる香料成分と、2以上の比較香料成分とを嗅いでもらい、対象となる香料成分の「濃い」印象について、比較香料成分のそれと比較することにより、下記評価基準による1〜7段階の点数判定を行なってもらう。ここで、比較香料成分としては、カロンの「濃い」評価が3.0、ゼラニウム油の「濃い」評価が5.5であることを基準として、各評価段階(例えば、1.0と5.0)の香料組成物を調整して用いる。なお、各パネラーによる点数の総和をパネラー人数で割った平均値を、「濃い」印象の評価値とする。
【0035】
〈評価基準〉
非常に感じる ・・・・・7
感じる ・・・・・6
やや感じる ・・・・・5
どちらとも言えない ・・・・・4
あまり感じない ・・・・・3
感じない ・・・・・2
全く感じない ・・・・・1
【0036】
「明るさ」:10名以上のパネラーにより、対象となる香料組成物と、2以上の比較香料組成物とを嗅いでもらい、対象香料組成物の「明るい」印象について、比較香料組成物のそれと比較することにより、前記評価基準と同様にして1〜7段階の点数判定を行ってもらう。ここで、比較香料成分としては、パチュリ油の「明るい」評価が2.0、グレープフルーツ油の「明るい」評価が6.0であることを基準として、各評価段階(例えば、2.0と6.0)の香料組成物を調整して用いる。なお、各パネラーによる点数の総和をパネラー人数で割った平均値を、「明るい」印象の評価値とする。
【0037】
また、上記(A),(B)において、「初回接触時」の評価は、被験者に対象となる香料成分を被験時において初めて接触させる条件、すなわち、対象となる香料成分を被験者が予め嗅いでいない条件で印象評価を行なうことを意味する。また、上記「二回以上の接触後」の評価は、被験者に対象となる香料成分を被験時前に一回以上接触させた条件、すなわち、被験者が対象となる香料成分を予め一回以上嗅いでいる条件で印象評価を行なうことを意味する。なお、ここで、被験者は対象となる香料成分を被験時前に嗅いでいるということを認識していないことが好適である。すなわち、「二回以上の接触後」の印象評価においては、対象となる香料成分であることを被験者に明らかにしない状態で予め一回以上嗅がせ、その後、改めて同一の対象となる香料成分を嗅がせた際の香りの印象評価を行なうことが好適である。あるいは、被験者が対象となる香料成分を既に嗅いでいることを認識していたとしても、「初回接触時」及び「二回以上の接触後」の香りの印象評価を非連続的に行なうことが好ましい。
【0038】
本発明にかかる香料成分の選定方法においては、任意の香料成分について上記(A)及び/又は(B)の評価を行なった結果、下記(a)及び/又は(b)の条件を満たす香料成分を、連用により嗜好性の向上する香料成分として選定することができる。
(a)二回以上の接触後における香りの「濃さ」の印象評価が、初回接触時の「濃さ」の印象評価と比較して減少していること。
(b)二回以上の接触後における香りの「明るさ」の印象評価が、初回接触時の「明るさ」の印象評価と比較して増大していること。
【0039】
上記(a)においては、二回以上の接触後における香りの「濃さ」の印象評価値が、初回接触時の「濃さ」の印象評価値よりも小さいものであればよい。この減少の度合いについては特に限定されるものではなく、例えば、1〜7段階評価で0.1以上減少していればよい。また、上記(b)においては、二回以上の接触後における香りの「明るさ」の印象評価が、初回接触時の「明るさ」の印象評価よりも大きいものであればよい。この増大の度合いについても特に限定されるものではないが、例えば、1〜7段階評価で0.1以上増大していればよい。
なお、本発明にかかる香料成分の選定方法においては、上記(a),(b)の条件のいずれかを満たすものであればよいが、特に(a),(b)の両方の条件を満たしていることが好ましい。上記(a),(b)のいずれの条件も満たさない香料成分を選定した場合、当該香料成分を連用したとしても嗜好性が向上しない場合がある。
【0040】
また、本発明にかかる香料成分の選定方法においては、下記(c)の条件を満たす香料成分を選定することが好適である。
(c)初回接触時における香りの「濃さ」の印象評価が1〜7段階の評価で4以上であること。
【0041】
なお、上記(c)における初回接触時における香りの「濃さ」の印象評価は、上記(A)の評価によって得られる。本発明にかかる香料成分の選定方法において、この初回接触時における香りの「濃さ」の印象評価が4以上である香料成分を選定した場合、当該香料成分を連用した際の嗜好性を著しく向上させることができる。一方、初回接触時における香りの「濃さ」の印象評価が4未満である香料成分を選定した場合には、当該香料成分を連用してもあまり嗜好性向上が得られない場合がある。
【0042】
本発明にかかる香料成分の選定方法において、被験者に対しての香りの嗅がせ方については特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、ガラス瓶(直径2.5cm、高さ5cm)の中に2cm四方の綿を入れたものを用意し、その綿に香料成分のアルコール溶液0.05mlを塗布し、30分放置してアルコールを飛ばしたものを用いて、これを被験者に嗅がせる。
【0043】
以上に説明した香料成分の選定方法により選定された香料成分、すなわち、連用により嗜好性の向上することのできる香料成分としては、例えば、ガラクソリド(10%)、アンブロキサン(1%)、マンザネート(1%)、グレープフルーツ油(10%)、マジョーラム油(5%)、シナモン油(0.5%)、オーランチオール(10%)、トマトリーフ抽出液(0.5%)、スペアミント油(3%)、クローブ油(1%)、カモミール油(1%)、ペッパー油(0.5%)、トリプラール(0.1%)、ユズ油(10%)、オクチルアルデヒド(0.1%)、バニリン(5%)、ジャスミン油(1%)、ベルガモット油(10%)、アルモアズ油(0.5%)、ストロベリー抽出液(10%)、ゼラニウム油(5%)、ライム油(10%)、ナツメグ油(0.5%)、アリルカプロエート(10%)等が挙げられる。
なお、同一の香料成分であったとしても、用いる香料濃度によって、嗜好や香りの印象が変化する場合もある。
【0044】
また、以上に説明した香料成分の選定方法により選定された香料成分を、二種以上の香料成分からなる香料組成物中に配合することにより、当該香料組成物において、連用により嗜好性が向上する効果を期待することができる。そして、このような香料組成物もまた、本発明の範疇である。なお、香料組成物中に配合する場合には、通常の調香手段により、本発明により選定された香料成分と、他の香料成分とを適当な割合で混合し、好適な香りとなるように調香したものを用いることができるが、本発明により選定された香料成分の2種以上を香料組成物中に混合して用いることが特に好適である。
【0045】
調香方法
また、以上に説明した香料成分の評価方法を用いて、二種以上の香料成分からなる香料組成物全体の調香を行うことにより、連用により嗜好性の向上させることのできる香料組成物を得ることもできる。すなわち、香料組成物全体の香調について上記(X)、あるいは(A)及び(B)の評価を行い、当該評価結果を指標として調香することにより、当該香料組成物について、連用により嗜好性が向上するように調香することもできる。
【0046】
また、以上に説明した調香方法により調香された香料組成物は、連用により嗜好性が向上する効果を奏するものである。また、当該香料組成物を商品に配合することによって、商品の繰り返し使用による嗜好性を向上させることも可能である。そして、このような香料組成物もまた、本発明の範疇である。
【0047】
香料組成物
本発明にかかる香料組成物は、香料成分が気化し、吸入し得る形態のものであればどのようなものでもよく、特にその剤型等の形態によって限定されるものではない。本発明にかかる香料組成物は、そのまま用いることも可能であるが、エチルアルコール、水等の溶媒と配合することによって、香水、オードトワレ、オーデコロン等の芳香性化粧料として用いることができる。また、これらの芳香性化粧料には、香料、溶媒の他に必要に応じて各種補助成分を加えることもできる。また、本発明にかかる香料組成物を、溶媒や各種賦型剤とともに配合することによって、室内用芳香剤、浴用芳香剤、車内用芳香剤等の各種芳香剤として用いることができる。
【0048】
また、本発明にかかる香料組成物は、各種の化粧品基剤あるいはトイレタリー製品基剤中に好適に配合することができる。本発明にかかる香料組成物を配合した化粧品又はトイレタリー製品を連続的に使用することにより、使用者における嗜好性を向上させることができる。このような化粧品あるいはトイレタリー製品としては、例えば、クリーム、乳液、化粧水、化粧パウダー、ボディーローション、セッケン、シャンプー、リンス、トリートメント、ボディーシャンプー、洗顔料等を挙げることができる。
【実施例1】
【0049】
以下、実施例に基づき、本発明について更に詳しく説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
香りの連用と嗜好性の関係
まず最初に、本発明者らは、香りの連用と嗜好性との関係について検討を行なうため、予め調香された6種の調合香料を用いて、事前に嗅がせない条件(初回接触時)、及び予め2回嗅がせた条件(二回接触後)の各条件における嗜好性の評価を行なった。試験内容及び評価基準は以下の通りである。香料毎に、予め2回嗅いだ人の香りの嗜好評価の平均値(二回接触後)と、予め嗅がなかった人の香りの嗜好評価の平均値(初回接触時)を算出した。結果を下記表1及び図1に示す。
【0050】
・試験内容
6種類の調合香料を準備し、その内の3種類を予め5分間の安静を挿み2回嗅がせておき、5分間安静にした後に、予め2回嗅いでいた3種類と、嗅いでいない残りの3種類も含めた6種類全部の嗜好性の評価を行った。パネラーは合計22名で行った。パネラー毎に、予め2回嗅ぐ香りと、嗅がない香りの割り付けはカウンターバランスを取って実施した。
【0051】
・評価基準
「嗜好性」 3種類ずつ計22名のパネラーにより、対象となる香料の香りを嗅いでもらい、対象香料の「嗜好性」について、下記評価基準による1〜7段階の点数判定を行ってもらった。
〈評価基準〉
非常に好き ・・・・・7
好き ・・・・・6
やや好き ・・・・・5
どちらとも言えない ・・・・・4
やや嫌い ・・・・・3
嫌い ・・・・・2
非常に嫌い ・・・・・1
【0052】
【表1】

【0053】
上記表1及び図1より、6種の調合香料のうち、5種において初回接触時よりも二回接触後の方が嗜好性の印象評価が向上していることが明らかとなった。また、調合香料の種類によって、嗜好性の変化に差が見られることから、事前の接触により嗜好性が向上しやすい香りと、向上しにくい香りが存在することがわかった。
【0054】
各種香料成分における連用による嗜好性変化
つづいて、本発明者らは、各種香料成分を用いた場合の連用による嗜好性変化について検討するため、公知の香料成分48種について、上記試験と同様にして、各香料成分の初回接触時と二回接触後における嗜好性の評価を行なった。結果を下記表2,3に、また、初回接触時と二回接触後の嗜好性の変化についてまとめたものを図2に示す。
【0055】
【表2】

【0056】
【表3】

【0057】
上記表2,3及び図2より、48種の公知の香料成分のうち、24種においては初回接触時よりも二回接触後の方が、嗜好性の印象評価が向上していることが明らかとなった。また、香料成分の種類によって、接触回数による嗜好性の変化の度合いも異なっており、このことから、各種香料成分の中でも、連用により嗜好性が向上しやすいものと、向上しにくいものがあることが明らかとなった。なお、これら24種の香料成分においては、香調の分類が全く異なっているものも多く存在していた(例えば、アリルカプロエートはフルーティな香調であるのに対し、ナツメグ油はスパイシーな香調である)。そして、このことから、連用により嗜好性が向上する香料成分は、単純に香調の種類との関係で決定されるものでないことも明らかとなった。
【0058】
連用による嗜好性の変化と香りの印象評価との相関関係
つづいて、本発明者らは、連用による嗜好性の変化と、香りの印象評価との関係について検討を行うため、前記試験において用いた香料成分について、「透明さ」、「明るさ」、「濃さ」、「強さ」、「むんむんする」、「まろやかさ」、「甘さ」、「すっとする」といった各印象についての評価を行い、さらに、得られた香りの印象の評価結果より、香りの印象の各評価項目と連用による嗜好性の変化値との相関係数を求めた。評価基準は以下の通りである。なお、香りの印象評価については、前記試験同様、初回接触時と、二回接触後の2つの条件で評価を行った。結果を下記表4及び5に示す。
【0059】
・評価基準
「透明さ」:192名のパネラーにより、対象となる香料と、2つの比較香料とを嗅いでもらい、対象香料の「透明な」印象について、比較香料のそれと比較することにより、下記評価基準による1〜7段階の点数判定を行ってもらった。ここで、比較香料としては、セダーウッド油とペパーミント油とを用い、セダーウッド油の「透明さ」の評価が3.0、ペパーミント油の「透明さ」の評価が5.0であることを基準として評価を行った。なお、各パネラーによる点数の総和をパネラー人数で割った平均値を、「透明さ」の印象の評価値とした。
〈評価基準〉
非常に感じる ・・・・・7
感じる ・・・・・6
やや感じる ・・・・・5
どちらとも言えない ・・・・・4
あまり感じない ・・・・・3
感じない ・・・・・2
全く感じない ・・・・・1
【0060】
「明るさ」:192名のパネラーにより、対象となる香料と、2つの比較香料とを嗅いでもらい、対象香料の「明るい」印象について、比較香料のそれと比較することにより、前記評価基準と同様にして1〜7段階の点数判定を行ってもらった。ここで、比較香料としては、パチュリ油とグレープフルーツ油とを用い、パチュリ油の「明るさ」の評価が2.0、グレープフルーツ油の「明るさ」の評価が6.0であることを基準として評価を行った。なお、各パネラーによる点数の総和をパネラー人数で割った平均値を、「明るさ」の印象の評価値とした。
【0061】
「濃さ」:192名のパネラーにより、対象となる香料と、2つの比較香料とを嗅いでもらい、対象香料の「濃い」印象について、比較香料のそれと比較することにより、前記評価基準と同様にして1〜7段階の点数判定を行ってもらった。ここで、比較香料としては、カロンとゼラニウム油とを用い、カロンの「濃さ」の評価が3.0、ゼラニウム油の「濃さ」の評価が5.5であることを基準として評価を行った。なお、各パネラーによる点数の総和をパネラー人数で割った平均値を、「濃さ」の印象の評価値とした。
【0062】
「強さ」:192名のパネラーにより、対象となる香料と、2つの比較香料とを嗅いでもらい、対象香料の「強い」印象について、比較香料のそれと比較することにより、前記評価基準と同様にして1〜7段階の点数判定を行ってもらった。ここで、比較香料としては、β―ダマスコンとアリルカプロエートとを用い、β―ダマスコンの「強さ」の評価が3.5、アリルカプロエートの「強さ」の評価が6.0であることを基準として評価を行った。なお、各パネラーによる点数の総和をパネラー人数で割った平均値を、「強さ」の印象の評価値とした。
【0063】
「むんむんする」:192名のパネラーにより、対象となる香料と、2つの比較香料とを嗅いでもらい、対象香料の「むんむんする」印象について、比較香料のそれと比較することにより、前記評価基準と同様にして1〜7段階の点数判定を行ってもらった。ここで、比較香料としては、ヘリオトロピンとトマトリーフ抽出液とを用い、ヘリオトロピンの「むんむんする」の評価が3.0、トマトリーフ抽出液の「むんむんする」の評価が4.0であることを基準として評価を行った。なお、各パネラーによる点数の総和をパネラー人数で割った平均値を、「むんむんする」の印象の評価値とした。
【0064】
「まろやかさ」:192名のパネラーにより、対象となる香料と、2つの比較香料とを嗅いでもらい、対象香料の「まろやかな」印象について、比較香料のそれと比較することにより、前記評価基準と同様にして1〜7段階の点数判定を行ってもらった。ここで、比較香料としては、スペアミント油とローズ油とを用い、スペアミント油の「まろやかさ」の評価が3.0、ローズ油の「まろやかさ」の評価が4.5であることを基準として評価を行った。なお、各パネラーによる点数の総和をパネラー人数で割った平均値を、「まろやかさ」の印象の評価値とした。
【0065】
「甘さ」:192名のパネラーにより、対象となる香料と、2つの比較香料とを嗅いでもらい、対象香料の「甘さ」印象について、比較香料のそれと比較することにより、前記評価基準と同様にして1〜7段階の点数判定を行ってもらった。ここで、比較香料としては、cis−ジャスモンとイランイラン油とを用い、cis−ジャスモンの「甘さ」の評価が2.5、イランイラン油の「甘さ」の評価が4.5であることを基準として評価を行った。なお、各パネラーによる点数の総和をパネラー人数で割った平均値を、「甘さ」の印象の評価値とした。
【0066】
「すっとする」:192名のパネラーにより、対象となる香料と、2つの比較香料とを嗅いでもらい、対象香料の「すっとする」印象について、比較香料のそれと比較することにより、前記評価基準と同様にして1〜7段階の点数判定を行ってもらった。ここで、比較香料としては、アリルカプロエートとスペアミント油とを用い、アリルカプロエートの「すっとする」の評価が1.9、スペアミント油の「すっとする」の評価が5.8であることを基準として評価を行った。なお、各パネラーによる点数の総和をパネラー人数で割った平均値を、「すっとする」の印象の評価値とした。
【0067】
【表4】

【0068】
【表5】

【0069】
上記表4に、初回接触時の香りの印象評価と、初回接触時から二回接触後にかけての嗜好の変化量との相関係数を示した。これにより、香りの初回接触時の「濃さ」、「強さ」と嗜好の変化量は相関関係にある。つまり、香りの初回接触時の「濃さ」、「強さ」の評価が高い香りは、二回接触後に嗜好の増加が大きく、逆に、初回接触時の「濃さ」、「強さ」の評価が低い香りは、二回接触後に嗜好の減少がみられていることがわかる。上記表5に、初回接触時と二回接触後における香りの嗜好評価と印象評価との相関関係を示した。これにより、初回接触時も二回接触後も嗜好と「明るさ」との相関が最も高く、高い嗜好が得られる香りは、「明るさ」も高く評価されていることがわかる。つまり、初回接触時よりも二回接触後に嗜好が増加する香りは、「明るさ」も増加していることがわかる。これらのことから、香料成分の連用による嗜好性の変化は、当該香料成分における「濃さ」及び「明るさ」の印象評価とその変化に強く関係しているものと考えられる。
【0070】
連用により嗜好性の向上する香料成分と「濃さ」及び「明るさ」の印象評価との関係
以上の試験結果より、本発明者らは、連用による嗜好性の向上と、「濃さ」及び「明るさ」の印象評価とその変化とが強く関係しているものと考え、各種香料成分における連用による嗜好性の変化と、「濃さ」、及び「明るさ」の印象評価結果とを比較することにより、この点についてさらに詳細に検討を行った。それぞれの評価結果についてまとめたものを下記表6,7及び図3に示す。
【0071】
【表6】

【0072】
【表7】

【0073】
上記表5,6及び図3より、連用により嗜好性の向上する香料成分においては、連用によって「濃さ」の印象評価が減少しているか、対照的に「明るさ」の印象評価が連用により増大していることが明らかとなった。また、連用により嗜好性の下がる香料成分においては、反対に、連用により「濃さ」の印象評価が増大し、「明るさ」の印象評価が減少していることが認められた。これらの結果から、連用により嗜好性の向上する香料成分においては、連用により「濃さ」の印象評価が減少しているか、あるいは「明るさ」の印象評価が増大しているものである必要があることがわかった。
【0074】
つづいて、本発明者らは、上記48種の公知の香料成分について、初回接触時と二回接触後の嗜好性の変化が(1)0.5以上低下、(2)変化が0.5未満、及び(3)0.5以上上昇の3つのグループに分類し、各グループにおける初回接触時の「濃さ」の印象評価結果の平均値をそれぞれ比較することにより、連用による嗜好性の変化と初回接触時の「濃さ」の印象評価との関係について、さらに詳しく検討を行った。評価結果についてまとめたものを下記表8及び図4に示す。
【0075】
【表8】

【0076】
上記表8及び図4より、連用により嗜好性の向上する香料成分においては、初回接触時の「濃さ」の印象評価が高い傾向にあることが明らかとなった。反対に、連用により嗜好性が低下する香料成分、及び連用による嗜好性の変化が見られない香料成分においては、いずれも初回接触時の「濃さ」の印象評価が低い傾向にあることがわかった。そして、これらの結果から、連用により嗜好性の向上する香料成分を選定しようとした場合には、特に初回接触時の「濃さ」の印象が4以上の香料成分を選定することが好適であると言える。
【0077】
香料組成物全体の香調と「濃さ」及び「明るさ」の印象評価との関係
また、前記試験においては、単一の香料成分を用いて、連用による嗜好性の変化と「濃さ」及び「明るさ」の印象評価との関係について調べたが、本発明者らは、これらの関係が香料組成物全体の香調においても適用できるかどうかについて検討するため、予め調香された調合香料を用いて、前記試験と同様の評価を行った。結果を下記表9及び図5に示す。
【0078】
【表9】

【0079】
上記表9及び図5より、香料成分単体の評価と同様に、連用により嗜好性の向上する調合香料においては、連用により「濃さ」の印象評価が減少しており、対照的に「明るさ」の印象評価が連用により増大していることが明らかとなった。また、特に連用により嗜好性が大きく向上する調合香料においては、初回接触時の「濃さ」の印象を大きくする必要があることがわかった。
以上の結果から、香料組成物の調香において、連用により「濃さ」の印象評価が減少し、さらに「明るさ」の印象評価が増大するように調香することによって、連用により嗜好性が向上する香料組成物とすることができることがわかった。また、香料組成物の連用により嗜好性を大きく向上しようとした場合には、初回接触時の「濃さ」の印象が4以上となるように調香することが好適であることがわかった。
【0080】
以上説明した調香方法により、本発明者らが実際に調香した調合香料の処方例を以下に示す。
【表10】

【0081】
つづいて、本発明者らは、上記調合香料処方1を配合した化粧料(シャンプー)を調製し、当該化粧料の連用による嗜好性の変化についての評価を行なった。化粧料の処方を下記表11に示す。また、試験内容及び評価基準は以下の通りである。結果を下記表12及び図6に示す。
【0082】
【表11】

【0083】
・試験内容
36名のパネラーにより、実際に上記化粧料処方1(シャンプー)を4週間連続的に使用してもらい、初回使用時(初日)と、4週間連続使用後(4週間後)のそれぞれの時点で、下記評価基準により、「香りの嗜好性」、「製品の満足感」、及び「継続使用意向」について、それぞれ7段階で評価を行なってもらった。
【0084】
・評価基準
「香りの嗜好性」
非常に好き
好き
やや好き
どちらとも言えない
やや嫌い
嫌い
非常に嫌い
【0085】
「製品全体の満足感」
非常に満足
満足
やや満足
どちらとも言えない
やや不満足
不満
非常に不満
【0086】
「継続使用意向」
非常にあり
あり
ややあり
どちらとも言えない
ややなし
なし
全くなし
【0087】
【表12】

【0088】
上記表12及び図6より、本発明の調香方法により調香した調合香料を配合した化粧料においては、4週間連続的に使用した場合、「香りの嗜好」、「製品全体の満足感」、及び「継続使用意向」のいずれの評価においても、初回使用時と比較して評価が向上していることが明らかとなった。
以上の結果から、本発明の調合香料を化粧料に配合することで、当該化粧料を繰り返して連続的に使用することにより、その嗜好性等の評価等を向上させることができることが確認された。
【0089】
以下に本発明の他の実施例を挙げることにより、本発明についてさらに詳しく説明を行なうが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0090】
【表13】

【0091】
【表14】

【0092】
【表15】

【0093】
【表16】

【0094】
【表17】

【0095】
【表18】

【0096】
【表19】

【0097】
【表20】

【0098】
【表21】

【0099】
【表21】

【0100】
本発明の調香方法により得られた調合香料処方1〜3を配合した上記化粧料処方2〜9においては、いずれのものも、当該化粧料を繰り返し連続的に使用することによって嗜好性、使用性等の評価が向上するものであった。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】6種の調合香料における初回接触時及び二回接触時の嗜好性の評価結果である(初回接触時:事前に調合香料を嗅がせない条件での評価;二回接触後:予め調合香料を嗅がせた条件での評価)。
【図2】公知の香料成分48種についての初回接触時及び二回接触時における嗜好性の評価を行い、初回接触時と二回接触後の嗜好性の評価の変化についてまとめた図である。
【図3】各種香料成分における、連用による嗜好性の変化と、初回接触時及び二回接触後の「濃さ」及び「明るさ」の印象評価結果とをまとめた図である。
【図4】各種香料成分について、初回接触時と二回接触後の嗜好性の変化が、(1)0.5以上低下、(2)変化が0.5未満、及び(3)0.5以上上昇の3つのグループに分類し、各グループにおける初回接触時の「濃さ」の印象評価結果の平均値についてまとめた図である。
【図5】各種調合香料における、連用による嗜好性の変化と、初回接触時及び二回接触後の「濃さ」及び「明るさ」の印象評価結果とをまとめた図である。
【図6】本発明の調合香料を配合した化粧料(シャンプー)についての初回使用時(初日)及び4週間連続使用後(4週間後)の各時点における「香りの嗜好性」、「製品の満足感」、及び「継続使用意向」の評価結果をまとめた図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の香料成分について、下記(X)の評価を行い、当該評価結果を指標として選定することを特徴とする香料成分の選定方法。
(X)初回接触時における香りの嗜好評価、及び二回以上の接触後における香りの嗜好評価。
【請求項2】
任意の香料成分の中から、下記(x)の条件を満たす香料成分を選定することを特徴とする香料成分の選定方法。
(x)二回以上の接触後における香りの嗜好評価が、初回接触時の嗜好評価と比較して増大していること。
【請求項3】
任意の香料成分について、下記(A)及び/又は(B)の評価を行い、当該評価結果を指標として選定することを特徴とする香料成分の選定方法。
(A)初回接触時における香りの「濃さ」の印象評価、及び二回以上の接触後における香りの「濃さ」の印象評価。
(B)初回接触時における香りの「明るさ」の印象評価、及び二回以上の接触後における香りの「明るさ」の印象評価。
【請求項4】
任意の香料成分の中から、下記(a)及び/又は(b)の条件を満たす香料成分を選定することを特徴とする香料成分の選定方法。
(a)二回以上の接触後における香りの「濃さ」の印象評価が、初回接触時の「濃さ」の印象評価と比較して減少していること。
(b)二回以上の接触後における香りの「明るさ」の印象評価が、初回接触時の「明るさ」の印象評価と比較して増大していること。
【請求項5】
請求項4に記載の香料成分の選定方法であって、さらに下記(c)の条件を満たす香料成分を選定することを特徴とする香料成分の選定方法。
(c)初回接触時における香りの「濃さ」の印象評価が1〜7段階の評価で4以上であること。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の香料成分の選定方法により選定された香料成分を含有することを特徴とする香料組成物。
【請求項7】
香料組成物全体の香調について、下記(X)の評価を行い、当該評価結果を指標として調香することを特徴とする調香方法。
(X)初回接触時における香りの嗜好評価、及び二回以上の接触後における香りの嗜好評価。
【請求項8】
香料組成物全体の香調が、下記(x)の条件を満たすように調香することを特徴とする調香方法。
(x)二回以上の接触後における香りの嗜好評価が、初回接触時の嗜好評価と比較して増大していること。
【請求項9】
香料組成物全体の香調について、下記(A)及び/又は(B)の評価を行い、当該評価結果を指標として調香することを特徴とする調香方法。
(A)初回接触時における香りの「濃さ」の印象評価、及び二回以上の接触後における香りの「濃さ」の印象評価。
(B)初回接触時における香りの「明るさ」の印象評価、及び二回以上の接触後における香りの「明るさ」の印象評価。
【請求項10】
香料組成物全体の香調が、下記(a)及び/又は(b)の条件を満たすように調香することを特徴とする調香方法。
(a)二回以上の接触後における香りの「濃さ」の印象評価が、初回接触時の「濃さ」の印象評価と比較して減少していること。
(b)二回以上の接触後における香りの「明るさ」の印象評価が、初回接触時の「明るさ」の印象評価と比較して増大していること。
【請求項11】
請求項10に記載の調香方法において、さらに下記(c)の条件を満たすように調香することを特徴とする調香方法。
(c)初回接触時における香りの「濃さ」の印象評価が1〜7段階の評価で4以上であること。
【請求項12】
請求項7から11のいずれかに記載の調香方法により調香されたことを特徴とする香料組成物。
【請求項13】
請求項6又は12に記載の香料組成物からなる嗜好性向上剤。
【請求項14】
請求項6又は12に記載の香料組成物を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項15】
請求6又は12に記載の香料組成物を商品に配合することを特徴とする商品の繰り返し使用による嗜好性を向上させる方法。
【請求項16】
ガラクソリド、アンブロキサン、マンザネート、グレープフルーツ油、マジョーラム油、シナモン油、オーランチオール、トマトリーフ抽出液、スペアミント油、クローブ油、カモミール油、ペッパー油、トリプラール、ユズ油、オクチルアルデヒド、バニリン、ジャスミン油、ベルガモット油、アルモアズ油、ストロベリー抽出液、ゼラニウム油、ライム油、ナツメグ油、及びアリルカプロエートからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする香料組成物。
【請求項17】
ガラクソリド、アンブロキサン、マンザネート、グレープフルーツ油、マジョーラム油、シナモン油、オーランチオール、トマトリーフ抽出液、スペアミント油、クローブ油、カモミール油、ペッパー油、トリプラール、ユズ油、オクチルアルデヒド、バニリン、ジャスミン油、ベルガモット油、アルモアズ油、ストロベリー抽出液、ゼラニウム油、ライム油、ナツメグ油、及びアリルカプロエートからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする嗜好性向上剤。
【請求項18】
ガラクソリド、アンブロキサン、マンザネート、グレープフルーツ油、マジョーラム油、シナモン油、オーランチオール、トマトリーフ抽出液、スペアミント油、クローブ油、カモミール油、ペッパー油、トリプラール、ユズ油、オクチルアルデヒド、バニリン、ジャスミン油、ベルガモット油、アルモアズ油、ストロベリー抽出液、ゼラニウム油、ライム油、ナツメグ油、及びアリルカプロエートからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項19】
請求項16に記載の香料組成物を商品に配合することを特徴とする商品の繰り返し使用による嗜好性を向上させる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−63251(P2007−63251A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−76722(P2006−76722)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】