説明

高周波ミシン

【課題】高周波電力制御により確実かつ均一な接着強度が得られるものでありながら、焼損や破孔等の不良事態の発生を防止できるとともに、曲線状部位や伸縮性繊維生地の接着加工にも十分に対応でき、しかも、効率よい接着加工を行なうことができる高周波ミシンを提供する。
【解決手段】生地載置板4上に載置された被加工材Hを、水平及び上下に合成運動する送り歯8と押え金12との協同作用により間欠的に移送するように構成され、送り歯8による移送停止中には一対の面状電極12,16間に所定の値の高周波電力を与えて、被加工材Hにおける繊維生地Wの重ね合わせ部間に挟まれている熱可塑性樹脂テープTを誘電加熱により溶融して繊維生地Wの重ね合わせ部を接着し、かつ、移送動作中には移送停止中よりも小さい値の高周波電力を面状電極12,16間に与える状態に切換える制御部45を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、綿や羊毛、絹等に代表される天然繊維、あるいは、ポリエステル、ナイロン、アクリル等に代表される合成繊維の布地(以下、本発明では、「繊維生地」という)を対象素材とし、この繊維生地の端部等を高周波による誘電加熱により溶融される熱可塑性樹脂テープを介して接着(溶着)することにより、例えば婦人服、子供服、紳士服等のアパレル品(衣料品)を製造加工するのに用いられる高周波ミシンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の高周波ミシンとして、被加工材自身が、例えば、塩化ビニル樹脂などの熱可塑性合成樹脂シートあるいは合成樹脂フィルムであって、その被加工材の重ね合わせ部を溶着するものは既に数多く開発され実用化されている。この高周波ミシンは、被加工材である樹脂シートあるいは樹脂フィルムを重ね合わせ部の長手方向に沿って移送する移送手段と該手段により移送される樹脂シートあるいは樹脂フィルムの重ね合わせ部に高周波電力を与える一対の電極を備えさせるだけでよい。したがって、針糸(上糸)、ルーパ糸、下糸などの縫糸をレーシングやルーピングして縫目を形成することによって繊維生地を縫合する一般的な縫製ミシンに比べて、当該縫製ミシンが必要とする構成、例えば、繊維生地を縫製進行方向に移送する送り歯の他に、縫糸を繊維生地に貫通させる針及びその上下往復運動機構や、レーシングやルーピングを行わせるための下糸供給用の釜及びその作動機構あるいはルーパ糸供給用のルーパ及びその作動機構等といった縫いを構成するための複数の複雑な機構、部品の使用を省くことが可能で、ミシン全体の構造の簡素化が図れる。
【0003】
ところで、一般的な縫製ミシンに比べて、構造の簡素化が図れる既存の高周波ミシンにおいては、被加工材(熱可塑性の樹脂シートあるいは樹脂フィルム)を上下一対の電極ローラ間に挟んで連続的に一定方向に移送しながら、該一対の電極ローラ間に高周波電力を与えて被加工材自体を高周波誘電加熱により溶融して被加工材の重ね合わせ部を接着する手段が採用されていた(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
また、被加工材を挟んで一定方向に移送する上下一対の電極ローラを、一方向伝動クラッチを介装した運動変換機構を介して駆動モータに連動連結することで、一対の電極ローラを間欠回転させるように構成した高周波ミシンも提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特開平6−218819号公報
【特許文献2】 特開平6−155576号公報
【特許文献3】 特許第4022539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1〜3に開示されている従来の高周波ミシンは何れも、一対の電極ローラの接触部分が、ローラの幅だけの線接触(被加工材の移送方向でみた場合は点接触)となる。このような線接触あるいは点接触条件下においても、確実な接着強度が得られるようにするためには、印加する高周波電力を高く設定するか、被加工材の移送速度を遅くするかのいずれかの手段を採らねばならない。高周波電力を高くする手段を採用した場合は、その高い高周波電圧により発生される熱が線あるいは点接触部に集中作用するために、被加工材が絶縁破壊されて焼損や破孔(孔明き)などの不良箇所を生じやすい。特に、被加工材が本発明の対象とする薄い繊維生地である場合は、焼損範囲が瞬間的に拡大しやすいために、多くの不良製品が製造されてしまうといった問題がある。また、高周波電力を低めに設定して一対の電極ローラによる移送速度を遅くする手段を採用した場合は、加工効率が極端に低下するという問題がある。このような線あるいは点接触に起因する問題は、特許文献3に開示されているように、一対の電極ローラを間欠回転させる構成を採用した場合であっても、同様に発生し、不良製品の発生や加工効率の低下は避けられない。
【0007】
また、繊維生地を対象素材としてアパレル品を製造加工するにあたっては、例えば婦人用下着等に見られるように曲線状部位の接合を要するケースが多い。また、伸縮性のある繊維生地を使用するケースも多い。アパレル品の製造に用いられるミシンにおいては、このような曲線状部位の接合にも伸縮性繊維生地の接合にも対応可能であることが要望される。しかしながら、被加工材を一対の電極ローラ間に挟んで一定方向に直線移送する従来の高周波ミシンでは、曲線状部位の接合や伸縮性生地の接合には十分に対応しきれない。即ち、一対の電極ローラを用いた従来の高周波ミシンは、樹脂シートのような非伸縮性の被加工材を直線的に移送しながら重ね合わせ部を接着加工するには適しているものの、繊維生地を対象素材とし、曲線状部位の接合や伸縮性素材を使用することが多いアパレル品の製造加工には不向きで、従来の高周波ミシンをそのまま繊維生地の接合に転用することは実質的に不可能と言える。
【0008】
本発明は上述の実情に鑑みてなされたもので、高周波電力を用いて確実かつ均一な接着強度が得られるものでありながら、焼損や破孔などが生じた不良製品の製造加工を防止できるとともに、曲線状部位や伸縮性繊維生地の接着加工にも十分に対応でき、しかも、効率のよい接着加工を行なうことができる高周波ミシンを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために案出された本発明に係る高周波ミシンは、繊維生地の重ね合わせ部間に熱可塑性樹脂テープを挟み込んだ被加工材を摺接移動可能に載置する生地載置板と、この生地載置板の下部に配置されて水平運動と上下運動の組み合わせによって生地載置板上に載置された被加工材を水平面に沿って特定方向へ間欠的に移送する送り歯と、この送り歯と協同して被加工材を前記特定方向へ移送するとともに被加工材が浮かないように押える押え金と、前記生地載置板の上部に配置された上部の面状電極及び前記生地載置板の下部で該前記生地載置板の上面と面一の状態に配置された下部の面状電極とを備え、前記上部及び下部の一対の面状電極間に高周波電力を与えることによって、前記熱可塑性樹脂テープを高周波誘電加熱により溶融して繊維生地の重ね合わせ部を連続的に接着可能に構成している高周波ミシンであって、前記送り歯が被加工材を移送動作中であるか移送停止中であるかを検出する移送センサと、該移送センサにより送り歯が被加工材の移送停止中であることを検出したときには、前記一対の面状電極間に所定の値の高周波電力を与え、かつ、送り歯が被加工材の移送動作中であることを検出したときには、前記移送停止中の場合よりも小さい値の高周波電力を与えるように、一対の面状電極に印加する高周波電力の値を移送停止中と移送動作中とにおいて自動的に切換え制御する高周波電力制御部と、を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成された本発明の高周波ミシンによれば、一般的な縫製ミシンが備えている送り歯と押え金の協同作用により、繊維生地を含む被加工材を水平面に沿って間欠移送しつつ、その移送停止時に上下一対の面状電極間に与えられる高周波電力による熱を繊維生地の重ね合わせ部間に挟み込まれた熱可塑性樹脂テープに伝達して、樹脂テープを面状、つまり、一定面積毎に溶融させて繊維生地の重ね合わせ部を順次接着させることが可能であるとともに、同一箇所を繰り返し接着させることが可能である。そのため、比較的低い高周波電力を与えての繰り返し接着により確実かつ均一な接着強度が得られるものでありながら、高周波電力により発生される熱を、線あるいは点接触部に集中させることなく、一対の電極の面接触部に分散させることができる。したがって、高周波電力による熱が極小面積部に集中することに起因する繊維生地の焼損や破孔(孔明き)などの不良箇所の発生を回避することができ、既述したような確実かつ均一な接着強度が得られることと相俟って、対象素材が熱に弱い繊維生地であっても、仕上がりのよいアパレル製品を確実に製造加工することができる。
【0011】
また、被加工材の間欠移送手段として、一般的な縫製ミシンの場合と同様に、水平運動と上下運動の組み合わせによって生地載置板上に載置された被加工材を水平面に沿って特定方向へ間欠的に移送する送り歯と、この送り歯による移送時に被加工材が浮き上がらないように該被加工材を生地載置板側に押える押え金との協同作用による移送手段を採用しているので、移送停止時に下降する押え金の押し付け力に抗して被加工材を任意に方向転換することが可能であって、直線に限らず容易かつ自由に曲線移送させることができる。また、伸縮性のある繊維生地を対象とする場合であっても、その繊維生地に余分な挟圧力を加えることがなく、自然の状態のままで移送させることができる。したがって、曲線状部位が多く、また、伸縮性のある繊維生地素材を用いることの多いアパレル品の製造加工にも十分に対応させることができる。
【0012】
しかも、移送センサを用いて、被加工材が移送動作中であることを検出したとき、移送停止中に電極に印加する高周波電力の値、つまり、繊維生地の重ね合わせ部を誘電加熱により接着可能な値よりも小さい値の高周波電力を電極に与えるように切換え制御することによって、移送停止から移送動作への切換え時に一対の電極間に与えられる高周波電力は小さいために、一対の電極間でスパークが発生しそれが原因で繊維生地が焼損したり破孔(孔明き)したりするなどの不良箇所の発生を十分に抑制することができると共に、移送動作中にも移送停止中よりは小さいながら高周波電力が与えられているために、移送動作から移送停止への切換え直後における一対の電極の誘電加熱による立ち上がり昇温スピードを速めることができる。これによって、作業者は曲線状部位の接着加工時などにおいて移送速度を任意かつ安全に低下させることが可能で、接着加工操作を非常に行いやすいと共に、直線部の接着加工時に被加工材の移送速度を速くした場合でも、樹脂テープを迅速に加熱溶融させて繊維生地の重ね合わせ部の接着を確実、強固なものとすることができる。したがって、歩留まりの悪化を招くことなく、接着加工効率の向上を図ることができるといった効果を奏する。
【0013】
上記高周波ミシンにおいて、前記上部及び下部の一対の面状電極のうち、上部の面状電極は、前記押え金により兼用構成されていることが好ましい(請求項2)。
この場合は、送り歯との協同により被加工材を間欠移送する押え金自体を上部の面状電極に兼用させることができるので、押え金とは別個に上部電極を設ける必要がない。そのため、構成部品の節減に止まらず、押え金の存在個所に別個に上部電極を配置したり、押え金を絶縁化したりするための特別な工夫も要らず、全体構造を簡単化し、コストの一層の低減も図りやすい。
【0014】
また、上記高周波ミシンにおいて、前記上部及び下部の一対の面状電極にはそれぞれ、予熱用ヒーターが付設されていることが望ましい(請求項3)。
この場合は、送り歯による移送停止時においても被加工材を予熱により所定の温度に保持することが可能であるため、移送停止時に電極に与える高周波電力をできるだけ低く設定してスパークの発生をより確実に防止しつつも、移送停止時の樹脂テープの溶融を迅速化、確実化して所定の接着加工を常に安定よく行なうことができる。
【0015】
また、上記高周波ミシンにおいて、前記移送センサの他に、前記送り歯による被加工材の移送速度を検出する速度センサを備え、前記高周波電力制御部は、前記速度センサにより検出される移送速度が速いほど移送停止中に与える高周波電力の値を大きくする制御を行なうように構成されていることが好ましい(請求項4)。
この場合は、移送停止中に与える高周波電力の値を移送速度が速いほど大きく制御することによって、誘電加熱による電極の昇温速度を被加工材の移送速度にほぼ比例した速度に保つことができるので、接着不良、接着不全などを生じることなく、接着加工効率の向上を図ることができる。
【0016】
また、上記高周波ミシンにおいて、前記移送センサの他に、前記送り歯による被加工材の移送速度を検出する速度センサを備え、前記高周波電力制御部は、前記速度センサにより検出される移送速度にかかわらず移送停止中に最大移送速度での繊維生地の重ね合わせ部の接着が可能な一定値の高周波電力を一定時間与える制御を行なうように構成されていてもよい(請求項5)。
この場合は、被加工材の移送停止中には一定値の高周波電力を一定時間与えることにより、移送速度の変化にかかわらず、所定どおりの接着加工を確実に行なうことができるとともに、繊維生地の種類や耐熱性に対応させるための高周波電力の調整も容易に行なうことができる。
【0017】
また、上記高周波ミシンにおいて、前記移送センサ及び速度センサは、ミシン主軸に取り付けられて前記送り歯による被加工材の間欠移送の回転位相を検出する回転位相センサで兼用されていることが好ましい(請求項6)。
この場合は、ミシン主軸に単一の回転位相センサを取り付けるだけで、移送センサ及び速度センサの機能を発揮させることができるので、両センサを個別に設ける場合に比べて、構造の簡素化、低コストを図ることができるとともに、両センサによる検出タイミングのずれをなくして、両センサの検出結果に基づく高周波電力の調整などを正確かつ適切に行うことができる。
【0018】
さらに、上記高周波ミシンにおいて、前記移送センサ及び速度センサに加えて、被加工材が前記送り歯上に載置されたか否かを検出する被加工材センサを備え、この被加工材センサが被加工材の載置を検出しているときは、前記高周波電力制御部による制御動作が行われ、被加工材の載置を検出しないときは、前記高周波電力制御部による制御動作が行われないように構成されていることが好ましい(請求項7)。
この場合は、被加工材が送り歯上に載置されていない状態で誤って高周波電力が与えられという不都合や不良自体の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る高周波ミシン全体を、その一部を破断して示す外観斜視図である。
【図2】同上ミシンの要部の拡大斜視図である。
【図3】同上ミシンの要部の拡大縦断側面図である。
【図4】同上ミシンにおける送り歯の構成を示す分解斜視図である。
【図5】同上ミシンにおける上部の面状電極の取り付け状態を説明する分解斜視図である。
【図6】同上ミシンにおける下部の面状電極の取り付け状態を説明する分解斜視図である。
【図7】同上ミシンにおける制御系の構成を示すブロック図である。
【図8】同上ミシンにおける制御動作の一例を示すタイミングチャートである。
【図9】同上ミシンにおける制御動作を説明するフローチャートである。
【図10】同上ミシンにおける制御動作の他の例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面にもとづいて説明する。
図1は本発明に係る高周波ミシン全体を、その一部を破断して示す外観斜視図、図2は同ミシンにおける要部の拡大斜視図、図3は同ミシンにおける要部の拡大縦断側面図、図4は同ミシンが有する送り歯の構成を示す分解斜視図である。図1〜図3において、1はミシン本体であり、このミシン本体1は、ミシンアーム部2とミシンベッド部3とにより構成されている。
【0021】
前記ミシンベッド部3の上壁部には、縫製生地Wを含む被加工材Hを摺接移動可能に載置する生地載置板(これは、縫製ミシンにおける針板に相当する。)4及び滑り板5がそれらの上面がミシンベッド部3の上面と略面一の状態で取り付けられている。前記生地載置板4は、例えば、ポリアミド、ポリアセタール、ABS、ポリカーボネート等の構造材で、かつ、耐摩耗性、耐食性、電気絶縁性及び耐熱性を有する材料であるエンジニアリングプラスチックから構成されている。この生地載置板4には、図2及び図6に示すように、互いに平行な四列のスロット状長孔6が貫通形成されている。この四列のスロット状長孔6のうち、生地載置板4の幅方向の中央部に位置する二列のスロット状長孔6aは、それらの長手方向の中間位置において、後述する下部の面状プラス電極16の設置用孔7を挟んで加工進行方向Xの前後二段に分断されている。前記四列の長孔6内には、水平方向運動と上下方向運動の組み合わせ(合成運動)によって生地載置板4上に載置された被加工材Hを水平面に沿って特定方向、即ち、加工進行方向Xへ間欠的に移送する送り歯8が設けられている。
なお、生地載置板4の構成材料としては、ポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂からなるスーパーエンジニアリングプラスチックを用いることが好ましい。この場合は、生地載置板4の耐熱性、耐摩耗性を一層向上することができる。
【0022】
前記送り歯8は、図4に明示するように、前後二段に分断されたスロット状長孔6aの前部長孔部分内で運動する短尺送り歯8aを含む前送り歯8Aと、スロット状長孔6aの後部長孔部分内で運動する短尺送り歯8bを含む後送り歯8Bとにより構成される。これら前送り歯8A及び後送り歯8Bは、例えば、ポリアミド、ポリアセタール、ABS、ポリカーボネート等の構造材で、かつ、耐摩耗性、耐食性、電気絶縁性及び耐熱性を有する材料であるエンジニアリングプラスチックから構成されているとともに、生地載置板4下部のミシンベッド部3内に設置されている前送り歯取付台9A及び後送り歯取付台9Bに止めネジ10A及び10Bを介して固定されている。
なお、前送り歯8A及び後送り歯8Bの構成材料としては、生地載置板4と同様に、ポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂からなるスーパーエンジニアリングプラスチックを用いることが好ましい。この場合は、前送り歯8A及び後送り歯8Bの耐熱性、耐摩耗性を一層向上することができる。
【0023】
また、前記前送り歯取付台9A及び後送り歯取付台9Bは、前送り歯8A及び後送り歯8Bが上記の合成運動を繰り返すように、ミシンベッド部3内に組み込まれた駆動機構に連動連結されている。この送り歯駆動機構は、一般的な縫製ミシンに採用されているものと全く同様な構成を有し、周知であるため、その駆動機構の具体的な構成の説明は省略する。
【0024】
前記生地載置板4の上部で、前記送り歯8の前送り歯8A及び後送り歯8Bに対向する箇所には、これら送り歯8(送り歯8の前送り歯8A及び後送り歯8B)と協同して被加工材Hを加工進行方向Xへ移送するとともに、被加工材Hが浮き上がらないように被加工材Hを送り歯8側に押える押え金12が配置されている。この押え金12は、ミシンアーム部2の先端部に上下往復移動可能に支持された押え杆13の下端部に取付金具14を介して固定されている。この押え杆13は、ミシンアーム部2内に組み込まれている駆動機構を介して、前記送り歯8による送り作用時には上昇移動して被加工材Hに対する押えを解除し、送り停止時には下降移動して押え金12によって被加工材Hを弾性的に押えるべく昇降移動可能に構成されている。
なお、押え杆13の昇降移動用駆動機構は、一般的な縫製ミシンに採用されているものと全く同様な構成を有し、周知であるため、その駆動機構の具体的な構成の説明は省略する。
【0025】
前記押え金12の押え面12aは、少なくとも送り歯8による送り作用幅以上の幅を有して形成されている。また、この押え金12の側面には、図5に示すように、高周波整合装置41(図7参照)から導出されたマイナス電極線15が接続されている。これによって、押え金12が、高周波発振器40から高周波整合装置41(図7参照)を経て高周波電力が付与される一対の電極のうち、上部の面状マイナス電極を兼用するように構成されている。これによって、押え金12で兼用される上部の面状マイナス電極は、送り歯8による被加工材Hの移送動作中は後述する下部の面状プラス電極から離間するように上昇移動し、かつ、送り歯8による被加工材Hの移送停止中は下部の面状プラス電極に接近するように下降移動可能に構成されている。
【0026】
前記生地載置板4の下部のミシンベッド部3の内部には、図2及び図6に示すように、上方に向けて開放された電極取付台17が固定されている。この電極取付台17の上面部に形成の凹溝17a内には、側面部に高周波整合装置41から導出されたプラス電極線19を接続した下部の面状プラス電極16が落とし込み嵌合され、かつ、止めネジ18を介して電極取付台17に固定されている。この下部の面状プラス電極16は、一定面積を有する電極面16aが前記生地載置板4に形成の設置用孔7に臨み、生地載置板4の上面と略面一になるように設置固定されている。
【0027】
また、図2及び図5に示すように、前記ミシンアーム部2に止めネジ29を介して固定された取付台20には、エンジニアリングブラスチック製の絶縁ブロック21が止めネジ22を介して固定され、この絶縁ブロック22に止めネジ23を介して固定されたカートリッジヒーター保持台24には、予熱用カートリッジヒーター25が差し込み保持されている。
【0028】
前記予熱用カートリッジヒーター保持台24の下方部には、二股状の上下摺動溝24aが形成されている一方、前記押え金で兼用される上部の面状マイナス電極12の加工進行方向Xの前面には、前記上下摺動溝24a内に係合可能な係合片部27aを有する熱伝導性部材27が止めネジ28を介して固定されている。この熱伝導性部材27の係合片部27aを予熱用カートリッジヒーター保持台24の上下摺動溝24a内に上下方向に相対摺動可能に係合させることにより、前記予熱用カートリッジヒーター25による予熱(加熱)熱量を熱伝導性部材27を通じて常に面状マイナス電極12に伝達し該マイナス電極12を高温に保持可能としている。
【0029】
更に、図6に示すように、前記電極取付台17に固定される下部の面状プラス電極16の水平基端部16b内には、予熱用カートリッジヒーター28が差し込み保持されている。これにより、予熱用カートリッジヒーター28による予熱(加熱)熱量を常に面状プラス電極16に伝達し該プラス電極16を高温に保持可能とされている。
なお、前記上部の面状マイナス電極12及び下部の面状プラス電極16の予熱温度を一定にフィードバック制御するために、予熱用カートリッジヒーター保持台24の側面及び下部の面状プラス電極16の側面にはそれぞれ熱(温度)センサ30及び31が取り付けられている。
【0030】
上記した各構成要素の他に、本発明に係る高周波ミシンは、高周波発振器40から一対の面状電極12,16間に付与する高周波電力の出力を制御するための機能構成として、図7に示すような構成が採用されている。
図7において、42は前記送り歯8が被加工材Hを移送動作中であるか移送停止中であるかを検出する移送センサ、43は前記送り歯8による被加工材Hの移送速度を検出する速度センサ、44は被加工材Hが生地載置板4の送り歯8上に載置されたか否かを検出する被加工材センサ、45は印加電圧制御部としての制御回路である。
【0031】
前記移送センサ42及び速度センサ43は、図1に示すように、ミシン本体1におけるミシンアーム部2内に駆動回転自在に支持されたミシン主軸46に取り付けられて前記送り歯8による被加工材Hの間欠移送の回転位相(ミシン主軸46の回転角度)を検出する単一の回転位相センサ47により兼用されている。この回転位相センサ47としては、例えば光電センサや磁気を利用した近接センサが用いられる。
【0032】
前記被加工材センサ44としては、図1及び図2に示すように、ミシンアーム部2の先端下端部に取り付けられた投・受光器48と送り歯8に近接させて生地載置板4の上面に取り付けられた反射板49とからなる光電センサが用いられる。
【0033】
また、前記制御回路45は、前記移送センサ42、速度センサ43及び被加工材センサ44の各検出信号が入力され、それら各検出信号に基づいて、高周波発振器41での高周波電力の発生、停止及び発生する高周波電力の大きさを制御するように構成されている。
【0034】
詳細には、図8のタイミングチャートで示すように、被加工材センサ44により被加工材Hが送り歯8上に載置されたことを検出したときは、高周波発振器40へ高周波電力を発生させるための制御信号を出力し、かつ、被加工材Hが送り歯8上に載置されたことを検出しないときは、高周波発振器40へ高周波電力の発生を停止させるための制御信号を出力するといったように、制御回路45は、被加工材Hが送り歯8上に載置されたか否かにより高周波発振器40での高周波電力の発生、停止を制御するように構成されている。
【0035】
また、被加工材センサ44により被加工材Hが送り歯8上に載置されたことを検出した条件下において、一対の電極12,16が接近移動して移送センサ42により送り歯8が被加工材Hの移送停止中であることを検出したときには、制御回路45から高周波発振器40へ予め設定された所定の値の高周波電力P1を発生させる制御信号を出力して、その発生した所定の値の高周波力P1を一対の面状電極12,16間に与え、かつ、一対の電極12,16が離間移動して送り歯8が移送動作中であることを検出したときには、制御回路45から高周波発振器40へ移送停止中よりも小さく設定された値の高周波電力P2を発生させる制御信号を出力して、その発生した移送停止中よりも小さい値の高周波電力P2を一対の面状電極12,16間に与えるといったように、制御回路45は、送り歯8による移送停止中と移送動作中とにおいて一対の面状電極12,16間に付与する高周波電力の値を自動的に大小に切換え制御するように構成されている。
【0036】
ここで、送り歯8が被加工材Hの移送停止中に発生される高周波電力P1の所定の値とは、誘電加熱される一対の電極12,16が樹脂テープTを溶融させて繊維生地Wの重ね合わせ端部を接着させるに必要かつ十分な値であり、送り歯8が被加工材Hの移送動作中に発生される高周波電力P2の値とは、ゼロではなく、前記移送停止中の高周波電力P1よりも少し小さい値であり、これらの値は、接着加工対象となる繊維生地Wの耐熱性などに応じて事前に設定される。
【0037】
さらに、移送センサ42により送り歯8が被加工材Hの移送停止中であることを検出したときにおいて一対の面状電極12,16間に印加する高周波力P1の値は、速度センサ43により検出される被加工材移送速度が速いほど大きくする一方、その高周波電力P1の付与時間を短くする制御を行なうように構成されている。
すなわち、高周波電力を与えることにより誘電加熱される一対の電極12,16の加熱温度は、高周波電力の値×付与時間で決定される。したがって、被加工材移送速度に応じた高周波電力P1及び付与時間の制御とは、移送速度の変化にかかわらず一対の電極12,16の加熱温度がほぼ一定に保たれるように制御することである。例えば、移送速度が速いときの高周波電力値P1h×付与時間t1≒移送速度が遅いときの高周波電力値P2h×付与時間t2、なる関係が得られるように設定されている。
【0038】
なお、本明細書において、「移送停止中」とは、送り歯8による被加工材Hの送りが完全に停止している状態に限らず、完全停止の少し前のタイミング又は完全停止の少し後のタイミングから移送開始の少し前のタイミング又は移送開始の少し後のタイミングまでを含む。このようなタイミングは、ミシン主軸46の回転角度を検出する回転位相センサ47の検出位相(回転角度)を設定変更することで任意に調整することができる。また、「移送動作中」とは、「移送停止中」のタイミングを設定することに伴い自動的に決定される。
【0039】
次に、上記のように構成された高周波ミシンにおける接着加工動作について、図9のフローチャートを参照して説明する。
まず、生地載置板4の手前箇所において、例えば、図2及び図3に示すように、繊維生地Wの端部等を折返して上下に重ね合わせるとともに、その重ね合わせ端部間に、表裏両面が接着面に形成された熱可塑性樹脂テープであるホットメルト(例えば、日東紡社の商標名「ダンヒューズ」)Tを挟み込んだ被加工材Hを予め準備する。
【0040】
この準備した被加工材Hを生地載置板4の上面に載置(セット)すると、被加工材センサ44により送り歯8上に被加工材Hが載置されたか否かが検出される(ステップST11)。ステップST11において、被加工材センサ44が送り歯8上への被加工材Hの載置を検出しないときは、制御回路45から高周波発振器40へ向けて高周波電力の発生を停止させるための制御信号が出力されて高周波発振器40での高周波電力の発生は停止されたままにある(ステップST12)。
【0041】
被加工材センサ44が送り歯8上への被加工材Hの載置を検出したときは、ミシンの回転が開始されて、送り歯8(送り歯8の前送り歯8A及び後送り歯8B)の合成運動と押え金12の上下往復運動との協同作用により、所定の加工進行方向Xへ向けての被加工材Hの間欠移送が開始される(ステップST13)。この間欠移送時において、回転位相センサ47の移送センサ42により、送り歯8が被加工材Hを移送動作中であるか移送停止中であるかが検出される(ステップST14)。
【0042】
ステップST14において、移送センサ42が移送動作中であることを検出したときは、制御回路45から高周波発振器40へ高周波電力P2を発生させる制御信号が出力されて該高周波発振器40で移送停止中よりも小さい値の高周波電力P2が発生され、その高周波電力P2が一対の面状電極12,16間に付与される(ステップST15)。
【0043】
一方、送り歯8による被加工材Hの間欠移送時には、加工材Hの移送速度が速度センサ43により検出される(ステップST16)とともに、移送速度が速いか遅いかが判定される(ステップST17)。そして、移送速度が遅いと判定された場合は、制御回路45から高周波発振器40へ高周波電力Ph2を発生させる制御信号が出力されて該高周波発振器40で移送動作中よりも高く、かつ、移送速度が速い場合よりも低い値の高周波電力Ph2が発生され、その高周波電力Ph2が一対の面状電極12,16間に付与される(ステップST18)。
【0044】
また、ステップST17において、移送速度が速いと判定された場合は、制御回路45から高周波発振器40へ高周波電力Ph1を発生させる制御信号が出力されて該高周波発振器40で移送速度が遅い場合よりも更に高い値の高周波電力Ph1が発生され、その高周波電力Ph1が一対の面状電極12,16間に付与される(ステップST19)。
【0045】
このように、移送停止毎に上下一対の面状電極12,16間に移送速度に応じた値の高周波電力Ph2またはPh1が付与され、この付与される高周波電力の誘電加熱によって一対の面状電極12,16が所定温度に加熱されることによって、繊維生地Wの重ね合わせ端部間に挟み込まれた熱可塑性樹脂テープTが一定面積単位で溶融され、この溶融したテープTを介して繊維生地Wの重ね合わせ端部同士が順次に、かつ、同一箇所が繰り返し接着されることになる。
【0046】
以上説明したとおり、被加工材Hが一定面積単位の面接触状態で溶融加熱されて接着されるものであるために、一対の電極12,16に比較的高い高周波電力を付与したとしても、その高い高周波電力による熱を線や点接触部に集中させることなく、一対の電極12,16の面接触部に分散させることが可能であり、熱が極小面積部に集中することに起因する繊維生地Wの焼損や破孔(孔明き)などの不良箇所の発生をなくすることができる。したがって、熱集中による不良箇所の発生がないことと、比較的高い高周波電力を与えることにより確実かつ均一な接着強度が得られることとが相俟って、被加工材Hが熱に弱い繊維生地Wであっても、仕上がりのよい製品を確実かつ安定よく製造加工することができる。
【0047】
加えて、被加工材Hの移送手段が、水平運動と上下運動の組み合わせによって生地載置板4上面の水平面に沿って加工進行方向Xへ間欠的に移送する送り歯8と、この送り歯8による移送時に繊維生地Wを含めて被加工材Hが浮き上がらないように生地載置板4側に押える押え金12との協同作用による移送手段であるので、直線に限らず任意に曲線移送させることも容易であり、また、伸縮性のある繊維生地Wを用いる場合であっても、その生地Wに余分な挟圧力を加えることなく、自然の状態のままで移送させることができる。したがって、曲線状部位が多く、また、伸縮性のある繊維生地素材を用いることの多いアパレル品であってもそれらに十分に対応させて所定の接着加工を確実かつ安定的に行なうことができる。
【0048】
さらに、移送センサ42を用いて、被加工材Hが移送動作中であることを検出したとき、移送停止中に電極12,16に与える高周波電力の値、つまり、繊維生地Wの重ね合わせ端部を誘電加熱により接着可能な値よりも小さい値の高周波電力を電極12,16に付与するように切換え制御することによって、移送停止から移送動作への切換え時に一対の電極12,16間に与えられる高周波電力は小さいために、一対の電極12,16が互いに離間する際に電極12,16間でスパークが発生しそれが原因で繊維生地Wが焼損したり破孔(孔明き)したりするなどの不良箇所の発生を十分に抑制することができると共に、移送動作中にも移送停止中よりは小さいながら高周波電力が与えられているために、移送動作から移送停止への切換え直後における一対の電極12,16の誘電加熱による立ち上がり昇温スピードを速めることができる。これによって、作業者は曲線状部位の接着加工時などにおいて移送速度を自由に低下させることが可能で、作業操作を非常に行いやすいと共に、直線部において被加工材Hの移送速度を速くした場合でも、樹脂テープTを迅速かつ確実に溶融させて繊維生地Wの重ね合わせ端部の接着を確実、強固なものとすることが可能であり、したがって、歩留まりの悪化を招くことなく、効率のよい接着加工を行なうことができる。
【0049】
また、上記実施の形態のように、押え金12自体を上部の面状電極に兼用させることにより、押え金12とは別個に上部電極を設ける必要がない。そのため、構成部品の節減に止まらず、押え金12の存在個所に上部電極を配置し固定したり、押え金の電気絶縁性などのための特別な構造的工夫を施したりすることも不要となり、全体構造を一層簡単化し、コスト低減も図りやすい。
【0050】
また、上記実施の形態のように、生地載置板4及び送り歯8を、エンジニアリングプラスチックやスーパーエンジリアリングプラスチックのように、耐摩耗性、電気絶縁性及び耐熱性に優れた材料から構成する場合は、それら生地載置板4及び送り歯8の構造強度を十分に確保できるとともに、耐摩耗性、耐食性、電気絶縁性及び耐熱性にも優れ、高周波電力が与えられる条件下で使用される各部材4,8を耐久性の高いものに構成することができる。
【0051】
また、上記実施の形態のように、前記一対の面状電極12,16それぞれに、予熱用カートリッジヒーター25,28を付設する場合は、送り歯8による送り作用時においても一対の電極12,16を予熱により高い温度に保持することが可能であるため、移送停止中に電極12,16に与える高周波電力をできるだけ低く設定して過剰加熱による焼損などの発生をより確実に防止しつつも、樹脂テープTを常に確実に溶融させて所定の接着強度を安定よく得ることができる。
【0052】
さらに、上記押え金12が上部の面状電極を兼用するように構成されている場合において、上部の面状電極を兼用構成する押え金12と、当該押え金12を予熱する予熱用カートリッジヒーター25を保持しミシンアーム部2に固定されるカートリッジヒーター保持台29との間に、両者12,29を上下に相対摺動可能に繋ぐ熱伝導性部材27を介在させる構成を採用することによって、押え金(上部電極)12の重量増加をできるだけ小さく抑えて繊維生地Wを含む被加工材Hの移送作用を円滑に、かつ、押え金12の重量に抗して行う曲線移送のための操作を容易なものとしつつ、予熱用カートリッジヒーター25の熱を熱伝導性部材27を介して押え金12に効率よく伝達することができ、電極12の予熱効果によって焼損などの発生防止及び安定よい接着強度を確保することができる。
【0053】
なお、上記実施の形態では、押え金12自体を上部の面状電極に兼用させたもので示したが、押え金12とは別に上部の面状電極を設けてもよい。この場合は、押え金12をエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチック等の構造材で、かつ、耐摩耗性、電気絶縁性及び耐熱性に優れた材料から構成することが必要となる。
【0054】
また、上記実施の形態では、ミシン主軸46に取り付けられた単一の回転位相センサ47により、被加工材Hの移送センサ42及び速度センサ43を兼用させたもので示したが、移送センサ42と速度センサ43とを別個に設けてもよい。
【0055】
また、上記実施の形態では、予熱用ヒーターとして、カートリッジタイプのものを使用したが、これに限らず、電熱式ヒーターなどを固定的に組み込んでもよい。
【0056】
また、上記実施の形態では、図8のタイミングチャートで示すように、移送センサ42により送り歯8が被加工材Hの移送停止中であることを検出したときにおける一対の面状電極12,16間に付与する高周波電力P1の値を、速度センサ43により検出される被加工材移送速度が速いほど大きくする一方、その高周波電力P1の付与時間を短くする制御を行なうもので説明したが、図10のタイミングチャートで示すように、速度センサ43により検出される被加工材移送速度にかかわらず移送停止中には常に一定値の高周波電力P1を一定時間t1付与する制御を行なうように設定してもよい。
ここで、移送停止中に印加する一定の高周波電力Ph1及び一定の付与時間t1は、両者の積(Ph1×t1)により決定される一対の電極12,16に対する誘電加熱温度が、最大移送速度においても繊維生地Wの重ね合わせ端部等を接着するに必要かつ十分な温度になるような値に設定されることは当然である。
【0057】
上述のように、移送停止中には、移送速度の変化にかかわらず常に一定の高周波電力Ph1を一定時間t1付与する制御を行なうように設定する場合は、繊維生地の種類や耐熱性に対応させるための高周波電力の調整も容易に行なうことができる。
【0058】
更に、上記実施の形態では、移送動作中に一対の電極12,16に付与する高周波電力の値が、ゼロではなくて、移送停止中に付与する高周波電力の値よりも小さくなるように切り換え制御するものについて説明したが、移送動作中に付与する高周波電力の値をゼロに切り換え制御するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 ミシン本体
4 生地載置板
8(8A,8B) 送り歯
12 押え金兼用の上部の面状電極
16 下部の面状電極
25,28 予熱用カートリッジヒーター
40 高周波発振器
41 高周波整合装置
42 移送センサ
43 速度センサ
44 被加工材センサ
45 制御回路(高周波電力制御部)
46 ミシン主軸
47 回転位相センサ
W 繊維生地
T 熱可塑性樹脂テープ
H 被加工材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維生地の重ね合わせ部間に熱可塑性樹脂テープを挟み込んだ被加工材を摺接移動可能に載置する生地載置板と、この生地載置板の下部に配置されて水平運動と上下運動の組み合わせによって生地載置板上に載置された被加工材を水平面に沿って特定方向へ間欠的に移送する送り歯と、この送り歯と協同して被加工材を前記特定方向へ移送するとともに被加工材が浮かないように押える押え金と、前記生地載置板の上部に配置された上部の面状電極及び前記生地載置板の下部で該前記生地載置板の上面と面一の状態に配置された下部の面状電極とを備え、
前記上部及び下部の一対の面状電極間に高周波電力を与えることによって、前記熱可塑性樹脂テープを高周波誘電加熱により溶融して繊維生地の重ね合わせ部を連続的に接着可能に構成している高周波ミシンであって、
前記送り歯が被加工材を移送動作中であるか移送停止中であるかを検出する移送センサと、該移送センサにより送り歯が被加工材の移送停止中であることを検出したときには、前記一対の面状電極間に所定の値の高周波電力を与え、かつ、送り歯が被加工材の移送動作中であることを検出したときには、前記移送停止中の場合よりも小さい値の高周波電力を与えるように、一対の面状電極に印加する高周波電力の値を移送停止中と移送動作中とにおいて自動的に切換え制御する高周波電力制御部と、を備えていることを特徴とする高周波ミシン。
【請求項2】
前記上部及び下部の一対の面状電極のうち、上部の面状電極は、前記押え金により兼用構成されている請求項1に記載の高周波ミシン。
【請求項3】
前記上部及び下部の一対の面状電極にはそれぞれ、予熱用ヒーターが付設されている請求項1または2に記載の高周波ミシン。
【請求項4】
前記移送センサの他に、前記送り歯による被加工材の移送速度を検出する速度センサを備え、前記高周波電力制御部は、前記速度センサにより検出される移送速度が速いほど移送停止中に印加する高周波電力の値を大きくする制御を行なうように構成されている請求項1ないし3のいずれかに記載の高周波ミシン。
【請求項5】
前記移送センサの他に、前記送り歯による被加工材の移送速度を検出する速度センサを備え、前記高周波電力制御部は、前記速度センサにより検出される移送速度にかかわらず移送停止中に最大移送速度での繊維生地の重ね合わせ部の接着が可能な一定値の高周波電力を一定時間与える制御を行なうように構成されている請求項1ないし3のいずれかに記載の高周波ミシン。
【請求項6】
前記移送センサ及び速度センサは、ミシン主軸に取り付けられて前記送り歯による被加工材の間欠移送の回転位相を検出する回転位相センサで兼用されている請求項4または5に記載の高周波ミシン。
【請求項7】
前記移送センサ及び速度センサに加えて、被加工材が前記送り歯上に載置されたか否かを検出する被加工材センサを備え、この被加工材センサが被加工材の載置を検出しているときは、前記高周波電力制御部による制御動作が行われ、被加工材の載置を検出しないときは、前記高周波電力制御部による制御動作が行われないように構成されている請求項4ないし6のいずれかに記載の高周波ミシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−183790(P2011−183790A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73552(P2010−73552)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000114868)ヤマトミシン製造株式会社 (66)
【出願人】(390024394)山本ビニター株式会社 (16)
【Fターム(参考)】