説明

駆動装置

【課題】回転電機及び駆動ギヤの支持精度を適切に確保しつつ、装置の軸方向における小型化を図ることが可能な駆動装置を実現する。
【解決手段】第一回転電機11の第一ロータ本体41から軸方向Lの両側に突出して配置されるとともに当該第一ロータ本体41と一体回転する第一回転軸61と、第二回転電機12の第二ロータ本体42から軸方向Lの両側に突出して配置されるとともに当該第二ロータ本体42と一体回転する第二回転軸62とを備え、第一回転軸61は、駆動ギヤ10を貫通して配置されるとともに、第一ロータ本体41及び駆動ギヤ10を挟んだ軸方向Lの両側でケース3に対し回転可能に支持され、第二回転軸62は、第二ロータ本体42を挟んだ軸方向Lの両側でケース3に対し回転可能に支持され、駆動ギヤ10は、第一回転軸61によって径方向内側から相対回転可能に支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力部材に駆動連結される駆動ギヤと、第一係合装置を介して駆動ギヤに駆動連結される第一回転電機と、第二係合装置を介して駆動ギヤに駆動連結される第二回転電機と、ケースと、を備え、駆動ギヤの軸方向の一方側である軸第一方向側から反対側である軸第二方向側へ向かって、同軸上に、第一回転電機、駆動ギヤ、第二回転電機の順に配置された駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような駆動装置の従来技術として、例えば下記の特許文献1に記載された技術がある。以下、この背景技術の欄の説明では、〔〕内に特許文献1における符号(必要に応じて、対応する部材の名称を含む)を引用して説明する。具体的には、特許文献1の図1に記載の構成では、駆動ギヤ〔減速機16内のギヤ〕の軸方向の一方側から他方側に向かって、同軸状に、第一回転電機〔M2〕、駆動ギヤ、及び第二回転電機〔M3〕が設けられ、第一回転電機と駆動ギヤとの動力伝達経路に配置される第一係合装置〔C2〕と、第二回転電機と駆動ギヤとの動力伝達経路に配置される第二係合装置〔C3〕との双方が、一方向にのみトルクを伝達するワンウェイクラッチとされている。これにより、駆動力を発生しない回転電機を駆動ギヤから切り離すことができ、当該回転電機の連れ回りを回避することによるエネルギ損失の低減が可能とされている。
【0003】
また、特許文献1の図3には、第一係合装置〔C2'〕と第二係合装置〔C3’〕との双方が、トルク伝達率が可変の可変制御クラッチとされる構成が示されており、第一係合装置及び第二係合装置の係合状態を回転電機の駆動状態に応じて制御することで、上記と同様の効果が得られるとされている。
【0004】
ところで、上記のように、第一回転電機、駆動ギヤ、及び第二回転電機が軸方向に並んで配置される構成では、駆動装置が軸方向に大型化しやすくなる。また、回転電機のロータの支持精度が適切に確保されない場合には、回転電機の大型化や出力トルクの低下を招くおそれがある。しかしながら、上記特許文献1には、各部の具体的な支持構成が示されておらず、装置の軸方向寸法に言及した記載もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−153325号公報(図1、図3等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、回転電機及び駆動ギヤの支持精度を適切に確保しつつ、装置の軸方向における小型化を図ることが可能な駆動装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る、出力部材に駆動連結される駆動ギヤと、第一係合装置を介して前記駆動ギヤに駆動連結される第一回転電機と、第二係合装置を介して前記駆動ギヤに駆動連結される第二回転電機と、ケースと、を備え、前記駆動ギヤの軸方向の一方側である軸第一方向側から反対側である軸第二方向側へ向かって、同軸上に、前記第一回転電機、前記駆動ギヤ、前記第二回転電機の順に配置された駆動装置の特徴構成は、前記第一回転電機のロータ本体である第一ロータ本体から前記軸方向の両側に突出して配置されるとともに当該第一ロータ本体と一体回転する第一回転軸と、前記第二回転電機のロータ本体である第二ロータ本体から前記軸方向の両側に突出して配置されるとともに当該第二ロータ本体と一体回転する第二回転軸と、を備え、前記第一回転軸は、前記駆動ギヤを貫通して配置されるとともに、前記第一ロータ本体及び前記駆動ギヤを挟んだ前記軸方向の両側で前記ケースに対し回転可能に支持され、前記第二回転軸は、前記第二ロータ本体を挟んだ前記軸方向の両側で前記ケースに対し回転可能に支持され、前記駆動ギヤは、前記第一回転軸によって径方向内側から相対回転可能に支持されている点にある。
【0008】
本願において「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が一又は二以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。また、このような伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば摩擦係合装置や噛み合い式係合装置等が含まれていてもよい。なお、「駆動力」は「トルク」と同義で用いている。
また、本願において「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
【0009】
上記の特徴構成によれば、第一ロータ本体と一体回転する第一回転軸が、第一ロータ本体を挟んだ軸方向の両側でケースに対し回転可能に支持されるため、第一回転電機の支持精度を適切に確保することができる。同様に、第二ロータ本体と一体回転する第二回転軸が、第二ロータ本体を挟んだ軸方向の両側でケースに対し回転可能に支持されるため、第二回転電機の支持精度を適切に確保することができる。
また、上記の特徴構成によれば、駆動ギヤが、第一ロータ本体に加えて駆動ギヤを挟んだ軸方向の両側でケースに対し回転可能に支持される第一回転軸によって支持されるため、駆動ギヤについても第一回転軸を介して間接的に、軸方向の両側でケースに対し回転可能に支持することができる。よって、回転電機に加えて駆動ギヤの支持精度も適切に確保することができる。
そして、上記の特徴構成によれば、駆動ギヤが、第一回転軸によって径方向内側から相対回転可能に支持される。すなわち、駆動ギヤの支持構造が、第一回転軸による内径支持構造とされる。これにより、駆動ギヤの支持構造が占有する軸方向の領域を、駆動ギヤが占有する軸方向の領域と重複させることができる。よって、駆動ギヤを径方向外側から支持する構成に比べ、駆動ギヤと当該駆動ギヤの支持構造とが軸方向で占有する領域を小さくすることができ、結果、装置の軸方向における小型化を図ることが可能となる。
【0010】
ここで、前記第二回転軸は、前記軸第一方向側に開口する開口部から前記軸第二方向側に前記軸方向に沿って延びる軸内空間を有し、前記第一回転軸は、前記駆動ギヤに対して前記軸第二方向側の少なくとも一部が前記軸内空間に挿入された状態で配置されており、前記第一回転軸における前記開口部に対して前記軸第二方向側の部分に、前記ケースに対し回転可能に支持される被支持部が設けられている構成とすると好適である。
【0011】
この構成によれば、第一回転軸における上記開口部に対して軸第二方向側の部分のケースに対する支持構造を、駆動ギヤから軸方向に離間した位置に設けることが容易となる。
【0012】
具体的には、前記第二回転軸が、前記軸第一方向側に開口する前記軸内空間を有する構成としては、例えば、前記第二回転軸は、前記軸内空間が前記軸第二方向側にも開口する円筒状に形成され、前記第一回転軸は、前記第二回転軸を貫通して配置されており、前記被支持部は、前記第一回転軸における前記第二回転軸から前記軸第二方向側に突出する部分に設けられている構成とすると好適である。
【0013】
この構成によれば、第一回転軸における上記開口部に対して軸第二方向側の部分の支持構造を、ケースに対する直接的な支持構造とするのが容易となり、第一回転電機の支持精度(例えば径方向の支持精度)の向上を図ることができる。
【0014】
或いは、前記第二回転軸が、前記軸第一方向側に開口する前記軸内空間を有する構成として、前記第一回転軸は、前記軸第二方向側端部が前記軸内空間に位置するように配置されており、前記被支持部は、前記第一回転軸における前記軸内空間に位置する部分に、前記第二回転軸を介して前記ケースに支持されるように設けられている構成としても好適である。
【0015】
この構成によれば、第一回転軸における上記開口部に対して軸第二方向側の部分の支持構造を、ケースに対する間接的な支持構造とすることができる。このような支持構造は、第二回転軸の内部に設けることができるため、当該支持構造を第二回転軸の外部に設ける場合に比べ、装置の軸方向における小型化を図ることができる。また、第一回転軸の軸長を、第一回転軸が第二回転軸を貫通して配置される場合に比べて短くすることができるため、部品の製造や管理に係る構成を簡素なものとして、駆動装置の製造工程の簡素化を図ることができる。
【0016】
また、上記の各構成の駆動装置において、前記第一回転軸は、前記第一ロータ本体を貫通する第一軸部と、前記駆動ギヤを貫通する第二軸部とを、前記軸方向における前記第一ロータ本体と前記駆動ギヤとの間において互いに連結してなり、前記第一軸部における前記第一ロータ本体から前記軸第二方向側に突出する部分と、前記第二軸部における前記駆動ギヤから前記軸第一方向側に突出する部分とのそれぞれに、前記ケースに対し回転可能に支持される被支持部が設けられている構成とすると好適である。
【0017】
この構成によれば、第一回転軸が1つの軸部材により形成される構成に比べ、第一回転軸を構成する各軸部材の軸長を短くすることができる。よって、同一の軸部材に対する被支持部間の軸方向長さを短くすることで第一回転軸全体の支持精度の向上を図ることができるとともに、部品の製造や管理に係る構成を簡素なものとして、駆動装置の製造工程の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る駆動装置の断面図である。
【図2】図1の一部拡大図である。
【図3】本発明のその他の実施形態に係る駆動装置の一部断面図である。
【図4】本発明のその他の実施形態に係る駆動装置の一部断面図である。
【図5】本発明のその他の実施形態に係る駆動装置の一部断面図である。
【図6】本発明のその他の実施形態に係る駆動装置の一部断面図である。
【図7】本発明のその他の実施形態に係る駆動装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る駆動装置の実施形態について、図面を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態に係る駆動装置1は、出力軸2に駆動連結される駆動ギヤ10と、第一係合装置21を介して駆動ギヤ10に駆動連結される第一回転電機11と、第二係合装置22を介して駆動ギヤ10に駆動連結される第二回転電機12と、ケース3と、を備えている。そして、この駆動装置1は、第一係合装置21及び第二係合装置22の状態を切り替えることで、出力軸2との間の連結が維持されて駆動力の伝達が行われる回転電機(駆動力伝達回転電機)が第一回転電機11のみとされる状態と、当該駆動力伝達回転電機が第二回転電機12のみとされる状態と、当該駆動力伝達回転電機が第一回転電機11及び第二回転電機12の双方とされる状態と、を切り替えることが可能に構成されている。以下、本実施形態に係る駆動装置1について詳細に説明する。
【0020】
以下の説明では、特に断らない限り、「軸方向L」、「径方向」、及び「周方向」は、駆動ギヤ10の軸心(回転軸心)を基準として定義している。なお、各部材についての方向は、当該各部材が駆動装置1に組み付けられた状態での方向を表す。また、各部材についての方向や位置に関する記載(例えば、「平行」や「直交」等)は、製造上の誤差に応じたずれを含む概念として用いている。このような製造上の誤差は、例えば、寸法や取付位置の公差の範囲内のずれにより生じる。
【0021】
1.駆動装置の全体構成
本実施形態に係る駆動装置1は、車両(図示せず)に備えられる車両用駆動装置とされており、車輪(図1においては図示せず)に駆動連結される出力軸2を複数(本例では2つ)備えている。そして、この駆動装置1は、第一回転電機11及び第二回転電機12の一方又は双方のトルクを車輪に伝達して車両を走行させる。本実施形態では、出力軸2が本発明における「出力部材」に相当する。
【0022】
第一回転電機11は、ケース3に固定された第一ステータ11aと、当該第一ステータ11aに対して回転自在に配置された第一ロータ本体41とを有している。本例では、第一ロータ本体41は第一ステータ11aの径方向内側に配置されるとともに、当該第一ロータ本体41から軸方向Lの両側に突出するように配置された第一回転軸61と一体回転するように、当該第一回転軸61に固定されている。第二回転電機12は、ケース3に固定された第二ステータ12aと、当該第二ステータ12aに対して回転自在に配置された第二ロータ本体42とを有している。本例では、第二ロータ本体42は第二ステータ12aの径方向内側に配置されるとともに、当該第二ロータ本体42から軸方向Lの両側に突出するように配置された第二回転軸62と一体回転するように、当該第二回転軸62に固定されている。本実施形態では、第一回転電機11及び第二回転電機12の双方は、モータとしての機能とジェネレータとしての機能とを果たすことが可能とされている。
【0023】
本実施形態では、トルクを出力可能な回転速度の上限値については第一回転電機11が第二回転電機12に対して大きく、出力可能なトルクの最大値については第二回転電機12が第一回転電機11に対して大きく設定されている。すなわち、本実施形態では、第一回転電機11は、第二回転電機12に比べて高回転低トルク型の回転電機とされ、第二回転電機12は、第一回転電機11に比べて低回転高トルク型の回転電機とされている。また、本例では、図1に示すように、第一回転電機11は、第二回転電機12よりも寸法が大きく構成されている。さらに、図においては模式的に示しているが、第一回転軸61は、軸第一方向L1側(図1における左側)において、第三係合装置23(例えば電磁クラッチ等)を介してエアコンディショナ用のコンプレッサ9に駆動連結されている。
【0024】
駆動装置1は、第一回転電機11と駆動ギヤ10との間の動力伝達経路に第一係合装置21を備え、第二回転電機12と駆動ギヤ10との間の動力伝達経路に第二係合装置22を備えている。そして、第一係合装置21の状態を切り替えることで、第一回転電機11と駆動ギヤ10との間の連結に関する状態を、連結状態と非連結状態との間で切り替えることができる。同様に、第二係合装置22の状態を切り替えることで、第二回転電機12と駆動ギヤ10との間の連結に関する状態を、連結状態と非連結状態との間で切り替えることができる。
【0025】
ここで、「連結状態」とは、係合装置を介して駆動連結される2つの回転要素の間での連結が維持され、当該2つの回転要素の間で駆動力の伝達が行われる状態を指す。また、「非連結状態」とは、係合装置を介して駆動連結される2つの回転要素の間での連結が解除され、当該2つの回転要素の間で駆動力の伝達が行われない状態を指す。なお、第一係合装置21及び第二係合装置22の構成については、後の「2.第一係合装置及び第二係合装置の構成」の項で詳細に説明する。
【0026】
本実施形態に係る駆動装置1は、駆動ギヤ10と出力軸2との間の動力伝達経路に、出力用差動歯車装置6とカウンタギヤ機構5とを備えている。出力用差動歯車装置6は、差動入力ギヤ50を有し、当該差動入力ギヤ50に伝達されるトルクを複数備えられた出力軸2に分配する装置である。本実施形態では、駆動装置1には、右側の車輪に駆動連結される出力軸2と、左側の車輪に駆動連結される出力軸2との2つの出力軸2が備えられており、差動入力ギヤ50に伝達されたトルクは、出力用差動歯車装置6及び出力軸2を介して左右2つの車輪に分配される。本実施形態では、出力用差動歯車装置6は、互いに噛み合う複数の傘歯車を用いた差動歯車機構により構成されている。
【0027】
カウンタギヤ機構5は、駆動ギヤ10と差動入力ギヤ50との間の動力伝達経路に設けられている。具体的には、カウンタギヤ機構5は、駆動ギヤ10に噛み合う第一ギヤ51と、差動入力ギヤ50に噛み合う第二ギヤ52と、第一ギヤ51と第二ギヤ52とを連結するとともにケース3に対し回転可能に支持される連結軸53と、を有している。本実施形態では、第二ギヤ52は連結軸53の外周面(径方向外側を向く面、以下同様)に一体的に形成されており、第一ギヤ51は、スプライン係合により連結軸53に対して一体回転するように固定されている。また、本実施形態では、連結軸53は、軸受を介して、ケース3の第一支持部31及び第二支持部32(後述する)のそれぞれに対し回転可能に支持されている。上記のような構成を備えることで、車両の走行時には、車輪に対して回転電機11,12の回転方向と同方向のトルクが伝達される。
【0028】
図1に示すように、少なくとも第一回転電機11、第二回転電機12、及び駆動ギヤ10は、ケース3内に収容されている。本実施形態では、これらに加えて更に、第一係合装置21、第二係合装置22、カウンタギヤ機構5、及び出力用差動歯車装置6も、ケース3内に収容されている。なお、ケース3の構成については、後の「3.ケースの構成」の項で詳細に説明する。
【0029】
2.第一係合装置及び第二係合装置の構成
第一係合装置21は、本実施形態では、噛み合い式の係合装置とされている。具体的には、図2に示すように、第一係合装置21は、第一状態選択部材21aと、第一軸側係合部71と、第一ギヤ側係合部73とを備えており、第一状態選択部材21aは、第一軸側係合部71及び第一ギヤ側係合部73の一方又は双方に対して選択的に噛み合うように構成されている。
【0030】
ここで、第一軸側係合部71は、第一回転軸61(具体的には、本例では後述する第二軸部61b)に設けられた係合部であり、本実施形態では第一回転軸61と一体回転するように設けられた外歯の係合部とされている。第一ギヤ側係合部73は、駆動ギヤ10の回転軸である駆動ギヤ軸60に設けられた係合部であり、本実施形態では駆動ギヤ軸60と一体回転するように設けられた外歯の係合部とされている。第一状態選択部材21aは、軸方向Lに沿って移動可能な円筒状(スリーブ状)部材とされている。そして、第一状態選択部材21aの内周面(径方向内側を向く面、以下同様)は、第一軸側係合部71及び第一ギヤ側係合部73に外嵌可能な形状とされ、この内周面に内歯の係合部が形成されている。
【0031】
そして、第一状態選択部材21aの軸方向L位置を、第一状態選択部材21aが第一軸側係合部71及び第一ギヤ側係合部73の双方に噛み合う位置とすることで、第一係合装置21が係合状態となる。これにより、第一軸側係合部71(第一回転軸61)と第一ギヤ側係合部73(駆動ギヤ10)とが連結状態とされ、第一回転電機11のトルクを出力軸2に伝達可能な状態となる。なお、本実施形態では、第一係合装置21は噛み合い式の係合装置とされているため、第一係合装置21の係合状態では、第一回転軸61と駆動ギヤ10とが一体回転する状態となる。
【0032】
また、第一状態選択部材21aの軸方向L位置を、第一状態選択部材21aが第一軸側係合部71及び第一ギヤ側係合部73のいずれか一方のみ(本例では第一軸側係合部71のみ)に噛み合う位置とすることで、第一係合装置21が解放状態(係合解除状態)となり、第一軸側係合部71(第一回転軸61)と第一ギヤ側係合部73(駆動ギヤ10)とが非連結状態とされる。
【0033】
第二係合装置22は、本実施形態では、第一係合装置21と同様、噛み合い式の係合装置とされている。具体的には、図2に示すように、第二係合装置22は、第二状態選択部材22aと、第二回転軸62に設けられた第二軸側係合部72と、駆動ギヤ軸60に設けられた第二ギヤ側係合部74とを備えており、第二状態選択部材22aは、第二軸側係合部72及び第二ギヤ側係合部74の一方又は双方に対して選択的に噛み合うように構成されている。ここで、第二係合装置22を構成する各部は、第一係合装置21の対応する部分を、軸方向Lに直交する面に関して対称移動させた位置に配置されており、第二状態選択部材22a、第二軸側係合部72、及び第二ギヤ側係合部74が、それぞれ、第一状態選択部材21a、第一軸側係合部71、及び第一ギヤ側係合部73と同様に形成されている。
【0034】
そのため、第二係合装置22についても第一係合装置21と同様に、第二状態選択部材22aの軸方向L位置を、第二状態選択部材22aが第二軸側係合部72及び第二ギヤ側係合部74の双方に噛み合う位置とすることで、第二係合装置22が係合状態となり、第二回転軸62と駆動ギヤ10とが一体回転する状態となる。また、第二状態選択部材22aの軸方向L位置を、第二状態選択部材22aが第二軸側係合部72及び第二ギヤ側係合部74のいずれか一方のみ(本例では第二軸側係合部72のみ)に噛み合う位置とすることで、第二係合装置22が解放状態(係合解除状態)となり、第二回転軸62と駆動ギヤ10とが非連結状態とされる。
【0035】
なお、詳細は省略するが、第一状態選択部材21aの外周面には、当該第一状態選択部材21aを軸方向Lに移動(スライド)させるための移動機構の第一係合部材21bが係合されており、アクチュエータによって当該第一係合部材21bの軸方向L位置を切り替えることで、第一状態選択部材21aの軸方向L位置を切り替えることが可能となっている。第二状態選択部材22aについても同様に、移動機構の第二係合部材22bにより軸方向L位置を切り替えることが可能となっている。そして、第一係合装置21と第二係合装置22とは、互いに独立に状態を切り替えることが可能に構成されている。
【0036】
3.ケースの構成
ケース3は、図1に示すように、第一回転電機11や第二回転電機12の外周を覆うケース周壁90と、当該ケース周壁90の軸第一方向L1側の開口を覆う第一端壁91と、当該ケース周壁90の軸第二方向L2側(図1における右側)の開口を覆う第二端壁92とを備えている。また、ケース3は、軸方向Lにおける第一回転電機11と第二回転電機12との間に、第一支持部31と、第二支持部32と、を備えている。
【0037】
第一支持部31は、軸方向Lにおける駆動ギヤ10と第一回転電機11との間で径方向に延びるように形成されている。なお、本明細書において、ある方向に「延びる」とは、当該方向を基準方向として、部材の延在方向が当該基準方向に平行な形状に限らず、部材の延在方向が当該基準方向に交差する方向であっても、その交差角度が所定範囲内である形状も含む概念として用いている。本実施形態では、第一支持部31は、ケース周壁90と一体的に形成された支持壁とされており、ケース周壁90から径方向内側に延びるように形成されているとともに、第一ロータ本体41に対して軸第二方向L2側に間隔を空けて配置されている。また、第一支持部31は、径方向に加えて周方向にも延在しており、その径方向中央部に軸方向Lの貫通孔である第一貫通孔31aを有している(図2参照)。なお、第一支持部31は、第一貫通孔31aを備える径方向内側端部の軸方向L長さが、当該径方向内側端部より径方向外側の部分の軸方向L長さに比べて大きくなるように形成されている。後述するように、この第一貫通孔31aに、第一回転軸61が挿通されている。
【0038】
第二支持部32は、軸方向Lにおける駆動ギヤ10と第二回転電機12との間で径方向に延びるように形成されている。本実施形態では、第二支持部32は、ケース周壁90と一体的に形成された支持壁とされており、ケース周壁90から径方向内側に延びるように形成されているとともに、第二ロータ本体42に対して軸第一方向L1側に間隔を空けて配置されている。また、第二支持部32は、径方向に加えて周方向にも延在しており、その径方向中央部に軸方向Lの貫通孔である第二貫通孔32aを有している(図2参照)。後述するように、この第二貫通孔32aに、第二回転軸62が挿通されている。なお、本実施形態では、後述するように、第二貫通孔32aには、第一回転軸61も挿通されている。
【0039】
4.各部の支持構成
図1に示すように、第一回転電機11、駆動ギヤ10、及び第二回転電機12は、同軸上(第一軸A1上)に配置されており、軸方向Lの一方側である軸第一方向L1側(図1における左側)から反対側である軸第二方向L2側(図1における右側)へ向かって、第一回転電機11、駆動ギヤ10、第二回転電機12の順に配置されている。
【0040】
本実施形態では、第一係合装置21及び第二係合装置22も駆動ギヤ10と同軸上に配置されている。そして、第一係合装置21は、軸方向Lにおける第一回転電機11(第一ロータ本体41)と駆動ギヤ10との間であって、且つ、第一支持部31より軸第二方向L2側に配置されている。第二係合装置22は、軸方向Lにおける第二回転電機12(第二ロータ本体42)と駆動ギヤ10との間であって、且つ、第二支持部32より軸第一方向L1側に配置されている。
【0041】
本実施形態では、駆動ギヤ10、出力用差動歯車装置6、及びカウンタギヤ機構5は、互いに異なる3つの軸上に分かれて配置されている。すなわち、図1に示すように、駆動ギヤ10が配置される第一軸A1、カウンタギヤ機構5が配置される第二軸A2、及び出力用差動歯車装置6が配置される第三軸A3は、互いに異なる軸とされている。本実施形態では、第一軸A1、第二軸A2、及び第三軸A3は、互いに平行な軸とされている。
【0042】
図1及び図2に示すように、第一回転軸61は、駆動ギヤ10を貫通して配置されており、本例では更に、第一回転軸61は、第一支持部31に形成された第一貫通孔31aを貫通して配置されている。そして、第一回転軸61は、第一ロータ本体41及び駆動ギヤ10の双方に対して軸第一方向L1側において、第一回転軸第一軸受81aを介してケース3に対し回転可能に支持され、第一ロータ本体41及び駆動ギヤ10の双方に対して軸第二方向L2側において、第一回転軸第二軸受81bを介してケース3に対し回転可能に支持されている。すなわち、第一回転軸61は、第一回転軸第一軸受81aと第一回転軸第二軸受81bとにより、第一ロータ本体41及び駆動ギヤ10を挟んだ軸方向Lの両側でケース3に対し回転可能に支持されている。
【0043】
また、第二回転軸62は、第二支持部32に形成された第二貫通孔32aを貫通して配置されている。そして、第二回転軸62は、第二ロータ本体42に対して軸第二方向L2側において、第二回転軸第一軸受82aを介してケース3に対し回転可能に支持され、第二ロータ本体42に対して軸第一方向L1側において、第二回転軸第二軸受82bを介してケース3に対し回転可能に支持されている。すなわち、第二回転軸62は、第二回転軸第一軸受82aと第二回転軸第二軸受82bとにより、第二ロータ本体42を挟んだ軸方向Lの両側でケース3に対し回転可能に支持されている。
【0044】
本実施形態では、第一回転軸第一軸受81aは第一端壁91に配置されており、第一回転軸第二軸受81bは第二端壁92に配置されている。これにより、第一回転軸61は、第一ロータ本体41及び駆動ギヤ10を挟んだ軸方向Lの両側で、他の回転軸を介することなく直接的にケース3に支持されている。また、本実施形態では、第二回転軸第一軸受82aは第二端壁92に配置されており、第二回転軸第二軸受82bは第二貫通孔32aの内周面に配置されている。これにより、第二回転軸62は、第二ロータ本体42を挟んだ軸方向Lの両側で、他の回転軸を介することなく直接的にケース3に支持されている。図1に示すように、第二回転軸第一軸受82aは、第一回転軸第二軸受81bの軸第一方向L1側に隣接して配置されている。また、本実施形態では、第一回転軸第一軸受81a、第一回転軸第二軸受81b、第二回転軸第一軸受82a、及び第二回転軸第二軸受82bは、全て、外輪、内輪、及び転動体(本例では玉)を備えたころがり軸受とされている。
【0045】
ところで、駆動ギヤ10の軸第二方向L2側には当該駆動ギヤ10と同軸上に第二回転軸62が配置されている。そのため、本実施形態では第二回転軸62を、径方向の内側が中空の円筒状に形成するとともに、第一回転軸61を、当該中空の部分に挿入して第二回転軸62を貫通するように配置することで、上記のように第一回転軸第二軸受81bが第二端壁92に配置される構成を実現している。
【0046】
具体的には、本実施形態では、第二回転軸62の内部には、軸第一方向L1側に開口する開口部Oから軸第二方向L2側に軸方向Lに沿って延び、軸第二方向L2側に開口する軸内空間Sが形成されている。本例では、軸内空間Sは、第二回転軸62の径方向中央部分を軸方向Lに平行に延びる軸方向貫通孔とされている。そして、第一回転軸61は、駆動ギヤ10に対して軸第二方向L2側の一部、具体的には、軸方向Lにおける駆動ギヤ10と当該第一回転軸61の軸第二方向L2側端部との間の部分が軸内空間Sに挿入された状態で配置されている。なお、軸内空間Sにおいて第一回転軸61の外周面と第二回転軸62の内周面との間には隙間が形成されており、第一回転軸61と第二回転軸62とは相対回転可能となっている。
【0047】
ここで、開口部Oに対して軸第二方向L2側においてケース3に対し回転可能に支持される第一回転軸61の部分を第一被支持部P1とすると、本実施形態では、第一被支持部P1は、第一回転軸61における第二回転軸62から軸第二方向L2側に突出する部分に設けられている。具体的には、第一被支持部P1は、第一回転軸第二軸受81bにより径方向外側から支持される、上記突出する部分の外周面部とされている。
【0048】
駆動ギヤ10は、軸方向Lにおける第一支持部31と第二支持部32との間に配置されている。図2に示すように、本実施形態では、駆動ギヤ10は、その回転軸である駆動ギヤ軸60の外周面に一体的に形成されている。そして、駆動ギヤ10に対して軸第一方向L1側の駆動ギヤ軸60の外周部に、第一ギヤ側係合部73が形成されているとともに、駆動ギヤ10に対して軸第二方向L2側の駆動ギヤ軸60の外周部に、第二ギヤ側係合部74が形成されている。本例では、第一ギヤ側係合部73及び第二ギヤ側係合部74の双方は、駆動ギヤ軸60の外周面に溶接により接合された円環状部材の外周面に一体的に形成されている。
【0049】
駆動ギヤ軸60は、径方向の内側が中空の円筒状部材とされ、当該中空の部分に第一回転軸61が挿通されることで、第一回転軸61が駆動ギヤ10を貫通して配置されている。そして、図2に示すように、第一回転軸61の外周面と駆動ギヤ軸60の内周面との間には軸受(本例では、軸方向Lに並べて配置された駆動ギヤ軸第一軸受83a及び駆動ギヤ軸第二軸受83bの2つの軸受)が配置されており、駆動ギヤ10(駆動ギヤ軸60)は、第一回転軸61によって径方向内側から相対回転可能に支持されている。なお、本例では、駆動ギヤ軸60の内径は、第二回転軸62の内径より僅かに大径に形成されている。
【0050】
また、駆動ギヤ軸60は、第一回転軸61の軸第二方向L2側を向く面(以下、「第一対向面」という。)と、第二回転軸62の軸第一方向L1側を向く面(以下、「第二対向面」という。)とにより軸方向Lの両側を挟まれた状態で、且つ、それぞれと接することなく配置されている。具体的には、本例では、第一対向面は、第一軸側係合部71を外周部に有する第一回転軸61のフランジ部63の軸第二方向L2側端面により形成され、第二対向面は、第二回転軸62の軸第一方向L1側端面により形成されている。そして、第一対向面と駆動ギヤ軸60の軸第一方向L1側端面との間に、駆動ギヤ軸第三軸受83cが配置され、第二対向面と駆動ギヤ軸60の軸第二方向L2側端面との間に、駆動ギヤ軸第四軸受83dが配置されている。これにより、駆動ギヤ10(駆動ギヤ軸60)は、第一回転軸61及び第二回転軸62の双方により軸方向Lに位置決めされた状態で、第一回転軸61及び第二回転軸62の双方に対して相対回転可能に配置されている。
【0051】
本実施形態では、駆動ギヤ軸第一軸受83a、駆動ギヤ軸第二軸受83b、駆動ギヤ軸第三軸受83c、及び駆動ギヤ軸第四軸受83dは、全て、転動体(本例では円柱体)を有するころがり軸受とされている。なお、これらの軸受の少なくとも一部を、ワッシャ部材等の滑り軸受とすることも可能である。
【0052】
ところで、本実施形態では、上記のように、第一回転軸61が第二回転軸62を貫通して配置されるため、第一回転軸61は比較的長軸の回転軸となる。この点に鑑み、本実施形態では、第一回転軸61を、互いに軸方向Lに連結される2つの軸部材(後述する第一軸部61aと第二軸部61b)により形成する構成を採用している。これにより、第一回転軸61が単一の軸部材により形成される場合に比べ、第一回転軸61の撓みを抑制することが容易となり、結果、第一回転電機11及び駆動ギヤ10の支持精度の向上を図ることが可能となっている。また、第二軸部61bに第一軸側係合部71が設けられる構成とすることで、出力軸2(図1参照)側から駆動ギヤ10に伝達される荷重変動を第一軸部61aと第二軸部61bとの連結部にて吸収することが可能となり、当該荷重変動が第一ロータ本体41に伝達されるのを抑制することも可能となっている。
【0053】
具体的には、第一回転軸61は、第一ロータ本体41を貫通する第一軸部61aと、駆動ギヤ10を貫通する第二軸部61bとを、互いに軸方向Lに連結して形成されている。そして、第一軸側係合部71は、第二軸部61bが備えるフランジ部63の外周部に形成されている。本実施形態では、第一軸部61aは、軸第二方向L2側に開口する開口部から軸第一方向L1側に軸方向に沿って延びる軸内空間を有し、第二軸部61bは、当該第二軸部61bの軸第一方向L1側部分が当該軸内空間に挿入された状態で配置されている。そして、第一軸部61aと第二軸部61bとは、スプライン結合により一体回転するように連結されている。なお、本例では、第一軸部61aは、円筒状に形成され、上記軸内空間は軸第一方向L1側にも開口するように形成されている。
【0054】
そして、第一軸部61aと第二軸部61bとは、軸方向Lにおける第一ロータ本体41と駆動ギヤ10との間において互いに連結されている。すなわち、第一軸部61aと第二軸部61bとの連結部は、軸方向Lにおける第一ロータ本体41と駆動ギヤ10との間に形成されている。そして、第一軸部61aにおける第一ロータ本体41から軸第二方向L2側に突出する部分と、第二軸部61bにおける駆動ギヤ10から軸第一方向L1側に突出する部分とのそれぞれに、ケース3に対し回転可能に支持される被支持部(後述する第二被支持部P2及び第三被支持部P3)が設けられている。
【0055】
本実施形態では、第一回転軸61は、第一貫通孔31aに挿通される部分が第一軸部61aと第二軸部61bとの連結部と一致するように配置されている。これにより、第二被支持部P2と第三被支持部P3との双方を、他の回転軸を介することなくケース3に直接的に支持される被支持部とすることが可能となっている。
【0056】
具体的には、図2に示すように、第一貫通孔31aの内周面には、軸第一方向L1側から順に、第一回転軸第三軸受81c及び第一回転軸第四軸受81dが配置されている。本実施形態では、第一回転軸第三軸受81c及び第一回転軸第四軸受81dの双方は、転動体(本例では玉)を備えたころがり軸受とされている。
【0057】
第一回転軸第三軸受81cは、第一貫通孔31aの内周面に対して内嵌した状態で第一支持部31に対して径方向に位置決め保持されるとともに、第一貫通孔31aの内周面に形成された外径が変化する軸方向Lの段差部(第一段差部31b)に対して軸第一方向L1側から当接した状態で、第一支持部31に対して軸方向Lに位置決め保持されている。そして、第一回転軸第三軸受81cは、第一軸部61aの軸第二方向L2側への移動を規制した状態で、第一軸部61aの軸第二方向L2側端部を径方向外側から支持している。
【0058】
ここで、第一ロータ本体41から軸第二方向L2側に突出した第一軸部61aの部分であって、且つ、ケース3に対し回転可能に支持される部分を第二被支持部P2とすると、本実施形態では、第二被支持部P2は、第一回転軸第三軸受81cにより径方向外側から支持される、第一軸部61aの軸第二方向L2側端部の外周面部とされている。
【0059】
また、第一回転軸第四軸受81dは、第一貫通孔31aの内周面に対して内嵌した状態で第一支持部31に対して径方向に位置決め保持されるとともに、第一貫通孔31aの内周面に形成された外径が変化する軸方向Lの段差部(第二段差部31c)に対して軸第二方向L2側から当接した状態で、第一支持部31に対して軸方向Lに位置決め保持されている。そして、第一回転軸第四軸受81dは、第二軸部61bの軸第一方向L1側への移動を規制した状態で、軸方向Lにおける駆動ギヤ10と第一軸部61aの軸第二方向L2側端部との間に位置する第二軸部61bの部分(以下、「対象支持部分」という。)を径方向外側から支持している。なお、本実施形態では、対象支持部分は、図2に示すように、フランジ部63より軸第一方向L1側に位置する部分とされている。
【0060】
ここで、駆動ギヤ10から軸第一方向L1側に突出した第二軸部61bの部分であって、且つ、ケース3に対し回転可能に支持される部分を第三被支持部P3とすると、本実施形態では、第三被支持部P3は、第一回転軸第四軸受81dにより径方向外側から支持される、第二軸部61bの上記対象支持部分の外周面部とされている。
【0061】
上述したように、本実施形態では、駆動装置1にはカウンタギヤ機構5が設けられている。そして、図1及び図2に示すように、本実施形態では、第一支持部31、及びカウンタギヤ機構5が備える第二ギヤ52が、カウンタギヤ機構5が備える第一ギヤ51に対して軸方向Lの同じ側(本例では軸第一方向L1側)に配置されている。
【0062】
そして、本実施形態では、第一支持部31に配置される第一回転軸第四軸受81dが、径方向視で第二ギヤ52と重複する部分を有するように配置されている。具体的には、第一回転軸第四軸受81dは、軸方向Lの全域が径方向視で第二ギヤ52と重複するように配置されている。更に、本例では、第一支持部31に配置される第一回転軸第三軸受81cが、径方向視で連結軸53と重複する部分を有するように配置されている。具体的には、第一回転軸第三軸受81cは、軸方向Lの全域が径方向視で連結軸53と重複するように配置されている。なお、本明細書において、2つの部材の配置に関して所定方向視で「重複する部分を有する」とは、当該所定方向を視線方向として当該視線方向に直交する各方向に視点を移動させた場合に、2つの部材が重なって見える視点が少なくとも一部の領域に存在することを指す。
【0063】
5.その他の実施形態
最後に、本発明に係る駆動装置の、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0064】
(1)上記の実施形態では、第一回転軸61が、2つの軸部材である第一軸部61aと第二軸部61bとを互いに軸方向Lに連結して形成された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば図3に示すように、第一回転軸61が1つの軸部材により形成された構成とすることも可能である。図3に示す構成では、上記実施形態の構成で設けられていた第一回転軸第三軸受81c及び第一回転軸第四軸受81dは備えられておらず、第一回転軸61は、第一回転軸第一軸受81a及び第一回転軸第二軸受81bのみにより、ケース3に対し回転可能に支持されている。また、第一回転軸61が、3つ以上(例えば3つ)の軸部材を互いに軸方向Lに連結して形成された構成とすることも可能である。
【0065】
(2)上記の実施形態では、第一回転軸61が第二回転軸62を貫通して配置された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば図4や図5に示すように、第一回転軸61が、当該第一回転軸61の軸第二方向L2側端部が軸内空間Sに位置するように配置された構成とすることもできる。このような構成では、第一被支持部P1は、上記実施形態とは異なり、第一回転軸61における軸内空間Sに位置する部分に、第二回転軸62を介してケース3に支持されるように設けられる。
【0066】
具体的には、図4に示す構成では、第一回転軸61は、駆動ギヤ10に対して軸第二方向L2側の全ての部分が軸内空間Sに挿入された状態で配置されている。そして、第一回転軸61の軸第二方向L2側端部の外周面と、第二回転軸62の内周面との間に、第一回転軸第二軸受81bが配置されており、第一回転軸第二軸受81bにより径方向外側から支持される第一回転軸61の外周面部が、第一被支持部P1となっている。この例では、上記実施形態とは異なり、第一回転軸61は、第一ロータ本体41及び駆動ギヤ10に対して軸第二方向L2側においては、ケース3に対して直接的にではなく、他の回転軸である第二回転軸62を介して間接的にケース3に支持されている。なお、図4に示す構成では、図3に示した構成と同様、第一回転軸61が1つの軸部材により形成されているが、図5に示す構成のように、第一回転軸61が、上記実施形態と同様、第一軸部61aと第二軸部61bとを互いに連結して形成された構成とすることも可能である。
【0067】
なお、図示は省略するが、図4や図5に示す構成において、第二回転軸62の内部に形成される軸内空間Sが、軸第一方向L1側にのみ開口部Oを有し、第二回転軸62の軸第二方向L2側部分が中実に形成された構成とすることも可能である。また、図4、図5に示す例では、第一回転軸第二軸受81bが、転動体が円柱体のころがり軸受とされているが、第一回転軸第二軸受81bを、ワッシャ部材等の滑り軸受とすることも可能である。
【0068】
(3)上記の実施形態では、第二回転軸62が、1つの軸部材により形成された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば図6に示すように、第二回転軸62が、互いに軸方向Lに連結された複数の軸部材により形成された構成とすることも可能である。図6に示す例では、第二回転軸62は、2つの軸部材を互いに軸方向Lに連結して形成されており、具体的には、第二ロータ本体42を貫通する第三軸部62aと、第三軸部62aより軸第一方向L1側に配置されるとともに第一回転軸61が挿入される軸内空間Sを有する第四軸部62bとを、互いに軸方向Lに連結(本例ではスプライン連結)して形成されている。なお、第二軸側係合部72は、第四軸部62bが備えるフランジ部の外周部に形成されている。そして、第二支持部32の第二貫通孔32aには、第二回転軸第二軸受82bに加えて第二回転軸第三軸受82cが設けられ、これら2つの軸受により第三軸部62aと第四軸部62bとの連結部をケース3に対し回転可能に支持している。この構成では、出力軸2側から駆動ギヤ10に伝達される荷重変動を第三軸部62aと第四軸部62bとの連結部にて吸収することが可能となり、当該荷重変動が第二ロータ本体42に伝達されるのを抑制することが可能となる。
【0069】
なお、図6に示す例では、軸内空間Sは、軸第一方向L1側にのみ開口部Oを有しており、図4及び図5に示した例と同様、第一回転軸61は、当該第一回転軸61の軸第二方向L2側端部が軸内空間Sに位置するように配置され、第一被支持部P1が、第一回転軸61における軸内空間Sに位置する部分に設けられている。
【0070】
(4)上記の実施形態では、駆動装置1がカウンタギヤ機構5を備えた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、図7に示すように、駆動装置1がカウンタギヤ機構5を備えず、駆動ギヤ10と差動入力ギヤ50とが直接噛み合うように配置された構成とすることも可能である。なお、図7では、駆動装置1の構成を模式的に表しており、上記実施形態と対応する部分に同じ符号を付している。また、図7において符号「7」で示す部材は、上記実施形態では図示を省略した車輪である。
【0071】
(5)上記の実施形態では、第一係合装置21及び第二係合装置22のそれぞれが、噛み合い式の係合装置とされた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第一係合装置21及び第二係合装置22の少なくとも一方を摩擦係合装置とすることも可能である。また、第一係合装置21及び第二係合装置22の少なくとも一方を、一方向にのみトルクを伝達し、逆方向には空転しトルクを伝達しない一方向係合装置(ワンウェイクラッチ)とすることも可能である。
【0072】
(6)上記の実施形態では、第一回転電機11が第二回転電機12に比べて高回転低トルク型の回転電機とされ、第二回転電機12が第一回転電機11に比べて低回転高トルク型の回転電機とされた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第一回転電機11が第二回転電機12に比べて低回転高トルク型の回転電機とされ、第二回転電機12が第一回転電機11に比べて高回転低トルク型の回転電機とされた構成とすることも可能である。また、トルクを出力可能な回転速度の上限値、及び出力可能なトルクの最大値の少なくとも一方について、第一回転電機11と第二回転電機12とで互いに等しく設定された構成とすることも可能であり、例えば、トルクを出力可能な回転速度の上限値、及び出力可能なトルクの最大値の双方が、第一回転電機11と第二回転電機12とで互いに等しく設定された構成とすることができる。
【0073】
(7)上記の実施形態では、第一回転電機11が第二回転電機12に対して寸法が大きな回転電機とされた構成を例として説明したが、第二回転電機12が第一回転電機11に対して寸法が大きな回転電機とされた構成や、第一回転電機11と第二回転電機12とが互いに等しい大きさ(寸法)の回転電機とされた構成とすることも可能である。
【0074】
(8)上記の実施形態では、本発明に係る駆動装置を車両用駆動装置に適用した場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、本発明に係る駆動装置を車両用以外の駆動装置に適用することも可能である。
【0075】
(9)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、本願の特許請求の範囲に記載されていない構成に関しては、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、出力部材に駆動連結される駆動ギヤと、第一係合装置を介して駆動ギヤに駆動連結される第一回転電機と、第二係合装置を介して駆動ギヤに駆動連結される第二回転電機と、ケースと、を備え、駆動ギヤの軸方向の一方側である軸第一方向側から反対側である軸第二方向側へ向かって、同軸上に、第一回転電機、駆動ギヤ、第二回転電機の順に配置された駆動装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1:駆動装置
2:出力軸(出力部材)
3:ケース
10:駆動ギヤ
11:第一回転電機
12:第二回転電機
21:第一係合装置
22:第二係合装置
41:第一ロータ本体
42:第二ロータ本体
61:第一回転軸
61a:第一軸部
61b:第二軸部
62:第二回転軸
L:軸方向
L1:軸第一方向
L2:軸第二方向
O:開口部
P1:第一被支持部(被支持部)
P2:第二被支持部(被支持部)
P3:第三被支持部(被支持部)
S:軸内空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力部材に駆動連結される駆動ギヤと、第一係合装置を介して前記駆動ギヤに駆動連結される第一回転電機と、第二係合装置を介して前記駆動ギヤに駆動連結される第二回転電機と、ケースと、を備え、前記駆動ギヤの軸方向の一方側である軸第一方向側から反対側である軸第二方向側へ向かって、同軸上に、前記第一回転電機、前記駆動ギヤ、前記第二回転電機の順に配置された駆動装置であって、
前記第一回転電機のロータ本体である第一ロータ本体から前記軸方向の両側に突出して配置されるとともに当該第一ロータ本体と一体回転する第一回転軸と、前記第二回転電機のロータ本体である第二ロータ本体から前記軸方向の両側に突出して配置されるとともに当該第二ロータ本体と一体回転する第二回転軸と、を備え、
前記第一回転軸は、前記駆動ギヤを貫通して配置されるとともに、前記第一ロータ本体及び前記駆動ギヤを挟んだ前記軸方向の両側で前記ケースに対し回転可能に支持され、
前記第二回転軸は、前記第二ロータ本体を挟んだ前記軸方向の両側で前記ケースに対し回転可能に支持され、
前記駆動ギヤは、前記第一回転軸によって径方向内側から相対回転可能に支持されている駆動装置。
【請求項2】
前記第二回転軸は、前記軸第一方向側に開口する開口部から前記軸第二方向側に前記軸方向に沿って延びる軸内空間を有し、
前記第一回転軸は、前記駆動ギヤに対して前記軸第二方向側の少なくとも一部が前記軸内空間に挿入された状態で配置されており、
前記第一回転軸における前記開口部に対して前記軸第二方向側の部分に、前記ケースに対し回転可能に支持される被支持部が設けられている請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記第二回転軸は、前記軸内空間が前記軸第二方向側にも開口する円筒状に形成され、
前記第一回転軸は、前記第二回転軸を貫通して配置されており、
前記被支持部は、前記第一回転軸における前記第二回転軸から前記軸第二方向側に突出する部分に設けられている請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記第一回転軸は、前記軸第二方向側端部が前記軸内空間に位置するように配置されており、
前記被支持部は、前記第一回転軸における前記軸内空間に位置する部分に、前記第二回転軸を介して前記ケースに支持されるように設けられている請求項2に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記第一回転軸は、前記第一ロータ本体を貫通する第一軸部と、前記駆動ギヤを貫通する第二軸部とを、前記軸方向における前記第一ロータ本体と前記駆動ギヤとの間において互いに連結してなり、
前記第一軸部における前記第一ロータ本体から前記軸第二方向側に突出する部分と、前記第二軸部における前記駆動ギヤから前記軸第一方向側に突出する部分とのそれぞれに、前記ケースに対し回転可能に支持される被支持部が設けられている請求項1から4のいずれか一項に記載の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−5568(P2013−5568A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133677(P2011−133677)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】