説明

高分子凝集剤

【課題】 逆相懸濁重合法において、重合および乾燥時の粒子間の合着や重合槽内の壁面への付着等を抑制し、生産性を著しく改善することができる高分子凝集剤を提供する。
【解決手段】 アミノ基、アンモニウム基、カルボキシル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、チオール基およびビニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する変性オルガノポリシロキサン(B)の存在下、水溶性不飽和モノマー(a)を逆相懸濁重合させてなる水溶性(共)重合体(A)からなり、(A)の粒子表面の少なくとも一部が(B)で被覆されてなることを特徴とする高分子凝集剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は下水、し尿等の有機性汚泥、もしくは工場廃水等の無機性の廃水の脱水に用い
る高分子凝集剤およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カチオン性水溶性高分子は活性汚泥処理で生じる有機性汚泥の脱水の目的でカチ
オン性高分子凝集剤として使用されてきた。カチオン性高分子凝集剤の製品形態は、粉末
のほか低濃度水溶液、エマルションおよび懸濁液等様々である。このうち粉末品は、有効
成分濃度が高く、製造および輸送コストが安い点や、製品の経時安定性に優れる等の特徴
がある。しかしながら、現状の粉末品は粒子形状が不定形のため粉体供給機などを用いた
場合に粉体流動性が悪く、しばしばホッパー内で目詰まり等のトラブルを引き起こし、粉
末を安定かつ定量的に供給することができないといった問題があった。
粉末品の高分子凝集剤を得る重合方法としては、水溶液重合法、薄膜重合法、逆相懸濁
重合法等が挙げられ、これらのうち逆相懸濁重合法はポリマー粒子形状が球状になるとい
う特徴があることから、粉体供給機における目詰まり等のトラブルがなく安定かつ定量的
に供給することができることが知られている。また、疎水性分散媒により容易に重合熱が
除去できることから、一定温度で重合することができ、高分子量で比較的分子量分布がシ
ャープな高分子凝集剤を得ることができる点でも優れている。逆相懸濁重合法による高分
子凝集剤を得る方法としては、従来から、分散剤としてセルロース化合物を用いる方法(例えば、特許文献1〜3参照)、α−オレフィンとα,β−不飽和多価カルボン酸(無水物)との共重合体またはその誘導体を用いる方法(例えば、特許文献4、5参照)が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開昭54−56690号公報
【特許文献2】特開昭54−56691号公報
【特許文献3】特開昭54−69196号公報
【特許文献4】特開昭57−74309号公報
【特許文献5】特開2004−181449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の方法は、粉末粒子表面に残存する微量の分散剤
の粘着性のため、重合時に粒子間で合着して粗大化する問題があること、特許文献4、5
に記載の方法は上記問題を解決することができるものの、生産効率を増すために高濃度化
した場合、分散安定性を保つための分散剤が多量に必要となり、結果として汚泥脱水時に
おいて高分子凝集剤の使用量が多くなることや、重合後の乾燥工程において溶媒が分離さ
れた高分子凝集剤粒子のケーキに圧がかかり過ぎることから高分子凝集剤粒子の凝集、塊
状化が起こり生産性が著しく落ちるという問題があった。本発明の目的は、上記問題点の
ない、凝集性能に優れた高分子凝集剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、これらの課題を解決すべく鋭意検討した結果本発明に到達した。
すなわち、本発明は、アミノ基、アンモニウム基、カルボキシル基、エポキシ基、ヒド
ロキシル基、チオール基およびビニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応性
官能基を有する変性オルガノポリシロキサン(B)の存在下、水溶性不飽和モノマー(a)を逆相懸濁重合させてなる水溶性(共)重合体(A)からなり、(A)の粒子表面の少なくとも一部が(B)で被覆されてなることを特徴とする高分子凝集剤;水溶性(共)重
合体(A)からなる高分子凝集剤の製造方法において、水溶性不飽和モノマー(a)およ
びラジカル重合開始剤(b)を含有する分散相と、疎水性分散媒(c)、アルケンとα,
β−不飽和多価カルボン酸(無水物)との共重合体もしくはその誘導体からなる分散剤
(d)、およびアミノ基、アンモニウム基、カルボキシル基、エポキシ基、ヒドロキシル
基、チオール基およびビニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を
有する変性オルガノポリシロキサン(B)を含有する連続相とからなる分散体を逆相懸濁
重合させて、(A)の粒子表面の少なくとも一部を(B)で被覆させることを特徴とする、高分子凝集剤の製造方法;並びに、該高分子凝集剤を下水汚泥または廃水に添加してフロックを形成させた後、固液分離を行うことを特徴とする下水汚泥または廃水の処理方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の高分子凝集剤またはその製造方法は、下記の効果を奏する。
(1)該高分子凝集剤は、分子量分布が狭く凝集性能に優れる。
(2)該製造方法は、少量の分散剤で高モノマー濃度重合が可能である。
(3)該製造方法は、重合時に、粒子間で合着して粗大化することがない。
(4)該製造方法は、生産性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明における(A)は、水溶性不飽和モノマー(a)を構成単位とする水溶性(共)
重合体であり、(a)には、下記のノニオン性モノマー(a1)、カチオン性モノマー(a2)、アニオン性モノマー(a3)およびこれらの混合物が含まれる。
(A)を構成するモノマーとしては、本発明の効果を阻害しない範囲で(a)の他に必
要により水不溶性不飽和モノマー(x)および架橋性モノマー(y)を併用してもよい。
ここにおいて水溶性不飽和モノマーもしくは水溶性(共)重合体とは、水に対する溶解度
(20℃)が1g/水100g以上である不飽和モノマーもしくは(共)重合体を意味し、水不溶性不飽和モノマーとは、水に対する溶解度(20℃)が1g/水100g未満である不飽和モノマーを意味する。
【0008】
(a1)ノニオン性モノマー
下記のもの、およびこれらの混合物が挙げられる。
(a11)(メタ)アクリレート
炭素数(以下、Cと略記)4〜数平均分子量[以下、Mnと略記。測定はゲルパーミエ
イションクロマトグラフィー(GPC)法による。]3,000、例えば水酸基含有(メ
タ)アクリレート[例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコー
ルモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(重合度3〜50)モノ(メタ)
アクリレート、ポリグリセロール(重合度1〜10)モノ(メタ)アクリレート]および
アクリル酸アルキル(C1〜2)エステル(C4〜5、例えばアクリル酸メチル、アクリ
ル酸エチル等)
(a12)(メタ)アクリルアミドおよびその誘導体
C3〜30、例えば(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(C1〜3)(メタ)アク
リルアミド[N−メチルおよび−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等]、N−アルキ
ロール(メタ)アクリルアミド[N−メチロール(メタ)アクリルアミド等]
(a13) 上記以外の窒素原子含有エチレン性不飽和化合物
C3〜30、例えばアクリロニトリル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−2−ピ
ロリドン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルスクシンイミド、N−ビニルカルバゾー
ルおよび2−シアノエチル(メタ)アクリレート等;
【0009】
(a2)カチオン性モノマー
下記のもの、これらの塩[例えば無機酸(塩酸、硫酸、リン酸および硝酸等)塩、メチ
ルクロライド塩、ジメチル硫酸塩およびベンジルクロライド塩等]、およびこれらの混合
物が挙げられる。
(a21) 窒素原子含有(メタ)アクリレート
C5〜30、例えばアミノアルキル(C2〜3)(メタ)アクリレート、N,N−ジア
ルキル(C1〜2)アミノアルキル(C2〜3)(メタ)アクリレート[N,N−ジメチ
ルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリ
レート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノ
プロピル(メタ)アクリレート等]、複素環含有(メタ)アクリレート[N−モルホリノ
エチル(メタ)アクリレート等]等
(a22) 窒素原子含有(メタ)アクリルアミド誘導体
C5〜30、例えばN,N−ジアルキル(C1〜2)アミノアルキル(C2〜3)(メ
タ)アクリルアミド[N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等]等
(a23) アミノ基を有するエチレン性不飽和化合物
C5〜30、例えばビニルアミン、ビニルアニリン、(メタ)アリルアミン、p−アミ
ノスチレン等]
(a24) アミンイミド基を有する化合物
C5〜30、例えば1,1,1−トリメチルアミン(メタ)アクリルイミド、1,1−
ジメチル−1−エチルアミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2’−
フェニル−2’−ヒドロキシエチル)アミン(メタ)アクリルイミド等
(a25) 上記以外の窒素原子含有ビニルモノマー
C5〜30、例えば2−ビニルピリジン、3−ビニルピペリジン、ビニルピラジン、ビ
ニルモルホリン等;
【0010】
(a3)アニオン性モノマー
下記の酸、これらの塩[アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等、以下同じ。)塩、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム等、以下同じ。)塩、アンモニウム塩およびアミン(C1〜20)塩等]、およびこれらの混合物が挙げられる。
(a31) 不飽和カルボン酸
C3〜30、例えば(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イ
タコン酸、ビニル安息香酸、アリル酢酸等
(a32) 不飽和スルホン酸
C2〜20の脂肪族不飽和スルホン酸(ビニルスルホン酸等)、C6〜20の芳香族不
飽和スルホン酸(スチレンスルホン酸等)、スルホン酸基含有(メタ)アクリレート[ス
ルホアルキル(C2〜20)(メタ)アクリレート[2−(メタ)アクリロイルオキシエ
タンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、3−(メタ)ア
クリロイルオキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブタンスルホン
酸、4−(メタ)アクリロイルオキシブタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキ
シ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、p−(メタ)アクリロイルオキシメチルベンゼ
ンスルホン酸等]、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド[2−(メタ)アクリロイ
ルアミノエタンスルホン酸、2−および3−(メタ)アクリロイルアミノプロパンスルホ
ン酸、2−および4−(メタ)アクリロイルアミノブタンスルホン酸、2−(メタ)アク
リロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、p−(メタ)アクリロイルアミノ
メチルベンゼンスルホン酸等]、アルキル(C1〜20)(メタ)アリルスルホコハク酸
エステル[メチル(メタ)アリルスルホコハク酸エステル等]等
(a33) (メタ)アクリロイルポリオキシアルキレン(C1〜6)硫酸エステル
(メタ)アクリロイルポリオキシエチレン(重合度2〜50)硫酸エステル等。
【0011】
(a)のうち高分子量化の観点から好ましいのは、(a1)、(a21)、(a22)、(a31)、(a32)、さらに好ましいのは(a12)、(a13)、(a21)、(a22)、(a31)、および(a32)のうちのスルホン酸基含有(メタ)アクリレ
ート、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド、特に好ましいのは(a12)、(a1
3)、(a21)、(a31)、および(a32)のうちのスルホン酸基含有(メタ)アクリレート、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド、最も好ましいのは(a12)のうちの(メタ)アクリルアミド、(a13)のうちのアクリロニトリル、N−ビニルホルムアミド、(a21)のうちのN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびこれらの塩(上記のもの)、(a31)のうちの(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸およびこれらのアルカリ金属塩、(a32)のうちの2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、2−および3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸およびこれらのアルカリ金属塩である。また、これらの(a)は、任意に混合して共重合することができる。
【0012】
(a)の使用量(モル%)は、(A)を構成するモノマーの全モル数に基づいて、凝集性能(フロック強度、低含水率化等、以下同じ。)の観点から好ましくは50〜100%、さらに好ましくは80〜100%である。
【0013】
必要により(a)と併用してもよい水不溶性不飽和モノマー(x)としては、以下の(x1)〜(x5)、およびこれらの混合物が挙げられる。
(x1) C6〜23の(メタ)アクリレート
脂肪族または脂環式アルコール(C3〜20)の(メタ)アクリレート[プロピル−、ブチル−、ラウリル−、オクタデシル−およびシクロヘキシル(メタ)アクリレート等]およびエポキシ基(C4〜20)含有(メタ)アクリレート[グリシジル(メタ)アクリレート等];
【0014】
(x2) [モノアルコキシ(C1〜20)−、モノシクロアルコキシ(C3〜12)−もしくはモノフェノキシ]ポリプロピレングリコール(以下、PPGと略記)(重合度2〜50)の不飽和カルボン酸モノエステル
モノオール(C1〜20)もしくは1価フェノール(C6〜20)のPO付加物の(メタ)アクリル酸エステル[ω−メトキシPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−エトキシPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−プロポキシPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−ブトキシPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−シクロヘキシルPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−フェノキシPPGモノ(メタ)アクリレート等]およびジオール(C2〜20)もしくは2価フェノール(C6〜20)のPO付加物の(メタ)アクリル酸エステル[ω−ヒドロキシエチル(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート等]等;
【0015】
(x3) C2〜30の不飽和炭化水素
エチレン、ノネン、スチレン、1−メチルスチレン等;
(x4) 不飽和アルコール[C2〜4、例えばビニルアルコール、(メタ)アリルアル
コール]のカルボン酸(C2〜30)エステル(酢酸ビニル等);
(x5) ハロゲン含有モノマー(C2〜30、例えば塩化ビニル等)。
【0016】
また、架橋性モノマー(y)としては、以下の(y1)〜(y5)、これらの塩[例えば、塩基性モノマーについては、無機酸(塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、硝酸等)塩、メチルクロライド塩、ジメチル硫酸塩およびベンジルクロライド塩等、酸性モノマーについては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン(C1〜20、例えばメチルアミン、エチルアミン、シクロヘキシルアミン等)塩等]、およびこれらの混合物が挙げられる。
(y1) ビスポリ(2〜4またはそれ以上)(メタ)アクリルアミド
C5〜30、例えばN,N’−メチレンビスアクリルアミド等;
(y2) ポリ(2〜4またはそれ以上)(メタ)アクリレート
C8〜30、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトー
ル[ポリ(2〜4)](メタ)アクリレート;
【0017】
(y3) ビニル基(2〜20個またはそれ以上)含有モノマー
C4〜Mn6,000、例えばジビニルアミン、多価(2〜5またはそれ以上)アミン[C2〜Mn3,000、例えばエチレンジアミン、ポリエチレンイミン(C4〜Mn3,000)]のポリ(2〜20)ビニルアミン、ジビニルエーテル、多価アルコール〔C2〜Mn3,000、例えばアルキレン(C2〜6またはそれ以上)グリコール[エチレングリコール(以下、EGと略記)、プロピレングリコール(以下、PGと略記)、1,6−ヘキサンジオール(以下、HGと略記)等]、ポリオキシアルキレン[Mn2〜3000、例えばポリエチレングリコール(以下、PEGと略記)(分子量106〜Mn3,000)、PPG(分子量134〜Mn3,000)、ポリオキシエチレン(分子量106〜Mn3,000)/ポリオキシプロピレン(分子量134〜Mn3,000)ブロックコポリマー等]、トリメチロールエタン(以下、TMEと略記)、トリメチロールプロパン(以下、TMPと略記)、(ポリ)(2〜50)グリセリン(以下、GRと略記)、ペンタエリスリトール(以下、PEと略記)、ソルビトール(以下、SOと略記)、デンプン等〕のポリ(2〜20)ビニルエーテル等;
【0018】
(y4) アリル基(2〜20個またはそれ以上)含有モノマー
C6〜Mn3000、例えばジ(メタ)アリルアミン、N−アルキル(C1〜20)ジ(メタ)アリルアミン、多価アミン(上記のもの)のポリ(2〜20)(メタ)アリルアミン、ジ(メタ)アリルエーテル、多価アルコール(上記のもの)のポリ(2〜20)(メタ)アリルエーテル、ポリ(2〜20)(メタ)アリロキシアルカン(C1〜20)(テトラアリロキシエタン等)等;
(y5) エポキシ基含有モノマー
C8〜Mn6,000、例えばEGジグリシジルエーテル、PEGジグリシジルエーテル、GRトリグリシジルエーテル等。
【0019】
(x)の使用量(モル%)は、(A)を構成するモノマーの全モル数に基づいて、通常40以下、凝集性能発現の観点から好ましい下限は0.1、さらに好ましくは0.5、得られる高分子凝集剤の水への溶解性の観点から好ましい上限は20、さらに好ましくは10である。
また、(y)の使用量(モル%)は、使用する架橋性モノマー(y)の重合性または反応性にもよるが、(A)を構成するモノマーの全モル数に基づいて、通常5以下、凝集性能発現の観点から好ましい下限は0.001、さらに好ましくは0.01、得られる高分子凝集剤の水への溶解性の観点から好ましい上限は1、さらに好ましくは0.5である。
【0020】
本発明における(B)は、アミノ基、アンモニウム基、カルボキシル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、チオール基およびビニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する変性オルガノポリシロキサンであり、(B)には下記一般式(1)または(2)で表されるもの、およびこれらの混合物が含まれる。
【0021】
【化1】

【0022】
[式(1)、(2)中、Meはメチル基、R1はC1〜4のアルキル基、Xは、後述する、アミノ基、アンモニウム基、カルボキシル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、チオール基またはビニル基含有官能基、Zは上記アミノ基またはエポキシ基含有官能基、Qは上記ヒドロキシル基含有官能基;a、bおよびcはそれぞれ0または1で、a、bおよびcが同時に1となることはない;xおよびyは、(x+y)が10〜200で、y/(x+y)が0.01〜0.5を満足する数;pおよびqは、p+q=y、p/(p+q)=0.01〜0.5を満足する数を表す。]
【0023】
(B)の重量平均分子量[以下、Mwと略記。測定はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレン換算、溶離液はクロロホルム)による。]は、蒸気圧の観点から好ましい下限は1,000、さらに好ましくは3,000、とくに好ましくは10,000、後述する疎水性分散媒(c)への溶解性の観点から好ましい上限は500,000、さらに好ましくは300,000、とくに好ましくは200,000である。
【0024】
(B)が有する官能基のうち、モノマー水溶液との親和性および(A)粒子の表面との親和性の観点から好ましいのはカルボキシル基、エポキシ基および/またはビニル基、およびさらに好ましいのはアミノ基および/またはアンモニウム基である。これらの官能基は、(B)の分子中、側鎖および/または末端のいずれに存在していてもよい。(B)の具体例を(B1)〜(B5)として以下に示す。
【0025】
(B1)アミノ基、またはアミノ基およびアンモニウム基を有するもの(以下、アミノ変性オルガノポリシロキサンと略記。)
アミノ変性オルガノポリシロキサンには、上記一般式(1)においてXが、−R2−D1で表される反応性官能基(R2は直接結合またはC1〜20の2価の炭化水素基、D1は1〜3級アミノ基および/またはアンモニウム基含有基を表す。)であるものが含まれる。
1のうち、ポリマー粒子との親和性の観点から好ましいのは下記一般式(3)で表さ
れるアミノ基含有基、および一般式(4)で表されるアンモニウム基含有基である。
【0026】
【化2】

【0027】
[式(3)、(4)中、R3は−OCH2CH2−、−OCH(CH3)CH2−、−OCH2CH(CH3)CH2−または−OCH2CH(CH2OH)−で表される基、複数のR4はそれぞれ同一でも異なっていてもよいHまたはC1〜6の炭化水素基、dおよびeはそれぞれ0〜6の整数(但し、dとeは同時に0になることはない)、T-は対アニオンを表
す。]
【0028】
式(3)におけるT-としては、ハロゲンイオン(塩素、ヨウ素および臭素イオン等)
および有機アニオン(メトサルフェート、エトサルフェート、メトホスフェートおよびエトホスフェートアニオン等)等が挙げられる。
【0029】
(B1)のMwは、蒸気圧の観点から好ましい下限は、3,000、さらに好ましくは5,000、疎水性分散媒(c)への溶解性の観点から好ましい上限は200,000、さらに好ましくは100,000、また、アミン当量(g/mol)は、(B1)の疎水性の観点から好ましい下限は100、さらに好ましくは500、(A)との反応性の観点から好ましい上限は10,000、さらに好ましくは5,000である。ここにおいて、アミン当量はエタノール、クロロホルム等の溶媒中、濃度既知の塩酸で滴定することにより求められる。
【0030】
(B2)カルボキシル(もしくはその塩)基、またはカルボキシル(もしくはその塩)基とアンモニウム基を有するもの(以下、カルボキシ変性オルガノポリシロキサンと略記)
カルボキシ変性オルガノポリシロキサンには、上記一般式(1)において、Xが−R2
−D2で表される反応性官能基[D2はカルボキシル(もしくはその塩)基含有基、またはカルボキシル(もしくはその塩)基およびアンモニウム基含有基を表す。]であるものが含まれる。D2には、特開2002−114849号公報に記載の、下記一般式(4)または(5)で表されるカルボキシル(もしくはその塩)基含有基、および特開平6−1711号公報に記載の、カルボキシル基およびアンモニウム基含有基が含まれる。
これらのうち工業的観点から好ましいのはD2がカルボキシル(もしくはその塩)基含
有基であるもの、一般式(5)または(6)で表される基であるカルボキシ変性オルガノポリシロキサンである。
【0031】
【化3】

【0032】
[式中、複数のR6は同一でも異なっていてもよく、ヘテロ原子(O、N、またはS)を
含む置換基を有していてもよい、C2〜22の直鎖もしくは分岐鎖状のアルキレン基、アルケニレン基、(アルキル)アリーレン基またはアリールアルキレン基;Eは−O−または−NH−;MはH、金属、アンモニウム、C1〜22のアルキルもしくはアルケニルアンモニウム、C1〜22のアルキルもしくはアルケニル置換ピリジニウム、C1〜22のアルカノールアンモニウムまたは塩基性アミノ酸カチオンを表す。]
【0033】
(B2)のMwは、蒸気圧の観点から好ましい下限は、3,000、さらに好ましくは5,000、疎水性分散媒(c)への溶解性の観点から好ましい上限は200,000、さらに好ましくは100,000、カルボキシ当量(g/mol)は、(B2)の疎水性の観点から好ましい下限は250、さらに好ましくは1,000、(A)との反応性の観点から好ましい上限は10,000、さらに好ましくは5,000である。ここにおいてカルボキシ当量は、エタノール、クロロホルム等の溶媒中、濃度既知のNaOH水溶液で滴定することにより求めることができる。
【0034】
(B3)エポキシ基を有するもの(以下、エポキシ変性オルガノポリシロキサンと略記)
エポキシ変性オルガノポリシロキサンには、上記一般式(1)において、Xが−R2
3で表される反応性官能基[D3はエポキシ基含有基を表す。]であるものが含まれる。
3には下記一般式(7)〜(9)で表されるエポキシ基含有基が含まれる。これらの
うち工業的観点から好ましいのは、D3が一般式(7)〜(9)で表されるエポキシ変性
オルガノポリシロキサンである。
【0035】
【化4】

【0036】
[式中、f、gはそれぞれ1〜100の整数、AはC2〜4のアルキレン基を表し、複数のAは同一でも異なっていてもよい。]
【0037】
(B3)のMwは、蒸気圧の観点から好ましい下限は、3,000、さらに好ましくは5,000、疎水性分散媒(c)への溶解性の観点から好ましい上限は200,000、さらに好ましくは100,000、エポキシ当量(g/mol)は、(B3)の疎水性の観点から好ましい下限は100、さらに好ましくは500、(A)との反応性の観点から好ましい上限は10,000、さらに好ましくは5,000である。ここにおいてエポキシ当量は、クロロホルム溶媒中、過塩素酸の酢酸溶液で滴定することにより求めることができる(JIS K7236準拠)。
【0038】
(B4)ヒドロキシル基を有するもの(以下、ヒドロキシ変性オルガノポリシロキサンと略記)
ヒドロキシ変性オルガノポリシロキサンには、上記一般式(1)において、Xが−R2
−D4で表される反応性官能基[D4はヒドロキシル基含有基を表す。]であるものが含まれる。D4には、−OHの他に、−O―(AO)hH(hは1〜100の整数)で表される(ポリ)オキシアルキレン基、前記一般式(7)〜(9)で表わされるエポキシ基が加水分解された基、および下記一般式(10)で表されるアルキルグリセリルエーテル基が含まれる。
【0039】
【化5】

【0040】
[式中、R7はC3〜20の2価の炭化水素基、R8、R9はHまたはC1〜5の炭化水素
基を表し、そのうち少なくと一方はHである。]
4が−O−(AO)hHで表される場合は、x、yおよびhはヒドロキシ変性オルガノポリシロキサンのHLB(Hydrophile−Lipophile Balance、親水性と親油性とのつり合いを表す数値でDavisのHLBといわれるもの)が、7以下、さらに好ましくは6以下となるような任意の組み合わせとすることが好ましい。
ここにおいてDavisのHLBは下記の式から求められる[「新・界面活性剤入門」、三洋化成工業(株)1981年発行、第132−133頁参照]。

DavisのHLB=Σ(親水基の基数)−Σ(疎水基の基数)+7

上記Xのうち好ましいのは、−Cm2m−OH(mは2〜6の整数)、さらに好ましい
のは−C24OH、−C36OHである。
【0041】
(B4)のMwは、蒸気圧の観点から好ましい下限は、3,000、さらに好ましくは
5,000、疎水性分散媒(c)への溶解性の観点から好ましい上限は200,000、さらに好ましくは100,000、OH当量(g/mol)は、(B4)の疎水性の観点から好ましい下限は100、さらに好ましくは500、(A)との反応性の観点から好ましい上限は10,000、さらに好ましくは5,000である。ここにおいてOH当量は、ピリジン、トルエン等の溶媒中アセチル化試薬(無水酢酸、塩化アセチル等)でアセチル化した後、水酸化カリウムのエタノール溶液で滴下することにより求めることができる(JIS K0070準拠)。
【0042】
(B5)チオール基を有するもの(以下、チオール変性オルガノポリシロキサンと略記)
チオール変性オルガノポリシロキサンには、上記一般式(1)において、Xが−R2
5で表される反応性官能基[D5はチオール基含有基を表す。]であるものが含まれる。D4には−SHが含まれる。
(B5)のMwは、蒸気圧の観点から好ましい下限は、3,000、さらに好ましくは5,000、疎水性分散媒(c)への溶解性の観点から好ましい上限は200,000、さらに好ましくは100,000、SH当量(g/mol)は、(B5)の疎水性の観点から好ましい下限は100、さらに好ましくは500、(A)との反応性の観点から好ましい上限は200,000、さらに好ましくは100,000である。ここにおいてSH当量は、アルコール性酢酸ナトリウム溶媒中、硝酸銀で滴定することにより求めることができる。
【0043】
(B6)ビニル基を有するもの(以下、ビニル変性オルガノポリシロキサンと略記)
ビニル変性オルガノポリシロキサンには、上記一般式(1)において、Xが−R2−D6で表される反応性官能基[D6はビニル基含有基を表す。]であるものが含まれる。D6にはCH2=C(R10)COO(CH2O)i−、CH2=C(R10)CONR11(CH2O)i−またはCH2=CH−C64(CH2O)i−で表される基(但し、R10はHまたはメチル基、R11はHまたはC1〜4の炭化水素基、iは0または1を表す。)が含まれる。
(B6)のうち、ポリマー粒子との親和性の観点から好ましいのは、D6がCH2=C(R10)COO(CH2O)i−で表されるビニル基含有オルガノポリシロキサンである。
【0044】
(B6)のMwは、蒸気圧の観点から好ましい下限は3,000、さらにに好ましくは5,000、疎水性分散媒(c)への溶解性の観点から好ましい上限は200,000、さらに好ましくは100,000である。
【0045】
(B7)エポキシ基もしくはアミノ基とヒドロキシル基を有するもの(以下、異種官能基変性オルガノポリシロキサンと略記)
異種官能基変性オルガノポリシロキサンには、上記一般式(2)において、Zが上記−R2−D1で表されるアミノ基含有基、もしくは上記−R2−D2で表されるエポキシ基含有基、かつQが上記−R2−D3で表されるヒドロキシル基含有基であるものが含まれる。
(B7)のMwは、蒸気圧の観点から好ましい下限は、3,000、さらに好ましくは5,000、疎水性分散媒(c)への溶解性の観点から好ましい上限は200,000、さらに好ましくは100,000である。
アミン当量(g/mol)は、(B7)の疎水性の観点から好ましい下限は100、さらに好ましくは500、(A)との反応性の観点から好ましい上限は10,000、さらに好ましくは5,000、エポキシ当量(g/mol)は、(B7)の疎水性の観点から
好ましい下限は100、さらに好ましくは500、(A)との反応性の観点から好ましい上限は10,000、さらに好ましくは5,000、 また、OH当量(g/mol)は、(B7)の疎水性の観点から好ましい下限は100、さらに好ましくは500、(A)との反応性の観点から好ましい上限は10,000、さらに好ましくは5,000である。
【0046】
(B)の溶解性パラメーター(以下、SP値と略記)は、(A)粒子との親和性の観点から好ましい下限は6、さらに好ましくは6.5、とくに好ましくは7、疎水性分散媒(c)との相溶性の観点から好ましい上限は11、さらに好ましくは10、とくに好ましくは9である。
なお、SP値は「Polymer Engineering and Science,Vol.14,No.2,p147〜154(1974)」記載の方法により計算される値で、SP値(25℃)は次式により与えられる。

SP値=(ΔE/V)1/2 =[(ΣΔei)/(ΣΔVi)]1/2
i i
(式中、ΔEは凝集エネルギー密度、Vはモル体積;Δeiは原子または原子団の蒸発エ
ネルギー、Δviはモル体積を表す。但し、ガラス転移温度(以下、Tgと略記)が25
℃を超える樹脂についてはモル体積に次の値が加算される。
n<3の時、4n
n≧3の時、2n
ここにおいて、nはポリマーの最小繰り返し単位中の主鎖骨格原子の数を表す。
【0047】
(B)の使用量は、合着防止および工業上の観点から、疎水性分散媒(c)の重量に基づいて好ましくは0.001〜20%、さらに好ましくは0.01〜10%、特に好ましくは0.05〜5%である。
また、(A)の重量に基づく(B)の使用量は、合着防止および工業上の観点から、好ましくは0.01〜10%、さらに好ましくは0.05〜7%、とくに好ましくは0.1〜5%である。
【0048】
本発明の高分子凝集剤は、水溶性不飽和モノマー(a)およびラジカル重合開始剤(b)を含有する分散相と、疎水性分散媒(c)、アルケンとα,β−不飽和多価カルボン酸(無水物)との共重合体もしくはその誘導体からなる分散剤(d)、およびアミノ基、アンモニウム基、カルボキシル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、チオール基、およびビニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する変性オルガノポリシロキサン(B)を含有する連続相とからなる分散体を逆相懸濁重合させて、(A)の粒子表面の少なくとも一部を(B)で被覆させることにより製造される。
(A)の製造時、(B)を存在させる方法は疎水性分散媒(c)に予めまたは随時添加する方法、モノマー水溶液に溶解、乳化もしくは分散させて添加する方法のいずれであってもよい。
【0049】
該逆相懸濁重合方法としては、例えば次の方法が挙げられる。すなわち、上記変性オルガノポリシロキサン(B)、疎水性分散媒(c)および分散剤(d)を重合槽に仕込み、必要に応じて加熱しながら所定の重合温度(通常20〜100℃、好ましくは30〜80℃)に調整した後、槽内を不活性ガス(例えば窒素)で十分置換する。一方、水溶性不飽和モノマー(a)、ラジカル重合開始剤(b)、および必要により水不溶性不飽和モノマー(x)および/または架橋性モノマー(y)を加えたモノマー水溶液を調製し、不活性ガスで十分置換した後、撹拌下で重合槽内に加え、懸濁させながら重合させる。水溶液の投入方法としては、一括投入または滴下のいずれでもよい。また、その際モノマー水溶液としては、(a)、(b)および必要により加える(x)および/または(y)の均一水溶液としてもよいし、別々の水溶液とした上で、滴下直前で混合してもよいし、別々に同時滴下してもよい。
【0050】
上記ラジカル重合における重合開始剤(b)としては、種々のもの、例えばアゾ化合物〔水溶性のもの[アゾビスアミジノプロパン(塩)、アゾビスシアノバレリン酸(塩)等]および油溶性のもの[アゾビスシアノバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等]〕および過酸化物〔水溶性のもの[過酢酸、t−ブチルパーオキサイド、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等]および油溶性のもの[ベンゾイルパーオキシド、クメンヒドロキシパーオキシド等]〕が挙げられる。
上記過酸化物は還元剤と組み合わせてレドックス開始剤として用いてもよく、還元剤としては重亜硫酸塩(重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、重亜硫酸アンモニウム等)、還元性金属塩[硫酸鉄(II)等]、、遷移金属塩のアミン錯体[塩化コバルト(III)のペンタメチレンヘキサミン錯体、塩化銅(II)のジエチレントリアミン錯体等]、有機性還元剤〔アスコルビン酸、3級アミン[ジメチルアミノ安息香酸(塩)、ジメチルアミノエタノール等]等〕が挙げられる。
また、アゾ化合物、過酸化物およびレドックス開始剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもいずれでもよい。
(b)は、通常上記分散相に存在させるが、分散相および/または連続相のいずれに存在させてもよい。
【0051】
(b)の使用量(重量%)は、(A)を構成するモノマーの全モル数に基づいて、最適な分子量を得るの観点から好ましい下限は0.001%、さらに好ましくは0.005%、とくに好ましくは0.01%、最も好ましくは0.02%、好ましい上限は1%、さらに好ましくは0.5%、とくに好ましくは0.1%、最も好ましくは0.05%である。
【0052】
本発明における分散相中のモノマーの合計濃度(以下、分散相濃度という場合がある。)は、分散相の重量に基づいて好ましくは50%以上、さらに好ましくは55%以上、とくに好ましくは60%以上、好ましくは90%以下、さらに好ましくは85%以下、とくに好ましくは80%以下である。
【0053】
本発明における疎水性分散媒(c)は、水に対する溶解度(20℃)が1g/水100g未満である分散媒を意味する。
(c)としては、炭化水素[脂肪族(C5〜12、例えばn−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン)、脂環式(C5〜12、例えばシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、デカリン)および芳香族炭化水素(C6〜12、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン)等]、ケトン[脂肪族(C3〜10、例えばメチル−n−プロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、脂環式(C5〜10、例えばシクロペンタノン、シクロヘキサノン)および芳香環含有ケトン(C8〜13、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン)等]、エーテル[脂肪族(C4〜8、例えばジ−n−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル)、環状エーテル(C4〜18、例えばテトラヒドロピリン)および芳香環含有エーテル(C7〜12、例えばアニソール)等]、エステル[脂肪族エステル(C3〜10、例えば酢酸n−ブチル)、脂環含有エステル(C7〜12、例えば酢酸シクロヘキシル、シクロヘキサンカルボン酸メチル)、芳香環含有エステル(C8〜13、例えば安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸n−ブチル、酢酸ベンジル、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジ−n−ブチルフタレート)等]、およびこれらの混合物が挙げられる。
これらのうち、製造時の取り扱い、および高分子量化の観点から、好ましいのは脂肪族および脂環式炭化水素、さらに好ましいのはn−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、シクロヘキサンおよびメチルシクロヘキサンである。
【0054】
(c)の使用量は、モノマー水溶液の重量に基づいて、分散安定性の観点から、好まし
い下限は25%、さらに好ましくは40%、とくに好ましくは65%、生産効率の観点から好ましい上限は1,000%、さらに好ましくは400%、とくに好ましくは200%である。
【0055】
本発明における分散剤(d)としては、アルケンとα,β−不飽和多価カルボン酸(無水物)との共重合体またはその誘導体が挙げられる。
アルケンとしては、通常C10〜100、分散安定性の観点から、Cの好ましい下限は12、さらに好ましくは16、とくに好ましくは18、最も好ましくは20、溶解性の観点から好ましい上限は60、さらに好ましくは50、とくに好ましくは45、最も好ましくは40である。これらは単独でも混合物でもよい。
アルケンの具体例としては、エチレン、プロピレン、ペンテン、デセン、1−オレフィン(C11〜100)、2−オレフィン等が挙げられる。
これらのうち分散安定性の観点から好ましいのはC20〜40の1−オレフィン、およびそれらの混合物である。
【0056】
α,β−不飽和多価カルボン酸(無水物)としては、C4〜20の多価(2価〜3価またはそれ以上)カルボン酸、例えば(無水)マレイン酸、(無水)シトラコン酸、(無水)イタコン酸およびこれらの混合物が挙げられる。これらのうち分散安定性の観点から好ましいのは(無水)マレイン酸である。
【0057】
アルケンとα,β−不飽和多価カルボン酸(無水物)との合計重量に基づくアルケンの使用量は、疎水性分散媒との相溶性の観点から好ましい下限は10%、さらに好ましくは20%、とくに好ましくは30%、最も好ましくは50%、分散安定性の観点から好ましい上限は99%、さらに好ましくは90%、とくに好ましくは80%である。
【0058】
上記アルケンとα,β−不飽和多価カルボン酸(無水物)との共重合体は、ラジカル重合、アニオン重合またはカチオン重合により製造することができる。
【0059】
該共重合体の誘導体としては、部分エステル化物、部分アミド化物および部分中和物が挙げられる。
部分エステル化物としては、Mn10〜10,000、例えば共重合体のモノメチルエステル、モノエチルエステルおよびモノブチルエステル;部分アミド化物としては、Mn10〜10,000、例えばモノエチルアミド、モノプロピルアミドおよびモノブチルアミド;また、部分中和物としてはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニアもしくはアミン(C1〜20)による中和物が挙げられる。
これらの誘導体は単独でも混合物で用いてもよい。
部分エステル化、部分アミド化または部分中和の割合(モル%)は、共重合体を構成するα,β−不飽和多価カルボン酸(無水物)のモル数に基づいて、疎水性分散媒との相溶性の観点から好ましい下限は5、さらに好ましくは10、工業的観点から好ましい上限は70、さらに好ましくは50である。
【0060】
(d)のMnは、分散安定性の観点から好ましい下限は100、さらに好ましくは200、とくに好ましくは300、最も好ましくは500、溶解性の観点から好ましい上限は10,000、さらに好ましくは5,000、とくに好ましくは3,000、最も好ましくは1,000である。
【0061】
(d)の使用量は、疎水性分散媒(c)の重量に基づいて、分散安定性および分散粒子の粒径制御の観点から、好ましい下限は0.01%、さらに好ましくは0.1%、とくに好ましくは0.5%、最も好ましくは1%、好ましい上限は10%、さらに好ましくは8%、とくに好ましくは5%、最も好ましくは3%である。
【0062】
(d)は分散粒子の粒子径制御などの必要により種々の油溶性高分子物質(e)を併用することができる。
該油溶性高分子物質としては、セルロースエーテル、例えばエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース)、ショ糖脂肪酸エステル(C22〜120、例えばショ糖ジステアレート、ショ糖トリステアレート)、ソルビタン脂肪酸エステル(C16〜120、例えばソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレート等)、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル(C12〜120、例えばグリセリンモノステアレート等)等が挙げられる。これらのうち、製造時における装置への重合粒子付着防止の観点から、好ましいのはショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルである。
該油溶性高分子物質の使用量は、(d)の重量に基づいて、通常100%以下、分散安定性の観点から好ましい下限は5%、さらに好ましくは10%、粒径制御の観点から好ましい上限は50%、さらに好ましくは30%である。
【0063】
また、必要によりラジカル重合用連鎖移動剤を使用してもよい。該連鎖移動剤としては、特に限定なく種々のもの、例えば、分子内に1個また2個以上のOH基を有する化合物[1価アルコール(C1〜60、例えばメタノール、エタノール、n−およびi−プロパノール)、多価(2〜3またはそれ以上)アルコール(C2〜60、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール)、高分子ポリオール(Mn200〜10,000、例えばポリエチレングリコール、ポリエチレン/ポリプロピレングリコール)等]、分子内に1個または2個以上のアミノ基を有する化合物[C0〜60、例えばアンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、n−およびi−プロパノールアミン]、分子内に1個または2個以上のチオール基を有する化合物(後述)等が挙げられる。
これらのうち、分子量制御の観点から好ましいのは分子内に1個または2個以上のチオール基を有する化合物である。
【0064】
分子内に1個または2個以上のチオール基を有する化合物としては、以下のもの、これらの塩[アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン(C1〜20、例えばメチルアミン、エタノールアミン)塩、無機酸(塩酸、硫酸、リン酸および硝酸等)塩等]、およびこれらの混合物が挙げられる。
(1)1価チオール
脂肪族チオール(C1〜20、例えばメタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、n−オクタンチオール、n−ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、n−オクタデカンチオール、2−メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸、1−チオグリセロール、チオグリコール酸モノエタノールアミン、チオマレイン酸、メルカプトコハク酸、システイン、システアミン)、脂環式チオール(C5〜20、例えばシクロペンタンチオール、シクロヘキサンチオール)、芳香族チオール(C6〜12、例えばベンゼンチオール、チオサリチル酸、チオクレゾール、チオキシレノール)および芳香脂肪族チオール(C7〜20、例えばα−トルエンチオール)が挙げられる。
【0065】
(2)多価チオール
ジチオール[脂肪族ジチオール(C2〜40、例えばエタンジチオール、ジエチレンジチオール、トリエチレンジチオール、n−、i−およびsec−プロパンジチオール、1,3−および1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、ネオペンタンジチオール)、脂環式ジチオール(C5〜20、例えばシクロペンタンジチオール、シクロヘキサンジチオール)、芳香族ジチオール(C6〜16、例えばベンゼンジチオール、ビフェニルジチオール)および芳香脂肪族ジチオール(C8〜20、例えばキシレンジチオール)が挙げられる。
【0066】
ラジカル重合用連鎖移動剤の使用量は、本発明の高分子凝集剤の最適な分子量を得ると
の観点から、(a)、(x)および(y)の合計重量に基づいて、好ましい下限は0.0001%、さらに好ましくは0.001%、とくに好ましくは0.01%、最も好ましくは0.05%、好ましい上限は10%、さらに好ましくは5%、とくに好ましくは3%、最も好ましくは1%である。
【0067】
本発明におけるモノマー水溶液のpHは、特に限定されないが、高分子量化の観点から、好ましい下限は2、さらに好ましくは2.5、とくに好ましくは3、加水分解防止の観点から好ましい上限は8、さらに好ましくは7、とくに好ましくは6.5である。pH調整のために用いられるpH調整剤としては特に限定はなく、モノマー水溶液がアルカリ性の場合は無機酸(硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等)、無機固体酸性物質(酸性リン酸ソーダ、酸性ぼう硝、塩化アンモン、硫安、重硫安、スルファミン酸等)および有機酸(C2〜20、例えばシュウ酸、こはく酸、リンゴ酸等)が挙げられ、モノマー水溶液が酸性の場合は無機アルカリ性物質(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等)および有機アルカリ性物質(グアニジン等)が挙げられる。
なお、ここにおけるpHは、モノマー水溶液の原液をpHメーター[例えばLABpHメーターM−12、商品名、(株)堀場製作所製]を用いて室温(20℃)で測定される値である。
【0068】
逆相懸濁重合の重合温度(℃)は、分子量および分散粒子安定性の観点から、下限は好ましくは10、さらに好ましくは30、とくに好ましくは40、最も好ましくは50、上限は好ましくは95、さらに好ましくは80、とくに好ましくは70、最も好ましくは60である。また、重合中は所定重合温度を一定(例えば、所定重合温度±5℃)に保つように、適宜加熱、冷却して調節することが好ましい。
重合温度を一定に保つために、予め所定重合温度に温調した分散媒に撹拌下でモノマーを随時滴下してもよい。その際の滴下時間は、モノマー濃度、および重合反応発熱量により異なるが、通常0.5〜20時間、好ましくは1〜10時間である。
【0069】
重合反応の終了は、重合による発熱がなくなった点で確認できるが、重合時間は、通常発熱により重合開始を確認した時点から1〜24時間、重合を完結し、残存モノマーを減少させるとの観点から好ましい下限は2時間、さらに好ましくは3時間、工業上の観点から好ましい上限は12時間、さらに好ましくは10時間である。モノマーを随時滴下する場合は滴下終了後から上記時間重合することが好ましい。
上記のモノマー濃度、重合温度、重合時間は、モノマー組成、重合法、開始剤種類などによって適宜調整することができる。
【0070】
重合時の圧力(kPa、以下絶対圧力を示す。)は、特に限定されないが、通常大気圧下で行う。重合時の温度調節が容易である点から、好ましくは重合温度で疎水性分散媒(c)が沸騰する圧力または(c)と水とが共沸する圧力が好ましく、圧力の好ましい下限は5、さらに好ましくは12、とくに好ましくは25、好ましい上限は95、さらに好ましくは80、とくに好ましくは65である。
【0071】
本発明における(A)の固有粘度[η](1N−NaNO3水溶液中30℃での測定値
、単位はdl/g。以下同じ。)は通常1〜40、凝集性能(高フロック強度、フロックの粗大化、脱水ケーキの低含水率化等。以下同じ)の観点から、好ましい下限は4、さらに好ましくは6、とくに好ましくは8、最も好ましくは9.5、凝集速度の観点から好ましい上限は30、さらに好ましくは25、とくに好ましくは20、最も好ましくは18である。
【0072】
また、(A)は、さらに変性反応させてもよい。ポリマー変性方法としては、例えば、水溶性不飽和モノマー(a)として加水分解性官能基を分子内に有するアクリルアミドを
使用した場合、重合時または重合後に苛性アルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)または炭酸アルカリ(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)を添加して、(a)のアミド基を部分的に加水分解してカルボキシル基を導入する方法(特開昭56−16505号公報等);ホルムアルデヒド、ジアルキルアミン(C1〜12)およびハロゲン(塩素、臭素、ヨウ素等)化アルキル(C1〜12)(メチルクロライド、エチルクロライド等)を加え、マンニッヒ反応によって部分的にカチオン性基を導入する方法;アクリロニトリル等のニトリル基と、ビニルホルムアミドなどの加水分解により得られるアミノ基との閉環反応により分子内にアミジン環を形成させる方法(特開平5−192513号公報等);および重合後に前記の架橋性モノマー(y)を添加して架橋反応させる方法(特許3305688号公報等)等が挙げられる。
【0073】
(A)の粒子表面の少なくとも一部が(B)で被覆されてなる本発明の高分子凝集剤粒子(以下、高分子凝集剤粒子と略記)の重量平均粒径(μm)は、使用時における発塵防止の観点から、好ましい下限は150、さらに好ましくは200、とくに好ましくは250、最も好ましくは300、水への溶解性の観点から好ましい上限は2,000、さらに好ましくは1,700、とくに好ましくは1,400、最も好ましくは1,000である。
重量平均粒径(μm)は、ロータップ試験篩振とう機およびJIS Z8801−2000に規定された標準篩を用いて、ペリーズ・ケミカル・エンジニアーズ・ハンドブック第6版(マックグローヒル・ブック・カンパニー刊、1984、21頁)に記載の方法で求めることができる。
即ち、適当な目開きの上記標準篩、例えば目開きが2、1.7、1.4、1.18、11.0mm、850、710、500、425、355、300、250、180および150μmの標準篩上にそれぞれ該高分子凝集剤粒子50.0gをとり、ロータップ試験篩振とう機[例えば、(株)飯田製作所製]で1分間振とうし、各篩上に残った試料を計量する。結果を対数確率紙にプロットし、重量が50%の時の粒径(メジアン径)を重量平均粒径とする。
【0074】
本発明の高分子凝集剤は、(A)の粒子表面の少なくとも一部が(B)で被覆されてなり、(B)は(A)粒子の表面に存在する官能基と化学結合(好ましくは共有結合および/またはイオン結合)していてもよい。化学結合している場合は、(A)のクロロホルム溶液(濃度10重量%)を、2時間撹拌処理(30rpm、50℃)し、さらに遠心分離する洗浄工程を3回行った後、X線光電子分析装置(以下、ESCAと略記)、X線マイクロアナライザ(EPMA)等により(B)が(A)粒子の表面に存在していることを確認することができる。
ここにおいて、被覆とは(A)粒子の表面のべたつきを抑えられる程度に少なくとも(A)の粒子表面の一部に(B)が存在していることを意味する。
【0075】
(A)粒子を被覆する(B)の割合は、(A)の重量に基づいて、耐ブロッキング性の観点から好ましい下限は0.01%、さらに好ましくは0.05%、とくに好ましくは0.1%、溶解性の観点から好ましい上限は3%、さらに好ましくは1%、とくに好ましくは0.5%である。
【0076】
本発明の高分子凝集剤は、重合直後は含水ゲルの状態で得られるが、さらに脱水することによって固形状の高分子凝集剤を得ることができる。
脱水方法としては、特に限定なく、重合後、熱風乾燥、赤外線乾燥、間接加熱乾燥(真空乾燥、撹拌型の乾燥機、ドラムドライヤー)等の乾燥方法により脱水する方法、疎水性分散媒中で共沸させて減圧脱水させる方法等が考えられる。またこれらの方法は任意に併用することができる。
【0077】
本発明の高分子凝集剤は、従来にない特異的な凝集性能を示すことから、産業廃水(以下、廃水と略記)の凝集処理用高分子凝集剤、およびとくに下水もしくはし尿(以下、下水汚泥と略記)の凝集処理用高分子凝集剤として好適に用いられる。
下水汚泥においては、懸濁粒子の大きさが比較的大きく、また水中における懸濁粒子表面がマイナス荷電を有していることから、凝集処理用高分子凝集剤としてはカチオン性または両性高分子凝集剤、およびこれらの混合物が好ましい。
ここで、カチオン性高分子凝集剤とは、分子内にカチオン性基を有する高分子凝集剤、すなわち水に溶解した際にカチオン性を示す高分子凝集剤であり、また両性高分子凝集剤とは、分子内にカチオン性基およびアニオン性基を有する高分子凝集剤、すなわち水に溶解した際にカチオン性およびアニオン性を示す高分子凝集剤である。これらの高分子凝集剤の水中におけるカチオン性またはアニオン性の評価方法については、コロイド当量値(meq/g)として求めることができる。すなわち、カチオン性凝集剤中のカチオン性基当量値はカチオンコロイド当量値として求めることができ、両性凝集剤中のカチオン性基当量値およびアニオン性基当量値は、それぞれカチオンコロイド当量値、アニオンコロイド当量値として求めることができる。
【0078】
本発明のカチオン性高分子凝集剤中のカチオンコロイド当量値(meq/g)は、凝集性能の観点から好ましい下限は0.1、より好ましくは0.5、さらに好ましくは1.0、とくに好ましくは1.5、最も好ましくは2.0、凝集性能の観点から好ましい上限は7.0、より好ましくは6.0、さらに好ましくは5.5、とくに好ましくは5.2、最も好ましくは5.0である。
また本発明の両性高分子凝集剤中のカチオンコロイド当量値(meq/g)は、凝集性能の観点から好ましい下限は0.1、より好ましくは0.5、さらに好ましくは1.0、とくに好ましくは1.5、最も好ましくは2.0、凝集性能の観点から好ましい上限は7.0、より好ましくは6.0、さらに好ましくは5.5、とくに好ましくは5.2、最も好ましくは5.0である。
また、アニオンコロイド当量値(meq/g)は、凝集性能の観点から好ましい下限は−13.0、より好ましくは−10.0、さらに好ましくは−8.0、とくに好ましくは−5.0、最も好ましくは−3.0、凝集性能の観点から好ましい上限は−0.05、より好ましくは−0.1、さらに好ましくは−0.3、とくに好ましくは−0.5、最も好ましくは−1.0である。
【0079】
コロイド当量値は以下に示すコロイド滴定法により求めることができる。なお、以降の測定は室温(約20℃)下で行う。
(1)測定試料(高分子凝集剤の50ppm水溶液)の調製
試料0.2g(固形分含量換算したもの)を精秤し、200mlの三角フラスコにとり、全体の重量(試料とイオン交換水の合計重量)が100gとなるようにイオン交換水を加えた後、マグネチックスターラー(長さ40mm、直径5mmの円筒状マグネット、回転数1,000rpm)で、3時間撹拌して完全に溶解させ、0.2重量%の高分子凝集剤溶液を調製する。500mlのビーカーに該調製溶液10mlをとり、全体の重量(溶液10mlとイオン交換水の合計重量)が400gとなるようにイオン交換水を加え、再度マグネチックスターラー(1,000〜1,200rpm)で、30分間撹拌して、均一な測定試料とする。
なお、高分子凝集剤の固形分含量は、試料約1.0gをシャーレ(直径100mm、深さ10mm)に秤量(W1)して、循風乾燥機中、105±5℃で90分間乾燥させた後の残存重量を(W2)として、次式から算出した値である。

固形分含量(重量%)=(W2)×100/(W1)

(2)カチオンコロイド当量値の測定
測定試料100gを200mlのコニカルビーカーにとり、マグネチックスターラー(500rpm)で撹拌しながら徐々に0.5重量%硫酸水溶液を加え、pH3に調整する
。次にトルイジンブルー指示薬(TB指示薬)を2〜3滴加え、N/400ポリビニル硫酸カリウム(N/400PVSK)試薬で滴定する。滴定速度は2ml/分とし、測定試料が青から赤紫色に変色し、赤紫色が30秒間保持される時点を終点とする。
(3)アニオンコロイド当量値の測定
測定試料100gを200mlのコニカルビーカーにとり、マグネチックスターラー(500rpm)で撹拌しながら、N/10水酸化ナトリウム水溶液0.5mlを加え、さらにN/200メチルグリコールキトサン水溶液5mlを加えた後、5分間撹拌する(その時のpH約10.5)。TB指示薬を2〜3滴加え、上記(2)と同様にして滴定する。
(4)空試験
測定試料の代わりにイオン交換水100gを用いる以外は(2)および(3)と同様の操作を行う。
(5)計算方法

カチオンまたはアニオンコロイド当量値(meq/g)=(1/2)×(試料の滴定量
−空試験の滴定量)×(N/400PVSKの力価)
【0080】
本発明の高分子凝集剤の曳糸長(mm)は、ノニオン性およびアニオン性高分子凝集剤では、凝集性能の観点から、下限は好ましくは50、さらに好ましくは60、とくに好ましくは70、凝集剤の反応性の観点から、上限は好ましくは150、さらに好ましくは140、とくに好ましくは130;カチオン性および両性高分子凝集剤では、凝集性能の観点から、下限は好ましくは30、さらに好ましくは40、とくに好ましくは60、凝集剤の反応性の観点から、上限は好ましくは150、さらに好ましくは140、とくに好ましくは120である。
ここにおいて、曳糸長は、高分子凝集剤をイオン交換水に溶かして、ノニオン性およびアニオン性高分子凝集剤では0.2%水溶液、カチオン性および両性高分子凝集剤では0.4%水溶液とし、長径側の端部に引き上げ糸を取り付けた楕円球状(長径11mm、短径7mm)のガラス球を該水溶液に浸漬し、ガラス球の上端と液面を一致させた後、16mm/秒の速度でガラス球を引き上げた時、ポリマー水溶液が切れるまでの引き上げ距離を25℃で測定した値(単位mm)である。
曳糸長は、高分子凝集剤の分子量分布を表す目安とされる。例えば、2種類の高分子凝集剤を比較した場合、いずれも水不溶解分の割合が0.1重量%以下で、しかも同等の固有粘度を有するときは、曳糸長が短い方が分子量分布がシャープであると判断される。
【0081】
本発明の高分子凝集剤の形態は、通常粉末状(例えば破砕状、真球状および葡萄房状)である。
本発明の、(A)の粒子表面の少なくとも一部が(B)で被覆されてなる高分子凝集剤[以下、高分子凝集剤(I)と略記]は、単独でも2種以上の混合物でも使用できるが、必要により(I)以外のその他の高分子凝集剤(II)を併用してもよい。(II)としては、前記モノマー(a)[および必要によりモノマー(x)および/または(y)]を重合してなる任意の水溶性(共)重合体(カチオン性、アニオン性および/または両性水溶性(共)重合体等)からなり、(B)で被覆されていない高分子凝集剤が挙げられる。(a)および必要により加えるモノマー(x)および/または(y)の使用量は前記(A)の製造における場合と同様である。(II)の製造方法としては、本発明の逆相懸濁重合法の他、種々の重合法(例えば、水溶液重合、薄膜重合、沈澱重合、乳化重合)が挙げられる。また、さらに得られたものを前記ポリマー変性させたものも(II)に含まれる。
【0082】
(II)がカチオン性またはアニオン性水溶性重合体の場合は、形態としては特に限定はなく、球状、破砕状等いずれでもよい。
(II)の重量平均粒径(μm)は、使用時における発塵性の観点から、下限は好まし
くは150、さらに好ましくは200、とくに好ましくは250、最も好ましくは300、水への溶解性の観点から上限は好ましくは2,000、さらに好ましくは1,700、とくに好ましくは1,400、最も好ましくは1,000である。
【0083】
(II)を併用する場合は、優れた凝集性能を具備するとともに優れた粉体流動性を有するという本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
(II)を(I)と併用する方法としては、それぞれの製造後に(I)と(II)を混合する方法が挙げられる。
(I)と(II)の併用において、(II)の形状が球状である場合の(II)の使用量(重量%)は、(I)および(II)の全重量に基づいて通常80以下、優れた凝集性能および優れた粉体流動性の観点から好ましい下限は5、さらに好ましくは10、とくに好ましくは20、ブロッキングの観点から好ましい上限は70、さらに好ましくは60、最も好ましくは40である。
また、(II)の形状が球状でない場合の(II)の使用量(重量%)は、(I)および(II)の全重量に基づいて通常50以下、優れた凝集性能の観点から好ましい下限は5、さらに好ましくは10、とくに好ましくは20、ブロッキングおよび粉体流動性の観点から好ましい上限は40、さらに好ましくは35、とくに好ましくは30である。
【0084】
(II)の固有粘度は、特に限定されないが、凝集性能の観点から、好ましい下限は0.5、さらに好ましくは2、とくに好ましくは5、好ましい上限は40、さらに好ましくは20、とくに好ましくは12である。
【0085】
本発明の高分子凝集剤は必要に応じ、本発明の効果を阻害しない範囲で、消泡剤(C1)、キレート化剤(C2)、pH調整剤(C3)、界面活性剤(C4)、ブロッキング防止剤(C5)、酸化防止剤(C6)、紫外線吸収剤(C7)および防腐剤(C8)からなる群から選ばれる添加剤(C)を併用することができる。
【0086】
消泡剤(C1)としては、シリコーン化合物[Mn100〜100,000、例えばジメチルポリシロキサン、但し前記(B)を除く]、鉱物油(スピンドル油、ケロシン等)、金属石ケン(C12〜22、例えばステアリン酸カルシウム)等;
キレート化剤(C2)としては、アミノカルボン酸(C6〜24、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、ニトリロトリ酢酸およびトリエチレンテトラミンヘキサ酢酸)、多価カルボン酸[C4〜Mn10,000、例えばマレイン酸、ポリアクリル酸(Mn1,000〜10,000)およびイソアミレン/マレイン酸共重合体(Mn1,000〜10,000)]、ヒドロキシカルボン酸(C3〜10、例えばクエン酸、グルコン酸、乳酸およびリンゴ酸)、縮合リン酸(トリポリリン酸、トリメタリン酸等)およびこれらの塩[アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアミン(C1〜20、例えばメチルアミン、エチルアミン、オクチルアミン等)塩およびアルカノールアミン(C2〜12、例えばモノ−、ジ−およびトリエタノールアミン等)塩]等;
【0087】
pH調整剤(C3)としては、苛性アルカリ(苛性ソーダ、苛性カリ等)、アミン(C1〜20、例えばメチルアミン、エチルアミン、モノ−、ジ−およびトリエタノールアミン)、無機酸(塩)〔無機酸(塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、スルファミン酸、炭酸等)、およびこれらの金属[アルカリ金属、アルカリ土類金属等]塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、リン酸1ナトリウム等)およびアンモニウム塩(炭酸アンモン、硫酸アンモン等)等〕、有機酸(塩)〔有機酸[カルボン酸(C2〜15、例えば酢酸、クエン酸)、スルホン酸(C1〜15、例えばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸)およびフェノール]、およびこれらの金属(上記に同じ)塩(酢酸ソーダおよび乳酸ソーダ)およびアンモニウム塩(酢酸アンモ
ニウム、乳酸アンモニウム等)等〕等;
【0088】
界面活性剤(C4)としては、米国特許第4331447号明細書記載の界面活性剤、例えばポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルおよびジオクチルスルホコハク酸ソーダ;ブロッキング防止剤(C5)としては、ポリエーテル変性シリコーンオイル(Mn100〜3,000)、例えばポリオキシエチレン変性シリコーンおよびポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン変性シリコーン[但し、前記(B)は含まれない。];
【0089】
酸化防止剤(C6)としては、フェノール化合物[ハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、カテコール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)および2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等]、含硫化合物〔チオ尿素、テトラメチルチウラムジサルファイド、ジメチルジチオカルバミン酸およびその塩[例えば金属(上記に同じ)塩およびアンモニウム塩等]、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、2−メルカプトベンゾチアゾールおよびその塩(上記に同じ)、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート(DLTDP)およびジステアリル3,3’−チオジプロピオネート(DSTDP)等〕、含リン化合物[トリフェニルホスファイト、トリエチルホスファイト、亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、トリフェニルホスファイト(TPP)およびトリイソデシルホスファイト(TDP)等]および含窒素化合物[アミン(オクチル化ジフェニルアミン、N−n−ブチル−p−アミノフェノールおよびN,N−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン等)、尿素、グアニジンおよびグアニジンの無機酸(上記に同じ)塩]等;
【0090】
紫外線吸収剤(C7)としては、ベンゾフェノン化合物(2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等)、サリチレート化合物(フェニルサリチレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等)、ベンゾトリアゾール化合物[(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等]およびアクレート[エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、メチル−2−カルボメトキシ−3−(パラメトキシベンジル)アクリレート等]等;
防腐剤(C8)としては、安息香酸、パラオキシ安息香酸エステルおよびソルビン酸等が挙げられる。
【0091】
上記(C)は、重合前のモノマー水溶液中に予め添加しても、製造後のポリマー中に添加してもよい。(C)全体の使用量は、モノマーまたはポリマー重量に基づいて、通常30%以下、凝集性能の観点から好ましくは0〜10%である。
(C1)〜(C8)の各添加剤の使用量は、上記と同様の重量に基づいて、(C1)は通常5%以下、好ましくは1〜3%、(C2)は通常20%以下、好ましくは2〜10%、(C3)は通常10%以下、好ましくは1〜5%、(C4)および(C5)はそれぞれ通常5%以下、好ましくは1〜3%、(C6)、(C7)および(C8)はそれぞれ通常5%以下、好ましくは0.1〜2%である。
【0092】
本発明の高分子凝集剤を下水汚泥または廃水に添加する方法としては、特に限定はなく、例えば特許第1311340号公報または特許第2038341号公報等に記載の方法が挙げられる。
本発明の高分子凝集剤の使用量は、下水汚泥または廃水の種類、懸濁粒子の含有量、高分子凝集剤の分子量等により異なるが、特に限定はなく、下水汚泥または廃水中の蒸発残留物重量(以下、TSと略記)に基づいて、通常0.01〜10%、凝集性能の観点から好ましい下限は0.1%、さらに好ましくは0.5%、とくに好ましくは1%、処理費用の観点から好ましい上限は5%、さらに好ましくは3%、とくに好ましくは2%である。
【0093】
本発明の高分子凝集剤の使用方法としては、十分な凝集性能の観点から水溶液にした後に下水汚泥または廃水に添加するのが好ましいが、高分子凝集剤を固体の状態で直接廃水に添加することもできる。高分子凝集剤を水溶液として用いる場合の濃度は、取り扱い上および溶解速度の観点から好ましくは0.05〜1重量%である。
高分子凝集剤の溶解方法としては、特に限定されることはなく、例えば予め秤り取った水をジャーテスターなどの撹拌装置を用いて撹拌しながら所定量の高分子凝集剤を徐々に加え、数時間(約2〜4時間程度)かけて溶解させる方法等が採用できる。粉末状の高分子凝集剤を水に溶解させる際に、所定量の高分子凝集剤を一気に加える方法はままこを生じ、完全に水に溶解させることが困難となることから好ましくない。
【0094】
本発明の高分子凝集剤を下水汚泥または廃水に適用する際、下水汚泥または廃水が有機性の汚泥や嫌気性菌処理汚泥である場合は、汚泥粒子の荷電中和の観点から無機および/または有機凝結剤を併用するのが好ましい。
無機凝結剤としては、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸鉄、消石灰等;有機凝結剤としては、アニリン−ホルムアルデヒド重縮合物塩酸塩、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジ(メタ)アリルアンモニウムクロライド、(メタ)アリルアミンまたはジ(メタ)アリルアミン−マレイン酸共重合体、(メタ)アリルアミンまたはジ(メタ)アリルアミン−シトラコン酸共重合体、(メタ)アリルアミンまたはジ(メタ)アリルアミン−イタコン酸、(メタ)アリルアミンまたはジ(メタ)アリルアミン−フマル酸共重合体等が挙げられる。
無機および/または有機凝結剤を併用する場合は、本発明の高分子凝集剤に予めこれらを添加した混合物で下水汚泥または廃水を処理するか、下水汚泥または廃水に予め無機凝結剤および/または有機凝結剤を添加して一次凝集させた後、本発明の高分子凝集剤を添加して処理するかいずれでもよいが、フロックの強度の観点から好ましいのは後者の方法である。
【0095】
無機凝結剤および/または有機凝結剤を併用する場合の使用量は、下水汚泥または廃水の種類、懸濁粒子の大きさ、用いる凝結剤の種類などによって異なるが、特に限定はなく、下水汚泥または廃水中のTSに基づいて、無機凝結剤では通常20%以下、凝結性能の観点から好ましい下限は0.5%、さらに好ましくは1%、とくに好ましくは1.5%、凝結性能の観点から好ましい上限は10%、さらに好ましくは5%、とくに好ましくは3%であり、有機凝結剤では通常1%以下、凝結性能の観点から好ましい下限は0.01%、さらに好ましくは0.025%、とくに好ましくは0.05%、凝結性能の観点から好ましい上限は0.5%、さらに好ましくは0.2%、とくに好ましくは0.15%である。
【0096】
本発明の高分子凝集剤の添加の際には、下水汚泥または廃水のpHを予め調整しておいてもよい。pHの調整範囲は通常3〜8、加水分解防止の観点から好ましい下限は3.5、さらに好ましくは4、とくに好ましくは4.5、溶解性の観点から好ましい上限は7、さらに好ましくは6、とくに好ましくは5.5である。
pHの調整方法としては、特に限定されることはなく、無機酸(硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等)等の酸性物質や苛性アルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)等のアルカリ性物質を用いる方法が挙げられる。また、前記の無機または有機凝結剤を下水汚泥または廃水に予め加えることで、上記pHに調整することもできる。
【0097】
また、本発明の高分子凝集剤を下水汚泥または廃水に添加して形成されたフロックの脱水方法(固液分離法)としては、遠心脱水、ベルトプレス脱水、フィルタープレス脱水およびキャピラリー脱水等の種々の脱水法が適用できる。これらのうち、本発明の高分子凝集剤の特異的な凝集性能である高フロック強度の観点から好ましいのは、遠心脱水、ベルトプレス脱水およびフィルタープレス脱水である。
【0098】
以下実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部は重量部、%は重量%を表す。
高分子凝集剤の固有粘度[η]、固形分含量、重量平均粒径および曳糸長は、前記の方法によって測定し、その他の評価項目は下記のとおりである。
1.付着率(重量%)
重合後に反応槽内壁または撹拌羽根に付着したポリマー固形分の理論収量に基づく割
合。
2.合着率(重量%)

合着率=100×(目開き1,000μm以上の塊状化物重量)/全乾燥物重量

上記式における目開き1,000μm以上の塊状化物重量および全乾燥物重量は次の操作で求められる。すなわち、目開き105μmのステンレス製濾材を敷いたヌッチェを備えた真空式濾過型の固液分離機を用いて、水循環型アスピレーターによりフルバキュームし、溶媒を分離して粒子のケーキを得、該ケーキをステンレスバット上で風乾し、さらに、90℃で減圧乾燥したポリマー粒子を得(全乾燥物重量)、これを篩い分級して、目開き1,000μm以上の大きさの塊状化物を得る(塊状化物重量)。
【0099】
3.水不溶解分量(重量%)
1Lのビーカーに0.1重量%の塩化ナトリウム水溶液500gを入れ、該水溶液中に2.5gの試料を加えて、長さ50mm、幅20mmの撹拌翼を取り付けたモーターにて2時間撹拌し溶解させる。予め秤量した100μmのメッシュで溶解液をろ過する。残渣をメッシュとともにアルミ皿にのせて、120℃の循風乾燥機で2時間乾燥させる。下記の計算式で求めた値を水不溶解分量(重量%)とする。

水不溶解分量= 100×[乾燥後の残渣重量(g)]/[溶解時の試料重量(g)]
【0100】
なお、汚泥中のTS、有機分(強熱減量)、「下水試験方法」(上記)記載の分析方法に準じて行った。また、本実施例中のフロック粒径、ろ液量、ろ布剥離性およびケーキ含水率は以下の方法に従って性能評価した。
<フロック粒径>
ジャーテスター[宮本理研工業(株)製、形式JMD−6HS−A、以下同じ。]に板状の塩ビ製撹拌羽根(直径5cm、高さ2cm、厚さ0.2cm)2枚を十字になるように上下に連続して撹拌棒に取り付け、汚泥200mlを300mlのビーカーに取り、ジャーテスターにセットする。ジャーテスターの回転数を120rpmにし、徐々に汚泥を撹拌しながら、所定の濃度の(A)の水溶液を所定の方法で添加し、30秒間撹拌した後、撹拌を止めフロックの大きさを目視にて観察する[回転数120rpmでのフロック粒径(単位mm)を表2に示す]。
続いて回転数を300rpmにセットし、さらに30秒間撹拌した後、撹拌を止めフロックの大きさを再度目視にて観察する[回転数300rpmでのフロック粒径(単位mm)を表2に示す]。
【0101】
<ろ液量>
T−1189のナイロン製ろ布[敷島カンバス(株)製、円形状、直径9cm]、ヌッチェ漏斗、300mlが測れるメスシリンダーをセットし、上記フロック粒径試験後の汚泥を一気に投入して濾過し、ストップウォッチを用いて投入直後から60秒後のろ液量を測定する。
<ろ布剥離性>
濾過した汚泥の一部をスパーテルで取り出し、プレスフィルター試験機を用いて脱水試
験(2kg/cm2、60秒)を行い、試験後のろ布からの脱水ケーキの剥離性を下記の
基準に従って評価する。

◎:非常に剥がれやすい(ろ布付着物ほとんどなし)
○:剥がれやすい (わずかにろ布付着物あり)
△:多少剥がれにくい (ろ布付着物あり、わずかにろ布内部まで付着)
×:剥がれにくい (ろ布内部まで付着)
【0102】
<ケーキ含水率>
上記ろ布剥離性試験後の脱水ケーキ約3gをシャーレに秤量(W3)して、循風乾燥機中で完全に水分が蒸発するまで(例えば、105±5℃で8時間)乾燥させた後、シャーレ上に残った乾燥ケーキの重量を(W4)として、次式からケーキ含水率を算出する。

ケーキ含水率(重量%)=[(W3)−(W4)]×100/(W3)
【0103】
実施例1
N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロライド塩の70%水溶液839部、アクリルアミド50%水溶液108部、メルカプト酢酸0.33部の混合液を室温(20〜25℃)で調製した。さらに硫酸を用いてモノマー水溶液のpH(20℃)をpHメーターで監視しながら3.0に調整した。得られた混合液を十分に窒素(純度99.999%以上。以下同じ。)で置換(溶存酸素濃度100ppb以下)した後、アゾビスアミジノプロパン塩酸塩の10%水溶液1.94部を加えて均一溶液とし、モノマー水溶液を調製した。
別に還流脱水配管、滴下漏斗、窒素導入管および撹拌翼(マックスブレンド翼)を備えた反応槽にシクロヘキサン624部を仕込んだ後、これにアルケン(C30以上)と無水マレイン酸の共重合体[ダイヤカルナ30、商品名、三菱化学(株)製]6.24部とアミノ変性オルガノポリシロキサン[SF8417、商品名、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製]3.12部を加えて、撹拌翼を340rpmの回転数にて撹拌しながら、反応槽内を窒素置換(気相酸素濃度10ppm以下)した後、57℃まで昇温した。57℃に到達後、反応槽内を減圧(60kPa)にし、予め滴下漏斗内に仕込んだ前述のモノマー水溶液を反応槽中に120分間かけて全量投入し、投入完了後120分間57℃で撹拌を継続し逆相懸濁重合させた。
重合後のポリマーのスラリーを、減圧濾過機に供給し固液分離を行った後、減圧乾燥機中(1.3kPa、40℃×2時間)で乾燥し、重量平均粒径670μmの真球状の高分子凝集剤(D1)696部を得た(固形分含量93.1%)。
(1)の粒子表面について、ESCAを用いた表層分析により、粒子表面がアミノ変性オルガノポリシロキサンで被覆されていることを確認した。以下実施例で得られた高分子凝集剤(D2)〜(D11)についても同様にESCAを用いた表層分析によりいずれの粒子表面も変性オルガノポリシロキサンで被覆されていることを確認した。
【0104】
実施例2
実施例1において、アミノ変性オルガノポリシロキサン3.12部の代わりにカルボキシ変性オルガノポリシロキサン[BY16−880、商品名、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製]3.12部を用いた以外は実施例1と同様にして、重量平均粒径480μmの真球状の高分子凝集剤(D2)690部(固形分含量93.0%)を得た。
【0105】
実施例3
実施例1において、アミノ変性オルガノポリシロキサン3.12部の代わりにヒドロキシ変性オルガノポリシロキサン[BY16−848、商品名、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製]3.12部を用いた以外は実施例1と同様にして、重量平均粒径62
0μmの真球状の高分子凝集剤(D3)689部(固形分含量93.0%)を得た。
【0106】
実施例4
実施例1において、アミノ変性オルガノポリシロキサン3.12部の代わりにアンモニウム変性オルガノポリシロキサン[X−52−2380、商品名、信越化学工業(株)製]3.12部を用いた以外は実施例1と同様にして、重量平均粒径450μmの真球状の高分子凝集剤(D4)691部(固形分含量92.8%)を得た。
【0107】
実施例5
実施例1において、アミノ変性オルガノポリシロキサン3.12部の代わりにエポキシ変性オルガノポリシロキサン[SF8411、商品名、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製]3.12部を用いた以外は実施例1と同様にして、重量平均粒径560μmの真球状の高分子凝集剤(D5)690部(固形分含量93.0%)を得た。
【0108】
実施例6
実施例1において、アミノ変性オルガノポリシロキサン3.12部の代わりにチオール変性オルガノポリシロキサン[KF−2001、商品名、信越化学工業(株)製]3.12部を用いた以外は実施例1と同様にして、重量平均粒径510μmの真球状の高分子凝集剤(D6)688部(固形分含量93.0%)を得た。
【0109】
実施例7
実施例1において、アミノ変性オルガノポリシロキサン3.12部の代わりにビニル変性オルガノポリシロキサン[X−24−8201、商品名、信越化学工業(株)製]3.12部を用いた以外は実施例1と同様にして、重量平均粒径590μmの真球状の高分子凝集剤(D7)685部(固形分含量93.5%)を得た。
【0110】
実施例8
実施例1において、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロライド塩の70%水溶液839部の代わりにN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライド塩の64%水溶液904部、アクリルアミド50%水溶液108部の代わりに同44.0部を用い、メルカプト酢酸0.33部を用いないこと以外は実施例1と同様にして、重量平均粒径890μmの真球状の高分子凝集剤(D8)646部(固形分含量93.0%)を得た。
【0111】
実施例9
実施例1において、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロライド塩の70%水溶液839部の代わりにN−ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライド塩の64%水溶液344部 、アクリルアミドの50%水溶液108部の代わり
に同603部、メルカプト酢酸0.33部の代わりに同2.60部を用いた以外は実施例1と同様にして、重量平均粒径690μmの真球状の高分子凝集剤(D9)561部(固形分含量93.0%)を得た。
【0112】
実施例10
実施例1において、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロライド塩の70%水溶液839部、アクリルアミドの50%水溶液108部の代わりに、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロライド塩の70%水溶液152部 、ア
クリルアミドの50%水溶液469部、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライド塩の64%水溶液268部、アクリル酸59.4部を用い、メルカプト酢酸0.33部の代わりに同0.57部を用い、アゾビスアミジノプロパン塩酸塩の10%水溶液1.94部の代わりに同1.7部を用い、さらにリン酸1ナトリウム11.4部を用いた以外は実施例1と同様にして、重量平均粒径630μmの真球状の高分子凝集剤(D10)621部(固形分含量93.0%)を得た。
【0113】
実施例11
実施例1において、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロライド塩の70%水溶液839部、アクリルアミドの50%水溶液108部の代わりに、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロライド塩の70%水溶液407部 、ア
クリルアミドの50%水溶液293部、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライド塩の64%水溶液95.5部、アクリル酸148部を用い、メルカプト酢酸0.33部の代わりに同3.22部を用い、さらにリン酸1ナトリウム12.8部を用いた以外は実施例1と同様にして、重量平均粒径580μmの真球状の高分子凝集剤(D11)700部(固形分含量93.0%)を得た。
【0114】
比較例1
実施例1において、アミノ変性オルガノポリシロキサン3.12部を用いないこと以外は実施例1と同様にして、塊状化(真球状粒子の10数個が合着したもの)した高分子凝集剤(D12)694部(固形分含量92.8%)を得た。
【0115】
比較例2
アルケンと無水マレイン酸共重合体6.24部の代わりに同18.7部を用い、アミノ変性オルガノポリシロキサン3.12部を用いないこと以外は実施例1と同様にして、重量平均粒径320μmの真球状の高分子凝集剤(D13)696部(固形分含量93.0%)を得た。
【0116】
比較例3
N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロライド塩の78%水溶液308部、アクリルアミドの50%水溶液650部、イオン交換水925部を室温(20〜25℃)で調製した。さらに硫酸を用いてモノマー水溶液のpH(20℃)をpHメーターで監視しながら3.0に調整した。このモノマー水溶液を10℃に調整した後、断熱反応容器に仕込み、重合槽内を十分に窒素置換(気相酸素濃度10ppm以下)した。窒素置換後、アゾビスアミジノプロパン塩酸塩の5%水溶液11.3部、過酸化水素0.1%水溶液0.9部、アスコルビン酸0.1%水溶液0.8部を添加した。約10分後に液温上昇が始まり、反応系は次第に増粘しゲル状の重合物が得られた。発熱が認められなくなった時点でその温度で保持し、7時間後にゲルを細断(1mm角)し、75℃の熱風で5時間乾燥させた後、ミキサーにて粉砕し、粉末状の高分子凝集剤(D14)608部(固形分含量92.8%)を得た。
【0117】
実施例1〜11および比較例1〜3について、付着率、合着率、得られた高分子凝集剤の重量平均粒径、固有粘度、曳糸長および水不溶解分量の結果を表1に示す。また比較例3には、本発明の逆相懸濁重合との比較のため、水溶液重合で得られた高分子凝集剤の重量平均粒径、固有粘度、曳糸長および水不溶解分量の結果を示す。
【0118】
【表1】

【0119】
表中の記号はそれぞれ次の化合物を表す。
DAA:N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロライド塩
DAM:N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライド塩
AAM:アクリルアミド
AAC:アクリル酸
ADS:アミノ変性オルガノポリシロキサン
CDS:カルボキシ変性オルガノポリシロキサン
HDS:ヒドロキシ変性オルガノポリシロキサン
ODS:アンモニウム変性オルガノポリシロキサン
EDS:エポキシ変性オルガノポリシロキサン
TDS:チオール変性オルガノポリシロキサン
VDS:ビニル変性オルガノポリシロキサン

表1から、実施例1〜11では、比較例1〜3に比べて、付着率および合着率がともに小さく、かつ高分子凝集剤の重量平均粒子径が大きいことがわかる。また、実施例1〜11の高分子凝集剤は、比較例2の高分子凝集剤に比べて、分散剤の使用量が少ないにもかかわらず塊状化し難いことがわかる。さらに、実施例2は、固有粘度が同程度の比較例3と比べ曳糸長が短いことから、分子量分布がシャープであること、また水相濃度が高く生産性が高いことがわかる。
【0120】
実施例12、比較例4
(D1)および(D14)をそれぞれイオン交換水に溶解して固形分含量0.2%の水溶液とした。T処理場から採取した余剰汚泥[pH4.8、TS3.3%、有機分80.3%]200gを300mlのビーカーに採り、(D1)および(D14)のそれぞれの水溶液16、20および24mlをそれぞれの汚泥に添加し、(この時の固形分添加量はそれぞれ0.5、0.6、0.7%/TS)ハンドミキサーで充分に撹拌、混合処理し、前記の方法によりフロック粒径、ろ液量、ろ布剥離性およびケーキ含水率を測定した。結果を表2に示す。
表2から、実施例12では、比較例4に比べて、大粒径のフロックが形成され、高撹拌下(300rpm)でも一旦形成されたフロックが壊れにくい(フロック強度が大)こと、ろ布剥離性および脱水性(ケーキ含水率)において優れた効果を示すこと、および凝集性能の添加量への依存性が小さいことがわかる。
【0121】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の高分子凝集剤は、従来にない特異的な凝集性能を示すことから、産業廃水(以下、廃水と略記)の凝集処理用高分子凝集剤、およびとくに下水汚泥の凝集処理用高分子凝集剤として好適に用いられる。
本発明の高分子凝集剤の用途としては、上述の高分子凝集剤の他に掘削、泥水処理用凝集剤、製紙用薬剤(製紙工業用地合形成助剤、濾水歩留まり向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤、白水中の有価物回収剤など)、原油増産用添加剤(原油の二、三次回収用添加剤)、分散剤、スケール防止剤、凝結剤、脱色剤、増粘剤、帯電防止剤および繊維用処理剤
などが挙げられ、これらの中で本発明の高分子凝集剤粒子が容易に分子量を大きくできる点から、より好ましくは高分子凝集剤、製紙用薬剤である。
本発明の高分子凝集剤を製紙用薬剤として使用する場合についても、上記高分子凝集剤と同じ効果により、好適に使用できる。すなわち、製紙工程において本発明の水溶性重合体をパルプスラリーに添加することにより、より強いパルプ間の凝集力が実現できることから、抄紙工程時の脱水性(濾水性)、パルプの歩留まり性の向上やより強い紙力増強効果(破裂強さ、耐折強さ、引張強さ)を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ基、アンモニウム基、カルボキシル基、エポキシ基、ヒドロキ
シル基、チオール基およびビニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応性官能
基を有する変性オルガノポリシロキサン(B)の存在下、水溶性不飽和モノマー(a)を
逆相懸濁重合させてなる水溶性(共)重合体(A)からなり、(A)の粒子表面の少なく
とも一部が(B)で被覆されてなることを特徴とする高分子凝集剤。
【請求項2】
(B)の使用量が、(A)の重量に基づいて0.01〜10%である
請求項1記載の高分子凝集剤。
【請求項3】
(B)で被覆されてなる(A)の粒子が、150〜2,000μmの
重量平均粒径を有する請求項1または2記載の高分子凝集剤。
【請求項4】
水溶性(共)重合体(A)からなる高分子凝集剤の製造方法において、水溶性不飽和モノマー(a)およびラジカル重合開始剤(b)を含有する分散相と、疎水性分散媒(c)、アルケンとα,β−不飽和多価カルボン酸(無水物)との共重合体もしくはその誘導体からなる分散剤(d)、およびアミノ基、アンモニウム基、カルボキシル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、チオール基およびビニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する変性オルガノポリシロキサン(B)を含有する連続相とからなる分散体を逆相懸濁重合させて、(A)の粒子表面の少なくとも一部を(B)で被覆させることを特徴とする、高分子凝集剤の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか記載の高分子凝集剤を下水汚泥または廃水に
添加してフロックを形成させた後、固液分離を行うことを特徴とする下水汚泥または廃水
の処理方法。

【公開番号】特開2006−272320(P2006−272320A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−45986(P2006−45986)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】