説明

骨伝導マイク・スピーカ通話装置

【課題】周囲の雑音を捉えることなく、骨導音を効率よく捉えて音声データに変換できる骨伝導マイクを有し、これにより別途装置が不要となり、無線機能を付加しても軽量なケーブルレスの通話装置を実現できる骨伝導マイク・スピーカ通話装置を提供せんとする。
【解決手段】耳周辺に当接する左右一対の骨伝導ドライバーからなる骨伝導マイク11、骨伝導スピーカ12、リモコン装置9と接続可能な無線ユニット13、リモコン装置9より受信した音声信号を骨伝導スピーカ12に出力し、骨伝導マイク11より受信した音声信号をリモコン装置9に送信する音声処理手段の制御部14を備えており、骨伝導ドライバーは、凹部が形成された基台と、凹部に収納されるボイスコイルと、凹部内壁を構成する固定部に取り付けられ、ボイスコイルの上側に渡設される振動板と、振動板上面中央に取り付けられたマグネットと、基台上部に取り付けられる蓋体とより構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の頭部に装着され、通話機本体又はそのリモコン装置側と音声データを送受信する骨伝導マイク・スピーカ通話装置に係わり、より詳しくは、周囲の雑音を捉えることなく、骨導音を効率よく捉えて音声データに変換できる骨伝導マイクを備えた骨伝導マイク・スピーカ通話装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の骨伝導マイク・スピーカ通話装置として、従来、耳周辺に当接するように配置される骨導スピ−カと、頭部の任意の位置に当接するように配置される骨導マイクロホンと、前記骨導スピ−カと骨導マイクロホンとを前記位置に保持する保持手段とを含むことを特徴とし、保持手段は、両側頭部から後頭部にかけて取り巻くサイドベルトと、前記サイドベルトに取り付けられて頭頂部を取り巻くヘッドベルトとから成る骨導ヘッドセットが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、従来の骨伝導マイク・スピーカ通話装置では、特に骨導マイクロホンとして加速度ピックアップマイクが使用されており、当該マイクは微小な振動を捕らえて変換できるものの、これを増幅するDSP装置が別途必要となり、更にはこのような加速度ピックアップマイクでは周囲の雑音も明瞭に捉えてしまい、ノイズカットなどの処理も必要となる。
【0004】
一方、このような骨伝導マイク・スピーカ通話装置は、産業現場、運送業、警察、警護などの特殊職業でこのような携帯型通話機を用いる際、使用者がハンズフリーで通話を行うために、ヘッドセットを使用し、携帯型通話機本体は腰などに固定し、PTTボタンをヘッドセットと携帯型通話機本体を接続するケーブル上に設けて操作するものが広く用いられているが、このケーブルの存在は、作業の邪魔になったり、ケーブル断線による故障、腕や体に絡まることで作業が危険になるといった問題があり、ケーブルレスが求められている。
【0005】
しかしながら、従来の骨伝導マイク・スピーカ通話装置では、上述の通りノイズの問題やDSP装置が別途必要であることなどから、通話装置自体の軽量化を図るためには通話機本体とケーブル接続し、通話装置にできるだけ別途の装置を付加しないことが必要である。したがって、ケーブルレスの通話装置としては、従来、骨伝導スピーカは備えつつ、マイク部は通常のマイクロフォンを備えたものが主流であった。しかし、このような通常のマイクロフォンでは大雨などに対応できる防水、防滴の観点から課題があった。従来から骨伝導スピーカとして使用されている骨伝導ドライバーとして、ヨークの中央磁極にボイスコイルを装着し、ヨークの両側の短尺辺側端部上に前記マグネットを配置し、前記マグネット配置軸上の前記各マグネットの外側に振動板固定部を配置した骨伝導スピーカ(例えば、特許文献2参照。)をマイクとして使用することも考えられるが変換効率が十分でなくマイクとしては使用されておらず、これよりも更に変換効率が良く、小型で軽量なものが必要である。
【0006】
【特許文献1】特開平11−215581号公報
【特許文献2】特開2006−33787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、周囲の雑音を捉えることなく、骨導音を効率よく捉えて音声データに変換できる骨伝導マイクを有し、これにより別途装置が不要となり、無線機能を付加しても軽量なケーブルレスの通話装置を実現できる骨伝導マイク・スピーカ通話装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述の課題解決のために、使用者の頭部に装着され、通話機本体又はそのリモコン装置側と音声データを送受信する骨伝導マイク・スピーカ通話装置であって、使用者の耳周辺に当接するように配置される一つ又は左右一対の骨伝導ドライバーからなる骨伝導マイク及び骨伝導スピーカと、通話機本体又はそのリモコン装置側との間で音声データを送受信するための近距離無線通信ユニットと、前記通話機本体又はそのリモコン装置側から近距離無線通信ユニットを通じて受信した音声信号を骨伝導スピーカに出力し、骨伝導マイクより受信した音声信号を近距離無線通信ユニットを通じて通話機本体又はそのリモコン装置側に対して送信する音声処理手段とを備え、少なくとも骨伝導マイクとして機能させる骨伝導ドライバーを、略円形の底面を有する凹部が形成された基台と、前記凹部内に収納されるボイスコイルと、前記基台における前記凹部の内壁を構成する固定部に取り付けられ、前記凹部に収納されたボイスコイルの上側に渡設される振動板と、該振動板の上面側の略中央位置に取り付けられたマグネットと、該マグネットの上側に配置される金属製カバーと、該金属製カバーより上側に設けられる蓋体とより構成してなることを特徴とする骨伝導マイク・スピーカ通話装置を構成した。
【0009】
ここで、前記左右一対の骨伝導ドライバーのうち、一方を骨伝導マイク、他方を骨伝導スピーカとして機能させるとともに、前記骨伝導スピーカとして機能させる他方の骨伝導ドライバーを、骨伝導マイクとして機能させる一方の骨伝導ドライバーと同一構造としたものが好ましい。
【0010】
また、或いは前記一つの骨伝導ドライバーを、骨伝導マイク/骨伝導スピーカに切り替えて機能させるものも好ましい。
【0011】
また、骨伝導ドライバーの具体的な構造としては、前記凹部底面の略中央部より上方に突起するポールビスを金属材料を用いて前記基台と一体に設け、該ポールビスの周囲に前記ボイスコイルを配置し、前記凹部の内壁面を収納されるボイスコイルの外周面に略平行な曲面に形成したものが好ましい。
【0012】
更に、前記凹部を挟み互いに対向する位置に一対の前記固定部を設け、前記振動板の両端部を各固定部の上面にそれぞれ固定したものが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
以上にしてなる本願発明によれば、骨伝導ドライバーとして略円形の底面を有する凹部が形成された基台と、前記凹部内に収納されるボイスコイルと、前記基台における前記凹部の内壁を構成する固定部に取り付けられ、前記凹部に収納されたボイスコイルの上側に渡設される振動板と、該振動板の上面側の略中央位置に取り付けられたマグネットと、該マグネットの上側に配置される金属製カバーと、該金属製カバーより上側に設けられる蓋体とより構成し、骨導音を効率よく捉えて音声データに変換できる構造のものを骨伝導マイクとして用いるので、これにより増幅装置やノイズカット装置などの別途装置が不要となり、無線機能を付加して軽量且つ防水機能を備えたケーブルレスの骨伝導マイク・スピーカ通話装置を得ることができる。特にマグネットを振動板上面の中央位置に取り付けたのでマグネットが直接振動し、その磁束変化がダイレクトにボイスコイルに伝わることとなり、またその上部に金属製カバーを設けたので磁束の漏れもなく基台側へ磁束を導く効率のよい磁束回路を形成することができるため、電気信号/振動の変換効率に極めて優れ、骨伝導スピーカとしては勿論、骨伝導マイクとして十分使用できるものとなっている。
【0014】
また、左右一対の骨伝導ドライバーのうち、一方を骨伝導マイク、他方を骨伝導スピーカとして機能させるとともに、前記骨伝導スピーカとして機能させる他方の骨伝導ドライバーを、骨伝導マイクとして機能させる一方の骨伝導ドライバーと同一構造とすれば、部品管理や製造コストを大幅に削減できる。
【0015】
また、一つの骨伝導ドライバーを、骨伝導マイク/骨伝導スピーカに切り替えて機能させたものでは、単信式の通話に十分対応できるとともに、大幅な軽量化、コスト削減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る骨伝導マイク・スピーカ通話装置を用いたハンズフリー通話システムSを示す説明図であり、図1〜10は第1実施形態、図11、12は第2実施形態を示し、図中符号1は骨伝導マイク・スピーカ通話装置、8は携帯型通話機本体、9はPTTリモコン装置をそれぞれ示している。
【0018】
尚、以下のハンズフリー通話システムSでは携帯型の通話機本体を用いた例について説明するが、本発明はこれに限らず、設置型の通話機本体、例えば車載無線機等との間で音声データを送受信するものでも勿論よい。また、近距離無線通信に用いるユニットは、搬送波周波数に免許不要の2.4GHzのISM(Industrial Scientific Medical)帯を使用したものとして、低コストなBluetooth(登録商標)無線ユニットを用いた例を挙げているが、例えば「IrDA」方式の赤外線データ通信モジュールを設けたものなど、使用状況に応じて種々の方式を採用できる。
【0019】
本実施形態に係るハンズフリー通話システムSは、図1に示すように、送受信状態を切り換えて通話する単信式の通話機能を有した携帯型通話機本体8と、該携帯型通話機本体8と近距離無線通信可能であり、PTTボタン91を押下することで送受信状態を切り換えるPTT信号を携帯型通話機本体8に送信するPTTリモコン装置9と、該PTTリモコン装置9とケーブル又は近距離無線通信ユニットを通じて接続される本発明に係る骨伝導マイク・スピーカ通話装置1とを備えている。このハンズフリー通話システムSは、図9に示すように、携帯型通話機本体8を例えばポケットや鞄の中に仕舞ったままでPTTリモコン装置9を体の適宜な箇所に取り付け、PTTボタン操作を行なうことでケーブルが邪魔になることなく通話を行うことが可能である。
【0020】
骨伝導マイク・スピーカ通話装置1は、使用者の頭部に装着され、通話機本体8又はそのリモコン装置9側と音声データを送受信するものであり、図6に示すように、使用者の耳周辺(耳前方の側頭部)に当接するように配置される左右一対の骨伝導ドライバーからなる骨伝導マイク11、骨伝導スピーカ12、PTTリモコン装置9との間で接続可能なBluetooth無線ユニット13、PTTリモコン装置9よりBluetooth無線ユニット13を介して受信した音声信号を骨伝導スピーカ12に出力し、骨伝導マイク11より受信した音声信号をBluetooth無線ユニット13からPTTリモコン装置9に対して送信する音声処理手段としての音声処理部14aを有する制御部14を備えている。骨伝導マイク・スピーカ通話装置1のBluetooth無線ユニット13とPTTリモコン装置9のBluetooth無線ユニット90とは使用前に予めプロファイルによりペアリングされる。
【0021】
本例では、ヘッドバンド15の左右両端部にそれぞれ骨伝導マイク11、骨伝導スピーカ12を設けたヘッドセットタイプを例示しており、上記Bluetooth無線ユニット13及び音声処理部14aを有する制御部14がヘッドバンド15の略中心部に内蔵されている。ただし、これら制御部14等の位置は何処にあってもよく、また耳掛けタイプ、イヤホンタイプ、ヘルメット内蔵タイプなど種々のタイプのものを採用できる。骨伝導マイク11及び骨伝導スピーカ12は、それぞれ同一構造の骨伝導ドライバー10により構成されており、これによりコスト削減を図っている。ただし、特別な構造が要求されない骨伝導スピーカ12については、他の構造の骨伝導ドライバーを用いることも勿論よい。
【0022】
また、図10に示すように、一つの骨伝導ドライバー10のみ設けて、骨伝導マイク11/骨伝導スピーカ12に切り替えて機能させることも好ましい実施例である。この場合、骨伝導ドライバー10一つで二機能を兼用できるので、大幅にコスト削減、軽量化等を図ることが可能となる。また、本例では左右の骨伝導マイク11と骨伝導スピーカ12を切り替えて使用しているが、左右双方の内蔵骨伝導ドライバー10を同時に骨伝導マイク11、骨伝導スピーカ12として切り替えて使用し、左右同時に骨伝導マイク11/骨伝導スピーカ12として切り替えて使用することも可能である。これにより通話をより確実に行うことが可能となる。
【0023】
骨伝導ドライバー10の構造は、具体的には、図3〜5に示すように、略円形の底面20を有する凹部25が形成された基台2と、凹部25内に収納されるボイスコイル3と、基台2における前記凹部25の内壁23を構成する固定部22に取り付けられ、凹部25に収納されたボイスコイル3の上側に渡設される振動板4と、該振動板4の上面側の略中央位置40に取り付けられたマグネット5と、該マグネット5の上側に配置される非磁性体の金属製カバー6と、該金属製カバー6より上側に設けられる蓋体7とより構成されている。基台2の凹部底面20の略中央部には、上方に突起するポールビス21が配置されている。このポールビス21は、基台2と一体に設けられ、該ポールビス21の周囲にボイスコイル3が配置される。また、基台2の前記凹部25を挟んで互いに対向する位置には、一対の固定部22,22が設けられており、固定部22により形成される凹部25の内壁23は、ボイスコイル3を安定的に固定及び支持出来るように、ボイスコイル3の外周面に略平行で、該ボイスコイル3よりも少し大きい半径の曲面に形成されている。
【0024】
振動板4の両端部44,44は、各固定部22の上面にそれぞれ固定されることにより、当該振動板4が前記ポールビス21を収納した凹部25の上側に架設される。固定部22の上面の高さは、ポールビス21の上面高さより少し高く形成されている。したがって、振動板4が固定部22,22間に架設された状態で、振動板4とポールビス21との間に一定の隙間が形成される。このように、基台2はボイスコイル3などを固定及び支持する役割以外にもヨークの役割をすることによって、いくつかの構成部品を一つに簡略化される効果がある。このようにポールビス21にヨークの役割を兼用させるとともに、製造工程及び製造費用を最小化するために、ポールビス21は、金属材料を用いて基台2とともに一体成形されることが望ましい。具体的には、ムクの金属材料を切削加工したり、鋳造加工することにより成形できる。
【0025】
ボイスコイル3は、基台2のポールビス21に結合される。ここで、ボイスコイル3の厚さ(高さ)は、ポールビス21の高さとほぼ同じ寸法に設定されている。したがって、ボイスコイル3及びポールビス21の上面と振動板4との間に一定の隙間が形成されている。また、ボイスコイル3のコイル線の両端部は、底面20より基台2の下面にまで延長され、図1に示すように、絶縁体26が介在されて設置された端子27に電気的に接続されている。この端子27を通じてボイスコイル3にサウンド信号が入力される。
【0026】
振動板4は、略平板状の部材より構成され、凹部底面20の形状と類似している略円形の振動領域4a及び固定部22の上面形状と類似する形状の固定領域4bを有しており、ボイスコイル3の上側に渡設され、該ボイスコイル3の離脱を防止する同時に所定の周波数で振動する。本例では、振動板4の固定領域4bに穿設された通孔42、42を貫通した取付ネジ43,43を、固定部22,22の上面に形成された螺孔24,24にそれぞれ固定することにより、該固定部22,22の上面間に架設されている。
【0027】
振動板4における振動領域4aの周縁部、すなわちマグネット5が取り付けられる中央位置40の周囲には、上下貫通した長穴41が周方向に沿って複数形成されている。このように振動領域4aに少なくとも一つの長穴41が形成されることにより、振動板4の振動効率又は骨伝導効率が向上する。本例では、長穴41が縦横対称の位置に計4本形成されているが、4本未満又は5本以上でも可能であり、その配列も三角形の各辺の位置、四角の各辺の位置、五角形の各辺の位置、六角形の各辺の位置、円形に沿った位置など、多様な形態が可能である。
【0028】
マグネット5は、直方体であり、振動板4上面の振動領域4aの略中央位置40に固定され、ボイスコイル3と相互作用(引力又は斥力)する。このマグネット5は、長穴41,・・・で囲まれた内側の振動領域4aに固定されているが、この位置が振動の効率又は骨伝導の効率面で好適である。また、このマグネット5は前記の振動の効率又は骨伝導の効率を高めるために、ボイスコイル3の中心又はポールビス21の中心と対応される領域に形成されるのが望ましい。従って、従来はマグネットを多数が具備する必要があったが、本発明では一つだけで足りる。勿論、マグネット5の個数は何ら限定されず、2つ以上を用いることも可能である。また、形状についても、直方体以外に、三角柱、円柱、五角柱、その他の種々なる形状が採用できる。
【0029】
一方、マグネット5の磁力線がボイスコイル3に向かうことが出来るように、マグネット5の上面から側面の少なくとも一部までを覆う金属製カバー6が設けられている。金属製カバー6は、特に、前記マグネット5の磁力線がボイスコイル3側に集中できるように前記カバー6は磁力線が貫通出来ない金属材質、たとえば非磁性体材料より構成されており、前記マグネット5に被さる被覆部62と両側方に伸びる固定片63、63とより構成されている。蓋体7の内面のマグネット5に対応する位置には、金属製カバー6の被覆部62をマグネット5とともに受け入れる凹陥部70が設けられており、前記固定片63に穿設された通孔60を貫通した取付ネジ61を、蓋体7の内面側に形成した螺孔71に取り付けることにより当該内面側に固定される。
【0030】
以上の構造を備えた本実施形態に係る骨伝導ドライバー10は、骨伝導マイク11として、次のように作動する。使用者が発声すると、頭蓋骨を通じて頭皮に振動が伝達され、骨伝導マイク11内の骨伝導ドライバー10の蓋体7に振動が伝わる。この振動が、金属製カバー6及びマグネット5に伝達され、振動板4が振動する。振動板4には多数の長穴41,・・・が形成されており、マグネット5が大きな幅で上下に振動することとなる。これにより、ボイスコイル3には当該マグネットの振動に応じた比較的明確な電流信号が発生し、音声データとして取り出されることとなる。
【0031】
また、骨伝導スピーカ12としては、次のように作動する。先ず、所定の音声信号に該当される電流信号がボイスコイル3へ伝達されると、ボイスコイル3が、マグネット5、ポールビス21、凹部内壁23との磁力又は引力によって、所定の周波数で振動する。ボイスコイル3の上部に位置する振動板4は、ボイスコイル3から固定部22を介して伝わる振動によって共に振動される。この際、振動板4には多数の長穴41,・・・が形成されているため、ボイスコイル3に比べてより大きな増幅で振動することとなる。この振動板4の振動現象は、その上に装着されたマグネット5及び金属製カバー6に伝達され、蓋体7を介して人体の頭皮に伝達される。それにより、前記人体の頭蓋骨内の鼓膜や耳小骨に異常のある難聴者でも、蝸牛や聴覚神経が正常であれば確実に音を聞くことが出来る。
【0032】
本例では、骨伝導マイク11、骨伝導スピーカ12として骨伝導ドライバー10がヘッドバンド15の両端に設けられるケース11a,12a内に、ケース内面に当接した状態で内蔵されているが、後述する図11に示す第2実施形態と同様に、蓋体7をケース11a,12aの筐体として振動板4を直接ケース11a,12a内面に固定するようにしてもよい。
【0033】
携帯型通話機本体8は、従来から公知のトランシーバーの構成であり、図7に示すように、アンテナ80、送受信切換スイッチ81、無線通信回路82、制御部83、本体側のPTTスイッチ(PTTボタン84)、および本体側のスピーカ/マイク85を備え、近距離無線通信ユニットとして、Bluetooth無線ユニット86が外部からプラグを介してケーブル接続されるBluetoothアダプタ87に設けられている。制御部83は、メモリに記憶したプログラムで各種処理を行なうマイコンよりなり、PTT信号を受けて送受信の切換えを行う送受信切換処理部83aと、無線通信回路より受信した音声信号をスピーカ/マイク85のスピーカに出力し、スピーカ/マイク85のマイクより受信した音声信号を無線通信回路82に出力する音声処理部83bとを少なくとも備えている。
【0034】
携帯型通話機本体8としては、従来から公知のポータブル無線機やトランシーバー以外に、PTT機能を備えたものであれば、携帯電話やPHS(Personal Handyphone System:簡易型携帯電話)、PDA(Personal Digital Assistant:携帯情報端末)、ノートパソコン、ディジタルカメラなど、種々のモバイル端末を利用できる。
【0035】
PTTリモコン装置9は、図8に示すように、携帯型通話機本体8との間で接続可能なbluetooth無線ユニット90、携帯型通話機本体8の送受信状態を切り換えるPTT信号を出力するPTTスイッチ(PTTボタン91)および制御部92を備え、制御部92は同じくメモリに記憶したプログラムで各種処理を行なうマイコンよりなり、PTTボタン91の操作により出力されたPTT信号をBluetooth無線ユニット90より携帯型通話機本体8に無線送信するPTT信号送信処理部92aと、携帯型通話機本体8との間で、同じくBluetooth無線ユニット90を通じて音声データを送受信する第1の音声処理部92bと、骨伝導マイク・スピーカ通話装置1との間で、音声データを送受信する第2の音声処理部92cとを少なくとも備えている。PTTリモコン装置9のBluetooth無線ユニット90と携帯型通話機本体8のBluetooth無線ユニット86とは使用前に予めプロファイル又はプロファイルよりも確実なシリアルナンバーによりペアリングされる。
【0036】
そして、PTTリモコン装置9でPTTボタン91を押すと、PTT信号送信処理部92aによりPTT信号がBluetooth無線ユニット90から携帯型通話機本体8に送信され、携帯型通話機本体8はBluetooth無線ユニット86を介してPTT信号を受け、送受信切換処理部83aが送受信切換スイッチ81の送受信切換えを行う。この状態で使用者が骨伝導マイク・スピーカ通話装置1から話しかけると、PTTリモコン装置9の第1の音声処理部92bが、第2の音声処理部92cで骨伝導マイク・スピーカ通話装置1から受けた音声データを携帯型通話機本体8に送信し、音声処理部83bが無線通信回路82に出力した音声が送信側に切り換わっている送受信切換スイッチ81からアンテナ80より送信される。
【0037】
PTTボタン91を離した状態では、送受信切換スイッチ81が受信状態に維持されており、受信のみ可能な状態となっている。他の通話機から音声を受信すると、音声処理部83bは当該音声データをBluetooth無線ユニット86を介してPTTリモコン装置9に送信し、PTTリモコン装置9の第1の音声処理部92bがこれを受信し、第2の音声処理部92cにより骨伝導マイク・スピーカ通話装置1に向けて当該音声データを送信し、使用者は骨伝導マイク・スピーカ通話装置1から音声を聞くことができる。
【0038】
以上の本実施形態では、PTTリモコン装置9に第1の音声処理部92bと第2の音声処理部92cを備えさせ、PTTリモコン装置9を音声データの中継器として機能させているが、骨伝導マイク・スピーカ通話装置1と携帯型通話機本体8との間で直接、音声データを送受信するように構成することも勿論可能である。
【0039】
次に、図11、12に基づき、骨伝導ドライバー10の第2実施形態を説明する。
【0040】
本実施形態の骨伝導ドライバー10は、振動板4を平面視略十字型に構成し、中心部を挟んで対向する一方の端部44、44同士がそれぞれ前記固定部22の上面に固定され、これに直交する方向の他方の端部45、45間に該方向に延びる長溝46を設けるとともに、該長溝46内に隙間を介して板部材47を嵌め込み、当該両端部45、45上に固定することにより架設して構成し、該板部材47上面の中央位置にマグネット5が配置され、マグネット5を間に挟み込んだ状態で前記振動板4の板部材47が取付ネジ72、72により蓋体7下面に固定される。これにより端部44、44で両端支持された振動板4が振動すると、中心部で直交する板部材47が上下に振動し、これが蓋体7に伝達されることとなる。
【0041】
マグネット5と蓋体7との間には、前記振動板4の一方の端部44、44同士の方向に長い磁性体の金属製カバーとして板体50が更に挟持されており、マグネット5から上方に出る磁気はこの板体50を通じて端部44側に導かれ、そこから下方の基台2の固定部22に導かれる効率のよい磁気回路が形成され、磁気漏れ防止、変換効率の向上に寄与している。また、本例では、蓋体7がケース11a/12aを兼ねており、ケース11a,12aは取付ネジ74で連結される分割ケース72、73で構成され、分割ケース73が使用者の側頭部に当接することなる。これにより振動効率を高めることができる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【実施例】
【0043】
上記のように構成された本発明の実施例1、2の骨伝導ドライバー10から発生される磁束と、他の構造の比較例1、2の骨伝導ドライバーからの磁束を測定した結果について、図13、14にそれぞれ示す。
【0044】
図13(a)は、実施例1として、図2〜5に示した第1実施形態の骨伝導ドライバ−、図13(b)は、実施例2として、図11、12に示した第2実施形態の骨伝導ドライバー、図14(a)は、比較例1として、第2実施形態の骨伝導ドライバーから金属製カバーとしての板体50を省略した骨伝導ドライバー、図14(b)は、比較例2として、特開2006−33787号公報に記載の骨伝導ドライバーであり、それぞれの磁気力の露出測定の結果を示している。各測定結果は、図中左側の半円中にドットが少ないほど磁気力が外部へ露出される量が少ないことを示している。また、図中右側の半円に磁力線の様子を示している。
【0045】
図13、14から分かるように、実施例1では外部へ露出される磁気力が他と比べて著しく少なく、磁力線もほぼ収束している。よって、人体に及ぼす影響も減少されることが分かる。比較例1ではマグネット上方向への磁気力の漏れが多く、効率が悪いことが分かる。また、実施例2では板体50を載せた分だけ漏れ量が減り、下方のヨーク側へ向かうように補完されており、漏れは少々あるが、効率のよい磁気回路が維持されている。比較例2でも外方への漏れがあった。このように、本発明に係る実施例1、2では、金属製カバーの存在により漏れが少なく、磁気が基台側に収束され、効率のよい磁気回路が形成されており、骨伝導マイクとして十分使用できるものであることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1実施形態に係るハンズフリー通話システムを示す説明図。
【図2】同じく第1実施形態の骨伝導ドライバーを示す斜視図。
【図3】同じく骨伝導ドライバーを示す断面図。
【図4】同じく骨伝導ドライバーを示す分解断面図。
【図5】同じく骨伝導ドライバーを示す分解斜視図。
【図6】同じく第1実施形態の骨伝導マイク・スピーカ通話装置の構成を示すブロック図。
【図7】同じく携帯型通話機本体の構成を示すブロック図。
【図8】同じくPTTリモコン装置の構成を示すブロック図。
【図9】同じくハンズフリー通話システムの使用状態を示す説明図。
【図10】骨伝導マイク・スピーカ通話装置の変形例を示す説明図。
【図11】第2実施形態の骨伝導ドライバーを示す分解斜視図。
【図12】(a)は同じく振動板の平面図、(b)は断面図。
【図13】(a)は実施例1、(b)は実施例2の磁気力測定結果
【図14】(a)は比較例1、(b)は比較例2の磁気力測定結果
【符号の説明】
【0047】
1 骨伝導マイク・スピーカ通話装置 2 基台
3 ボイスコイル 4 振動板
4a 振動領域 4b 固定領域
5 マグネット 6 金属製カバー
7 蓋体 8 通話機本体
9 リモコン装置 10 骨伝導ドライバー
11a,12a ケース 11 骨伝導マイク
12 骨伝導スピーカ 13 無線ユニット
14 制御部 14a 音声処理部
15 ヘッドバンド 20 底面
21 ポールビス 22 固定部
23 内壁 24 螺孔
25 凹部 26 絶縁体
27 端子 40 中央位置
41 長穴 42 通孔
43 取付ネジ 44 端部
45 端部 46 長溝
47 板部材 50 板体
60 通孔 61 取付ネジ
62 被覆部 63 固定片
70 凹陥部 71 螺孔
72 取付ネジ 72、73 分割ケース
74 取付ネジ 80 アンテナ
81 送受信切換スイッチ 82 無線通信回路
83 制御部 83a 送受信切換処理部
83b 音声処理部 84 ボタン
85 マイク 86 無線ユニット
87 アダプタ 90 無線ユニット
91 ボタン 92 制御部
92a 信号送信処理部 92b 音声処理部
92c 音声処理部 S ハンズフリー通話システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の頭部に装着され、通話機本体又はそのリモコン装置側と音声データを送受信する骨伝導マイク・スピーカ通話装置であって、
使用者の耳周辺に当接するように配置される一つ又は左右一対の骨伝導ドライバーからなる骨伝導マイク及び骨伝導スピーカと、通話機本体又はそのリモコン装置側との間で音声データを送受信するための近距離無線通信ユニットと、前記通話機本体又はそのリモコン装置側から近距離無線通信ユニットを通じて受信した音声信号を骨伝導スピーカに出力し、骨伝導マイクより受信した音声信号を近距離無線通信ユニットを通じて通話機本体又はそのリモコン装置側に対して送信する音声処理手段とを備え、
少なくとも前記骨伝導マイクとして機能させる骨伝導ドライバーを、略円形の底面を有する凹部が形成された基台と、前記凹部内に収納されるボイスコイルと、前記基台における前記凹部の内壁を構成する固定部に取り付けられ、前記凹部に収納されたボイスコイルの上側に渡設される振動板と、該振動板の上面側の略中央位置に取り付けられたマグネットと、該マグネットの上側に配置される金属製カバーと、該金属製カバーより上側に設けられる蓋体とより構成してなることを特徴とする骨伝導マイク・スピーカ通話装置。
【請求項2】
前記左右一対の骨伝導ドライバーのうち、一方を骨伝導マイク、他方を骨伝導スピーカとして機能させるとともに、前記骨伝導スピーカとして機能させる他方の骨伝導ドライバーを、骨伝導マイクとして機能させる一方の骨伝導ドライバーと同一構造としてなる請求項1記載の骨伝導マイク・スピーカ通話装置。
【請求項3】
前記一つの骨伝導ドライバーを、骨伝導マイク/骨伝導スピーカに切り替えて機能させてなる請求項1記載の骨伝導マイク・スピーカ通話装置。
【請求項4】
前記凹部底面の略中央部より上方に突起するポールビスを金属材料を用いて前記基台と一体に設け、該ポールビスの周囲に前記ボイスコイルを配置し、前記凹部の内壁面を収納されるボイスコイルの外周面に略平行な曲面に形成してなる請求項1〜3の何れか1項に記載の骨伝導マイク・スピーカ通話装置。
【請求項5】
前記凹部を挟み互いに対向する位置に一対の前記固定部を設け、前記振動板の両端部を各固定部の上面にそれぞれ固定してなる請求項1〜4の何れか1項に記載の骨伝導マイク・スピーカ通話装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2010−10945(P2010−10945A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166323(P2008−166323)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(505408859)コスモギア株式会社 (10)
【Fターム(参考)】