説明

高出力用光部品

【課題】高出力の光に照射されることに起因する接着剤の劣化が生じないようにすることが可能な高出力用光部品を提供する。
【解決手段】光装置100は、光ファイバ30a,30bを内蔵した第1及び第2の光部品1,2を備え、第1の光部品1と第2の光部品2は、接着剤40により接着結合されている。第1の光部品1は、光ファイバ30aへの接着剤40の流入を阻止する第1,第2の溝が、光ファイバ30aと塗布領域15とを仕切るようにして設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送媒体を内蔵した光部品に、同様な構成の他の光部品を接着剤により結合する構成の高出力用光部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光伝送媒体、例えば光ファイバを用いてレーザ光を伝送する場合、光ファイバを保持している光学部材同士の結合は、一般に、接着剤で接着する、ホルダを介在させる、YAGレーザで溶接する等によって行われている。
【0003】
図4は、従来の光装置の組付け前の光部品を示す斜視図である。この光装置10は、波長変換素子等を内蔵した光部品50と、光ファイバ52が接続された光部品51と、光ファイバ54が接続された光部品53とを備えている。光部品51及び光部品53は、それぞれの結合面に塗布された接着剤60よって光部品50に結合されている。
【0004】
しかし、図4に示した光装置10では、塗布した接着剤60が光路内に介在するため、発光源に高出力レーザを用いた場合、発熱により接着剤を劣化させる可能性がある。また、ホルダを用いた構成では、部品点数が増加する。更に、YAGレーザで溶接した構成では、調芯ずれが発生し易いと共に、装置が高価なために設備投資がしにくい。
【0005】
そこで、上記問題を解決するものとして、0.1μm以上の光散乱不純物粒子を除去した接着剤を用いる光学デバイスの製造方法(例えば、特許文献1参照)、光学部材の結合部に筒状の中空スペーサを介在させ、この中空スペーサの外周部とキャピラリとの間に接着剤を介在させた光モジュール(例えば、特許文献2参照)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2002−533776号公報
【特許文献2】特開2004−101847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の光学デバイスの製造方法によると、汎用の接着剤を用いることができない。また、従来の光モジュールによると、スペーサが必要になる。
【0008】
従って、本発明の目的は、結合面に塗布した接着剤が光伝送媒体の光路に介在しないようにし、それによって、高出力の光が照射されることに起因する接着剤の劣化を生じないようにすることが可能な高出力用光部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するため、高出力の光を伝送する光伝送媒体を内蔵し、前記光伝送媒体を調芯させた状態で接着剤により他の光部品が結合される高出力用光部品において、接着後の前記接着剤の余剰分を回収する溝が、前記光伝送媒体と前記接着剤の塗布領域との間を仕切るように設けられていることを特徴とする高出力用光部品を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高出力の光が照射されることに起因する接着剤の劣化を生じないようにすることが可能な高出力用光部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る光装置を示す斜視図である。
【図2】図1の光装置の組み立て前におけるA−A線の断面図である。
【図3】光装置の組み立て手順を示す図である。
【図4】従来の光装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(光装置の構成)
図1は、本発明の実施の形態に係る光装置を示す斜視図、図2は、図1の光装置を構成する光部品の構成を示し、(a)は図1のA−A線の断面図、(b)は図1のB−B線の断面図である。光装置100は、第1の高出力用光部品(以下、高出力用光部品を「光部品」という)1と、この光部品1に接着剤を用いて結合される第2の光部品2とを備える。光装置100は、例えば、波長変換モジュールを構成する光部品の1つとして用いられる。
【0013】
第1の光部品1は、図1に示すように、光伝送媒体としての光ファイバ30aと、この光ファイバ30aを位置決めするV溝12が片面の略中央に設けられた角形のガラス板13と、V溝12に光ファイバ30aを収納した状態で接着剤(図示せず)によりガラス板13に接合される角形のガラス板14とを備えている。光ファイバ30aは、例えば、ガラス系であり、金属や薄膜のレーザ加工に用いられる高出力の光パワーの伝送を対象としている。
【0014】
更に、第1の光部品1は、図1及び図2に示すように、V溝12の両側に第1及び第2の溝11a,11bが平行に、かつガラス板13,14の厚み方向(図1の上下方向)を貫通するように設けられている。この第1及び第2の溝11a,11bは、切削加工等により施すことができ、一例を示せば、幅0.3mm、深さ0.5〜1mmである。また、第1及び第2の溝11a,11bの外側(図1の左右方向の両側)は接着剤が塗布される塗布領域15になり、第1及び第2の溝11a,11bの内側は第2の光部品2との突き合わせ面(前記光伝送媒体の設置領域)16になっている。従って、塗布領域15と突き合わせ面16とは、第1及び第2の溝11a,11bによって仕切られている。更に、塗布領域15は、接着剤が介在し易くなるように、突き合わせ面16に対し、表面高さを低くする段差が設けられている。また、突き合わせ面16には、必要に応じ、また、用途等に応じてHR(高反射膜)、HT(高透過膜)、AR(反射減衰膜)等の1つ以上が施されていてもよい。なお、上記接着剤は、例えば、エポキシ系、アクリル系等からなるUV硬化型である。
【0015】
第2の光部品2は、図1及び図2に示すように、高出力の光パワーの伝送を対象にした光伝送媒体としての光ファイバ30bと、この光ファイバ30bを位置決めするV溝21が片面の略中央に設けられた角形のガラス板22と、V溝21に光ファイバ30bを収納した状態で接着剤(図示せず)によりガラス板22に接合される角形のガラス板23とを備えている。この第2の光部品2は、第1の光部品10に対向する面が、図2に示すように突き合わせ面24になっている。
【0016】
(光装置の組み立て)
次に、光装置100の組み立て方法について説明する。図3は、光装置の組み立て手順を示し、(a)は、塗布面に接着剤を塗布した状態の第1の光部品の斜視図、(b)及び(c)は、(a)のD−D線の断面図である。なお、図3(a)においては、第2の光部品2の図示を省略している。
【0017】
まず、作業者は、接着剤を用意し、その適量を接着剤40として、図3(a)に示すように、第1の光部品1の塗布領域15に塗布する。次に、作業者は、第1及び第2の光部品1,2を図示しない治具又は調芯装置にセットし、図3(b)に示すように、第1の光部品1と第2の光部品2との間に所定の隙間を持たせたまま、光ファイバ30aと光ファイバ30bとを調芯する。
【0018】
次に、第1の光部品1を保持したまま、第2の光部品2を図1に示す矢印C方向へ移動させ、図3(c)に示すように、第1の光部品1と第2の光部品2とを密着させる。この処理の過程で、第1の光部品1の塗布領域15における接着剤40の一部は、接着に用いられない余剰分となって第1及び第2の光学部材10,20の外面方向及び第1及び第2の溝11a,11bの方向へ押し出される。このうち、第1及び第2の溝11a,11b側へ押し出された接着剤40は、図3(c)に示すように、第1及び第2の溝11a,11bに流入して回収され、光ファイバ30a,30bには到達しない。
【0019】
次に、接着剤40に紫外光を照射し、接着剤40を乾燥させる。接着剤40の乾燥後、光装置100を治具又は調芯装置から取り外すことにより、光装置100の組み立てが完了する。
【0020】
(実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、下記の効果を奏する。
(1)第1の光部品1は、光ファイバ30aと塗布領域15との間に第1及び第2の溝11a,11bを設け、塗布領域15からの接着剤40が第1及び第2の溝11a,11bに入り込むようにしたため、接着剤40の余剰分は光ファイバ30a,30bには達せず、これらの入出射面には介在しない。従って、光源が高出力レーザであっても接着剤40の劣化を招くことがない。
(2)第1の光部品1は、第1及び第2の溝11a,11bを設けるのみで良いため、部品数を増やすことが無い。従って、コストアップを防止することができる。
(3)第1の光部品1と第2の光部品2を結合したとき、接着剤40が光ファイバ30aと光ファイバ30bとの間の光路内に介在しないので、接着剤40に起因する光の散乱、吸収等は発生せず、光部品1,2の光学性能を維持することができる。
【0021】
[他の実施の形態]
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、その要旨を変更しない範囲内で種々な変形が可能である。例えば、第1及び第2の溝11a,11bは、第1及び第2の光部品1,2のそれぞれに設けられていてもよい。また、第1の光部品1に代えて第2の光部品2に設けられていてもよい。
【0022】
また、上記実施の形態において、第1及び第2の光学部材10,20はガラス板を張り合わせた構造のファイバアレイであるとしたが、本発明はこのような構造に限定されるものではなく、例えば、コアを有した構造の光導波路であってもよい。
【0023】
また、第1及び第2の光学部材10,20は、四角形断面以外の形状であってもよい。
【0024】
また、ガラス板13,14,22,23は、光ファイバ30a,30bがガラス以外の材料からなる場合、光ファイバ30a,30bと同一の材料を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、接着剤が塗布される接着面を有すると共に接着剤の介在を避けたい部分を有し、その部分に余剰の接着材が入り込むのを防止したい用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0026】
1 第1の光部品(高出力用光部品)
2 第2の光部品
11a 第1の溝
11b 第2の溝
12 V溝
13 ガラス板
14 ガラス板
15 塗布領域
16 突き合わせ面
21 V溝
22 ガラス板
23 ガラス板
24 突き合わせ面
30a 光ファイバ
30b 光ファイバ
40 接着剤
100 光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高出力の光を伝送する光伝送媒体を内蔵し、前記光伝送媒体を調芯させた状態で接着剤により他の光部品が結合される高出力用光部品において、
接着後の前記接着剤の余剰分を回収する溝が、前記光伝送媒体と前記接着剤の塗布領域との間を仕切るように設けられていることを特徴とする高出力用光部品。
【請求項2】
前記塗布領域は、前記光伝送媒体の両側に2つが設けられ、
前記溝は、前記塗布領域のそれぞれと前記光伝送媒体との間に2つが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の高出力用光部品。
【請求項3】
前記塗布領域は、その内側の領域よりも表面高さが低いことを特徴とする請求項1又は2に記載の高出力用光部品。
【請求項4】
前記溝は、前記塗布領域と前記光伝送媒体の設置領域とを分断するように設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の高出力用光部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−185980(P2010−185980A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29019(P2009−29019)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(591160268)北日本電線株式会社 (41)
【Fターム(参考)】