説明

香料組成物

【課題】適度な強さと持続性を有し、天然アンバーグリス特有のあたたかみと質感を高める効果を少量で発現させることができる、汎用性の高い香料組成物の提供。
【解決手段】式(1)で表されるデカリンアルコールを含有し、かつ、7-アセチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-1,1,6,7-テトラメチルナフタレン、1,2,3,4,4a,5,6,7-オクタヒドロ-2,5,5-トリメチル-2-ナフタレノール、1,2,3,4,4a,7,8,8a-オクタヒドロ-2,4a,5,8a-テトラメチル-1-ナフチルフォルメート、3a-エチルドデカヒドロ-6,6,9a-トリメチルナフト[2,1-b]フラン、並びにラセミ体及び光学活性のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フランのいずれも含有しない香料組成物、並びにこれを含有する香粧品、家庭用製品及び環境衛生製品。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定構造のデカリンアルコールを含有する香料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
香粧品や家庭用製品における香料は、製品使用時に好ましい香りをもたらすばかりでなく、洗い上がりの心地よさやさっぱり感などの製品の機能を高める役割をも担っている。そのため、調香においては、良い香りの合成香料や天然香料を吟味し選定するとともに、製品の使用場面に応じて、様々な揮発や持続の挙動を示す香料化合物を組み合わせることにより、嗜好性が高く製品の機能に合致した香料組成物を創作している。
【0003】
天然らしい香りや持続性への高い要求から、ウッディ-アンバーの香りを有する新規の香料化合物の探索においても、天然アンバーグリスが有するところの柔らかさやあたたかさのある高い質感を持つもの、非常に強く少量で製品に配合が可能なもの、衣料や毛髪への匂いの吸着性と持続性が高いものが注目されてきた。匂いが強い香料化合物としては、1,2,3,4,4a,5,6,7-オクタヒドロ-2,5,5-トリメチル-2-ナフタレノールが挙げられるが、動物的なあたたかみはあるものの匂いが強すぎるため、肌に直接塗布してほのかに匂わせたい化粧品には使いづらく、他の香料化合物の匂いを損なってしまう欠点があった。
【0004】
また、持続性を高める場合、分子量を増やして揮発性を抑制する方法がある。例えば、イソロンギフォラノンの環状ケタールであるヘキサヒドロ-1',1',5',5'-テトラメチルスピロ[1,3-ジオキソラン-2,8'(5'H)-[2H-2,4a]-メタノナフタレンは、イソロンギフォラノンより持続性は向上するものの、分子量増大により匂いが弱くなり、元々のイソロンギフォラノンが有するウッディで柔らかな天然らしい香りが損なわれる欠点があった。
【0005】
従って、ウッディ-アンバーの香りにおいては、天然らしい高い質感とともに、様々な製品形態や使用場面に応じた適度な強さの匂いと持続性を発現する香料化合物が望まれている。
【0006】
G. Ohloffらは、デカリン骨格とメチル基配置の立体構造に注目し、多数個のメチル基で置換されたデカリンアルコールの合成検討から、4個のメチル基を有する9-ノルドリマノールが最もアンバーな香りを発現することを報告している。しかし、5個以上のメチル基で置換されたものやエチル基を導入したものは、無臭であるか、あるいは興味が持たれていなかった(非特許文献1)。例えば、式(1)の立体構造を有する8-ドリマノールについては、G. Ohloffらによるデカリン骨格を有する香料化合物の研究で検討されておらず、非特許文献1では、立体構造の異なる(9βH)-ドリマン-8β-オールは無臭とされている以外には、ドリマン-8β-オールに関する匂いの記述はなかった。また、いずれの化合物も依然として工業的な製造方法が見出されておらず、香料として使用されていない。
【0007】
【化1】

【0008】
また、J. R. Hlubucekは、Greek tobaccoのNicotiana tabacum L.に式(1)で表される化合物が含まれることを見出し、ドリム-7-エン-11-オールからの製造を試みているが、その匂いは明記されておらず、香料としての重要性は知られていない(非特許文献2)。
【0009】
C. R. Enzellは、(Z)-アビエノールのバイオ変換により8-ドリマノールを含む混合物を得ているが、香料としての記述はない(非特許文献3)。
【0010】
【非特許文献1】Croatica Chemica Acta, 58 (4) p.491 (1985年)
【非特許文献2】Acta Chemica Scandinavica B 28 No.3 p.289 (1974年)
【非特許文献3】Acta Chemica Scandinavica 49 p.375 (1995年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、適度な強さと持続性を有し、天然アンバーグリス特有のあたたかみと質感を高める効果を少量で発現させることができる、汎用性の高い香料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、今まで香料としての用途が見出されていなかった下記式(1)で表されるデカリンアルコール(以下、「デカリンアルコール(1)」という)が、室温では弱いウッディ-アンバー様の香りを有するにも拘わらず、体温以上の温度に加温すると強いアンバー香を発する特徴を持つことを見出した。
【0013】
【化2】

【0014】
更に本発明者らは、デカリンアルコール(1)を他の香料化合物と組み合わせることで、天然アンバーグリスが有しているような柔らかさとあたたかみを付与し、匂いの質感を高め、その強さを助長する効果があることを見出した。更に、同デカリンアルコールを含む香料組成物を香粧品や家庭用製品等に使用したとき、入浴時、ドライヤー使用時、衣料乾燥直後などの加温条件下や、体温によって適度なアンバーな匂いを発香させ、更に使用後の肌や毛髪や衣料に心地よい香りを残すことができる特徴を持つことを見出した。更に、デカリンアルコール(1)は、少量から多量に配合しても香料組成物の匂いのバランスを崩さない匂いの強さを持ち、製品の使用場面に応じた十分な持続性を有する汎用性の高い香料化合物であることを見出した。
【0015】
すなわち、本発明は、式(1)で表されるデカリンアルコールを含有し、かつ、7-アセチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-1,1,6,7-テトラメチルナフタレン、1,2,3,4,4a,5,6,7-オクタヒドロ-2,5,5-トリメチル-2-ナフタレノール、1,2,3,4,4a,7,8,8a-オクタヒドロ-2,4a,5,8a-テトラメチル-1-ナフチルフォルメート、3a-エチルドデカヒドロ-6,6,9a-トリメチルナフト[2,1-b]フラン、並びにラセミ体及び光学活性のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フランのいずれも含有しない香料組成物を提供するものである。
【0016】
【化3】

【0017】
更に、本発明は、かかる香料組成物を含有する香粧品、家庭用製品、及び環境衛生製品を提供するものである。
【0018】
更に、本発明は、香料組成物にデカリンアルコール(1)を添加することによる、香料組成物の香気を改善する方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の香料組成物は、デカリンアルコール(1)を含有させることで、様々な新しい香りを作ることができ、天然アンバーグリスが持つ柔らかさとあたたかみのある香りをもたらすことができる。
【0020】
また、本発明の香料組成物は、例えば、香粧品、家庭用製品、環境衛生製品等の分野において、様々な形態の芳香性製品に配合又は適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の香料組成物が含有するデカリンアルコール(1)は、それ自体は弱いウッディ-アンバー様の香りを有するが、他の香料と組み合わせることで、天然アンバーグリスの持つ柔らかさとあたたかみのある香りを発現し、適度な強さと持続性をもたらす香料組成物を得ることができる。言い換えれば、デカリンアルコール(1)を香料組成物に添加することにより、その香料組成物の香気を改善することができる。
【0022】
本発明のデカリンアルコール(1)を含有する香料組成物は、例えば、以下の1種以上の香料物質と組み合わせて用いることができる。
【0023】
(1)リモネン、α-ピネン、β-ピネン、テルピネン、セドレン、ロンギフォレン、バレンセンなどの炭化水素類。
【0024】
(2)リナロール、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、テルピネオール、ジヒドロミルセノール、エチルリナロール、ファルネソール、ネロリドール、シス-3-ヘキセノール、セドロール、メントール、ボルネオール、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルヘキサノール、2,2,6-トリメチルシクロヘキシル-3-ヘキサノール、1-(2-t-ブチルシクロヘキシルオキシ)-2-ブタノール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-ペンタン-2-オール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-ブタノール、3,3-ジメチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-4-ペンテン-2-オール、3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-4-ペンテン-2-オール、イソカンフィルシクロヘキサノール、3,7-ジメチル-7-メトキシオクタン-2-オールなどのアルコール類。
【0025】
(3)オイゲノール、チモール、バニリンなどのフェノール類。
【0026】
(4)リナリルホルメート、シトロネリルホルメート、ゲラニルホルメート、n-ヘキシルアセテート、シス-3-ヘキセニルアセテート、リナリルアセテート、シトロネリルアセテート、ゲラニルアセテート、ネリルアセテート、テルピニルアセテート、ノピルアセテート、ボルニルアセテート、イソボルニルアセテート、o-t-ブチルシクロヘキシルアセテート、p-t-ブチルシクロヘキシルアセテート、トリシクロデセニルアセテート、ベンジルアセテート、スチラリルアセテート、シンナミルアセテート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、3-ペンチルテトラヒドロピラン-4-イルアセテート、シトロネリルプロピオネート、トリシクロデセニルプロピオネート、アリルシクロヘキシルプロピオネート、エチル2-シクロヘキシルプロピオネート、ベンジルプロピオネート、シトロネリルブチレート、ジメチルベンジルカルビニルn-ブチレート、トリシクロデセニルイソブチレート、メチル2-ノネノエート、メチルベンゾエート、ベンジルベンゾエート、メチルシンナメート、メチルサリシレート、n-ヘキシルサリシレート、シス-3-ヘキセニルサリシレート、ゲラニルチグレート、シス-3-ヘキセニルチグレート、メチルジャスモネート、メチルジヒドロジャスモネート、メチル2,4-ジヒドロキシ-3,6-ジメチルベンゾエート、エチルメチルフェニルグリシデート、メチルアントラニレート、フルテート(花王社商品名)などのエステル類。
【0027】
(5)n-オクタナール、n-デカナール、n-ドデカナール、2-メチルウンデカナール、10-ウンデセナール、シトロネラール、シトラール、ヒドロキシシトロネラール、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、4(3)-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルボアルデヒド、2-シクロヘキシルプロパナール、p-t-ブチル-α-メチルヒドロシンナミックアルデヒド、p-イソプロピル-α-メチルヒドロシンナミックアルデヒド、p-エチル-α,α-ジメチルヒドロシンナミックアルデヒド、α-アミルシンナミックアルデヒド、α-ヘキシルシンナミックアルデヒド、ピペロナール、α-メチル-3,4-メチレンジオキシヒドロシンナミックアルデヒドなどのアルデヒド類。
【0028】
(6)メチルヘプテノン、4-メチレン-3,5,6,6-テトラメチル-2-ヘプタノン、アミルシクロペンタノン、3-メチル-2-(シス-2-ペンテン-1-イル)-2-シクロペンテン-1-オン、メチルシクロペンテノロン、ローズケトン、γ-メチルヨノン、α-ヨノン、カルボン、メントン、ショウ脳、ヌートカトン、ベンジルアセトン、アニシルアセトン、メチルβ-ナフチルケトン、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノン、マルトール、ムスコン、シベトン、シクロペンタデカノン、シクロヘキサデセノンなどのケトン類。
【0029】
(7)アセトアルデヒドエチルフェニルプロピルアセタール、シトラールジエチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドグリセリンアセタール、エチルアセトアセテートエチレングリコールケタールなどのアセタール類やケタール類。
【0030】
(8)アネトール、β-ナフチルメチルエーテル、β-ナフチルエチルエーテル、リモネンオキサイド、ローズオキサイド、1,8-シネオールなどのエーテル類;及び、ゲラニルニトリル、シトロネリルニトリルなどのニトリル類。
【0031】
また、更に、カルボン酸類のほか、γ-ノナラクトン、γ-ウンデカラクトン、δ-デカラクトン、γ-ジャスモラクトン、クマリン、シクロペンタデカノリド、シクロヘキサデカノリド、アンブレットリド、エチレンブラシレート、11-オキサヘキサデカノリドなどのラクトン類、オレンジ、レモン、ベルガモット、マンダリン、ペパーミント、スペアミント、ラベンダー、カモミル、ローズマリー、ユーカリ、セージ、バジル、ローズ、ゼラニウム、ジャスミン、イランイラン、アニス、クローブ、ジンジャー、ナツメグ、カルダモン、セダー、ヒノキ、ベチバー、パチョリ、ラブダナムなどの天然精油や天然抽出物も、デカリンアルコール(1)と組み合わせて使用することができる。
【0032】
本発明の香料組成物においては、デカリンアルコール(1)と上記の他の香料とは、任意に組み合わせることができる。これらの配合割合は特に限定されないが、デカリンアルコール(1)は、香料組成物中に好ましくは0.0001〜99質量%、より好ましくは0.01〜50質量%配合することで、特有の柔らかさとあたたかみのあるウッディ−アンバー香をもたらすことができる。
【0033】
本発明の香料組成物は、様々な形態の芳香性製品に配合又は適用することができる。その利用分野としては、例えば、香粧品、家庭用製品、環境衛生製品等がある。
【0034】
なお、「香粧品」とは、人の身なりを清潔に又は美しくするための製品であり、具体的には石鹸、身体洗浄剤、頭髪洗浄剤、頭髪化粧料、化粧品(例えば、皮膚化粧料、仕上げ化粧料など)、香水、コロン、制汗剤、デオドラント剤、浴用剤等が挙げられる。
【0035】
「家庭用製品」とは、家庭生活に必要な住居や家庭製品等の様々な物品の機能又は清潔性を維持するための製品であり、具体的には衣料用洗剤、衣料用柔軟剤、衣料用糊剤、住居用洗剤、風呂用洗剤、食器用洗剤、漂白剤、カビ取り剤、床用ワックス等が挙げられる。
【0036】
「環境衛生製品」とは、環境を所定の状態又は雰囲気に調節するための製品であり、特に香料組成物を適用して環境に漂う香りを調節することが可能な製品として、具体的には、芳香剤、消臭剤、薫香、線香、ろうそく等が挙げられる。
【0037】
デカリンアルコール(1)は、室温では弱いウッディーアンバー様の香りであるが、体温以上の加熱によって匂いの強さが急激に増し、心地よいアンバー様の匂いを発現する。そのため、本発明の香料組成物は、特に肌や毛髪に直接塗布する製品形態、例えば香水やコロン、スキンケア製品や化粧料、美髪や整髪のためのヘアケア製品など、あるいは加熱が関与する製品形態、例えば、加熱状態で使用される入浴剤、使用後にヘアドライヤーで加熱されるシャンプーやコンディショナーなどのヘアケア製品、使用後に乾燥機やアイロンで加熱される衣料仕上げ剤や柔軟剤などの製品において、嗅覚的に高い効果を発揮することができる。
【0038】
デカリンアルコール(1)は持続性が高く、直接塗布によって肌や髪の毛にほのかに柔らかさのある匂いを持続させることができる。また、衣料用洗剤、衣料用柔軟剤等の家庭用製品においては、洗濯時や処理時に効果的に衣料に香りを残すことが可能である。また、芳香剤、消臭剤、線香、ろうそく等の環境衛生製品などに使用される香料にも調和しやすい。
【0039】
本発明の香料組成物を適用した製品の使用方法は様々であり、例えば、香水や化粧料のように所定部位に積極的に適用して匂いを発生させる方法、洗浄剤のようにすすいだ後の適用部位に匂いを残留させる方法、芳香剤のように空間に揮発させることで匂いを漂わせる方法、線香やろうそくのように燃やすことで空間に匂いを漂わせる方法等がある。
【0040】
一使用例を挙げると、デカリンアルコール(1)を1質量%配合したフローラル-ムスク系の香料組成物を、毛髪洗浄料に対して0.5質量%添加することで、天然アンバーグリスらしい柔らかさとあたたかみのある香りをもたらし、毛髪に柔らかで上品な香りを持続させることが可能である。
【実施例】
【0041】
参考例1 デカリンアルコール(1)の合成及びその匂い評価
〔合成〕
攪拌機及び温度計を取り付けた200mL容の4つ口フラスコ内に、窒素雰囲気下スクラレオリド5g、無水ジクロロメタン60mLを加え、撹拌しながら−78℃まで冷却した。この溶液に水素化ジイソブチルアルミニウム、n-ヘキサン溶液22mLをシリンジでゆっくりと滴下し、冷却下で25分間撹拌した。その後、飽和塩化アンモニウム水溶液12.5mLをゆっくりと加え、攪拌しながら室温まで昇温した。その溶液をジエチルエーテルで希釈後、1.5時間攪拌し、無水硫酸マグネシウムを加えしばらく攪拌した後、セライトでろ過した。そして、ろ液を減圧除去し濃縮すると白色結晶が4.75g(収率95%)得られた。
次に、得られた固形物2gを1L容4つ口フラスコ内で、ジクロロメタン320mLに溶かし数分間攪拌した。その溶液にクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)を7.5g加え、還流条件下にて13時間攪拌した。その後、溶液を室温に戻し、さらに30分間攪拌後、ろ過を行い、ろ液を減圧除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=100:1、容積比)により精製し、デカリンアルコール(1)を1.2g(収率60%)得た。
【0042】
〔匂い評価〕
ホットプレート上にアルミ箔を敷き、その上に上記方法で得られたデカリンアルコール(1)を0.1g載せ、温度を上げながら匂いを評価したところ、以下のとおりであった。
【0043】
室温:弱いウッディ香を有する。
40℃:アンバー感が強まる。
50℃:強いアンバー香。甘さがある。
60℃:非常に強いアンバー香。
【0044】
実施例1 香水用香料組成物
表1に示す組成を持つ香料組成物99.5質量部に、デカリンアルコール(1) 0.5質量部を加えることにより、フルーティな匂い立ちとムスク様の柔らかさとともに、明るく華やかなアンバーな肌残りを特徴とする香水組成物を得ることができた。
【0045】
【表1】

【0046】
実施例2 シャンプー用香料組成物
表2に示す組成を持つ香料組成物95質量部に、デカリンアルコール(1) 5質量%を加えることにより、アンバーグリスとビャクダンの香りが調和した、柔らかく甘さとあたたかみのあるシャンプー用香料組成物を得ることができた。
【0047】
【表2】

【0048】
実施例3 衣料用洗剤用香料組成物
表3に示す組成を持つ香料組成物95質量部に、デカリンアルコール(1) 5質量%を加えることにより、アンバーグリスのあたたかさとビャクダンの柔らかさが良く調和した、ジャスミン・ミューゲ様の衣料用洗剤用香料組成物を得ることができた。
【0049】
【表3】

【0050】
実施例4 衣料用洗剤組成物
表4に示す組成を持つ粉末洗剤組成物99.6質量部に、実施例3で得られた衣料用洗剤用香料組成物(表3)0.4質量部をスプレーし、これを20g量り取り、3.5°DH硬水30Lに溶解した。この水溶液に市販の木綿タオルを2kg入れ、5分間攪拌し、1分間すすいだ後に脱水した。この木綿タオルの匂いを評価したところ、柔らかさと清潔感のある香りが感じられた。特に、乾燥機にてこの木綿タオルを加温・乾燥した直後の匂いは、アンバーグリスのあたたかみのある匂いが特徴的であった。
【0051】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるデカリンアルコールを含有し、かつ、7-アセチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-1,1,6,7-テトラメチルナフタレン、1,2,3,4,4a,5,6,7-オクタヒドロ-2,5,5-トリメチル-2-ナフタレノール、1,2,3,4,4a,7,8,8a-オクタヒドロ-2,4a,5,8a-テトラメチル-1-ナフチルフォルメート、3a-エチルドデカヒドロ-6,6,9a-トリメチルナフト[2,1-b]フラン、並びにラセミ体及び光学活性のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フランのいずれも含有しない香料組成物。
【化1】

【請求項2】
式(1)で表されるデカリンアルコールを0.0001〜99質量%含有する請求項1に記載の香料組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の香料組成物を含有する香粧品。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の香料組成物を含有する家庭用製品。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の香料組成物を含有する環境衛生製品。
【請求項6】
7-アセチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-1,1,6,7-テトラメチルナフタレン、1,2,3,4,4a,5,6,7-オクタヒドロ-2,5,5-トリメチル-2-ナフタレノール、1,2,3,4,4a,7,8,8a-オクタヒドロ-2,4a,5,8a-テトラメチル-1-ナフチルフォルメート、3a-エチルドデカヒドロ-6,6,9a-トリメチルナフト[2,1-b]フラン、並びにラセミ体及び光学活性のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フランのいずれも含有しない香料組成物に、式(1)で表されるデカリンアルコールを添加することによる、香料組成物の香気を改善する方法。
【化2】


【公開番号】特開2007−31499(P2007−31499A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−213659(P2005−213659)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】