説明

骨格筋にエネルギーを供給し、心臓脈管を保護する栄養補助食品

エネルギーを供給し、骨格筋を増強し、長期の身体活動を維持する骨格筋の能力を促進する栄養補助食品であって、プロピオニル-L-カルニチンまたはその塩の1つ、コエンザイムQ10、ニコチンアミド、リボフラビン、パントテン酸および要すればアミノ酸やクレアチンなどの他の成分を含有する、栄養補助食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に激しくかつ長期に行われ得る身体活動および/またはレクリエーション活動に従事する対象の骨格筋および心筋の適応を促進することを特に目的とするエネルギー供給栄養補助食品に関する。
【背景技術】
【0002】
プロまたはアマチュアに関わらずスポーツ活動に従事するものは、激しい身体活動を長期間維持する能力への骨格筋の最大限の適応を、可能な限り達成し、できるだけ長く維持することを望む。
【0003】
最適なフィジカルフィットネスを追求すると、薬物、特にステロイドの不適切な使用を好んで行う可能性がある。そのような薬物は、タンパク質合成を促進し、結果として筋肉量の増大をトレーニングや特別食により達成できる程度を上回るまで高め得ることはよく知られている。しかしながら、そのような薬物の使用は、確実に健康を害するとともに、プロスポーツにおいて行うと違法である。
【0004】
従って、上述の目的を達成できる唯一の方法は、適切な程よい補助食品によりバックアップしながら長期トレーニングに従事することにあることは明らかである。
【0005】
よって、多かれ少なかれ近年、プロまたはアマチュアレベルに関わらず激しい身体活動に従事する個人の食事を補強することを目的とする様々な栄養補助食品が提案されている。
【0006】
これらの補助食品の大多数は、主にアミノ酸などの、タンパク質合成のための広範な栄養素を必要とする骨格筋の代謝に特に注意を向けている。実際に、ほとんど全てのアミノ酸は、必須または非必須に関わらず、そのような合成のために筋肉細胞に必要な基質であるので、様々な重量比で他の活性成分および栄養素と組み合わせたアミノ酸混合物を含有する栄養補助食品がここしばらくは市販されている(例えば米国特許第4,687,782号および5, 292, 538号明細書を参照のこと)。
【0007】
一方、他の栄養補助食品においては、むしろ、エネルギーの産生、よってATPの産生に注意が集中している。従って、これらの補助食品を特徴付ける成分は、主にコエンザイムQ10およびクレアチンである。
【0008】
コエンザイムQ10は、ミトコンドリア呼吸鎖に沿った電子輸送において基本的な役割を担っており、ATP産生に必要なエネルギー変換に不可欠である。
【0009】
一部は肝臓および腎臓において生合成され、一部は食品と共に部分的に取り込まれるクレアチンの生理学的機能もまた、筋肉のみならず脳、肝臓および腎臓におけるエネルギー項(energy term)に非常に重要であり、クレアチンは可逆的にATPのリン酸基を取得し、エネルギーに富むリン酸ラジカルを蓄える役割を持つ。
【0010】
ATPは非常に低い限度以上は組織に蓄積できないという事情から、この反応は重要である。その供給を確実にするのは、ATPよりも5倍ほど多い量で組織に存在するクレアチンリン酸である。実際に、穏やかな運動のみを行った後でさえ、骨格筋においてクレアチンリン酸はATPよりもかなり顕著に減少し、このことは、ATPが脱リン酸化するので、クレアチンリン酸がATPを再リン酸化することを実証している。ATPの代謝産生速度が利用される速度を超えると、クレアチンリン酸が形成される。このように、クレアチンリン酸は、リン酸化代謝経路におけるATP合成速度を上回って必要とされるエネルギーの「緩衝」に適する、即座に利用可能なエネルギーの貯蔵のための構成要素である。
【0011】
短く説明すると、既存の栄養補助食品には、一方では筋肉量を増大する傾向があり、他方では、身体努力の強さによって要求される、即座に「消費可能な」利用可能なエネルギーを作り出すエネルギー貯蔵を成す傾向がある。
【0012】
しかしながら、これらの既知の補助食品により施された筋肉増大およびエネルギー利用増大作用によって、特に、スポーツを職業的に行っているのではないために徹底的な検査を定期的に受けないので、必然的にそれとは気付かずに自らの生理学的耐性の限界を超える身体パフォーマンスを行ってしまう可能性のある対象において、実に深刻な副作用が引き起こされる可能性がある。
【0013】
そのような対象は、栄養補助食品の利用者の大多数を構成し、行っている身体活動への自身の適性を確かめるための、また、それ以上行うと危険な運動の激しさや努力の限界を設定するための健康診断を滅多に受けない、もはや若くないか、場合によっては明らかな高齢者が、そのかなりの割合を占めている。
【0014】
あらゆる種類の身体的またはスポーツ活動により最も強くストレスを受けるのは特に心臓脈管系であるので、心臓脈管器官の状態や完全性に不相応な疲労および身体的ストレスの負荷を持続する対象の性向が、そのようなエネルギー供給補助食品を消費することによりかなり増長され得る状況において、補助食品の利用者が明らかな危険に自らを追いやることはほぼ間違いない。
【0015】
従って、一方で骨格筋にエネルギーを供給し、骨格筋を増強する作用を有し、他方で同時に利用者の心臓脈管器官に保護的な強壮性作用を発揮する、栄養補助食品の必要性が認識されている。
【発明の開示】
【0016】
本発明の目的は、まさにそうした栄養補助食品を提供することである。
【0017】
従って、本発明の対象の1つは、激しい長期の身体努力を要求し得るスポーツおよび/またはレクリエーション活動に従事する個体の、骨格筋を増強しエネルギーを供給する強力な作用を有し、同時に心臓脈管器官に保護的な強壮作用を有し、特徴成分に以下を組み合わせて、または別個に封入して含む、栄養補助食品である:
a) プロピオニルL-カルニチンまたはその薬理学的に許容される塩の1つ;
b) コエンザイムQ10
c) リボフラビン;および
d) パントテン酸。
【0018】
成分(a):(b):(c):(d)の重量比は、10:0.04:0.08:0.4から1:4:4:20の範囲、好ましくは10:2:2:2から1:1:1:5の範囲である。
【0019】
脂質代謝における一般的な「カルニチン」、特にプロピオニルL-カルニチンの活性は、抗アテローム硬化性作用および脂質代謝異常疾患に対する作用としてよく知られている。
【0020】
しかしながら、プロピオニルL-カルニチンは、とりわけミトコンドリアレベルにおいて他の「カルニチン」のように脂肪酸のβ酸化およびATP合成に関係する重要な代謝的役割に関与するにもかかわらず、特定の心臓脈管活性においては他の「カルニチン」とは異なる。
【0021】
プロピオニルL-カルニチンは、「カルニチン」に特徴的な代謝活動の全てに関与するが、他のカルニチンとは異なり、脈管レベル、特に末梢循環レベルにおいてより顕著な活性を有し、従って様々な末梢脈管障害の予防および処置における有効な治療剤として知られている。プロピオニルL-カルニチンはまた、他のカルニチンが作用できない条件において他のカルニチンより優れており、この特性は、プロピオニルL-カルニチンがミトコンドリアレベルにおけるエネルギー利用のプロセスに、より直接的に代謝的に介入すること、および、プロピオニルL-カルニチンに、それ自体で1つの化学物質となるような程に他の類似分子に対して薬効が際立っているプロピオニル基が存在し、他のカルニチンよりも優れた異なる特性を有することに関するものである。
【0022】
プロピオニルL-カルニチンはカルニチンプールの天然成分であり、プロピオニル-補酵素Aから出発してカルニチンアセチル-トランスフェラーゼを用いて合成される。
【0023】
ヒト対象にプロピオニルL-カルニチンを投与すると、プロピオニルL-カルニチンの血漿濃度が増加し、次いでこれによりL-カルニチンの血漿濃度の増加が起こり、その細胞内含量が調節されてそれらの脂肪酸に対する酸化作用およびグルコース利用が増大する。さらに、筋内カルニチントランスフェラーゼは、L-カルニチンよりもプロピオニルL-カルニチンにより強い親和性を有し、その結果プロピオニルL-カルニチンは心筋および骨格筋に対してより高度に特異性を有する。
【0024】
プロピオニルL-カルニチンは、プロピオニル基を輸送して筋肉細胞、特に心筋層の細胞によるこの成分の摂取を増加させる。プロピオン酸はアナプレロティックな基質としてミトコンドリアにより利用され、嫌気条件においてエネルギーを供給することができるので、前記の過程は特に重要であり得る。プロピオン酸はその副作用のために単独で用いることはできないことを覚えておかなければならない。
【0025】
これらの代謝作用だけでなく、プロピオニルL-カルニチンはそのアルカノイル鎖によって、他のカルニチンが不活性の条件において末梢血管拡張および心筋の変力作用を活性化することにより特別な薬理作用を発揮することも想起すべきである。
【0026】
本発明の栄養補助食品は、プロピオニルL-カルニチンに加えて、L-カルニチン、アセチルL-カルニチン、バレリルL-カルニチン、イソバレリルL-カルニチンおよびブチリルL-カルニチンからなる群から選択される「カルニチン」またはそれらの薬理学的に許容される塩をさらに含み得る。
【0027】
L-カルニチンの、またはアルカノイルL-カルニチンの薬理学的に許容される塩の意味するところは、L-カルニチンまたはアルカノイルL-カルニチンと望まない毒性または副作用を生じない酸とのいずれかの塩である。これらの酸は薬理学者および製薬技術の専門家に周知である。
【0028】
そのような塩の例には、以下があるが決してこれらに限定されない:塩化物;臭化物;ヨウ化物;アスパラギン酸塩、酸アスパラギン酸塩;クエン酸塩、酸クエン酸塩;酒石酸塩;リン酸塩、酸リン酸塩;フマル酸塩、酸フマル酸塩;グリセロリン酸塩;グルコースリン酸;乳酸塩;マレイン酸塩、酸マレイン酸塩;粘液酸塩(mucate);オロト酸塩;シュウ酸塩、酸シュウ酸塩;硫酸塩、酸硫酸塩;トリクロロ酢酸塩;トリフルオロ酢酸塩およびメタンスルホン酸塩。
【0029】
FDAに認可された薬理学的に許容される酸のリストはInt. J. Pharm., 33, 1986, 201-217に示されており、後者の出版物は参照のために本明細書に組み込まれる。
【0030】
例えば錠剤、丸剤、カプセルおよび顆粒のような固体投与形態の調製においては、非吸湿性の塩を用いるのが好ましい。プロピオニルL-カルニチンおよび存在する他のいずれかのアルカノイルL-カルニチンの好ましい非吸湿性の塩は、粘液酸塩(またはガラクタル酸塩(galactarate))であり、米国特許第5,952,379号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0031】
上述の固体投与形態において、L-カルニチンも存在する場合はいつでも、このカルニチンの好ましい塩は酸フマル酸塩であり、米国特許第4,602,039号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0032】
L-カルニチンフマル酸塩は、安定性であり吸湿性がないという特徴に加えて、タンパク質代謝に関して二重の保護効果を発揮する:中間代謝が直接増加することによってタンパク質生合成を間接的に刺激し、脂肪酸の動員の結果として筋タンパク質成分に対する節約/保護効果を誘導する。
【0033】
本発明による栄養補助食品は、1以上の以下の成分をさらに含み得る:
f) バリン、ロイシンおよびイソロイシンからなる群から選択されるアミノ酸またはそれらの混合物;
g) クレアチンおよびクレアチンリン酸からなる群から選択されるクレアチンまたはそれらの混合物。
【0034】
本発明の単位投与形態の栄養補助食品は以下を含有する:
【表1】

【0035】
例えば、錠剤に適する処方は以下の通りである:
【表2】

【0036】
本発明の補助食品はさらに、例えば、クエン酸二ナトリウム、リン酸一カリウム、乳酸カルシウムおよびタウリン酸マグネシウム(magnesium taurate)のような無機塩をさらに含み得る。本発明の栄養補助食品は、経口投与に適している。本発明の補助食品は、たとえ上述のアミノ酸を含む場合であっても、単一の、または主な栄養源として日常的に用いてはならない。
【0037】
従って、特別食の補完的部分は、適切なアミノ酸、炭水化物、脂質、ビタミンおよびミネラルからなるであろう。
【0038】
日常的に取得する栄養補助食品の量は、例えば対象の年齢および体重に、または個人が従事するトレーニングスケジュールまたは身体活動の激しさや複雑さに依拠する広い制限範囲内で変化し得る。
【0039】
本発明の食品により達成される、骨格筋に対する強力なエネルギー供給作用、および同時に、心血管系に対する保護作用は、ヒトの分野においてその補助食品の実用が強く予想されるようなものを選択したいくつかの薬理試験(そのいくつかを本明細書において以下に示す)によって示された。これらの試験において、本発明による組成物により処置する動物には、上述の錠剤製剤を50mg/kg/日の用量にて7週間投与した。
【実施例1】
【0040】
ラットにおける、プロピオニルL-カルニチン、コエンザイムQ10、リボフラビンおよびパントテン酸を含む組成物による心臓力学の改善
【0041】
ラットから単離した左心室乳頭筋(LVPM)において、プロピオニルL-カルニチン、コエンザイムQ10、リボフラビンおよびパントテン酸を共に含む製剤(以下この組成物を「HS122.1A」と称する)による長期(7週間)の処置の機械的効果を調べた。
【0042】
HS122.1Aにより処置したLVPMについての活動(active)長さ−張力曲線は上昇し、最適長における最大張力(P0)は、対照の筋肉よりも57%高かった。他動(passive)長さ−張力、ピーク張力までの時間(TPT)または半弛緩時間(half-relaxation time(RT50))は、HS122.1Aの補足によって変化しなかったが、最大張力発生速度(maximum rate of tension development)(+dT/dt)および最大張力降下速度(maximum rate of tension fall)(−dT/dt)は、補足によってそれぞれ47%(p<0.001)および54%(p<0.001)増加した。
【0043】
最低の後負荷(0.2P0)において、HS122.1A補足ラットからのLVPMの短縮の量は、対照ラットと比較して47%増加した。
【0044】
最大仕事量(1.24±0.16μJ * CSA−1* 筋長−1)は対照動物(0.58±0.21μJ * CSA−1* 筋長−1)の2倍となった。試験した負荷の全てにおいて、対照ラットよりもHS122.1Aラットからの筋肉について、短縮速度はより大きかった。Hillの方程式により算出した最大短縮速度(Vmax)1.52±0.14 mm * s−1* 筋長−1は、対照の筋肉のもの(1.01±0.21 mm * s−1* 筋長−1)よりも有意に大きかった(p<0.05)。HS122.1Aを補足したラットからの筋肉は、短縮速度がゼロに減少する前に、有意に高い張力を発生したことが確認され(p<0.05)、その平均は、対照ラットからのLVPMの23.35±5.61 mN * mm−2と比較して36.76±8.65 mN * mm−2であった。短縮速度と持ち上げた負荷の間の結果として得られた力に関して、HS122.1Aを補足したラットの最大値(9.24±2.22μW * CSA−1* 筋長−1)は、対照ラットの値(4.44±1.02μW * CSA−1* 筋長−1)の2倍高かった(p<0.05)。
【0045】
結果としてHS122.1Aの補足により、ラットにおいて心臓の機能と収縮力が改善した。
【0046】
Charles River(Italy)から入手した20匹の雄のウィスターラットを用いた。動物を環境条件制御下(12時間の明暗サイクル、22-24℃、湿度40-50%)の動物のハウスに置き、餌と水を不断状態で与えた。
【0047】
動物を、7週間毎日経管栄養によってカルボキシ-メチルセルロース(CMC)からなる空の処置を与える動物、またはHS122.1A、すなわち以下を共に含有する(CMC中mg/Kg/d)製剤を与える動物のいずれかに無作為に割り当てた:プロピオニル-L-カルニチン(35.02)、コエンザイムQ10(2.77)、リボフラビン(2.77)、パントテン酸(2.77)。10匹のラットにHS122.1Aを与え、10匹のラットにCMCを与えた。CMCは、微粉砕された物質または不溶性の物質の懸濁を容易にするために一般に用いられる。
【0048】
体重測定
各ラットに投与すべきHS122.1Aまたは媒体の量を確立するために、各動物の体重を±1gまで正確なMettler(Switzerland)天秤上にて毎日測定した。
【0049】
筋肉の調製およびマウント
補足を行った期間(7週間)の経過後、動物をエーテルにより麻酔して安楽死させ、その後素早く心臓を切除した。まず心臓をクレブス液中に置いた。実体顕微鏡(16 x, Zeiss)下にて、左の乳頭筋を少量の心室とともに切除した。乳頭筋を2つの小さな金属製のクリップ(Fine Science Tools, Vancouver, Canada)の間にマウントし、クレブス液を含有する被覆したパースペックスチャンバー(jacketed perspex chamber)(10ml)内に、低い側(心室壁側)をそのチャンバー内にはめ込んだ負荷力変換器(force transducer)(Mod.Wp1 Fort 10, 2200μ*V*V−1*g−1, ADInstrument, Pty Ldt, Australia)に付着させて垂直に置いた。高い側は、入念に真っ直ぐにした鋼線を介してリニア変位変換器(linear displacement transducer)(慣性モーメント35 g*cm−2、解放トルク<0.1 g*cm−1, Basile Comerio, Italy)の等張レバーに連結させた。変換器のレバーのアーム(支点と器官の輪の長さ:10 cm、作動領域:±15°)は、炭素繊維の円錐管の薄い壁からできている。レバーアームの負荷は、0.01 g/ステップの負荷変動を創出するスケールに沿って動くタングステン合金シリンダーカウンターウェイトによって掛けた。各実験は、2つの器官バス内にて同時に収縮する、対照およびHS122.1A補足ラットそれぞれからの2つの筋肉を用いて行った。各調製物は初め、溶液中にある間、10 mNの負荷下、0.06 Hzの周期にて等張的に収縮していた。この初めの平衡期間は40-60分間続き、機械的動作が安定化した時に完了したと考えた。
【0050】
長さ−張力の記録
平衡期間の経過後、筋肉を等尺的に収縮するようにし、0.06 Hzの周期にて刺激した。最大発生張力が生じる最適な長さについて予備測定をした(Lmax)。筋肉の長さは0.1mmずつ段階的に増やして変化させ、それぞれの新たな長さにおいて約5分の期間、筋肉を平衡にしておいた。この一連の筋長の増加の間、最適な長さ(Lmax)を、最大発生張力の創出点として測定した。次に筋肉を1.06 Lmaxまで伸ばし、1.06から0.94 Lmaxまで0.02 Lmaxずつ減少させて選択した長さまで縮めた。応力緩和の効果を最小にするために、筋肉を、それぞれの新たな長さにおいて5分の期間、平衡にしておいた。この調製物の機械的特性は何時間も比較的安定なままであり、再現性のある長さ−張力曲線が得られた。
【0051】
負荷力−速度の記録
等尺性の記録が完了し次第、続く20〜30分の平衡期間の後、等張性の実験を行った。電気刺激に対する短縮反応を、古典的後負荷等張性技術によって記録した。初めに、Lmaxにおいて記録した静止張力(RT)(表1を参照)に相当する前負荷を筋肉に掛けた。20%、40%、60%、80%、100%P0と漸進的に増加させて調製物に後負荷を掛けた。いずれの負荷においても、発生張力と短縮を同時に記録した。
【0052】
【表3】

【0053】
電気刺激
機械的反応を起こす必要最小限よりも10%大きい電流の強さ(8-14 mA)の5 ms方形パルス波を送る平行白金電極によって電気刺激を与えた。PowerLab刺激装置(ADInstruments, Pty Ldt Australia)に繋いだ強力な定電流(Multiplexing pulser booster, Basile, Comerio, Italy)により電極に横電場刺激を与えた。等尺性および等張性単収縮張力を0.06 Hzの周波数にて記録した。
【0054】
溶液
クレブス液は以下の組成であった(mM):NaCl 123、KCl 6.0、CaCl2 2.50、MgSO4 1.2、NaHCO3 20、KH2PO4 1.2、グルコース11。筋肉の解剖中ならびに実際の実験中も、95%O2と5%CO2の混合物を溶液に連続的に通気した。
【0055】
温度
水を恒温槽(Basile, Comerio, Italy)から筋肉チャンバーの周囲のジャケットを通して循環させて実験を通じて温度を30±0.5℃に一定に保った。
【0056】
記録システム
アナログからデジタルへの変換プログラム(PowerLab, ADInstruments, Pty Ldt Australia)を備えたコンピュータ(Pentium(登録商標) IV Pro 512 MB ram; the software chart V.4.1.2)によって等尺性および等張性実験シグナルを記録して解析した。
【0057】
長さ−張力曲線の測定
増加させる各長さにおいて、静止張力および発生張力を測定した。静止張力は、基礎張力(記録した張力のうち最小の増加量にて決定した:0.01-0.025 mN)から、次の長さへ変化させる直前の休息期間に測定した。ピーク発生張力と基礎張力の間で全張力を測定し、発生張力は、全張力と静止張力間の差異として測定した。
【0058】
張力値は断面積(CSA)に対して標準化した。各筋肉の断面積は以下の式から計算した:A=M/ρL(ここで、Mは質量(g)であり、ρは密度(g/ml)であり比重と数値的に等しく、Lは長さ(mm)である)。ピクノメータ技術(pycnoinetric technique)により測定した、クレブス−重炭酸(Krebs-bicarbonate)溶液浴をした組織の比重は、1.056であった。筋長はLmaxにて測定した。
【0059】
負荷力−速度および力−負荷曲線の測定
実験短縮波を分析する最初の手続工程は、ノイズの除去、つまり、得られたノイズの多いデータから目的の未知のシグナルを推定することであった。Daubechiesの離散ウェーブレット変換(Discrete Wavelet Transform)によりノイズ除去データを得た。適用した各後負荷において、短縮波が到達した最高速度の平均を算出して得たピーク速度として、短縮速度を得た。短縮速度と負荷の間の関係は、各後負荷について発生張力対ピーク短縮速度をプロットして決定した。短縮速度は筋肉の長さに対して標準化し、mm *s−1 * 筋長−1として表した。
【0060】
力−負荷曲線は、適用した各後負荷における負荷力と速度を乗じることによって得た。
【0061】
統計分析
補足群と対照群の間の差異を検証するために、分散分析(ANOVA)を行い、p<0.05を有意とみなした。長さ−張力の測定、短縮、短縮速度、仕事および力を平均値±S.D.においてグラフを用いて表した。
【0062】
結果
HS122.1A補足ラットおよび対照ラットの、動物としての、およびLVPMの一般的特徴は表1を参照されたい。
【0063】
心臓の重量、体重の測定値、および体重に対する心臓重量の比にグループ間における差異は示されなかった。
【0064】
筋長、筋重量および得られる断面積をHS122.1A補足ラットと対照ラットとの間で比較したところ、有意差は見られなかった。
【0065】
等尺性の測定。長さ−張力の測定。
ラット乳頭筋のFrank-Starling機構に対するHS122.1Aの効果を、図1に示した代表的な実験追跡および長さ−張力の関係に示す。実験追跡(図1A−B)は、HS122.1A補足ラット(図1A)および対照ラット(図1B)からの2つのLVPMにおいて記録された典型的な活動単収縮張力を示す。1.06から0.94 Lmaxまで0.02 Lmaxずつ減少させて、筋長を選択した長さまで漸進的に減じていった。図1Cのグラフに示すように、補足した筋肉の長さ−活動張力は、増大してピーク負荷力(P0)によりLmaxにおいて36.76±8.65 mN * mm−2を生じ、対照ラット(23.35±5.61 mN * mm−2)(図1D)と比較した場合、結果として57%高かった(p<0.001)。LVPMの他動長さ−張力は補足によっては有意には変化しなかった;しかしながら、実験した筋長の全範囲にわたって、補足ラットにおいて全張力曲線はより高かった(p<0.05)。
【0066】
HS122.1Aの陽性変力効果を、等尺性タイミング指標(timing index)において観察した。図2に示したように、補足ラット(図2A)における、最大張力発生速度(+dT/dt)および最大張力降下速度(−dT/dt)は、対照ラット(図2B)と比較した場合、結果としてそれぞれ47%(p<0.001)および54%(p<0.001)増加した。ピーク張力までの時間(TPT)および半弛緩時間(RT50)は補足によって変化しなかった。
【0067】
等張性測定。短縮、仕事、短縮速度および力の測定。
HS122.1A補足ラットからのLVPMにおいて記録された等張性パラメーターにも、陽性変力効果が見られた。図3は、HS122.1A補足ラット(図3A)および対照ラット(図3B)からの1つのLVPMにおいて20%から100%P0の範囲の様々な後負荷にて記録された、短縮および力の代表的な実験追跡を示す。図3Cに示すように、最低の後負荷(0.2 P0)において、HS122.1A補足ラットからのLVPMの最大短縮は、対照ラット(図3D)と比較して47%増加した(p<0.05)。断面積と筋長に対して標準化した最大仕事量(1.24±0.16μJ)(図3C)は、結果として対照動物(0.58±0.21μJ)(図3D)よりも2倍高かった(p<0.01)。図3E−3Fは、補足ラット(図3E)および対照ラット(図3F)からの単一のLVPMにおいて、Hillの方程式により決定した短縮速度曲線を示す。短縮速度は、適用した全ての負荷において、対照ラットと(図3H)よりもHS122.1Aラット(図3G)からの筋肉においてより高かった。補足した筋肉において、最大短縮速度(Vmax)1.52±0.14 mm * s−1* 筋長−1は、対照筋肉における最大短縮速度1.01±0.21 mm * s−1* 筋長−1よりも有意に高かった(p<0.05)。補足ラットからの筋肉は、短縮速度がゼロまで減少する前に、有意に高い張力を発生したことが観察され(p<0.05)、その平均は、対照ラットからのLVPMについての張力23.35±5.61 mN * mm−2と比較して36.76±8.65 mN * mm−2であった。短縮速度と持ち上げた負荷の間の結果として得られる力に関しては、HS122.1A補足ラットにおける最大値(9.24±2.22μW * CSA−1* 筋長−1)(図3G)は、対照ラット(4.44±1.02μW * CSA-1* 筋長−1)(図3H)の2倍高かった(p<0.05)。
【0068】
考察
本結果は、プロピオニルL-カルニチン、コエンザイムQ10、リボフラビンおよびパントテン酸と共に製剤化したHS122.1Aによる処置は、ラットにおいて、心筋の機械的機能に対して陽性の機能的変化を誘発することを示す。特に、HS122.1AはFrank-Starling機構を改善し、乳頭筋の短縮速度、短縮、仕事および力が向上した。
【0069】
収縮性フィラメントの合計数が増加したことは、心筋および平滑筋において観察された発生活動張力の増加に寄与した可能性がある。しかしながら、補足動物と対照動物の間で乾燥標本重量/体重の比に有意差は見られなかったので、収縮性フィラメント密度は処置によって影響されないようであった。さらに、筋肉を心室壁の一部を介して変換器のクリップに付着させることにより、可能な限り線維の損傷を最小化した。
【0070】
ミオシンATPaseにより触媒されるATP加水分解速度と最大短縮速度が相関することが知られている。理論に基づくと、補足動物からの標本全てにおいて観察された短縮速度の促進は、以下に起因し得た:1)ミオシンATPaseの量および/または活性の増加、2)個々の収縮性筋細胞におけるATP利用能の向上。
【0071】
結論として、我々の発見は、HS122.1Aが、おそらく増大したエネルギー生産に基づいて、心臓の筋肉細胞の生体エネルギー活動を改善することを示している。
【図面の簡単な説明】
【0072】
原文に記載なし。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分として以下の組み合わせを混合してまたは別個に封入して含む、栄養補助食品:
a) プロピオニルL-カルニチンまたはその薬理学的に許容される塩;
b) コエンザイムQ10
c) リボフラビン;および
d) パントテン酸。
【請求項2】
成分(a)が、L-カルニチン、アセチルL-カルニチン、バレリル-L-カルニチン、イソバレリル-L-カルニチンおよびブチリル-L-カルニチンからなる群から選択されるカルニチンまたはそれらの薬理学的に許容される塩またはそれらの混合物をさらに含む、請求項1に記載の栄養補助食品。
【請求項3】
薬理学的に許容される塩が、以下からなる群から選択される、請求項1に記載の栄養補助食品:塩化物;臭化物;ヨウ化物;アスパラギン酸塩;酸アスパラギン酸塩;クエン酸塩、酸クエン酸塩;リン酸塩、酸リン酸塩;フマル酸塩、酸フマル酸塩;グリセロリン酸塩;グルコースリン酸塩;乳酸塩;マレイン酸塩、酸マレイン酸塩;粘液酸塩;オロト酸塩;シュウ酸塩、酸シュウ酸塩;硫酸塩、酸硫酸塩;酒石酸塩;トリクロロ酢酸塩;トリフルオロ酢酸塩およびメタンスルホン酸塩。
【請求項4】
少なくとも1つの以下の成分をさらに含む、請求項1に記載の栄養補助食品:
f) バリン、ロイシン、イソロイシンからなる群から選択されるアミノ酸またはそれらの混合物;
g) クレアチンおよびクレアチンリン酸からなる群から選択されるクレアチンまたはそれらの混合物。
【請求項5】
(a):(b):(c):(d)の重量比が、10:0.04:0.08:0.4から1:4:4:20の範囲である、請求項1に記載の栄養補助食品。
【請求項6】
(a):(b):(c):(d)の重量比が、10:2:2:2から1:1:1:5の範囲である、請求項5に記載の栄養補助食品。
【請求項7】
錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセルおよび顆粒の形態である、請求項1に記載の栄養補助食品。
【請求項8】
以下を含む単位投与形態である、請求項7に記載の栄養補助食品:
【表1】

【請求項9】
長期の激しい身体活動を維持する骨格筋の能力を増強する方法であって、以下の活性成分から成る栄養補助食品を投与することを含み、これらの活性成分が共に混合されてまたは別個に投与される方法:
(a) プロピオニルL-カルニチンまたはその薬理学的に許容される塩;
(b) コエンザイムQ10
(c) リボフラビン;および
(d) パントテン酸。
【請求項10】
成分(a)が、L-カルニチン、アセチル-L-カルニチン、バレリル-L-カルニチン、イソバレリル-L-カルニチンおよびブチリル-L-カルニチンからなる群から選択されるカルニチンまたはそれらの薬理学的に許容される塩またはそれらの混合物をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
薬理学的に許容される塩が、以下からなる群から選択される、請求項9に記載の方法:塩化物、臭化物、ヨウ化物、アスパラギン酸塩、酸アスパラギン酸塩、クエン酸塩、酸クエン酸塩、リン酸塩、酸リン酸塩、フマル酸塩、酸フマル酸塩、グリセロリン酸塩、グルコースリン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、酸マレイン酸塩、粘液酸塩、オロト酸塩、シュウ酸塩、酸シュウ酸塩、硫酸塩、酸硫酸塩、酒石酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩およびメタンスルホン酸塩。
【請求項12】
栄養補助食品が少なくとも1つの以下の成分をさらに含む、請求項9に記載の方法:
(f) バリン、ロイシンおよびイソロイシンからなる群から選択されるアミノ酸またはそれらの混合物;
(g) クレアチンおよびクレアチンリン酸からなる群から選択されるクレアチンまたはそれらの混合物。
【請求項13】
(a):(b):(c):(d)の重量比が、10:0.04:0.08:0.4から1:4:4:20の範囲である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
(a):(b):(c):(d)の重量比が、10:2:2:2から1:1:1:5の範囲である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
栄養補助食品が錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセルまたは顆粒の形態である、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物が以下を含む単位投与形態である、請求項15に記載の方法:
【表2】

【請求項17】
エネルギーを供給し、骨格筋を増強する方法であって、以下の活性成分から成る栄養補助食品を投与することを含み、これらの活性成分が共に混合されてまたは別個に投与される方法:
(a) プロピオニルL-カルニチンまたはその薬理学的に許容される塩;
(b) コエンザイムQ10
(c) リボフラビン;および
(d) パントテン酸。
【請求項18】
成分(a)が、L-カルニチン、アセチル-L-カルニチン、バレリル-L-カルニチン、イソバレリル-L-カルニチンおよびブチリル-L-カルニチンからなる群から選択されるカルニチンまたはそれらの薬理学的に許容される塩またはそれらの混合物をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
薬理学的に許容される塩が、以下からなる群から選択される、請求項17に記載の方法:塩化物、臭化物、ヨウ化物、アスパラギン酸塩、酸アスパラギン酸塩、クエン酸塩、酸クエン酸塩、リン酸塩、酸リン酸塩、フマル酸塩、酸フマル酸塩、グリセロリン酸塩、グルコースリン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、酸マレイン酸塩、粘液酸塩、オロト酸塩、シュウ酸塩、酸シュウ酸塩、硫酸塩、酸硫酸塩、酒石酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩およびメタンスルホン酸塩。
【請求項20】
栄養補助食品が、少なくとも1つの以下の成分をさらに含む、請求項17に記載の方法:
(f) バリン、ロイシンおよびイソロイシンからなる群から選択されるアミノ酸またはそれらの混合物;
(g) クレアチンおよびクレアチンリン酸からなる群から選択されるクレアチンまたはそれらの混合物。
【請求項21】
(a):(b):(c):(d)の重量比が、10:0.04:0.08:0.4から1:4:4:20の範囲である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
(a):(b):(c):(d)の重量比が、10:2:2:2から1:1:1:5の範囲である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
栄養補助食品が錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセルまたは顆粒の形態である、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物が以下を含む単位投与形態である、請求項23に記載の方法:
【表3】


【公表番号】特表2009−512430(P2009−512430A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536001(P2008−536001)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【国際出願番号】PCT/EP2006/066538
【国際公開番号】WO2007/045533
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(591043248)シグマ−タウ・インドゥストリエ・ファルマチェウチケ・リウニテ・ソシエタ・ペル・アチオニ (92)
【氏名又は名称原語表記】SIGMA−TAU INDUSTRIE FARMACEUTICHE RIUNITE SOCIETA PER AZIONI
【Fターム(参考)】