説明

高光学活性のキラルイオン性液体

本発明は、高光学活性キラルイオン性液体の使用、特にガスクロマトグラフィー用、および反応溶媒としての使用に関する。特定の高光学活性キラルカチオン性液体が、高光学活性キラルアニオン性液体の種類と同様に記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2004年7月9日に出願された米国仮特許出願番号第60/586,782号の利益を主張し、この開示は引用する本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
従来、非キラルイオン性液体が溶媒として使用されている。ラセミ化合物であるキラル液体も溶媒として使用されている。Yasuhiro Ishida et al.,「Design and synthesis of a novel imidazolium−based ionic liquid with planar chirality」,Chem.Commun.2240−41(2002)(英国王立化学会(Royal Society of Chemistry)の版権)を参照されたい。エナンチオマーに富んだキラルカチオンの溶媒も開示されている。Wasserscheid et al.,「Synthesis and properties of ionic liquids derived from the ’chiral pool’」,Chem.Commun.200−01(2002)、およびWeiliang Bao et al.,「Synthesis of Chiral Ionic Liquids from Natural Amino Acids」,68 J.Org.Chem.591(2003)を参照されたい。これらには、引き続く反応を行うための媒体としては記載されていない。
【0003】
Earle et al.は、報告されていない立体配置または純度のキラルアニオンを有するイオン性液体である[bmim][ラクテート]を含む種々の溶媒中のジエン類と求ジエン体との反応を開示している。これらの結果は非対称ではなかった。MartynJ.Earle et al.,「Diels−Alder reactions in ionic liquids」,Green Chem.23−25(1999)を参照されたい。キラル非イオン性材料も、ガスクロマトグラフィーの固定相として使用されている(米国特許第4,948,395号および第5,064,944号を参照されたい)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高光学活性の(optically enhanced)キラルイオン性液体(「OCIL」)に関する。これらは塩であって、100℃以下の融点を有する液体である。好ましくは、これらは室温(18℃〜約25℃)以下で液体である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によるOCILは、キラル化合物および/またはそれらの塩の混合物およびそれらの会合体(associations)からできた液体材料である。本明細書において使用される「キラル」は、その化合物が少なくとも1つの立体中心または不斉軸(「キラル中心」または「不斉中心」とも呼ばれる)を有することを意味する。本発明によるOCILと関連して使用される「イオン性」は、カチオン、アニオン、またはそれらの塩を含む。キラルアニオンは、立体中心または不斉軸を含むアニオンである。キラルカチオンは、立体中心または不斉軸を含むカチオンである。OCILは、キラルカチオンおよびキラルアニオンの両方の塩、混合物、または会合体であってもよい。したがって、キラルアニオンは、非キラルカチオンと会合して、本明細書においては「キラルアニオン」または「アニオン性OCIL」とも呼ばれる「キラルアニオン含有OCIL」を形成することができるし、キラルカチオンと会合することもできる。同様に、キラルカチオンは、非キラルアニオンと会合して、本明細書において「キラルカチオン」または「カチオン性OCIL」とも呼ばれる「キラルカチオン含有OCIL」を形成することができるし、これはキラルアニオンと会合することもできる。
【0006】
本明細書に記載の化合物の多くは、互いに反対の光学的立体配置を有する鏡像化合物の組である複数のエナンチオマーである(それぞれを適宜エナンチオマーまたは光学異性体と呼ぶ)。これらは、ラセミ(50:50)混合物、または1種類のエナンチオマーが他のものよりも多く存在する高光学活性混合物のいずれかの形態で存在することができる。高光学活性混合物の場合に記載される場合でも、「高光学活性」は、2種類のエナンチオマーの実質的または完全に1種類のみである光学的に純粋な材料を含むことも意味する。本発明のOCILはエナンチオマーに限定されるわけではなく、2つ以上の立体中心を有する化合物のジアステレオ異性体も含むことができる。たとえば2つの立体中心を有するこの種の化合物は、本発明の場合、2つの異なるエナンチオマーの組を生成するとして見なすことができる。当然ながら、各エナンチオマーが同じ混合物として存在する場合、1種理の組のエナンチオマーが、他の組より多い比率で存在することができる。ジアステレオ異性体の場合のOCILは、少なくとも1種類のエナンチオマーがその対応するエナンチオマーよりも多量に存在する場合に、本明細書に記載の他の基準に適合する化合物となる。他方のエナンチオマーの組は、互いに対してラセミ体として存在することもできるし、その組のエナンチオマーの1種類の光学異性体も高光学活性となることもできる。したがって、他の存在し得る光学異性体に対してジアステレオ異性体となり得る場合でも、本発明の場合では、ラセミ混合物およびエナンチオマーと呼ぶことがなお適切となる。
【0007】
本発明の一態様は、新しい種類のキラルカチオン含有OCIL分子(多くの場合本明細書における用語「化合物」の同義語として使用され、または文脈に応じて使用される)、特に、本明細書において個別に同定されるそのような分子の発見である。本発明の別の態様は、少なくとも1種類のエナンチオマーが他のものよりも少なくとも約2%多いキラルカチオン含有OCILである。本発明の別の態様は、少なくとも1種類のエナンチオマーが他のものよりも少なくとも約10%多いキラルカチオン含有OCILである。本発明の別の態様は、少なくとも1種類のエナンチオマーが他のものよりも少なくとも約20%多いキラルカチオン含有OCILである。別の態様においては、本発明は、N−アルキル−N−メチルエフェドリニウム塩、および/または表Aに示される分子以外のキラルカチオン含有OCIL分子に関する。
【0008】
本発明の別の態様は、ある種類のアニオン含有OCILの発見である。本発明の一態様は、少なくとも1種類のエナンチオマーが他のものよりも少なくとも約2%多いキラルアニオンOCILである。本発明の別の態様は、少なくとも1種類のエナンチオマーが他のものよりも少なくとも約10%多いキラルアニオン含有OCILである。本発明の別の態様は、少なくとも1種類のエナンチオマーが他のものよりも少なくとも約20%多いキラルアニオン含有OCILである。本発明の別の態様においては、ラクテートではないアニオン含有OCILが提供される。
【0009】
本発明のさらに別の態様においては、アニオンおよびカチオンの両方がキラルであり、少なくとも一方、好ましくは両方が高光学活性なある種のOCILが提供される。本発明のこの態様の別の実施形態においては、OCILのカチオン部分およびアニオン部分の両方がキラルであるが、反対の旋光性を有する。したがって、たとえば、カチオンが(R)であり、アニオンが(S)であってよい。実際、この場合では、(R)配置のカチオン、(S)配置のカチオン、(R)配置のアニオン、および(S)配置のアニオンのそれぞれが様々な比率で存在することができる。したがって、キラルカチオンおよびキラルアニオンの組み合わせとしては、(R)(S)、(S)(R)、(R)(R)、(S)(S)が挙げられ、好ましくはこれらが実質的に純粋である。
【0010】
本発明のさらに別の態様においては、キラルアニオン、キラルカチオン、あるいは混合アニオンおよび混合カチオンを含有するOCILを含むコロイドの溶解、懸濁、ゲル化、乳化、分散、および形成に使用することができる溶媒が提供される。このようなものとしては表Aに記載のものを挙げることができる。
【0011】
本発明の別の態様は、少なくとも1種類のキラルカチオンおよび/またはキラルアニオンを含有するOCILの存在下で化学反応を行う方法である。これらは表Aのものを含むことができる。このOCILは、溶媒系の一部として存在することができるし、1種類以上の反応体の反応媒体または担体として、あるいは反応体として存在することもできる。任意のOCILの存在下で行った化学反応で得られる、キラルまたはアキラル、ラセミ体または非ラセミ体、薬学的または化学的に活性/反応性または不活性、最終生成物または中間体のいずれかの分子も本発明の一部であると見なされる。本発明によるOCILを用いて不斉合成された非ラセミ化合物が好ましい。エナンチオ(または光学異性体)選択的であるあらゆる反応も好ましい。OCILを用いる反応、またはOCILの存在下での反応であって、荷電種(そのOCIL以外)を反応体、試薬、中間体、または最終生成物として使用することを伴う反応も好ましい。
【0012】
反応としては、縮合、水素化、求核および求電子置換、脱ラセミ化、不斉合成、エステル化、エーテル形成、ハロゲン化、重合反応、連鎖成長、架橋、塩形成、沈殿、または結晶化などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。脱ラセミ化および不斉合成反応が特に好ましい。エナンチオ(または光学異性体)選択的である、上記に記載した種類のあらゆる反応も好ましい。上記に記載のOCILを用いる反応であって、荷電種(そのOCIL以外)を反応体、試薬、中間体、または最終生成物として使用することを伴う反応も好ましい。本発明の別の態様によると、上記のあらゆる反応は、実質的に光学的に純粋(一方のエナンチオマーが他方のエナンチオマーに対して少なくとも90%)となるように増強されたOCILの存在下で行われる。好ましくは実質的に純粋なOCILを使用するこれらの反応としては、不斉合成、脱ラセミ化(deracimization)、荷電種を使用する反応、およびエナンチオ選択的プロセスが挙げられる。
【0013】
本発明の特に好ましい態様は、反応生成物を生成させるために、OCILの存在下で少なくとも1種類の反応体の化学反応を行うステップを含む、化合物の不斉合成である。この反応生成物を回収すると、それは光学活性であり、すなわち立体中心または不斉軸を有する。この反応生成物の一方のエナンチオマーは、他方のエナンチオマーよりも、通常少なくとも約2%以上(52:48%)の差で多く存在する。好ましくはOCILは溶媒である。エナンチオマーの含有率の間で、より好ましくは少なくとも10%の差、さらにより好ましくは少なくとも20%の差となり、さらにより好ましくは実質的に純粋なOCILが見いだされる。
【0014】
本発明の別の特に好ましい態様は、OCILの存在下にある反応体を反応させて反応生成物を形成する脱ラセミ化反応である。この反応体はラセミ体であり、反応生成物は、光学活性であるがラセミ体ではない。この場合も、好ましくは、1種類のエナンチオマーの量が他のものよりも少なくとも2%多く(52:48%)、より好ましくは、1種類のエナンチオマーが、他のものと比べて少なくとも約10%多く存在し、さらにより好ましくはこの差が少なくとも約20%となり、最も好ましくは実質的に純粋となるように1種類の反応生成物が増加する。好ましくはOCILは溶媒である。OCILの存在下で行われるこれらの反応の不斉生成物も、請求の範囲内となる。これらの反応生成物は、実質的に光学的に純粋な反応生成物が得られるように分離することもできる。
【0015】
本発明の別の態様は、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー(「GC」)、および特にキャピラリーGCなどのクロマトグラフィー用に調製されたカラム中の固定相または担体としての、カチオンおよび/またはアニオンのOCILの使用に関する。特に、カラムと、OCILが会合した(associated)固定相とを含むクロマトグラフィーに使用されるカラムが提供される。あらゆるOCILを固定相として使用することができる。一実施形態においては、このカラムはキャピラリーであり、OCIL固定相は、前記キャピラリー内表面にコーティングされる。本発明によるカラムは、カラム中に充填された固体担体上に固定相を吸収、吸着、またはコーティングさせた充填カラムであってもよい。
【0016】
本発明は、クロマトグラフィーの種類に応じて気体または液体であってよい移動相中で、光学異性体の混合、溶解、分散、または懸濁を行うステップと、内部にコーティングされるか、固定相としての充填剤の一部であるかのいずれかである少なくとも1種類のOCILを含むカラム中に、分離すべき化合物を導入するステップと、分離すべき化合物の少なくとも1種類を分割するために、移動相と分離すべき化合物の少なくとも1種類とをカラム中に進行させるステップとを含む、化合物を分離する方法も含む。本発明の特に好ましい態様においては、分離すべき化合物は光学異性体である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
「高光学活性」とは、本発明のキラル化合物が、ラセミ混合物(ほぼ同じ比率で両方のエナンチオマーが存在する)としては存在しないことであると理解されたい。その代わり、本発明によると、少なくとも1種類のエナンチオマーがより多い比率で存在する。前述したように、このことは、同一であるがそれらの配置が異なる1つの組の光学異性体のエナンチオマーの少なくとも1種類が、他のものよりも多い量で存在するジアステレオマーにも同様に適用される。より好ましくは、この一方のエナンチオマーが、他方のエナンチオマーよりも少なくとも約2.0%(適宜モル%または重量%)多い量で存在する。より好ましくは、1種類の光学異性体は、他のものよりも少なくとも約10%多い量で存在し、さらにより好ましくは、エナンチオマーの組の残りの光学異性体よりも少なくとも約20%多い量で存在する。さらにより好ましくは、このような化合物は「実質的に光学的に純粋」であり、この場合対象の化合物の約90%以上が単一のエナンチオマーである。当然ながら、これは他方のエナンチオマーを基準としている。たとえば2つの立体中心を有するジアステレオマーは、90%の1種類の光学異性体と、10%のそのエナンチオマーとを有し、さらに全組成の53%が、他方の組のエナンチオマーのラセミ混合物である場合に、本発明において実質的に光学的に純粋となることができる。最も好ましくは、OCILは、少なくとも1種類のエナンチオマーが他方に対して95%以上で存在する。
【0018】
2種類以上のキラルイオン性液体の混合溶媒または固定相の場合、すべての液体が高光学活性OCILである必要はない。少なくとも1種類が高光学活性であれば、1種類以上がラセミ体であってもよい。
【0019】
OCILは、多くの用途が見いだされている。これらは、溶媒、分散剤、ゲル化剤、乳化剤、コロイド形成剤、および懸濁剤として有用であることが分かっている。実際、ほぼあらゆる他の分子とほぼあらゆるレベルで相互作用できるので、OCILは、従来の有機溶媒および水と全体的または部分的に置き換え可能なことが多い。OCILは、イオン的に相互作用できるだけでなく、たとえば、双極子相互作用、水素結合、パイ−パイ(π−π)相互作用、分散相互作用、さらには立体的作用も可能である。このため、反応体、溶媒として使用される場合、または単に反応中に存在するだけで、化学反応においてこれらが有用となる。さらに、少なくとも大部分が1種類の光学異性体である、または別のものである材料を使用できることで、研究および製造に別の次元を提供する。同じ化学的性質の溶媒を使用して潜在的に異なる相互作用が可能となる。1種類の光学異性体の量が多いこと、または好ましくはそれらが実質的に光学的に純粋な性質によって、従来考えられなかった相互作用が可能となる。特に、同じ旋光性を有する、または反対の旋光性を有することができるキラルカチオンとキラルアニオンとの混合物の場合に、このことが言える。
【0020】
これらのOCILは、揮発性有機溶媒の再利用可能な代替物となるという点で「環境に優しい」と考えられる。これらは、空気および湿気に対して安定であり、優れた可溶化性能を有し、蒸気圧は実質的に存在しない。これらは、非水性であるが、水と混合することができ、したがって、水が適切ではない種々の状況で使用することができる。
【0021】
本発明の一態様によるOCILとしては、高光学活性キラルカチオン、たとえば、限定するものではないが、(−)−N−ベンジル−N−メチルエフェドリニウム・NTf2、イソロイシン系IL、エステルまたはアルコールのいずれかとしての(−)コチニン・TfO、D(+)−カルニチンニトリル・NTf2、1−((R)−1,2−プロパンジオール)−3−メチルイミダゾリウムクロリド、(−)−スコポラミンN−ブチル・NTf2、および(+)−クロロメチルメチルエーテルイミダゾリウムILが挙げられる。これらの構造は下記:
【化1A】

【化1B】

の通りである。
【0022】
これらのキラルカチオン含有OCILの一部は、下記の一般的な反応:
【化2A】

【化2B】

【化2C】

【化2D】

によって生成することができる。
【0023】
以上のものは、本発明の一態様によるキラルカチオン含有OCILの単なる例である。それぞれが個別に本発明の一部であると見なされる。その他のカチオン性OCILは、当技術分野で公知の方法によって生成することができる。前述のWassefscheidおよびBaoの文献を参照されたい。キラルカチオン含有OCILとして定性するためには、分子は以下の基準の少なくとも一部を満たすべきである。少なくとも1つの立体中心または不斉軸を有するべきであり、100℃以下の融点を有し、最も好ましくは室温(18℃〜25℃)以下で液体であるイオン性物質として合成できるべきである。系または混合物中で、1種類の光学異性体を、同じ分子のそのエナンチオマー光学異性体よりも多量に含有すべきである。好ましくは、実質的に光学的に純粋である。好ましくは、分子の少なくとも1種類のエナンチオマーの少なくとも95%w/wが、1種類の光学異性体の形態となる。キラルカチオン含有OCILであるためには、全体が正電荷を有する必要もある。
【0024】
新規なキラルカチオン含有OCILの種類からは、表Aに示されるこれらの分子は除外される。
【化3A】

【化3B】

【化3C】

【0025】
光学純度が高く、特に、1種類のエナンチオマーが、他のものよりも少なくとも約10%多い、より好ましくは他のものよりも20%多い、より好ましくは実質的に光学的に純粋となる純度を有する表Aに示す分子は、本発明の一部と見なされる。さらに、クロマトグラフィー中の固定相として、本明細書に記載の化学反応における溶媒または他の用途で、表Aに示される分子を使用することも、本発明の一部であると見なされる。
【0026】
本発明によるOCILは、アニオンであるOCILも含む。これらは、反対の電荷を有することを除けば、キラルカチオン含有OCILと全体的に同じ性質を有する。これらのキラルアニオン含有OCILとしては、限定するものではないが、下記の構造:
【化4】

が挙げられる。
この物質は、下記の一般的な反応:
【化5】

によって製造することができる。
【0027】
OCILのキラルアニオンの他の非限定的な例は、下記の構造:
【化6】

が挙げられる(ナトリウムカチオンを含めて示しており、したがってより正確には−O-Na+)。
【0028】
アニオン性OCILを生成するために使用することができる一般的な反応は以下の通りである。
アニオン交換反応は、OH-型強アニオン交換樹脂上で、交換可能なアニオン(Br-、I-など)を含有するアキラルまたはキラルなILと樹脂との間で進行させることができる。続いて、水酸化物ILを、カルボン酸基によってさらにキラル化合物と反応させることができる。これによって最終的にアニオン性OCILが得られる。
【化7】

注:1)RES−NR3+は、水酸化物イオン型のアニオン交換樹脂である(多くのところから入手可能な市販製品である)。2)EMIM+はエチルメチルイミダゾリウムイオンである。
【0029】
キラルカチオン含有OCILおよび/またはキラルアニオン含有OCILのいずれかから形成された塩も含まれる。これらはOCILと対イオンとを含む。対イオンとしては、PF6−、[(CF3SO22N−]、(CF3)SO2-、Cl−、BMIM(ブチルメチルイミダゾリウム)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの混合物は、キラルアニオン含有OCILおよびキラルカチオン含有OCILが、互いに対イオンとして作用する塩として会合する、または分離する場合にも形成することができる。このような塩は、たとえば、本明細書において同定されたあらゆるアニオン性OCILおよびカチオン性OCILから形成することができる。
【0030】
本発明の別の好ましい態様は、OCILの存在下、より好ましくはOCILを反応媒体、反応溶媒、または共溶媒として使用して、化学反応を行って反応生成物を形成することを含む。このようなOCILは実質的に光学的に純粋であることが好ましい。これらの反応は、本発明による1種類以上のOCILを少なくとも1種類の反応体と接触させるか混合し、反応体(「反応生成物」)にある変化を生じさせる反応を行うことを含む。この変化は、沈殿や溶融などの物理的状態の変化であってもよいし、イオン化、フリーラジカル形成などの反応体構造の変化であってもよい。この反応は、化学的転移、および/または、アルデヒドをケトンへ、またはアルコールを酸に変化させることなどの酸化/還元反応を含むこともできる。不飽和結合の移動、電荷が共鳴することなども考慮される。化学反応としては、水和、縮合、水素化、求核および求電子置換、環化、エステル化、エーテル形成、ハロゲン化、重合反応、連鎖成長、架橋、塩形成、結晶化、求核または求電子付加または置換、飽和、あるいは不飽和を挙げることもできる。これらは、可能な反応の一部にすぎない。OCILはこれらの反応に関与したり、反応を促進したりすることができるが、これらは一般に、実際には関与せず、得られる化学物質の一部とは一般にはならない。当然ながら、溶媒和物の形態の結晶性材料などの種々の材料内に溶媒が含まれることはあり得ることであり、このことが排除されるものではない。
【0031】
本発明によるOCILを使用して行うことができる反応としては、限定するものではないが、以下のものを挙げることができる。
【0032】
酸化
1.NaIO4による、スルフィド、セレニド、およびアミンの対応する酸化物への酸化、ならびに対応するアリル酸化物のアリルアルコールへの転移。
2.KMnO4、OsO4、および触媒OsO4、ならびに再酸化剤によるアルケンのcis−1,2−ジオールへの酸化。
3.KHSO5・KHSO4・K2SO4および水による、アルケンのtrans−1,2−ジオールへの酸化。
4.CuCl2・4H2OおよびFeCl3・6H2Oによる、2−ナフトールのビナフトールへの酸化、ならびにCuCl2・4H2Oによる2−ナフチルアミンのビナフチルジアミンへの酸化。
5.過酸;H22ならびに尿素、ニトリル、タングステート、モリブデード、およびバナジル試薬;NaOClならびにCr−またはMn(サレン)錯体;NaIO4ならびにMn(III)または触媒RuCl3;KMnO4およびCuSO4;メチルトリオキソレニウム、ならびにKHSO5・KHSO4・K2SO4による、オレフィンのエポキシ化。
6.KMnO4、テトラ−N−プロピルアンモニウムパールテネート、および他の酸化剤を使用した酸化による、第2級アルコール[1−フェニルエチルアルコールおよび2−ブタノール]の速度論的分割
【0033】
還元
1.NaBH4、NaHB(OMe)3、NaHB(OAc)3、およびNaH3BCNによる、ケトン[モデル系としてPhCOMeおよびアセト酢酸エチル]のアルコールへの還元。
2.NaH3BCNを使用した種々の第1級および第2級アミンによる、ケトン[モデル系としてPhCOMeおよびシクロヘキシルメチルケトン]の還元的アミノ化。
【0034】
ペリ環状反応
1.ディールス・アルダー(Diels−Alder)、ヘテロディールス・アルダー、および逆電子要請型ディールス・アルダー反応、特に、フランのような可逆的反応。ラクテート中では行わない。
2.コープ転移(Cope)およびオキシ・コープ転移。
3.クライゼン(Claisen)転移。
【0035】
Pd触媒によるプロセス
1.アミン、安定化カルボアニオン、およびその他の求核試薬によるアリルアセテートのアルキル化。
2.アリールハライド/トリフレート、シクロアルケン、およびPd(0)を使用する分子間および分子内ヘック(Heck)反応。
3.ArI(OTf)とR1CH=CR2CHR3OHとからArCHR1−CHR2COR3を得る反応。
3.ヒンダードアリールハライド/トリフレート、およびアリールボロン酸からアトロプ異性体を形成するスズキ(Suzuki)反応。
4.2−アリルフェノールの2,3−ジヒドロベンゾフランへのPd(II)触媒による環化。
5.2−ハロアニリンおよび−フェノールによる、1,2−、1,3−、および1,4−ジエンのPd(0)触媒による環付加。
6.スチレン類の2−アリールプロピオン酸およびエステルへのヒドロエステル化。
【0036】
他の遷移金属触媒によるプロセス
1.内部オレフィン[cis−3−ヘキセン、シクロペンテン、およびシクロヘキセン]のヒドロホルミル化。
2.RR’C=CH2、H2C=C(NHAc)CO2H(R)、H2C=CArOO2H(R)、およびベイリス・ヒルマン(Baylis−Hillman)付加体の水素化。
3.ポーソン・カンド(Pauson−Khand)反応。
4.RCH=CH2およびN2CHCO2R’のシクロプロパンエステルへの転化。
5.PtCl2またはZn(OTF)2によるアルケンの分子間および分子内ヒドロアミノ化およびヒドロアルコキシル化。
【0037】
縮合反応
1.マイケル(Michael)反応[シクロヘキセノンおよびMeCOCH2COMeまたはEtO2CCH2CO2Et]。
2.アルドール[MeCHO]反応。
3.クライゼン(Claisen)縮合[プロピオン酸エチルおよびフェニル酢酸エチル]。
4.アルデヒド[MeCHOおよびPhCHO]とニトロアルカン[MeNO2]とのヘンリー(Henry)反応。
5.ベイリス・ヒルマン(Baylis−Hillman)反応[PhCHOおよびアクリレート、アクリロニトリルおよびメチルビニルケトン、DABCOおよびBu3Pを使用]。
6.アルデヒド[PhCHO]からのシアノヒドリンおよびシリルシアノヒドリンの形成。
7.RCHO、NH3、およびHCNからRCH(NH2)CNのストレッカー(Strecker)合成。
8.R1CHO、R2CO2H、およびR3NCからのR1CH(O2CR2)CONHR3のパセリニ(Passerini)合成。
9.R1CHO、R2CO2H、およびR3NC、およびR4NH2からの、R1CH(NHR4COR2)CONHR3のウギ(Ugi)合成。
10.ArCHO、PhNH2、およびP(OEt)3から工業的に重要なArCH(NHPh)PO(OEt)2へのSc(OTf)3触媒による縮合。
【0038】
アルキル化反応
1.エナミン[シクロヘキサノンピロリジンエナミンおよびMeI]のアルキル化。
2.非対称ジカルボニル化合物[アセト酢酸エチル、PhCOCH2CO2Et、PhCOCH2COCH3]のアルキル化。
3.第2級アルキルハライドおよびトリフレートの非アルコール含有CIL中でのフリーデル・クラフツ(Friedel−Crafts)アリール化。
【0039】
他の有機反応
1.有機ハロゲン化物の速度論的分割およびキラル生成物の合成のための、第2級アルキルハライド[PhCHBrMeモデル系]と種々の求核試薬[NaOAc、NaN3、NaOMe、NaSPh、NaOPhおよびNa(acac)]とのSN2反応。
2.種々の求核試薬による対称エポキシド[cis−2−ブテンオキシド、シクロペンテンオキシド]のSN2開環。
3.加水分解およびエステル交換[MeOHおよびEtOH]による第2級アルキルエステル[酢酸および安息香酸の第2級ブチルエステルおよびフェネチルエステル]の速度論的分割。
【0040】
変化した反応体、試薬、中間体、または生成物をOCIL以外に含むエナンチオ選択的(前述のようにジアステレオマーにも適用可能)である上記反応が特に好ましい。実質的に光学的に純粋(1種類のエナンチオマーが他のものに対して少なくとも90)であるOCIL中で行われる上記反応、ならびにラクテートではないキラルカチオン含有OCILおよびキラルアニオン含有OCILを使用して行われる上記反応も好ましい。これらの組み合わせも好ましく、非限定的な例としては実質的に光学的に純粋なキラルアニオン含有OCIL中のエナンチオ選択的反応などが挙げられる。OCIL中で行われるこれらの反応の多くは、一方のエナンチオマーを他方に対して不斉合成できるため、特に好ましい。これが、本発明の特に好ましい態様である。
【0041】
本発明による特に好ましい種類の反応は脱ラセミ化である。脱ラセミ化反応によって、キラル炭素含有化合物のラセミ混合物を、1種類の光学異性体が支配的である混合物に変化させることができる。好ましくは、このようにして得られる1種類の光学異性体が、存在する同じ化合物のあらゆる他の光学異性体よりも多量に存在する。1つのキラル中心からのエナンチオマーのラセミ混合物において、OCILの存在下での反応の後、好ましくは1種類のエナンチオマーが、50%を超える量で提供され、残分が他のエナンチオマーとなる。本発明の特に好ましい態様においては、脱ラセミ化反応によって、1種類のエナンチオマーが他のものよりも少なくとも10%多くなる。より好ましくは、脱ラセミ化反応によって、1種類の光学異性体が他のものよりも大きく増加する。さらにより好ましくは、結果として得られる混合物が実質的にエナンチオマー的に純粋(90%以上)となる。最も好ましくは、OCILの存在下での反応によって、エナンチオマー的に純粋な材料(1種類の光学異性体が99%以上)が得られる。
【0042】
OCILを使用して行われる脱ラセミ化反応の一例は下記式:
【化8】

である。
これは、キラルビニルスルホキシドの熱ラセミ化/脱ラセミ化反応である。この反応体は、平衡時にはラセミ体、すなわち両エナンチオマーの50:50混合物として存在する。この反応体を本発明によるOCIL(N,N−ジメチルエフェドリニウムおよび(−)−N−ベンジル−N−メチルエフェドリニウムの両方を使用すると好都合であった)中に溶解させ、50℃〜75℃に加熱し、続いて室温まで冷却すると、脱ラセミ化が起こった。
【0043】
なんらかの評価理論によって束縛しようと望むものではないが、うまく脱ラセミ化が起こる理由は、スルホキシドのスルホネートへの転移が可逆的であり、さらにOCILの一方のスルホキシドエナンチオマーへの結合が他方への結合よりも強く、その結果、ラセミ体が一方のエナンチオマーに転化しやすくなるからであると考えられる。1種類のエナンチオマーが他のものよりも優先されると考えられる他の要因としては、近くのアルコール基を介して基質中の官能基と水素結合するOCILの独自の性質によって1種類のOCIL複合体が他方よりもさらに安定化することが挙げられる。このことが、前述の光化学転移の比較的高いエナンチオ選択性の推進力になると思われる。
【0044】
本発明による別の好ましい反応は、非キラルまたはアキラル出発物質を反応させて、キラル生成物に転化させる反応である。さらにより好ましくは、この結果得られるキラル生成物がラセミ体ではない。1種類の光学異性体が支配的となる。OCILを使用して行われるこのような反応の一例は下記式:
【化9】

である。
【0045】
上記の出発物質はアキラルであった。従来の溶媒中での反応後には、ラセミ混合物が得られる。しかし、本発明によるOCIL((+)−クロロメチルメチルエーテルイミダゾリウムIL)中、約254nmのUVを照射しながら室温で行うと、1種類の光学異性体が支配的となった(60:40)。この反応を、N,N−ジメチルエフェドリニウム中で行っても、1種類のエナンチオマーの比率が増加した。
【0046】
OCILの存在下での他の形態の不斉合成(1種類の光学異性体が他のものよりも多量に生成される)が、本発明のこの態様の好ましい実施形態である。このような反応の非限定的な例は前述している。
【0047】
本発明による別の好ましい実施形態は、液体クロマトグラフィー(LC、HPLC)およびガスクロマトグラフィー(「GC」)で使用されるカラム中、好ましくはガスクロマトグラフィーで使用されるキャピラリーカラム中の固定相としてのOCILの使用を伴う。これらは、キラル物質の光学異性体の分離に使用することができる。イオン性の性質のため、キラルであるが非イオン性の材料で分離できない材料を分離するためにOCILを使用することができる。PCOCILおよびアニオン性OCILなどのあらゆるOCILを本発明により使用することができる。
【0048】
以下のようにしてOCILをキャピラリーカラム上にコーティングすることができる。典型的に、塩化メチレン、ジエチルエーテル、またはペンタンなどの共溶媒と、所望の厚さの被膜を析出させるのに適切な濃度のOCILとを混合した溶液を、カラム全体に充填する。OCILの典型的な濃度は0.2〜0.3%の間である。しかしこれは必要に応じて変動させることができる。充填後、カラムの一端を封止し、調整弁を有する高真空ポンプに他端を接続し、水浴中に入れる。揮発性の非OCILはゆっくりと蒸発すると、キャピラリーの溶媒先端は溶融シリカ管を下降して、壁にOCILのコーティングが残る。固定相となるOCILのコーティングを除けば全ての共溶媒が蒸発しカラムが空になるまで、この手順を続ける(蒸発速度を一定に維持するために真空を定期的に増加させる)。次に、使用される分離技術、および/または使用される装置にとって独自のものとなり得る特定の手順により、種々のガスクロマトグラフに、上記カラムを取り付けて使用する。
【0049】
(1S,2R)−(+)−N,N−ジメチルエフェドリニウムトリフルオロメタンスルホンイミド、(1R,2S)−(−)−N,N−ジメチル−エフェドリニウムトリフルオロメタンスルホンイミド、(1S,2S)−(+)−N,N−ジメチルプソイドエフェドリニウムトリフルオロメタンスルホンイミドの合成は、他の場所に記載されている22。簡潔に述べると、N−メチルエフェドリンをジクロロメタンに溶解させ、等モルの硫酸ジメチルをゆっくりと加える。減圧下で溶媒を除去し、残留物を水に溶解させる。等モルのトリフルオロメタンスルホンイミドリチウムの水溶液を加えると、イオン性液相が分離し、次にこれを水で3回洗浄する。最終生成物を減圧下で100℃に加熱して、残留水を除去する。
【0050】
ジクロロメタン中に溶解させた0.25%(w/v)のIL固定相を使用して、40℃において静的コーティング法(static coating method)によって、すべてのキャピラリーカラムをコーティングする。コーティング工程の後、コーティングされたカラムに乾燥ヘリウムガスを終夜フラッシングして、1℃/分で40℃から120℃までコンディショニングを行った。100℃においてナフタレンでカラム効率を試験する。使用したすべてのカラムは、2100段/mを超える効率を有する。
【0051】
ラセミ試験化合物をジクロロメタン中に溶解させる。ヒューレット・パッカード(Hewlett−Packed)モデル6890ガスクロマトグラフ、およびヒューレット・パッカード6890シリーズ積分器を使用して、すべての分離を行う。250℃の注入および検出温度で、スプリット注入および水素炎イオン化検出を使用する。1.0mL/分の流量のヘリウムをキャリアガスとして使用する。
【0052】
アルコール、アミン、有機酸、および酸化物などの多数の化合物を、上記のようなOCILカラムに注入した。表1に記載のラセミ混合物は、OCIL固定相上でエナンチオマー分割可能である。クロマトグラムは、8メートルの(1S,2R)−(+)−N,N−ジメチルエフェドリニウムトリフルオロメタンスルホンイミドカラム上で得た。
【0053】
【表1A】

【表1B】

【0054】
表1に示されるすべての化合物は、キラルイオン性液体固定相の第1のキラル中心上のヒドロキシル基と水素結合を形成することができる。13メートルの(1S,2R)−(+)−N,N−ジメチルエフェドリニウムトリフルオロメタンスルホンイミドカラムを選択して、TFA誘導体化プロセスを行った24。この新しいカラムで、表1のすべての化合物を試験した。実験結果は、スルホキシドのみエナンチオマー分割可能であることが示された。それにもかかわらず、エナンチオ選択性が悪化した。この場合、キラル固定相の第1のキラル中心上のヒドロキシル基が、キラル認識において重要であることも分かった。上記の分離はガスクロマトグラフィーを使用して行ったが、高速液体クロマトグラフィー、すなわちHPLCなどの液体クロマトグラフィーにおいても同様にOCILを使用することができる。
【実施例1】
【0055】
N,N−ジメチルエフェドリニウム・NTf2を共溶媒として使用した場合に、ある反応によって約3%のエナンチオマー過剰率(e.e.)が得られる。この反応は、室温において行ったNaBH4によるメチルフェニルケトンの還元である。この反応混合物は、20mのキラルデックス(Chiraldex)(商標)G−PNカラムを使用したGCによって分析した。
【化10】

【0056】
参考文献
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24.Chiraldex handbook,6th edition,Advanced Separation Technologies,2002,8.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類のエナンチオマーが少なくとも約2%増加されたキラルカチオン含有高光学活性イオン性液体。
【請求項2】
少なくとも1種類のエナンチオマーが少なくとも約10%増加された請求項1に記載のキラルカチオン含有高光学活性イオン性液体。
【請求項3】
少なくとも1種類のエナンチオマーが少なくとも約20%増加された請求項1に記載のキラルカチオン含有高光学活性イオン性液体。
【請求項4】
少なくとも1種類のエナンチオマーが実質的に光学的に純粋である請求項1に記載のキラルカチオン含有高光学活性イオン性液体。
【請求項5】
少なくとも1種類のエナンチオマー的に純粋なエナンチオマーのみを含む請求項1に記載のキラルカチオン含有高光学活性イオン性液体。
【請求項6】
ラクテートではないキラルアニオン含有高光学活性イオン性液体。
【請求項7】
100℃以下の融点を有する請求項6に記載のキラルアニオン含有高光学活性イオン性液体。
【請求項8】
少なくとも1種類のエナンチオマーが少なくとも約2%増加されたキラルアニオン含有高光学活性イオン性液体。
【請求項9】
少なくとも1種類のエナンチオマーが少なくとも約10%増加された請求項8に記載のキラルアニオン含有高光学活性イオン性液体。
【請求項10】
少なくとも1種類のエナンチオマーが少なくとも約20%増加された請求項8に記載のキラルアニオン含有高光学活性イオン性液体。
【請求項11】
少なくとも1種類のエナンチオマーが実質的に光学的に純粋である請求項8に記載のキラルアニオン含有高光学活性イオン性液体。
【請求項12】
少なくとも1種類のエナンチオマー的に純粋なエナンチオマーのみを含む請求項8に記載のキラルカチオン含有高光学活性イオン性液体。
【請求項13】
OCILの存在下で、反応生成物を生成するために少なくとも1種類の反応体の化学反応を行うステップと、
前記反応生成物を回収するステップと
を含み、前記反応生成物が光学活性であり、1種類のみのエナンチオマーが存在するか、1種類のエナンチオマーが、前記反応生成物の他方のエナンチオマーよりも多量に存在するかのいずれかである化合物の不斉合成。
【請求項14】
請求項13に記載の方法によって生成されたエナンチオマーの不斉の混合物。
【請求項15】
請求項13に記載の方法によって生成されたエナンチオマー的に純粋なエナンチオマー。
【請求項16】
OCILの存在下で、少なくとも1種類のラセミ反応体の化学反応を行うステップと、
高光学活性の反応生成物を生成するステップと
を含むラセミ化合物の脱ラセミ化方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法によって生成されたエナンチオマーの不斉の混合物。
【請求項18】
請求項16に記載の方法によって生成されたエナンチオマー的に純粋なエナンチオマー。
【請求項19】
実質的に純粋なOCIL中、または実質的に純粋なOCILを含む溶媒中で、少なくとも1種類の第1の反応体の混合、溶解、分散、または懸濁を行うステップと、
前記少なくとも1種類の第1の反応体と比較した場合に、構造または性質が変化した反応生成物を生成するように、前記少なくとも1種類の第1の反応体と、少なくとも1種類の第2の反応体、少なくとも1種類の触媒、または前記OCILとを反応させるステップと
を含む化学反応。
【請求項20】
前記OCILがキラルカチオンを含有する請求項19に記載の化学反応。
【請求項21】
前記OCILがキラルアニオンを含有する請求項19に記載の化学反応。
【請求項22】
請求項19に記載の方法により生成した反応生成物。
【請求項23】
請求項20に記載の方法により生成した反応生成物。
【請求項24】
請求項21に記載の方法により生成した反応生成物。
【請求項25】
前記反応生成物が不斉である請求項19に記載の方法により生成した反応生成物。
【請求項26】
カラムと、OCILが会合した固定相とを含むクロマトグラフィーに使用されるカラム。
【請求項27】
前記カラムがキャピラリーであり、前記固定相が前記キャピラリーの内表面にコーティングされている請求項26に記載のカラム。
【請求項28】
前記カラムに充填された固体担体上に前記固定相が吸収、吸着、またはコーティングされている請求項26に記載のカラム。
【請求項29】
移動相中で光学異性体の混合、溶解、分散、または懸濁を行うステップと、
少なくとも1種類のOCILを固定相として含むカラム中に前記光学異性体を導入するステップと、
前記光学異性体の少なくとも1種類が分割されるように、前記移動相および前記光学異性体を前記カラム中で進行させるステップと
を含む光学異性体の分離方法。
【請求項30】
下記の構造:
【化1A】

【化1B】

を有するOCIL。
【請求項31】
キラルアニオンとキラルカチオンとの両方を含む少なくとも1種類の塩で構成される高光学活性キラルイオン性液体。

【公表番号】特表2008−505918(P2008−505918A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520518(P2007−520518)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/024188
【国際公開番号】WO2006/017148
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(507007991)シグマ‐オルリッチ・カンパニー (1)
【Fターム(参考)】