説明

骨材貯留装置及び骨材貯留装置内の骨材の表面水低減方法

【課題】骨材の十分な水切りを短時間で確実に行える骨材貯留装置等を提供する。
【解決手段】投入された骨材を貯留するとともに底部に骨材を自然落下で排出させる排出ホッパを有した骨材貯留部2と、骨材貯留部内の水分を吸引して排出する排水手段3とを備える。排水手段は、骨材貯留部に貯留された骨材間に設置された管状の水取込部(ウェルポイント31)と、吸引ポンプ35と、水取込部と吸引ポンプとを繋ぐ管とにより構成される。水取込部は、骨材貯留部内において骨材が排出ホッパを介して落下しない領域(デッドゾーン45)に設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの製造に用いる骨材を貯留するとともに骨材の水切りを行う骨材貯留装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、コンクリートダム建設現場においては、山から切り出した岩や石を割ってダム建設に使用するコンクリートの骨材を作り、骨材の不純物を除去するために、骨材を水洗いしてから使用する。このような骨材は、十数パーセントの表面水を含んでいるため、十分に水切りする必要がある。
そこで、コンクリートの製造に用いる骨材を貯留する骨材貯留装置において、骨材の水切りを行うために、貯留部の底を傾斜面に形成したり(特許文献1等参照)、貯留部の底に水切り用のスリットやシートを設けることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−169491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した骨材貯留装置では、水を自然落下(重力落下)させて排水する構造のため、排水効率が悪く、骨材の十分な水切りを短時間で行えない。
本発明は、骨材の十分な水切りを短時間で確実に行える骨材貯留装置等を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る骨材貯留装置は、投入された骨材を貯留するとともに底部に骨材を自然落下で排出させる排出ホッパを有した骨材貯留部と、骨材貯留部内の水分を吸引して排出する排水手段とを備えたので、骨材貯留部内の水分を強制排出でき、骨材の十分な水切りを短時間で確実に行える。
排水手段は、骨材貯留部に貯留された骨材間に設置された管状の水取込部と、吸引ポンプと、水取込部と吸引ポンプとを繋ぐ管とにより構成されたので、骨材貯留部内の水分を簡単に強制排出できる。
水取込部は、骨材貯留部内において骨材が排出ホッパを介して落下しない領域に設置されたので、骨材貯留部内の水分を効率的に排出できる。
水取込部がウェルポイントにより構成されたので、骨材貯留部内に水取込部を設置する作業を容易に行えるとともに、骨材貯留部内の骨材の表面水を効率的に低減できる。
本発明に係る骨材貯留装置内の骨材の表面水低減方法は、骨材を貯留した骨材貯留部の壁に貫通孔を形成し、当該貫通孔を介して骨材貯留部内に管状の水取込部を挿入していく際に、水取込部の先端側開口から骨材に水を噴射させながら水取込部を押し込むことにより水取込部を骨材貯留部内に設置した後、水取込部を介して骨材貯留部内の水分を吸引して骨材貯留部外に排出するので、骨材貯留部内に水取込部を設置する作業を容易に行えるとともに、骨材貯留部内の骨材の表面水を効率的に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】骨材貯留装置の断面図(実施形態1)。
【図2】ウェルポイントの構造及び動作の説明図(実施形態1)。
【図3】骨材貯留部を4基備えた場合の骨材貯留装置の一例を示す図(実施形態2)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
骨材貯留装置1は、骨材貯留部2と骨材貯留部2内の水分を強制排水する排水手段3とを備える。
骨材貯留装置1は、例えば、コンクリートダム建設現場において、砂利等の骨材10を貯蔵するために設けられるものである。
骨材貯留部2は、例えば、金属板を組み合わせて円筒形の容器状に構成され、例えば地盤11上に設置される。
骨材貯留部2の上部には骨材投入口2tを備えるとともに、この骨材投入口2tを開閉する開閉扉2sを備える。
骨材貯留部2の底部2aには、骨材貯留部2に貯留された骨材10を自然落下で排出させる排出部4が設けられる。
排出部4は、排出ホッパ5と、排出ホッパ5の下端開口6を開閉する開閉体7と、この開閉体7を開閉駆動する駆動部8とを備える。そして、図外の制御装置から駆動部8に開閉信号が送信されることによって、駆動部8が開閉体7を開閉する。
排出ホッパ5は、底側が開口した円錐形状の筐体の円錐頂点側を開口して当該頂点開口を下に向けて頂点開口が下端開口6となるように設置されることによって、骨材10を自然落下で排出させる構成である。
排出ホッパ5の下端開口6側の下方には地下空間12が形成され、排出ホッパ5を介して地下空間12に搬出された骨材10が、地下空間12と図外のコンクリート製造部とを繋ぐ搬送路となる図外のコンベヤ装置によって、地下空間12からコンクリート製造部に搬送される。
即ち、骨材貯留装置1は、投入された骨材10を貯留するとともに底部2aに骨材10を自然落下で排出させる排出ホッパ5を有した骨材貯留部2と、骨材貯留部2内の水分を吸引して排出する排水手段3とを備える。
【0008】
排水手段3としては、例えば、ウェルポイント排水装置30を用いる。
ウェルポイント排水装置30は、骨材貯留部2の壁2bを構成する金属板に形成された貫通孔2cを介して骨材貯留部2内の骨材10間に設置される管状の水取込部の一例としてのウェルポイント31と、吸水管(以下、ライザーパイプという)32と、接続管(以下、スイングジョイントという)33と、骨材貯留部の周囲を取り囲むように地盤11上に設置される集水管(以下、ヘッダーパイプという)34と、ヘッダーパイプ34に接続された排水機構としての吸引ポンプ35とを備える。即ち、ウェルポイント31と吸引ポンプ35とが、ライザーパイプ32;スイングジョイント33;ヘッダーパイプ34などからなる管により接続されるので、吸引ポンプ35の駆動により、骨材貯留部2内の水分を簡単に強制排出できるようになる。
【0009】
図2に示すように、ウェルポイント31は、管の内外に貫通する貫通孔(以下、吸引孔という)36を周面に備えた両端開口の内側管(以下、インフローパイプという)37と、内側管の一端に接続されたノズル38と、ノズル38の後端に位置するインフローパイプ37の外周面を覆うように設けられて骨材の流入を防ぐ網(以下、スクリーンという)39とを備えた構成である。尚、上記インフローパイプ37とスクリーン39とによりストレーナ部が構成される。
インフローパイプ37の他端にライザーパイプ32の一端がカップリング40を介して接続され、ライザーパイプ32の他端とヘッダーパイプ34とがスイングジョイント33を介して連通可能に繋がれる。ノズル38は、先端に水噴射孔41を備え、内部にはインフローパイプ37の一端開口42を開閉するボールバルブ43とを備える。
【0010】
図2(a)に示すように、ウェルポイント31を骨材貯留部2内に設置する際には、骨材10を貯留した骨材貯留部2の壁に貫通孔2cを形成し、ライザーパイプ32の一端にウェルポイント31を接続し、ウェルポイント31のノズル38側から骨材貯留部2の壁の貫通孔2cを介して骨材貯留部2内にウェルポイント31を挿入していく。この際、ライザーパイプ32の他端に、ウォータジェット装置44を接続して、ウェルポイント31のノズル38の水噴射孔41から骨材10に高圧水を噴射させながらウェルポイント31を押し込むことによりウェルポイント31を骨材貯留部2内に設置する。この際、ノズル38内のボールバルブ43は水圧によってインフローパイプ37の一端開口42を開く方向に移動する。よって、高圧水がインフローパイプ37の一端開口42、水噴射孔41を経由してウェルポイント31の先端から噴射されるとともに、吸引孔36を介してウェルポイント31の周面からも噴射される。これにより、ウェルポイント31を骨材貯留部2内に設置する際に、ウェルポイント31を骨材貯留部2内で進行させる際の抵抗が少なくなるので、ウェルポイント31を骨材貯留部2内の所望の位置に簡単容易に設置できるようになる。即ち、骨材貯留部2内に貯留された骨材10に高圧水を噴射して骨材10を掻き分けながらウェルポイント31を押し込むことによりウェルポイント31のノズル38を後述するデッドゾーンに設置する。
【0011】
ウェルポイント31は、例えば、骨材貯留部2内において骨材が排出部4より落下しない領域(以下、デッドゾーンという)45に設置する。
尚、図1に示すように、デッドゾーン45とは、骨材貯留部2内において排出ホッパ5の円錐面と連続して延長することにより排出ホッパ5の円錐面を含む1つの円錐面を形成するような想定の円錐面の位置46よりも下側の領域のことを言う。
好ましくは、デッドゾーン45における骨材貯留部2の底面2a及び骨材貯留部2の円筒の中心線2d側に近い位置にウェルポイント31を設置する。
また、図1では、ウェルポイント31を上下方向に傾斜させて設置した例を図示しているが、水平に延長するようにウェルポイント31を設置しても良い。また、ウェルポイント31の水噴射孔41側である先端が骨材貯留部2の底面2aに接触するようにウェルポイント31を設置しても良い。さらに、水平に延長するとともに骨材貯留部2の底面2aに接触するようにウェルポイント31を設置しても良い。
【0012】
複数のウェルポイント31を骨材貯留部2内のデッドゾーン45に設置した後に、貫通孔2cを介して骨材貯留部2の外の突出する各ライザーパイプ32の他端とヘッダーパイプ34とをそれぞれ個別にスイングジョイント33により連通可能に繋ぎ、ヘッダーパイプ34と吸引ポンプ35の吸込口とを接続管35aで接続し、吸引ポンプ35の吐出口と排出管35bとを接続する。
そして、吸引ポンプ35を駆動させることにより、デッドゾーン45及びウェルポイント31を介して骨材貯留部2内の水分を骨材貯留部2外に強制排出することができる。この際、図2(b)に示すように、吸引ポンプ35の駆動により、インフローパイプ37内が負圧になり、ノズル38内のボールバルブ43は負圧によってインフローパイプ37の一端開口42を閉じる方向に移動する。そして、吸引ポンプ35による負圧によって、スクリーン39、吸引孔36を介してインフローパイプ37内に水分が取り込まれ、この水分が吸引ポンプ35を介して骨材貯留部2外に強制排出される。
【0013】
実施形態1によれば、骨材貯留部2内に骨材10が貯留されている状態でウェルポイント31を骨材貯留部2内の所望の位置に容易に設置できるので、コンクリート製造作業を中止することなく、骨材貯留部2内の水分を強制排水できるので、骨材10の十分な水切りを短時間で確実に行え、骨材10の表面水率を低減させることができるので、安定した品質のコンクリートを安定に製造できるようになる。
尚、一定の強度を維持できるコンクリートの水セメント比は決まっているため、骨材10の表面水率が大きいと、混練する際の加水量が少なくなってうまく混練できなくなったり、コンクリート品質のばらつきが大きくなったりするが、実施形態1によれば、骨材10の表面水率を小さくできるため、このような問題を解消できる。即ち、一定の強度を満たす安定した品質のコンクリートを安定かつ容易に製造できるようになる。
また、デッドゾーン45における骨材貯留部2の底面2a及び骨材貯留部2の円筒の中心線2d側に近い位置にウェルポイント31を設置したので、デッドゾーン45には、骨材10からの水が落下してくるので、骨材貯留部2内の骨材10の水切りを短時間で効率的に行えるようになる。
また、骨材10の水切り期間(放置期間)を十分に取れる場合には、吸引ポンプ35の駆動を停止しておけばよいので、骨材10の使用頻度に合わせた運転が可能となり、運転コストも低減できる。
【0014】
実施形態2
骨材貯留部2が複数基設置されている現場においては、各骨材貯留部2内に複数のウェルポイント31を上述したように設置し、1機の吸引ポンプ35で複数基の骨材貯留部2内の水分の強制排出を行うようにする。
例えば、図3に示すように、4基の骨材貯留部2を備える場合においては、吸引ポンプ35による吸引路をゲートバルブで調整できるように、ヘッダーパイプ34を設ける。図3において、ヘッダーパイプ34の3分岐部分にゲートバルブ50;51を設け、ヘッダーパイプ34の末端にはエンドキャップ53を取り付けておく。図3では、ゲートバルブ50を開き、ゲートバルブ51を閉じた後に、吸引ポンプ35を駆動することにより、図3の右側の2基の骨材貯留部2内の水分を2基の骨材貯留部2を取り囲むヘッダーパイプ34による吸引路62経由で強制排出できる。また、ゲートバルブ51を開き、ゲートバルブ50を閉じた後に、吸引ポンプ35を駆動することにより、図3の左側の2基の骨材貯留部2内の水分を2基の骨材貯留部2を取り囲むヘッダーパイプ34による吸引路63経由で強制排出できる。
【0015】
実施形態2によれば、ヘッダーパイプ34の配置、ゲートバルブの配置によって、1機の吸引ポンプ35で、複数基の骨材貯留部2内の水分の強制排出を行うことができるようになる。
【0016】
尚、複数の吸引ポンプ35を用いてもよい。
また、例えば、図3に示すように、吸引ポンプ35の吐出口に接続された排出管35bの下流側において吸引ポンプ35の脈動の影響を受けない位置に流量計35cを設ける。この場合、骨材を骨材貯留部2に投入する前に事前に当該骨材の表面水率を測定しておくとともに、流量計35cで排水量を測定することにより、骨材貯留部2中の骨材の表面水率を推定できる。よって、この推定した表面水率に基づいてコンクリート製造時における適切な加水量を求めることができるので、品質の良いコンクリートを製造することができる。
【0017】
尚、上記では、骨材貯留部2内に貯留された骨材10間に設置する水取込部としてウェルポイント31を用いたが、骨材貯留部2内に貯留された骨材10間に設置する水取込部として単なる管を用いてよい。
【符号の説明】
【0018】
1 骨材貯留装置、2 骨材貯留部、2a 底部、3 排水手段、5 排出ホッパ、
31 ウェルポイント(水取込部)、35 吸引ポンプ、45 デッドゾーン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入された骨材を貯留するとともに底部に骨材を自然落下で排出させる排出ホッパを有した骨材貯留部と、骨材貯留部内の水分を吸引して排出する排水手段とを備えたことを特徴とする骨材貯留装置。
【請求項2】
排水手段は、骨材貯留部に貯留された骨材間に設置された管状の水取込部と、吸引ポンプと、水取込部と吸引ポンプとを繋ぐ管とにより構成されたことを特徴とする請求項1に記載の骨材貯留装置。
【請求項3】
水取込部は、骨材貯留部内において骨材が排出ホッパを介して落下しない領域に設置されたことを特徴とする請求項2に記載の骨材貯留装置。
【請求項4】
水取込部がウェルポイントにより構成されたことを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれか一項に記載の骨材貯留装置。
【請求項5】
骨材を貯留した骨材貯留部の壁に貫通孔を形成し、当該貫通孔を介して骨材貯留部内に管状の水取込部を挿入していく際に、水取込部の先端側開口から骨材に水を噴射させながら水取込部を押し込むことにより水取込部を骨材貯留部内に設置した後、水取込部を介して骨材貯留部内の水分を吸引して骨材貯留部外に排出することを特徴とする骨材貯留装置内の骨材の表面水低減方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−20838(P2012−20838A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160019(P2010−160019)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】