説明

骨障害および代謝性疾患の診断、治療および予防用の化合物

本発明は、変性骨疾患の予防および治療ならびに骨の治癒を加速するのに有用な、式(I)もしくは(II)の化合物、またはそれらの医薬的に許容される塩に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、骨障害および代謝性疾患の診断、治療および予防、例えば骨修復の促進ならびに変性骨疾患の治療および予防用の化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
関連特許
この出願は、2003年12月24日出願の米国仮出願シリアル番号60/532,343からの優先権を主張した出願であり、その全ての開示がここに組み込まれる。
【0003】
骨は、プロテインマトリックス中の細胞からなり、該プロテインマトリックス上に種々のカルシウム塩の結晶構造が重ね合わさった動的組織である。動物の体の固定支柱としての役割に加えて、骨はホルモンの影響を受ける器官である。正常な制御的機能として、ある種のホルモンとの相互作用に応答して、骨細胞は、体の他の場所での使用のために、骨中のカルシウム塩を可溶性にすることができる。しかしながら、この骨吸収が過剰であれば、骨ページェット病および骨粗鬆症を含む骨変性疾患を引き起こし得る。
【0004】
臨床の骨粗鬆症は、閉経女性の約25%に見られ、年配の女性に無数の骨折を引き起こす潜在性の骨粗鬆症が、ずっと多く広がっている。骨変性疾患がより広がっているにもかかわらず、それが起こるメカニズムは十分に理解されていない。さらに、利用可能な治療は、しばしばうまくいかない。
【0005】
骨細胞による骨の破壊は、大々的に研究されているが、具体的なメカニズムは明確となっていない。一つの有望なシナリオは、吸収は、骨細胞による酸および蛋白質分解酵素の分泌によって引き起こされるというものである。これらの酵素がその効果を有するためには、最初に、組織が脱石灰化されなければならないようである。したがって、開始の段階は、脱石灰化を引き起こす骨の内部環境の酸性化であると考えられる。炭酸は、これらの工程を容易にし得る酸の一つであり、何年間も非常に関係があるとされている。
【0006】
炭酸脱水酵素により生じる炭酸が骨吸収に関与すると仮定すると、炭酸脱水酵素を阻害する薬剤の投与により、副甲状腺ホルモン(PTH)により引き起こされる骨からのカルシウムの遊離を阻害するであろう。このことが実際に動物で最初に示されたのは、Waiteらによる、炭酸脱水酵素阻害剤・アセタゾールアミドの効果を研究した刊行物の標題「Inhibition of Bone Resportion by Actetazolamide in the Rat", Endocrinology」, 87: 11 29 (1970)によるものである。
【0007】
組織培養でのその後の研究により、PTH-誘導吸収のアセタゾールアミドによる阻害は、骨の段階での直接の相互作用によることが示された(ここに参照として組み込まれる「Carbonic Anhydrous and Bone Remodeling: Sulfonamide Inhibition of Bone Resorption in Organic Culture」, MinkinおよびJennings, Science, (1970年6月))。
【0008】
これらの研究は、アセタゾールアミドが骨吸収の阻害剤として役立つであろうことを提案する。しかしながら、アセタゾールアミドまたは他のヘテロ環スルホンアミド炭酸脱水酵素阻害剤が正常な動物に投与されたとき、血漿中のカルシウム濃度に変化が見られない。この直観に反した結果は、アセタゾールアミドの競争効果の産物である。
【0009】
具体的に言うと、PTHの応答による骨からのカルシウムの溶解を阻害することに加えて、アセタゾールアミドは、それ自身、骨から血液への無機質の移動を増加する全身性のアシドーシスも引き起こす。これら二つの競争効果は互いにその効果を打ち消す(ここに参照として組み込まれる、「Acidosis Inhibits the Hypocalcemic Effect of Acetazolamide」, LineberryおよびWaite, Pharmacol. Exp. Ther., 211 : 452 (1979)を参照)。
【0010】
ある種のスルホンアミドの骨吸収への効果が研究されている。これに関し、次のこと:炭酸脱水酵素を阻害するアセタゾールアミドのようなヘテロ環スルホンアミドは、骨吸収も阻害する;炭酸脱水酵素を阻害しないヘテロ環スルホンアミドは、骨吸収を阻害しない;スルホンアミドは、大用量のビタミンDの骨吸収効果も阻害する;そして、骨の代謝の他のパラメータは、スルホンアミドにより影響を受けないので、その効果は、骨細胞の単純な毒性の結果ではない;が認められている。
【0011】
Pierceらによる米国特許番号5,641,762において、骨指向剤(bone seeking agent)および炭酸脱水酵素阻害剤からなるオステオスタッツ(osteostats)が、変性骨疾患の予防および治療に役立つだろうことが開示されている。該開示は、炭酸脱水酵素阻害剤としてのスルホンアミドおよびイミダゾールと、骨指向剤としてのテトラサイクリンおよびジホスホネートとの組合せに限定されている。該'762特許は、骨吸収を阻害する有用な試剤としてミスラマイシンも記載し、テトラサイクリン内部活性(internally active)アセタゾールアミド(TIA)、テトラサイクリン内部活性エトクスゾールアミド(TIE)、テトラサイクリン活性アセタゾールアミド、テトラサイクリン活性エトクスゾールアミドΔ-1、テトラサイクリン活性エトクスゾールアミドΔ-2およびアミノヘキシルジホスホネート活性アセタゾールアミドに限定された例を与えた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
当該技術分野で、骨障害および疾患の診断、予防および治療に役立つ化合物、医薬的に許容されるその塩、それらの使用方法およびそれらの製造法に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
本発明は、骨折または骨粗鬆症のような変性骨疾患から生じる障害を含む、骨障害の診断、治療および予防用の化合物の一群および医薬的に許容されるそれらの組成物を含む。本発明は、該化合物の使用方法および合成法も含む。本発明は、骨障害および代謝性疾患を診断、治療および予防するための方法も含む。本発明は、骨吸収を阻害するための方法も含む。本発明は、骨形成を促進するための方法も含む。
【0014】
本発明の化合物は、一般的に三つの部分:(1) 骨の細胞外無機質マトリックスに対して親和性を有する骨標的部分、(2) 骨と相互作用して骨代謝に影響を及ぼす能力を有する骨活性部分、および(3) 一番目と二番目の部分を結びつける架橋基を含む。
【0015】
本発明の化合物は、次の式:
【化1】

(式中、骨標的部分はAおよびBで表され、骨活性部分はQで表され、架橋基は残りの部分で表される)
または医薬的に許容されるそれらの塩で表される。
【0016】
骨標的部分
上記化合物の骨標的部分は、骨の細胞外無機質マトリックスに親和性を有するもので、例えば、その骨標的部分は、次の:
【化2】

(式中、
R1は水素、低級アルキルまたはアリール低級アルキルであり;
R2は水素、低級アルキルまたはアリール低級アルキルであり;
R3は水素または低級アルキルであり;
R4は水素、アリール低級アルキル、アリールまたは低級アルキルであり;
R5およびR6は独立して、水素または低級アルキルであるか、またはR5およびR6はそれらが結合している炭素原子と一緒になって、10までの環炭素原子を含み、全部で18までの炭素原子を含む環を形成し;
R7はヒドロキシ、低級アルコキシまたはNR8R9であり、そして
R8およびR9は独立して、水素または低級アルキルである)
うちの一つであり得る。
【0017】
架橋基
上記化合物の架橋基は、前記のように-(C=O)-X-Y-E-V-または-(NR8)-X-Y-E-V-
(ここで、
R8は独立して、水素または低級アルキルであり;
Xは主鎖に1〜10の炭素原子を含み、全部で20までの炭素原子を含むアルキレン基であり;
Yは、
【化3】

または化学結合であり;
Vは、
【化4】

であり;
Eは、
【化5】

または化学結合であり;
但し、Y-E-Vは、
【化6】

であり、そして
nは0〜6の整数である)
で表される。
【0018】
骨活性部分
本発明の化合物の骨活性部分Qは、骨と相互作用し、骨吸収を阻害するか、骨形成を増加するか、またはこれらの両方により、その代謝に影響を及ぼすものである。
本発明の化合物の骨活性部分として用いられ得る多数の検討された作用物質がある。例えば、特定のステロイドおよび関連化合物、特に男性ホルモン、女性ホルモンおよびDHEA(3β-ヒドロキシ-5-アンドロステン-17-オン)である。他の例として、ビタミンD代謝物および類似体、抗癌剤、プロトンポンプ阻害剤、非ステロイド系抗炎症性(NSAIDs)ホルモン、フリーラジカル補足剤、成長因子、オータコイド、副甲状腺ホルモン、RANK-L、カテプシン阻害剤、イプリフラボン、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、HMG CoA還元酵素阻害剤、NO発生剤、およびアセタゾールアミド、エトラゾールアミド、メタゾールアミド、ベンゾールアミド等、ここに参照として組み込まれる、米国特許第5,055,480号; 5,059,613号; 5,242,937号および5,641,762号に記載されたもののような炭酸脱水酵素阻害剤である。
【0019】
どの作用物質が用いられても、ヒドロキシ基、アミノ基またはオキソ基のいずれが存在していても、それらを欠いた形態で存在し、架橋基の一部のVは該ヒドロキシ基、オキソ基またはアミノ基を欠いた炭素原子と結合する。
【0020】
ここで用いられる「低級アルキル」の語は、単独または組み合わせて用いられるとき、1〜約6の炭素原子を含むアルキル基を意味する。それらは、直鎖状または分枝していてもよい。例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル等を含む。
【0021】
ここで用いられる「アルキレン」の語は、主鎖に1〜約10の炭素原子を含む架橋基であり、本出願の目的のために好ましいのは直鎖である。しかしながら、主鎖は分枝していてもよい(すなわち、それらは主鎖上でアルキル置換される)。
ここで用いられているように、主鎖と分枝した置換分を含むアルキレン鎖上の全炭素原子数は、炭素原子1〜約20の範囲である。さらに、アルキレン基は、ヒドロキシ、アミノ、低級アルキルアミノまたはジ-低級アルキルアミノのような他の基で置換されていてもよい。
【0022】
「アリール」は、単独または他の基と組み合わせて用いられるとき、環炭素原子のみを含み、約6〜14の環炭素原子を有し、全部で約18までの炭素原子を有する芳香族基を意味する。例として、フェニル、α-ナフチル、β-ナフチル、トリル、キシリル等を含む。
【0023】
「アリール低級アルキル」は、ここで定義されているように、架橋アルキル基と結合するアリール基を意味する。例として、ベンジル、フェネチル、ナフチルエチル等を含む。
【0024】
「低級アルコキシ」は、酸素原子と結合した前記のアルキルまたはアリール基のいずれかを意味する。
前記置換基の各々は、置換されるかまたは置換されなくてもよい。例えば、「低級アルキル」は置換された低級アルキルを含む。
【0025】
この明細書を読めば明らかとなるように、ここに記載された化合物に加えて、本発明は、上記の化合物の医薬的に有効な量を含む医薬組成物、該化合物の合成方法、および動物、特にネコ、イヌ、ウマ、ウサギ、ラットおよびヒトを含む哺乳動物における骨疾患の治療または修復の加速のために、そのような治療を必要とする動物に該化合物の医薬的に有効な量を投与することを含む、該化合物の使用方法にも向けられている。
【0026】
図の説明
図1は、本発明の代表的な化合物で処理されたものを含む動物の末梢大腿骨強度を示す棒グラフである。
【0027】
発明の詳細な説明
本発明は、骨折または骨粗鬆症のような変性骨疾患から生じる障害を含む、骨障害の治療および予防用の化合物である。さらに、本発明は、該化合物の使用方法および合成方法を含む。
【0028】
本発明の化合物は、一般的に三つの部分:(1) 骨の細胞外無機質マトリックスに対して親和性を有する骨標的部分、(2) 骨と相互作用して骨代謝に影響を及ぼす能力を有する骨活性部分、および(3) 一番目と二番目の部分を結びつける架橋基を含む。
【0029】
本発明の化合物は、次の式:
【化7】

(式中、骨標的部分はAおよびBで表され、骨活性部分はQで表され、架橋基は残りの部分で表される)
で表される化合物、または医薬的に許容されるそれらの塩である。
【0030】
骨標的部分
化合物の骨標的部分は、骨の細胞外無機質マトリックスに親和性を有するものであり、例えば、骨標的部分は次の:
【化8】

(式中、
R1は水素、低級アルキルまたはアリール低級アルキルであり;
R2は水素、低級アルキルまたはアリール低級アルキルであり;
R3は水素、低級アルキル、例えば約1〜3の炭素原子を含むアルキル基、またはベンジルのようなアリール低級アルキルであり;
R4は水素、アリール低級アルキル、アリールまたは低級アルキルであり;
R5およびR6は独立して、水素または低級アルキルであるか、またはR5およびR6はそれらが結合している炭素原子と一緒になって、約6〜14の環炭素原子を含み、全部で18までの炭素原子を含む環を形成し、形成された環は単環式、二環式または三環式であってよく;
R7はヒドロキシ、低級アルコキシまたはNR8R9であり、そして
R8およびR9は独立して、水素または低級アルキルである)
うちの一つであり得る。
ある態様において、該部分は、R1に結合した窒素原子またはR7で鎖の残りと結合し得る。他の態様において、該部分は、構造Aに示されたように鎖の残りと結合し得る。
【0031】
架橋基
化合物の架橋基は、-(C=O)-X-Y-E-V-または-(NR8)-X-Y-E-V-で表され、前に記載されている。ここで定義されたように、Xは主鎖に約10までの炭素原子を含み、全部で約20までの炭素原子を含むアルキレン鎖である。
ある態様において、Xは全部で1〜約6の炭素原子を含み得る。アルキレン鎖は直鎖であってもよく、または分枝を含んでいてもよい。
【0032】
YEVは左から右に読まれるべきであることが理解されるべきである。すなわち、化合物の骨活性部分Qに結合するのは、YEVの定義の右(V)の最後の原子である。したがって、例えば、YEVが-O-(C=O)-であるとき、記載のように、Oではなく-(C=O)-がQに結合することが理解されるべきである。
【0033】
骨活性部分
本発明の化合物の骨活性部分Qは、骨と相互作用し、骨吸収の阻害または骨形成の促進またはこれらの両方により、その代謝に影響を及ぼすものである。
前記のように、本発明の化合物の骨活性部分として用いられ得る多数の検討された作用物質がある。骨吸収を阻害するような作用物質の例としては:男性ホルモン物質;炭酸脱水酵素阻害剤;カテプシン阻害剤;DHEA(3β-ヒドロキシ-5-アンドロステン-17-オン);女性ホルモン物質;フリーラジカル補足剤;HMG CoA還元酵素阻害剤(スタチン類);イプリフラボン;マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤;NO発生剤(血流);非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs);プロトンポンプ阻害剤;性ホルモン、好ましくはステロイドの形態;ならびにビタミンD代謝物および類似体を含む。骨形成を促進するような作用物質の例としては:成長因子;オータコイド;女性ホルモン物質;副甲状腺ホルモン;およびRANK-Lを含む。
【0034】
本発明において有用な具体的な炭酸脱水酵素阻害剤の例としては:アセタゾールアミド、エトラゾールアミド、メタゾールアミド、ベンゾールアミド、およびここに参照として組み込まれる、米国特許第5,055,480号; 5,059,613号; 5,242,937号および5,641,762号に記載された阻害剤を含む。
【0035】
本発明において有用な具体的なビタミンD代謝物および類似体の例としては:エルゴカルシフェロール、(ビタミンD2)、コールカルシフェロール、(ビタミンD3)、25-ヒドロキシ-エルゴカルシフェロール、1,25-ジヒドロキシエルゴカルシフェロール、25-ヒドロキシ-コールカルシフェロール、1,25-ジヒドロキシコールカルシフェロール、24,25-ジヒドロキシビタミンD3を含む。
【0036】
定義によるステロイドである作用物質に関し、ステロイドは四つの環構造、A環、B環、C環およびD環からなる。シクロペンチル環であるD環は、ステロイドのC-17にC=OまたはC-OHを含む。
本発明において、C-17における置換基(ヒドロキシまたはオキソ基)は、ここで定義されるように、また明細書の目的のために誘導体化される。骨活性部分Qがステロイドであるとき、C-17におけるヒドロキシおよびオキソ置換基は除かれる。
さらに、以下に記載されるように、C-17における置換基は可変のYEVに包含される。したがって、Qがステロイドのとき、それはC-17にこれらの置換基を有するステロイドとして定義される。それゆえ、本発明の態様において、架橋基のVはステロイドのC-17と結合する。
【0037】
本発明において有用な女性ホルモン物質の例は、エスラジオール、エストロン、エストリオール、キセノエストロゲン、フィトエストロゲン等である。
本発明において有用な男性ホルモンの例は、テストステロン、5α-ジヒドロテストステロン、アンドロステンジオン、エチオコラノロン、エピアンドロステロン、アンドロステロン、17α-メチルテストステロン、フルオキシメステロン、17α-エチルテストステロン、17α-メチルアンドロスタン-3β,17β-ジオール、アンドロスタン-3a,17β-ジオール、アンドロスタン-3α-17α-ジオール、アンドロスタン-17β-オール-3-オン、アンドロスタン-17α-オール-3-オン、Δ5-アンドロステン-3α、17β-ジオール、Δ5-アンドロステン-3β,17β-ジオール、アンドロスタン-3,17-ジオン、Δ4-アンドロステンジオン等を含む。
【0038】
骨活性部分として用いられる作用物質がステロイドであるか否かにかかわらず、いずれが存在していても、ヒドロキシ基、アミノ基またはオキソ基を欠いており、架橋基の部分Vは、該ヒドロキシ基、オキソ基またはアミノ基を欠いた炭素原子に結合している。架橋基のV部分は、架橋基がQに結合することを可能にするエーテル、アミドまたはエステルを形成する。このように、V部分は、オキソ基、アミノ基またはヒドロキシ基が当初存在した位置でQに結合する。したがって、もしQがアミノ基を欠いていれば、Qはアミドとして架橋基に結合し、YEVは、
【化9】

である。
【0039】
一方、もしQがオキソ基を欠いていれば、このことは、当初存在する、例えばDHEAまたは性ホルモンに存在するオキソ基は、H2/Pd、NaBH4、LiAlH4、亜鉛アマルガムと塩酸、またはヒドラジンとKOHもしくはカリウムtert-ブトキシドのような塩基のような当該技術分野で公知の試薬によって還元され、対応するアルコールを形成することを意味する。
このようにして形成されたアルコールは、当該技術分野で公知の試薬(例えば水性過マンガン酸塩または酸化クロム等)により対応するカルボン酸に酸化され、次いで当該技術分野で公知の条件下、架橋基上にアルコールまたはアミン部分を有する架橋基と反応して、エステルまたはアミドを形成し得る。
【0040】
あるいは、ヒドロキシ基は、アシル化部分を有する架橋基と反応して、エステルを形成するか、またはヒドロキシ基は、当該技術分野で公知の条件下、架橋基と反応して、エーテルを形成し得る。
一方、もしQがヒドロキシ基を欠いていれば、Qはエステル((C=O)-O)またはエーテルとして架橋基に結合するか、またはヒドロキシ基が酸化されて酸を形成すれば、異なるエステル(0-(C=O))として、または架橋部分YEが遊離のアミノ基を有すれば、アミド(NH-(C=O))として架橋基に結合する。したがって、Qがオキソまたはヒドロキシ基を欠いていれば、Qはエステルまたはエーテルまたはアミドとして架橋基に結合し、YEVは
【化10】

である。
【0041】
本発明の化合物の合成
本発明の化合物は、当該技術分野で認められた方法により製造される。例えば、本発明の化合物は、以下に示される方法により製造され得る。
式Iの化合物に関して、次が代表的である:
【化11】

【0042】
同様に、式IIの化合物に関して、次が代表的である:
【化12】

ここで定義されるように、NR1基を含むAHは、アミド生成条件下に
L-(C=O)-X-Y-E-L3
[ここで、Lは、ヒドロキシ、低級アルコキシ、ハロゲン等のような脱離基であり、そしてY-EがNHまたはOで終わるとき、L3は水素であり、YEがアシル基で終わるとき、L3はハライドまたはOR11(ここで、R11は水素または低級アルキルである)であるか、またはYEがメチレン(CH2)基で終わるとき、L3はハライド、またはブロシレート、トシレートもしくはメシレート、または水素である]
と反応して、対応するアミドを生成する。この反応は、反応物または生成物と反応せず、かつ反応物が可溶な溶媒中で行われ得る。溶媒は揮発性であるのがよい。
【0043】
この反応は効果的な温度、例えば室温〜溶媒の還流温度までで行われ得る。反応は所望の生成物を生成するの十分な時間行われる。
上記の生成物はA-(C=O)-X-Y-E-L3であり、それは他端(すなわち、YE端)に、L2-V-Q[ここで、VがOまたはNHのとき、L2は水素であるか、またはVがC=Oのとき、L2はOR10(ここで、R10は水素または低級アルキルである)またはハライドである]と反応する官能基を有し、アシル化条件下で式Iの化合物を生成する。
【0044】
例えば、VL2がヒドロキシまたはアミノを含んでいれば、そのヒドロキシ基またはアミノはYE上のアシル基と反応し得る。一例として、Eが化学結合であり、Yが酸またはそのアシル化誘導体であれば、HVQとA-(C=O)-X-Y-E-L3との反応は、エステルまたはアミドを生成するであろう。
一方、L2VQは、それがYEL3上末端OHまたはアミノ基と反応し、それぞれエステルまたはアミドを生成するとき、アミドまたはエステル基に変換され得るアシル化誘導体であり得る。
【0045】
この場合もやはり、上記のように、アシル化反応は、生成物または反応物のどちらとも容易に反応せず、かつ反応物が容易に溶ける溶媒中で行われ得る。溶媒は蒸発により容易に除去できるように揮発性であるのが好ましい。反応は、室温〜溶媒の還流温度までの範囲の効果的な温度で行われ、所望の物質を生成するのに十分な時間行われる。
【0046】
エーテルが生成する場合は、LVはOHであり、YEはメチレン基で終わっている。これらの条件下、反応はウィリアムズ条件下[ここで、QOHは対応するQO-に変換され、A-(C=O)-XYEL3(ここで、L3はハライドまたは他の良好な脱離基であり、YEはCH2基で終わる)と反応する]で行われる。あるいは、QOHとA-(C=O)-XYEL3(ここで、L3はハライドである)はジメチルスルホキシド中、KOHまたはNaOHのようなハイドロキサイド塩と直接反応し得る。
【0047】
あるいは、QVL2がステロイドの17位に水酸基を含み、XYEが(C=O)-(CH2)2-Oである場合は、QVL2を無水コハク酸のような環状無水物、混合酸無水物またはアシルクロライドと反応させ得る。そして、その生成物をAHと反応させて式Iの生成物が生成する。
【0048】
式IIを生成する反応は、Bがアシル基を含む場合を除いて、上記の反応と同様であり、それゆえ、BLはアミド生成条件下、アミンHR8XYE-L3と反応してBN(R8)XYEL3を生成し、次にL2VQと反応して式IIの物質を生成する。
L1、L2およびL3、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R8、XYE、VおよびQは前記で定義されたとおりであること注意しなければならない。それゆえ、アミド生成反応およびL2QVとの反応に関するこの中でのコメントは、これらの反応にも適用できる。
【0049】
もちろん、反応は逆の順序で行われ得る。例えば、式Iの化合物は、次のようにしても生成し得る:
【化13】

【0050】
同様に、式IIの化合物は、
【化14】

(式中、L4は水素であるか、またはそのアミンがVまたはEと反応性であれば、それは当該技術分野で公知のアミノ保護基である)
の反応により生成し得る。
【0051】
A、B、X、Y、E、VまたはQ上の基のいずれかが、用いられる試薬または反応物もしくは生成物のいずれかと反応性である基を有する場合は、それらは、副反応を避けるために、当該技術分野で公知の保護基によって保護されるであろう。
そのような保護基は、有機合成化学において用いられ、当該技術分野でよく知られている。例は、ここに参照として組み込まれるT. W. Greeneによる「PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS」, John Willey & Sons, Inc. , N. Y.,1981, (「Greene」)中に見出され得る。
【0052】
次に、代表例として、本発明の化合物のいくつかの合成例を示す。
【化15−1】

【化15−2】

【化15−3】

【0053】
本発明の化合物の使用および有効性
上記のように、本発明の化合物は、二つの活性部分によって特徴付けられる。骨に蓄積し、その結晶格子に組み込む傾向によりカルシウムに結合する能力を有する骨-標的部分(すなわち、分子のベンズアミド部分)および骨と相互作用し、骨吸収を阻害するか、骨形成を増加するか、またはこれらの両方により骨代謝に影響を及ぼす骨活性部分である。例えば、第二の部分がビタミンDであれば、その骨との相互作用は、骨形成を強化および増加する傾向がある。
一方、本発明により検討されたステロイドは骨活性を示し、骨吸収の抑制および骨形成の刺激の両方を与え得る。
さらに、本発明で検討された炭酸脱水酵素阻害剤は、二酸化炭素の炭酸への可逆的水和を触媒する炭酸脱水酵素を阻害する。したがって、それは骨吸収の抑制剤である。他の骨活性剤は、骨に比較的特有な方法でそれらの知られた効果を及ぼす。
【0054】
本発明の化合物の作用は、ベンズアミドおよび有効な骨活性部分(プロドラッグではない)の両方に活性な部位を有する骨部位で速やかに発揮され得る。さらに、本発明の化合物の作用は、段階的に発揮され、最初は、親和力が骨部位にその化合物を局在化する骨指向部分によってなされる。いったん骨部位に固定されると、分子の他の部分、すなわち骨活性領域は骨と相互作用し、骨形成の増加または骨吸収の抑制のどちらかに影響を及ぼす。
【0055】
一方、本発明の化合物は、プロドラッグ(このものでは、骨活性に関する活性部位が化合物の内部にあり、すぐに有効ではなく、かつ当初の活性を示さないだろうが、骨部位で起こる酵素的または加水分解の条件に付されたとき、骨活性領域が解放されるであろう)であってもよい。
【0056】
理論およびメカニズムに束縛されることを望まないが、本発明の化合物は、本発明の代表的な具体例を用いて記載される次の:
【化16】

のように、骨中のカルシウムと相互作用すると信じられている。
【0057】
例で示されるように、骨標的部分の三つの位置でカルシウムと相互作用し、骨中に局在化する本発明の化合物を生じる。R2部分、特にOH、COR7部分のアシル基およびNHR1と結合するアシル基は、骨のカルシウムと結合する。
【0058】
本発明の化合物は、1以上の不斉炭素を含み得るし、ラセミ体および光学活性体の形態で存在し得る。置換基によって、本化合物は付加塩もまた形成し得る。これらの他の形態全てが本発明の範囲内にあることを意図している。
本発明の化合物は立体異性体の形態で存在し得るし、このようにして得られる生成物は異性体の混合物であり得る。
【0059】
治療組成物の活性成分および本発明の化合物は、有効量で投与されたとき、変性骨疾患の治療および予防において活性を示す。これらの量は医師により決定される。あるいは、活性成分は、1日、体重キログラム当たり、0.1 μg〜約100 mgの範囲の量で投与され得る。投与計画は、1週間、体重キログラム当たり、約1 μg〜約10 mgであってもよく、そのような用量単位は、体重約70 kgの対象者に対して、合計約70 μg〜約700 mgの活性化合物が24時間で投与されるようなものが用いられる。
【0060】
この用量は、最適な治療応答を与えるように調整され、投与当たり、約50 mgの投与量で1日に1回〜1週間に1回投与され得る。例えば、数回に分けた用量が毎日投与され得るか、または、その用量は、治療状況の緊急性で示されるように比例的に減少され得る。活性化合物が経口、静脈内、筋肉内または皮下のルートのような簡便な方法で投与され得ることは、実用面で利点である。
【0061】
活性化合物は、例えば不活性希釈剤または吸収される食用担体と一緒に経口的に投与され得るか、ハードあるいはソフトシェルゼラチンカプセルに封入され得るか、錠剤に圧縮され得るか、または食事の食べ物と直接混合され得る。経口的治療投与に対して、活性化合物は賦形剤と混合され、インジェスティブル錠、バッカル錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、カシェ剤などのような形態で用いられ得る。
【0062】
そのような組成物および製剤は少なくとも約5%の活性化合物を含むべきである。勿論、組成物および製剤のパーセントは変えられ得るし、単位重量の約1〜約10%であってよい。そのような治療的に有用な組成物中の活性化合物の量は、適当な投薬量が得られるような量である。本発明による好ましい組成物または製剤は、経口用量単位の形態が約5〜500 mgの活性化合物を含むように製造される。
【0063】
錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤等は、次の:トラガカントゴム、アラビアゴム、トウモロコシ澱粉またゼラチンのような結合剤;賦形剤;トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、アルギン酸等のような崩壊剤;滑沢剤も含み得る。そして、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤;ペパーミント、冬緑油またはチェリーの香りを付ける着香剤が加えられ得る。
用量単位形態がカプセル剤のとき、その型の材料に加えて、液体担体を加え得る。種々の他の材料が、コーティング剤として、あるいは用量単位の物理的形状を改良するために存在してもよい。
【0064】
例えば、錠剤、丸剤またはカプセル剤は、シェラック、砂糖またはこれらの両方でコーティングされ得る。シロップまたはエリキシルは、活性化合物、甘味剤としてショ糖、防腐剤としてメチルおよびプロピルパラベン、染料およびチェリーまたはオレンジの香りを付ける着香剤を含み得る。
勿論、いずれの用量単位形態を製造する場合であっても、用いられるあらゆる材料は、医薬的に純粋で、用いられる量において実質的に無毒であるべきである。さらに、活性化合物は、徐放性製剤に配合され得る。
【0065】
活性化合物は、非経口的にまたは腹腔内投与もされ得る。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびそれらの混合物ならびにオイル中でも製造される。保管および使用の通常の条件下で、これらの製剤は、微生物の成長を抑えるために防腐剤を含む。
【0066】
注射剤としての使用に適した医薬の形態は、無菌の水溶液または分散液および無菌注射液または分散液の即時調製のための無菌粉末を含む。その形態は、無菌で、容易な注入を可能にする範囲で流動性であるべきである。それは生産および保管の条件下で安定であるべきで、細菌および真菌類のような微生物の汚染作用から保護されるべきである。
担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール等)、それらの適当な混合液および植物油を含む溶剤または分散媒体であることができる。適切な流動性は、例えばレシチンのようなコーティング物の使用、分散液の場合は要求される粒径の維持により、そして界面活性剤の使用により維持され得る。
【0067】
微生物の作用の防止は、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等の種々の抗菌および抗真菌剤により成し遂げられる。多くの場合に、例えば砂糖または塩化ナトリウムのような等張化剤の含有が望ましい。注射用組成物の持続性の吸収は、組成物中に、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような吸収を抑制する作用物質を使用することにより成し遂げられる。
【0068】
無菌の注射用溶液は、上で列挙された種々の他の成分と一緒に、適当な溶媒中に、要求される量で活性化合物を配合し、無菌濾過することにより製造され得る。一般的に、分散液は、基本的な分散媒体および上で列挙されたものから必要とされる他の成分を含む無菌の媒介物中に、種々の無菌化された活性成分を配合することにより製造され得る。無菌の注射用溶液製造のための無菌粉末の場合、製造方法は、前で無菌濾過された溶液から、活性成分プラスあらゆる付加的所望の成分の粉末を与える、真空乾燥および凍結乾燥の手法を含む。
【0069】
ここで用いられる「医薬的に許容される担体」とは、あらゆる全ての溶剤、分散媒体、コーティング剤、抗菌および抗真菌剤、等張化剤および吸収抑制剤等を含む。医薬的に活性な物質のためのそのような媒体および作用物質の使用は、当該技術分野でよく知られている。あらゆる慣用の媒体または作用物質が、その活性成分と不適合でない限り、治療用組成物にその使用が考えられる。補足的な活性成分も、その組成物中に配合もされ得る。
【0070】
非経口組成物は、投与の容易性および投与量の均一性のために、単位用量の形態で製剤化され得る。ここで用いられる単位用量の形態とは、治療される対象の哺乳動物用に単位用量として適した物理的に分離した単位をいう。各単位は、必要とされる医薬担体と一緒に所望の治療効果を生じるように計算された活性物質の予め決められた量を含む。本発明の単位用量の形態用の基準値は、(a)活性物質の特有な性質および達成されるべき特定の治療効果、ならびに(b)ここに詳細に開示されるように、身体の健康を害した病状を有する生体の疾病の治療のための活性物質を調合することの当該技術分野に固有の限界に基づいて選択され得る。
【0071】
活性成分は、簡便でかつ有効な投与のために、前記の用量単位の形態における適当な医薬的に許容される担体と一緒に、有効な量で調合され得る。例えば、単位用量の形態は、活性本体化合物を、例えば約0.1〜約1000 mg、あるいは別の例として約5〜約500 mgの範囲の量を含む。割合で表すと、活性化合物は、一般的に、担体に対して約1〜約100 mg/mlで存在する。補足的な活性成分を含む組成物の場合、投薬量は、処方成分の通常の投与量および投与様式を参考に決定される。
【実施例】
【0072】
以下の非限定的な例は、本発明をさらに説明するものである。
実施例1
次のスキームは、実施例1に記載された物質を製造するために利用された合成ルートを表す。
【0073】
【化17】

【0074】
A. 2,6-ジヒドロキシ安息香酸
2,6-ジヒドロキシ安息香酸(CAS [303-07-1])はAldrich Chemical Companyから購入し、熱水から再結晶し、次いで使用前に真空オーブン中で乾燥される。
【0075】
B. 2,6-ジヒドロキシ安息香酸メチル
2,6-ジヒドロキシ安息香酸(約100 g)をNH4OH(約1000 mL)に溶解し、AgNO3(約1.1当量)を加えた。CH3I(約1.1当量)を、約0〜5℃で、約30分間で加える。混合物を約12時間撹拌する。ヨウ化メチルおよびアンモニアを減圧下に除去し、サンプルを濾過により回収する。
【0076】
C. 2,6-ジヒドロキシベンズアミド
2,6-ジヒドロキシ安息香酸メチル(約100 g)をNH4OH(約1000 mL)に溶解し、室温で約24時間、時々撹拌する。アンモニアを減圧下に除去し、生成物が結晶化し、濾過により回収される。残留水は、ベンゼンに溶解し、ディーン-スターク トラップを用いた共沸蒸留により水を除いて除去される。ベンゼンは減圧下に除去される。
【0077】
1H NMR (500 MHZ, DMSO d6) δ 12.64 (s, 2H, 2 OHおよび6-OH), 8.20 (d, 2H, NH2), 7.16 (t, 1H, J=8.5 Hz, H4, H3またはH5), 6.35 (d, 2H, H3およびH5, J=8.5 Hz, H3またはH5, H4)
13C NMR (500 MHZ, DMSO-d6) δ 172.37 (C=0), 160.70 (C2および/またはC6), 133.63 (C3および/またはC5), 107.09 (C4), 102.39 (Cl) DMSOピークはδ 39.5に校正される。
【0078】
D. 2-ヒドロキシ-6-メトキシベンズアミド
500 mLの丸底フラスコ中で、2,6-ジヒドロキシベンズアミド(約16.5 g)を乾燥アセトン(300 mL)に溶解する。これにK2C03(約32.79 g)を加え、生じた生成物を室温で約30分間撹拌する。(CH3)2S04 約1.5 mM (約12 ml)を滴下し、反応混合物を加熱還流し、約15時間その状態を維持する。混合物を氷浴中で冷却し、次いで濾過する。
【0079】
濾過された固体をアセトン約50 mL部で複数回洗浄する。次いで、ロータリーエバポレーターを使用してアセトンを除去する。残渣を1N NaOHと混合し、次いでCHCl3(約300 mL)を加え、混合物を分液ロートに移す。下層を除去し、水層をCHCl3約50 mL部で複数回さらに洗浄する。
【0080】
水層を1N HC1で約pH=3〜4に酸性化し、白色沈殿物が生成する。沈殿物をCHC13(約300 mL)に溶解し、次いで1M NaCl(aq)約100 mL部で複数回洗浄する。クロロホルム抽出液をロータリーエバポレーターで濃縮する。最後に、痕跡量の水およびCHC13をベンゼン溶液からの共沸蒸留により除去する。ベンゼンは真空蒸留により除去される。
【0081】
E. 2-ヒドロキシ-6-メトキシ-3-ニトロベンズアミド
丸底フラスコ中で、2-ヒドロキシ-6-メトキシベンズアミド(約8.5 g)を氷酢酸(約100 ml)に溶解する。この溶液を氷浴中で冷却し、濃HNO3(10 mL/0.157 mol)を3分割して約30分間で加える。混合物を約0〜5℃で、約6時間撹拌し、次いで室温で約18時間さらに撹拌する。
反応混合物を冷水(約1.0 L)で希釈し、生じた固体を濾過により回収する。固体を水(約500 mL)、次いでエタノール(約100 mL)の複数部で洗浄する。生成物を真空デシケーター中、P2O5で乾燥する。
【0082】
1H NMR (500 MHZ, DMSO-d6) δ 15.72 (s, 1H, 2-OH) , 8.42 (d, 2H, C-NH2), 8:15 (d, 1H, H4, J=8.5Hz, H4, H5) , 6.74 (d, 1H, H5, J=8.5 Hz, H5, H4), 4.00 (s, 3H, OCH3)
13C NMR (500 MHZ, DMSO-d6) δ 170.44 (C=0), 163.04 (C3), 158.90 (C2), 131.53 (C1), 130.71 (C4), 105.25(C6), 101.86 (CS), 57.14 (-OCH3)
【0083】
F. 3-アミノ-2-ヒドロキシ-6-メトキシベンズアミドの合成
2-ヒドロキシ-6-メトキシ-3-ニトロベンズアミド(約7.3 g)を乾燥CH3OH(約250 mL)中でスラリーにし、10% Pd/C触媒(約2.5 g)を加える。混合物を、H2 約46 p.s.i.下のパー(Parr)還元装置に入れる。混合物を、H2圧が約9.5 p.s.i.に減少する時間、約18時間保持する。セライトを用いて混合物を濾過し、約35〜40℃で真空下に濃縮する。
【0084】
1H NMR (500 MHZ, DMSO-d6) δ 14.43 (s, 1H, 2 - OH) , 8.15 (d, 2H, - C NH2), 6.73 (d, 1H, H5, J=8.5 Fz, FE), H4), 6.33 (d, 1H, H4, J=8.5 Hz, H4, H5), 4.38 (s, 2H, 5-NH2), 3.79 (S, 3H, -OCH3)
13CNMR (500 MHZ, DMSO-d6) δ 172.41 (C=0), 151.31 (C2), 149.68 (C3), 131.32 (C6), 116.57 (C5), 102.58 (C1), 100.64 (C4), 55.96 (-OCH3)
【0085】
G. エストラジオール-17-ヘミスクシネートの合成
ディーン-スターク トラップが取り付けられた丸底フラスコ中で、17-β-エストラジオール(約10 g)をピリジン(4 mL)と共にベンゼン(約200 mL)に溶解する。痕跡量の水を除去するために溶液を加熱還流する。溶液を冷却し、無水コハク酸(約12 g、過剰)を加える。混合物を加熱還流し、約24時間保持する。
混合物を冷却し、濾過し、次いでロータリーエバポレーターを使用して濃縮する。NaHCO3(約2 g)およびH20(10 mL)と共にCH3OH(約50 mL)を加える。混合物を約12時間撹拌し、濾過する。濾液に、約1N HClを約pH=7まで加え、次いで、0.1N HCl(冷)(約2.0 L)を加える。生成物を濾過により回収し、ベンゼンから再結晶する。
【0086】
H. BTE2-A2の合成
エストラジオール-17-O-ヘミスクシネート(約4 g)をジメチルホルムアミド(DMF)(25 mL)に溶解し、N-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)(約1.5 g)を加える。混合物を約0〜5℃に冷却し、約30分間撹拌する。ジイソプロピルカルボジイミド(約1.34 g)を加え、次いで、約0〜5℃で、約30分間撹拌する。DMF(約10 mL)中の3-アミノ-2-ヒドロキシ-6-メトキシ-ベンズアミド(約1.955 g)溶液を加え、混合物を室温で約24時間撹拌する。H2O(約200 mL)を加えて反応を停止し、混合物を酢酸エチル(約100 mL)の複数部で抽出し、次いでH2O、次いで10% NaHCO3水溶液(約25 mL)の複数部、次いで再度H2Oで洗浄する。酢酸エチル溶液をNa2SO4で乾燥し、減圧下に濃縮する。さらなる精製は、酢酸エチル:n-ヘキサン(1:1、v/v)で展開するシリカゲルクロマトグラフィーによる。
【0087】
1H NNR (500 MHZ, CDC13) δ 14.46 (s, 1H, 25 OH ), 8.37 (d, 1H, H29, J=9.00 Hz, H29, H28), 8.03 (d, 2H, 30-(C =O)-NH2,), 7.08 (d, 1H, H2, J=8.5 Hz, H2, H1), 6.60 (d, 1H, H1,. J=8.5 Hz, H1, H2), 6.53 (s, 1H, H4) , 6.36 (d, 1 H, H28, J=9.00 Hz, H28, H29), 5.97 (s, 1H, 23 NH), 5.56 (s, 1H, 3 OH), 4.69 (t, 1H, H17), 3.90 (s, 3H, 31 - OCH3), 2.77 - 2.70 (m, 6H, CH2 CH2, 20, CH2 - 21) 2.18-1.22 (m, l0H, 残りのCH2, 即ち7, 15, 16, 11, 12), 0.76 (s, 3H, 18 CH3)
【0088】
実施例2
次のスキームは、以下の実施例に記載された合成ルートを表す。
【化18】

【0089】
A. 2,6-ジヒドロキシ安息香酸
2,6-ジヒドロキシ安息香酸(CAS [303-07-1])はAldrich Chemical Companyから購入し、熱水から再結晶し、使用前に真空オーブン中で乾燥する。
【0090】
B. 2,6-ジヒドロキシ安息香酸メチル
このものは、実施例1の方法に従って製造される。
C. 2,6-ジヒドロキシベンズアミド
このものは、実施例1の方法に従って製造される。
【0091】
D. 6-ベンジルオキシ-2-ヒドロキシベンズアミド
丸底フラスコ中で、2,6-ジヒドロキシベンズアミド(約24 g)を乾燥アセトン(約500 mL)に溶解する。これにK2CO3(約50 g)を加え、生じた生成物を室温で約30分間撹拌する。ベンジルブロマイド(1.2当量)を滴下し、反応混合物を加熱還流し、約15時間それを保持する。混合物を氷浴中で冷却し、次いで濾過する。
濾取された固体をアセトン(約50 mL)の複数部で洗浄する。次いで、ロータリーエバポレーターを用いてアセトンを一部除去する。生成物を濾過し、水で洗浄し、次いでベンゼンから再結晶する。融点は約179℃〜181℃である。
【0092】
1H NMR (500 MHZ, DMSO-d6) δ 14.01 (s, 1H, 2-OH), 8.13 (d, 2H, NH2), 8.16 - 7.34 (m, 5H, C6H5), 7.30 (t, 1H, H4,J=8.5 Hz, H4, H3および/またはH5), 6.63 (d, 1H, H5, J=8.5 hz, h5, h4), 6.50 (d, 1H, H5, J=8.5 Hz, H3, H4), 5.28 (s, 2H, CH2)
13C NMR (500 MHZ, DMSO-d6) δ 171.72 (C=O), 163.75 (C2), 157.82 (C6), 136.24 (C6H5の4級炭素), 133.69 (C5), 128.73,. 128.33, 127.97 (C6H5の残りの炭素), 110.61 (C3), 104.01 (C1), 103.03 (C4), 70.43 (CH2)
【0093】
E. 6-ベンジルオキシ-2-ヒドロキシ-3-ニトロベンズアミド
丸底フラスコ中で、6-ベンジルオキシ-2-ヒドロキシベンズアミド(約10 g)を氷酢酸(約100 mL)に溶解する。この溶液を氷浴中で冷却し、濃縮する。0.2 M HNO3(約12ML)を複数回に分けて約30分間で加える。混合物を約0〜5℃で約6時間、次いで室温でさらに約18時間撹拌する。
反応混合物を冷水(約1 L)で希釈し、生じた固体を濾過により回収し、それをH2O(約500 mL)およびエタノール(約50 mL)の複数部で洗浄する。生成物を真空デシケーター中、P2O5で乾燥する。
【0094】
1H NMR (500 MHZ, DMSO-d6) ( 15.03 (s, 1H, 2 - OH), 8.30 (d, 2H, NH2), 8.10 (d, 1H, H4, J=l0Hz, H4, H5) 7.50-7.35 (m, 5H, H-C6H5), 6.82 (d, 1H, H5, J=10 Hz, H5, H4), 5.43 (s, 2H, CH2)
13C NMR (500 MHZ, DMSO-d6) ( 169.86 (C=0), 161.77 (C3), 158.04 (C2) 135.56 (6C), 131.38 (C6H5の4級炭素), 130.10 (C4), 128.74, 128.55, 127.95, 127. 80 (C6H5の残りの炭素), 107.16 (C1), 103.54 (C5), 71.00 (CH2)
【0095】
F. 3-アミノ-6-ベンジルオキシ-2-ヒドロキシベンズアミド
6-ベンジルオキシ-2-ヒドロキシ-3-ニトロベンズアミド(約7.3 g)を、乾燥CH3OH(約100 mL)および木炭(1.6 g)中でスラリーにする。これにFeC13・6H2O(約0.6 g)およびNH2NH2 H20(約6 mL)を加える。混合物を加熱還流し、約24時間保持する。生じた溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、次いでセライトを用いて濾過し、減圧下、約35〜40℃で濃縮する。生成物を酢酸エチルを用いて抽出し、その溶液をロータリーエバポレーターを使用して濃縮する。
【0096】
1H NMR (500 MHZ, DMSO-d6) ( 14.32 (s, 1H, 2-OH) 8.13 (d, 2H, NH2), 7.50-7.30 (m, 5H, H- C6H5), 6.81 (d,1H, H5, J=8.5 Hz, H5, H4), 6.50 (d, 1H, H4, J=8.5 Hz, H4, H5), 5.16 (s, 2H, CH2, 4.39 (s, 2H, 3-NH2)
13C NMR (500 MHZ, DMSO-d6) ( 172.41 (C=O), 151.16 (C2), 148.38 (C6), 136.64 (C3), 131.65 (C6H5の4級炭素, 128.63, 128.17, 127.98, 127.77 (C6H5の残りの炭素), 116.42 (C5), 103.06 (C1), 102 .41 (C4), 70.54 (-CH2)
【0097】
G. エストラジオール-17-ヘミスクシネート
この化合物は実施例1の方法に従って製造される。
【0098】
H. BTE2-A3
エストラジオール-17-O-ヘミスクシネート(約4 g)をジメチルホルムアミド(DMF)(約25 mL)に溶解し、N-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)(約1.5 g)を加える。混合物を約0〜5℃に冷却し、約30分間撹拌する。ジイソプロピルカルボジイミド(約1.5 g)を加え、次いで約0〜5℃で約30分間撹拌する。DMF(約10 mL)中の3-アミノ-6-ベンジルオキシ-2-ヒドロキシベンズアミド(約2 g)溶液を加え、混合物を室温で約24時間撹拌する。ロータリーエバポレーターを使用してDMFを一部除去し、次いで酢酸エチルに再溶解する。これを1N HCl(約25 mL)の複数部、次いでH20、次いで10% NaHCO3水溶液(25 mL)の複数部、次いで再度H2Oで洗浄する。酢酸エチル溶液をNa2SO4で乾燥し、減圧下に濃縮する。さらなる精製は、酢酸エチル:n-ヘキサン(1:1, v/v)で展開するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる。
【0099】
1H NMR (500 MHZ, CDC13) δ 14.46 (s, 1H, 25-OH) , 8.40 (d, 1H, H29, J=9.00 Hz, H29, H28) , 8.04(d, 2H, 30 C=ONH2), 7.41-7.38 (C6H5) , 7.09 (d, 1H, H2, J=8.5 Hz, H2, H1) , 6.55 (d, 1H, ,H1 J=8.5Hz, H1, H2), 6.53 (s, 1 H, H4), 6.46 (d, 1H, H28, J=9.00 Hz; H28, H29), 5.97 (s, 1H, 23 - NH), 5.09 (s, 2H, 31-CH2), 4.70 (t,1H, H17), 2.77- 2.70 (m,_ 6H, CH2 - 6, CH2 - 20, CH2 - 21), 2.20 - 1.22 (m, 10H, 残りのCH2 即ち、7,15,16,11,12), 0.77 (s, 3H, 18 - CH3)
【0100】
実施例3
次のスキームは、以下に記載の標記化合物を製造するための合成ルートを表す。
【化19】

【0101】
BTE2-A3(約4 g)をCH3OH(約50 mL)および酢酸エチル(50 mL)で溶液とする。これにPd(C) 10%(約2 g)を加え、そのスラリーを約24時間、約40 p.s.i.のH2下に置く。生じた生成物をセライトを用いて濾過し、次いで酢酸エチル:n-ヘキサン(1:1 (v/v))で展開するシリカゲルクロマトグラフィーで精製する。Rfは約0.27であり、収量は約2.56 gである。
【0102】
実施例4
【化20】

の製造
【0103】
3-アミノ-2-ヒドロキシ-6-メトキシベンズアミドは、前記の実施例1のようにして製造される。それをアミド生成条件下にγ-ブチロラクタムと反応させて、対応するアミド(すなわち、3-(4-アミノブチリルアミノ)-2-ヒドロキシ-6-メトキシベンズアミド)を生成する。
エストラジオールを3-ベンジルブロマイドと反応させ、3-ベンジル保護誘導体を生成し、それをホスゲンと反応させて対応する酸クロライドを生成する。その酸クロライドを上記の生成物の3-(4-アミノブチリルアミノ)-2-ヒドロキシ-6-メトキシベンズアミドと反応させる。それの水素添加により、上記に同定された化合物が生成する。
【0104】
実施例5
【化21】

【0105】
17-β-エストラジオールをベンジルブロマイドと反応させ、対応するベンジルで保護された誘導体を生成する。生成物をアセトンに溶解し、クロミックオキサイドと約0〜5℃で混合し、対応するケトンを生成する。1,3-プロパンジオールおよびp-トルエンスルホン酸をそのケトンと反応させ、対応するケタールを生成する。そのケタールをTHF中、水素化アルミニウムリチウムおよび塩化アルミニウムと反応させて、対応する17-(3-ヒドロキシプロポキシ)誘導体を生成する。クロミウムオキサイドでの酸化により対応する酸が生じる。その酸を、実施例1に記載のようにして製造された3-アミノ-2-ヒドロキシ-6-メトキシベンズアミドと反応させ、次いで水素添加により、上記に同定された物質を生成する。
【0106】
実施例6
【化22】

の製造
【0107】
17β-エストラジオールをベンジルブロマイドと反応させ、3-ベンジルオキシ誘導体を生成する。この生成物をアセトンに溶解し、p-トルエンスルホン酸の存在下、アジピン酸と還流下に反応させ、対応するエステルを生成する。そのエステルをジシクロヘキシルカルボジイミドの存在下、3-アミノ-2-ヒドロキシ-6-メトキシベンズアミドと反応させ、次いで水素添加により、上記に同定された物質を生成する。
【0108】
実施例7
【化23】

【0109】
2-アミノ-1,3,4-チアジアゾール-5-スルホンアミドを無水コハク酸と反応させ、スクシンアミド誘導体、2-(4-カルボキシプロピオニルアミノ)-1,3,4-チアジアゾール-5-スルホンアミドを生成する。この生成物を、ジイソプロピルカルボジイミドの存在下、3-アミノ-2-ヒドロキシ-6-メトキシベンズアミドと反応させて、上記に同定された化合物を生成する。
【0110】
実施例8
2-アミノ-1,3,4-チアジアゾール-5-スルホンアミドの代わりに、6-ヒドロキシベンゾチアゾール-2-スルホンアミドを用いる以外は、実施例7の方法に従い、式:
【化24】

を有する物質を生成する。
【0111】
実施例9
3-アミノ-2-ヒドロキシ-6-メトキシベンズアミドの代わりに、3-アミノ-6-ベンジルオキシ-2-ヒドロキシベンズアミドを用いる以外は、実施例8の方法に従い、式:
【化25】

を有する対応の物質を生成する。
【0112】
実施例10
3-アミノ-2-ヒドロキシ-6-メトキシベンズアミドの代わりに、3-アミノ-6-ベンジルオキシ-2-ヒドロキシベンズアミドを用いる以外は、実施例7の方法に従い、式:
【化26】

を有する対応の物質を生成する。
【0113】
実施例11
まとめて「スタチン類」と呼ばれる、シンバスタチン(次のスキーム中の構造1)およびロバスタチン(次のスキーム中の構造2)の骨へのターゲティングは、次のスキームに示されるように、柔軟性に富んだリンカーを用いて、骨標的作用物質をスタチンの非重要(すなわち、可変)部分に結合することにより成し遂げられる。
【0114】
【化27】

【0115】
スタチンの2重結合の最も束縛が少ない面は、環Aの2重結合の上面である。環Cに示されるように、ラクトン化された活性ベータ-ヒドロキシ酸官能基を有するスタチンのプロドラッグ体を用いて、環Aの2重結合を標準的な方法を用いてフェニル ジアゾアセテートを用いて、シクロプロパン化する。次いで、生じたシクロプロパンカルボン酸フェニルエステルを、上記スキーム中に示された構造3のような分子を用いた選択的アミノ分解に付す。フェニルエステルを用いることにより、そのエステルカルボニル基の反応性が、競合するラクトンおよびエステル側鎖部分の反応性よりも何倍も上昇する。最終的な骨標的スタチンは、上記のスキームに示された構造4を有するだろう。
【0116】
骨標的インビトロ試験
初めに、骨標的医薬として作用する本発明の化合物の能力を、希水溶液から微晶質ヒドロキシアパタイト[Ca10 (P04)6・OH2] (HA)に結合する化合物の能力を測定することにより評価する。
試験化合物の溶液は、H2O:ジメチルスルホキサイド(DMSO)(約99:1、v/v)中、10-5 Mに調製される。これらの溶液は、λ=500〜190 nmで走査する電子測光(electronic photometric)吸収スペクトルの測定にかけられる。最大吸収(λmax)および吸光係数(ε)が、ビアー-ランバート(Beer-Lambert)の法則を用いて決定される。そのデータを表Cに示す。
【0117】
【表1】

【0118】
結合測定のために、各溶液1 mLを採取し、スラリー化したHAの0または0.5%(w/v)のいずれかを含む1% DMSO(aq)中のトリスヒドロキシメチルアミノメタン(50 mM) 0.1 mLに加える。これらの溶液およびスラリーを約4分間混合し、次いで10,000 × gで3分間遠心分離する。上清液を、前に決定したλmaxでUV吸収分光分析にかける。試験化合物の濃度が測定され、結合の程度が計算される。テトラサイクリンをポジティブコントロール化合物として含む。その結果を表Dに示す。
【0119】
【表2】

表Dのデータは、本発明で製造された化合物が、ヒドロキシアパタイトに対して強い親和性を有することを示す。
【0120】
有効性のインビボ試験
インビボ実験−両方の卵巣摘出および擬似手術された、Harlan Laboratories(インディアナポリス、インディアナ州)からのSprague-Dawley雌性ラット(150〜170 g)が、自由に水道水と食餌(Purina Laboratory Rodent Diet 5001: カルシウム0.95%、全リン0.67%および非フィチン酸塩リン(non-phytate phosphorous)0.40%)が摂取可能な状態で、22℃で約12時間の暗/明サイクルで飼育される。ラットはランダムに約6〜10動物の群に割り当てられる。
【0121】
化合物の投与は、手術後約4日に開始される。注射は首筋かまたは強制飼養により、皮下実験に対しては約0.2 mLの量/体重kgで、または経口実験に対しては約0.5 mL/体重kgで、週に3回(例えば、月曜日、水曜日および金曜日)、約6週間行われる。全ての化合物はコーンオイル中5% DMSOに溶解される。
約6週間の投薬後、動物は炭酸ガスの窒息により安楽死される。血液を心臓穿刺により採取し、子宮および左右両方の大腿骨を切除する。生の子宮の重量を得る。全ての動物の処置および世話は、NIHガイドラインの遵守を保証する、動物世話および使用の内部委員会により承認される。
【0122】
全大腿骨密度の測定−切除後、大腿骨はガーゼを使って軟組織がきれいにこすり落とされ、生の大腿骨重量が測定される。次いで、大腿骨を完全に水和するために、真空下、蒸留された水に約1時間浸漬する。密度は、次式:密度=[水和された大腿骨の質量/(水和された大腿骨の質量−水中に浸漬された水和された大腿骨の質量)]*環境温度での水の密度、を用いるアルキメデスの原理により決定される。
OVXに関連する骨減少を約50%抑制するのに有効な用量を、内挿法により決定する。そのデータを表Eに示す。
【0123】
【表3】

【0124】
定量コンピューター断層撮影(QCT)解析−各大腿骨をガーゼに包み、約0.9%生理食塩水に浸し、解析まで約-20℃で冷凍する。スキャンする前に、大腿骨を室温で解凍する。pQCTスキャンは、Stratech XCT RM pQCT 機 (ノーランド、フォートアトキンソン、ウィスコンシン州)で行われる。各大腿骨の全長測定値が得られる。CTスキャン(0.5 mmスライス)が大腿骨全長の18%の距離での大腿骨の遠位端で行われる以前に、基準点を決定するために予備的像が使用される。骨梁骨塩含量および密度の解析が、製造業者の小動物ソフトウエアを用いて行われる。各パラメータの変動係数は、各測定間の再ポジショニングを用いた同じ骨での約5連続測定を基にして、約5%以下である。
【0125】
BTE2-D3での研究−コントロールまたはエストラジオール処置動物の骨密度より大きい骨密度を示すQCTデータが得られる。骨密度は必ずしも骨強度と等価ではなく、それゆえ、その上に、追加の試験(末梢骨幹端の鈍力圧入(blunt indentation force))も行われる。
図1に関して、骨の機械的受容能の測定として、破壊試験に対する鈍力圧入が、6週齢OVXラットからの大腿骨に行われる。擬似手術動物も同時にコントロールとして試験される。本発明の代表的な化合物のBTE2-D3は、用量依存的に骨強度を増加することを示す。
通常の用量でのラロキシフェンは、小さい(例えば30%の)効果を有する。エストラジオールは、骨減少症を完全に予防することができる。これらのデータは、骨密度において、BTE2-D3が親のエストラジオールよりも大きな最大効果を有することを示す。
【0126】
本発明の他の態様は、この出願に開示されている本発明の詳述および実施例を考慮すれば当業者に明白であろう。明細書および実施例は、代表例としてのみ見なされるもので、本発明の範囲および真意を限定するためのものではない。
断りがなければ、明細書およびクレーム中で用いられる、成分の量、反応条件のような性質等の数値は、全ての場合、「約」の語に修正されるものとして理解されるべきである。したがって、それと反対のことが示されていなければ、示された数値のパラメータは、本発明により決定されることが求められ、所望の性質により変化し得る概算値である。
【0127】
本発明の広い範囲を示す数値の範囲およびパラメータは概算値であるけれども、実施例に示された数値は可能なかぎり正確に報告されている。しかしながら、いずれの数値も、各試験の測定で見られる標準偏差から必ず生じる、いくらかの誤差を本質的に含む。
この出願を通して、種々の刊行物が参照される。そのような全ての参考文献は、ここに参照として組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明の代表的な化合物で処理されたものを含む動物の末梢大腿骨強度を示す棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

(式中、
AおよびBは、それぞれ骨標的部分であり;
Xは、主鎖に1〜10の炭素原子を含み、全部で20までの炭素原子を含むアルキレン基であり;
Yは、
【化2】

または化学結合であり;
Vは、
【化3】

であり;
Eは、
【化4】

または化学結合であり;
但し、Y-E-Vは、
【化5】

であり;そして
Qは、骨と相互作用し、骨吸収を抑制するか、骨形成を増加するか、またはこれらの両方により骨代謝に影響を及ぼす作用物質であり、QはVに結合する前はヒドロキシ基、アミノ基またはオキソ基を有しており、該ヒドロキシ基、アミノ基、オキソ基はいずれであってもVに結合するときに該物質から脱離し;そして
nは0〜6の整数である)
の化合物、または医薬的に許容されるその塩。
【請求項2】
骨標的部分Aが、
【化6】

であり、骨標的部分Bが、
【化7】

(式中、
R1は水素、低級アルキルまたはアリール低級アルキルであり;
R2は水素、低級アルキルまたはアリール低級アルキルであり;
R3は水素または低級アルキルであり;
R4は水素、アリール、アリール低級アルキル、または低級アルキルであり;
R5およびR6は、独立して水素または低級アルキルであるか、またはR5およびR6はそれらが結合している炭素原子と一緒になって、4〜10の環炭素原子を含み、全部で18までの炭素原子を含む環を形成し;
R7はヒドロキシ、低級アルコキシ、またはNR8R9であり;
R8は水素または低級アルキルであり;そして
R9は水素または低級アルキルである)
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Qが炭酸脱水酵素阻害剤、性ホルモン、ビタミンD、またはDHEAである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R7がNR8R9である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
R3が水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
R5およびR6が独立して、水素または低級アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
Xが2〜6の炭素原子を含むアルキレン架橋である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
Xが2〜4の炭素原子を含む、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
Y-E-Vが、
【化8】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
炭酸脱水酵素阻害剤が、2-アミノ-1,3,4-チアジアゾール-5-スルホンアミドまたは5-ヒドロキシベンゾチアゾールスルホンアミドであり;男性ホルモン物質がテストステロンまたはアンドロステンジオンであり;女性ホルモン物質がエストリオールまたはエストラジオールである、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】

【化9】

(式中、
R3は水素または低級アルキルであり;
R4は水素、低級アルキル、アリールまたはアリール低級アルキルであり;
Xが1〜6の炭素原子を含むアルキレン基であり;
Y-E-Vが、
【化10】

であり;
Qが炭酸脱水酵素阻害剤、性ホルモン、ビタミンDまたはDHEAであり、それらは全ていずれであっても、Vに結合する炭素原子においてヒドロキシ基、アミノ基またはオキソ基を欠いており;そして
nが0〜6の整数である)
の、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
女性ホルモン物質がエストリオールまたはエストラジオールであり;男性ホルモン物質がテストステロンまたはアンドロステンジオンであり;そして炭酸脱水酵素阻害剤が2-アミノ-1,3,4-チアジアゾール-5-スルホンアミドまたは5-ヒドロキシベンゾチアゾールスルホンアミドである、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
【化11】

である、請求項11に記載の化合物。
【請求項14】
【化12】

である、請求項11に記載の化合物。
【請求項15】
【化13】

である、請求項11に記載の化合物。
【請求項16】
請求項1または請求項11に記載の化合物の医薬的に有効な量、およびそれのための医薬的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項17】
請求項1または請求項11に記載の化合物の有効量を投与することを含む、変性骨疾患の治療を必要とする動物における変性骨疾患の治療または予防の方法。
【請求項18】
該動物が哺乳動物である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
変性骨疾患が骨粗鬆症である、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−517041(P2007−517041A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547373(P2006−547373)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/043336
【国際公開番号】WO2005/066114
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(506217427)ユニバーシティー オブ ルイヴィル リサーチ ファウンデーション (8)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF LOUISVILLE RESEARCH FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】University of Louisville,Louisville,KY 40292,United States of America
【Fターム(参考)】