説明

高分子バイオサーファクタント

本発明は、高分子ミセル構造の中に自己集合または自己会合することのできるバイオサーファクタント、および局所適用される皮膚用製品におけるそれらの使用に関する。本発明は、特に、式Acyl-AA-Term(式中、Acylは、分岐または非分岐の、飽和または不飽和の8から22員の炭素鎖であり、AAは、4から9個のアミノ酸残基の連続配列であって、少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個のアミノ酸残基は帯電している連続配列であり、Termは、酸のC末端またはアミドのC末端である)の高分子アシル化バイオサーファクタント(PAB)に関する。本発明のPABは、水性環境の最小基本媒質(MEM)中で低い臨界ミセル濃度(主に約100ppm未満)を有し、水性MEM環境における表面張力を約50ダイン/cm2未満に低下させることができる。これらは、代謝性可溶性タンパク質を増加させる能力も有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年6月1日に出願された米国仮出願第60/809,825号に対する優先権を主張する。
【0002】
連邦支援研究についての陳述
該当なし。
【0003】
本発明は、高分子ミセル構造の中に自己集合または自己会合することができるバイオサーファクタントおよび局所適用される皮膚用製品におけるそれらの使用に関する。本発明は、特に、代謝性可溶性タンパク質を増加させる能力を有する、最小必須媒質(Minimal Essential Media)において低い臨界ミセル濃度(約1.0から約200ppm)を有する高分子アシル化バイオサーファクタントに関する。さらに、それらは、比較的低い毒性(好ましくは37歳女性線維芽細胞中200ppm超のLD50)ならびに細胞外皮膚マトリックスタンパク質の合成および/または細胞回転速度を増加させる能力を有する。
【背景技術】
【0004】
分子のクラスとしての界面活性剤は、局所適用される製品の配合者によく知られている。バイオサーファクタントは、プロテアーゼにより容易に分解されうる天然起源の原料由来の界面活性剤の特定の群である。標準的な界面活性剤と同様に、それらは、同じ分子上に、「頭部および尾部」として一般に定義される、水可溶性基および水不溶性基の両方を有する。そのようなものとして、それらは、親水性物質および疎水性物質の両方(例えば、油、および本発明の目的により重要なものとして、細胞膜)に親和性を有し、したがって、これらは、両親媒性分子としても記載される。本発明のバイオサーファクタントは、同様の濃度で標準的な界面活性剤に関連した明らかな破壊なしに細胞膜に高度の親和性を有する。それらは、非相溶性の「頭部および尾部」間の表面張力を低下させるようにそれら自体を配列させる。バイオサーファクタントの濃度が増加すると、最小表面張力、いわゆる臨界ミセル濃度(「CMC」)が達成されるまで界面は飽和化する。バイオサーファクタントがCMCを超えて添加されると、ミセルまたは会合体が形成する。CMCは一般に、ミリモル(mM)で表され、温度および媒質のイオン強度に依存する。これらの会合体は粒径および形状が変化する。本発明の範囲内の高分子バイオサーファクタントは、通常、約5から100ナノメートルのナノ範囲の粒径を有する。
【0005】
スキンケア製品において、ドデシル硫酸ナトリウムは、湿潤剤、乳化剤または清浄剤として作用する一般的なアニオン性界面活性剤である。それは蒸留水中約8.13mM(または約2400ppm)のCMCを有する。第4級化合物は、広く使用されるカチオン性界面活性剤である。ドデシルトリメチル臭化アンモニウムは、このクラスの化合物の代表的なものであり、蒸留水中約14.6mM(または約4300ppm)のCMCを有する。比較として、リン脂質、すなわち細胞膜の主要成分(例えば、ジアシルホスファチジルコリン)、のCMCは、約5×10-3mMから約4.7×10-7mM(約3ppm〜約0.003ppm)の範囲である。D.Datta、Membrane Biochemistry(1987)を参照されたい。本発明の高分子バイオサーファクタントは、代表的なアニオン性およびカチオン性化合物の間ならびに上記に検討した細胞膜リン脂質の間のCMCを有する。
【0006】
しかし、従来の界面活性剤は、刺激、炎症および他の負の続発症を引き起こすことが知られている。これは、一部分は、皮膚の脱脂、必要な油の除去、および表皮層への急速浸透のためである。驚くべきことにかつ予期せぬことに、本発明の高分子バイオサーファクタントは同様の濃度でこれらの欠点を有しない。
【0007】
下記に検討されるように、スキンケア製品におけるアミノ酸配列の使用は当該技術分野で知られている。このような配列の一部は、アシル化部分(例えば、アセチル、ミリストイル、パルミトイル)として市販されている。一般に、アシル化は、水を好む、即ち親水性の成分の皮膚中への浸透を増強させるための当業者によく知られている技術である。正常皮膚の表面は高度に疎水性で、親水性物質による著しい浸透を防止する。しかし、アシル化アミノ酸配列の特性は、毒性の点で大きく変わることがあり、さらにその最終的な有用性に影響を与える。驚くべきことにかつ予期せぬことに、本発明の多くの高分子アシル化バイオサーファクタントは、哺乳動物細胞に対して比較的低い毒性(LD50>200のオーダー)を示すが、同時に原核生物の生命体に対して比較的高度の毒性を維持する。
【0008】
さらに、従来技術のアシル化アミノ酸配列とは異なって、本発明の高分子バイオサーファクタントは、皮膚マトリックスタンパク質(例えば、エラスチン、フィブロネクチン、コラーゲン)の合成を増加させ、および/または細胞回転速度を増加させる能力を有するが、これらのタンパク質を分解する酵素(例えば、マトリックスメタロプロテアーゼ)の合成を同時に増加させない。さらに、驚くべきことにかつ重大なことに、本発明のバイオサーファクタントは、炎症性タンパク質、とりわけインターロイキン6およびインターロイキン8の増加を引き起こさない。この特性の組合せによって、これらの化合物はスキンケア用途に特異に適したものとなる。
【0009】
低いCMCで表面を効率的に湿潤させる本発明の高分子バイオサーファクタントの能力は、もう1つの驚くべき、意外な特性、すなわち広域スペクトルの抗菌活性、を与える。本発明の高分子バイオサーファクタントは、大腸菌(E.coli)、緑膿菌(P.aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)およびカンジダアルビンカンス(C.albicans)を含む様々な微生物の増殖を阻害し、またはそれを死滅させる能力を有する。
【0010】
パーソナルケアおよび皮膚科学の分野において、高度に有効な多機能成分に対する要求が存在してきたし、かつ存在し続けている。この種の成分の使用は、局所スキンケア配合物に共通の問題、例えば、時間と共に活性成分の効果が低下すること(成分間の相互作用による)と同様に不安定性(成分の不相溶性による)を軽減することに役立つ。多機能成分、特に、刺激、炎症または他の負の続発症を引き起こす傾向が低いものは、配合者の間のみならず、ますます強く要求し、かつ洗練された消費者の間で高い需要がある。組み合わせて考えると、本発明の高分子バイオサーファクタントの好ましい特性は、これらを、(疾患、老化および/または環境有害因子に伴う皮膚科学的状態を回復、維持および改善するのに役立つ一方、多くの場合、同時に細菌増殖を阻害もする、比較的低い毒性を有する製品に対する)これまで満たされていない要求を驚くべきことにかつ予期せぬことに満たす多機能成分にする。
【0011】
スキンケア製品に用いられる従来技術のアミノ酸配列
それぞれ2個のアミノ酸からなる以下の化粧品成分は、市販されている:ジペプチド-1(チロシンおよびアルギニン残基);ジペプチド-2(バリンおよびトリプトファン残基);ジペプチド-4(フェニルアラニンおよびトリプトファン残基)。他に特記されない限り、化粧品成分は、国際化粧品登録協会(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association(「CTFA」))により発行された国際化粧品成分(INCI)辞典およびハンドブック(Internationa Cosmetic Ingredient(INCI)Dictionary and Handbook)(第10版)中のそれらの規定名で記載される。INCI辞典は、それぞれのアミノ酸残基のアミノ酸配列または量を特定していない。下記に検討されるように、トリペプチドは、記載された2個のアミノ酸の一方が2度存在しているか、またはペプチド配列中の第3のアミノ酸が天然起源の他の18個のアミノ酸の群から選択されるかどうかを示すことなく2個のアミノ酸残基を含むものとしてINCI辞典に記載されうる。
【0012】
米国特許出願公開第2003/0166510号には、皮膚を再形成し、皮膚のしみを減少または除去するのに有効な量でのイオン金属-ペプチド錯体の使用が教示されている。(本明細書において参照される許可米国特許および公開米国特許出願は、関連する範囲で、参照により組み込まれる)。この参考文献に教示される皮膚のしみには、瘢痕(例えば、創傷、座瘡由来)、軟性線維腫、べんち(胼胝)、良性皮膚母斑、皮膚線条、顔面角化症、日光黒子または白斑点が含まれる。この参考文献によれば、イオン金属(銅(II)、錫(II)、錫(IV)、および亜鉛(II)ならびにそれらの塩)は、化学合成されたジ-、トリ-およびテトラペプチドと錯体形成される。Phe-PheおよびGly-Glyは、上記イオン金属と錯体形成されうるジペプチド断片として特に教示されている。
【0013】
スペイン特許出願公開ES2020148には、任意のL-、D-、またはDL型のアルギニン、続けて、任意の天然起源の12個のアミノ酸から選択される第2のアミノ酸のN末端に結合した、飽和または不飽和の、9〜17個の炭素原子の脂肪酸鎖からなるバイオサーファクタントが教示されている。特定のアミノ酸配列Arg-Gly、Arg-SerおよびArg-Pheが教示されている。
【0014】
3個のアミノ酸残基、すなわちグリシン、ヒスチジンおよびリシン、を含む合成ペプチドであるトリペプチド-1は、Kollaren C.P.P.の商標名で、およびI.E.B.によるKollarenとしてVincienceから市販されている。トリペプチド-1と水、ウレア、グルコースおよびグアニジンHClとの混合物は、Atrium BiotechnologiesによりKollarenとして販売されている。Gly-His-Lys配列は、脂質の過酸化および糖化を含む細胞代謝過程の副産物である反応性カルボニル種(「RCS」)のスカベンジャーとして文献に記載される。RCSは、コラーゲンの架橋および付随する皮膚弾性の喪失に関連してきた。Puigら、「Peptides as Active Ingredients in Cosmetics」、Cosmetics and Toiletries Manufacture Worldwide、121〜125頁を参照されたい。このアミノ酸配列はCMCを有しない。さらに、それは高分子会合体を形成しない。したがって、本発明の範囲内のバイオサーファクタントではない。
【0015】
アセチルトリペプチド-1は、酢酸の反応生成物であり、したがって、本発明の範囲内のバイオサーファクタントではない。一般的なこととして、アセチル化は、バイオサーファクタントとして機能するのに必要とされる十分な両親媒性特性を与えない。
【0016】
ビオチニルトリペプチドは、トリペプチドGly-His-LysにビタミンH(ビオチン)をグラフトすることによって形成される。米国特許出願公開第2006/0067905には、オレアノール酸、アピゲニンおよびビオチニル-Gly-His-Lysを投与することにより脱毛を治療する方法が記載されている。このビオチニル部分は、バイオサーファクタントの特性を生じるのに十分な疎水性を与えない。
【0017】
Pal-GKHとしても記載されるパルミトイルトリペプチド-1は、トリペプチド-1とパルミチン酸との反応生成物である。それはLipo-GKHの商標名でSedermaから入手可能である。酸末端化される場合、このリポ-オリゴペプチド配列は、測定できる抗菌活性を有しない。さらに、それは比較的低濃度(例えば、約50ppmのLD50)で哺乳動物細胞に対して毒性である。これらの理由のために、このリポ-オリゴペプチドは、本発明の範囲内ではない。
【0018】
米国特許出願公開第2004/0120918号の段落0008では、Sedermaから入手可能なBiopeptide CLとしてPal-Gly-His-Lysが記載されている。このトリペプチドに対するINCl名は、パルミトイルオリゴペプチドであり、これはINCL辞典において、以下のアミノ酸残基の2個以上の合成ペプチドのパルミチン酸エステルである:アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、グリシン、ヒスチジン、リシン、プロリン、セリンまたはバリン。
【0019】
C末端に遊離酸またはアミドを有するPal-Gly-His-Lysは、哺乳動物細胞系において顕著な毒性(即ち、37歳女性線維芽細胞においてLD50<100を有する)を示し、この理由のために、本発明の範囲内ではない。
【0020】
米国特許出願公開第2004/0132667号には、3個のアミノ酸の配列、すなわちグリシン、ヒスチジンおよびリシン残基が教示されている。好ましいトリペプチドは、特定のアミノ酸配列Gly-His-Lysを有する。この配列のアナログには3個のアミノ酸の1つまたは複数がその配列(例えば、Gly-Lys-His)内に再構成または再配置されるものを含むことが教示されている。この刊行物はまた、3個のアミノ酸の2個までの置換が教示されている。Glyに代わって置換されうるアミノ酸は、脂肪族側鎖、例えば、限定されないが、ベータ-Ala、Ala、Val、Leu、ProおよびIleを有することが教示されている。これらの中で、Ala、LeuおよびIleが好ましい。LysまたはHisに代わって置換されると教示されているアミノ酸には、pH約6の帯電した窒素を優勢に含む側鎖を有するもの(例えば、Pro、Lys、Arg、His、デスモシンおよびイソデスモシン)が含まれる。最も好ましくは、リシンは、オルニチン、アルギニン、またはシトルリンで置換される。
【0021】
この'667号出願には、上記置換または再配置アミノ酸配列に結合する、以下由来のアシル部分がさらに教示されている:酢酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、オクタン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リノール酸、リノレン酸、リポ酸、オレイン酸、イソステアリン酸、エライジン酸、2-エチルへキサン酸、ココナッツ油脂肪酸、獣脂肪酸、硬化獣脂肪酸、パーム核油脂肪酸、ラノリン脂肪酸。これらの誘導体は、ヒドロキシ、アミノ、アシルアミノ、スルフェートもしくはスルフィド基で置換もしくは非置換の、飽和もしくは不飽和の、長鎖もしくは短鎖の、直鎖もしくは分岐鎖であることがさらに教示されている。好ましいアシル基は、パルミトイルおよびミリストイルを含むことが教示されている。リシンをアラニンまたはアルギニンで置換すること、および得られる3アミノ酸配列をパルミトイルまたはミリストイル基でアシル化することによって、'667号公開では、以下のアシル化ペプチドが教示されている:Pal-Gly-His-Arg;Pal-Arg-His-Ala;Pal-Arg-His-Gly;Pal-Ala-His-Arg;Myr-Gly-His-Arg;Myr-Arg-His-Ala;Myr-Arg-His-Gly;Myr-Ala-His-Arg。しかし、この特許公開は、これらのアシル化トリペプチドに対するC末端アミド化、あるいは本発明の高分子バイオサーファクタントの抗菌性、促進性および/または増殖性特性を教示しない。さらに、この刊行物に開示されたトリペプチドは、中性pHで1個のみの正に帯電したアミノ酸残基を有する。下記に検討されるように、本発明の高分子バイオサーファクタントは大部分、2個、およびしばしば、3個の正に帯電したアミノ酸残基を含む。
【0022】
トリペプチド-2は、VincienceからI.E.L.の商標名で入手可能な合成ペプチドである。INCI辞典によって、それは2個のアミノ酸残基、すなわちチロシンおよびバリンを含む。このアミノ酸配列はCMCを有さず、したがって、本発明の範囲内のバイオサーファクタントではない。
【0023】
アミノ酸配列Gly-His-Argを有するトリペプチド-3は、Therapeutic Peptides Inc.による販売原料に開示されている。このアミノ酸配列はCMCを有さず、したがって、本発明の範囲内のバイオサーファクタントではない。
【0024】
科学文献には、銅トリペプチドであるGly-His-Lys-Cuが線維芽細胞によるコラーゲン合成に対して促進作用を有することが報告されている。Maquart FXら、FEBS Lett.238(2):343〜6頁(1988)を参照されたい。Oddos Tら、第60回Annual Meeting American Academy of Dermatology(New Orleans、LA、2002年2月)で発表された「Requirement of Copper and Tripe ptide Glycyl-L-Histidyl-L-Lysine-Cu(GHK)Complex Formation for Collagen Synthesis Activity in Normal Human Dermal Fibroblasts」も参照されたい。さらに、この銅トリペプチドは、創傷治癒を促進することが報告されている。Fishら、Wounds 3:171頁(1991);Mulderら、Wound Rep.and Regen.2:259頁(1994)を参照されたい。
【0025】
Gly-His-Lys-Cuの化粧品用途は、両方ともProCyte Corporationに譲渡された米国特許第5,135,913号および同第5,348,943号に記載される。商業的に、この銅トリペプチドは、Neutrogena Visibly Firm Night Creamにおける成分として、ならびにSimple Solutions(登録商標)Anti-Aging Skin Care(スパおよびエステティシャンにより販売)およびNeova(登録商標)(皮膚科医により販売)の商標名でProCyte Corpにより提供される製品において使用される。
【0026】
1993年2月25日に公開された独国特許出願DE4127790A1には、皮膚の状態を改善するためのGly-His-LysのMg、Mn、ZnおよびGe錯体の使用が教示されている。欧州特許庁ウェブサイトespacenet.ネットで公開されるように、この特許出願についての書誌データには、ペプチドの3個の構成アミノ酸のそれぞれが、リシン、ヒドロキシルリシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アルギニン、グリシンまたはヒスチジンの1つであるトリペプチドも教示されている。より具体的には、式B1-B2-B3のトリペプチドが教示され、ここで、それぞれのB1、B2およびB3は、上記7個のアミノ酸の1つである。
【0027】
独国特許出願DE4244418A1には、Gly-His-LysおよびGly-Asp-Ser(両方とも、1picoMから0.01Mの濃度でトリペプチドおよびより長いペプチド部分の一部として)を含む化粧品組成物および医薬組成物が教示されている。これらの組成物は、塩酸でのコラーゲン、エラスチン、ケラチンもしくは結合組織の穏やかな加水分解、またはクロストリジウムヒストリチカム(C.histolyticum)コラゲナーゼを用いる部分加水分解によるいずれかで調製されることが教示されている。開示された老化防止スキンケア用途の中には、コラーゲン合成の促進およびフリーラジカルの除去がある。
【0028】
仏国特許出願FR2826577A1には、配列Lys-Pro-Valを含むペプチドが教示されている。この出願によれば、この配列を含む組成物の局所適用は、表皮脂質(例えば、コレステロール、脂肪酸、およびスフィンゴ脂質)の合成に関与する酵素をコードする遺伝子の発現を増大させ、それにより皮膚バリア機能を改善する。開示されたペプチド配列はCMCを有さず、したがって、本発明の範囲内のバイオサーファクタントではない。
【0029】
米国特許第5,493,894号には、少なくとも3個のアルギニンまたはリシン残基からなるトリ-、テトラ-およびペンタペプチド部分を含有する、皮膚のしわを処置するための組成物が教示されている。具体的に開示されたトリペプチドの中では、(i)H-Arg-Lys-Arg-OH;(ii)H3C-C(O)-Arg-Lys-Arg-NH2である。これら2つの具体的に開示された配列は、CMCを有しておらず、したがって本発明の範囲内のバイオサーファクタントではない。
【0030】
米国特許出願公開第2003/0166510号には、銅(II)、スズ(II)、スズ(IV)、または亜鉛(II)のうちの1つが以下のアミノ酸配列、即ち、Gly-His-Lys;Gly-Gly-His;His-Gly-Gly;Gly-Gly-Gly;Ala-Gly-His;Gly-Cys-Gly;His-Gly-His、と錯体を形成している、イオン金属-トリペプチド錯体の使用が教示されている。上述した金属-トリペプチド錯体は、CMCを有しておらず、したがって、本発明の範囲内のバイオサーファクタントではない。
【0031】
米国特許出願公開第2006/0013794号には、アミノ酸配列Arg-Gly-Serを含有する、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-、ヘプタ-およびノナペプチド(nonpeptide)を含む、化粧品組成物、皮膚用組成物および/または医薬組成物が教示されている。
【0032】
テトラペプチド-1は、4個のアミノ酸残基、即ち、ロイシン、プロリン、トレオニンおよびバリンを含有する合成ペプチドに割り当てられたINCI名である。これは、Vincienceによって商品名I.E.L.Leuococytar Elastase Inhibitorで販売されている。上述したように、単独のアミノ酸配列は、自己会合するのに十分な疎水性を有しておらず、したがってCMCを有しておらず、本発明の範囲内のバイオサーファクタントではない。さらに、この化合物の4個のアミノ酸のいずれも電荷を有していない。この追加の理由のために、この化合物は本発明の範囲内ではない。
【0033】
テトラペプチド-4は、Therapeutic Peptides Inc.によって商品名Collasyn 4 GGで販売されている、合成テトラペプチドに割り当てられたINCI名である。これは、3個のアミノ酸残基、即ち、グリシン、グルタミン酸およびプロリンを含有する。より詳細には、このペプチドは、配列Gly-Glu-Pro-Glyを有する。上記で考察した理由のために、このアミノ酸配列は、本発明の範囲内のバイオサーファクタントではない(即ち、CMCがなく、自己会合がない)。
【0034】
Therapeutic Peptides Inc.は、商品名Collasyn 414 GGで、アシル化アミノ酸配列Myr-Gly-Glu-Pro-Glyも開示している。500ppm以下の濃度では、この配列により、大腸菌(E.coli)、アクネ菌(P.acnes)、緑膿菌(P.aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)および/またはカンジダ・アルビカンス(C.albicans)の増殖は阻害されず、したがって、本発明の範囲内ではない。
【0035】
アセチルテトラペプチド-1は、酢酸の反応生成物であり、3個のアミノ酸残基、即ち、グリシン、ヒスチジンおよびリシンを含有する合成ペプチドである。これは、I.E.B.によって商品名Kollaren 6で販売されている。上記で考察した理由のために、このアミノ酸配列は、本発明の範囲内のバイオサーファクタントではない(即ち、CMCがなく、自己会合がない)。
【0036】
アセチルテトラペプチド-2は、酢酸の反応生成物であり、4個のアミノ酸残基、即ち、アスパラギン酸、リシン、チロシンおよびバリンを含有する合成ペプチドである。I.E.B.によって製造され、この製品は、Atrium Biotechnologiesによって、商品名Thymulen 4で販売されている。製品資料には、皮膚再生特性を有するサイモポイエチンに由来するバイオミメティックペプチドとしてThymulen 4が説明されている。上記で考察した理由のために、このアミノ酸配列は、本発明の範囲内のバイオサーファクタントではない(即ち、CMCがなく、自己会合がない)。
【0037】
配列Gly-Gln-Pro-Argを有するテトラペプチドであるRiginは、Veretennikovaら、Int.J.Peptide Protein Res.、17:430(1981)による科学文献中に報告されている。パルミトイルテトラペプチドは、パルミチン酸の反応生成物ならびにグリシン、グルタミン、プロリンおよびアルギニンを含有する合成ペプチドとしてINCI辞書に記載されている。これは、Sedermaから市販されている。
【0038】
500ppm以下の濃度では、アシル化アミノ酸配列Pal-Gly-Gln-Pro-Arg-酸により、大腸菌(E.coli)および緑膿菌(P.aeruginosa)を含めた微生物の増殖は阻害されず、したがって本発明の範囲内ではない。さらに、この化合物およびそのアミド末端類似体の両方は、哺乳動物細胞株において著しい毒性を示す(即ち、37歳女性線維芽細胞においてLD50が100未満である)。
【0039】
Eyelissは、2種のペプチドを合わせた原料濃縮物の商品名であり、眼の下の腫れおよびくまの出現の低減を助長するために、Sedermaによって市販されている。国際特許出願PCT FR-03/00441に記載されているように、これはヘスペリジンメチルカルコンならびに2種のアシル化ペプチド断片、即ちバリル-トリプトファンとN-パルミトイル-Gly-Gln-Pro-Argの組合せである。より一般的には、このPCT出願には、C2〜C22炭素鎖で始まり、配列Pro-Arg-OHで終結するトリ-、テトラ-およびペンタペプチドが記載されている。米国特許第6,974,799号によれば、Val-Trpジペプチドは、有意なコラーゲン刺激活性を有しておらず、これをGly-Gln-Pro-Argテトラペプチドと組み合わせても、このテトラペプチドを単独で使用することによって実現されるレベルに対して、この性質はまったく増強されない。
【0040】
Matrixyl 3000は、2種のアシル化ペプチド、即ち、N-パルミトイル-Gly-Gln-Pro-ArgとN-パルミトイル-Gly-His-Lysの組合せについての商品名である。米国特許第6,974,799号には、(i)約0.00001%と約0.5%の間(組成物の全重量に基づいて)の少なくとも1つの「リシンベースのテトラペプチド」(Gly-Gln-Pro-Argとして定義される)、および約0.00001%と約1.0%の間の少なくとも1つのトリペプチドGly-His-Lys(ただし、トリペプチドは、テトラペプチドより多い量で存在する)、ならびに(ii)少なくとも1種の追加のスキンケア成分を含む局所組成物が教示されている。開示された組成物は、老化の明らかな徴候およびストレッチマーク、ならびに眼の下の明らかなくまを低減することにおいて有用であることが教示されている。
【0041】
DE41 27 790には、Mg、Mn、Cu、Zn、Ge、Ni、Fe、MoおよびCoとのオリゴペプチド金属錯体の一部として、以下のテトラペプチドが教示されている:(i)Gly-His-Lys-Lys;(ii)Gly-His-Lys-Gly;(iii)Gly-His-His-Gly;(iv)Gly-His-His-Lys;(v)Gly-His-Arg-Lys;(vi)Gly-His-Arg-Gly;(vii)Gly-His-Pro-Lys;(viii)Gly-His-Pro-Lys;(ix)Hyp-Gly-Lys-Lys;(x)Hyp-Gly-His-Lys;(xi)Hyp-Gly-Arg-Lys;(xii)Hyp-Gly-Pro-Lys;(xiii)Arg-Gly-Lys-Lys;(xiv)Arg-Gly-Lys-Lys;(xv)Arg-Gly-His-Lys;(xvi)Arg-Gly-His-Lys;(xvii)Arg-Gly-Arg-Lys;(xviii)Arg-Gly-Arg-Lys;(xix)Arg-Gly-Pro-Lys;および(xx)Arg-Gly-Arg-Lys(ここでHypはヒドロキシプロリンである)。
【0042】
ep.espacenet.com上に公開されている独国特許出願DE41 27 790についての書誌データにも、ペプチドの最初の3つのアミノ酸のそれぞれが、リシン、ヒドロキシリシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アルギニン、グリシンまたはヒスチジンのうちの1つであり、第4のアミノ酸が、前述の3つのアミノ酸のうちの1つと同じであるテトラペプチドが教示されている。より詳細には、式B1-B2-B3-B1、B1-B2-B3-B2およびB1-B2-B3-B3のテトラペプチドである。この出願に開示されているようなオリゴペプチド金属錯体は、CMCを有しておらず、自己会合しない。これらの理由のために、この錯体は、本発明の範囲内のバイオサーファクタントではない。
【0043】
米国特許第5,493,894号には、以下のテトラペプチド、即ち、(i)H-Arg-Gly-Arg-Lys-OHおよび(ii)H-Lys-Arg-Ser-Arg-NH2を含有する、皮膚のしわを処置するための組成物が具体的に教示されている。これらはバイオサーファクタントではなく、したがって本発明の範囲内ではない。
【0044】
米国特許出願公開第2003/0166510号には、テトラペプチドGly-His-Lys-Hisと錯体を形成したイオン金属が教示されている。この金属イオン/テトラペプチド錯体を含む局所組成物は、皮膚の染みを減少させる、または除去するのに有用であると教示されている。
【0045】
Therapeutic Peptides Inc.は、アミド末端VPAAテトラペプチド配列ならびにVPAA配列を有するアシル化合成ペプチドである、ミリストイルテトラペプチド-5を営業用文献中で開示した。後者は、商品名Collasyn 414 VAで市販されている。500ppm以下の濃度では、このアシル化アミノ酸配列により、大腸菌(E.coli)を含めた微生物の増殖は阻害されない。さらに、この配列は、帯電したアミノ酸残基をまったく含有しない。したがって、これらの理由のために、Myr-Val-Pro-Ala-Alaは、本発明の範囲内ではない。
【0046】
米国特許第4,665,053号には、「二機能性」合成リポペプチドが教示されており、これは、弾性線維溶解活性(elastolytic activity)の阻害剤および弾性線維の防護剤の両方として機能するとさらに定義されている。さらに、これらのリポペプチド部分は、弾性線維を認識し、弾性線維上に固定することができるだけでなく、エラスターゼの活性部位を認識し、中和することもできると記載されている。より詳細には、この参考文献には、式R-X-(P1)x-(L-Ala-L-Ala-P2)-A(式中、P1は、長さが2から8残基のアミノ酸配列であり、xは0または1であり、Rは、アシル化疎水性カルボン酸である)の、2つの連続するL-アラニン残基を有するリポペプチドが教示されている。P2は、L-Ala、L-Val、L-Pro-L-AlaまたはL-Pro-L-Valのうちの1つであることが教示されている。Aは、酸、アルデヒド、アルコール、アミドまたはクロロメチルケトンの形態のC末端である。
【0047】
パルミトイルペンタペプチド-2は、パルミチン酸と4個のアミノ酸残基、即ち、チロシン、グリシン、フェニルアラニンおよびロイシンからなる合成ペプチドとの反応物である。これは、Sedermaから入手可能である。このアシル化アミノ酸配列は、帯電した残基をまったく含有せず、したがって本発明の範囲内ではない。
【0048】
ペンタペプチド-3は、Sedermaによって、商品名Matrixylで販売されている。これは、パルミチン酸と、リシン、トレオニンおよびセリン残基からなる合成ペプチドとの反応生成物として、INCI辞書に記載されている。INCI辞書には、この物質のアミノ酸配列は列挙されていない。さらなる情報がなく、かつ「からなる」が、3種の列挙されたアミノ酸残基のみが生成物中に存在することを意味すると解釈すると、この参考文献では、どれ(複数可)が特定の性質を有するかを示すことなく、60の組合せが教示されることになる。
【0049】
製品会社の営業用文献およびマーケティング資料に開示されているように、Matrixylペンタペプチドのアミノ酸配列は、Lys-Thr-Thr-Lys-Serである。この化合物は、米国特許第6,620,419号にさらに記載されており、これには、式R1-X-Thr-Thr-Lys-(AA)n-Yのペプチドが特許請求の範囲に記載されている。Xは、DまたはLの配向を有する、7種のアミノ酸のうちの1つとして定義される。7種のアミノ酸の中で、X位にあるのはリシンであると教示されている。R1は、水素、またはパルミトイルを含む2から22個の炭素の脂肪酸鎖であることが教示されている。(AA)nは、n個のアミノ酸の鎖を表すことが教示されており、nは、0から5まで変化する。Yは、OR2またはNR2R3(R2 R2は水素であってもよい)として定義され、酸およびアミドのC末端をもたらす。
【0050】
Pal-KTTKS-酸は、500ppm未満の濃度では抗菌活性を示さず、したがって、本発明の範囲内の高分子バイオサーファクタントではない。
【0051】
Collasyn 514KSは、ミリストイルペンタペプチド-3についての商品名である。この合成ペプチドは、配列Myr-KTTKS-アミド中にトレオニン、セリンおよびリシン残基を含有し、Therapeutic Peptides Inc.から入手可能であった。この部分により、可溶性代謝性タンパク質の増加は生じず、細胞回転は増加せず、またこれは、所望の抗菌性も有さない。これらの理由のために、Collasyn 514KSは、本発明の範囲内ではない。
【0052】
DE41 27 790A1には、Mg、Mn、Cu、Zn、Ge、Ni、Fe、MoおよびCoと錯体を形成している場合の、以下の配列のペンタペプチドが教示されている:(i)Hyp-Gly-Lys-Hyp-Gly;(ii)Hyp-Gly-His-Lys-Gly;(iii)Gly-Pro-Lys-Gly-Pro。これらのペプチドはアシル化されておらず、したがって、本発明の範囲内のバイオサーファクタントではない。
【0053】
ep.espacenet.com上に公開されている独国特許出願DE41 27 790についての書誌データにも、(i)最初の3つのアミノ酸のそれぞれが、リシン、ヒドロキシリシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アルギニン、グリシンまたはヒスチジンのうちの1つであり、(ii)第4および第5のアミノ酸が、前述の3つのアミノ酸のうちの1つと同じである、ペンタペプチドが教示されている。より詳細には、この書誌データには、以下の6つの式に対応するペンタペプチドが教示されている:(i)B1-B2-B3-B1-B2;(ii)B1-B2-B3-B2-B3;(iii)B1-B2-B3-B2-B3;(iii)B1-B2-B3-B2-B1-B3;(iv)B1-B2-B3-B2-B1;(v)B1-B2-B3-B3-B2;および(vi)B1-B2-B3-B3-B1(式中、B1、B2およびB3のそれぞれは、リシン、ヒドロキシリシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アルギニン、グリシンまたはヒスチジンである)。これらのペプチドは、アシル化されておらず、したがって、本発明の範囲内のバイオサーファクタントではない。
【0054】
アセチルペンタペプチド-1は、Atrium Biotechnologiesによって、商品名Thymulenで販売されている。これは、酢酸とペンタペプチド-1の反応生成物である。製品資料には、Thymulenは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子の分泌を誘発し、ケラチノサイトの増殖および分化をもたらすと記載されている。このペプチド部分は、測定可能なCMCを有しておらず、したがって、本発明の範囲内のバイオサーファクタントではない。
【0055】
Therapeutic Peptides Inc.は、以下のアミド末端アミノ酸配列も販売用に提供した:EVEDQ;DSDPR;GRKGD;GEESN;KKALK;KRGDR;LPPSR。これらのペプチド部分はアシル化されていないので、CMCを有しておらず、本発明の範囲内のバイオサーファクタントではない。
【0056】
米国特許第6,492,326号には、皮膚科学的に許容可能な担体中の、「追加のスキンケア活性剤(skin care active)」と組み合わせた、ペンタペプチドおよび/またはペンタペプチド誘導体およびその混合物が特許請求の範囲に記載されている。これらの追加のスキンケア活性剤には、ジ-、トリ-およびテトラペプチド(およびその誘導体)、ならびにレチノイド、ヒドロキシ酸、抗炎症剤、抗真菌剤および抗菌剤が含まれることが教示されている。
【0057】
1997年5月に公開された「Peptide Conjugates, Use Thereof as a Drug and Compositions Containing Same」という表題のWO97/18235号。ペンタペプチドおよびペンタペプチド誘導体が、6頁の#2、5、7、9、11および7頁の#14に開示されている。追加のスキンケア活性剤、特に抗真菌剤および抗菌剤は、8頁、19〜24行に、開示されたペプチドと組み合わせて教示されている。WO97/18235号には、開示されたペプチドおよびその誘導体は、化粧品業界で周知の賦形剤と共に、クリーム、ゲル、乳液、ローション、およびスプレー中に使用することができることも教示されている。この出願の3頁には、ペプチド配列は、直鎖または分岐、飽和または不飽和のC1〜C20モノカルボン酸でアシル化することができることがさらに教示されている。より詳細には、この出願には、オリゴペプチド内に特定のアミノ酸配列Gly-His-Lysを有するリポオリゴペプチドが開示されている。本発明のバイオサーファクタントは、この特定の配列を含有しない。
【0058】
以下のアミノ酸配列のヘキサペプチドは、DE41 27 790A1によって、Mg、Mn、Cu、Zn、Ge、Ni、Fe、MoおよびCoのうちの1つと錯体を形成した状態で教示されている:(i)Gly-Pro-Arg-Gly-Pro-Hyp;(ii)Gly-His-Hyp-Gly-Lys-Pro;(iii)Gly-Lys-Pro-Gly-Arg-Hyp;(iv)Gly-Pro-Hyp-Gly-Pro-Pro;(v)Gly-His-Arg-Gly-His-Lys。これらのペプチド部分はアシル化されていないので、CMCを有しておらず、本発明の範囲内のバイオサーファクタントではない。
【0059】
ヘキサペプチド-1は、6個のアミノ酸残基、即ち、アラニン、アルギニン、ヒスチジン、ロイシン、フェニルアラニンおよびトリプトファンからなる合成ペプチドである。これらのペプチド部分はアシル化されていないので、CMCを有しておらず、本発明の範囲内のバイオサーファクタントではない。
【0060】
酢酸とヘキサペプチド-1の反応生成物である、アセチルヘキサペプチド-1は、Vincienceによって、商品名Melitaneで販売されている。このペプチド部分は、測定可能なCMCを有しておらず、したがって、本発明の範囲内のバイオサーファクタントではない。
【0061】
Melitane 5 PPは、デキストランとアセチルヘキサペプチド-1についての商品名である。Melitane 5 PSは、水、デキストランとアセチルヘキサペプチド-1についての商品名である。PPおよびPSの識別子は、それぞれ、ペプチド粉末およびペプチド溶液を示す。PS製品は、αメラニン細胞刺激ホルモンの活性を模倣し、メラニン形成を刺激するペプチドとして、営業用文献に記載されている。両方ともI.E.B.から市販されている。このペプチド部分は、測定可能なCMCを有しておらず、したがって、本発明の範囲内のバイオサーファクタントではない。
【0062】
アセチルヘキサペプチド-3は、3個のアミノ酸、即ち、アルギニン、メチオニンおよびアセチル化グルタミン酸からなる合成ペプチドである。これは、Lipotecによって、商品名Argirelineで販売されている。このペプチド部分は、測定可能なCMCを有しておらず、したがって、本発明の範囲内のバイオサーファクタントではない。
【0063】
ヘキサペプチド-4は、リシン、トレオニンおよびセリン残基を含有する合成ペプチドであり、商品名Collasyn 6KSでTherapeutic Peptides Inc.から市販されている。このペプチド部分はアシル化されておらず、CMCを有していない。したがって、これは本発明の範囲内のバイオサーファクタントではない。
【0064】
ヘキサペプチド-5は、バリン、チロシン、グルタミン酸、プロリンおよびイソロイシン残基を含有する合成ペプチドである。これは、商品名Collasyn 6VYでTherapeutic Peptides Inc.から市販されている。このペプチド部分はアシル化されておらず、CMCを有していない。したがって、これは本発明の範囲内のバイオサーファクタントではない。
【0065】
ヘキサペプチド-6は、配列VEPIPYを有する合成ペプチドである。これは、Therapeutic Peptides,Inc.から市販されている。このペプチド部分はアシル化されておらず、CMCを有していない。したがって、これは本発明の範囲内のバイオサーファクタントではない。
【0066】
科学文献には、コラーゲン、フィブロネクチン、エラスチン、およびエラスチンの可溶性前駆体であるトロポエラスチンを含めた細胞外マトリックスのいくつかの成分の走化性活性が記載されている。線維芽細胞のエラスチンの走化性活性は、反復ヘキサペプチド配列Val-Gly-Val-Ala-Pro-Glyに関連することが報告された。Senior RMら、J.Cell Biol.99(3):870〜874(1984)を参照されたい。配列として、Val-Gly-Val-Ala-Pro-Glyは、ヒト皮膚線維芽細胞の増殖を刺激することも報告された。Kamoun A.ら、Cell Adhes.Commun.、3(4):pp.273〜81(1995)を参照されたい。このペプチド配列はアシル化されていないので、CMCを有しておらず、本発明の範囲内のバイオサーファクタントではない。
【0067】
パルミトイル-Val-Gly-Val-Ala-Pro-Glyは、商品名Biopeptide ELでSedermaから入手可能なアシル化ヘキサペプチドである。Biopeptide ELについてのINCI名は、パルミトイルオリゴペプチドである。このペプチド配列は、少なくとも1個の帯電したアミノ酸部分を含有していないので、本発明の範囲内ではない。
【0068】
米国特許出願公開第2004/0120918号には、長さが3から12アミノ酸のアミノ酸配列を有するポリペプチド(またはアシル化ポリペプチド)の老化防止活性を改善するために、セラミドを使用することが教示されている。この'918公開特許には、Val-Gly-Val-Ala-Pro-GlyヘキサペプチドのN-アシル誘導体が教示されており、ここでアシル鎖は、直鎖または分岐、飽和または不飽和、ヒドロキシル化または非ヒドロキシル化の2〜22個の炭素のアルコイル(alkoyl)である。この公開特許には、3種のセラミド、即ち、n-ステアロイル-ジヒドロスフィンゴシン、トリヒドロキシパルミトアミドヒドロキシ-プロピルミリスチルエーテルまたはパルミトアミドミリスチルセリネートと組み合わせたBiopeptide ELがより具体的に教示されている。この特定のヘキサペプチドアミノ酸配列は、本発明の高分子バイオサーファクタント内に含まれていない。
【0069】
Sedermaから入手可能な商品Bio-Bustylは、Pal-VGVAPGとPal-GHKの組合せである。この化合物についてのINCI名は、ポリメタクリル酸グリセリル-ラーネラ/大豆タンパク質発酵体-水(アクア)-プロピレングリコール-グリセリン-PEG-8-パルミトイルオリゴペプチドである。Pal-VGVAPGは、帯電したアミノ酸残基を含有しておらず、したがって、本発明の範囲内の高分子バイオサーファクタントではない。
【0070】
ミリストイルヘキサペプチド-6は、商品名Collasyn 614VGでTherapeutic Peptides Inc.から入手可能である。INCI辞書によれば、これは、ミリスチン酸の、バリン、グリシン、アラニンおよびプロリン残基を含有する合成ペプチドとの反応生成物である。Collasyn 614VGは、帯電したアミノ酸残基を含有しておらず、したがって、本発明の範囲内の高分子バイオサーファクタントではない。
【0071】
アセチルヘキサペプチド-7は、酢酸とヘキサペプチド-7の反応生成物として、INCI辞書に記載されている。これは、Atrium Biotechnologiesによって、商品名Melitane 5で販売されている。Melitane 5 PPおよび5 PSは、デキストランとアセチルヘキサペプチド-7の混合物であり、5 PSは水も含有する。両方ともI.E.B.から入手可能である。このペプチド部分は、測定可能なCMCを有しておらず、したがって、本発明の範囲内のバイオサーファクタントではない。
【0072】
パルミトイルオリゴペプチドは、SedermaからのBiopeptide FNについてのINCI名称でもある。米国特許出願公開第2002/0025303号にさらに記載されているように、Biopeptide FNは、アルギニン、アスパラギン酸、グリシン、およびセリンからなる。本発明のどの組成物も、これらのアミノ酸の全4種から構成されていない。
【0073】
ヘキサペプチド-8は、アミド末端配列Ser-Thr-Lys-Thr-Thr-Lysとして、Therapeutic Peptides Inc.によって販売されている。このペプチド部分はアシル化されていないので、CMCを有しておらず、本発明の範囲内のバイオサーファクタントではない。
【0074】
WO9962482号には、9から13員の炭素鎖が、ヘプタペプチド配列Glu-Leu-Leu-Val-Asp-Leu-X1(X1は、20種の天然に存在するアミノ酸、ヒドロキシプロリンおよびホモセリンからなる群から選択されるアミノ酸である)のN末端に結合した、アルキル-ヘプタペプチドが記載されている。本発明のどの組成物も、この6個のアミノ酸の配列Glu-Leu-Leu-Val-Asp-Leuを含有していない。
【0075】
水とデキストランとの混合物中のノナペプチド-1は、Atrium BiotechnologiesによってMelanostatine 5で販売されている。その製品資料によれば、これは、皮膚美白用のバイオミメティックペプチドである。このペプチド部分はアシル化されていないので、CMCを有しておらず、本発明の範囲内のバイオサーファクタントではない。
【0076】
Therapeutic Peptides Inc.は、配列VQGEESNDKを有するアミド末端ノナペプチドを販売用に提供した。このペプチド部分はアシル化されていないので、CMCを有しておらず、本発明の範囲内のバイオサーファクタントではない。
【0077】
米国特許出願公開第2005/0124545号には、15アミノ酸の配列X1-Y-Phe-Thr-X2-Ala-Thr-Z-Ile-X3-Leu-X4-Phe-Leu-X5を含有する化粧品組成物、皮膚用組成物および/または医薬組成物が教示されている。X1、X2、X3、X4およびX5のそれぞれは、Arg、LysまたはHisの1つとして定義される。Yは、AspまたはGluのいずれかとして定義される。Zは、AsnまたはGlnのいずれかとして定義される。これらの特定のアミノ酸配列は、本発明の高分子バイオサーファクタント内に含まれていない。さらに、上記式によるペプチド部分は、アシル化されていないので、CMCを有しておらず、本発明の範囲内のバイオサーファクタントではない。
【0078】
Bascomらの米国特許第5,492,894号には、哺乳動物の皮膚のしわの化粧処置に有用な、2個がArgであり、1個がLysである、3から6個のアミノ酸残基を有するペプチドが教示されている。以下の38のアミノ酸配列が開示されている:(1)RGRK;(2)KRSR;(3)RSRK;(4)YRSRKY;(5)YRSRK;(6)RSRKY;(7)TYRSRKYS;(8)SYRSRKYT;(9)SYRSRKYS;(10)TYRSRKYT;(11)RSRKYT;(12)TYRSRK;(13)RSR KYS;(14)SYRSRK;(15)YRSRKYT;(16)TYRSRKY;(17)YRSRKYS;(18)SYRSRKY;(19)NTYRSRKYSS;(20)NSYRSRKYTS;(21)NSYRSRKYSS;(22)NTYRSRKYTS;(23)RSRKYTS;(24)NTYRSRK;(25)RSRKYSS;(26)NSYRSRK;(27)YRSRKYTS;(28)NTYRSRKY;(29)YRSRKYSS;(30)NSYRSRKY;(31)TYRSRKYSS;(32)NTYRSRKYS;(33)SYRSRKYTS;(34)NSYRSRKYT;(35)SYRSRKYSS;(36)NSYRSRKYS;(37)TYRSRKYTS;および(38)NTYRSRKYT。基の中で配列の第1のアミノ酸に結合することができるのは、アルキロイル(alkyloyl)である。
【0079】
米国特許第6,875,744号には、少なくとも80%のフェニルアラニン、ロイシン、アラニン、およびリシン残基を含む、長さが5から22アミノ酸の非アシル化ペプチド配列が教示されている。この'744特許に開示されているペプチドは、CMCを有しておらず、本発明の範囲内のバイオサーファクタントではない。
【発明の概要】
【0080】
本発明は、この段落のすぐ後に続く表に順番に列挙して提示されている最小基本媒質(Minimal Essential Media)(「MEM」)溶液(下で定義する)の水性環境において約200ppm未満の臨界ミセル濃度を有しており、該水性環境中の表面張力を約50ダイン/cm2未満に低下する高分子アシル化バイオサーファクタント類(「PABs」)を対象とする。より詳しくは、該PABsは、基本的に、(i)8から22員の分枝もしくは非分枝の、飽和もしくは不飽和の炭素鎖、(ii)少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つが帯電している4から9個のアミノ酸残基、および(iii)酸のC末端またはアミドのC末端からなる。本出願で用いられる帯電アミノ酸とは、リシン、アルギニン、アスパラギン酸およびグルタミン酸を意味する。意外にも本発明のPABsは、代謝性可溶性タンパク質を少なくとも約20%近く増加させることが見出された。さらに、それらは、哺乳動物細胞に対して比較的低い毒性、好ましくは37歳女性線維芽細胞において200ppmを超えるLD50、ならびに細胞外皮膚マトリックスタンパク質の合成を増加しかつ/または劣化を遅らせる能力を有する。
【0081】
以下の配列表は、本明細書の一部を形成し、本発明のいくつかの態様をさらに説明するために盛り込む。本発明は、以下に提供する発明の詳細な説明と組み合わせてこれらの配列の1つまたは複数を参照することにより、より良く理解することができよう。
【表1】

【0082】
上の表中の配列表は、本出願の終わりの配列表中に示されており、検索目的のために本明細書に添えて提出されているコンパクトディスク配列表に関してコンピューター可読の形で記録されている。書面による配列表中の情報は、コンパクトディスク配列表とまったく一致している。特に断りのない限り(即ち、配列番号25および配列番号30)、当該PABs中のアミノ酸は、L型である。
【発明を実施するための形態】
【0083】
本発明は、MEM溶液の表面張力を約50ダイン/cm2未満に低下させるMEM溶液の水性環境において約200ppm未満の臨界ミセル濃度を有する、高分子アシル化バイオサーファクタント(「PAB」)を対象とし、このPABは、(i)分岐状または非分岐状の、飽和または不飽和の、8から22員炭素鎖;(ii)4から9個のアミノ酸残基であって、その少なくとも1個が帯電しているアミノ酸残基;および(iii)酸のC末端またはアミドのC末端から本質的になる。
【0084】
本出願で使用される「MEM溶液」は、室温で、脱イオン化した蒸留水950mlにMEM粉末(以下に定義される)10グラムを添加し、穏やかに攪拌しながら混合することによって調製された、1,000ml溶液である。この混合物に、NaHCO3 2.2gおよびペニシリン-ストレプトマイシン溶液(以下に定義される)10mlを添加する。次いで脱イオン化蒸留水を、最終的な体積が1,000mlに達するように十分な量で添加する。MEM溶液の最終pHを、1N NaOHまたは1N HClを攪拌しながらゆっくりと添加することによって、7.4〜7.6に調節する。MEM溶液を、陽圧システムを使用して、0.2μmフィルターに通す膜濾過によって処理する。GIBCO 41500という商標名でInvitrogen,Inc.(Carisbad、カリフォルニア)から入手可能な「MEM粉末」は、下記の成分を、記載された濃度で含有する。
【表2】

【0085】
「ペニシリン-ストレプトマイシン溶液」は、5,000μg/mlのペニシリンGナトリウムおよび5,000μg/mlの硫酸ストレプトマイシンを0.85%の生理食塩水に溶かしたものからなる調製物であり、Invitrogenからも入手可能である。
【0086】
本発明のPABは、毒性、抗菌活性、細胞増殖活性、および/または刺激活性の比較レベルに関して(即ち、遺伝子発現に関して)、異なる性質を有する。以下に述べるように、その一部は、哺乳動物細胞に対して低い毒性を有し、原核細胞生活型に対しては高い毒性を有するが、その他は、代謝性可溶性タンパク質を増大させる能力を有する。さらにその他は、細胞外皮膚マトリックスタンパク質の合成を増大させ、かつ/または分解を低速化する能力を有し、同様に線維芽細胞の増殖を増大させる能力も有する。
【0087】
本出願で使用される「バイオサーファクタント」という用語は、好ましくは炭素原子が約8から22個の長さである、帯電した親水性頭部および長鎖炭素疎水性尾部を有する分子を意味する。これらの分子は、その臨界ミセル濃度よりも高い濃度で高分子構造に自己会合するので、バイオサーファクタントと呼ばれる。この点に関し、本発明の組成物は、溶液中で自己会合しない米国特許第6,875,744号に記載される「FLAK」ペプチド(即ち、フェニルアラニン、ロイシン、アラニン、およびリシン残基を含有するもの)と、区別することができる。
【0088】
本出願で使用される「酸のC末端」という用語は、官能基-COOHを意味する。
【0089】
本出願で使用される「アミドのC末端」という用語は、-CONH2、-CONHR、-CONR2であって、Rがアルキル、アリール、またはアルキル-アリール部分であるものから選択された官能基を意味する。
【0090】
アシル化は、アミノ酸配列のN末端が上述の基とさらに反応するのを防ぐように保護するための、当業者に周知のプロセスである。アシル官能基は、式R(C=O)-を有し、ただしRは有機基である。これらは、カルボン酸ヒドロキシル基を有機酸から除去することによって形成される。
【0091】
アミノ酸またはアミノ酸配列のN末端にアシル部分を結合するための方法は、当技術分野で周知である。当業者に知られているものの中に、いずれもアシル塩化物を使用するフリーデル-クラフトおよびショッテン-バウマン反応がある。例えば、米国特許第4,126,628号、特開平11-140032号、独国特許第19749556号を参照されたい。また、Iyer,V.N.他、J.Indian Chem.Soc.59:856〜859(1982);Paquet A.他、Can.J.Chem.60:1806〜1808(1982)も参照されたい。
【0092】
本発明に有用な、好ましいアシル基は、分岐状または非分岐状の、飽和または不飽和の8から22個の炭素原子を有する。より好ましくは、アシル部分は、ミリストイルおよびパルミトイルからなる群から選択される。
【0093】
本発明の一態様は、下記のミリストイル化PAB:配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号12、配列番号15、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32および配列番号33を対象とする。
【0094】
本発明の別の態様は、下記のパルミトイル化PAB:配列番号3、配列番号6、配列番号8、配列番号11、配列番号13、配列番号14および配列番号16を対象とする。
【0095】
アミノ酸配列の最後のアミノ酸のカルボキシ末端を保護する目的で、下記の保護基:-ORまたは-NHRであって、Rが、H、または炭素原子を22個まで有する分岐状もしくは非分岐状の飽和もしくは不飽和の直鎖状もしくは環状アルキル基からなる群から選択される保護基の1つを結合させてもよい。これらのプロセス、エステル化(-OR)およびアミド化(-NHR)も、当業者に周知である。
【0096】
本発明の一態様は、アミドのC末端を有する下記のPAB:配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号12、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号26、配列番号27、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号32および配列番号33を対象とする。
【0097】
理論に拘泥するものではないが、出願人は、アミノ酸配列の末端にカルボキシアミド基を有する特定のPABは、N末端アルキル基の酸加水分解に対して、特に生理学的pH未満のpH値で不安定になりにくいので、好ましいと考える。さらに、特定のアミド末端PABは、哺乳動物細胞に対してより高いLD50を有し、それと共に、より高い効力(より低い最小阻害濃度で表される)および/またはより広範な抗菌活性を有することが見出された。
【0098】
本発明の別の態様は、酸のC末端を有する下記のPAB:配列番号20、配列番号24、配列番号25および配列番号31を対象とする。
【0099】
本発明のPAB中の、帯電したアミノ酸残基の数は、少なくとも1個であり、より好ましくは少なくとも2個である。多数の帯電したアミノ酸残基が存在することにより、抗菌活性の観点も含めて望ましい性質が与えられる。しかし、立体効果およびその他の生物学的相互作用により、帯電したアミノ酸残基の数に基づく抗菌活性(ならびにその他の性質)は、予測し難いことが判明した。
【0100】
本発明の一態様は、帯電したアミノ酸残基のパーセンテージがアミノ酸残基の総数の少なくとも約33%である、下記のPAB:配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32および配列番号33を対象とする。
【0101】
本発明の別の態様は、帯電したアミノ酸残基のパーセンテージがアミノ酸残基の総数の少なくとも約50%である、下記のPAB:配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号25、配列番号27、配列番号27、配列番号29、配列番号30、配列番号32および配列番号33を対象とする。
【0102】
本発明のさらに別の態様は、帯電したアミノ酸残基のパーセンテージがアミノ酸残基の総数の少なくとも約60%である、下記のPAB:配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号25、配列番号27、配列番号27および配列番号30を対象とする。
【0103】
本発明の追加の態様は、アミノ酸残基の少なくとも2個が帯電している下記のPAB:配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32および配列番号33を対象とする。
【0104】
本発明の別の態様は、アミノ酸残基の少なくとも3個が帯電している下記のPAB:配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号27、配列番号27、配列番号30および配列番号31を対象とする。
【0105】
本発明のさらに別の態様は、アミノ酸残基の少なくとも4個が帯電している下記のPAB:配列番号11、配列番号22および配列番号27を対象とする。
【0106】
本発明のPABは、驚くべきことにかつ予期せぬことに、水性MEM環境において低CMCを有し、その一部は約100ppm未満であり、その他は約50ppm未満であり、さらにその他は25ppm未満である。
【0107】
したがって、本発明の一態様は、水性MEM環境において約100ppm未満のCMCを有する下記のPAB:配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32および配列番号33を対象とする。
【0108】
本発明の別の態様は、水性MEM環境で約50ppm未満のCMCを有する下記のPAB:配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号18、配列番号19、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32および配列番号33を対象とする。
【0109】
本発明のさらに別の態様は、水性MEM環境で約25ppm未満のCMCを有する下記のPAB:配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号8、配列番号9、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号18、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32および配列番号33を対象とする。
【0110】
本発明の一態様は、培養された37歳女性線維芽細胞(ATCCリファレンス:CRL-2122)において、細胞の試験集団の半分、即ち50%の死をもたらす投与用量と定義されるLD50が約200ppmよりも高く、好ましくは約500よりも高い、下記のPAB:配列番号1、配列番号2、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号15、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30を対象とする。
【0111】
本発明の目的のため、哺乳動物細胞に対する細胞毒性を、37歳女性線維芽細胞(ATCC CRL-2122)で、Cell Titer Blue Assay(Promega Corp.、Madison、WI)を使用して測定する。当業者に知られるように、Biosource Inernational and Trek Diagnostic Systemsから入手可能なAlamar Blue Assayなど、その他の類似する細胞毒性アッセイを使用してもよい。Promegaアッセイは、指標染料アラマーブルー(レサズリンとしても知られる)、細胞の細胞代謝活性に応答して蛍光比色シグナルを生成する酸化還元指示薬に基づく。より詳細には、この染料は、細胞の細胞膜および核膜の両方を透過し、ミトコンドリアおよび細胞質ミクロソームによって共に代謝される。代謝されると、染料は、590nmで放出がなされる蛍光種を形成する。蛍光の強度を測定することにより、細胞生存性を定量することができる。
【0112】
目に見える加齢の徴候(例えば、微細なラインおよびしわ)は、線維芽細胞増殖の低下ならびに皮膚内のコラーゲンおよびエラスチンのレベルと相関関係がある。後者は、2つの細胞プロセス、即ち、コラーゲンおよび/またはエラスチンの合成の低下、ならびに/あるいは、エラスターゼおよび/またはコラゲナーゼ、特に、マトリックスメタロプロテアーゼ1(MMP1)としても知られるコラゲナーゼIによるこれらタンパク質の酵素分解の増加の一方または両方に、起因する可能性がある。驚くべきことにかつ予期せぬことに、LD50未満の濃度では、本発明のPABは、代謝性可溶性タンパク質(例えば、コラーゲンやエラスチン、フィブロネクチンなどの細胞外皮膚マトリックスタンパク質、ならびにデコリンなどの細胞間結合およびフリーラジカルの除去にかかわるタンパク質)の、少なくとも約20%の増加を引き起こす。
【0113】
本発明の目的のため、代謝性可溶性タンパク質を、Molecular Probes,Inc.(Eugene、OR)からのCBQCAタンパク質定量アッセイを使用して測定する。このアッセイは、第1級アミンと特異的に反応して電気泳動またはクロマトグラフィ分析が可能な結合体を形成する、キノリン-2-カルボキスアルデヒド誘導体に基づく。より具体的には、シアン化物陰イオンの存在下、キノリン-2-カルボキスアルデヒド誘導体は、タンパク質上のものも含めて第1級アミンと反応し、550nmで強力な蛍光放出をもたらす。
【0114】
本発明のこの態様の一実施形態は、CBQCAアッセイにより測定したときに、LD50未満の濃度で少なくとも約20%の代謝性可溶性タンパク質の増加を引き起こす、下記のPAB:配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号7、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号17、配列番号18、配列番号20、配列番号21、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32および配列番号33を対象とする。
【0115】
本発明のこの態様の好ましい実施形態は、CBQCAアッセイによって測定したときに、LD50未満の濃度で少なくとも約30%の代謝性可溶性タンパク質の増加を引き起こす、下記のPAB:配列番号1、配列番号2、配列番号7、配列番号14、配列番号15、配列番号17、配列番号18、配列番号20、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号29、配列番号30および配列番号31を対象とする。
【0116】
本発明のこの態様の特に好ましい実施形態は、CBQCAアッセイにより測定したときに、LD50未満の濃度で少なくとも約50%の代謝性可溶性タンパク質の増加を引き起こす、下記のPAB:配列番号1、配列番号2、配列番号7、配列番号14、配列番号15、配列番号17、配列番号18、配列番号20、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号29、配列番号30および配列番号31を対象とする。
【0117】
本発明のPABは、驚くべきことにかつ予期せぬことに、3種の細胞外皮膚マトリックスタンパク質、すなわちCOL1(コラーゲン)、フィブロネクチン(FN1)、およびエラスチン(ELN)、をコードする発現遺伝子の増加を引き起こすことが見出された。したがって、本発明の別の態様は、コラーゲン、エラスチン、またはフィブロネクチンをコードする1個または複数の遺伝子の発現を増加させる、PABを対象とする。遺伝子発現のレベルは、DNAマイクロアレイおよび当業者に周知の様々なその他の技法を使用して、測定することができる。例えば、Perou他、Nature(ロンドン)、406:747〜752(2000)を参照されたい。
【0118】
本発明のこの態様の一実施形態は、10ppmの濃度で、ELN、FN1、またはCOL1の少なくとも2種の発現に少なくとも20%の増加を引き起こす、下記のPAB:配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号12、配列番号18、配列番号21、配列番号22、配列番号24、配列番号26および配列番号27を対象とする。
【0119】
本発明のこの態様のより好ましい実施形態は、10ppmの濃度で、ELN、FN1、およびCOL1の発現で少なくとも20%の増加を引き起こす、下記のPAB:配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号18、配列番号21、配列番号22、配列番号24および配列番号27を対象とする。
【0120】
本発明のこの態様のさらにより好ましい実施形態は、10ppmの濃度で、COL1、ELN、またはFN1の少なくとも2種の発現に少なくとも20%の増加を引き起こすだけではなく、それと同時にMMP1の発現を増加させない下記のPAB:配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号12、配列番号18、配列番号21、配列番号24および配列番号27を対象とする。
【0121】
本発明のこの態様のさらにより好ましい実施形態は、COL1、ELN、またはFN1の少なくとも2種の発現に少なくとも20%の増加を引き起こし、かつMMP1の発現を少なくとも20%下方制御する、下記のPAB:配列番号7、配列番号9および配列番号10を対象とする。
【0122】
界面活性剤にはその他の負の結果が付随することが多い。これらには、IL6およびIL8の発現の増大で示すことができる、望ましくない炎症応答を含めることができる。本発明のPABは、驚くべきことにかつ予期せぬことに、IL6およびIL8の発現が増大せず、場合によっては減少することが見出された。
【0123】
本発明のこの態様の一実施形態は、COL1、ELN、またはFN1の少なくとも2種の発現に20%の増加を引き起こし、それと同時にIL6およびIL8の発現を増加させない下記のPAB:配列番号7、配列番号9、配列番号12、配列番号18、配列番号21、配列番号22、配列番号24および配列番号26を対象とする。
【0124】
本発明のこの態様の、その他のより好ましい実施形態は、(i)COL1、ELN、またはFN1の少なくとも2種の発現の、少なくとも20%の増加、および(ii)IL6またはIL8の少なくとも1種の発現の、少なくとも20%の低下を引き起こし、それと同時に(iii)IL6またはIL8の増加を引き起こさない、下記のPAB:配列番号7、配列番号9、配列番号12、配列番号18、配列番号21、配列番号24および配列番号26を対象とする。
【0125】
本発明の、さらに別の、かつさらにより好ましい態様は、(i)COL1、ELN、またはFN1の少なくとも2種の発現の、少なくとも20%の増加、および(ii)少なくともIL6およびIL8の発現の、少なくとも20%の低下を引き起こす、下記のPAB:配列番号7、配列番号9、配列番号12、配列番号18および配列番号21を対象とする。
【0126】
本発明のこの態様の特に好ましい実施形態は、10ppmの濃度で、ELN、FN1、またはCOL1の少なくとも2種の発現で少なくとも20%の増加を引き起こし、かつMMP1、IL6、またはIL8の発現の増加を引き起こさない、下記のPAB:配列番号7、配列番号9、配列番号12、配列番号18、配列番号21および配列番号24を対象とする。
【0127】
炎症遺伝子の慢性的な上方制御は、CASP1などのアポトーシス遺伝子の上方制御と相関関係があることが観察された。炎症促進性遺伝子IL-6およびIL-8、ならびに/またはカスパーゼ1(CASP1)などのアポトーシス関連遺伝子の、著しい上方制御は望ましくない。Lyer,V.R.他、Science 283:83〜87(1999);Mathy-Hartert M他、Inflamm Res.52(3):111〜8(2003);Raqib他、Infection and Immunity 2002年6月、3199〜3207頁。したがって、本発明の別の態様は、CASP1の発現の増加を引き起こさないPABを対象とする。
【0128】
本発明のこの態様の一実施形態は、10ppmの濃度でCASP1の発現の増加を引き起こさない、下記のPAB:配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号18および配列番号21を対象とする。
【0129】
本発明のこの態様の好ましい実施形態は、10ppmの濃度でCASP1の発現の減少を引き起こす、下記のPAB:配列番号7および配列番号10を対象とする。
【0130】
本発明の別の態様は、線維芽細胞の増殖を増大させるPABを対象とする。本発明の目的のため、増殖を、Molecular ProbesからのCyquant(登録商標)細胞増殖アッセイを使用して評価する。このアッセイは、結果的に蛍光染料の結合を増加させる細胞核酸の生成の増加を測定する。
【0131】
本発明のこの態様の一実施形態は、1ppmの濃度で24時間後に、少なくとも約20%の線維芽細胞増殖の増加を引き起こす、下記のPAB:配列番号4、配列番号8、配列番号9および配列番号17を対象とする。
【0132】
本発明の別の実施形態は、10ppmの濃度で24時間後に、少なくとも約20%の線維芽細胞増殖の増加を引き起こす、下記のPAB:配列番号3、配列番号7、配列番号11、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号20および配列番号32を対象とする。
【0133】
本発明のこの態様のさらに別の実施形態は、10ppmの濃度で48時間後に、少なくとも約20%の線維芽細胞増殖の増加を引き起こす、下記のPAB:配列番号19、配列番号24および配列番号25を対象とする。
【0134】
本発明のこの態様のさらにその他の実施形態は、25ppmの濃度で48時間後に、少なくとも約20%の線維芽細胞増殖の増加を引き起こす、下記のPAB:配列番号12および配列番号23を対象とする。
【0135】
低CMCで効率的に表面を湿潤させるという本発明のPABの能力により、別の驚くべきかつ予期せぬ性質、即ち広範な抗菌活性が与えられる。「抗菌」活性とは、光学密度測定(「OD」)によって確認される、大腸菌(E.coli)、緑膿菌(P.aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、およびカンジダ・アルビカンス(C.albicans)からなる群から選択された少なくとも1種の微生物体の増殖を阻害する能力を意味する。
【0136】
「増殖の阻害」とは、サンプル中に存在する微生物細胞の量に比例する、濁度の無次元尺度であるODの、5%超の増加が減少しまたは存在しないことを意味する。例示的な目的で、本発明によるPABを、約5×103cfu/mlの最終濃度で大腸菌が存在している培養プレートに添加する。次いでプレートを、約37℃で約24時間インキュベートし、その時に振盪することによって大腸菌を再懸濁させ、ODは、約600nmで測定する。このように、ODの5%超の増加が削減されまたは存在しないことによって、大腸菌に対するPABの抗菌性が確認される。
【0137】
本発明のこの態様の一実施形態は、OD測定によって確認されるように、100ppm以下の濃度で大腸菌の増殖を阻害する下記のPAB:配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32および配列番号33を対象とする。
【0138】
本発明のこの態様の好ましい実施形態は、100ppm以下の濃度で大腸菌および緑膿菌または黄色ブドウ球菌の増殖を阻害する、下記のPAB:配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号27、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32および配列番号33を対象とする。
【0139】
本発明のこの態様の、より好ましい実施形態は、100ppm以下の濃度で大腸菌、カンジダ・アルビカンス、および緑膿菌または黄色ブドウ球菌の増殖を阻害する、下記のPAB:配列番号1、配列番号2、配列番号5、配列番号7、配列番号12、配列番号15、配列番号18、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号31および配列番号33を対象とする。
【0140】
本発明のこの態様の、さらにより好ましい実施形態は、約100ppm以下の濃度で大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、およびカンジダ・アルビカンスの増殖を阻害する、下記のPAB:配列番号1、配列番号2、配列番号7、配列番号12、配列番号15、配列番号18、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号31および配列番号33を対象とする。
【0141】
本発明のこの態様の、さらにより好ましい実施形態は、25ppmの濃度で大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(「MRSA」)の増殖を阻害する、下記のPAB:配列番号12、配列番号15、配列番号30および配列番号31を対象とする。MRSAとは、抗生物質メチシリンに対する耐性をコードする後天性遺伝子を有する細菌である黄色ブドウ球菌の分離株を意味する。
【0142】
上述の予期せぬ驚くべき性質に基づき、本発明のPABは、加齢の徴候の出現の低下を助けることも含めた局所治療用途に使用することができる。これらについて、以下に論じる。当業者に理解されるように、治療薬という意味で、毒性に対する潜在的な効力のバランスをとることが重要である。したがって、本発明の別の態様は、好ましい毒性と治療活性との比(「TTR」)を有するPABを対象とする。本出願の目的のため、PABに関するTTRは、大腸菌に関するPABの最小阻害濃度(MIC)に対するLD50の比として表され、LD50/MIC(大腸菌)と表される。
【0143】
上記にて論じたように、MICを使用して化合物の抗菌活性を評価することは、当業者に周知の方法である。試験がなされる化合物を連続希釈して増殖培地にし、培養物を接種し、次いでインキュベートする。MICは、標的微生物の増殖を阻害しまたは防止する、化合物の最低希釈度である。
【0144】
PABの相対毒性は、予測可能ではなく、N末端のアシル基の選択、帯電したアミノ酸部分の配列および間隔、また、保護アミノ基がC末端に結合されているか否かの影響を受ける可能性がある。これについて以下に記述する。
【0145】
Pal-GHKアミドおよびPal-GHRアミド[P250]は共に、同一のアシルおよびアミノ保護基を有するモノカチオン性トリペプチドである。最後のアミノ酸の位置にある正に帯電したアミノ酸残基をリシンからアルギニンに変えることによって、LD50は35から140へと4倍に増大する。これら2種の化合物のMIC(大腸菌)の差は、25倍異なっており、Pal-GHKアミドに関して250ppmであるのに対し、Pal-GHRアミドに関しては10ppmである。したがってPal-GHRアミドに関するTTRは、Pal-GHKアミドよりも140倍好ましい(14対0.1)。
【0146】
Myr-KKALKアミド(配列番号12)とMyr-KLAKKアミド(配列番号7)との比較は、同じアミノ酸残基の配列を変化させることによって生ずる可能性がある、予測不可能な著しく異なる性質を示す。これらは共に、1個のモノリジニルおよび1個のジリジニル基を有する、アシル化されたアミド末端トリカチオン性オリゴペプチドである。これらは共に、10ppmのMIC(大腸菌)を有する。しかし、配列番号7は500のLD50を有し、それに対して配列番号12は、135のLD50を有する。
【0147】
同じ帯電アミノ酸配列の末端に非帯電アミノ酸を挿入し、最後の非帯電アミノ酸を保護しないことにより(即ち、アミド化によって)、同様にMICに多大な影響を及ぼす可能性がある。例えば、驚くべきことにかつ予期せぬことに、Myr-KLAKKアミド(配列番号7)は、10ppmのMIC(大腸菌)を有する。Myr-KLAKKL酸(配列番号18)は50ppmで、5倍高いMIC(大腸菌)を有する。
【0148】
同じアミノ酸配列の酸の末端とアミドの末端との間の著しい相違は、Pal-KTTKS配列によって示される。アミド末端配列が10ppmのMIC(大腸菌)を有するのに対し、非保護(即ち、酸末端)配列は、500ppmよりも高いMIC(大腸菌)を有する。
【0149】
この比較は、アシル化アミノ配列の刺激作用と増殖作用の相違も示す。例えば10ppm濃度では、Pal-KTTKS酸は、代謝性可溶性タンパク質を著しく増大させず、またはそのCMCでまたはCMC付近で細胞増殖を著しく刺激しない。
【0150】
ペプチド部分のアシル化は、MICを20倍ほど変化させることができる。例えばSTKTTKアミドのMIC(大腸菌)は、>500ppmである。さらに、上記にて論じたように、非アシル化配列はCMCを持たず、したがって、本発明の範囲内のPABではない。ミリストイル基とこのアミノ酸配列のN末端との結合、および本発明の範囲内のPABの生成によって、MIC(大腸菌)は25ppmに低下する。これは、TTRに20倍を超える差があると言い換えられ、Myr-STKTTKアミド(配列番号21)は、STKTTKアミドよりも20倍好ましいTTRを有している(>40対2)。
【0151】
本発明のこの態様の一実施形態は、10を超えるTTRを有するPABを対象とし、配列番号1、配列番号2、配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号15、配列番号18、配列番号19、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29および配列番号30からなる群から選択される。
【0152】
本発明のこの態様のより好ましい実施形態は、10ppmの濃度でELN、FN1、およびCOL1の少なくとも2種の発現の増加を引き起こす、10を超えるTTRを有する下記のPAB:配列番号7、配列番号10、配列番号12、配列番号18、配列番号21、配列番号22、配列番号24、配列番号26および配列番号27を対象とする。
【0153】
本発明のこの態様の、さらにより好ましい実施形態は、10ppmの濃度でELN、FN1、およびCOL1の少なくとも2種の発現の20%の増加を引き起こし、しかしMMP1、IL6またはIL8の発現の増加は引き起こさない、10を超えるTTRを有する下記のPAB:配列番号7、配列番号12、配列番号18、配列番号21および配列番号24を対象とする。
【0154】
本発明のこの態様のさらにその他の好ましい実施形態は、やはりELN、FN1、およびCOL1の少なくとも2種の発現の増加を引き起こす、20を超えるTTRを有する下記のPAB:配列番号7、配列番号12、配列番号18、配列番号22および配列番号24を対象とする。
【0155】
本発明の一態様は、皮膚状態を治療するPAB、特に加齢の徴候の出現の低下を助けるPABの、局所治療用途を対象とする。さらに、本発明の範囲内のPABを用いた治療は、局所皮膚治療にしばしば関連する望ましくない炎症応答を低減させまたは予防することができる。本発明の組成物は、皮膚科学の実施に使用してもよい。本発明の範囲内の1種または複数のPABを使用することによって、改善しまたは維持することができる状態の非限定的な例は、皮膚の弾力、皮膚の硬さ、皮膚の水分、皮膚の乾燥、痒み、痣、微細なラインおよびしわ、黒子、染み、にきび、色素沈着過剰な皮膚、角質、酒さ、炎症性皮膚疾患、皮膚萎縮、創傷治癒である。さらに、上述のように、本発明の組成物は、微生物感染ならびにKerdal他、Dermatologic Therapeutics(2005)およびHardman他、Goodman & Gilman's:The Pharmacological Basis of Therapeutics(第10版、2001)に記載されている状態の治療に使用することができる。
【0156】
CTFA Dictionaryは、任意選択で本発明のPABを含有する製剤に使用するのに適している、広く様々な非限定的な化粧品および医薬品成分について記述している。これらの成分の種類の例には、研磨剤、剥離剤、吸収剤、収斂剤、抗菌剤、保存剤、抗酸化剤、抗炎症剤、ビタミン、微量なミネラル、皮膜形成剤および皮膚への局所組成物の持続性を増大させるその他の高分子材料、保湿剤、湿潤剤、pH調整剤、スキンコンディショニング剤、スキンスムース剤および/または治癒剤、抗アクネ剤、皮膚漂白剤および皮膚美白剤、外用鎮痛剤、および日焼け防止活性剤(即ち、290nmから400nmの紫外線を吸収する有機化合物、紫外線を散乱させまたは遮断する無機化合物)が含まれる。本発明の送達系での使用に適した化粧品および/または医薬品成分のその他の例は、参照によりその開示が本明細書に組み込まれる米国特許第6,492,326号および第6,974,799号と米国特許出願公開第2005/0142095号とに記載されている。
【0157】
本発明のアミノ酸配列は、例えば米国特許第6,620,419号に記載されている固相ペプチド合成を含めた当業者に周知の技法により合成することによって作製することができる。
【0158】
実施例
以下の実施例は、本発明をさらに例証するものである。構成要素および具体的な材料は、代表的なものとして提示されており、本発明の範囲内の前述の開示に照らして様々な修正を導き出すことができる。特に断りのない限り、パーセンテージは、全体の組成物の重量基準である。
【実施例1】
【0159】
ゲル
1. 脱イオン水 95〜98%
2. キサンタンガム 0.1〜0.3%
3. アスコルビルリン酸マグネシウム 1〜3%
4. 高分子アシル化バイオサーファクタント配列番号12* 10〜1000ppm
5. ヒドロキシメチルグリシン酸ナトリウム** 0.3〜1%

* Therapeutic Peptides Inc.(Harahan,LA)製
** Sutton Labs(Chatham,NJ)製のSuttocide A
【0160】
脱イオン水(#1)に材料2〜5を加え、同時にSilversonミキサー中1,000rpmで均一になるまで混合する。
【実施例2】
【0161】
クリーム/ローション
相A 20〜30%
クロペンタシロキサン* 7〜15%
シクロペンタシロキサン(および)PEG-12ジメチコンクロスポリマー** 7〜15%
シクロペンタシロキサン(および)ジメチコンクロスポリマー(および) 7〜15%
ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー***

相B
脱イオン水 適量
ポリソルベート20 0.1〜1%
ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、 20〜30%
ブチレングリコール
アスコルビルリン酸マグネシウム 1〜3%
最小必須媒質 1〜5%
高分子アシル化バイオサーファクタント配列番号21**** 10〜1000ppm
メチルパラベン、ブチルパラベン 0.2〜1%

* Dow Corning 245流動体
** Dow Corning 9011シリコーンエラストマーブレンド
*** Dow Corning 9546シリコーンエラストマーブレンド
**** Therapeutic Peptides Inc.(Harahan,LA)製
【0162】
相Bに相Aを加え、同時にSilversonミキサー中1,000rpmで均一になるまで混合する。
【実施例3】
【0163】
ナノ粒子濃縮物
相A

脱イオン水 70〜90%

相B

中鎖トリグリセリド(C6〜C12) 2〜8%
レシチン 2〜8%
中鎖脂肪酸(C6〜C12) 2〜8%
リシンまたはアルギニン 1〜2%
高分子アシル化バイオサーファクタント配列番号21* 10〜1000ppm

* Therapeutic Peptides Inc.(Harahan,LA)製
【0164】
相Bを相A中に、高速ホモジナイザーにより10,000〜12,000rpm、30〜40℃で約10分間混合する。得られた混合物を、次に、約10,000psiを超えるコロイドミル中で処理して約200nm未満の粒径の粒子を生じさせる。得られた濃縮物を、約1〜約20%の濃度で従来のマクロエマルジョンクリームに加える。
【実施例4】
【0165】
老化の徴候の改善
本発明の高分子アシル化バイオサーファクタントの治療有効量を含む局所組成物の老化の徴候の減少における効力は、「カラスの足跡」領域における表面のしわの厳しさの減少、肌のきめおよび色合いの臨床的評価、ならびに自己評価によって測定できる。これらの外見の改良に加えて、皮膚のこわばりおよび弾力性を含む生物物理パラメータにおける改善が、ツイストメータ(Twistometer)により測定可能である。
【0166】
年齢が30歳台半ばから60歳台後半までの20人の大人の白人の被験者が調査に加えられる。彼女達は、プロトコールに規定されているように軽度から中程度の光損傷を対象に選択される。その被験者達は、実験責任者、または助手による各調査訪問において臨床的に評価される。「カラスの足跡」(眼窩周囲)領域における表面の顔のしわの線(SFL)は、PackmanおよびGansの方法によって評価する。Packman,E.W.およびGans,E.H、「Topical moisturizers:quantification of their effect on superficial facial lines」、J.Soc.Cosmet.Chem.,29:1〜11(1978)。簡潔に言えば、SFLの点数は、厳しさが増していく浅さ(n×1)、明確さ(n×2)、および深さ(n×3)の3つの種類の線/しわの数の加重和である。皮膚表面のきめおよび色合い(Skin Surface Texture and Tone;表3)の中でグループ化されている欠陥(flaw)の厳しさは、0〜10のアナログスケールで点数をつける。
【0167】
ニコンD70デジタルカメラにより、復元倍率(倍率)が毎回同じであることを確保するために、そのカメラをフォーカシングステージに乗せてカラー写真を撮る。白黒写真を、ニコンF-100フィルムカメラにより、T-max 100プリントフィルムを用い、カメラレンズ上にUVAフィルターを用いて同様に撮る。
【0168】
8週間の調査の終わりに、専門家の採点者が当該カラー写真を用いて、基準からの外見の全体的改善を評価する。個々の皮膚特性の変化の評価は、本発明のバイオサーファクタントを含む組成物を用いる処理によって、その皮膚がより滑らかでよりしわが少なくなり、毛穴がよりはっきりしなくなり、皮膚の色がより均一になることを示すものである。これらの変化はまた、自己評価の被験者に認知できる。
【0169】
皮膚のこわばりおよび弾力性は、Finlayにより記載されたタイプのツイストメータにより測定する。Finlay,J.B、「The torsional characteristics of human skin in vivo.」、Biomed.Eng.6:567〜573(1971)。ねじれ伸びおよび反発を、接着テープで皮膚表面に取り付け、固定された時間一定に保たれている小電流によって回転させる円板により測定する。取り付けた円板が回転できる角度は、皮膚のこわばりに逆比例し、ねじれた皮膚の弾力性は、電流を止めたときの反発の程度と直接関係する。したがって、ねじれ伸びの減少は、その皮膚がよりこわばるように(かたく)なっていることを示し、反発の増加は、それがより弾力性になっていることを示す。
【0170】
ツイストメータ測定を除いて、皮膚状態の変化の統計的有意性を評価するために、ノンパラメトリック検定を用いる(ウィルコクソンの符号付順位検定、または50%確率検定)。これらの検定は、正規分布の条件を必要とせず、順位尺度または名義尺度、あるいは「イエスかノーか」の答えでなされる得点の分析に適している。計器測定に対しては、同じ被験者についての得点の「前」と「後」を比較するための一対の差異の「t-検定」分析を使用する。
【0171】
本発明の例示的実施形態を詳細に述べてきたが、当然のことながら、当業者には様々なその他の改変が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく明らかでありかつ容易になされることが理解されよう。したがって、本明細書に添付されている特許請求の範囲は、上文で示した実施例および記述に限定されることはなく、むしろ該特許請求の範囲は、本発明が関係する当業者によってそれらの同等物として扱われるすべての特徴を含めた本発明に属するすべての特許性のある新規性の特徴を網羅するものと解釈される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性MEM環境における表面張力を約50ダイン/cm2未満に低下させる方法であって、式Acyl-AA-Term
(式中、
(a)Acylは、分岐または非分岐の、飽和または不飽和の8から22員の炭素鎖であり、
(b)AAは、4から9個のアミノ酸残基の連続配列であって、該アミノ酸残基の少なくとも1個は帯電している連続配列であり、
(c)Termは、酸のC末端またはアミドのC末端である)
の高分子アシル化バイオサーファクタントを施すステップを含み、前記高分子アシル化バイオサーファクタントは、約200ppm未満の水性MEM環境においての臨界ミセル濃度を有し、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32および配列番号33からなる群から選択されるものである、上記方法。
【請求項2】
アミノ酸残基の少なくとも2個が帯電しており、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32および配列番号33からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アミノ酸残基の少なくとも3個が帯電しており、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号27、配列番号27、配列番号30および配列番号31からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
アミノ酸残基の少なくとも4個が帯電しており、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号11、配列番号22および配列番号27からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、水性MEM環境において約100ppm未満のCMCを有し、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32および配列番号33からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、水性MEM環境において約50ppm未満のCMCを有し、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号18、配列番号19、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32および配列番号33からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、水性MEM環境において約25ppm未満のCMCを有し、配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号8、配列番号9、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号18、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32および配列番号33からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記高分子アシル化バイオサーファクタント上の帯電したアミノ酸残基のパーセンテージが、アミノ酸残基の総数の少なくとも約33%であり、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32および配列番号33からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記高分子アシル化バイオサーファクタント上の帯電したアミノ酸残基のパーセンテージが、アミノ酸残基の総数の少なくとも約50%であり、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号25、配列番号27、配列番号27、配列番号29、配列番号30、配列番号32および配列番号33からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記高分子アシル化バイオサーファクタント上の帯電したアミノ酸残基のパーセンテージが、アミノ酸残基の総数の少なくとも約60%であり、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号25、配列番号27、配列番号27および配列番号30からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記TermがアミドのC末端であり、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号12、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号26、配列番号27、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号32および配列番号33からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
AcylがC14鎖であり、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号12、配列番号15、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32および配列番号33からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
TermがアミドのC末端であり、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号12、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号26、配列番号27、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号32および配列番号33からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
Termが酸のC末端であり、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号20、配列番号24、配列番号25および配列番号31からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
AcylがC16鎖であり、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号3、配列番号6、配列番号8、配列番号11、配列番号13、配列番号14および配列番号16からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
TermがアミドのC末端であり、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号3、配列番号6および配列番号13からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
Termが酸のC末端であり、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号8、配列番号11、配列番号14および配列番号16からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、10を超えるTTRを有し、配列番号1、配列番号2、配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号15、配列番号18、配列番号19、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29および配列番号30からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、少なくとも約20のTTRを有し、配列番号1、配列番号2、配列番号7、配列番号8、配列番号12、配列番号15、配列番号18、配列番号19、配列番号22、配列番号24、配列番号25、配列番号28、配列番号29および配列番号30からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
10ppmの濃度の前記高分子アシル化バイオサーファクタントにより、ELN、FN1、またはCOL1のうちの少なくとも2種の発現が少なくとも20パーセント増加し、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号12、配列番号18、配列番号21、配列番号22、配列番号24、配列番号26および配列番号27からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記高分子アシル化バイオサーファクタントにより、ELN、FN1、およびCOL1の発現が少なくとも20パーセント増加し、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号18、配列番号21、配列番号22、配列番号24および配列番号27からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
10ppmの濃度の前記高分子アシル化バイオサーファクタントにより、MMP1の発現が増加せず、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号12、配列番号18、配列番号21、配列番号24および配列番号27からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記高分子アシル化バイオサーファクタントにより、MMP1の発現が少なくとも20パーセント減少し、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが配列番号7、配列番号9および配列番号10からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
10ppmの濃度の前記高分子アシル化バイオサーファクタントにより、IL6またはIL8の発現が増加せず、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが配列番号7、配列番号9、配列番号12、配列番号18、配列番号21、配列番号22、配列番号24および配列番号26からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記高分子アシル化バイオサーファクタントにより、IL6またはIL8の発現が少なくとも20パーセント減少し、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが配列番号7、配列番号9、配列番号12、配列番号18、配列番号21、配列番号24および配列番号26からなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
1ppmの濃度で24時間の期間後に、前記高分子アシル化バイオサーファクタントにより、線維芽細胞の増殖が少なくとも約20パーセント増加し、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号4、配列番号8、配列番号9および配列番号17からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
10ppmの濃度で24時間の期間後に、前記高分子アシル化バイオサーファクタントにより、線維芽細胞の増殖が少なくとも約20パーセント増加し、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号3、配列番号7、配列番号11、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号20および配列番号32からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
10ppmの濃度で48時間の期間後に、前記高分子アシル化バイオサーファクタントにより、線維芽細胞の増殖が少なくとも約20パーセント増加し、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号19、配列番号24および配列番号25からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
25ppmの濃度で48時間の期間後に、前記高分子アシル化バイオサーファクタントにより、線維芽細胞の増殖が少なくとも約20パーセント増加し、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号12および配列番号23からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記高分子アシル化バイオサーファクタントにより、LD50未満の濃度でCBQCAアッセイによって測定した場合に、代謝性可溶性タンパク質が少なくとも約20%増加し、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号7、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号17、配列番号18、配列番号20、配列番号21、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32および配列番号33からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記高分子アシル化バイオサーファクタントにより、LD50未満の濃度でCBQCAアッセイによって測定した場合に、代謝性可溶性タンパク質が少なくとも約30%増加し、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号1、配列番号2、配列番号7、配列番号14、配列番号15、配列番号17、配列番号18、配列番号20、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号29、配列番号30および配列番号31からなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記高分子アシル化バイオサーファクタントにより、LD50未満の濃度でCBQCAアッセイによって測定した場合に、代謝性可溶性タンパク質が少なくとも約50%増加し、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号15、配列番号18、配列番号23、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号29および配列番号30からなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、37歳女性線維芽細胞(ATCC CRL-2122)に対して約200ppmを超えるLD50を有し、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号1、配列番号2、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号15、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
約100ppm未満または約100ppmに等しい濃度の前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、大腸菌(E.coli)の増殖を阻害し、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32および配列番号33からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、緑膿菌(P.aeruginosa)または黄色ブドウ球菌(S.aureus)の増殖を阻害し、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号27、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32および配列番号33からなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、カンジダ・アルビカンス(C.albicans)の増殖を阻害し、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号1、配列番号2、配列番号5、配列番号7、配列番号12、配列番号15、配列番号18、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号31および配列番号33からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
約100ppm未満または約100ppmに等しい濃度の前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、大腸菌(E.coli)、緑膿菌(P.aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)およびカンジダ・アルビカンス(C.albicans)の増殖を阻害し、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号1、配列番号2、配列番号7、配列番号12、配列番号15、配列番号18、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号31および配列番号33からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
25ppmの濃度の前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、大腸菌(E.coli)、緑膿菌(P.aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の増殖を阻害し、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号12、配列番号15、配列番号30および配列番号31からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記高分子アシル化バイオサーファクタントにより、MMP1の発現が増加せず、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号12、配列番号18、配列番号21、配列番号24および配列番号27からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項40】
前記高分子アシル化バイオサーファクタントにより、MMP1の発現が少なくとも約20%減少し、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号7、配列番号9および配列番号10からなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記高分子アシル化バイオサーファクタントにより、IL6またはIL8の発現が増加せず、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号7、配列番号9、配列番号12、配列番号18、配列番号21、配列番号22、配列番号24および配列番号26からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項42】
前記高分子アシル化バイオサーファクタントにより、MMP1、IL6またはIL8の発現が増加せず、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号7、配列番号9、配列番号12、配列番号18、配列番号21および配列番号24からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項43】
前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、大腸菌(E.coli)、緑膿菌(P.aeruginosa)および黄色ブドウ球菌(S.aureus)のうちの少なくとも2種の増殖を阻害し、前記高分子アシル化バイオサーファクタントが、配列番号7、配列番号12、配列番号18および配列番号22からなる群から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
(i)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32および配列番号33からなる群から選択される、少なくとも約1ppmの濃度の高分子アシル化バイオサーファクタントを含む、局所適用化粧品組成物または皮膚用組成物。
【請求項45】
油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、シリコーン中水型エマルジョン、水中シリコーン型エマルジョン、水中油中水型エマルジョンまたは油中水中油型エマルジョンである、クリーム、ローション、ゲルまたはセラムの形態の、請求項44に記載の局所適用化粧品組成物または皮膚用組成物。
【請求項46】
無水ゲルもしくはセラムまたは濃化水性分散液の形態の、請求項44に記載の局所適用化粧品組成物または皮膚用組成物。
【請求項47】
研磨剤、剥離剤、吸収剤、収斂剤、抗菌剤、保存剤、抗酸化剤、抗炎症剤、ビタミン、微量の鉱物、皮膜形成剤および皮膚への局所組成物の持続性を増大させる他の高分子材料、湿潤剤、保湿剤、pH調整剤、スキンコンディショニング剤、スキンスムース剤および/または皮膚治癒剤、抗アクネ剤、皮膚漂白剤および皮膚美白剤、外用鎮痛剤、日焼け防止活性剤からなる群から選択される、1つまたは複数の化粧品成分または医薬成分をさらに含む、請求項44に記載の局所適用化粧品組成物または皮膚用組成物。

【公表番号】特表2009−538917(P2009−538917A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513265(P2009−513265)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際出願番号】PCT/US2007/012799
【国際公開番号】WO2007/143006
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(508354773)セラピューティック ペプタイズ,インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】