説明

駐車支援システム

【課題】駐車支援システムにおいて、駐車支援の際に、運転者の衣類がステアリングホイールに巻きついたり、ステアリングホイールが運転者の手にぶつかったりする等の予期せぬ事態が発生するおそれをなくすることにある。
【解決手段】ステアリングホイール(7)と操舵輪(15L、15R)とが機械的に切り離され、ステアリングホイール(7)の回転に応じて操舵輪(15L、15R)を操舵する操舵モータ(22、23)を備えたステアバイワイヤシステム(2)であり、自動駐車手段(31)の実行中には、操舵モータ(22、23)により操舵輪(15L、15R)が操舵されてもステアリングホイール(7)は中立位置にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、駐車支援システムに係り、特にステアバイワイヤシステムを搭載した車両の駐車支援(自動パーキング)の際のステアリングホイールの回転を制御する運転支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、ステアリングホイールと操舵輪とが機械的に切り離され、ステアリングホイールの回転に応じて操舵輪を操舵する操舵モータを備えたステアバイワイヤシステムを搭載するとともに、運転者がステアリングホイールを操舵することなく、車両を目標駐車位置へ自動的に駐車させる自動駐車手段を備える駐車支援システムを搭載したものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−203315号公報
【0004】
特許文献1に係る駐車支援装置は、駐車支援(自動パーキング)システムを使用した際、車両のステアリングホイールが回転モ一ドになると、アクチュエータがステアリングホイールを自動的に回転制御するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来、パワーステアリングを用いた自動駐車では、計算された経路に沿って車両が移動するように、ステアリングホイールが回転して操舵輪を操舵することによって駐車動作を行っている。
このため、駐車支援の際に、運転者の意思でステアリングホイールを回転させないという選択ができず、ステアリングホイールが自動的に回転するため、運転者の衣類がステアリングホイールに巻きついたり、ステアリングホイールが運転者の手にぶつかったりする等の予期せぬ事態が発生するおそれがあった。
また、自動駐車中に、操舵輪を操舵角に関係なく、ステアリングホイールを常に中立位置に保つようにすると、運転者は、ステアリングホイールを見ても操舵輪の操舵角(切れ角)を把握することができないという不具合を生じた。
更に、パワーステアリングを用いた自動駐車では、自動駐車中に回転するステアリングホイールを停止させると、自動駐車を停止するようになっている。
しかし、ステアリングホイールを常に中立位置に保つようにすると、従来の方法では、自動駐車を停止することができないという不都合があった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、駐車支援の際に、運転者の衣類がステアリングホイールに巻きついたり、ステアリングホイールが運転者の手にぶつかったりする等の予期せぬ事態が発生するおそれをなくする駐車支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、運転者がステアリングホイールを操舵することなく、車両を目標駐車位置へ自動的に駐車させる自動駐車手段を備える駐車支援システムにおいて、ステアリングホイールと操舵輪とが機械的に切り離され、前記ステアリングホイールの回転に応じて前記操舵輪を操舵する操舵モータを備えたステアバイワイヤシステムであり、前記自動駐車手段の実行中には前記操舵モータにより前記操舵輪が操舵されても前記ステアリングホイールは中立位置にあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の駐車支援システムは、駐車支援の際に、運転者の衣類がステアリングホイールに巻きついたり、ステアリングホイールが運転者の手にぶつかったりする等の予期せぬ事態が発生するおそれをなくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は駐車支援のフローチャートである。(実施例)
【図2】図2は駐車支援システムの構成図である。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明は、運転者の衣類がステアリングホイールに巻きついたり、ステアリングホイールが運転者の手にぶつかったりする等の予期せぬ事態が発生するおそれをなくする目的を、駐車支援の際に、ステアリングホイールを中立位置にして実現するものである。
【実施例】
【0011】
図1、図2は、この発明の実施例を示すものである。
図2において、1は車両、2はこの車両1に搭載されるステアバイワイヤシステムである。このステアバイワイヤシステム2は、機械的に連結の無い操作機構3と操舵機構4とを備え、操舵機構4を電気的に駆動してギヤレシオを自由に可変可能とするものである。
【0012】
図2に示すように、操作機構3には、車体構造部であるステアリングコラム5に対して軸支されたステアリングシャフト6と、このステアリングシャフト6の上端部位に一体的に設けられて人為操作可能なステアリングホイール7と、ステアリングシャフト6の下端部位に取り付けられた反力発生手段8及び振動発生機構9とが備えられている。反力発生手段8は、ステアリングホイール7に反力を与える。振動発生機構9は、ステアリングシャフト6を介してステアリングホイール7に微振動を伝達する。
また、ステアリングシャフト6の軸部位には、ステアリングコラム5の上端でステアリングホイール7の回転角を検出する第1ステアリングホイール回転角検出手段10と、ステアリングコラム5の下端と反力発生手段8間ではステアリングホイール7の回転トルクを検出するトルクセンサ11と、ステアリングホイール7の回転角を検出する第2ステアリングホイール回転角検出手段12及びクラッチ13とが取り付けられている。このクラッチ13は、反力発生手段8・振動発生機構9に対してステアリングホイール7を接続又は解放する。
ステアリングコラム5には、内蔵されたギヤに連結した電気モータであるステアリングモータ14が取り付けられる。このステアリングモータ14は、ステアリングシャフト6に併設され、ステアリングホイール7に路面反力に相当する反力又は回転をアシストするアシスト力(パワーステアリング力)を発生する。
【0013】
操舵機構4には、操舵輪としての左前輪15L、右前輪15Rと、この左前輪15L、右前輪15Rを駆動する左タイロッド16L、右タイロッド16Rと、この左タイロッド16L、右タイロッド16Rに連結するラック軸を内蔵したステアリングボックス17と、このステアリングボックス17のラック軸に連結したピニオン軸18と、このピニオン軸18に取り付けられてギヤを内蔵した操舵モータギヤボックス19とが備えられている。ピニオン軸18は、左タイロッド16L、右タイロッド16Rを介して操舵輪としての左前輪15L、右前輪15Rに連結した転舵軸として機能するものである。
このピニオン軸18には、操舵モータギヤボックス19の上側でピニオン軸18の回転角を検出する第1転舵角検出手段20、第2転舵角検出手段21が取り付けられている。
操舵モータギヤボックス19には、内蔵したギヤに連結するようにアクチュエータとして2つの第1操舵モータ22、第2操舵モータ23が取り付けられている。この第1操舵モータ22及び第2操舵モータ23は、ステアリングホイール7の回転に応じて操舵輪である左前輪15L、右前輪15Rの操舵制御を行う。
【0014】
ステアバイワイヤシステム2は、制御装置としてのステアリング制御装置24によって駆動される。このステアリング制御装置24には、操作用制御装置25と第1操舵用制御装置26と第2操舵用制御装置27とが備えられ、また、反力発生機構8と振動発生機構9と第1ステアリングホイール回転角検出手段10とトルクセンサ11と第2ステアリングホイール回転角検出手段12とステアリングモータ14と第1転舵角検出手段20と第2転舵角検出手段21と第1操舵モータ22と第2操舵モータ23とが連絡している。
操作用制御装置25は、ステアリングモータ14と車両情報検出手段28と表示警報装置29とに直接連絡し、ステアリングモータ14の反力やアシスト力を指令する。
第1操舵用制御装置26は、第1操舵モータ22に直接連絡し、この第1操舵モータ22を駆動制御する。
第2操舵用制御装置27は、第2操舵モータ23に直接連絡し、この第2操舵モータ23を駆動制御する。
車両情報検出手段28は、車速、エンジン回転数、イグニションスイッチ状態、シフト位置等の各種車両情報を検出して操作用制御装置25に出力する。
表示警報装置29は、警告灯の表示又はブザーを警報する。
このステアバイワイヤシステム2は、ステアリングホイール7と操舵輪としての左前輪15L、右前輪15Rとが機械的に切り離され、ステアリングホイール7の回転に応じて第1操舵モータ22と第2操舵モータ23とにより左前輪15L、右前輪15Rを操舵する。
【0015】
また、車両1には、ステアバイワイヤシステム2に一体的に組み込まれる駐車支援システム30が搭載される。この駐車支援システム30は、運転者がステアリングホイール7を操舵することなく、車両1を目標駐車位置へ自動的に駐車(自動パーキング)させる自動駐車手段31を備える。この自動駐車手段31は、ステアリング制御装置24に連絡し、左前輪15L、右前輪15Rの操舵指示やモード指示の信号を出力する一方、ステアリング制御装置24からの自動駐車停止指示の信号を入力する。
ステアリング制御装置24は、自動駐車手段31の実行中に、第1操舵モータ22、第2操舵モータ23により左前輪15L、右前輪15Rが操舵されてもステアリングホイール7を中立位置にする。
このように、駐車支援の際に、ステアリングホイール7が中立位置にあるため、運転者の衣類がステアリングホイール7に巻きついたり、ステアリングホイール7が運転者の手にぶつかったりする等の予期せぬ事態が発生するおそれがない。
【0016】
また、ステアリング制御装置24は、第1ステアリングホイール回転角検出手段10、第2ステアリングホイール回転角検出手段12により自動駐車中にステアリングホイール7の回転が検出された時には、自動駐車停止指令の信号を出力する。一方、自動駐車手段31は、自動駐車停止指令の信号が入力されると、自動駐車を停止する。
これにより、自動駐車中では、ステアリングホイール7が中立位置に保つようにしても、運転者は自動駐車を停止することができる。
【0017】
更に、ステアリング制御装置24は、第1転舵角検出手段20、第2転舵角検出手段21により検出された転舵軸としてのピニオン軸18の転舵角から左前輪15L、右前輪15Rの操舵角を算出し、自動駐車手段31の実行中には、左前輪15L、右前輪15Rの操舵角に応じてステアリングモータ14によりステアリングホイール7を回転させる。
これにより、ステアリングホイール7と左前輪15L、右前輪15Rとが機械的に切り離されたステアバイワイヤシステム2であっても、自動駐車中に、運転者は、左前輪15L、右前輪15Rの操舵角(切れ角)を把握することができる。
【0018】
また、ステアリング制御装置24は、自動駐車手段31の実行中に、第1操舵モータ22、第2操舵モータ23により左前輪15L、右前輪15Rが操舵されてもステアリングホイール7が中立位置にある第1のモード(モード1)と、第1転舵角検出手段20、第2転舵角検出手段22により検出されたピニオン軸18の転舵角から左前輪15L、右前輪15Rの操舵角を算出し、自動駐車手段31の実行中には、左前輪15L、右前輪15Rの操舵角に応じてステアリングモータ14によりステアリングホイール7を回転させる第2のモード(モード2)とを有する。
そして、自動駐車手段31には、ステアリング制御装置24での上記の第1のモード(モード1)と第2のモード(モード2)とを切り換えるモード切換手段(スイッチ)32が連絡している。自動駐車手段31は、モード切換手段(スイッチ)32の状態に応じて、ステアリング制御装置24にモード指示の信号を出力する。一方、ステアリング制御装置24は、入力されたモード指示の信号に応じて、第1のモード(モード1)と第2のモード(モード2)とを切り換える。
これにより、運転者は、自動駐車中のステアリングホイール7の挙動を選択することができる。
【0019】
次に、この実施例に係る駐車支援制御について、図1のフローチャートに沿って説明する。
図1に示すように、ステアリング制御装置24のプログラムがスタートすると(ステップA01)、駐車支援システム30を作動し(ステップA02)、モード切換手段32が第1のモード(モード1)と第2のモード(モード2)とのどちらを選択しているかを判断する(ステップA03)。
このステップA03で、第1のモード(モード1)が選択されている場合には、ステアリングホイール7を回転し(ステップA04)、ステアリングホイール7の操作をしていないか否かを判断する(ステップA05)。
このステップA05がYESの場合には、目標駐車位置まで到達したか否かを判断し(ステップA06)、このステップA06がNOの場合には、前記ステップA05に戻す。
このステップA06がYESの場合、又は、前記ステップA05がNOの場合には、駐車支援システム30を停止し(ステップA07)、プログラムをエンドとする(ステップA08)。
一方、前記ステップA03で、第2のモード(モード2)が選択されている場合には、ステアリングホイール7を回転せず(ステップA09)、ステアリングホイール7が右方又は左方に予め設定された一定の角度(例えば、30deg)以上切れていないか否かを判断する(ステップA10)。
このステップA10がYESの場合には、目標駐車位置まで到達したか否かを判断し(ステップA11)、このステップA11がNOの場合には、前記ステップA10に戻す。
このステップA11がYESの場合、又は、前記ステップA10がNOの場合には、前記ステップA07に移行して駐車支援システム30を停止する。
【産業上の利用可能性】
【0020】
この発明の駐車支援システムは、各種車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0021】
1 車両
2 ステアバイワイヤシステム
3 操作機構
4 操舵機構
7 ステアリングホイール
10 第1ステアリングホイール回転角検出手段
12 第2ステアリングホイール回転角検出手段
14 ステアリングモータ
15L 左前輪(操舵輪)
15R 右前輪(操舵輪)
18 ピニオン軸(転舵軸)
20 第1転舵角検出手段
21 第2転舵角検出手段
22 第1操舵モータ
23 第2操舵モータ
24 ステアリング制御装置
30 駐車支援システム
31 自動駐車手段
32 モード切換手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者がステアリングホイールを操舵することなく、車両を目標駐車位置へ自動的に駐車させる自動駐車手段を備える駐車支援システムにおいて、ステアリングホイールと操舵輪とが機械的に切り離され、前記ステアリングホイールの回転に応じて前記操舵輪を操舵する操舵モータを備えたステアバイワイヤシステムであり、前記自動駐車手段の実行中には前記操舵モータにより前記操舵輪が操舵されても前記ステアリングホイールは中立位置にあることを特徴とする駐車支援システム。
【請求項2】
前記ステアリングホイールの回転角を検出するステアリングホイール回転角検出手段を備え、前記自動駐車手段は、前記ステアリングホイール回転角検出手段により自動駐車中に前記ステアリングホイールの回転が検出された時には、自動駐車を停止することを特徴とする請求項1に記載の駐車支援システム。
【請求項3】
運転者がステアリングホイールを操舵することなく、車両を目標駐車位置へ自動的に駐車させる自動駐車手段を備える駐車支援システムにおいて、ステアリングホイールと操舵輪とが機械的に切り離され、前記ステアリングホイールの回転に応じて前記操舵輪を操舵する操舵モータを備えたステアバイワイヤシステムであり、前記ステアリングホイールに路面反力に相当する反力又は回転をアシストするアシスト力を発生させるステアリングモータと、前記操舵輪に連結された転舵軸と、この転舵軸の回転角を検出する転舵角検出手段とを備え、この転舵角検出手段により検出された前記転舵軸の転舵角から前記操舵輪の操舵角を算出し、前記自動駐車手段の実行中には前記操前輪の操舵角に応じて前記ステアリングモータにより前記ステアリングホイールを回転させることを特徴とする駐車支援システム。
【請求項4】
運転者がステアリングホイールを操舵することなく、車両を目標駐車位置へ自動的に駐車させる自動駐車手段を備える駐車支援システムにおいて、ステアリングホイールと操舵輪とが機械的に切り離され、前記ステアリングホイールの回転に応じて前記操舵輪を操舵する操舵モータを備えたステアバイワイヤシステムであり、前記ステアリングホイールに路面反力に相当する反力又は回転をアシストするアシスト力を発生させるステアリングモータと、前記操舵輪に連結された転舵軸と、この転舵軸の回転角を検出する転舵角検出手段とを備え、前記自動駐車手段の実行中には前記操舵モータにより前記操舵輪が操舵されても前記ステアリングホイールは中立位置にあるモードと、前記転舵角検出手段により検出された前記転舵軸の転舵角から前記操舵輪の操舵角を算出し、前記自動駐車手段の実行中には前記操舵輪の操舵角に応じて前記ステアリングモータにより前記ステアリングホイールを回転させるモードとを有し、この2つのモードを切り換えるモード切換手段を備えることを特徴とする駐車支援システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−40977(P2012−40977A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184878(P2010−184878)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】