説明

香料組成物

【課題】ウッディ香とクマリン様の甘い香りを併せ持つバレロラクトン化合物を含有する香料組成物を提供すること。
【解決手段】式(I):


(式中、R1 及びR2 はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はエチル基を示し、R1 及びR2 が同時に水素原子である場合を除く。R3 は水素原子又はメチル基、R4 はプロピル基又は1-プロペニル基を示す)
で表されるバレロラクトン化合物を含有する香料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バレロラクトン化合物を含有する香料組成物に関する。更に詳しくは、ウッディ香とトンカ豆を想起させるクマリン様の甘さを持つラクトンの香気を発し、残香性に優れるバレロラクトン化合物、及び前記バレロラクトン化合物を香料組成物に配合することにより、天然サンダルウッドの特徴を発現させることができる香料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
サンダルウッド(和名:白檀)は、インド東部を主な生産地とし、高貴な特有の香気を持つことから、東洋では仏像や様々な工芸用彫刻品材料として珍重されている。その芯材と根から水蒸気蒸留により得られる精油は、香料として古くから使用されている。このサンダルウッドオイルは、ソフトで甘いウッディ香とバルサミックな香気を有し、持続性が高いのが特徴であり、オリエンタルタイプの調合香料、香水、化粧品、石鹸、線香等に幅広く用いられている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
しかし、近年の環境保護に対する意識の高まりと、水害対策としての森林保護の強化に伴い、天然木材の過度の伐採が抑制される傾向にある。サンダルウッドも産地国の政府により伐採量が制限され、サンダルウッドオイルの供給不足と価格高騰が香料産業において問題となっている。
【0004】
そのため、サンダルウッドオイルの代用として、2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール、2−エチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール、3−メチル−5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−ペンタン−2−オール、イソカンフィルシクロヘキサノール等のサンダルウッド系合成香料が用いられている。しかし、これらのサンダルウッド系合成香料は、天然サンダルウッド特有のソフトで甘い香りが不足しているため、天然サンダルウッドの香りを十分に再現することが困難である。
【0005】
一般的には、香料組成物の甘い香りを補う香料として、エステル類、ラクトン類、フラノン類、バニリン等がある。中でもラクトン類、例えば、γ−ペンチル−γ−ブチロラクトン(別名γ−ノナラクトン)やδ−ペンチル−δ−バレロラクトン(別名δ−デカラクトン)は、ココナッツ様でミルク様の甘さを持つため、食品的な甘さを出す効果がある。γ−エチル−γ−1−ブテニル−δ−バレロラクトン(例えば、特許文献1参照)は、コスタス様のラクトン、飽和のγ−エチル−γ−ブチル−δ−バレロラクトン(例えば、PFW 社製、商品名:COSTAULON)は、コスタス様でウッディ様のラクトンとされている。
【0006】
また、香料として使用しうるラクトン化合物として、4−シクロヘキシルペンタノリド(例えば、特許文献2参照)やα−アルキル−β−アルキル−δ−アルキル−δ−バレロラクトンが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
このように、前記ラクトン類の多くは、ウッディ香がないのでサンダルウッド系合成香料に直接加えても調和が悪く、むしろ食品的な甘さが天然サンダルウッドらしさを損なうものである。また、ラクトン類の中でウッディ香を持つものは、コスタス様の匂いが強すぎるとともに、甘さが不充分であるため、これをサンダルウッド系合成香料に加えても天然サンダルウッドらしい甘さを補うことはできない。すなわち、従来、天然サンダルウッド特有のソフトで甘いウッディ香とバルサミックな香気を持つ香料組成物を人工的に得ることができなかった。
【0008】
【特許文献1】特開昭53−84975号公報
【特許文献2】特公昭62−5123号公報
【特許文献3】米国特許第3,380,457号明細書
【非特許文献1】中島基貴編著「香料と調香の基礎知識」、産業図書(株)、初版第3刷(2000年)、p. 322−323
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ウッディ香とクマリン様の甘い香りを併せ持つバレロラクトン化合物を含有する香料組成物を提供することを目的とする。より具体的には、本発明は、ウッディ香との調和がとれたソフトで甘いミルク様の香りを発現する香料組成物、更には前記バレロラクトン化合物をサンダルウッド系合成香料と組み合わせることにより、天然サンダルウッド特有のソフトで甘いウッディ香とバルサミックな香気をもたらし、匂いの天然らしさの質感が高い香料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、後述する式(I) で表されるバレロラクトン化合物が、それ自体ではウッディ香とクマリン様の甘い香りを併せ持つ特有の香気を発し、前記香気はウッディ香と調和がとれた甘い香りをもたらすことが可能であること、特に、サンダルウッド系合成香料と組み合わせる場合には、合成品には不十分であった天然サンダルウッドの特徴を容易に発現させることが可能であることを見出した。
【0011】
また、本発明の式(II)で表されるバレロラクトン化合物は、プロパナールに塩基を作用させた後、得られた反応溶液を酸で処理することにより、製造することが可能である。また、本発明の式(II)で表されるバレロラクトン化合物は、2−メチル- 2−ペンテナールに塩基を作用させた後、得られた反応溶液を酸で処理することにより、製造することが可能である。
【0012】
本発明は、式(I) で表されるバレロラクトン化合物を組成物に含有させることにより、ウッディ香と調和がとれた甘い香りを有する香料組成物を提供することを可能にした。更に本発明は、かかる香料組成物を家庭用製品、香粧品製品、環境衛生製品、飲料及び食品に含有させることにより、これらの製品に、より天然のサンダルウッドに近いウッディ香にマッチした甘い香りを付与することを可能にした。
【0013】
本発明に係るバレロラクトン化合物は、
(1) 式(I):
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、R1 及びR2 はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はエチル基を示し、R1 及びR2 が同時に水素原子である場合を除く。R3 は水素原子又はメチル基、R4 はプロピル基、1-プロペニル基又はフェニル基を示す)
で表されるバレロラクトン化合物である。
【0016】
(2) また、本発明に係るバレロラクトン化合物は、式(II):
【0017】
【化2】

【0018】
で表されるバレロラクトン化合物である。
【0019】
(3) 本発明に係るバレロラクトン化合物は、プロパナールに塩基を作用させた後、得られた反応溶液を酸で処理することによって得られた式(II)で表されるバレロラクトン化合物である。
(4) 本発明に係るバレロラクトン化合物の製造法は、プロパナールに塩基を作用させた後、得られた反応溶液を酸で処理する、式(II)で表されるバレロラクトン化合物の製造法である。
(5) 本発明に係る製造法は、2−メチル−2−ペンテナールに塩基を作用させた後、得られた反応溶液を酸で処理する、式(II)で表されるバレロラクトン化合物の製造法である。(6) 本発明に係る香料組成物は、式(I) で表されるバレロラクトン化合物を含有する香料組成物である。
(7) 本発明に係る香料組成物は、式(II)で表されるバレロラクトン化合物を含有する香料組成物である。
(8) 本発明に係る香料組成物は、前記(3) 記載のバレロラクトン化合物を含有する香料組成物である。
(9) 更に、本発明に係る香料組成物は、以下の式(III) 〜式(VII) で表される化合物:
【0020】
【化3】

【0021】
からなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物を含む香料組成物である。
(10)更に、本発明に係る香料組成物は、前記式(III) 〜式(VII) で表される化合物からなる群より選ばれた2種以上の化合物を含む前記(6) 〜(8) 記載の香料組成物である。
(11)さらに、カンフォレナール類を主原料とする香料を含む前記(6) 〜(8) いずれか記載の香料組成物。
【0022】
(12)更に、本発明に係る香料組成物は、成分(A):2−エチル−4 −(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール、3−メチル−5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−ペンタン−2−オール、2−メチル−4 −(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−ブタノール、3,3−ジメチル−5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−4 −ペンテン−2−オール、3−メチル−5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−4 −ペンテン−2−オール、2−メチル−4 −(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール及びこれらの光学異性体からなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物を含む前記(6) 〜(8) いずれか記載の香料組成物である。
【0023】
本発明は、
(13)前記(6) 〜(12)いずれか記載の香料組成物を含有する家庭用製品、
(14)前記(6) 〜(12)いずれか記載の香料組成物を含有する香粧品製品、
(15)前記(6) 〜(12)いずれか記載の香料組成物を含有する環境衛生製品、
(16)前記(6) 〜(12)いずれか記載の香料組成物を含有する飲料、並びに
(17)前記(6) 〜(12)いずれか記載の香料組成物を含有する食品
である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の式(I) で表されるバレロラクトン化合物は、香料物質として有用な甘い香りを有している。また、本発明の香料組成物は、式(I) で表されるバレロラクトン化合物を含有しているので、様々な新しい香りを発し、ウッディ系香料と組み合わせる場合には、ウッディ香との調和のとれたソフトで甘いミルク様の香りをもたらすことができる。特に、本発明に係る式(I) で表されるバレロラクトン化合物とサンダルウッド系合成香料とを組み合わせる場合には、天然サンダルウッド特有のソフトで甘いウッディ香とバルサミックな香気を人工的につくることが可能であり、合成品には不十分であった天然サンダルウッドの特徴を容易に発現させることができる。
【0025】
また、本発明のバレロラクトン化合物は、様々な香料と任意に組み合わせることができる。このバレロラクトン化合物を含有する香料組成物は、例えば、家庭用製品、香粧品製品、環境衛生製品等の分野において、様々な形態の芳香性製品に配合又は適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明のバレロラクトン化合物は、式(I) で表されるものであり、香料物質として有用な甘い香りを有している。
【0027】
式(I) で表されるバレロラクトン化合物の中では、式(II)で表されるα−メチル−β−エチル−γ−メチル−γ−1−プロペニル−δ−バレロラクトンは、それ自身がウッディ香とトンカ豆を想起させるクマリン様の甘い香りを併せ持ち、ウッディ系香料と調和しやすいため、特に好ましい。すなわち、式(II)で表されるバレロラクトン化合物とウッディ系香料とを組み合わせて香料組成物を調製すると、ウッディ香との調和がとれたソフトで甘いミルク様の香りを発現させることができる。
【0028】
特に、式(II)で表されるバレロラクトン化合物をサンダルウッド系合成香料と組み合わせた場合には、サンダルウッド系合成香料のウッディ香と調和し、ソフトで甘いミルク様のウッディ香とバルサミックな香気をもたらし、天然サンダルウッドの特徴を容易に発現させることができる。また、このバレロラクトン化合物は、残香性が高いという利点も有する。
【0029】
また、式(I) で表されるバレロラクトン化合物は、δ位以外のα位、β位又はγ位にアルキル置基を持つことを特徴とする。一般的に香料として用いられるバレロラクトン類のほとんどは、δ位にアルキル置換基を持ち、その匂いは甘くココナッツ様であり、炭素数の増加とともにミルク様の特徴が強くなるため、匂いの性質から食品用香料への利用が多い。
【0030】
一方、式(I) で表されるバレロラクトン化合物は、δ位にアルキル置換基を持たないにもかかわらず、δ位アルキル置換体と同等の甘さを持つと同時に、δ位置換体にはない特有のウッディ香を併せ持つため、各種の香料、例えば、衣料用洗剤、衣料用柔軟剤等の家庭用製品、石鹸、身体洗浄剤、頭髪化粧料、化粧品、香水等の香粧品製品、或いは芳香剤、消臭剤、線香、ろうそく等の環境衛生製品等に使用される香料に調和しやすいという利点を有する。
【0031】
すなわち、バレロラクトンのα位、β位及びγ位のいずれかにアルキル置換基を導入することにより、甘さとともにウッディ香、スパイス香、フローラル香等の様々な特徴を併せ持つ化合物を合成することが可能となる。更には、不飽和結合の導入により、匂いの強さを増し、香りに幅をもたらすことができる。
【0032】
例えば、式(III) で表される化合物は、ウッディ香とスパイス香を併せ持ち、コスタスとイリスを想起させる新規で強い匂いを有する。
【0033】
式(IV)で表される化合物は、ウッディ香とフローラル香を併せ持ち、式(III) で表される化合物と対比して柔らかい新規な匂いを有する。
【0034】
式(V) で表される化合物は、セダーウッド様のウッディ香と、クマリン様の甘さを持つ匂いを有する。
【0035】
式(VII) で表される化合物は、ウッディ香とグリーン香を併せ持ち、式(II)で表される化合物よりもやや弱いがサンダルウッドを想起させる新規な匂いを有する。
【0036】
式(I) で表されるバレロラクトン化合物は、それぞれ単独で香料組成物に含有させることができることのほか、これらのバレロラクトン化合物の2種類以上を組み合わせて用いることもできる。例えば、式(II)で表される化合物、式(III) で表される化合物、式(IV)で表される化合物、式(V) で表される化合物、式(VI)で表される化合物及び式(VII) で表される化合物からなる群より選ばれた2種以上を組み合わせることにより、ウッディ香、フローラル香、スパイス香、コスタス香の多様な香りと強さを創作することが可能であり、また、これらを単独で用いる場合よりも製品用香料に調和させやすいという利点がある。
【0037】
式(V) で表される化合物は、ウッディ香とクマリン様の甘さのある新規な匂いを有する。式(V) で表される化合物と式(II)で表される化合物との組み合わせは、クマリン代替香料として用いることに特に適している。
【0038】
式(I) で表されるバレロラクトン化合物は、例えば、スキーム1に示すルートで合成することができる。
【0039】
より具体的には、ナトリウムメトキシド等のアルカリの存在下で、アクリロニトリル誘導体とマロン酸エステル誘導体とのアルカリ縮合反応を行い、続いて得られた化合物Aを水素化ホウ素リチウム(LiBH4) 等のヒドリド還元試薬により化合物Bに変換することができる。その後、アルカリ条件下で(水酸化ナトリウム水溶液等)、ニトリル部分を加水分解し、硫酸等の酸により、ヒドロキシバレロラクトンCを合成することができる。ヒドロキシ基をピリジニウムジクロメイト(PDC) 等の酸化剤で酸化し、アルデヒド体Dとし、wittig反応により、増炭し、オレフィンの異性化を行い、化合物Fを合成することができる。また、γ位側鎖のオレフィンは、水素とパラジウム−炭素(Pd/C)等の水素添加触媒を用いることにより、容易に化合物F’を合成することができる。
【0040】
【化4】

【0041】
また、R4 がフェニル基の化合物に関しては、スキーム2に示すルートで合成することができる。より具体的には、アクロレイン誘導体とアルデヒドとのアルカリ縮合反応を行い、酸性化することにより、化合物Gを合成することができる。
【0042】
【化5】

【0043】
式(II)で表されるバレロラクトン化合物は、スキーム3:
【0044】
【化6】

【0045】
(式中、Xは、水素原子又は金属原子を示す。金属原子としては、カリウム原子、ナトリウム原子等のアルカリ金属原子、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属原子等が挙げられる。なお、金属原子がアルカリ土類金属原子である場合、式(L)で表される化合物におけるXはX/2となる)
で表されるように、式(H)で表されるプロパナール又は式(J)で表される2−メチル−2−ペンテナールを出発物質として合成することができる。
【0046】
より具体的には、式(H)で表されるプロパナール又は式(J)で表される2−メチル−2−ペンテナールに塩基を作用させることにより、式(K)で表される化合物及び式(L)で表される化合物が順次生成し、得られた反応溶液を酸で処理することにより、式(L)で表される化合物の-COOX 基と-OH 基とが反応して閉環し、式(N) で表されるバレロラクトン化合物が生成される。
【0047】
まず、プロパナール又は2−メチル−2−ペンテナールに塩基を作用させる。このとき、溶媒中でプロパナール又は2−メチル−2−ペンテナールに塩基を作用させることができる。
【0048】
溶媒としては、反応性を高める点から、極性溶媒が好ましく、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の炭素数1〜3の低級アルコールや水が好ましい。これらの中では、水と低級アルコールとの併用が好ましい。
【0049】
溶媒の量は、収率を向上させ、反応性を高める点から、プロパナール又は2−メチル−2−ペンテナール100 質量部に対して、好ましくは0〜1000質量部、より好ましくは50〜700 質量部、更に好ましくは100 〜500 質量部である。
【0050】
塩基としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、カリウムメトキシド、ナトリウムメトキシド等の炭素数1〜3の低級アルコールのアルカリ金属塩等が挙げられる。これらの中では、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、カリウムメトキシド及びナトリウムメトキシドからなる群より選ばれた1種又は2種以上が好ましい。
【0051】
塩基の量は、プロパナール又は2−メチル−2−ぺンテナール1モルに対して、好ましくは0.001 〜10モル、より好ましくは0.005 〜5モル、更に好ましくは0.01〜1モルである。
【0052】
プロパナール又は2−メチル−2−ぺンテナールに塩基を作用させる方法としては、プロパナール又は2−ペンタナールと塩基とを混合する方法、例えば、あらかじめ塩基を溶媒に溶解させておき、その溶液にプロパナール又は2−メチル−2−ぺンテナールを添加する方法をはじめ、プロパナール又は2−メチル−2−ぺンテナールを溶媒に溶解させておき、その溶液に塩基又はその溶液を添加する方法等が挙げられる。
【0053】
プロパナール又は2−メチル−2−ぺンテナールに塩基を作用させる際の雰囲気には、特に限定がないが、チッ素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。プロパナール又は2−メチル−2−ぺンテナールに塩基を作用させる際の温度には、特に限定がない。通常、かかる温度は、20〜60℃であればよい。
【0054】
プロパナール又は2−メチル−2−ぺンテナールに塩基を作用させたときの終点は、例えば、ガスクロマトグラフィー、薄層液体クロマトグラフィー等によってプロパナール又は2−メチル−2−ぺンテナールが消失した時点とすることができる。プロパナール又は2−メチル−2−ぺンテナールに塩基を作用させるのに要する時間は、反応条件によって異なるので一概には決定することができないが、通常、1〜48時間程度である。
【0055】
次に、得られた反応溶液を酸で処理することにより、バレロラクトン化合物を得ることができる。
なお、反応溶液を酸で処理をする前には、反応溶液に水とエーテルを添加し、攪拌し、水層とエーテル層とに分離し、そのうちエーテル層を除去して水層を取り出し、その水層を用いることが好ましい。
【0056】
この場合、エーテルとしては、ジエチルエーテル等の汎用のものを用いることができる。水及びエーテルの量は、特に限定がないが、通常、それぞれ、反応溶液100 質量部に対して50〜200 質量部であることが好ましい。
【0057】
酸としては、塩酸、リン酸等の無機酸や、酢酸、クエン酸、酒石酸等の有機酸が挙げられる。これらの中では、無機酸が好ましい。
【0058】
酸による反応溶液の処理は、通常、反応溶液(水層)のpHが1〜6、好ましくはpH2〜4となるように、反応溶液(水層)に酸を添加し、酸性にすることによって行うことができる。その際の反応溶液の液温は、特に限定がないが、通常、5〜40℃程度であればよい。かかる酸処理の終点は、pH試験紙〔例えば、メルク(Merck) 社製、商品名:Acilit pH0〜6)を用いてpHを測定し、そのpHが前述のpHとなったときとすることができる。
【0059】
かくして酸による処理を施すことによって得られた反応混合物には、本発明のバレロラクトン化合物が含有されている。この反応混合物に、例えば、エーテルを加えて抽出した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等で精製することにより、バレロラクトン化合物を単離することができる。
【0060】
本発明の香料組成物は、式(I) で表されるバレロラクトン化合物を含有する。式(I) で表されるバレロラクトン化合物は、新規の香りを有するので、様々な香料と組み合わせることにより、容易に新しい香りを作ることができる。
【0061】
本発明のバレロラクトン化合物と組み合わせて用いることができる香料物質の例としては、以下のものが挙げられる。
リモネン、α−ピネン、β−ピネン、テルピネン、セドレン、ロンギフォレン、バレンセン等の炭化水素類;
リナロール、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、テルピネオール、ジヒドロミルセノール、エチルリナロール、ファルネソール、ネロリドール、シス−3−ヘキセノール、セドロール、メントール、ボルネオール、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルヘキサノール、2,2,6−トリメチルシクロヘキシル−3−ヘキサノール、1−(2−t−ブチルシクロヘキシルオキシ)−2−ブタノール等のアルコール類;
【0062】
オイゲノール、チモール、バニリン等のフェノール類;
リナリルホルメート、シトロネリルホルメート、ゲラニルホルメート、n−ヘキシルアセテート、シス−3−ヘキセニルアセテート、リナリルアセテート、シトロネリルアセテート、ゲラニルアセテート、ネリルアセテート、テルピニルアセテート、ノピルアセテート、ボルニルアセテート、イソボルニルアセテート、o−t−ブチルシクロヘキシルアセテート、p−t−ブチルシクロヘキシルアセテート、トリシクロデセニルアセテート、ベンジルアセテート、スチラリルアセテート、シンナミルアセテート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、3−ペンチルテトラヒドロピラン−4−イルアセテート、シトロネリルプロピオネート、トリシクロデセニルプロピオネート、アリルシクロヘキシルプロピオネート、エチル2−シクロヘキシルプロピオネート、ベンジルプロピオネート、シトロネリルブチレート、ジメチルベンジルカルビニルn−ブチレート、トリシクロデセニルイソブチレート、メチル2−ノネノエート、メチルベンゾエート、ベンジルベンゾエート、メチルシンナメート、メチルサリシレート、n−ヘキシルサリシレート、シス−3−ヘキセニルサリシレート、シクロヘキシルサリシレート、ゲラニルチグレート、シス−3−ヘキセニルチグレート、メチルジャスモネート、メチルジヒドロジャスモネート、メチル2,4−ジヒドロキシ−3,6−ジメチルベンゾエート、エチルメチルフェニルグリシデート、メチルアントラニレート、フルテート〔花王(株)製、商品名〕等のエステル類;
【0063】
n−オクタナール、n−デカナ−ル、n−ドデカナ−ル、2−メチルウンデカナール、10- ウンデセナール、シトロネラール、シトラール、ヒドロキシシトロネラール、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、4(3)−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボアルデヒド、2−シクロヘキシルプロパナール、p−t−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド、p−イソプロピル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド、p−エチル−α,α−ジメチルヒドロシンナミックアルデヒド、α−アミルシンナミックアルデヒド、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド、ピペロナール、α−メチル−3,4−メチレンジオキシヒドロシンナミックアルデヒド等のアルデヒド類;
【0064】
メチルヘプテノン、4−メチレン−3,5,6,6−テトラメチル−2−ヘプタノン、アミルシクロペンタノン、3−メチル−2−(シス−2−ペンテン−1−イル)−2−シクロペンテン−1−オン、メチルシクロペンテノロン、ローズケトン、γ−メチルヨノン、α−ヨノン、カルボン、メントン、ショウ脳、アセチルセドレン、イソロンギフォラノン、ヌートカトン、ベンジルアセトン、アニシルアセトン、メチルβ−ナフチルケトン、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン、マルトール、ムスコン、シベトン、シクロペンタデカノン、シクロヘキサデセン等のケトン類;
【0065】
ホルムアルデヒドシクロドデシルエチルアセタール、アセトアルデヒドエチルフェニルプロピルアセタール、シトラールジエチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドグリセリンアセタール、エチルアセトアセテートエチレングリコールケタール等のアセタール類やケタール類;
【0066】
セドリルメチルエーテル、アネトール、β−ナフチルメチルエーテル、β−ナフチルエチルエーテル、リモネンオキサイド、ローズオキサイド、1,8−シネオール、デカヒドロ−3a,6,6,9a−テトラメチルナフト[2.1−b]フラン等のエーテル類;及び、ゲラニルニトリル、シトロネリルニトリル等のニトリル類である。
【0067】
また、カルボン酸類の他、γ−ノナラクトン、γ−ウンデカラクトン、δ−デカラクトン、γ−ジャスモラクトン、クマリン、シクロペンタデカノリド、シクロヘキサデカノリド、アンブレットリド、エチレンブラシレート、11−オキサヘキサデカノリド等のラクトン類、オレンジ、レモン、ベルガモット、マンダリン、ペパーミント、スペアミント、ラベンダー、カモミル、ローズマリー、ユーカリ、セージ、バジル、ローズ、ゼラニウム、ジャスミン、イランイラン、アニス、クローブ、ジンジャー、ナツメグ、カルダモン、セダー、ヒノキ、ベチバー、パチョリ、ラブダナム等の天然精油や天然抽出物も使用可能である。
【0068】
本発明の式(I) で表されるバレロラクトン化合物は、前記香料物質と任意に組み合わせることができる。香料組成物におけるバレロラクトン化合物の含有量は、特に限定されないが、特有の甘さとウッディ香をもたらす観点から、通常、0.001 質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.2 質量%以上、更に好ましくは0.3 質量%以上、より一層好ましくは0.4 質量%以上、特に好ましくは0.5 質量%以上である。
【0069】
特に、サンダルウッド様の香気を有する香料は、式(II)で表されるバレロラクトン化合物と組み合わせる香料として効果的であり、天然サンダルウッドらしさの質感が高い香料組成物が得られる。
【0070】
サンダルウッド様の香気を有する香料の例としては、以下のような人工香料(B)が挙げられる。
(B)2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール、2−エチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール、3−メチル−5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−ペンタン−2−オール、2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−ブタノール、3,3−ジメチル−5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−4−ペンテン−2−オール、3−メチル−5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−4−ペンテン−2−オール等のカンフォレナールを主原料とする香料;イソカンフィルシクロヘキサノール類;3,7−ジメチル−7−メトキシオクタン−2−オール及び前記各化合物の光学異性体等から選ばれる1種又は2種以上の化合物が挙げられる。
【0071】
前記人工香料(B)の中では、下記成分(A):
(A)2−エチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール、3−メチル−5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−ペンタン−2−オール、2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−ブタノール、3,3−ジメチル−5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−4−ペンテン−2−オール、3−メチル−5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−4−ペンテン−2−オール、2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール及びこれらの光学異性体からなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物が好ましい。
【0072】
式(I) で表されるバレロラクトン化合物と前記サンダルウッド様の香気を有する香料は、任意に組み合わせることができる。バレロラクトン化合物:前記サンダルウッド様の香気を有する香料(B)の質量比は、特に限定されないが、天然サンダルウッド特有のソフトで甘いミルク様の香りをもたらす観点から、好ましくは1:100000以上、より好ましくは1:10000 以上、更に好ましくは1:1000以上である。また、前記質量比は、好ましくは1:100000〜1:1 、より好ましくは1:10000 〜3:7 、更に好ましくは1:1000〜2:8 、特に好ましくは1:500 〜1:9 、1:350 〜1:9 である。
【0073】
前記バレロラクトン化合物を、公知の方法で他の香料と混合することにより、本発明の香料組成物を製造することができる。バレロラクトン化合物を含有する香料組成物は、様々な形態の芳香性製品に配合又は適用することができる。その利用分野としては、例えば、家庭用製品、香粧品製品、環境衛生製品等がある。
【0074】
家庭用製品とは、家庭生活に必要な住居や家庭製品等の様々な物品の機能又は清潔性を維持するための製品であり、具体的には、衣料用洗剤、衣料用柔軟剤、衣料用糊剤、住居用洗剤、風呂用洗剤、食器用洗剤、漂白剤、カビ取り剤、床用ワックス等が挙げられる。これらの製品群に対して、本発明の香料組成物は任意の量で配合することができるが、通常、0.001 〜2質量%、好ましくは0.01〜1質量%である。
【0075】
香粧品製品とは、人の身なりを清潔に又は美しくするための製品であり、具体的には、石鹸、身体洗浄剤、頭髪洗浄剤、頭髪化粧料、化粧品(例えば、皮膚化粧料、仕上げ化粧料等)、香水、コロン、制汗剤、デオドラント剤、浴用剤等が挙げられる。これらの製品群に対して、本発明の香料組成物は任意の量で配合することができる。例えば、製品群における本発明の香料組成物の含有量は、0.0001〜50質量%、好ましくは香水及びコロンの場合は1〜40質量%、香水及びコロン以外の石鹸、身体洗浄剤、頭髪洗浄剤、頭髪化粧料、化粧品制汗剤、デオドラント剤、浴用剤等の場合は0.001 〜2 質量%である。
【0076】
また、環境衛生製品とは、環境を所定の状態又は雰囲気に調節するための製品であり、特に香料組成物を適用して環境に漂う香りを調節することが可能な製品として、具体的には、芳香剤、消臭剤、薫香、線香、ろうそく等が挙げられる。これらの製品群に対して、本発明の香料組成物は任意の量で配合することができる。例えば、該製品群における本発明の香料組成物の含有量は、0.01〜80質量%、好ましくは0.1 〜70質量%である。
【0077】
更には、本発明のバレロラクトン化合物は、飲料及び食品に使用される香料に配合することができ、例えば、コーヒー飲料、酒類、焼き菓子、乳製品等にバレロラクトン化合物を加えることにより、特有の甘さをもたらすことが可能となる。更に、口腔用製品(例えば、歯磨き、洗口液等)、煙草用の香料としても用いることができる。
【0078】
香料組成物を適用した製品の使用方法は様々であり、例えば、香水や化粧料のように所定部位に積極的に適用して匂いを発生させる方法、洗浄剤のようにすすいだ後の適用部位に匂いを残留させる方法、芳香剤のように空間に揮発させることにより匂いを漂わせる方法、線香やろうそくのように燃やすことにより空間に匂いを漂わせる方法等がある。
【0079】
その一実施態様を挙げると、サンダル系合成香料を任意に含みバレロラクトン化合物を1質量%含有する香料組成物を、衣料用柔軟剤に対して0.1 質量%添加することにより、衣料に天然サンダル特有のソフトで甘い香りをもたらし、やわらかな香りを持続させることが可能となる。
【実施例】
【0080】
実施例1〔α−メチル−γ−メチル−γ−1−プロペニルバレロラクトンの合成〕
【0081】
【化7】

【0082】
(1) アルカリ縮合反応
200mL 容の4つ口フラスコ内に、メタクリロニトリル20.13g(0.300mol)、メチルマロン酸ジエチル52.26g(0.300mol)及び20%ナトリウムエトキシドエタノール溶液2.35mL(0.006mol)を加え、90℃で12時間反応させた。pH6.86の緩衝液を加えて中和し、飽和食塩水にて洗浄を行い、粗生成物(1)72.0gを得た。
【0083】
(2) 還元、加水分解及び環化反応
500mL 容の4つ口フラスコ内に、脱水テトラヒドロフラン(200mL) を加え、撹拌し、室温で水素化ホウ素リチウム6.36g(0.290mol) を加えた。反応溶液を-60 ℃に冷却し、10分間かけて前記粗生成物(1) を滴下した。反応溶液を徐々に昇温し、0 ℃で3時間反応を行った。0 ℃に保ったまま10%硫酸(100mL) をゆっくりと反応溶液に滴下し、反応溶液のpHを4とした。反応溶液を室温まで昇温し、水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム37.0g 、蒸留水100mL)をゆっくりと加えた。
【0084】
ディーンスターク管をフラスコに取り付け、反応溶液を85℃まで昇温し、テトラヒドロフランを反応系から除去し、この温度で2.5 時間反応を行った。反応溶液を分液ロートに移し、ジエチルエーテルで3回洗浄を行った。水層に6N塩酸を加えてpHを2とし、酢酸エチルで6回抽出を行い、有機層を合わせて硫酸ナトリウムで乾燥を行った。溶媒を減圧除去し、粗生成物(3)38.14g を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:8(容量比))により精製を行い、中間生成物(3) 13.35gを得た。
【0085】
(3) 酸化反応
1L容の4つ口フラスコ内に、脱水塩化メチレン(400mL) 、13.35g(0.084mol)の中間生成物(3) 及びピリジニウムジクロメイト31.75g(0.084mol)を加え、室温で22時間反応を行った。ジエチルエーテルを加え、反応溶液をシリカゲルで濾過し粗生成物10.31gを得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1(容量比))により精製を行い、中間生成物(4) 5.60g を得た。
【0086】
(4)wittig 反応
300mL 容の4つ口フラスコ内に、脱水テトラヒドロフラン(19mL)及びエチルトリフェニルホスホノブロミド11.41g(0.030mol)を加え、室温で撹拌を行った。0.94M フェニルリチウムトルエンシクロヘキサン溶液32.7mL(0.030mol)を加え、室温で30分撹拌し、その後-30 ℃に冷却した。中間生成物(4) 4.80g(0.03mol)を含む脱水テトラヒドロフラン(12.5mL)溶液を50分間かけて滴下し、その後室温まで昇温し、室温で10分間撹拌を行った。反応溶液に飽和塩化アンモニウム水溶液(10mL)及び0.1N塩酸(40mL)を加えた。反応溶液をジエチルエーテルで3回抽出し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及びpH6.86の緩衝液でそれぞれ1回ずつ洗浄を行った。溶媒を減圧除去し粗生成物3.20g を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:2(容量比))により、精製を行い、中間生成物(5) 122.0mg を得た。
【0087】
(5) 異性化反応
100mL 容の4つ口フラスコ内に、588.7mg(0.527mmol)、チオフェノール29.0mg(0.264mmol) 、2,2’−ビスアゾイソブチロニトリル13.0mg(0.079mmol) 及びベンゼン(15mL)を加え、80℃で反応させた。2時間反応を行い、2,2’−ビスアゾイソブチロニトリル13.0mg(0.079mmol) を再度添加した。更に2時間反応させた後、アゾイソブチルニトリル13.0mg(0.079mmol) を再度添加し、2時間後反応を停止した。溶媒を減圧除去し、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:2(容量比))により精製を行い、目的物(6)30.2mg を得た。
【0088】
実施例2〔β−エチル−γ−メチル−γ−1−プロペニルバレロラクトンの合成〕
【0089】
【化8】

【0090】
(1) アルカリ縮合反応
100mL 容の4つ口フラスコ内に、2−ペンテニトリル20.60g(0.254mol)、メチルマロン酸ジメチル41.30g(0.283mol)及び28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液2.60mL(0.127mol)を加え、130 ℃で7 時間反応させた。pH6.86の緩衝液を反応溶液に加えて中和し、飽和食塩水にて洗浄を行い、粗生成物(7) 36.0g を得た。
【0091】
(2) 還元、加水分解及び環化反応
500mL 容の4つ口フラスコ内に、脱水テトラヒドロフラン(100mL) を加え、撹拌し、室温で水素化ホウ素リチウム3.52g(0.162mol) を加えた。反応溶液を-60 ℃に冷却し、10分間かけて粗生成物(7) を滴下した。反応溶液を徐々に昇温し、30℃で3時間反応した。再度0℃に冷却し10%硫酸(65mL)をゆっくりと滴下し反応溶液のpHを2とした。室温まで昇温し、水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム20.0g 、蒸留水80mL)をゆっくりと加えた。
【0092】
ディーンスターク管をフラスコ内に取り付け、反応溶液を97℃まで昇温し、テトラヒドロフランを反応系から除去し、この温度で2.5 時間反応を行った。反応溶液を分液ロートに移し、ジエチルエーテルで3回洗浄を行った。水層に6N塩酸を加えてpHを2とし、酢酸エチルで6回抽出を行い、有機層を合わせて硫酸ナトリウムで乾燥を行った。溶媒を減圧除去し、粗生成物(9)25.13g を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:7(容量比))により精製を行い、中間生成物(9) 12.85gを得た。
【0093】
(3) 酸化反応
1L容の4つ口フラスコ内に、脱水塩化メチレン(400mL) 、12.85g(0.075mol)の中間生成物9及びピリジニウムジクロメイト28.07g(0.075mol)を加えて室温で17時間反応を行った。ジエチルエーテルを加え、反応溶液をシリカゲルで濾過し、粗生成物11.13gを得た。クーゲルロール蒸留により精製を行い、中間生成物(10)7.17g を得た。
【0094】
(4)wittig 反応
100mL 容の4つ口フラスコ内に、脱水テトラヒドロフラン(30mL)及びエチルトリフェニルホスホノブロミド6.54g(0.018mol) を加えて室温で撹拌を行った。0.94M フェニルリチウムトルエンシクロヘキサン溶液18.7mL(0.018mol)を加えて室温で30分撹拌し、その後-50 ℃に冷却した。中間生成物(10)を3.00g(0.018mol) 含む脱水テトラヒドロフラン(20mL)溶液を20分間かけて滴下し、その後室温まで昇温し、室温で10分間撹拌を行った。反応溶液に飽和塩化アンモニウム水溶液(10mL)及び0.1N塩酸(40mL)を加えた。反応溶液をジエチルエーテルで3回抽出し飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及びpH6.86の緩衝液でそれぞれ1回ずつ洗浄を行った。溶媒を減圧除去し粗生成物2.20g を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1(容量比)) により精製を行い、中間生成物(11)240.0mg を得た。
【0095】
(5) 異性化反応
100mL 容の4つ口フラスコ内に、100.0mg(0.550mmol)の中間生成物(11)、チオフェノール30.2mg(0.274mmol) 、2,2’−ビスアゾイソブチロニトリル13.5mg(0.083mmol) 及びベンゼン(17mL)を加え、80℃で反応させた。2 時間反応を行い、2,2’−ビスアゾイソブチロニトリル13.5mg(0.083mmol) を再度添加した。更に2 時間反応後、アゾイソブチルニトリル13.5mg(0.083mmol) を再度添加し、2 時間後反応を停止した。溶媒を減圧除去し、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:2(容量比) ) により精製を行い、目的物(12)50.7mgを得た。
【0096】
実施例3〔α−メチル−β−エチル−γ−メチル−γ−フェニルバレロラクトンの合成〕
【0097】
【化9】

【0098】
100mL 容の4つ口フラスコ内に、2−メチル−2−ぺンテナール3.92g(0.040mol) 、2−フェニルプロパナール10.74g(0.080mol)及び脱水メタノール(20mL)を加え、35℃で5分間撹拌を行った。カリウムメトキシド2.81g(0.040mol) を5回に分割し、30分間かけて添加した。反応溶液を60℃に昇温し18.5時間撹拌を行った。反応溶液をジエチルエーテル及びヘキサンで1回ずつ洗浄し、pHが2になるまで1N塩酸を加えた。
【0099】
ジエチルエーテル及びヘキサンで1回ずつ抽出を行い、有機層を合わせてpH6.86の緩衝液で洗浄し、有機溶媒を減圧除去し粗生成物3.22g を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1(容量比))により精製を行い、目的物(13)1.32g を得た。
【0100】
図1にα−メチル−γ−メチル−γ−1−プロペニルバレロラクトンの1H-NMR(400MHz)チャートを示す。図2にα−メチル−γ−メチル−γ−1−プロペニルバレロラクトンのIRチャートを示す。図3にβ−エチル−γ−メチル−γ−1−プロペニルバレロラクトンの1H-NMR(400MHz)チャートを示す。図4にβ−エチル−γ−メチル−γ−1−プロペニルバレロラクトンのIRチャートを示す。図5にα−メチル−β−エチル−γ−メチル−γ−フェニルバレロラクトンの1H-NMR(400MHz)チャートを示す。図6にα−メチル−β−エチル−γ−メチル−γ−フェニルバレロラクトンのIRチャートを示す。
【0101】
実施例4〔プロパナールからα−メチル−β−エチル−γ−メチル−γ−1−プロペニル−δ−バレロラクトンの合成〕
攪拌機及び温度計を取り付けた100mL 容の4つ口フラスコ内に、蒸留水5.10g、48%水酸化カリウム水溶液0.48g及びメタノール14.02gを加え、室温で5分間攪拌を行った。得られた溶液に、プロパノール12.57gを1分間かけて滴下した。滴下終了後、得られた溶液を55℃に昇温し、46時間加熱還流を行った。
【0102】
次に、得られた反応溶液を室温に冷却し、蒸留水100mL とジエチルエーテル100mL により希釈し、分層後エーテル層を除去し、水層に塩酸を加えてpHを2とし、ジエチルエーテル100mL で2回抽出を行った。得られた有機層を合わせ、溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1(容量比))により精製し、α−メチル−β−エチル−γ−メチル−γ−1−プロペニル−δ−バレロラクトン14.8mgを得た(収率1.4 %)。
【0103】
なお、得られた化合物がα−メチル−β−エチル−γ−メチル−γ−1 −プロペニル−δ−バレロラクトンであることは、この化合物の1H-NMRスペクトル及びIRスペクトルによって確認された(図7及び図8参照)。
【0104】
実施例5〔2−メチル−2−ぺンテナールからα−メチル−β−エチル−γ−メチル−γ−1−プロペニル−δ−バレロラクトンの合成〕
攪拌機及び温度計を取り付けた100 mL容の4つ口フラスコ内に、2−メチル−2−ぺンテナール7.85g 及び脱水メタノール22mLを加え、室温で5分間撹拌を行った。反応溶液にカリウムメトキシド1.23g を加え、反応溶液を35℃に昇温し、6時間反応を行った。その後、水酸化カリウム2.24g を溶解させた脱水メタノール20mLを加え、反応溶液を45℃に昇温し、17時間撹拌を行った。
【0105】
次に得られた反応溶液を室温に冷却し、水100mL とジエチルエーテル100mL により希釈し、分層した後、エーテル層を除去し、水層を塩酸でpHを2とし、ジエチルエーテル100mL で2回抽出を行った。得られた有機層を合わせ、溶媒を減圧除去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン: 酢酸エチル=4:1(容量比))により精製し、α−メチル−β−エチル−γ−メチル−γ−1 −プロペニル−δ−バレロラクトン1.20g を得た(収率15%)。
【0106】
得られたα−メチル−β−エチル−γ−メチル−γ−1 −プロペニル−δ−バレロラクトンの赤外吸収スペクトル(IR)及び1H-NMRの測定結果をそれぞれ図7及び図8に示す。なお、1H-NMRは、バリアン(Varian)社製、400MHz NMRを用いて測定した。また、IRは、(株)堀場製作所製、品番:FT-IR を用いて測定した。
【0107】
また、得られたα−メチル−β−エチル−γ−メチル−γ−1 −プロペニル−δ−バレロラクトンの質量分析をヒューレット・パッカード社製、HP-5973 を用いて測定した。その結果を以下に示す。
〔質量分析の測定結果〕
(m/z) :196(M+ ) 、 166(M+ -CH2O)
【0108】
実施例6〔α−メチル−β−エチル−γ−メチル−γ−プロピル−δ−バレロラクトンの合成〕
100mL 容の水素添加用フラスコ内に、前記で得られたα−メチル−β−エチル−γ−メチル−γ−1 −プロペニル−δ−バレロラクトン0.77g 、5%Pd/C 0.10g及びエタノール10mLを添加し、室温で0.33MPa(水素圧3.36kg/cm2)で1時間反応を行った。固形物を濾過し、α−メチル−β−エチル−γ−メチル−γ−プロピル−δ−バレロラクトン0.70g を得た。得られたα−メチル−β−エチル−γ−メチル−γ−プロピル−δ−バレロラクトンの1H-NMR及び赤外吸収スペクトル(IR)の測定結果をそれぞれ図9及び図10に示す。
【0109】
実施例7〔バレロラクトン化合物(I) を含有するサンダルウッドタイプの香料組成物の調製〕
サンダルウッドの香りを有する香料物質として2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール〔花王(株)製、商品名:サンダルマイソールコア〕を用い、以下の表1の香料A、B、C及びDの質量比でそれぞれ香料組成物A1 、B1 、C1 及びD1 を調製し、香料Eを比較品として、専門パネラーにより、匂いの比較評価を行った。その結果、以下に示すように、式(II)で表されるバレロラクトン化合物の配合により、サンダルウッドの香りの質がより高められたことが認められた。
【0110】
【表1】

【0111】
<評価結果>
香料組成物A1 は、比較品の香料Eに比較してサンダルマイソールコアのサンダルウッド感が強められた。香料組成物B1 は、比較品の香料Eに比較して甘さと天然のサンダルウッドらしさが認められた。香料組成物C1 は、比較品の香料Eに比較してミルク様の甘さとボリュームが強くなり、天然のサンダルウッドらしさを強める効果が認められた。香料組成物D1 は、比較品の香料Eに比較して甘さと天然サンダルウッドらしさが、より一層強められた。
【0112】
2−エチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オールを表1に示すサンダルウッドの香りを有する香料物質として用い、前記表1に記載した香料Dの質量比で香料組成物D2 を調製し、香料Eを比較品として匂いの比較評価を行った。
【0113】
<評価結果>
香料組成物D2 は、比較品の香料Eに比較してウッディ感が強められる効果が認められた。
【0114】
3−メチル−5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−ペンタン−2−オールをサンダルウッドの香りを有する香料物質として用い、前記表1に記載した香料Dの質量比で香料組成物D3 を調製し、香料Eを比較品として匂いの比較評価を行った。
【0115】
<評価結果>
香料組成物D3 は、比較品の香料Eに比較してパウダリーな天然サンダルウッドの特徴が賦与され、柔らかい匂いになった。
【0116】
3−メチル−5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−4−ペンテン−2−オールをサンダルウッドの香りを有する香料物質として用い、表1に記載した香料Dの質量比で香料組成物D4 を調製し、香料Eを比較品として匂いの比較評価を行った。
【0117】
<評価結果>
香料組成物D4 は、比較品の香料Eに比較して甘さとボリュームのある匂いが認められた。
【0118】
なお、表1に示すサンダルウッドの香りを有する香料物質には、上記の例のほか、2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−ブタノール、3,3−ジメチル−5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−4−ペンテン−2−オール等のカンフォレナールを主原料とする香料;イソカンフィルシクロヘキサノール類;3,7−ジメチル−7−メトキシオクタン−2−オール等も含まれる。
【0119】
実施例8〔香水用香料組成物〕
下記表2に記載した組成を持つ香料組成物99質量部に、式(II)で表されるバレロラクトン化合物1質量部を加えることにより、天然サンダルウッドの香りを基調とした、ソフトで甘いウッディ香とバルサミックな香気を特徴とする香水組成物を得ることができた。
【0120】
【表2】

【0121】
比較例1
実施例8で得られた香料組成物99質量部(表2)に、γ−エチル−γ−ブチル−δ−バレロラクトン1質量部を加えたものは、甘さがなく、強いコスタス臭のため天然サンダルウッドらしい柔らかさはない、バランスの悪い匂いとなった。
【0122】
比較例2
実施例8で得られた香料組成物99質量部(表2)に、無臭のジプロピレングリコール1質量部を加えたものは、甘さがなく、乾いた木材を想起させる香りがあり、天然サンダルウッド様の柔らかさは認められなかった。
【0123】
実施例9〔衣料用洗剤の香料組成物〕
下記表3に記載の組成を有する香料組成物95質量部に、実施例7の香料Cを5質量部加えることにより、清潔感とともに柔らかい香りをもたらす衣料用洗剤用香料組成物を得ることができた。
【0124】
【表3】

【0125】
実施例10〔衣料用洗剤組成物〕
下記表4に記載の組成を持つ粉末洗剤組成物99.6質量部に、実施例9の香料組成物0.4 質量部をスプレーし、これを20g 秤量し、3.5 °DH硬水30Lに溶解した。この水溶液に市販の木綿タオル2kgを入れ、5分間攪拌し、1分間すすいだ後に脱水した。この木綿タオルの匂いを評価したところ、柔らかく甘い匂いが感じられ、式(II)で表されるバレロラクトン化合物の効果が確認された。
【0126】
【表4】

【0127】
実施例11〔衣料用柔軟剤の香料組成物〕
下記表5に記載の組成を持つ香料組成物92質量部に、実施例7の香料D(例えば、組成物D1 、D2 、D3 、D4 等)を8質量部加えることにより、香りにボリュームをもたらし、強さと甘さのある香りの衣料用柔軟剤の香料組成物をそれぞれ得ることができた。
【0128】
【表5】

【0129】
実施例12〔衣料用柔軟剤組成物〕
下記表6に記載の組成を持つ柔軟剤組成物99.5質量部に、実施例11の香料組成物0.5 質量部を配合し、これを3g秤量し、水30L に溶解した。この水溶液に市販の木綿タオル2kg を入れ、25℃で1分間攪拌した。脱水後、室温にて乾燥させ、翌日の木綿タオルの匂いを評価したところ、乾燥布においてもムスク様、アンバー様、フローラル様の香りとともに天然サンダルウッド様の香りが感じられ、甘い香りが持続するとの結果が得られた。
【0130】
【表6】

【0131】
実施例13〔シャンプー用香料組成物〕
下記表7に記載の組成を持つ香料組成物95質量部に、実施例7の香料D(例えば、組成物D1 、D2 、D3 、D4 等)を5質量部加えることにより、天然サンダルウッド特有のソフトで甘い香りのシャンプー用香料組成物をそれぞれ得ることができた。
【0132】
【表7】

【0133】
実施例14〔液体身体洗浄剤用香料組成物〕
下記表8に記載の組成を持つ香料組成物90質量部に、実施例7の香料D(例えば、組成物D1 、D2 、D3 、D4 等)を10質量部加えることにより、ソフトで甘い香りの肌残りを特徴とする液体身体洗浄剤用香料組成物をそれぞれ得ることができた。
【0134】
【表8】

【0135】
実施例15〔線香用香料組成物〕
下記表9に記載の組成を持つ香料組成物95質量部に、式(II)で表されるバレロラクトン化合物を5質量部加えることにより、オリエンタル調の甘く、香水の様な線香用香料組成物を得ることができた。
【0136】
【表9】

【0137】
実施例16〔ミルク風味付け用香料組成物(フレーバー)〕
下記表10に記載の組成を持つ香料組成物99.2質量部に、式(II)で表されるバレロラクトン化合物を0.8質量部加えることにより、ボリューム感があり、ナチュラルなミルク香のあるミルク風味付け用香料組成物(フレーバー)を得ることができた。
【0138】
【表10】

【0139】
実施例17〔ミルクコーヒー組成物〕
下記表11に記載の組成を持つミルクコーヒー組成物99.9質量部に、実施例16の香料組成物(フレーバー)0.1質量部を配合し、ふくよかな甘さと適度な渋みの風味のあるミルクコーヒー組成物を得ることができた。
【0140】
【表11】

【0141】
実施例18〔香料組成物〕
バレロラクトン化合物(II)50質量部、バレロラクトン化合物(III)10 質量部、バレロラクトン化合物(IV)30質量部及びバレロラクトン化合物(VII)10 質量部を組み合わせることにより、ウッディ・サンダル様でフローラルとコスタスを想起させる香料組成物が得られた。
【0142】
実施例19〔香料組成物〕
バレロラクトン化合物(II)40質量部及びバレロラクトン化合物(V) 60質量部を組み合わせることにより、ウッディ感とともにクマリンの甘さのある香りを想起させる、クマリンタイプの香料組成物が得られた。
【0143】
なお、本発明の態様として、以下のものが挙げられる。
〔1〕 式(I):
【0144】
【化10】

【0145】
(式中、R1 及びR2 はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はエチル基を示し、R1 及びR2 が同時に水素原子である場合を除く。R3 は水素原子又はメチル基、R4 はプロピル基又は1-プロペニル基を示す)
で表されるバレロラクトン化合物を含有する香料組成物。
〔2〕 前記バレロラクトン化合物の含有量が0.001 質量%以上である前記〔1〕記載の香料組成物。
〔3〕 前記バレロラクトン化合物の含有量が0.2 質量%以上である前記〔1〕記載の香料組成物。
〔4〕 さらに、カンフォレナール類を主原料とする香料を含む前記〔1〕記載の香料組成物。
〔5〕 更に、下記成分(A):
(A) 2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3- シクロペンテン-1- イル)-2-ブテン-1- オール、3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3- シクロペンテン-1- イル)-ペンタン-2- オール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3- シクロペンテン-1- イル)-ブタノール、3,3-ジメチル-5-(2,2,3-トリメチル-3- シクロペンテン-1- イル)-4-ペンテン-2- オール、3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3- シクロペンテン-1- イル)-4-ペンテン-2- オール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3- シクロペンテン-1- イル)-2-ブテン-1- オール及びこれらの光学異性体からなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物
を含む前記〔1〕記載の香料組成物。
〔6〕 式(I)で表される化合物:成分(A)の質量比が、1:100000以上である前記〔5〕記載の香料組成物。
〔7〕 式(I)で表される化合物:成分(A)の質量比が、1:500 以上である前記〔5〕記載の香料組成物。
〔8〕 前記〔1〕〜〔7〕いずれか記載の香料組成物を含有する家庭用製品。
〔9〕 前記〔1〕〜〔7〕いずれか記載の香料組成物を含有する香粧品製品。
〔10〕 前記〔1〕〜〔7〕いずれか記載の香料組成物を含有する環境衛生製品。
〔11〕 前記〔1〕〜〔7〕いずれか記載の香料組成物を含有する飲料。
〔12〕 前記〔1〕〜〔7〕のいずれか記載の香料組成物を含有する食品。
【産業上の利用可能性】
【0146】
バレロラクトン化合物は、様々な香料と任意に組み合わせることができる。このバレロラクトン化合物を含有する香料組成物は、例えば、家庭用製品、香粧品製品、環境衛生製品等の分野において、様々な形態の芳香性製品に配合又は適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】α−メチル−γ−メチル−γ−1−プロペニルバレロラクトンの1H-NMR(400MHz)チャートである。
【図2】α−メチル−γ−メチル−γ−1−プロペニルバレロラクトンのIRチャートである。
【図3】β−エチル−γ−メチル−γ−1−プロペニルバレロラクトンの1H-NMR(400Mz) チャートである。
【図4】β−エチル−γ−メチル−γ−1−プロペニルバレロラクトンのIRチャートである。
【0148】
【図5】α−メチル−β−エチル−γ−メチル−γ−フェニルバレロラクトンの1H-NMR(400MHz)チャートである。
【図6】α−メチル−β−エチル−γ−メチル−γ−フェニルバレロラクトンのIRチャートである。
【図7】本発明の実施例4で得られたα−メチル−β−エチル−γ−メチル−γ−1 −プロペニル−δ−バレロラクトンの赤外吸収スペクトルの測定結果を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例4で得られたα−メチル−β−エチル−γ−メチル−γ−1 −プロペニル−δ−バレロラクトンの1H-NMR(CDCl3) の測定結果を示すグラフである。
【0149】
【図9】α−メチル−β−エチル−γ−メチル−γ−プロピル−δ−バレロラクトンの1H-NMR(400MHz)チャートである。
【図10】α−メチル−β−エチル−γ−メチル−γ−プロピル−δ−バレロラクトンのIRチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(式中、R1 及びR2 はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はエチル基を示し、R1 及びR2 が同時に水素原子である場合を除く。R3 は水素原子又はメチル基、R4 はプロピル基又は1-プロペニル基を示す)
で表されるバレロラクトン化合物を含有する香料組成物。
【請求項2】
前記バレロラクトン化合物の含有量が0.001 質量%以上である請求項1記載の香料組成物。
【請求項3】
前記バレロラクトン化合物の含有量が0.2 質量%以上である請求項1記載の香料組成物。
【請求項4】
さらに、カンフォレナール類を主原料とする香料を含む請求項1記載の香料組成物。
【請求項5】
更に、下記成分(A):
(A) 2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3- シクロペンテン-1- イル)-2-ブテン-1- オール、3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3- シクロペンテン-1- イル)-ペンタン-2- オール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3- シクロペンテン-1- イル)-ブタノール、3,3-ジメチル-5-(2,2,3-トリメチル-3- シクロペンテン-1- イル)-4-ペンテン-2- オール、3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3- シクロペンテン-1- イル)-4-ペンテン-2- オール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3- シクロペンテン-1- イル)-2-ブテン-1- オール及びこれらの光学異性体からなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物
を含む請求項1記載の香料組成物。
【請求項6】
式(I)で表される化合物:成分(A)の質量比が、1:100000以上である請求項5記載の香料組成物。
【請求項7】
式(I)で表される化合物:成分(A)の質量比が、1:500 以上である請求項5記載の香料組成物。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか記載の香料組成物を含有する家庭用製品。
【請求項9】
請求項1〜7いずれか記載の香料組成物を含有する香粧品製品。
【請求項10】
請求項1〜7いずれか記載の香料組成物を含有する環境衛生製品。
【請求項11】
請求項1〜7いずれか記載の香料組成物を含有する飲料。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれか記載の香料組成物を含有する食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−35733(P2009−35733A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188691(P2008−188691)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【分割の表示】特願2003−323125(P2003−323125)の分割
【原出願日】平成15年9月16日(2003.9.16)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】