説明

高分子凝集剤

【課題】 水への溶解性を維持しつつ、フロックの強度に優れる高分子凝集剤を提供する。
【解決手段】 水溶性不飽和モノマー(a)を含有する重合性モノマーを、ハロゲン原子および/またはカルボニル基を有する遷移金属化合物(b)、有機ハロゲン化物(c)、並びに(b)の遷移金属原子に配位し得るNまたはP原子を有する化合物(d)の存在下で活性エネルギー線を照射して重合させてなる水溶性(共)重合体を含有してなる高分子凝集剤;並びに、前記高分子凝集剤を汚泥または廃水に添加、混合してフロックを形成させ、固液分離することを特徴とする汚泥または廃水の処理方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高分子凝集剤に関する。さらに詳しくは、下水もしくはし尿等(以下、下水汚泥と略記)の微生物処理で生じる有機性汚泥の脱水に用いる高分子凝集剤および下水汚泥の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水等の汚泥処理、廃水処理、あるいは土木現場での泥水処理、浚渫埋め立て時の泥水の沈降分離促進用等の処理剤として、さらには製紙用脱水剤や紙力増強剤等として水溶性高分子からなる高分子凝集剤が広く使用されている。とくに近年、発生する汚泥量等の増加から、脱水処理速度向上のニーズが高まってきていることや、有機性汚泥の性状の難脱水化に伴う、脱水ケーキの焼却処分費用の増大、並びに脱水ケーキをそのまま埋め立て処分する際の埋め立て地の逼迫した状況等から、より強固で、粗大なフロックを形成させ、脱水ケーキの含水率を大幅に低減することができる高分子凝集剤が強く望まれている。
より強固で、粗大なフロックを形成するために、ニトロキシラジカルの存在下で水溶性不飽和モノマーをリビングラジカル重合させてなる高分子凝集剤が提案されている(例えば特許文献1、2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−139606号公報
【特許文献2】特開2001−316411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1および2記載の高分子凝集剤の製造においては、熱によるニトロキシラジカルの解離−結合生成が重合反応速度を決定し、低温では異常に反応速度が低下すること、また高温では重合反応は速くなるが、一方で重合熱により生成ポリマーが劣化し、水への溶解性が悪くなることから、適用できる重合温度が制限されるという問題があった。また、こうして得られた高分子凝集剤を汚泥等に適用して形成されるフロックは、上記理由からその強度が十分ではなく、水への溶解性が悪くなるという問題があり改善が望まれていた。
本発明の目的は、水への溶解性を維持しつつ、フロックの強度に優れる高分子凝集剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、水溶性不飽和モノマー(a)を含有する重合性モノマーを、ハロゲン原子および/またはカルボニル基を有する遷移金属化合物(b)、有機ハロゲン化物(c)、並びに(b)を構成する遷移金属原子に配位し得るNまたはP原子を有する化合物(d)の存在下で活性エネルギー線を照射して重合させてなる水溶性(共)重合体(A)を含有してなる高分子凝集剤(X)である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の高分子凝集剤は下記の効果を奏する。
(1)形成するフロック強度が極めて大きく、脱水効果に優れる。
(2)汚泥処理等で発生する廃棄物量が大幅に削減できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[水溶性(共)重合体(A)]
本発明における水溶性(共)重合体(A)は、水溶性不飽和モノマー(a)を含有する重合性モノマーを、ハロゲン原子および/またはカルボニル基を有する遷移金属化合物(b)、有機ハロゲン化物(c)、並びに(b)の遷移金属原子に配位し得るNまたはP原子を有する化合物(d)の存在下で活性エネルギー線を照射して重合させて得られる。ここにおいて水溶性不飽和モノマー(a)および水溶性(共)重合体(A)とは、水に対する溶解度(20℃)が1g/水100g以上である不飽和モノマーおよび(共)重合体を意味する。また、後述する水不溶性とは該溶解度が1g未満であることを意味する。
【0008】
[水溶性(共)重合体(A)]
本発明における水溶性(共)重合体(A)を構成する水溶性不飽和モノマー(a)としては、下記のノニオン性水溶性不飽和モノマー(a1)、カチオン性水溶性不飽和モノマー(a2)、アニオン性水溶性不飽和モノマー(a3)およびこれらのうちの2種もしくはそれ以上の混合物が挙げられる。
なお、本発明における水溶性(共)重合体(A)は水溶性単独重合体および水溶性共重合体を意味する。
【0009】
(a1)ノニオン性水溶性不飽和モノマー
下記のもの、およびこれらの混合物が挙げられる。
(a11)ノニオン性水溶性(メタ)アクリレート
炭素数(以下Cと略記)4以上かつ重量平均分子量(以下Mwと略記)5,000以下の水酸基含有(メタ)アクリレート[例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(重合度3〜50)モノ(メタ)アクリレート、(ポリ)グリセロール(重合度1〜10)モノ(メタ)アクリレート]およびC4〜5のアクリル酸アルキル(C1〜2)エステル(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル)[なお、Mwの測定はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による];
(a12)ノニオン性水溶性(メタ)アクリルアミドおよびその誘導体
C3〜30のもの、例えば(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(C1〜3)(メタ)アクリルアミド[N−メチルおよび−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等]およびN−アルキロール(メタ)アクリルアミド[N−メチロール(メタ)アクリルアミド等];
(a13)上記以外のノニオン性水溶性窒素原子含有エチレン性不飽和化合物
C3〜30のもの、例えばアクリロニトリル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルスクシンイミド、N−ビニルカルバゾールおよび2−シアノエチル(メタ)アクリレート。
【0010】
(a2)カチオン性水溶性不飽和モノマー
下記のもの、これらの塩[例えば無機酸(塩酸、硫酸、リン酸および硝酸等)塩、メチルクロライド塩、ジメチル硫酸塩およびベンジルクロライド塩]、およびこれらの混合物が挙げられる。
(a21)窒素原子含有カチオン性水溶性(メタ)アクリレート
C5〜30のもの、例えばアミノアルキル(C2〜3)(メタ)アクリレート、N,N−ジアルキル(C1〜2)アミノアルキル(C2〜3)(メタ)アクリレート[N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびN,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等]、および複素環含有(メタ)アクリレート[N−モルホリノエチル(メタ)アクリレート等];
(a22)窒素原子含有カチオン性水溶性(メタ)アクリルアミド誘導体
C5〜30のもの、例えばN,N−ジアルキル(C1〜2)アミノアルキル(C2〜3)(メタ)アクリルアミド[N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等];
(a23)アミノ基を有するカチオン性水溶性エチレン性不飽和化合物
C5〜30のもの、例えばビニルアミン、ビニルアニリン、(メタ)アリルアミン、およびp−アミノスチレン;
(a24)アミンイミド基を有するカチオン性水溶性化合物
C5〜30のもの、例えば1,1,1−トリメチルアミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−エチルアミン(メタ)アクリルイミド、および1,1−ジメチル−1−(2’−フェニル−2’−ヒドロキシエチル)アミン(メタ)アクリルイミド;
(a25)上記以外の窒素原子含有カチオン性水溶性ビニルモノマー
C5〜30のもの、例えば2−ビニルピリジン、3−ビニルピペリジン、ビニルピラジンおよびビニルモルホリン。
【0011】
(a3)アニオン性水溶性不飽和モノマー
下記の酸、これらの塩[アルカリ金属(リチウム、ナトリウムおよびカリウム等、以下同じ)塩、アルカリ土類金属(マグネシウムおよびカルシウム等、以下同じ)塩、アンモニウム塩およびアミン(C1〜20)塩等]、およびこれらの混合物が挙げられる。
(a31)水溶性不飽和カルボン酸
C3〜30のもの、例えば(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、安息香酸ビニルおよび酢酸アリル;
(a32)水溶性不飽和スルホン酸
C2〜20の脂肪族不飽和スルホン酸(ビニルスルホン酸等)、C6〜20の芳香族不飽和スルホン酸(スチレンスルホン酸等)、スルホン酸基含有(メタ)アクリレート[スルホアルキル(C2〜20)(メタ)アクリレート、例えば2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブタンスルホン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシブタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸およびp−(メタ)アクリロイルオキシメチルベンゼンスルホン酸等]、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド[2−(メタ)アクリロイルアミノエタンスルホン酸、2−および3−(メタ)アクリロイルアミノプロパンスルホン酸、2−および4−(メタ)アクリロイルアミノブタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、並びにp−(メタ)アクリロイルアミノメチルベンゼンスルホン酸等]、アルキル(C1〜20)(メタ)アリルスルホコハク酸エステル[メチル(メタ)アリルスルホコハク酸エステル等]等;
(a33)(メタ)アクリロイルポリオキシアルキレン(C1〜6)硫酸エステル
(メタ)アクリロイルポリオキシエチレン(重合度2〜50)硫酸エステル等。
【0012】
水溶性不飽和モノマー(a)のうち高分子量化し易いという観点から好ましいのは、(a1)、(a21)、(a22)、(a31)および(a32);さらに好ましいのは(a12)、(a13)、(a21)、(a22)、(a31)、並びに(a32)のうちのスルホン酸基含有(メタ)アクリレートおよびスルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド;特に好ましいのは(a12)、(a13)、(a21)、(a31)、並びに(a32)のうちのスルホン酸基含有(メタ)アクリレートおよびスルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド;最も好ましいのは(a12)のうちの(メタ)アクリルアミド、(a13)のうちのアクリロニトリルおよびN−ビニルホルムアミド、(a21)のうちのN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびこれらの塩(上記のもの)、(a31)のうちの(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸およびこれらのアルカリ金属塩、並びに(a32)のうちの2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、2−および3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸およびこれらのアルカリ金属塩である。
また、これらの(a)は、任意に混合して共重合させることができる。
【0013】
[その他のモノマー]
(A)を構成する重合性モノマーとしては、本発明の効果を阻害しない範囲で上記(a)の他に必要によりその他のモノマーとして水不溶性不飽和モノマー(x)および架橋性モノマー(y)を併用してもよい。ここにおいて水不溶性不飽和モノマー(x)とは、水に対する溶解度(20℃)が1g/水100g未満である不飽和モノマーを意味し、架橋性モノマー(y)とは、2個またはそれ以上の反応性不飽和基を有するモノマーを意味する。
【0014】
水不溶性不飽和モノマー(x)としては、以下の(x1)〜(x5)、およびこれらの2種またはそれ以上の混合物が挙げられる。
(x1)C6〜23の水不溶性(メタ)アクリレート
脂肪族または脂環式アルコール(C3〜20)の(メタ)アクリレート[プロピル−、ブチル−、ラウリル−、オクタデシル−およびシクロヘキシル(メタ)アクリレート等]およびエポキシ基(C4〜20)含有(メタ)アクリレート[グリシジル(メタ)アクリレート等];
【0015】
(x2)[モノアルコキシ(C1〜20)−、モノシクロアルコキシ(C3〜12)−もしくはモノフェノキシ]ポリプロピレングリコール(以下、PPGと略記)(重合度2〜50)の水不溶性不飽和カルボン酸モノエステル
モノオール(C1〜20)もしくは1価フェノール(C6〜20)のプロピレンオキシド(以下POと略記)付加物の(メタ)アクリル酸エステル[ω−メトキシPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−エトキシPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−プロポキシPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−ブトキシPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−シクロヘキシルPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−フェノキシPPGモノ(メタ)アクリレート等]およびジオール(C2〜20)もしくは2価フェノール(C6〜20)のPO付加物のモノ(メタ)アクリル酸エステル[ω−ヒドロキシエチル(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート等]等;
【0016】
(x3)C2〜30の不飽和炭化水素
エチレン、ノネン、スチレン、および1−メチルスチレン等;
(x4)不飽和アルコール[C2〜4、例えばビニルアルコール、および(メタ)アリルアルコール]のカルボン酸(C2〜30)エステル(酢酸ビニル等);(x5)ハロゲン含有モノマー(C2〜30、例えば塩化ビニル)。
【0017】
架橋性モノマー(y)としては、以下の(y1)〜(y5)、これらの塩[例えば、塩基性モノマーについては、無機酸(塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、リン酸および硝酸等)塩、メチルクロライド塩、ジメチル硫酸塩およびベンジルクロライド塩等、酸性モノマーについては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩およびアミン(C1〜20、例えばメチルアミン、エチルアミンおよびシクロヘキシルアミン)塩]、およびこれらの2種またはそれ以上の混合物が挙げられる。
(y1)多価(2価〜4価またはそれ以上)(メタ)アクリルアミド
C6〜30のもの、例えばビス(メタ)アクリルアミドおよびN,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド;
(y2)多価(2価〜4価またはそれ以上)(メタ)アクリレート
C8〜30のもの、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトール[多価(2〜4)](メタ)アクリレート;
【0018】
(y3)ビニル基(2個〜20個またはそれ以上)含有モノマー
C4以上かつMn6,000以下のもの、例えばジビニルアミン、多価(2〜5またはそれ以上)アミン[C2以上かつMn3,000以下、例えばエチレンジアミン、およびポリエチレンイミン(C4以上かつMn3,000以下)]のポリ(2〜20)ビニルアミン、ジビニルエーテル、多価アルコール〔C2以上かつMn3,000以下、例えばアルキレン(C2〜6またはそれ以上)グリコール[エチレングリコール、プロピレングリコールおよび1,6−ヘキサンジオール(以下、それぞれEG、PGおよび1,6−HDと略記)等]、ポリオキシアルキレン[Mn2,000〜3,000、例えばポリエチレングリコール(以下、PEGと略記)(分子量106以上かつMn3,000以下)、PPG(分子量134以上かつMn3,000以下)、ポリオキシエチレン(分子量106以上かつMn3,000以下)]/ポリオキシプロピレン(分子量134以上かつMn3,000以下)ブロックコポリマー]、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、(ポリ)(2〜50)グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール(以下、それぞれTME、TMP、GR、PEおよびSOと略記)、およびデンプン〕の多価(2〜20)ビニルエーテル等;
【0019】
(y4)アリル基(2個〜20個またはそれ以上)含有モノマー
C6以上かつMn3,000以下のもの、例えばジ(メタ)アリルアミン、N−アルキル(C1〜20)ジ(メタ)アリルアミン、多価アミン(上記のもの)の多価(2〜20)(メタ)アリルアミン、ジ(メタ)アリルエーテル、多価アルコール(上記のもの)のポリ(2〜20)(メタ)アリルエーテル、およびポリ(2〜20)(メタ)アリロキシアルカン(C1〜20)(テトラアリロキシエタン等);
(y5)エポキシ基含有モノマー
C8以上かつMn6,000以下のもの、例えばEGジグリシジルエーテル、PEGジグリシジルエーテルおよびGRトリグリシジルエーテル。
【0020】
(A)を構成する重合性モノマーの使用量(モル%)は、(a)は、(A)を構成する重合性モノマーの全モル数に基づいて、凝集性能(高フロック強度、フロックの粗大化、脱水ケーキの低含水率化等。以下同じ。)の観点から好ましくは50〜100%、さらに好ましくは80〜100%、とくに好ましくは90〜100%;(x)は、通常45%以下、凝集性能および(A)の水への溶解性の観点から好ましくは0.1〜20%、さらに好ましくは0.5〜10%;また、(y)は、(y)の重合性または反応性にもよるが、通常5%以下、凝集性能および(A)の水への溶解性の観点から好ましくは0.001〜1%、さらに好ましくは0.01〜0.5%である。
【0021】
本発明の高分子凝集剤に含まれる水溶性(共)重合体(A)のイオン性は特に限定されないが、下水汚泥等に使用される場合は、懸濁粒子の大きさが比較的大きく、また水中における懸濁粒子表面がマイナス荷電を有していることから、水溶性(共)重合体(A)としてはカチオン性水溶性(共)重合体(A1)、両性水溶性共重合体(A2)およびこれらの混合物が好ましい。 また、本発明の高分子凝集剤が廃水に使用される場合は、溶解性有機物等を処理するためにまず無機凝集剤を添加することが多いことから、懸濁粒子表面は無機凝集剤で覆われることとなりプラス荷電を有していることから、水溶性(共)重合体(A)としては、アニオン性水溶性(共)重合体(A3)、ノニオン性水溶性(共)重合体(A4)およびこれらの混合物が好ましい。
【0022】
本発明における(A)のうち、カチオン性水溶性(共)重合体(A1)は、前記カチオン性水溶性不飽和モノマー(a2)を必須構成単位として有し、必要によりノニオン性水溶性不飽和モノマー(a1)、水不溶性不飽和モノマー(x)および/または架橋性モノマー(y)を有する(共)重合体であって、水に溶解した際にカチオン性を示す(共)重合体である。
(A1)を構成する(a2)と(a1)のモル割合(%)[(a2)/(a1)]は、汚泥粒子表面の荷電中和の観点から好ましくは30/70〜100/0である。
【0023】
(A)のうち、両性水溶性共重合体(A2)は、前記カチオン性水溶性不飽和モノマー(a2)並びにアニオン性水溶性不飽和モノマー(a3)を必須構成単位として有し、必要によりノニオン性水溶性不飽和モノマー(a1)、水不溶性不飽和モノマー(x)および/または架橋性モノマー(y)を有する共重合体である。
(A2)を構成する(a2)、(a3)および(a1)のモル割合(%)[(a2)/(a3)/(a1)]は、凝集性能発現の観点から好ましくは5/5/90〜40/30/30である。
【0024】
(A)のうち、アニオン性水溶性(共)重合体(A3)は、前記アニオン性水溶性不飽和モノマー(a3)を必須構成単位として有し、必要によりノニオン性水溶性不飽和モノマー(a1)、水不溶性不飽和モノマー(x)および/または架橋性モノマー(y)を有する重合体であって、水に溶解した際にアニオン性を示す重合体である。(A3)を構成する(a3)と(a1)のモル割合(%)[(a3)/(a1)]は、凝集性能発現の観点から好ましくは70/30〜10/90である。
【0025】
また、ノニオン性水溶性(共)重合体(A4)は、ノニオン性水溶性不飽和モノマー(a1)を必須構成単位として有し、必要により水不溶性不飽和モノマー(x)および/または架橋性モノマー(y)を有する共重合体である。
【0026】
(A)の固有粘度(以下[η]と表記することがある)(1N−NaNO水溶液中30℃での測定値、単位はdl/g。以下同じ。)は通常1〜40、凝集性能発現および凝集速度の観点から好ましくは2〜38、さらに好ましくは4〜35である。
【0027】
(A)の水中におけるカチオン性またはアニオン性の評価については、コロイド当量値(meq/g)として求めることができる。すなわち、カチオン性水溶性(共)重合体(A1)中のカチオン性基当量値はカチオンコロイド当量値として求めることができ、アニオン性水溶性(共)重合体(A3)中のアニオン性基当量値はアニオンコロイド当量値として求めることができ、両性水溶性(共)重合体(A2)中のカチオン性基当量値およびアニオン性基当量値は、それぞれカチオンコロイド当量値およびアニオンコロイド当量値として求めることができる。
【0028】
カチオン性水溶性(共)重合体(A1)のカチオンコロイド当量値(meq/g)は、凝集性能の観点から好ましくは0.1〜7.0、さらに好ましくは0.5〜6.0、特に好ましくは1.0〜5.5である。また、両性水溶性共重合体(A2)のカチオンコロイド当量値(meq/g)は、凝集性能の観点から好ましくは0.1〜7、さらに好ましくは0.3〜6.0、特に好ましくは0.5〜5.5であり;アニオンコロイド当量値(meq/g)は、凝集性能の観点から好ましくは−13.0〜−0.05、さらに好ましくは−10〜−0.1、特に好ましくは−8.0〜−0.3である。
【0029】
コロイド当量値は、高分子凝集剤の技術分野で通常行われているコロイド滴定法により求めることができ、例えば特開2009−178634号公報記載の方法などが挙げられる。
【0030】
[遷移金属化合物(b)]
本発明における、ハロゲン原子および/またはカルボニル基を有する遷移金属化合物(b)を構成する遷移金属としては、元素の周期律表の3〜11族の遷移金属の少なくとも一種が挙げられる。例えば、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケルおよび銅などの第1遷移金属;イットリウム、モリブデン、ジルコニウム、ロジウム、銀およびルテニウムなどの第2遷移金属;並びに、ランタン、セリウム、タンタル、タングステン、白金および金などの第3遷移金属などが挙げられる。工業上の観点から好ましくは第1遷移金属および第2遷移金属、さらに好ましくは銅、モリブデンおよび鉄である。
【0031】
(b)に含まれるハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素およびフッ素などが挙げられる。
【0032】
ハロゲン原子を有する遷移金属化合物(b1)としては、NbF、TaF、MoF、WF、RuF、BiF、TiCl、ZrCl、MoCl、MoCl、WCl、FeCl、TeCl、SnCl、SeCl、CuBr、FeBrおよびSnIなどの遷移金属ハロゲン化物が挙げられる。
【0033】
カルボニル基を有する遷移金属化合物(b2)としては、前記遷移金属のジケトンエノレート(アセチルアセトナートなど)およびカルボン酸塩(酢酸塩、マレイン酸塩およびコハク酸塩など)などが挙げられる。例えば、ペンタカルボニル鉄、トリカルボニルシクロオクタトリエン鉄、ジカルボニルヨウ素シクロペンタジエニル鉄、ジカルボニルシクロペンタジエニル鉄ダイマー、テトラコバルトドデカカルボニル、シクロペンタジエニルコバルトジカルボニルテトラカルボニルニッケル、ジカルボニルジ(トリフェニルホスフィン)ニッケル、シクロペンタジエニルニッケルカルボニルダイマー、ペンタカルボニルモリブデン、ヘキサカルボニルモリブデン、[1,1’−
ビス( ジフェニルフォスフィノ)フェロセン]テトラカルボニルモリブデン、[1,2−ビス(ジフェニルフォスフィノ)エタン]テトラカルボニルモリブデン、(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン)テトラカルボニルモリブデン、(プロピルシクロペンタジエニル)モリブデントリカルボニルダイマー、cis−テトラカルボニルビス(ピペリジン)モリブデン、シクロペンタジエニルモリブデントリカルボニルハライド、シクロペンタジエニルモリブデントリカルボニルダイマー、ジカルボニル(ペンタメチルシクロペンタジエニル)モリブデンダイマー、メチルシクロペンタジエニルモリブデントリカルボニルダイマー、トリアミンモリブデントリカルボニル、およびトリカルボニル(シクロヘプタトリエン)モリブデンルテニウム(アセチルアセトナート)などが挙げられる。
【0034】
ハロゲン原子およびカルボニル基を有する遷移金属化合物(b3)としては、シクロペンタジエニルクロムトリカルボニルハライドジカルボニル、シクロペンタジエニルヨウ化鉄、シクロペンタジエニルモリブデントリカルボニルハライド、シクロペンタジエニルタングステントリカルボニルハライド、ペンタカルボニルブロミドマンガンなどが挙げられる。
【0035】
(b)のうち、工業上の観点から好ましいのは(b1)、特にCuBrである。
【0036】
[有機ハロゲン化物(c)]
本発明における有機ハロゲン化物(c)を構成するハロゲンとしては、前記ハロゲンが挙げられる。有機ハロゲン化物(c)としては、ハロゲン化アルキル(テトラクロロメタン、トリクロロブロモメタンおよびトリクロロヨードメタンなど)、ハロゲン化アルキルアルコール(2−ヨード−エタノールなど)、ハロゲン化アルキルフェニルケトン(ジクロロメチルフェニルケトンなど)、ハロゲン化アルキルカルボン酸(1−ブロモ−1−メチルエチルカルボン酸およびブロモ酢酸など)、ハロゲン化アルキルカルボン酸アルキルエステル(1−ブロモ−1−メチルエチルカルボン酸メチル、1−ブロモ−1−メチルエチルカルボン酸エチル、1−ブロモ−1−メチルエチルカルボン酸オクチルおよび1−ブロモ−1−メチルエチルカルボン酸ラウリルなどのアルキル基の炭素数1〜8の1−ブロモ−1−メチルエチルカルボン酸アルキルエステルなど)および、N−ハロゲン化イミド(N−ブロモ−スクシイミドなど)が挙げられる。
有機ハロゲン化物(c)のうち、分子量分布制御の観点から好ましくは2−ヨード−エタノールである。
【0037】
[遷移金属原子に配位し得るNまたはP原子を有する化合物(d)]
本発明における、(b)を構成する遷移金属原子に配位し得るNまたはP原子を有する化合物(d)としては、ピリジン骨格含有化合物(d1)、トリフェニルホスフィン骨格含有化合物(d2)、トリアルキルホスフィン骨格含有化合物(d3)およびトリシクロアルキルホスフィン骨格含有化合物(d4)からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0038】
ピリジン骨格含有化合物(d1)としては、例えば 2,2’ビピリジン、5,5’ジメチルビピリジン、5,5’ジターシャリーブチルビピリジンおよび1,10フェナントロリンなどが挙げられる。
トリフェニルホスフィン骨格含有化合物(d2)としては、トリフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィンおよびトリメシチルホスフィンなどのトリアリールホスフィンなどが挙げられる。
トリアルキルホスフィン骨格含有化合物(d3)としては、トリエチルホスフィンなどが挙げられる。
トリシクロアルキルホスフィン骨格含有化合物(d4)としては、トリシクロヘキシルホスフィンおよびトリシクロペンチルホスフィンなどが挙げられる。
【0039】
本発明における水溶性(共)重合体の重合開始機構は、スチレンやMMAなどの遷移金属触媒によるリビングラジカル重合と同様と考えられる。即ち、まず、(d)は(b)に配位し、水溶液中で安定な遷移金属錯体を形成し、その後、活性エネルギー線によって(c)と反応することによりラジカルが生成するものと考えられる。
本発明における重合機構は、(b)、(d)および(c)から生成したラジカルと(a)が連鎖的に反応することである。その際の分子量分布制御は、ラジカル成長末端が安定成長末端(ドーマント)となっており、可逆的な付加−脱離を繰り返すことで重合体の分子量制御ができる。本発明の光リビングラジカル重合によって製造された水溶性(共)重合体(A)は、分子量分布が狭く、かつ低分子量成分の少ない水溶性(共)重合体であり、高分子凝集剤としての性能に優れ、特に、形成されるフロック強度が大きくなり易く、脱水効果に優れるという効果を奏する。
本発明における(a)、(b)、(c)および(d)の添加方法(添加順序)は特に限定しないが、上記反応機構の観点から、好ましくは、まず(d)と(b)を混合し、錯体を形成した後、(c)と(a)の混合物と、(d)と(b)の混合物を均一化する方法が好ましい。
【0040】
重合性モノマーの重量に基づく(b)、(c)および(d)割合は、目的物である重合体の分子量に応じて適宜決定されるが、(b)または(c)の量が少なすぎると重合体の分子量分布の制御が難しくなり、多すぎると重合体が得られにくくなるため、好ましくは(b)が0.001〜1%、さらに好ましくは0.01〜0.1%、(c)が好ましくは0.001〜0.1%、さらに好ましくは0.01〜0.05%、および(d)が好ましくは0.001〜0.1%、さらに好ましくは0.01〜0.05%である。
【0041】
また、(d)と(b)のモル比[(d)/(b)]は、分子量分布制御の観点から好ましくは0.1〜10、さらに好ましくは0.5〜5である。
【0042】
本発明における水溶性(共)重合体(A)の製造に使用できる活性エネルギー線としては、紫外線および電子線などが挙げられ、好ましいのは紫外線である。
具体的な重合操作としては、例えば、ガラス製反応容器に重合性モノマー、(c)および重合溶媒を仕込み、室温で攪拌し、モノマー溶液を調製する。一方、別の容器、例えば滴下ロートなどに(b)、(d)および重合溶媒を仕込み、室温で充分に攪拌して錯体形成させる。その後、反応容器内を十分に不活性ガスで置換(溶存酸素濃度100ppb以下)しながら、滴下漏斗中の混合液を5〜60分かけて滴下する。滴下後、300〜700nmの紫外線照射を行い重合させる。重合中はガラス製容器内を室温〜60℃で温調し、重合を完結させ、得られたゲル状物をミンチ機で粉砕後、循風乾燥機中で乾燥し、粒状の水溶性共重合体を得ることができる。
【0043】
ガラス製反応容器としては、例えば、UV透過ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス等の硬質ガラス、および石英ガラス等の軟質ガラスを利用することができる。重合溶媒としては、ラジカル重合で一般に使用される水性溶媒および有機溶媒を使用することができるが、水性溶媒が好ましく、水特にイオン交換水が好ましい。必要によりこれらと親水性有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等との混合溶媒も使用できる。重合溶媒の使用量としては適宜調節すればよいが、重合性モノマーの濃度が好ましくは20〜80%、さらに好ましくは25〜70%となるような量であり、重合性モノマーの濃度が20%以上であれば高分子量化しやすく、80%以下であれば重合温度の制御がし易い。不活性ガスとしては、窒素、アルゴンおよびヘリウム等を挙げることができる。好ましくは、アルゴンおよび窒素、特に好ましくは窒素である。
【0044】
紫外線を照射するために用いられるランプ類としては、波長300〜700nmに発光分布を有するものが好適に用いられ、その例としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、クリプトンランプおよび日光等が挙げられる。また、照射する光源と、カットオフフィルター、減光フィルターまたは溶液フィルターを組み合わせることで、照射波長の領域を制御して行うこともできる。
【0045】
紫外線照射中の反応温度および反応時間は、得られるリビングラジカルポリマーの分子量或いは分子量分布により適宜調節すればよい。反応温度は60℃以下が好ましい。特に好ましくは、室温〜45℃である。反応時間は光の照射強度や照射波長により変化するため、特に制限はない。通常は1分〜100時間程度で行うことができる。好ましくは0.1〜30時間、さらに好ましくは0.1〜15時間である。このように低い重合温度及び短い重合時間であっても高い収率と精密な分子量分布を得ることができるのが、本発明の特徴である。この時、圧力は、通常、常圧で行われるが、加圧或いは減圧しても構わない。
【0046】
重合を完結させた後、得られたゲル状物を粉末もしくは粒子にする方法としては、重合後の含水ゲルをミンチ機などで細断して公知の乾燥機(バンド式乾燥機および遠赤外線式乾燥機など)を用い加熱(温度80〜120℃)して乾燥し、公知の粉砕機〔奈良式粉砕機[奈良機械(株)製]およびロール式粉砕機等〕を用いて粉砕し体積平均粒径100〜2,000μmの粉末もしくは粒子状にする方法等が挙げられる。
【0047】
本発明における(A)のその他の製造方法としては、移動する基体上に光開始剤を含む重合性モノマー水溶液を層状となるように供給し、この層状とされた重合性モノマー水溶液に光を照射して重合し、重合体を連続的に製造する方法が挙げられる(例えば、特公平5−32410号公報および特公平6−804号公報参照)。この場合、可動式の連続ベルト上の一端からモノマー水溶液を供給し、光を照射して重合させ、得られた水性ゲルを他端から連続的に取り出すことができる。また、基体上での光重合により得た水性ゲルを基体から容易に剥離する目的で、基体上に非粘着性のフィルムを敷いて、その上にモノマーまたはその水溶液を層状に供給して重合してもよい。
【0048】
本発明の水溶性(共)重合体(A)の形態は、粉末状(例えば破砕状、真球状および葡萄房状)、フィルム状、水溶液状、w/oエマルション状または懸濁液状等公知の任意形態でよい。
【0049】
[高分子凝集剤(X)]
本発明の高分子凝集剤(X)は、必須成分として前記水溶性(共)重合体(A)の1種以上を含有してなるが、必要に応じ本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の水溶性(共)重合体(B)を含有してもよい。
(B)としては、前記(a)として例示された水溶性不飽和モノマーのうちの1種以上を必須構成単位とし、(A)とは異なる製造方法で製造された水溶性(共)重合体などが挙げられる。併用する(B)の割合は、(A)と(B)の合計の重量に基づいて通常50%以下、好ましくは30%以下である。
(B)の製造方法は(A)の製造方法と異なれば特に限定はなく、例えば通常の水溶液重合、逆相懸濁重合、沈澱重合および逆相乳化重合、並びに本発明以外の触媒による光重合等のラジカル重合法を用いることができる。これらのうち工業的観点から好ましいのは通常の水溶液重合、逆相懸濁重合および逆相乳化重合、さらに好ましいのは通常の水溶液重合および逆相懸濁重合である。
なお、(A)および(B)を順不同に別々に添加する場合も本願発明の高分子凝集剤(X)の発明に含まれる。
【0050】
また、本発明の高分子凝集剤(X)は必要に応じ、本発明の効果を阻害しない範囲で、さらに消泡剤、キレート化剤、pH調整剤、界面活性剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤および防腐剤からなる群から選ばれる添加剤を含有させることができる。
【0051】
上記添加剤の使用量は、(A)の重量、または(A)と必要により加える(B)との合計重量に基づいて、消泡剤は通常5%以下、好ましくは1〜3%、キレート化剤は通常30%以下、好ましくは2〜10%、pH調整剤は通常10%以下、好ましくは1〜5%、界面活性剤およびブロッキング防止剤はそれぞれ通常5%以下、好ましくは1〜3%、酸化防止剤、紫外線吸収剤および防腐剤はそれぞれ通常5%以下、好ましくは0.1〜2%である。
【0052】
本発明の高分子凝集剤(X)の形態は、粉末状(例えば破砕状、真球状および葡萄房状)、フィルム状、水溶液状、w/oエマルション状または懸濁液状等公知の任意形態でよい。
【0053】
本発明の高分子凝集剤は、従来にない特異的な凝集効果やろ液の清澄性向上効果を示すことから、下水等の汚泥または工場廃水の処理で生じた有機性汚泥または無機性汚泥の脱水処理用高分子凝集剤として用いることができ、とくに有機性汚泥の脱水処理用として好適に用いられる。
【0054】
[高分子凝集剤(X)を用いた汚泥または廃水の処理方法]
本発明の汚泥または廃水の処理方法は、前記高分子凝集剤(X)を汚泥または廃水に添加、混合してフロックを形成させ、固液分離を行う方法である。本発明の処理方法により、凝集性能、すなわち高フロック強度、フロックの粗大化および脱水ケーキの低含水率化などが発揮し易くなる。
【0055】
また、(X)を汚泥または廃水に適用する際には、本発明の効果を阻害しない範囲で公知の無機凝結剤や有機凝結剤を1種または2種以上併用してもよい。これらを併用する場合は、
(i)(X)に予め添加しておく方法、
(ii)(X)の添加時に同時に添加する方法、
(iii)無機凝結剤および/または有機凝結剤を、(X)とは別にそれらの添加の前および/または後に順序不同で汚泥または廃水に添加する方法、
のいずれを採用してもよい。これらのうち凝集性能の観点から好ましいのは、(iii)のうち無機凝結剤および/または有機凝結剤を初めに汚泥または廃水に添加する方法である。
【0056】
無機凝結剤としては、例えば硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸鉄および消石灰が挙げられる。有機凝結剤としては、例えばエピハロヒドリンとアミンとの重縮合体(もしくはその塩酸塩、以下塩酸塩と略記)、エピハロヒドリンとアルキレンジアミンとの重縮合体(塩酸塩)、ポリエチレンイミン(塩酸塩)、アルキレンジハライド−アルキレンポリアミン重縮合体(塩酸塩)、アニリン−ホルムアルデヒド重縮合体(塩酸塩)、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリビニルピリジン(塩酸塩)、(ジ)メチルジ(メタ)アリルアンモニウムクロライドおよびポリビニルイミダゾリン(塩酸塩)が挙げられる。これらの無機凝結剤および有機凝結剤はそれぞれの1種または2種以上用いても、あるいは両者を併用してもいずれでもよい。
【0057】
該凝結剤を予め(X)に添加しておく場合の使用量は、(X)の重量に基づいて、無機凝結剤は通常100%以下、凝集性能の観点から好ましくは5〜50%、さらに好ましくは10〜30%、有機凝結剤は通常20%以下、同様の観点から好ましくは1〜10%、さらに好ましくは2〜5%である。
【0058】
無機凝結剤および/または有機凝結剤を(X)とは別に汚泥または廃水に添加する場合[上記(iii)の方法]の無機凝結剤および/または有機凝結剤の使用量は、汚泥または廃水の種類、懸濁している粒子の大きさ、および汚泥または廃水中の固形分含量(以下TSと略記)等によって異なるが、汚泥または廃水中のTSに基づいて、無機凝結剤では、フロック強度の観点から好ましい下限は0.5%、さらに好ましくは1%、とくに好ましくは2%、脱水ケーキ焼却後のスラッジ低減の観点から好ましい上限は10%、さらに好ましくは8%、とくに好ましくは5%であり、有機凝結剤では、フロック強度の観点から好ましい下限は0.01%、さらに好ましくは0.05%、とくに好ましくは0.1%、フロック粒径低下の観点から好ましい上限は5%以下、さらに好ましくは3%以下、とくに好ましくは1%である。
【0059】
また、本発明における高分子凝集剤(X)の汚泥または廃水への添加方法としては、特に限定はなく、(X)をそのまま汚泥または廃水に添加してもよいが、均一混合の観点から好ましいのは(X)を水溶液にした後に汚泥または廃水に添加する方法である。
(X)を水溶液として用いる場合は、その濃度(重量%)は好ましくは0.05〜3%、さらに好ましくは0.1〜1%である。溶解方法、溶解後の希釈方法は特に限定はないが、例えば予め秤りとった水をジャーテスター等の撹拌装置を用いて撹拌しながら、所定量の(X)を加え、数時間(約1〜4時間程度)撹拌して溶解させる方法等が採用できる。
【0060】
本発明の処理方法において汚泥または廃水に添加する際の(X)の使用量は、汚泥または廃水の種類、懸濁している粒子の含有量および該高分子凝集剤の分子量等によって異なり、とくに限定はされないが、汚泥または廃水中のTSに基づいて、フロック強度の観点から、好ましい下限は0.01%、さらに好ましくは0.1%、とくに好ましくは1%、最も好ましくは1.5%、脱水ケーキの含水率低減の観点から、好ましい上限は10%、さらに好ましくは8%、とくに好ましくは5%、最も好ましくは3%である。
【0061】
また上記の処理方法により形成されたフロック状の汚泥の脱水方法(固液分離法)としては、例えば重力沈降、膜ろ過、カラムろ過、加圧浮上、および濃縮装置(例えばシックナー)および脱水装置(例えば遠心脱水機、ベルトプレス脱水機、フィルタープレス脱水機およびキャピラリー脱水機)を用いる方法が挙げられる。これらのうち本発明の高分子凝集剤の特異的な凝集性能である高フロック強度の観点から好ましいのは、脱水装置、とくに遠心脱水機、ベルトプレス脱水機およびフィルタープレス脱水機を用いる方法である。
【0062】
本発明の高分子凝集剤(X)の、汚泥または廃水処理用途以外のその他の用途としては、例えば掘削・泥水処理用凝集剤、製紙用薬剤(製紙工業用地合形成助剤、濾水歩留向上剤、濾水性向上剤および紙力増強剤等)、原油増産用添加剤(原油の二、三次回収用添加剤)、分散剤、スケール防止剤、凝結剤、脱色剤、増粘剤、帯電防止剤および繊維用処理剤が挙げられる。
【実施例】
【0063】
以下実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例中のモル%以外の%は重量%を示し、共重合比はモル比を表す。
以下において、固有粘度[η](dl/g)は1N−NaNO水溶液中、30℃で測定した値である。
高分子凝集剤のコロイド当量値および固形分含量は、前記の方法によって測定した。
汚泥または廃水中のTS(固形分含量)、有機分(強熱減量)は、下水道試験方法(日本下水道協会、1984年度版)記載の分析方法に準じて測定した。また、本実施例中のフロック粒径、ろ液量、ろ布剥離性、ケーキ含水率、は以下の方法に従って評価した。
【0064】
(1) フロック粒径(単位:mm)
ジャーテスター[宮本理研工業(株)製、形式JMD−6HS−A]に板状の塩ビ製撹拌羽根(直径5cm、高さ2cm、厚さ0.2cm)2枚を十字になるように上下に連続して撹拌棒に取り付け、汚泥または廃水200部を500mlのビーカーに取り、ジャーテスターにセットした。ジャーテスターの回転数を120rpmにし、ゆっくり汚泥または廃水を撹拌しながら、所定量の0.2%の高分子凝集剤水溶液を一気に添加し、30秒間撹拌した後、撹拌を止め凝集物の大きさを目視にて観察した(回転数120rpmでのフロック粒径を表中に示す)。続いて回転数を300rpmにセットし、さらに30秒間撹拌した後、撹拌を止め凝集物の大きさを再度目視にて観察した(回転数300rpmでのフロック粒径を表中に示す)。
【0065】
(2) ろ液量(単位:mL)
T−1189のナイロン製ろ布[敷島カンバス(株)製、円形状、直径9cm]、ヌッチェ漏斗、300mlが測れるメスシリンダーをセットし、上記フロック粒径試験後の汚泥を一度に投入して濾過し、ストップウォッチを用いて投入直後から60秒後のろ液量を測定し処理速度を評価した。
(3) ろ布剥離性
濾過した汚泥の一部をスパーテルで取り出し、プレスフィルター試験機を用いて脱水試験(2kg/cm、60秒)を行い、試験後のろ布からの脱水ケーキの剥離性を下記の基準に従って評価した。
◎:非常に剥がれやすい(ろ布付着物ほとんどなし)
○:剥がれやすい (わずかにろ布付着物あり)
△:多少剥がれにくい (ろ布付着物あり、わずかにろ布内部まで付着)
×:剥がれにくい (ろ布内部まで付着)
【0066】
(4) ケーキ含水率(単位:%)
上記ろ布剥離性試験後の脱水ケーキ約3.0gをシャーレに秤量(W3)して、循風乾燥機中で完全に水分が蒸発するまで(105±5℃で8時間)乾燥させた後、シャーレ上に残った乾燥ケーキの重量を(W4)として、次式からケーキ含水率を算出した。
ケーキ含水率(重量%)={(W3)−(W4)}×100/(W3)
【0067】
製造例1
滴下漏斗および窒素導入管を有するガラス製反応容器に、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロライド4級アンモニウム塩(a−1)の80%水溶液74部(40mol%)、アクリルアミド(a−2)の50%水溶液65部(60mol%)、イオン交換水237部、およびN−ブロモスクシイミド(c−1)0.00917部(0.01%対モノマー)を加え、室温(20〜25℃)で攪拌した。一方、滴下漏斗に臭化銅(I)(b−1)0.00917部(0.01%対モノマー)、2,2’ビピリジル(d−1)0.095部(0.10%対モノマー)およびイオン交換水10部を加え、室温(20〜25℃)で30分攪拌し懸濁混合液を調製した。反応容器内を十分に窒素(純度99.999%以上。以下同じ。)で置換(溶存酸素濃度100ppb以下)しながら、滴下漏斗中の混合液を10分間かけて滴下した。滴下後、365nmの紫外線照射を行い重合させた。重合中はガラス製容器内を45℃で10時間温調し重合を完結させた。重合後、得られたゲル状物をミンチ機で粉砕後、50℃の循風乾燥機中で15時間乾燥し、水溶性共重合体(A−1)を85部(収率86%、固形分含量93.2%)を得て、これを高分子凝集剤(X−1)とした。
【0068】
製造例2
製造例1において、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロライド4級アンモニウム塩(a−1)の80%水溶液74部(40mol%)およびアクリルアミド(a−2)の50%水溶液65部(60mol%)に代えて、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライド4級アンモニウム塩(a−3)の80%水溶液115部(100mol%)、N−ブロモスクシイミド(c−1)0.00917部(0.01%対モノマー)に代えて、ブロモ酢酸(c−2)0.0917部(0.01%対モノマー)、臭化銅(b−1)0.00917部(0.01%対モノマー)に代えて、ペンタカルボニルモリブデン(b−2)0.00917部にし、2,2’ビピリジル(d−1)0.095部(0.10%対モノマー)に代えてトリフェニルホスフィン(d−2)0.00966部(0.01%対モノマー)を用いた以外は製造例1と同様にして、水溶性共重合体(A−2)を90部(収率90%、固形分含量92.2%)を得て、これを高分子凝集剤(X−2)とした。
【0069】
製造例3
製造例1において、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロライド4級アンモニウム塩(a−1)の80%水溶液74部(40mol%)およびアクリルアミド(a−2)の50%水溶液65部(60mol%)に代えて、(a−1)58部、(a−2)51部、(a−3)の80%水溶液10部およびアクリル酸(a−4)の80%水溶液12部とし、さらにN−ブロモスクシイミド(c−1)0.00917部(0.01%対モノマー)に代えて、2−ヨードエタノール(c−3)0.000895部(0.001%対モノマー)、臭化銅(b−1)0.00917部(0.01%対モノマー)に代えて、シクロペンタジエニルヨウ化鉄(b−3)0.000895部(0.001%対モノマー)、2,2’ビピリジル(d−1)0.095部(0.10%対モノマー)に代えてジエチレントリアミン(d−3)0.0019部(0.002%対モノマー)を用いた以外は製造例1と同様にして、水溶性共重合体(A−3)を90部(収率93%、固形分含量92.2%)を得て、これを高分子凝集剤(X−3)とした。
【0070】
製造例4
製造例1において、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロライド4級アンモニウム塩(a−1)の80%水溶液74部(40mol%)およびアクリルアミド(a−2)の50%水溶液65部(60mol%)に代えて、(a−2)86部(80mol%)およびアクリル酸(a−4)の80%水溶液14部(20mol%)とし、さらに2,2’ビピリジル(d−1)0.095部(0.10%対モノマー)に代えて(d−1)0.0011部(0.0012%対モノマー)を用いた以外は製造例1と同様にして、水溶性共重合体(A−4)を86部(収率88%、固形分含量94.2%)を得て、これを高分子凝集剤(X−4)とした。
【0071】
比較例1
製造例1において、N−ブロモスクシイミド(c−1)0.00917部(0.01%対モノマー)に代えて、ジ−t−ブチルアミンオキシラジカル(DBN)0.015部(0.016%対モノマー)をメタノール1.0部に溶解した溶液とし、(b−1)および(d−1)を加えなかった以外は製造例1と同様にして、水溶性共重合体(比A−1)を86部(収率87%、固形分含量93.2%)を得て、これを高分子凝集剤(比X−1)とした。
【0072】
比較例2
製造例2において、ブロモ酢酸(c−2)0.0917部(0.01%対モノマー)に代えて、ジ−t−ブチルアミンオキシラジカル(DBN)0.015部(0.016%対モノマー)をメタノール1.0部に溶解した溶液とし、(b−2)および(d−2)を加えなかった以外は製造例2と同様にして、水溶性共重合体(比A−2)を85部(収率87%、固形分含量93.5%)を得て、これを高分子凝集剤(比X−2)とした。
【0073】
比較例3
製造例3において、2−ヨードエタノール(c−3)0.000895部(0.001%対モノマー)に代えて、ジ−t−ブチルアミンオキシラジカル(DBN)0.0015部(0.016%対モノマー)をメタノール1.0部に溶解した溶液とし、(b−3)および(d−3)を加えなかった以外は製造例3と同様にして、水溶性共重合体(比A−3)を80部(収率83%、固形分含量92.3%)を得て、これを高分子凝集剤(比X−3)とした。
【0074】
比較例4
製造例4において、N−ブロモスクシイミド(c−1)0.00917部(0.01%対モノマー)に代えて、ジ−t−ブチルアミンオキシラジカル(DBN)0.0015部(0.016%対モノマー)をメタノール1.0部に溶解した溶液とし(b−3)および(d−3)を加えなかった以外は製造例4と同様にして、水溶性共重合体(比A−4)を84部(収率85%、固形分含量93.2%)を得て、これを高分子凝集剤(比X−4)とした。
【0075】
比較例5
製造例1において、(c−1)、(b−1)および(d−1)を加えなかった以外は製造例1と同様にして、水溶性共重合体(比A−5)を87部(収率88%、固形分含量93.2%)を得て、これを高分子凝集剤(比X−5)とした。
【0076】
比較例6
製造例2において、(c−2)、(b−2)および(d−2)を加えなかった以外は製造例2と同様にして、水溶性共重合体(比A−6)を88部(収率89%、固形分含量93.1%)を得て、これを高分子凝集剤(比X−6)とした。
【0077】
比較例7
製造例3において、(c−3)、(b−3)および(d−3)を加えなかった以外は製造例3と同様にして、水溶性共重合体(比A−7)を85部(収率90%、固形分含量94.2%)を得て、これを高分子凝集剤(比X−7)とした。
【0078】
比較例8
製造例4において、(c−4)、(b−4)および(d−4)を加えなかった以外は製造例4と同様にして、水溶性共重合体(比A−8)を85部(収率86%、固形分含量93.0%)を得て、これを高分子凝集剤(比X−8)とした。
【0079】
上記で得られた高分子凝集剤について表1に示す。表1中の記号の内容は下記のとおりである。
DAAQ(a−1) :N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートのメチル
クロライド4級アンモニウム塩
AAm (a−2) :アクリルアミド
DAMQ(a−3) :N,N−ジメチルアミノエチルメタアクリレートの
メチルクロライド4級アンモニウム塩
AAc (a−4) :アクリル酸
(b−1) :臭化銅(I)
(b−2) :ペンタカルボニルモリブデン
(b−3) :シクロペンタジエニルヨウ化鉄
(c−1) :N−ブロモスクシイミド
(c−2) :ブロモ酢酸
(c−3) :2−ヨードエタノール
(d−1) :2,2’ビピリジン
(d−2) :トリフェニルホスフィン
(d−3) :ジエチレントリアミン
(DBN) :ジ−t−ブチルアミンオキシラジカル
【0080】
【表1】

【0081】
<凝集性能評価>
実施例1、比較例9〜10
(X−1)、(比X−1)または(比X−5)をそれぞれイオン交換水に溶解して固形分含量が0.2%の水溶液とした。Z食品工場から採取した余剰汚泥[pH6.8、TS1.4%、有機分50%。以下同じ。]を200部ずつ5個の別々の500mLビーカーに採り、撹拌下で、(X−1)、(比X−1)または(比X−5)のそれぞれの水溶液30部を3個のビーカーに加え、それぞれのビーカーについて前記評価方法(1)に従って混合処理した。〔この時の(X−1)、(比X−1)および(比X−5)の固形分添加量は2.1%/TS〕。これらの処理物について前記評価方法(1)〜(4)に従ってフロック粒径、ろ液量、ろ布剥離性、およびケーキ含水率を評価した。結果を表2に示す。
【0082】
【表2】

【0083】
実施例2、比較例11〜12
(X−2)、(比X−2)または(比X−6)をそれぞれイオン交換水に溶解して固形分含量が0.2%の水溶液とした。M食品工場から採取した余剰汚泥[pH6.8、TS1.8%、有機分50%。以下同じ。]を200部ずつ3個の別々の500mLビーカーに採り撹拌下で、(X−2)、(比X−2)または(比X−6)それぞれの水溶液30部を3個のビーカーに加え、それぞれのビーカーについて前記評価方法(1)に従って混合処理した。〔この時の(X−2)、(比X−2)および(比X−6)の固形分添加量は2.5%/TS〕。これらの処理物について前記評価方法(1)〜(4)に従ってフロック粒径、ろ液量、ろ布剥離性、およびケーキ含水率を評価した。結果を表3に示す。
【0084】
【表3】

【0085】
実施例3、比較例13〜14
(X−3)、(比X−3)または(比X−7)をそれぞれイオン交換水に溶解して固形分含量が0.2%の水溶液とした。T下水処理場から採取した余剰汚泥[pH6.0、TS2.6%、有機分71%]を200部ずつ3個の別々の500mLビーカーに採り、上記各水溶液50部を用いて前記と同様に混合処理した〔この時の(X−3)、(比X−3)および(比X−7)の固形分添加量は2.5%/TS〕。これらの処理物について前記と同様に評価した。結果を表4に示す。
【0086】
【表4】

【0087】
実施例4、比較例15〜16
(X−4)、(比X−4)または(比X−8)をそれぞれイオン交換水に溶解して固形分含量が0.2%の水溶液とした。G下水処理場から採取した消化汚泥を200部ずつ3個の別々の500mLビーカーに採り、(X−4)、(比X−4)または(比X−8)それぞれの水溶液45部を用いて前記と同様に混合処理した〔この時の(X−4)、(比X−4)および(比X−8)の固形分添加量は2.4%/TS〕。これらの処理物について前記と同様に評価した。結果を表5に示す。
【0088】
【表5】

【0089】
表2〜5の結果から、本発明の高分子凝集剤は、比較のものに比べて、大粒径の粗大フロックを形成し、高撹拌下(300rpm)でも一旦形成されたフロックが壊れにくく(フロックが強固)、ろ布剥離性および脱水性(ケーキ含水率)のいずれにおいても優れた効果を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の高分子凝集剤は、従来にない低添加量で高い処理速度と高い脱水率(すなわち低いケーキ含水率 )を示すことから、下水等または工場廃水等の有機性もしくは無機性汚泥または廃水の脱水処理用高分子凝集剤として用いることができ、とくに有機性汚泥の脱水処理用として好適に用いられる。
また、その他の用途としては、例えば掘削・泥水処理用凝集剤、製紙用薬剤(例えば製紙工業用地合形成助剤、濾水歩留向上剤、濾水性向上剤および紙力増強剤)、原油増産用添加剤(原油の二、三次回収用添加剤)、分散剤、スケール防止剤、凝結剤、脱色剤、増粘剤、帯電防止剤および繊維用処理剤が挙げられ、これらのうちとくに掘削・泥水処理用凝集剤、製紙用薬剤および原油増産用添加剤として好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性不飽和モノマー(a)を含有する重合性モノマーを、ハロゲン原子および/またはカルボニル基を有する遷移金属化合物(b)、有機ハロゲン化物(c)、並びに(b)を構成する遷移金属原子に配位し得るNまたはP原子を有する化合物(d)の存在下で活性エネルギー線を照射して重合させてなる水溶性(共)重合体(A)を含有してなる高分子凝集剤(X)。
【請求項2】
(b)を構成する遷移金属原子が、銅、モリブデンおよび鉄からなる群から選ばれる1種または2種以上である請求項1記載の高分子凝集剤(X)。
【請求項3】
(d)が、ピリジン骨格含有化合物、トリフェニルホスフィン骨格含有化合物、トリアルキルホスフィン骨格含有化合物およびトリシクロアルキルホスフィン骨格含有化合物からなる群から選ばれる1種以上である請求項1または2記載の高分子凝集剤(X)。
【請求項4】
重合性モノマーの重量に基づく割合が、(b)が0.001〜1%、(c)が0.001〜0.1%、および(d)が0.001〜0.1%である請求項1〜3のいずれか記載の高分子凝集剤(X)。
【請求項5】
(d)と(b)のモル比[(d)/(b)]が、0.1〜10である請求項1〜4のいずれか記載の高分子凝集剤(X)。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載の高分子凝集剤(X)を汚泥または廃水に添加、混合してフロックを形成させ、固液分離することを特徴とする汚泥または廃水の処理方法。

【公開番号】特開2012−210569(P2012−210569A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77112(P2011−77112)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】