説明

高分子凝集剤

【課題】 従来の水溶液重合、とくに断熱重合法では、重合温度幅が広くなることから得られる水溶性(共)重合体の分子量分布が広く、該(共)重合体からなる高分子凝集剤では、汚泥等の処理の際に粗大フロックが形成されにくい。そのためとくに重合反応後半から末期における低分子量物の生成を抑制する。
【解決手段】 水溶性1価不飽和モノマー(a)を含有する重合性モノマーを重合させ、重合率50〜99モル%の段階で有機凝結剤(b)を添加し、(b)の存在下で重合を完結させた水溶性(共)重合体(A)を含有してなる高分子凝集剤(X)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は下水、し尿(以下、下水等と略記)もしくは一般産業廃水(以下、廃水と略記)等の有機性もしくは無機性の汚泥または廃水の処理に用いる高分子凝集剤、並びに該高分子凝集剤を用いた汚泥または廃水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水等の汚泥処理、廃水処理、あるいは土木現場での泥水処理、浚渫埋め立て時の泥水の沈降分離促進用等の処理剤として、さらには製紙用脱水剤や紙力増強剤等として水溶性高分子からなる高分子凝集剤が広く使用されている。とくに近年、発生する汚泥量等の増加から、脱水処理速度向上のニーズが高まってきていることや、有機性汚泥の性状の難脱水化に伴う、脱水ケーキの焼却処分費用の増大、並びに脱水ケーキをそのまま埋め立て処分する際の埋め立て地の逼迫した状況等から、より強固で、粗大なフロックを形成させ、脱水ケーキの含水率を大幅に低減することができる高分子凝集剤が強く望まれている。
より強固で、粗大なフロックを形成させるために、従来、有機凝結剤を高分子凝集剤と併用する方法、あるいは有機凝結剤用のモノマーと高分子凝集剤用のモノマーとを共重合させた共重合体を用いる方法が知られている。しかしながら、前者では通常汚泥等の2段階処理が必要とされ脱水効率が悪い、また後者では共重合体の高分子量化の点で問題があり、いずれも性能的にまだ満足できるものではなかった。
そこで、これを解決するべく、有機凝結剤存在下で水溶性モノマーを重合させた水溶性高分子からなる高分子凝集剤(例えば特許文献1参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−117956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粗大フロックを形成させるには水溶性高分子の分子量分布のシャープ化が有効とされるが、従来の水溶液重合、とくに断熱重合法では、重合温度幅が広くなることから分子量分布が広い。そのためとくに重合反応後半から末期における低分子量物の生成を抑制するという課題があった。
前記特許文献1における水溶液重合、とくに断熱重合法においては、上記の理由により低分子量物が多く生成し、得られる高分子凝集剤では汚泥または廃水の処理時に粗大フロックが形成されにくいという問題は解決されず、前記ニーズを満足させるには至っていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らはこれらの問題点を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、水溶性1価不飽和モノマー(a)を含有する重合性モノマーを重合させ、重合率50〜99モル%の段階で有機凝結剤(b)を添加し、(b)の存在下で重合を完結させた水溶性(共)重合体(A)を含有してなる高分子凝集剤(X);並びに、該高分子凝集剤を、汚泥または廃水に添加してフロックを形成させた後、固液分離を行うことを特徴とする汚泥または廃水の処理方法である。なお、ここにおいて重合率とは最初に投入した重合性モノマー(a)のモル数に対し、重合した(a)のモル数の百分率を表す。
【発明の効果】
【0006】
本発明の高分子凝集剤は、下記の効果を奏する。
(1)高分子凝集剤のみの一段処理で強固かつ大粒径の粗大フロックが形成できる。
(2)一旦形成されたフロックは強度大で破壊、再分散されにくいことから、凝集または脱水処理時の再汚染がなく、凝集または脱水処理の安定性と処理速度の著しい向上が図れる。
(3)形成されたフロックが緻密で、脱水処理後のケーキ含水率が低いことから、発生する廃棄物量および焼却処理コストを大幅に削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
[水溶性(共)重合体(A)]
本発明における水溶性(共)重合体(A)は、水溶性1価不飽和モノマー(a)を含有する重合性モノマーを重合させ、重合率50〜99モル%の段階で有機凝結剤(b)を添加し、(b)の存在下で重合を完結させた水溶性(共)重合体である。ここにおいて水溶性1価不飽和モノマーもしくは水溶性(共)重合体とは、水に対する溶解度(20℃)が1g/水100g以上である1価不飽和モノマーもしくは(共)重合体を意味する。
【0008】
[水溶性1価不飽和モノマー(a)]
水溶性1価不飽和モノマー(a)には、下記のノニオン性モノマー(a1)、カチオン性モノマー(a2)、アニオン性モノマー(a3)およびこれらのうちの2種またはそれ以上の混合物が含まれる。
【0009】
(a1)ノニオン性モノマー
下記のもの、およびこれらの混合物が挙げられる。
(a11)(メタ)アクリレート
炭素数(以下、Cと略記)4以上かつ数平均分子量[測定はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。以下Mnと略記。]5,000以下、例えば水酸基含有(メタ)アクリレート[例えばヒドロキシエチル−、ジエチレングリコールモノ−、ポリエチレングリコール(重合度3〜50)モノ−およびポリグリセロール(重合度1〜10)モノ(メタ)アクリレート]およびアクリル酸アルキル(アルキル基はC1〜2)エステル(C4〜5、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル);
(a12)(メタ)アクリルアミドおよびその誘導体
C3〜30、例えば(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(C1〜3)(メタ)アクリルアミド[N−メチルおよび−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等]、N−アルキロール(メタ)アクリルアミド[N−メチロール(メタ)アクリルアミド等];
(a13) 上記以外の窒素原子含有エチレン性不飽和化合物
C3〜30、例えばアクリロニトリル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルスクシンイミド、N−ビニルカルバゾールおよび2−シアノエチル(メタ)アクリレート。
【0010】
(a2)カチオン性モノマー
下記のもの、これらの塩[例えば無機酸(塩酸、硫酸、リン酸および硝酸等)塩、メチルクロライド塩、ジメチル硫酸塩およびベンジルクロライド塩等]、およびこれらの混合物が挙げられる。
(a21) 窒素原子含有(メタ)アクリレート
C5〜30、例えばアミノアルキル(C2〜3)(メタ)アクリレート、N,N−ジアルキル(C1〜2)アミノアルキル(C2〜3)(メタ)アクリレート[N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等]、複素環含有(メタ)アクリレート[N−モルホリノエチル(メタ)アクリレート等];
(a22) 窒素原子含有(メタ)アクリルアミド誘導体
C5〜30、例えばN,N−ジアルキル(C1〜2)アミノアルキル(C2〜3)(メタ)アクリルアミド[N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等];
(a23) アミノ基を有するエチレン性不飽和化合物
C5〜30、例えばビニルアミン、ビニルアニリン、(メタ)アリルアミン、p−アミノスチレン;
(a24) アミンイミド基を有する化合物
C5〜30、例えば1,1,1−トリメチルアミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−エチルアミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2’−フェニル−2’−ヒドロキシエチル)アミン(メタ)アクリルイミド;
(a25) 上記以外の窒素原子含有ビニルモノマー
C5〜30、例えば2−ビニルピリジン、3−ビニルピペリジン、ビニルピラジン、ビニルモルホリン。
【0011】
(a3)アニオン性モノマー
下記の酸、これらの塩[アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等、以下同じ。)塩、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム等、以下同じ。)塩、アンモニウム塩およびアミン(C1〜20)塩等]、およびこれらの混合物が挙げられる。
(a31) 不飽和カルボン酸
C3〜30、例えば(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、ビニル安息香酸、アリル酢酸;
(a32) 不飽和スルホン酸
C2〜20の脂肪族不飽和スルホン酸(ビニルスルホン酸等)、C6〜20の芳香族不飽和スルホン酸(スチレンスルホン酸等)、スルホン酸基含有(メタ)アクリレート[スルホアルキル(C2〜20)(メタ)アクリレート[2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブタンスルホン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシブタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、p−(メタ)アクリロイルオキシメチルベンゼンスルホン酸等]、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド[2−(メタ)アクリロイルアミノエタンスルホン酸、2−および3−(メタ)アクリロイルアミノプロパンスルホン酸、2−および4−(メタ)アクリロイルアミノブタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、p−(メタ)アクリロイルアミノメチルベンゼンスルホン酸等]、アルキル(C1〜20)(メタ)アリルスルホコハク酸エステル[メチル(メタ)アリルスルホコハク酸エステル等]等;
(a33) (メタ)アクリロイルポリオキシアルキレン(C1〜6)硫酸エステル
(メタ)アクリロイルポリオキシエチレン(重合度2〜50)硫酸エステル等。
【0012】
(a)のうち高分子量化の観点から好ましいのは、(a1)、(a21)、(a22)、(a31)、(a32)、さらに好ましいのは(a12)、(a13)、(a21)、(a22)、(a31)、および(a32)のうちのスルホン酸基含有(メタ)アクリレート、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド、特に好ましいのは(a12)、(a13)、(a21)、(a31)、および(a32)のうちのスルホン酸基含有(メタ)アクリレート、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド、最も好ましいのは(a12)のうちの(メタ)アクリルアミド、(a13)のうちのアクリロニトリル、N−ビニルホルムアミド、(a21)のうちのN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびこれらの塩(上記のもの)、(a31)のうちの(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸およびこれらのアルカリ金属塩、(a32)のうちの2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、2−および3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸およびこれらのアルカリ金属塩である。また、これらの(a)は、任意に混合して共重合させることができる。
【0013】
(a)の使用量(モル%)は、(A)を構成するモノマーの全モル数に基づいて、凝集性能(高フロック強度、フロックの粗大化、脱水ケーキの低含水率化等。以下同じ。)の観点から好ましくは50〜100%、さらに好ましくは80〜100%である。
【0014】
[その他のモノマー]
(A)を構成するモノマーとしては、本発明の効果を阻害しない範囲で上記(a)の他に必要によりその他のモノマーとして水不溶性不飽和モノマー(x)および架橋性モノマー(y)を併用してもよい。ここにおいて水不溶性不飽和モノマーとは、水に対する溶解度(20℃)が1g/水100g未満である不飽和モノマーを意味し、架橋性モノマーとは、2個またはそれ以上の反応性不飽和基を有するモノマーを意味する。
水不溶性不飽和モノマー(x)としては、以下の(x1)〜(x5)、およびこれらの2種またはそれ以上の混合物が挙げられる。
(x1) C6〜23の(メタ)アクリレート
脂肪族または脂環式アルコール(C3〜20)の(メタ)アクリレート[プロピル−、ブチル−、ラウリル−、オクタデシル−およびシクロヘキシル(メタ)アクリレート等]およびエポキシ基(C4〜20)含有(メタ)アクリレート[グリシジル(メタ)アクリレート等];
【0015】
(x2) [モノアルコキシ(C1〜20)−、モノシクロアルコキシ(C3〜12)−もしくはモノフェノキシ]ポリプロピレングリコール(以下、PPGと略記)(重合度2〜50)の不飽和カルボン酸モノエステル
モノオール(C1〜20)もしくは1価フェノール(C6〜20)のプロピレンオキシド(以下POと略記)付加物の(メタ)アクリル酸エステル[ω−メトキシPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−エトキシPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−プロポキシPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−ブトキシPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−シクロヘキシルPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−フェノキシPPGモノ(メタ)アクリレート等]およびジオール(C2〜20)もしくは2価フェノール(C6〜20)のPO付加物のモノ(メタ)アクリル酸エステル[ω−ヒドロキシエチル(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート等]等;
【0016】
(x3) C2〜30の不飽和炭化水素
エチレン、ノネン、スチレン、1−メチルスチレン等;
(x4) 不飽和アルコール[C2〜4、例えばビニルアルコール、(メタ)アリルアルコール]のカルボン酸(C2〜30)エステル(酢酸ビニル等);
(x5) ハロゲン含有モノマー(C2〜30、例えば塩化ビニル)。
【0017】
また、架橋性モノマー(y)としては、以下の(y1)〜(y5)、これらの塩[例えば、塩基性モノマーについては、無機酸(塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、硝酸等)塩、メチルクロライド塩、ジメチル硫酸塩およびベンジルクロライド塩等、酸性モノマーについては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン(C1〜20、例えばメチルアミン、エチルアミン、シクロヘキシルアミン)塩]、およびこれらの2種またはそれ以上の混合物が挙げられる。
(y1)多価(2価〜4価またはそれ以上)(メタ)アクリルアミド
C6〜30、例えばビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド;
(y2) 多価(2価〜4価またはそれ以上)(メタ)アクリレート
C8〜30、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール[多価(2〜4)](メタ)アクリレート;
【0018】
(y3) ビニル基(2個〜20個またはそれ以上)含有モノマー
C4以上かつMn6,000以下、例えばジビニルアミン、多価(2〜5またはそれ以上)アミン[C2以上かつMn3,000以下、例えばエチレンジアミン、ポリエチレンイミン(C4以上かつMn3,000以下)]のポリ(2〜20)ビニルアミン、ジビニルエーテル、多価アルコール〔C2以上かつMn3,000以下、例えばアルキレン(C2〜6またはそれ以上)グリコール[エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール(以下、それぞれEG、PG、1,6−HDと略記)等]、ポリオキシアルキレン[Mn2,000〜3,000、例えばポリエチレングリコール(以下、PEGと略記)(分子量106以上かつMn3,000以下)、PPG(分子量134以上かつMn3,000以下)、ポリオキシエチレン(分子量106以上かつMn3,000以下)]/ポリオキシプロピレン(分子量134以上かつMn3,000以下)ブロックコポリマー]、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、(ポリ)(2〜50)グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール(以下、それぞれTME、TMP、GR、PE、SOと略記)、デンプン〕の多価(2〜20)ビニルエーテル等;
【0019】
(y4) アリル基(2個〜20個またはそれ以上)含有モノマー
C6以上かつMn3,000以下、例えばジ(メタ)アリルアミン、N−アルキル(C1〜20)ジ(メタ)アリルアミン、多価アミン(上記のもの)の多価(2〜20)(メタ)アリルアミン、ジ(メタ)アリルエーテル、多価アルコール(上記のもの)のポリ(2〜20)(メタ)アリルエーテル、ポリ(2〜20)(メタ)アリロキシアルカン(C1〜20)(テトラアリロキシエタン等);
(y5) エポキシ基含有モノマー
C8以上かつMn6,000以下、例えばEGジグリシジルエーテル、PEGジグリシジルエーテル、GRトリグリシジルエーテル。
【0020】
(A)を構成する重合性モノマーの使用量(モル%)は、(a)は、(A)を構成する重合性モノマーの全モル数に基づいて、凝集性能(高フロック強度、フロックの粗大化、脱水ケーキの低含水率化等。以下同じ。)の観点から好ましくは50〜100%、さらに好ましくは80〜100%;(x)は、通常40%以下、凝集性能および(A)の水への溶解性の観点から好ましくは0.1〜20%、さらに好ましくは0.5〜10%;また、(y)は、(y)の重合性または反応性にもよるが、通常5%以下、凝集性能および(A)の水への溶解性の観点から好ましくは0.001〜1%、さらに好ましくは0.01〜0.5%である。
【0021】
[有機凝結剤(b)]
本発明における有機凝結剤(b)には、下記のポリアルキレンイミン(b1)、アルキルアミンとエピクロルヒドリンの重縮合物(b2)、アリル基含有モノマー(共)重合物(b3)、およびこれらの2種またはそれ以上の混合物が含まれる。
【0022】
(b1)ポリアルキレンイミン
ポリアルキレンイミン(ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン等)、その塩[無機酸(塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等)塩、メチルクロライド塩、ジメチル硫酸塩、ベンジルクロライド塩等]、それらの変性物、およびそれらの混合物。該変性物としては、ポリアルキレンイミン変性物[アンモニア、脂肪族第1級、2級および3級アミンから選ばれる少なくとも1種のアミンとエピハロヒドリンの重縮合物であるポリカチオン物質とポリアルキレンイミンを反応させてなるもの(特開2003−55454参照)]が挙げられる。
(b1)のうち、汚泥または廃水の処理における凝結性能(汚泥表面のマイナス電荷を効果的に中和し強固なフロックを形成させる、すなわち単位重量当たりのカチオン基濃度が高い、以下同じ。)との観点、および市販品の入手が容易という工業上の観点から好ましいのはポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンの塩酸塩である。
【0023】
(b2)アルキルアミンとエピクロルヒドリンの重縮合物
下記の(1)〜(3)、またはそれらの混合物とエピクロルヒドリンの重縮合物。
(1)アルキルアミン
3級および1級アミノ基を各1個有するもの(C4〜10、例えばジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン)、 2級および1級アミノ基を各1個有するもの(C3〜10、例えば3−メチルアミノプロピルアミン)、 3級アミノ基を2個有するもの(C6〜15、例えばN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、 N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、 N,N,N’,N’−テトラエチルプロピレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、テトラメチル1,3−ブタンジアミン、テトラメチルフェニレンジアミン)等;これらのうち凝結性能の観点から好ましいのは3級および1級アミノ基を各1個有するもの、さらに好ましいのはジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミンである。
【0024】
(2)アルキルアミン塩
前記(1)の塩、例えば無機酸(塩酸、硫酸、リン酸および硝酸等)塩、メチルクロライド塩、ジメチル硫酸塩、ベンジルクロライド塩;
(3)変性物
前記(1)、(2)の変性物、例えば(1)または(2)に多価イソシアネートを反応させた変性物等。
【0025】
(b3)アリル基含有モノマー(共)重合物
下記のアリル基含有モノマー(1)、(2)の(共)重合物、それらの塩[無機酸(塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等)塩、メチルクロライド塩、ジメチル硫酸塩、ベンジルクロライド塩等]、それらの変性物、およびそれらの混合物。
(1)モノアリルアミン
モノアリルアミン、N−メチルアリルアミン、N−エチルアリルアミン、N,N−ジメチルアリルアミン、N,N−ジエチルアリルアミン、N−シクロヘキシルアリルアミン、N,N−(メチル)シクロヘキシルアリルアミン、N,N−(エチル)シクロヘキシルアリルアミン、N,N−ジシクロヘキシルアリルアミン等;
(2)ジアリルアミン
ジアリルアミン、N−メチル、N−エチルおよびN−ベンジルジアリルアミン等。
上記(b3)のうち、汚泥または廃水の処理における凝結性能の観点、および市販品があり入手が容易という工業上の観点から好ましいのはポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドである。
【0026】
(b)のMnは、水溶性(共)重合体(A)の高分子量化および前記重合性モノマーとの反応性の観点から好ましくは1,000〜500,000、さらに好ましくは5,000〜100,000である。
【0027】
(A)の製造に用いられる重合法は、汎用性の高い生産設備が使用できる観点から水溶液重合が好ましい。水溶液重合には、モノマー水溶液を外部からの熱の出入りがない容器に入れ、断熱重合させる方法(例えば特公昭59−40843号公報参照)、およびモノマーの水溶液を外部から温調可能な容器中で定温重合させる方法(例えば特開平3−189000号公報参照)を用いることができる。
【0028】
ラジカル重合におけるモノマー水溶液中のモノマー濃度は、水溶液重合ではモノマー水溶液の全重量に基づいて、下限は通常20%、高分子量化の観点から好ましくは25%、さらに好ましくは30%、特に好ましくは40%、最も好ましくは50%、上限は通常80%、重合温度制御の観点から好ましくは75%、さらに好ましくは70%、特に好ましくは65%、最も好ましくは60%である。
【0029】
重合温度は、水溶液重合では、下限は通常−10℃、重合速度の観点から好ましくは0℃、さらに好ましくは5℃、とくに好ましくは10℃、最も好ましくは15℃、上限は通常50℃、ポリマーの熱劣化防止の観点から好ましくは40℃、さらに好ましくは30℃、とくに好ましくは25℃、最も好ましくは20℃である。また、重合中は所定温度を一定(例えば所定重合温度±5℃)に保つように、適宜加熱、冷却して調節してもよいし、ガラス製の断熱容器等内で断熱重合してもよい。断熱重合の際、重合熱により水の沸点(100℃)以上にならないように開始温度を調節することが好ましい。
【0030】
重合時間は重合による発熱がなくなった時点で終了が確認できるが、通常発熱により重合開始を確認した時点から1〜24時間、工業的観点および重合を完結し、残存モノマーを減少させるとの観点から、好ましくは2〜12時間である。
上記のモノマー濃度、重合温度および重合時間は、モノマー組成、重合法および開始剤種類等によって適宜調整することができる。
【0031】
重合時の圧力(単位はkPa、以下絶対圧力を示す。)は、特に限定されないが、通常常圧下で行う。
【0032】
重合時のモノマー水溶液のpHは、特に限定されないが、重合速度、得られる水溶性(共)重合体の溶解性の観点から、好ましくは1〜8、さらに好ましくは2〜7、とくに好ましくは3〜6.5である。なお、上記pHは、重合で用いるモノマー水溶液の原液についての室温(20℃)での測定値である。
【0033】
また、(A)は予め上記の方法による製造の後、ポリマー変性反応させたものでもよい。ポリマー変性反応としては、例えばアクリルアミド等の加水分解性官能基を分子内に有する水溶性不飽和モノマーを使用した場合に、重合時または重合後に苛性アルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)または炭酸アルカリ(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)を添加して、モノマーのアミド基を部分的に加水分解(加水分解率は全モノマーの合計モル数に基づいて約1〜60モル%)してカルボキシル基を導入する方法(例えば、特開昭56−16505号公報)、ホルムアルデヒド、ジアルキル(C1〜12)アミンおよびハロゲン化(例えば塩化、臭化およびヨウ化)アルキル(C1〜12)(例えばメチルクロライドおよびエチルクロライド)を加え、マンニッヒ反応によって部分的にカチオン性基を導入する方法、およびアクリロニトリル等のニトリル基と、ビニルホルムアミド等の加水分解により得られるアミノ基との閉環反応により分子内にアミジン環を形成させる方法(例えば特開平5−192513号公報)が挙げられる。
【0034】
また、(A)として2種以上の水溶性(共)重合体を用いる場合、予めそれぞれを製造した後に混合してもよいし、一方を予め製造しておき、他方の製造時のモノマーに加えて製造してもよい。
【0035】
本発明における(A)は、前記水溶性1価不飽和モノマー(a)を含有する重合性モノマーを重合させ、重合率50〜99モル%の段階で有機凝結剤(b)を添加し、(b)の存在下で重合を完結させた水溶性(共)重合体である。
【0036】
上記重合率(モル%)は、1H-NMRの積分値に基づいて算出されるもので、(a)を構成する全モノマーのモル数に対する重合したモノマーのモル数の百分率で規定される。例えば重合率50%は、(a)を構成する全モノマーモル数の半分が重合したことを表す。
1H-NMRの測定は、重合系内より0.01mgをサンプリングし、これを重水素化水1mLに溶解後、27℃で行行われる。
例えば、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロライド4級アンモニウム塩の場合、モノマー由来のシグナルはケミカルシフト(以下δと記載)5.0〜6.5に現われる。一方ポリマーとモノマー両方に由来するシグナル(4級アンモニウムのメチル基)はδ=3.2に現われる(モノマー由来のδは「有機化合物のスペクトルによる同定法」、東京化学同人発行参照)。δ5.0〜6.5の積分値はモノマーの積分値であり、δ3.2の積分値は(モノマーの積分値)+(ポリマーの積分値)であることから、重合率(モル%)=100×(ポリマーの積分値)/[3×(モノマーの積分値)+(ポリマーの積分値)]で算出できる。
【0037】
(b)の添加段階が、重合率50モル%未満ではモノマーの(b)へのグラフト化が早期に進行してしまい、重合反応後半から末期における低分子量物の生成を抑制できないことから、該(A)を含有する高分子凝集剤の凝集機能が悪化する。また、重合率99%を超えたところで(b)を添加すると、高粘度化した重合系中ではモノマーと有機凝結剤の反応が容易ではなく、低分子量物が多く残存することになりやはり高分子凝集剤の凝集機能が悪化する。
【0038】
(b)の添加方法としては、例えば(b)または(b)の水溶液を、前記重合率の段階で重合系内に加えて重合させる方法が挙げられる。
【0039】
前記製造法で得られる(A)には、水溶性1価不飽和モノマー(a)を含有する重合性モノマーの(共)重合体に加え、該重合性モノマーの少なくとも一部が(b)にグラフト化されたグラフト重合体が含まれる。
【0040】
(A)の分子量は、1N−NaNO3 水溶液中30℃で測定した固有粘度[η](dl/g)で表した場合、下限は通常1、凝集性能(とくにフロックの粗大化)の観点から好ましくは1.5、さらに好ましくは2、とくに好ましくは4、最も好ましくは6、上限は通常40、凝集性能(とくにフロック強度の向上)の観点から好ましくは30、さらに好ましくは20、とくに好ましくは15、最も好ましくは12である。後述する実施例における固有粘度は上記条件で測定した値である。
【0041】
[高分子凝集剤(X)]
本発明の高分子凝集剤(X)は、前記水溶性(共)重合体(A)を含有してなる。
該(X)は、必要に応じ本発明の効果を阻害しない範囲で、前記(a)を構成単位とする水溶性(共)重合体(B)を含有する、(X)以外の高分子凝集剤(Z)を併用して、(X)と(Z)の混合物とした高分子凝集剤(Q)として使用してもよい。併用する(Z)の割合は、(Q)の重量に基づいて通常50%以下、好ましくは30%以下である。
(B)の製造方法は特に限定はなく、例えば水溶液重合、逆相懸濁重合、光重合、沈澱重合および逆相乳化重合等のラジカル重合法を用いることができる。
これらのうち工業的観点から好ましいのは逆相乳化重合、水溶液重合、逆相懸濁重合、さらに好ましいのは水溶液重合、逆相懸濁重合である。
【0042】
また、本発明の高分子凝集剤(X)は必要に応じ、本発明の効果を阻害しない範囲で、消泡剤、キレート化剤、pH調整剤、界面活性剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤および防腐剤からなる群から選ばれる添加剤を含有させることができる。
【0043】
上記添加剤の使用量は、(A)の重量、または(A)と必要により加える(B)との合計重量に基づいて、消泡剤は通常5%以下、好ましくは1〜3%、キレート化剤は通常30%以下、好ましくは2〜10%、pH調整剤は通常10%以下、好ましくは1〜5%、界面活性剤およびブロッキング防止剤はそれぞれ通常5%以下、好ましくは1〜3%、酸化防止剤、紫外線吸収剤および防腐剤はそれぞれ通常5%以下、好ましくは0.1〜2%である。
【0044】
本発明の高分子凝集剤は、従来にない特異的な凝集効果やろ液の清澄性向上効果を示すことから、下水等の汚泥または工場廃水の処理で生じた有機性汚泥または無機性汚泥の脱水処理用高分子凝集剤として用いることができ、とくに有機性汚泥の脱水処理用として好適に用いられる。
有機性汚泥の場合は、懸濁粒子の大きさが比較的大きく、また水中において懸濁粒子表面がマイナスに帯電しているとの観点から、本発明の高分子凝集剤としては、カチオン性水溶性(共)重合体および/または両性水溶性(共)重合体で構成されることが好ましく、本発明の特徴である上記効果をより一層発揮できるとの観点から、さらに好ましいのは両性水溶性(共)重合体で構成されるものである。
ここでカチオン性水溶性(共)重合体とは、分子内にカチオン性基を有する水溶性(共)重合体、すなわち水に溶解した際にカチオン性を示す水溶性(共)重合体であり、また両性水溶性(共)重合体とは、分子内にカチオン性基およびアニオン性基を有する水溶性(共)重合体または分子内にカチオン性基を有する水溶性(共)重合体と分子内にアニオン性基を有する水溶性(共)重合体の混合物、すなわち水に溶解した際にカチオン性およびアニオン性を示す水溶性(共)重合体である。これらの水溶性(共)重合体の水中におけるカチオン性またはアニオン性は、コロイド当量値(meq/g)を目安として評価することができる。即ち、カチオン性水溶性(共)重合体中のカチオン性基当量値はカチオンコロイド当量値として求めることができ、両性水溶性(共)重合体中のカチオン性基当量値およびアニオン性基当量値は、それぞれカチオンコロイド当量値およびアニオンコロイド当量値として求めることができる。
【0045】
本発明における水溶性(共)重合体がカチオン性水溶性(共)重合体である場合のカチオンコロイド当量値(meq/g)は、凝集性能の観点から好ましい下限は0.1、さらに好ましくは0.5、とくに好ましくは1、最も好ましくは1.5、また、同様の観点から好ましい上限は20、さらに好ましくは12、とくに好ましくは8、最も好ましくは6である。
また、本発明における水溶性(共)重合体が両性水溶性(共)重合体である場合のカチオンコロイド当量値(meq/g)は、上記と同様の観点から、好ましい下限は1、さらに好ましくは1.5、とくに好ましくは2、また好ましい上限は6、さらに好ましくは5、とくに好ましくは4.5である。
また、アニオンコロイド当量値(meq/g)は、高分子凝集剤の水への溶解性の観点から好ましい下限は−5、さらに好ましくは−4、とくに好ましくは−3、また凝集性の観点から好ましい上限は−0.1、さらに好ましくは−0.3、とくに好ましくは−0.5である。
【0046】
コロイド当量値は以下に示すコロイド滴定法により求めることができる。なお、該測定は室温下(約20℃)で行う。
(1)測定試料(50ppm水溶液)の調製
試料0.2g(固形分含量換算したもの)を精秤し、200mlのガラス製三角フラスコにとり、全体の重量(試料とイオン交換水の合計重量)が100gとなるようにイオン交換水を加えた後、マグネチックスターラー(1,000rpm)で、3時間撹拌して完全に溶解し、0.2重量%の高分子凝集剤溶液を調製する。さらに500mlのガラス製ビーカーに上記調製した溶液10.00gを小数点第2位まで計ることができる天秤を用いて正確に秤りとり、全体の重量(溶液10mlとイオン交換水の合計重量)が400.00gとなるようにイオン交換水を加え、再度マグネチックスターラー(1,000〜1,200rpm)で、30分間撹拌して、均一な測定試料とする。
なお、高分子凝集剤の固形分含量は、試料約1.0gをシャーレに秤量(W1)して、循風乾燥機中105±5℃で90分間乾燥させた後の残存重量を(W2)として、次式から算出した値である。
固形分含量(重量%)=(W2)×100/(W1)
【0047】
(2)カチオンコロイド当量値の測定
測定試料100.0gを200mlのガラス製コニカルビーカーにとり、撹拌しながら徐々に0.5重量%硫酸水溶液を加え、pH3に調整する。次にトルイジンブルー指示薬(TB指示薬)を2〜3滴加え、N/400ポリビニル硫酸カリウム(N/400PVSK)試薬で滴定する。滴定速度は2ml/分とし、測定試料が青から赤紫色に変色し、30秒間保持する時点を終点とする。
(3)アニオンコロイド当量値の測定
測定試料100.0gを200mlのガラス製コニカルビーカーにとり、マグネチックスターラー(500rpm)で撹拌しながら、N/10水酸化ナトリウム水溶液0.5mlを加え、さらにN/200メチルグリコールキトサン水溶液5mlを5mlのホールピペットを用いて加えた後、5分間撹拌する(その時のpH約10.5)。TB指示薬を2〜3滴加え、(2)と同様にして滴定する。
(4)空試験
測定試料の代わりにイオン交換水100.0gを用いる以外(2)および(3)と同様の操作を行う。
(5)計算方法
カチオンまたはアニオンコロイド当量値(meq/g)=
1/2×(試料の滴定量−空試験の滴定量)×(N/400PVSKの力価)
【0048】
本発明の高分子凝集剤の形態は、粉末状(例えば破砕状、真球状および葡萄房状)、フィルム状、水溶液状、w/oエマルション状および懸濁液状等公知の任意形態でよい。
【0049】
本発明の、汚泥または廃水の処理方法は、本発明の高分子凝集剤(X)、または必要により(X)と前記(Z)を併用した高分子凝集剤(Q)を汚泥または廃水に添加、混合してフロックを形成させ、固液分離を行う方法であれば特に限定されることはない。
上記処理方法のうち、本発明の効果(凝集性能、すなわち高フロック強度、フロックの粗大化、脱水ケーキの低含水率化)発揮の観点から好ましいのは、高分子凝集剤を汚泥または廃水に添加、混合してフロックを形成させ、固液分離を行う方法である。 なお、高分子凝集剤を汚泥または廃水に添加するに際してはこれらは予め水溶液の形態としておくことが均一混合の観点から好ましい。
【0050】
また、(X)または(Q)を汚泥または廃水に適用する際には、本発明の効果を阻害しない範囲で公知の無機凝結剤や有機凝結剤を1種または2種以上併用してもよい。これらを併用する場合は、(i)(X)または(Q)に予め添加しておく方法、(ii)(X)または(Q)の添加時に同時に添加する方法、(iii)無機凝結剤および/または有機凝結剤を、(X)または(Q)とは別にそれらの添加の前および/または後に順序不同で汚泥または廃水に添加する方法のいずれを採用してもよい。これらのうち凝集性能の観点から好ましいのは、(iii)のうち無機凝結剤および/または有機凝結剤を初めに汚泥または廃水に添加する方法である。
【0051】
無機凝結剤としては、例えば硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸鉄および消石灰が挙げられる。
有機凝結剤としては、例えばエピハロヒドリンとアミンとの重縮合体(もしくはその塩酸塩、以下塩酸塩と略記)、エピハロヒドリンとアルキレンジアミンとの重縮合体(塩酸塩)、ポリエチレンイミン(塩酸塩)、アルキレンジハライド−アルキレンポリアミン重縮合体(塩酸塩)、アニリン−ホルムアルデヒド重縮合体(塩酸塩)、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリビニルピリジン(塩酸塩)、(ジ)メチルジ(メタ)アリルアンモニウムクロライドおよびポリビニルイミダゾリン(塩酸塩)が挙げられる。
これらの無機凝結剤および有機凝結剤はそれぞれの1種または2種以上用いても、あるいは両者を併用してもいずれでもよい。
【0052】
該凝結剤を予め(X)または(Q)に添加しておく場合の使用量は、(X)または(Q)の重量に基づいて、無機凝結剤は通常100%以下、凝集性能の観点から好ましくは5〜50%、さらに好ましくは10〜30%、有機凝結剤は通常20%以下、同様の観点から好ましくは1〜10%、さらに好ましくは2〜5%である。
【0053】
無機凝結剤および/または有機凝結剤を(X)または(Q)とは別に汚泥または廃水に添加する場合[上記(iii)の方法]の無機凝結剤および/または有機凝結剤の使用量は、汚泥または廃水の種類、懸濁している粒子の大きさ、および汚泥または廃水中の固形分含量(以下TSと略記)等によって異なるが、汚泥または廃水中のTSに基づいて、無機凝結剤では、フロック強度の観点から好ましい下限は0.5%、さらに好ましくは1%、とくに好ましくは2%、脱水ケーキ焼却後のスラッジ低減の観点から好ましい上限は10%、さらに好ましくは8%、とくに好ましくは5%であり、有機凝結剤では、フロック強度の観点から好ましい下限は0.01%、さらに好ましくは0.05%、とくに好ましくは0.1%、フロック粒径低下の観点から好ましい上限は5%以下、さらに好ましくは3%以下、とくに好ましくは1%である。
【0054】
また、上記方法における高分子凝集剤(X)または(Q)の汚泥または廃水への添加方法としては、特に限定はなく、(X)または(Q)をそのまま汚泥または廃水に添加してもよいが、均一混合の観点から好ましいのは(X)または(Q)を水溶液にした後に汚泥または廃水に添加する方法である。
(X)または(Q)を水溶液として用いる場合は、その濃度(重量%)は好ましくは0.05〜3%、さらに好ましくは0.1〜1%である。溶解方法、溶解後の希釈方法は特に限定はないが、例えば予め秤りとった水をジャーテスター等の撹拌装置を用いて撹拌しながら、所定量の(X)または(Q)を加え、数時間(約1〜4時間程度)撹拌して溶解させる方法等が採用できる。
【0055】
上記処理方法において汚泥または廃水に添加する際の(X)または(Q)の使用量は、汚泥または廃水の種類、懸濁している粒子の含有量および該高分子凝集剤の分子量等によって異なりとくに限定はされないが、汚泥または廃水中のTSに基づいて、フロック強度の観点から、好ましい下限は0.01%、さらに好ましくは0.1%、とくに好ましくは1%、最も好ましくは1.5%、脱水ケーキの含水率低減の観点から、好ましい上限は10%、さらに好ましくは8%、とくに好ましくは5%、最も好ましくは3%である。
【0056】
また上記の処理方法により形成されたフロック状の汚泥の脱水方法(固液分離法)としては、例えば重力沈降、膜ろ過、カラムろ過、加圧浮上、および濃縮装置(例えばシックナー)および脱水装置(例えば遠心脱水機、ベルトプレス脱水機、フィルタープレス脱水機およびキャピラリー脱水機)を用いる方法が挙げられる。 これらのうち本発明の高分子凝集剤の特異的な凝集性能である高フロック強度の観点から好ましいのは、脱水装置、とくに遠心脱水機、ベルトプレス脱水機およびフィルタープレス脱水機を用いる方法である。
【0057】
本発明の高分子凝集剤の、汚泥または廃水処理用途以外のその他の用途としては、例えば掘削・泥水処理用凝集剤、製紙用薬剤(製紙工業用地合形成助剤、濾水歩留向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤等)、原油増産用添加剤(原油の二、三次回収用添加剤)、分散剤、スケール防止剤、凝結剤、脱色剤、増粘剤、帯電防止剤および繊維用処理剤が挙げられる。
【実施例】
【0058】
以下実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例中のモル%以外の%は重量%を示し、共重合比はモル比を表す。
以下において、固有粘度[η](dl/g)は1N−NaNO3水溶液中、30℃で測定した値である。
高分子凝集剤のコロイド当量値および固形分含量は、前記の方法によって測定した。
汚泥または廃水中のTS(固形分含量)、有機分(強熱減量)は、下水道試験方法(日本下水道協会、1984年度版)記載の分析方法に準じて測定した。
また、本実施例中のフロック粒径、ろ液量、ろ布剥離性、ケーキ含水率、は以下の方法に従って評価した。
【0059】
(1)フロック粒径(単位:mm)
ジャーテスター[宮本理研工業(株)製、形式JMD−6HS−A]に板状の塩ビ製撹拌羽根(直径5cm、高さ2cm、厚さ0.2cm)2枚を十字になるように上下に連続して撹拌棒に取り付け、汚泥または廃水200部を500mlのビーカーに取り、ジャーテスターにセットした。ジャーテスターの回転数を120rpmにし、ゆっくり汚泥または廃水を撹拌しながら、所定量の0.2%の高分子凝集剤水溶液を一気に添加し、30秒間撹拌した後、撹拌を止め凝集物の大きさを目視にて観察した(回転数120rpmでのフロック粒径を表中に示す)。
続いて回転数を300rpmにセットし、さらに30秒間撹拌した後、撹拌を止め凝集物の大きさを再度目視にて観察した(回転数300rpmでのフロック粒径を表中に示す)。
【0060】
(2)ろ液量(単位:mL)
T−1189のナイロン製ろ布[敷島カンバス(株)製、円形状、直径9cm]、ヌッチェ漏斗、300mlが測れるメスシリンダーをセットし、上記フロック粒径試験後の汚泥を一度に投入して濾過し、ストップウォッチを用いて投入直後から60秒後のろ液量を測定し処理速度を評価した。
(3)ろ布剥離性
濾過した汚泥の一部をスパーテルで取り出し、プレスフィルター試験機を用いて脱水試験(2kg/cm2、60秒)を行い、試験後のろ布からの脱水ケーキの剥離性を下記の基準に従って評価した。
◎:非常に剥がれやすい(ろ布付着物ほとんどなし)
○:剥がれやすい (わずかにろ布付着物あり)
△:多少剥がれにくい (ろ布付着物あり、わずかにろ布内部まで付着)
×:剥がれにくい (ろ布内部まで付着)
【0061】
(4)ケーキ含水率(単位:%)
上記ろ布剥離性試験後の脱水ケーキ約3.0gをシャーレに秤量(W3)して、循風乾燥機中で完全に水分が蒸発するまで(105±5℃で8時間)乾燥させた後、シャーレ上に残った乾燥ケーキの重量を(W4)として、次式からケーキ含水率を算出した。

ケーキ含水率(重量%)={(W3)−(W4)}×100/(W3)
【0062】
<高分子凝集剤の製造>
実施例1
密閉可能なガラス容器に有機凝結剤[商品名「カチオマスターPD−10」、四日市合成(株)製、ジメチルアミンエピクロルヒドリン重縮合物(b−1)の58.8%水溶液]1.6部とイオン交換水45.1部を仕込んで希釈水溶液とし、窒素(純度99.999%以上)で充分に置換した(気相酸素濃度10ppm以下)。また、別途、ガラス製断熱反応容器にN,N−ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロライド4級アンモニウム塩(a−1)の80%水溶液74部(40モル%)とアクリルアミド(a−2)の50%水溶液65部(60モル%)を仕込み、さらに系内のモノマーの合計が30%となるようにイオン交換水192部を加え、系内が均一の溶液になるまで撹拌した。さらに撹拌を続けながら、硫酸を用いてモノマー水溶液のpH(20℃)をpHメーターで監視しながら4.0に調整した。次に、−5℃の氷浴中で溶液の温度を−2℃に調整し、系内を窒素(純度99.999%以上)で充分に置換した(気相酸素濃度10ppm以下)。次いで開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライドの10%水溶液0.46部を、撹拌しながら一気に加えた。重合が開始し発熱がはじまり、系内温度が25℃に到達した時点(この時点での重合率は52%であった。)で先に調製した(b−1)の水溶液46.7部を全量一気に投入し、均一になるよう撹拌した。
内容物温度が50℃に到達後、外部から加熱し内容物温度を90℃に調整した。その後同温度を2時間維持し、重合反応を完結させた。なお重合中、内容物が高粘度となり撹拌が困難となったため、撹拌は途中で停止した。重合完結後、内容物を容器に取り出し、これにアセトン2,000部を加えて市販のジューサーミキサーで30分間撹拌して沈殿物を得た。この沈殿物を減圧濾過(JIS規格2種のろ紙を使用)で濾過物として得た後、これを減圧乾燥機中(減圧度1.3kPa、40℃×2時間)でアセトン溶媒を留去することで粉末状の水溶性共重合体(A1)97部(収率97%、固形分含量93%)を得て、これを高分子凝集剤(X1)とした。
【0063】
実施例2
実施例1において、(b−1)の58.8%水溶液1.6部、イオン交換水45.1部に代えて、有機凝結剤[商品名「スイフロックSR−2000」、スイレン(株)製、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(b−2)(粉末状)、純分100%]10.1部をイオン交換水458部に溶解したこと、および、重合系内温度が25℃に到達した時点(重合率70%)で(b−2)の水溶液を一気に投入したこと以外は実施例1と同様にして、粉末状の水溶性共重合体(A2)95部(収率87%、固形分含量93%)を得て、これを高分子凝集剤(X2)とした。
【0064】
実施例3
実施例1において、(b−1)の58.8%水溶液1.6部に代えて120部用いたこと、また(a−1)の80%水溶液74部、(a−2)の50%水溶液65部に代えて、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライド4級アンモニウム塩(a−3)の80%水溶液29部(100モル%)を用いたこと、および、重合系内温度が25℃に到達した時点(重合率97%)で(b−1)の水溶液を一気に投入したこと以外は実施例1と同様にして、粉末状の水溶性重合体(A3)94部(収率93%、固形分含量93%)を得て、これを高分子凝集剤(X3)とした。
【0065】
実施例4
実施例1において、(b−1)の58.8%水溶液1.6部に代えて156部用いたこと、また(a−1)の80%水溶液74部、(a−2)の50%水溶液65部に代えて、(a−1)の80%水溶液58部(30モル%)、(a−2)の50%水溶液51部(45モル%)、(a−3)の80%水溶液10部(5モル%)、およびアクリル酸(a−4)12部(20モル%)を用いたこと、および、重合系内温度が30℃に到達した時点(重合率60%)で(b−1)の水溶液を一気に投入したこと以外は実施例1と同様にして、粉末状の水溶性共重合体(A4)193部(収率98%、固形分含量93%)を得て、これを高分子凝集剤(X4)とした。
【0066】
実施例5
(X2)70部と高分子凝集剤(Z1)[商品名「ダイヤフロックKP7000」、(株)ダイヤニトリックス製、アクリロニトリルとビニルホルムアミド共重合物の変性物(ポリアミジン)(粉末状)、純分100%]30部を密栓可能なガラス瓶に採り、均一になるまでよく振り混ぜて高分子凝集剤(Q1)100部を得た。
【0067】
比較例1
実施例1において、(b−1)の希釈水溶液46.7部に代えて、イオン交換水のみ46.7部を一気に投入したこと以外は実施例1と同様にして、粉末状の水溶性重合体97部(収率98%、固形分含量93%)を得て、これを高分子凝集剤(比X1)とした。
【0068】
比較例2
実施例3において、(b−1)の希釈水溶液165部に代えて、イオン交換水のみ165部を一気に投入したこと以外は実施例3と同様にして、粉末状の水溶性重合体を24部(収率98%、固形分含量93%)を得て、これを高分子凝集剤(比X2)とした。
【0069】
比較例3
実施例4において、(b−1)の希釈水溶液201部に代えて、イオン交換水のみ201部を一気に投入したこと以外は実施例4と同様にして、粉末状の水溶性重合体97部を得た(収率98%、固形分含量93%)これを高分子凝集剤(比X3)とした。
【0070】
比較例4
ガラス製断熱反応容器に(b−1)の58.8%水溶液1.6部と、(a−1)の80%水溶液74部(40モル%)、(a−2)の50%水溶液65部(60モル%)を仕込み、さらに系内のモノマーの合計濃度が30%となるようにイオン交換水192部を加え、系内が均一の水溶液になるまで撹拌した。さらに撹拌を続けながら、硫酸を用いてモノマー水溶液のpH(20℃)をpHメーターで監視しながら4.0に調整した。次に、−5℃の氷浴中で水溶液の温度を−2℃に調整し、系内を窒素(純度99.999%以上)で充分に置換した(気相酸素濃度10ppm以下)。次いで開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライドの10%水溶液0.46部を、撹拌しながら一気に加えた。内容物温度が50℃に到達後、外部から加熱し内容物温度を90℃に調整した。その後同温度を2時間維持して重合反応を完結させた。なお重合中、内容物が高粘度となり撹拌が困難となったため、撹拌は途中で停止した。重合完結後は実施例1と同様にして、粉末状の水溶性共重合体(比A4)97部(収率97%、固形分含量93%)を得て、これを高分子凝集剤(比X4)とした。
【0071】
比較例5
比較例4において(b−1)の58.8%水溶液1.6部に代えて、(b−2)10.1部を用いたこと以外は比較例4と同様にして、粉末状の水溶性共重合体(比A5)95部(収率87%、固形分含量93%)を得て、これを高分子凝集剤(比X5)とした。
【0072】
比較例6
比較例4において(b−1)の58.8%水溶液1.6部に代えて120部用いたこと、(a−1)の80%水溶液74部と(a−2)の50%水溶液65部に代えて、(a−3)の80%水溶液29部(100モル%)を用いたこと以外は比較例4と同様にして、粉末状の水溶性共重合体(比A6)94部(収率93%、固形分含量93%)を得て、これを高分子凝集剤(比X6)とした
【0073】
比較例7
比較例4において(b−1)の58.8%水溶液1.6部に代えて156部用いたこと、また(a−1)の80%水溶液74部と(a−2)の50%水溶液65部に代えて、(a−1)の80%水溶液58部(30モル%)、(a−2)の50%水溶液51部(45モル% )、(a−3)の80%水溶液10部(5モル%)、および(a−4)12部(20モル%)を用いたこと以外は比較例4と同様にして、粉末状の水溶性共重合体(比A7)193部(収率98%、固形分含量93%)を得て、これを高分子凝集剤(比X7)とした。
【0074】
比較例8
(比X1)99部と(b−1)の58.8%水溶液1.7部を密栓可能なガラス瓶に採り、均一になるまでよく振り混ぜて、比較例4と同様のアセトン処理を行い、粉末状の水溶性共重合体(比A8)95部(収率88%、固形分含量92%)を得て、これを高分子凝集剤(比X8)とした。
【0075】
比較例9
(比X1)90部と(b−2)10部を密栓可能なガラス瓶に採り、均一になるまでよく振り混ぜて、高分子凝集剤(比X9)とした。
【0076】
上記で得られた高分子凝集剤について表1に示す。表1中の記号の内容は下記のとおりである。
DAAQ(a−1) :N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロライド
4級アンモニウム塩
AAm (a−2) :アクリルアミド
DAMQ(a−3) :N,N−ジメチルアミノエチルメタアクリレートのメチルクロラ
イド4級アンモニウム塩
AAc (a−4) :アクリル酸
有機凝結剤(b−1):ジメチルアミンエピクロルヒドリン重縮合物(商品名「カチオマ
スターPD−10」の固形分)
有機凝結剤(b−2):ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(商品名「スイフ
ロックSR−2000」)
【0077】
【表1】

【0078】
<凝集性能評価>
実施例6、比較例10〜13
(X1)、(比X1)、(比X4)、(比X8)、(b−1)をそれぞれイオン交換水に溶解して固形分含量が0.2%の水溶液とした。
M食品工場から採取した余剰汚泥[pH6.8、TS1.4%、有機分50%。以下同じ。]を200部ずつ5個の別々の500mLビーカーに採り撹拌下で、(X1)、(比X1)、(比X4)、(比X8)それぞれの水溶液30部を4個のビーカーに加え、それぞれのビーカーについて前記評価方法(1)に従って混合処理した。また同様に、残りの1個のビーカーにまず(b−1)の水溶液0.3部を加え、さらに、(比X1)の水溶液29.7部を加えて前記と同様に混合処理した〔この時の(X1)、(比X1)、(比X4)、(比X8)、(比X1)+(b−1)の固形分添加量は2.1%/TS〕。これらの処理物について前記評価方法(1)〜(4)に従ってフロック粒径、ろ液量、ろ布剥離性、およびケーキ含水率を評価した。結果を表2に示す。
【0079】
【表2】

【0080】
実施例7〜8、比較例14〜16
(X2)、(Q1)、(比X1)、(比X5)、(比X9)、(b−2)をそれぞれイオン交換水に溶解して固形分含量が0.2%の水溶液とした。M食品工場から採取した余剰汚泥を200部ずつ5個の別々の500mLビーカーに採り、(X2)、(Q1)、(比X5)、(比X9)それぞれの水溶液30部を4個のビーカーに加え、前記と同様に混合処理した。また同様に、残りの1個のビーカーにまず(b−2)の水溶液3部を加え、さらに、(比X1)の水溶液27部を加えて前記と同様に混合処理した〔この時の(X2)、(Q1)、(比X5)、(比X9)、(比X1)+(b―2)の固形分添加量は2.1%/TS〕。これらの処理物について前記と同様に評価した。結果を表3に示す。
【0081】
【表3】

【0082】
実施例9、比較例17〜18
高分子凝集剤(X3)、(比X2)、(比X6)をそれぞれイオン交換水に溶解して固形分含量が0.2%の水溶液とした。T下水処理場から採取した余剰汚泥[pH6.0、TS2.6%、有機分71%]を200部ずつ3個の別々の500mLビーカーに採り、上記各水溶液50部を用いて前記と同様に混合処理した〔この時の(X3)、(比X2)、および(比X6)の固形分添加量は2.5%/TS〕。これらの処理物について前記と同様に評価した。結果を表4に示す。
【0083】
【表4】

【0084】
実施例10、比較例19〜20
高分子凝集剤(X4)、(比X3)、(比X7)をそれぞれイオン交換水に溶解して固形分含量が0.2%の水溶液とした。G下水処理場から採取した消化汚泥を200部ずつ3個の別々の500mLビーカーに採り、(X4)、(比X3)、(比X7)それぞれの水溶液45部を用いて前記と同様に混合処理した〔この時の(X4)、(比X3)、(比X7)の固形分添加量は2.4%/TS〕。これらの処理物について前記と同様に評価した。結果を表5に示す。
【0085】
【表5】

【0086】
表2〜5の結果から、本発明の高分子凝集剤は、比較のものに比べて、大粒径の粗大フロックを形成し、高撹拌下(300rpm)でも一旦形成されたフロックが壊れにくく(フロックが強固)、ろ布剥離性、脱水性(ケーキ含水率)のいずれにおいても優れた効果を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の高分子凝集剤は、従来にない低添加量で高い処理速度と高い脱水率(すなわち低いケーキ含水率 )を示すことから、下水等または工場廃水等の有機性もしくは無機性汚泥または廃水の脱水処理用高分子凝集剤として用いることができ、とくに有機性汚泥の脱水処理用として好適に用いられる。
また、その他の用途としては、例えば掘削・泥水処理用凝集剤、製紙用薬剤(例えば製紙工業用地合形成助剤、濾水歩留向上剤、濾水性向上剤および紙力増強剤)、原油増産用添加剤(原油の二、三次回収用添加剤)、分散剤、スケール防止剤、凝結剤、脱色剤、増粘剤、帯電防止剤および繊維用処理剤が挙げられ、これらのうちとくに掘削・泥水処理用凝集剤、製紙用薬剤および原油増産用添加剤として好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性1価不飽和モノマー(a)を含有する重合性モノマーを重合させ、重合率50〜99モル%の段階で有機凝結剤(b)を添加し、(b)の存在下で重合を完結させた水溶性(共)重合体(A)を含有してなる高分子凝集剤(X)。
【請求項2】
(b)が、ポリアルキレンイミン(b1)、アルキルアミンとエピクロルヒドリンの重縮合物(b2)およびアリル基含有モノマー(共)重合物(b3)からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の高分子凝集剤(X)。
【請求項3】
(a)と(b)の重量比が、99.9/0.1〜50/50である請求項1または2記載の高分子凝集剤(X)。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載の(X)と(X)以外の、(a)を構成単位とする水溶性(共)重合体(B)を含有してなる高分子凝集剤(Z)を併用してなる高分子凝集剤(Q)。
【請求項5】
水溶性1価不飽和モノマー(a)を含有する重合性モノマーを重合させ、重合率50〜99モル%の段階で有機凝結剤(b)を添加し、(b)の存在下で重合を完結させることを特徴とする水溶性(共)重合体(A)を含有してなる高分子凝集剤(X)の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか記載の高分子凝集剤を汚泥または廃水に添加してフロックを形成させ、固液分離することを特徴とする汚泥または廃水の処理方法。

【公開番号】特開2012−157819(P2012−157819A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19028(P2011−19028)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】