説明

駐車ブレーキ装置

【課題】過大な張力を発生することを防止することができる駐車ブレーキ装置を提供すること。
【解決手段】本発明による駐車ブレーキ装置1は、サービスブレーキ装置の含むパッドにケーブルの張力Fに基づいた推力Fprを付与する駐車ブレーキ装置1であって、サービスブレーキ装置の制御油圧Pを検出する制御油圧検出手段3と、張力Fの目標張力F1を制御油圧Pに基づいて決定する目標張力決定手段2aと、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車、トラック、バス等の車両に適用されて好適な駐車ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来において、車両の駐車ブレーキ装置としては、特許文献1に記載されているようなものが提案されている。この駐車ブレーキ装置においては、車両が駐車している路面の傾斜角等を含む所定の車両状態に基づいて、駐車ブレーキを動作させる際のケーブルの張力を決定することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−1284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このような駐車ブレーキ装置においては、車両の減速を行うためのサービスブレーキ装置による制動力が発生している、つまり、サービスブレーキ装置内のシリンダとピストンとにより構成される油圧室に制御油圧が供給されて、パッドがブレーキディスクに押圧された状態であるか否かを考慮していないので、以下のような問題が生じる。
【0005】
すなわち、制動力の発生の有無に係わらずに、駐車ブレーキ装置の含むケーブルに付与する張力が決定されるため、運転者がサービスブレーキ装置により車両を停止させた後、駐車ブレーキ装置を動作させて、サービスブレーキを解除した場合に、ケーブルに発生する張力が過大となるという問題が発生する。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑み、過大な張力を発生することを防止することができる駐車ブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の問題を解決するため、本発明による駐車ブレーキ装置は、
サービスブレーキ装置の含むパッドにケーブルの張力に基づいた推力を付与する駐車ブレーキ装置であって、
前記サービスブレーキ装置の制御油圧を検出する制御油圧検出手段と、
前記張力の目標張力を前記制御油圧に基づいて決定する目標張力決定手段と、
を含むことを特徴とする。
【0008】
ここで、前記サービスブレーキ装置とは、ブレーキディスク、パッド、ピストン、シリンダ、油圧室、油圧配管、保持弁、減圧弁、マスターシリンダ、ホイール毎のシリンダ、ブレーキECU等の周知の構成を含むものである。前記サービスブレーキ装置においては、運転者のブレーキペダルの踏み込み量に基づいて決定され生成された制御油圧を油圧室内に供給することにより、ピストンがシリンダから押し出されて、パッドをブレーキディスクに押圧することにより制動力を発生する。
【0009】
さらに、前記駐車ブレーキ装置とは、前記ケーブルと、前記ケーブルに張力を付与するアクチュエータと、前記張力を目標張力とするように前記アクチュエータを制御する駐車ブレーキECUと、前記ケーブルの張力を前記サービスブレーキ装置が含む前記ピストンの前記シリンダに対する摺動方向の推力に変換するレバー及びリンクと、前記推力を前記ピストンに伝達するスピンドル等の、周知の構成を含む。
【0010】
なお、前記制御油圧とは、前記サービスブレーキの含むシリンダとピストンとにより構成される油圧室内の制御油圧であってもよいし、前記制御油圧を制御する油圧指令値から換算された値であってもよく、例えば路面の傾斜角により定まる車両の目標減速度から前記サービスブレーキ装置の諸元に基づく換算式によって換算される制御油圧であってもよい。前記制御油圧検出手段は、典型的には油圧センサにより構成され、前記目標張力決定手段は、典型的には、前記駐車ブレーキECUにより構成される。
【0011】
従来の駐車ブレーキ装置においては、前記サービスブレーキ装置が制動力を発生していて、前記制御油圧に基づく圧縮力が前記パッドに作用している場合に、前記駐車ブレーキ装置が前記ケーブルに張力を付与して前記レバー、前記スピンドル、前記ピストンを介して前記パッドに前記推力を付加して駐車ブレーキを作用させた後、前記サービスブレーキ装置が制動を停止し終了して、前記制御油圧が前記油圧室から排出されて前記圧縮力が前記パッドに作用しなくなったタイミングにおいて、前記スピンドルに付与される前記推力が上昇して、前記推力の上昇に伴い前記ケーブルの張力が増大して、前記張力が過大となる不都合が発生していた。
【0012】
本発明の前記駐車ブレーキ装置によれば、前記制御油圧に基づいて前記張力を予め減少させておくことにより、予め作用していた前記制御油圧が除去される前記タイミングにおいて、前記ケーブルの張力が増大しても、前記張力が過大となってしまうことを防止することができる。
【0013】
ここで、前記駐車ブレーキ装置において、
前記目標張力決定手段は、前記制御油圧がゼロである場合の前記目標張力を初期目標張力とし、前記制御油圧と差分張力との関係を示すマップを含み、前記マップと前記制御油圧から前記差分張力を演算して、前記初期目標張力から前記差分張力を減じて前記目標張力を演算して決定することが好ましい。
【0014】
なお、前記マップは予め実験による測定により定められて、前記駐車ブレーキECUに記憶されるものであり、前記関係においては、一般的に前記差分張力が前記制御油圧に比例する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、過大な張力を発生することを防止することができる駐車ブレーキ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る駐車ブレーキ装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る駐車ブレーキ装置の一実施形態における主たる構成要素の負荷荷重及び変形量をモデル化して示す模式図である。
【図3】本発明に係る駐車ブレーキ装置の制御に用いるマップを示す模式図である。
【図4】本発明に係る駐車ブレーキ装置の制御に用いるマップを示す模式図である。
【図5】本発明に係る駐車ブレーキ装置の制御内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0018】
図1は、本発明に係る駐車ブレーキ装置の一実施形態を示す模式図である。
【0019】
本実施例の駐車ブレーキ装置1は、EPBECU2(Electronic Parking Brake Electronic Control Unit)と、ロックリリーススイッチ3と、油圧センサ4と、張力センサ5と、モータ6と、電流センサ7と、ストロークセンサ8と、警告ランプ9と、インジケータランプ10とを備えて構成される。
【0020】
駐車ブレーキ装置1は、図示しないサービスブレーキ装置の含むパッドにケーブルの張力Fに基づいた推力Fprを付与するものである。より具体的には、サービスブレーキ装置は、車両の車輪毎に設けられたブレーキディスクと、ブレーキディスクの片面又は両面に向けて対向配置されたパッド、パッドをブレーキディスクに向けて押圧するピストン、ピストンが摺動自在に挿入されたシリンダ、ピストンとシリンダとの間に画成される油圧室、油圧配管、保持弁、減圧弁、マスターシリンダ、ホイール毎のシリンダ、ブレーキECU等を含むものである。これらの構成は周知のものであるため、図示と詳細な説明は省略している。
【0021】
このサービスブレーキ装置においては、運転者のブレーキペダルの踏み込み量に基づいて、マスターシリンダにより生成された制御油圧を保持弁及び油圧配管を通じて油圧室内に供給することにより、ピストンがシリンダから押し出されて、パッドをブレーキディスクに押圧することにより制動力を発生する。
【0022】
ロックリリーススイッチ3は、車両内部のコンソール近傍に設けられ、運転者が車両を停止させた後、駐車ブレーキ装置1により駐車ブレーキをかけて、駐車状態とするロック操作と、駐車ブレーキを解除して発進待機状態とするリリース操作のいずれかを選択するものである。
【0023】
油圧センサ4は、図示しない各車輪に対応して設けられたサービスブレーキ装置のシリンダと保持弁とを液密に連通する油圧配管上に設けられて、制御油圧Pを検出する制御油圧検出手段を構成するものであって、検出結果をEPBECU2に出力する。
【0024】
さらに、駐車ブレーキ装置1は、図示しないケーブルと、ケーブルに張力Fを付与するモータ6及びモータ6により駆動される図示しない装置側スピンドルを含む図示しないアクチュエータを含み、ケーブルの張力Fをサービスブレーキ装置が含むピストンのシリンダに対する摺動方向の推力Fprに変換する図示しないレバー及びリンクと、推力Fprをピストンに伝達する図示しないスピンドルを含む。この構成も周知であるため、図示と詳細な説明は省略している。張力センサ5は、ケーブル又はアクチュエータに設けられてケーブルの張力Fを検出し検出結果をEPBECU2に出力する。
【0025】
EPBECU2は例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが以下に述べる所定の処理を行うものであり、目標張力決定手段2a、制御手段2b、判定閾値演算手段2c、警告手段2dを備えて構成される。目標張力決定手段2aは、制御油圧Pがゼロである場合の目標張力F1を初期目標張力F10とし、制御油圧Pと差分張力ΔF1(P)との関係を示す図2に示すようなマップAを含み、図2のマップAと制御油圧Pから差分張力ΔF1(P)を演算して、初期目標張力F10から差分張力ΔF1(P)を減算して目標張力F1=F10−ΔF1(P)を演算して決定する。
【0026】
なお、図2に示すマップAは予め実験により定められて、EPBECU2に記憶されるものであり、差分張力ΔF1(P)(単位N)が制御油圧P(単位MPa)に比例する関係を有するとともに、制御油圧Pが高圧の領域では差分張力ΔF1(P)が大きくなりすぎることを防止するために、傾きを減少する傾向を有している。制御手段2bは、ケーブルの張力Fを目標張力F1とするようにモータ6の電流値を制御し、張力Fが目標張力F1未満である場合にはモータ6に通電し、張力Fが目標張力F1を超えた場合には、インジケータランプ9を点灯して、モータ6への通電を停止する。
【0027】
判定閾値演算手段2cは、制御油圧Pがゼロである場合の判定閾値S1を初期判定閾値S10とし、制御油圧Pと差分判定閾値ΔS1(P)との関係を示す図3に示すようなマップBを含み、図3のマップBと制御油圧Pから差分判定閾値ΔS1(P)を演算して、初期判定閾値S10から差分判定閾値ΔS1(P)を加算して判定閾値S1を演算して決定する。
【0028】
図3に示すマップBも予め実験により定められて、EPBECU2に記憶されるものであり、差分判定閾値ΔS1(P)(単位mm)が制御油圧P(単位MPa)に比例する関係を有するとともに、制御油圧Pが高圧の領域では差分判定閾値ΔS1(P)が大きくなりすぎることを防止するために、傾きを減少する傾向を有している。警告手段2dは、ストロークセンサ8により検出したケーブルの装置側スピンドル側の端部のストロークSが判定閾値S1より大きい場合に、警告ランプ9を点灯し、制御手段2bに対してモータ6への通電を停止させる停止指令を出力し、制御手段2bは停止指令に基づいてモータ6への通電を停止する。
【0029】
以下に、以上述べた本実施例による駐車ブレーキ装置1が解決する課題の理論的根拠について説明する。一般的に運転者が車両の運転を終了して駐車するにあたっては、サービスブレーキ装置及び駐車ブレーキ装置1がともにオフである初期状態から、サービスブレーキ装置により制動力を発生する油圧印加状態を経て、駐車ブレーキ装置1のロックリリーフスイッチ3によりロック状態を選択するケーブル張力追加状態を経て、さらに、サービスブレーキ装置をオフとする油圧除去状態を経る、時系列状態変化が発生する。この時系列状態変化において、駐車ブレーキ装置1を構成するスピンドルと、パッドに作用する力の遷移をモデル化すると、図4に示すような模式図となる。
【0030】
なお、図4においては、スピンドル及びパッドをバネで示し、スピンドルのケーブル側面SK、パッドのスピンドル側の面PSを横方向に偏平な長方形で、ブレーキディスクのパッドに接触する面BPを横線で示しており、
ks:スピンドルバネ定数
kp:パッドバネ定数
とし、
Fs:スピンドル入力=η×F×R
η:機械効率
F:ケーブル張力
R:レバー比
とし、
Fpr:ピストン推力=P×A(簡単のためピストン数は1とする。)
P:制御油圧
A:ピストン断面積
とし、
ケーブル張力追加状態から油圧除去状態に遷移する段階で、面PSが面BPから離隔する方向に移動する移動量を
Δ
としている。
初期状態、油圧印加状態、ケーブル張力追加状態、油圧除去状態における、
ピストン推力は、順番に
0→Fpr→Fpr+Fs→Fpr+Fs−kpΔ
となり、
パッド変形量は、順番に、
0→Fpr/kp→(Fpr+Fs)/kp→(Fpr+Fs)/kp−Δ
となり、
スピンドル入力は、順番に、
0→0→Fs→Fs+ks×Δ
となり、
スピンドルストロークは、順番に、
0→0→(Fpr+Fs)/kp+Fs/ks→(Fpr+Fs)/kp+Fs/ks
となり、
スピンドル圧縮変形量は、順番に、
0→0→Fs/ks→Fs/ks+Δ
となり、
0→Fpr→Fpr→0
となる。
ここで、油圧除去状態における面PSでの力の釣り合いを考えると、
Fs+ksΔ=Fpr+Fs−kp×Δ
となることから、
Δ=Fpr/(ks+kp)
と導け、Δは正の値となる。油圧除去状態におけるスピンドル入力は、
Fs+ks/(ks+kp)×Fpr
で表されることとなり、ケーブル張力追加状態におけるスピンドル入力Fsよりも常に大きくなる。
【0031】
スピンドル入力Fsとケーブル張力Fは比例関係Fs=η×F×Rにあり、上述したモータ6及び装置側スピンドルにより構成されるアクチュエータはケーブルの緩み防止機能を有していることから、ケーブル張力Fも、ケーブル張力印加状態から、油圧除去状態に遷移した段階で、増加することとなり、これらのことにより、ケーブル張力Fが過大となることを招く。
【0032】
そこで、本実施例においては、理想的には、ks/(ks+kp)×Fprをη×Rで除した値を、予め目標張力F1から減じることを目的とする。ところが、実際には、ks、kpは設計諸元から予測することが困難であり、かつ、パッドは樹脂等により構成されていてkpは圧縮量に依存し、制御油圧Pに依存するため、図2に示したようなマップAを実測データに基づいて作成して予めEPBECU2に記憶させて、EPBECU2の目標張力決定手段2aは、油圧センサ4により検出した制御油圧Pに基づいて、マップAとの参照により差分目標張力ΔF1(P)を演算して、初期目標張力F10からΔF1(P)を減じて目標張力F1=F10−ΔF1(P)を決定する。
【0033】
同様のことがケーブルのアクチュエータ側端つまりスピンドルのケーブル側の面SKの変化であるスピンドル圧縮変形量にも発生し、図4に示すように、ケーブル張力印加状態から油圧除去状態への遷移状態において、
Δ=Fpr/(ks+kp)
増加することとなり、ケーブルのアクチュエータ側端のストロークが増加することを招き、判定閾値S1とストロークセンサ8のストロークSとの比較に基づく、ケーブル切れの警告を行う場合において、ケーブル切れによるストロークSの変化とスピンドル圧縮変形量の増大によるストロークSの変化の区別が付かなくなり、誤検出を招くおそれが生じる。
【0034】
このため、上述したように、EPBECU2の判定閾値演算手段2cは、制御油圧Pがゼロである場合の判定閾値S1を初期判定閾値S10とし、制御油圧Pと差分判定閾値ΔS1(P)との関係を示す図3に示すようなマップBを用いて、図3のマップBと制御油圧Pから差分判定閾値ΔS1(P)を演算して、初期判定閾値S10から差分張力ΔS1(P)を加算して判定閾値S1を演算して決定し、警告手段2dはこの補正された判定閾値S1を用いて閾値判定と警告を行う。
【0035】
以上述べた本実施例による駐車ブレーキ装置1は以下のフローチャートに基づいて実行される。以下に、本実施例の駐車ブレーキ装置1の制御内容についてフローチャートを用いて説明する。図5は、本発明による駐車ブレーキ装置1のEPBECU2の制御内容を示すフローチャートである。
【0036】
ステップS1において、EPBECU2はロックリリーススイッチ3が運転者によりオンとされているか否かを判定し、肯定であればステップS2にすすみ、否定であれば、ステップS1の手前に戻る。
【0037】
ステップS2において、EPBECU2は、張力センサ5から張力Fを、ストロークセンサ8からストロークSを、油圧センサ4から制御油圧Pを、検出して、ステップS3において、EPBECU2の目標張力決定手段2aは、図2に示したマップAを用いて目標張力F1を演算し、ステップS4において、EPBECU2の判定閾値演算手段2cは、図3に示したマップBを用いてケーブル切れ判定用の判定閾値S1を演算する。
【0038】
ステップS5において、EPBECU2の制御手段2bは、張力Fが目標張力F1未満であるか否かを判定し、肯定であればステップS6にすすみ、否定であれば、ステップS8にすすむ。
【0039】
ステップS6において、EPBECU2の警告手段2dは、ストロークSが判定閾値S1より大きいか否かを判定し、肯定であればステップS9にすすみ、否定であればステップS7にすすむ。
【0040】
ステップS7において、EPBECU2の制御手段2bは、モータ6に通電し、ステップS8において、EPBECU2の制御手段2bはインジケータランプ10を点灯し、ステップS9において、EPBECU2の警告手段2dは警告ランプ9を点灯し、ステップS10において、EPBECU2の制御手段2bは、モータ6への通電を停止する。
【0041】
以上述べた制御内容により実現される本実施例の駐車ブレーキ装置1によれば、検出された制御油圧Pに基づいて張力Fを予め減少させておくことにより、予め作用していた制御油圧Pが除去される、図4に示したケーブル張力印加状態から油圧除去状態に遷移するタイミングにおいて、ケーブルの張力Fが増大しても、張力Fが過大となってしまうことを防止することができる。
【0042】
加えて、差分目標張力ΔF1(P)の値を制御油圧Pと図2に示したマップAに基づいて定めることとしているので、差分目標張力ΔF1(P)の値を必要最小限かつ適切な値とすることができる。
【0043】
また、ケーブル切れ判定用の判定閾値S1についても、検出された制御油圧Pに基づいて判定閾値S1を予め増加させておくことにより、予め作用していた制御油圧Pが除去される、図4に示したケーブル張力印加状態から油圧除去状態に遷移するタイミングにおいて、スピンドル圧縮変形量が増大してストロークSが増大しても、ケーブル切れとは明確に区別した上で、制御油圧Pの増大に伴う無効ストロークの増大を正確に検出して、適切な警告を行うことができる。
【0044】
加えて、差分判定閾値ΔS1(P)の値を制御油圧Pと図3に示したマップBに基づいて定めることとしているので、差分判定閾値ΔS1(P)の値についても、必要最小限かつ適切な値とすることができる。
【0045】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、車両の駐車ブレーキ装置に関するものであり、過大な張力を発生することを防止することができるので乗用車、トラック、バス等の様々な車両に適用して有益なものである。
【符号の説明】
【0047】
1 駐車ブレーキ装置
2 EPBECU
2a 目標張力決定手段
2b 制御手段
2c 判定閾値演算手段
2d 警告手段
3 ロックリリーススイッチ
4 油圧センサ(制御油圧検出手段)
5 張力センサ
6 モータ
7 電流センサ
8 ストロークセンサ
9 警告ランプ
10 インジケータランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サービスブレーキ装置の含むパッドにケーブルの張力に基づいた推力を付与する駐車ブレーキ装置であって、前記サービスブレーキ装置の制御油圧を検出する制御油圧検出手段と、前記張力の目標張力を前記制御油圧に基づいて決定する目標張力決定手段と、を含むことを特徴とする駐車ブレーキ装置。
【請求項2】
前記目標張力決定手段は、前記制御油圧がゼロである場合の前記目標張力を初期目標張力とし、前記制御油圧と差分張力との関係を示すマップを含み、前記マップと前記制御油圧から前記差分張力を演算して、前記初期目標張力から前記差分張力を減じて前記目標張力を演算して決定することを特徴とする請求項1に記載の駐車ブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−920(P2011−920A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143958(P2009−143958)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】