説明

駆動伝達装置及びそれを用いた画像形成装置

【課題】 駆動部材と駆動伝達部材とが衝突し、衝突音が発生する。
【解決手段】 駆動伝達部材が駆動部材に係合した状態から、当接部材が当接して駆動伝達部材が駆動部材との係合が解除される方向へ移動すると、付勢手段が駆動伝達部材を付勢する方向が、駆動伝達部材が駆動部材に係合する方向から駆動伝達部材と駆動部材との係合が解除される方向に変わることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源によって回転させられる駆動部材から従動部材への駆動力の伝達を解除可能な駆動伝達装置及びそれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置には、転写ローラの当接離間機構や、給紙部におけるシートのピックアップ機構等に間欠回転動作行う駆動伝達装置が用いられている。このような駆動伝達装置では、間欠回転動作を行う為に、電磁クラッチや専用モータ等を用いるのが一般的であるが、電磁クラッチや専用モータ等を用いるとコストがかかるので、より安価な構成として特許文献1に示す構成がある。
【0003】
図10は特許文献1に記載された従来の駆動伝達装置を簡略化して示した図である。この構成について説明する。不図示の駆動源によって矢印A方向に回転駆動される駆動ギア(駆動部材)22と、駆動ギア22と同軸で回転可能な従動ギア23が設けられている。従動ギア23は、従動ギア(従動部材)23に対して回動して駆動ギア22と係合する位置と係合が解除された位置との間を移動可能な駆動伝達部材24を保持している。
【0004】
図10(a)に示すように、駆動伝達部材24の係合部24aが駆動ギア22と係合している状態では、駆動伝達部材24を介して駆動ギア22から従動ギア23へ駆動力が伝達される。このため、従動ギア23及び駆動伝達部材24が駆動ギア22と一体的に矢印A方向に回転する。
【0005】
従動ギア23への駆動力の伝達を解除する際は、図10(b)に示すように当接部材17を駆動伝達部材24に当接する位置へ移動させ、駆動伝達部材24を係止することで、駆動伝達部材24と駆動ギア22との係合を解除する。このようにすることで、駆動ギア22から従動ギア23への駆動力の伝達が解除される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−158328
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、駆動伝達部材24の係合部24aが確実に駆動ギア22に係合するよう、駆動伝達部材24がバネ25により駆動ギア22と噛合う方向に向かって付勢されている。このため、従動ギア23への駆動力の伝達を解除する為には、当接部材17が駆動伝達部材24に当接した際にバネ25の付勢力に抗して駆動伝達部材24を駆動ギア22から離して(退避させ)係合を解除する必要がある。
【0008】
ここで、特許文献1の構成では、駆動伝達部材24の係合部24aの先端と駆動ギア22の係合が外れた瞬間に駆動ギア22から従動ギア23へ駆動力が伝達されなくなるので、従動ギア23にかかる負荷により従動ギア23の回転はすぐに止まる。このため、従動ギア23の回転が止まった時、駆動伝達部材24の係合部24aの先端が駆動ギア22から十分に距離を取って離れた(退避した)位置まで移動できない可能性がある。
【0009】
一方、通常、従動ギア23と従動ギア23の駆動伝達方向下流側の部材との間にはバックラッシュ等のガタが存在し、駆動ギア22から駆動力が伝達されていない状態で、従動ギア23はガタ分逆回転できてしまう。このため、装置本体内の振動等によって従動ギア23が逆回転してしまうと、駆動源によって回転し続けている駆動ギア22に駆動伝達部材24の係合部24aの先端が衝突し、衝突音等が発生する場合がある。
【0010】
そこで本発明は、上記課題に鑑みて、駆動部材に係合可能な駆動伝達部材を保持する従動部材を用いる駆動伝達装置において、駆動伝達部材を駆動部材から確実に退避させ、衝突音等の発生をより抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、駆動源からの駆動力により回転する駆動部材と、前記駆動部材からの駆動力を受けて前記駆動部材と同軸で回転する従動部材と、前記従動部材に対し移動可能に保持され、前記駆動部材に係合する駆動伝達部材と、前記駆動伝達部材を付勢する付勢手段と、前記駆動伝達部材と前記駆動部材との係合を解除する為に前記駆動伝達部材に当接する当接部材と、を有し、前記駆動伝達部材が前記駆動部材に係合した状態であると前記駆動伝達部材を介して前記駆動部材から前記従動部材へ駆動力が伝達され、前記駆動伝達部材と前記駆動部材との係合が解除された状態であると前記駆動部材から前記従動部材への駆動力の伝達が解除される駆動伝達装置において、前記駆動伝達部材が前記駆動部材に係合した状態から、前記当接部材が当接して前記駆動伝達部材が前記駆動部材との係合が解除される方向へ移動すると、前記付勢手段が前記駆動伝達部材を付勢する方向が、前記駆動伝達部材が前記駆動部材に係合する方向から前記駆動伝達部材と前記駆動部材との係合が解除される方向に変わることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、駆動部材に係合可能な駆動伝達部材を保持する従動部材を用いる駆動伝達装置において、駆動伝達部材を駆動部材から確実に退避させ、衝突音等の発生をより抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】画像形成装置の概略断面図。
【図2】駆動伝達装置の斜視図。
【図3】(a)駆動伝達装置を回転中心の軸に直交する方向からから見た側面図。(b)(a)のA−AとB−Bの位置で入力ギアと出力ギアを分解し、内側から入力ギア側と出力ギア側のそれぞれを見た状態を並べて示す図。
【図4】(a)軸方向で入力ギア側から出力ギア側に向かってから駆動伝達レバーを見た図。(b)軸方向で入力ギア側から出力ギア側に向かってから駆動伝達レバーを見た図。
【図5】(a)回転中心の軸方向で入力ギア側から出力ギア側に向かって駆動伝達装置を見た図。(b)駆動伝達レバー及び当接部材付近の斜視図。
【図6】(a)回転中心の軸方向で入力ギア側から出力ギア側に向かって駆動伝達装置を見た図。(b)駆動伝達レバー及び当接部材付近の斜視図。
【図7】(a)回転中心の軸方向で入力ギア側から出力ギア側に向かって駆動伝達装置を見た図。(b)駆動伝達レバー及び当接部材付近の斜視図。(c)当接部材を回転中心の軸方向から見た拡大図。
【図8】(a)回転中心の軸方向で入力ギア側から出力ギア側に向かって駆動伝達装置を見た図。(b)回転中心の軸方向で入力ギア側から出力ギア側に向かって駆動伝達装置を見た図。
【図9】(a)回転中心の軸方向で入力ギア側から出力ギア側に向かって駆動伝達装置を見た図。(b)駆動伝達レバー及び当接部材付近の斜視図。(c)当接部材を回転中心の軸方向から見た拡大図。
【図10】(a)従来の駆動伝達装置を簡略化して示す図。(b)従来の駆動伝達装置を簡略化して示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態では、電子写真方式の画像形成装置に搭載された駆動伝達装置について説明する。駆動伝達装置について説明する前にまずこの画像形成装置について説明する。
【0015】
[画像形成装置]
図1は画像形成装置の概略断面図である。この画像形成装置は中間転写ベルト(中間転写体)を用いたタンデム型の電子写真カラーレーザープリンタである。
【0016】
画像形成装置600は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー画像を形成する4つの画像形成部Y、M、C、Kを有し、これら画像形成部Y、M、C、Kは画像形成装置本体600内に左から右に順に並列配置されている。
【0017】
各画像形成部Y、M、C、Kはそれぞれ電子写真画像形成方式の画像形成部であり、それぞれが異なる色のトナー像を各画像形成部の感光ドラム上に形成する以外は、各画像形成部の構成は同じである。各画像形成部は、感光ドラム1(1Y、1M、1C、1K)を有している。更に、各画像形成部には感光ドラム1の周囲に、感光ドラム1に作用するプロセス手段として、帯電ローラ2(2Y、2M、2C、2K)、現像ローラ3(3Y、3M、3C、3K)、転写ローラ7(7Y、7M、7C、7K)、クリーニングブレード8(8Y、8M、8C、8K)を有している。また、各感光ドラム1のそれぞれに画像情報に対応するレーザ光を照射のレーザスキャナ4を各感光ドラム1の下方に有している。
【0018】
次に、各画像形成部での画像形成について説明する。各感光ドラム1はそれぞれ図1の時計回りに回転駆動される。この状態で、感光ドラム1は帯電ローラ2により帯電され、レーザスキャナ4によりレーザ光を照射され、潜像が形成される。この潜像に現像ローラ3に付着するトナーを付着させることで、感光ドラム1の表面上にトナー像が形成される。フルカラー画像の色分解成分色である、イエロートナー像が画像形成部Yの感光ドラム1Yの表面上に、マゼンタトナー像が画像形成部Mの感光ドラム1Mの表面上に形成される。また、シアントナー画像が画像形成部Cの感光ドラム1Cの表面上に、ブラックトナー画像が画像形成部Cの感光ドラム1Cの表面上に形成される。
【0019】
一方、画像形成部Y、M、C、Kの上側には各感光ドラム1からトナー像を転写される中間転写ベルト601が配置されている。中間転写ベルト601は、画像形成部Y側に配設した掛け回しローラ5と、画像形成部K側に配設した掛け回しローラ6と、掛け回しローラ6の上方に配設した2次転写対向ローラ602Tの該3本の並行配列ローラ間に懸回張設されている。掛け回しローラ6は、中間転写ベルト601を中間転写ベルト601の表面の速度が各感光ドラム1の表面の速度と略同じになるよう、矢印Bの方向(反時計回り)に駆動するローラであり、不図示の駆動源によりに回動駆動される。
【0020】
掛け回しローラ5、6間には、中間転写ベルト61を挟んで画像形成部Y・M・C・Kの各感光ドラム1と対向するように1次転写ローラ7が配設され、1次転写ニップ部T1を形成している。この1次転写ニップにて1次転写バイアスを印加して、各感光ドラム1上のトナー像を中間転写ベルト601上へ転写する。
【0021】
1次転写ニップ部T1の中間転写ベルト601の回転方向下流には、中間転写ベルト61を挟んで2次転写対向ローラ602Tと対向するように2次転写ローラ602が配設されている。2次転写ローラ602は、中間転写ベルト601を介して2次転写対向ローラ602Tを押圧し、中間転写ベルト601と2次転写ローラ602とで2次転写ニップ部T2を形成している。中間転写ベルト601上のトナー像は、2次転写ニップT2にて2次転写バイアスを印加され、2次転写ニップT2に搬送されるシート上に転写される。
【0022】
2次転写ニップ部T2の中間転写ベルト601の回転方向下流の掛け回しローラ5に対向する位置に中間転写ベルトクリーナ603が配設されている。中間転写ベルトクリーナ603は、クリーニングブレードを中間転写ベルト601の外面に接触させ、二次転写ニップ部T2で転写されずに残ったトナーを掻き取る。
【0023】
604は定着ローラ(加熱ローラ)604aと加圧ローラ604bとの圧接ローラ対からなる定着装置である。
【0024】
次に、シートS上に4色のトナー像を形成する過程について説明する。605は画像形成装置を制御する制御手段としての制御基板であり、画像形成装置の画像形成動作を制御する。制御基板605は、プリントスタート信号に基づいて、画像形成部Y、M、C、Kの各感光ドラム1上にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像を形成する。各トナー像は1次転写ニップ部T1において中間転写ベルト601上に順次に重畳転写され、中間転写ベルト601上に4色のトナー画像を形成し、2次転写ニップ部T2へ4色のトナー像を移動していく。
【0025】
一方、給紙カセット9内に積載収容させたシート(記録材)Sを、給紙ローラ10の回転駆動で1枚分離給送し、レジストローラ対11まで搬送する。レジストローラ対11は、中間転写ベルト601上の4色のトナー像が2次転写ニップ部T2に到達するのに合わせてシートSを2次転写ニップ部T2に導入する。そして、2次転写バイアスによって、中間転写ベルト601上の4色のトナー像をシートS上に転写する。2次転写ニップ部T2を出たシートSを、定着装置604に搬送し、加熱及び加圧をすることで未定着のトナー像をシートS上に定着する。このようにしてシートS上に4色のトナー像を形成する。
【0026】
ところで、画像形成装置600は単色画像形成(モノクロプリント)時に画像形成部Y、M、Cの感光ドラム1Y、1M、1Cが中間転写ベルト601に擦れて磨耗して消耗する可能性がある。そこで、これを防ぐために1次転写ローラ7Y、7M、7Cを中間転写ベルト601から離間させることを可能とする不図示の1次転写ローラ当接離間機構を有している。この1次転写ローラ当接離間機構はカムを備え、カムの回転位相を変えることで一次転写ローラ7の当接状態と離間状態とを切り替える構成となっている。本実施形態の駆動伝達装置は、このカムへ間欠的に駆動力を伝達し、カムを所定のタイミングで所定角ずつ回転させるギア列の一部に用いられている。
【0027】
[駆動伝達装置]
図2は本実施形態の駆動伝達装置の斜視図である。この装置は、第1実施形態同様に入力ギア(駆動部材)101、出力ギア(従動部材)102、ソレノイドSLを有する。入力ギア101は、ギア103を介して、不図示のモータ(駆動源)と駆動連結され、モータからの駆動力により回転する。また、出力ギア102は、ギア104及び駆動出力軸105を介して、一次転写ローラ7の当接状態と離間状態とを切り替える為の上述した不図示の1次転写ローラ当接離間機構のカムを駆動するギア列と駆動連結されている。入力ギア101及び出力ギア102は共に回転中心106回りに同軸で回転する。
【0028】
入力ギア101、出力ギア102に挟まれた空間には、駆動伝達爪、駆動伝達レバーが配置されている。次に、これらの配置関係について説明する。図3(a)は、駆動伝達装置を回転中心(回転軸)106の軸に直交する方向からから見た側面図である。図3(b)は、図3(a)のA−AとB−Bの位置で入力ギア101と出力ギア102を分解し、内側から入力ギア101側と出力ギア102側のそれぞれを見た状態を並べて示す図である。即ち図3(b)のA−A側(左側)は入力ギア101側を見た図、B−B側(右側)は出力ギア102側を見た図である。なお、ソレノイドSLは右側の図に記載している。
【0029】
入力ギア101には回転軸周りに駆動伝達爪201が一体的に形成されている。出力ギア102の側面には駆動伝達爪201と係合可能な係合手段として駆動伝達レバー(駆動伝達部材)301が保持される。この駆動伝達レバー301は、出力ギア102の回転中心106とは異なる軸301c回りに回動可能である。また、駆動伝達レバー301は駆動伝達爪201と係合可能な形状の係合部301a、及び、ソレノイドSLに固定された当接部材303に当接する被当接部301bを有している。
【0030】
出力ギア102の張架部102bと駆動伝達レバー301の張架部301dとの間にはバネ302が設けられ、駆動伝達レバー301の姿勢によって付勢方向が変化するように駆動伝達レバー301を付勢する構成になっている。つまり、駆動伝達レバー301はバネ302により所謂トグルレバーとして機能している。
【0031】
次にこのバネ302によって駆動伝達レバー301を付勢する構成について詳しく説明する。図4(a)、(b)は軸301c方向で入力ギア101側から出力ギア102側に向かってから駆動伝達レバー301を見た図である。なお、入力ギア101、出力ギア102は一部を省略して記載している。
【0032】
図4(a)に示すように、駆動伝達レバー301の張架部301dが、張架部102bと軸301cを結ぶ直線(中立線)Iよりも右側に位置する状態では、バネ302が張架部301dを引っ張る力は、駆動伝達レバー301をF方向に回動させるように作用する。即ち、この状態では、駆動伝達レバー301はバネ302によりF方向に向かって付勢された状態となっている。一方で、駆動伝達レバー301の張架部301dが、張架部102bと軸301cを結ぶ直線(中立線)Iよりも左側に位置する状態では、バネ302が張架部301dを引っ張る力は、駆動伝達レバー301をH方向に回動させるように作用する。即ち、この状態では、駆動伝達レバー301はバネ302によりH方向に向かって付勢された状態となっている。
【0033】
このように、駆動伝達レバー301の張架部301dが中立線Iのどちら側に位置するかによって、バネ302が駆動伝達レバー301を付勢する付勢方向が変わる構成となっている。また、H方向に付勢された駆動伝達レバー301は、係合部301aが入力ギア101の駆動伝達爪201に係合するようなっている。また、F方向に付勢された駆動伝達レバー301は、係合部301aが駆動伝達爪201から離れるようにF方向に回動し、出力ギア102に設けられたストッパ102aに突き当たるようになっている。
【0034】
[駆動伝達装置の動作]
次に、本実施形態の駆動伝達装置を用いた出力ギア102の間欠駆動について説明する。図5(a)、図6(a)、図7(a)、図8(a)、(b)、図9(a)は各状態において、回転中心106の軸方向で入力ギア101側から出力ギア102側に向かって駆動伝達装置を見た図である。なお、簡単の為、入力ギア101の斜め上側半分を透過させた状態で示している。また、図5(b)、図6(b)、図7(b)、図9(b)は、各状態における駆動伝達レバー301及び当接部材303付近の斜視図である。また図7(c)、図9(c)は、当接部材303を回転中心106の軸方向から見た拡大図である。
【0035】
図5(a)、(b)は、入力ギア101から出力ギア102へ駆動力が伝達されていない(駆動力の伝達が解除されている)スタンバイ状態を示している。この状態では、駆動伝達レバー301はバネ302の作用によりF方向に付勢されてストッパ102aに突き当たっており、駆動伝達レバー301の係合部301aと駆動伝達爪201との係合が解除されている。なお、ソレノイドSLの通電は解除され、ソレノイドSLに固定された当接部材303は軸106から離れる方向に退避した状態となっており、当接部材303と駆動伝達レバー301の被当接部301bとは当接していない。
【0036】
次に、ソレノイドSLが通電されると、図6(a)、(b)に示すように、当接部材303がJ方向(軸106に近づく方向)に移動する。当接部材303には駆動伝達レバー301の被当接部301bを押圧する押圧面303aが形成されている。このため、当接部材303のJ方向への移動に伴って、押圧面303aが被当接部301bを押圧することで、駆動伝達レバー301をバネ302のF方向への付勢力に抗してH方向に回動させる。
【0037】
当接部材303が更にJ方向に移動していくと、図7(a)、(b)、(c)に示す状態となる。図7(b)、(c)に示すように、当接部材303には被当接部301bが通過する為の切欠部303bが形成され、押圧面303aは切欠部303bの内側まで延長して設けられている。このため、被当接部301bは押圧面303aに当接して押圧されながら切欠部303bの内側を通過しH方向に移動していく。すると、上述したように、張架部301dが中立線Iを超えて、バネ302により駆動伝達レバー301が付勢される方向がF方向からH方向に変わり(図4参照)、駆動伝達レバー301がH方向に回動する。
【0038】
このように押圧面303aは、少なくとも駆動伝達レバー301が付勢される方向がH方向に変わるまで被当接部301bを押圧するように構成されている。また、切欠部303bは、このとき被当接部301bのH方向への移動を妨げないような形状となっている。
【0039】
そして、駆動伝達レバー301がH方向に回動すると、図8(a)に示すように、係合部301aが駆動伝達爪201に係合する係合位置に到達し、C方向に回転する入力ギア101の駆動伝達爪201に係合する。このため、入力ギア101から駆動伝達レバー301を介して出力ギア102へ駆動力が伝わり、図8(b)に示すように、入力ギア101、駆動伝達レバー301、及び、出力ギア102が一体的にC方向に回転する。なお、切欠部303bは、駆動伝達レバー301が駆動伝達爪201に係合して、駆動伝達レバー301がC方向に回転し始めた時に被当接部301bのC方向の回転を妨げないような形状となっている。
【0040】
また、出力ギア102が回転中に、ソレノイドSLの通電が解除されることで当接部材303はK方向(J方向の反対方向)に移動し、駆動伝達レバー301の被当接部301bを係止可能な係止位置へ戻る。
【0041】
出力ギア102が入力ギア101から駆動力を受けて1回転すると、図9(a)、(b)、(c)に示す状態となる。図9(b)、(c)に示すように、当接部材303には被当接部301bを係止する係止面303cが形成されおり、係止面303cに入力ギア101と一体的にC方向に回転してきた被当接部301bが当接し、駆動伝達レバー301の被当接部301bが係止面303cに係止される。
【0042】
一方で、係合部301aは駆動伝達爪201と係合しており、駆動伝達レバー301を介して入力ギア101から出力ギア102への駆動力が伝達されている状態であるので、出力ギア102は矢印C方向に回転を続ける。つまり、駆動伝達レバー301の軸301cもC方向に回転していく。
【0043】
このため、駆動伝達レバー301は、被当接部301bが当接部材303の係止面303cに係止された状態で、バネ302の付勢力に抗して軸301c回りでF方向に回転していく。そして、上述したように、張架部301dが中立線Iを超え、駆動伝達レバー301がバネ302により付勢される方向がH方向からF方向に変わり(図4参照)、駆動伝達レバー301がF方向に回動する。これにより駆動伝達レバー301の係合部301aが駆動伝達爪201から退避(F方向に移動)し、係合部301aと駆動伝達爪201との係合が解除される。駆動伝達レバー301は、ストッパ102aに突き当たることでF方向への回動が停止し、図5(a)に示すスタンバイ状態(スタンバイ位置)に戻る。このため出力ギア102へ入力ギア101からの駆動力が伝達されなくなり出力ギア102は停止する。
【0044】
ここで、被当接部301bが当接部材303に係止されてから、係合部301aと駆動伝達爪201との係合が解除される前に、駆動伝達レバー301がバネ302により付勢される方向がH方向からF方向に変わるような構成になっている。このため、当接部材303に係止されることにより確実にバネ302による駆動伝達レバーの付勢方向を変化させることができる。また、駆動伝達レバー301がバネ302に付勢されてF方向に移動している状態で、係合部301aと駆動伝達爪201との係合が解除(係合部301aの先端と駆動伝達爪201の先端とが離れる)される。そして、係合が解除された後も駆動伝達レバー301はバネ302の付勢力によりF方向に回動してからストッパ102aに突き当たる。このため、係合部301aは駆動伝達爪201から十分に離れた退避位置に移動することができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態では、出力ギア102が保持する駆動伝達レバー301を介して入力ギア101から出力ギア102へ駆動力を伝達する構成において、駆動伝達レバー301を入力ギア101の駆動伝達爪201に係合するよう付勢するバネ302の付勢方向を変更可能に構成した。つまり、H方向に回転するよう付勢され駆動伝達爪201に係合した駆動伝達レバー301を当接部材303が係止すると、駆動伝達レバー301の付勢方向が駆動伝達爪201から離れる方向(F方向)に変わる。このため、駆動伝達レバー301はバネ302の付勢力によって駆動伝達爪201から十分にな距離を保った位置に確実に退避することができる。そして、このように確実に退避することにより、駆動伝達の確実な解除、及び、衝突音の防止等機械的な不具合を解決することができる。
【0046】
なお、上述した実施形態では、画像形成装置の1次転写ローラの当接離間機構に本発明の駆動伝達装置を適用した例を示したが、本発明の駆動伝達装置はこれに限定されない。即ち、本発明の駆動伝達装置は、画像形成装置の給紙部の駆動や、現像ローラ3と感光ドラム1との当接離間機構、トナー補給部の駆動の切り替え、その他の駆動伝達部、及び、画像形成装置以外の駆動伝達部を有する機器に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
101 入力ギア(駆動部材)
102 出力ギア(従動部材)
201 駆動伝達爪
301 駆動伝達レバー(駆動伝達部材)
301a 係合部
301b 被当接部
302 バネ
303 当接部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源からの駆動力により回転する駆動部材と、
前記駆動部材からの駆動力を受けて前記駆動部材と同軸で回転する従動部材と、
前記従動部材に対し移動可能に保持され、前記駆動部材に係合する駆動伝達部材と、
前記駆動伝達部材を付勢する付勢手段と、
前記駆動伝達部材と前記駆動部材との係合を解除する為に前記駆動伝達部材に当接する当接部材と、
を有し、前記駆動伝達部材が前記駆動部材に係合した状態であると前記駆動伝達部材を介して前記駆動部材から前記従動部材へ駆動力が伝達され、前記駆動伝達部材と前記駆動部材との係合が解除された状態であると前記駆動部材から前記従動部材への駆動力の伝達が解除される駆動伝達装置において、
前記駆動伝達部材が前記駆動部材に係合した状態から、前記当接部材が当接して前記駆動伝達部材が前記駆動部材との係合が解除される方向へ移動すると、前記付勢手段が前記駆動伝達部材を付勢する方向が、前記駆動伝達部材が前記駆動部材に係合する方向から前記駆動伝達部材と前記駆動部材との係合が解除される方向に変わることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項2】
前記当接部材は移動可能であり、
前記付勢手段が前記駆動伝達部材と前記駆動部材との係合が解除される方向に前記駆動伝達部材を付勢した状態から、前記当接部材が移動して前記駆動伝達部材を押圧して前記駆動部材と係合する方向へ移動させることで、前記付勢手段が前記駆動伝達部材を付勢する方向が前記駆動伝達部材と前記駆動部材とを係合させる方向に変わることを特徴とする請求項1に記載の駆動伝達装置。
【請求項3】
前記駆動伝達部材と前記駆動部材との係合が解除されると、前記駆動伝達部材は前記付勢手段の付勢力によって前記駆動部材とから離れる方向に移動することを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動伝達装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の駆動伝達装置を有する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−109022(P2013−109022A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251597(P2011−251597)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】