説明

高周波磁性材料、アンテナ装置および高周波磁性材料の製造方法。

【課題】特にGHz帯域においても優れた特性を備える高周波磁性材料、これを用いたアンテナ装置およびこの高周波磁性材料の製造方法を提供する。
【解決手段】マトリックス絶縁性酸化物相14中に、板状磁性体16が配向分散する磁性膜12を有する高周波磁性材料10であって、板状磁性体16が、磁性膜12面に対して略垂直に形成され、板状磁性体16がFe、Co、Niのうち少なくとも1種の金属を含有し、マトリックス絶縁性酸化物相14がシリコン酸化物またはアルミニウム酸化物を主成分酸化物とすることを特徴とする高周波磁性材料、これを用いたアンテナ装置およびこの高周波磁性材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にGHzの周波数帯域での用途に利用される高周波磁性材料、この高周波磁性材料を用いたアンテナ装置、およびこの高周波磁性材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁性材料は電磁波吸収体、磁性インク、インダクタンス素子等の部品に適用され、その重要さが年々増大している。これらの部品は、磁性材料の有する透磁率実部(μ’)または透磁率虚部(μ’’)の特性を目的に応じて利用する。例えばインダクタンス素子は高いμ’(かつ低いμ’’)を利用し、電磁波吸収体は高いμ’’を利用する。そのため、実際に部品として使用する場合は、機器の利用周波数帯域に合わせてμ’およびμ’’を制御しなければならない。近年では、機器の利用周波数帯域が高周波化しているため、高周波でμ’、μ’’を制御できる材料の製造技術が強く求められている。
【0003】
1MHz以上の高周波域で使用するインダクタンス素子用磁性材料としては、主にフェライトやアモルファス合金が用いられている。これら磁性材料は、1MHz〜10MHz域においては損失がなく(低いμ’’)、高いμ’を有し、良好な磁気特性を示す。しかしながら、この磁性材料は10MHz以上のさらに高い周波域では透磁率実部μ’が低下し必ずしも満足する特性が得られていない。
【0004】
このようなことからスパッタ法、めっき法などの薄膜技術によるインダクタンス素子の開発も盛んに行われ、高周波域においても優れた特性を示すことが確認されている。しかしながら、スパッタ法などの薄膜技術には大型の設備が必要で、かつ膜厚等を精密に制御する必要から、コストや歩留りの点では必ずしも十分満足するものではない。また、薄膜技術によるインダクタンス素子は高温、高湿度における磁気特性の長時間の熱的安定性に欠ける問題があった。
【0005】
また、高周波で高いμ’と低いμ’’を有する磁性材料は、アンテナ装置等の高周波通信機器の一部品としての応用が期待される。現在の携帯通信端末は、情報伝播の多くを電波の送受信にて行っている。現在用いられている電波の周波数帯域は、100MHz以上の高周波領域である。そこで、この高周波領域において有用な電子部品および基板に注目が集まっている。また、携帯移動体通信、衛星通信においては、GHz帯の高周波域の電波が使用されるようになっている。
【0006】
このような高周波域の電波に対応するためには、電子部品におけるエネルギー損失や伝送損失が小さいことが必要である。例えば、携帯通信端末に不可欠なアンテナ部材では、アンテナから発生される電波は伝送過程において伝送損失が生じる。この伝送損失は、熱エネルギーとして電子部品および基板内で消費されて電子部品における発熱の原因となるため好ましくない。そして、この結果、外部に送信すべき電波が打ち消されるために、必要以上の強力な電波を送信する必要があり、電力の有効利用という点で問題があった。加えて、強力な電波は人体への影響についても懸念されており、極力少ない電波での通信が望まれている。
【0007】
このような小型化、軽量化への要望の高まりに伴って、各電子部品が小型になり省スペース化を図っているに拘わらず、アンテナ部材は上述した理由により伝送損失を抑えるために電子部品および基板からの距離を確保することが必要不可欠である。このため、不要な空間を有することを余儀なくされるため、省スペース化を図ることが難しいという問題がある。
【0008】
そこで、誘電体セラミックスを用いたアンテナが開発されており、アンテナの小型化を達成することにより省スペース化が可能となっている。しかしながら、誘電体は誘電損失を持つため、結果的に伝送損失が大きくなり、送受信感度が得られず、補助的なアンテナとして用いているのが現状であり、省電力化には限界がある。また、誘電体はアンテナの共振周波数を狭帯域化する傾向があり、広帯域アンテナとしては好ましくない。
【0009】
アンテナの省電力化の方法として、高透磁率(高いμ’、低いμ’’)の絶縁基板に、アンテナから通信機器内の電子部品や基板へ到達する電波を巻き込んで電子部品や基板へ電波を到達させずに送受信を行う方法がある。通常の高透磁率部材は金属もしくは合金であるが、電波の周波数が高くなると渦電流による伝送損失が顕著になるためにアンテナ基板としては使用できない。
【0010】
一方、フェライトに代表される絶縁性酸化物の磁性体をアンテナ基板として用いた場合、渦電流による伝送損失は抑えられるが、数百Hzの高周波では共鳴周波数に近づき、共鳴による伝送損失が顕著になり使用できない。このため、アンテナ基板の材料として、高周波数の電波に対しても使用できる伝送損失を極力抑えた絶縁性の高透磁率部材(高いμ’、低いμ’’)が求められている。ちなみにこの様な高透磁率部材をアンテナ基板に用いると、アンテナの共振周波数を広帯域化する事が可能となり、より好ましい。
【0011】
一方、電磁波吸収体では高いμ’’を利用して、電子機器の高周波化に伴い発生したノイズを吸収し、電子機器の誤動作等の不具合を低減させている。電子機器としては、ICチップ等の半導体素子や各種通信機器などが挙げられる。このような電子機器は1MHzから数GHz、さらには数10GHz以上の高周波域で使用されるものなど様々である。
【0012】
特に、近年は1GHz以上の高周波域で使用される電子機器が増加する傾向にある。高周波域で使用される電子機器の電磁波吸収体は、従来、フェライト粒子、カルボニル鉄粒子、FeAlSiフレーク、FeCrAlフレークなどを樹脂と混合するバインダー成形法によって製造されている。しかしながら、これらの材料は1GHz以上の高周波域においてμ’、μ’’が共に極端に低く、必ずしも満足する特性は得られていない。その他、メカニカルアロイング法等で合成される材料では、長時間の熱的安定性に欠け歩留まりが低い問題がある。
【0013】
特許文献1には、共晶反応を用いた一次元の貫通気孔を有する無機質フィルタの製造方法が開示されている。
【特許文献1】特開2005−246340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来の高周波磁性材料は、特にGHz帯域において必ずしも十分な磁気特性を有しておらず、また長時間の熱的安定性に欠ける問題があった。
【0015】
上記事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、特にGHz帯域においても優れた特性を備える高周波磁性材料、これを用いたアンテナ装置およびこの高周波磁性材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様の高周波磁性材料は、マトリックス絶縁性酸化物相中に、板状磁性体が配向分散する磁性膜を有する高周波磁性材料であって、前記板状磁性体が、前記磁性膜面に対して略垂直に形成され、前記板状磁性体がFe、Co、Niのうち少なくとも1種の金属を含有し、前記マトリックス絶縁性酸化物相が、シリコン酸化物またはアルミニウム酸化物を主成分酸化物とすることを特徴とする。
【0017】
ここで、前記マトリックス絶縁性酸化物相が、前記シリコン酸化物と、前記シリコン酸化物と共晶系となる少量酸化物、または、前記アルミニウム酸化物と、前記アルミニウム酸化物と共晶系となる少量酸化物を含有することが望ましい。
【0018】
ここで、前記板状磁性体の前記磁性膜面内における横寸法が1nm以上1μm以下、縦寸法が100nm以上、縦寸法/横寸法で表されるアスペクト比が10以上であることが望ましい。
【0019】
ここで、前記磁性膜の膜厚が、1μm以上であることが望ましい。
【0020】
ここで、前記磁性膜中における前記板状磁性体の体積割合が50vol%以上であることが望ましい。
【0021】
ここで、前記板状磁性体が一軸配向性を有する結晶系であることが望ましい。
【0022】
ここで、前記板状磁性体の結晶が一軸配向性を有し、前記板状磁性体の磁化容易軸もしくは磁化容易面が、前記磁性膜面に対し略垂直であることが望ましい。
【0023】
本発明の一態様のアンテナ装置は、給電端子と、一端に前記給電端子が接続されるアンテナエレメントと、前記アンテナエレメントから放射される電磁波の伝送損失を抑制するための高周波磁性材料を具備するアンテナ装置であって、前記高周波磁性材料が、上記の高周波磁性材料であることを特徴とする。
【0024】
本発明の一態様の高周波磁性材料の製造方法は、基板上に共晶系となる2種の酸化物を2元同時形成する酸化物形成工程と、熱処理により前記酸化物の共晶分解を促進する分解工程と、共晶分解で生じた2層の共晶反応相のうち一方を選択的にエッチングし、前記基板に略垂直に配向する空隙を形成するエッチング工程と、前記空隙を磁性金属で充填し板状磁性体を形成する充填工程を有することを特徴とする。
【0025】
ここで、前記酸化物形成工程において、前記酸化物の形成が蒸着により行われ、2つの蒸着源の重心の垂直二等分線方向と、前記基板上において所望される前記板状磁性体の配向方向とが一致するよう前記基板を配置することが望ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、特にGHz帯域においても優れた特性を備える高周波磁性材料、これを用いたアンテナ装置およびこの高周波磁性材料の製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0028】
発明者らは、マトリックス絶縁性酸化物相中に、板状磁性体を配向分散させることにより磁性材料の高周波磁気特性が向上することを見出した。また、このような磁性材料が、例えば蒸着による、共晶系となる2つの酸化物の2元同時形成を利用することにより製造可能であることを見出した。本発明は、発明者らによって見出された上記知見に基づき完成されたものである。
【0029】
(第1の実施の形態)
本実施の形態の高周波磁性材料は、マトリックス絶縁性酸化物相中に、板状磁性体が配向分散する磁性膜を有する。そして、板状磁性体が、磁性膜面に対して略垂直に形成されている。そして、この板状磁性体がFe、Co、Niのうち少なくとも1種の金属を含有している。さらに、マトリックス絶縁性酸化物相がシリコン酸化物またはアルミニウム酸化物を主成分酸化物とする。
【0030】
図1は、本実施の形態の高周波磁性材料の構造を示す図である。図1(a)が斜視図、図1(b)が上面図である。
【0031】
図示する高周波磁性材料10は、例えば、基板(図示せず)上に、マトリックス絶縁性酸化物相14中に、複数の板状磁性体16が一方向に配向分散する磁性膜12を有している。この板状磁性体16は、磁性膜12面に対して略垂直に形成されている。そして、板状磁性体16は、Fe、Co、Niのうち少なくとも1種の金属を含有している。そして、マトリックス絶縁性酸化物相14は、シリコン酸化物またはアルミニウム酸化物を主成分酸化物とする。具体的には、マトリックス絶縁性酸化物相14中にシリコン酸化物またはアルミニウム酸化物の占めるモル割合が50モル%以上となっている。シリコン酸化物またはアルミニウム酸化物を主成分とすることで、化学的に安定で信頼性の高い磁性膜12が実現できる。
【0032】
上記構成を有する本実施の形態の高周波磁性材料10は、高周波帯域、特にGHz帯域において優れた特性を実現する。具体的には、例えば1GHz帯域では高いμ’と低いμ’’を有し、アンテナ装置等の高周波通信機器の一部品としての応用に適している。また、例えば、2GHz帯域では、高いμ’’を有しており、電子機器の高周波化に伴い発生したノイズを吸収する電磁波吸収体への応用に適している。さらに、高温、高湿度における磁気特性の長時間の安定性、すなわち高い信頼性をも備えている。
【0033】
上述のように、板状磁性体16は、Fe,Co,Niからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属を含み、特にFe基合金、Co基合金、FeCo基合金が高い飽和磁化を実現できるために好ましい。Fe基合金は、第2成分としてNi,Mu,Cuなどを含有する、例えばFeNi合金、FeMn合金、FeCu合金を挙げることができる。Co基合金は、第2成分としてNi,Mu,Cu, Pt, Cr, Mnなどを含有する、例えばCoNi合金、CoMn合金、CoCu合金、CoPt合金、CoCr合金、CoMn合金を挙げることができる。これらCo基合金、もしくはCo単体は、一軸異方性を有する六方晶構造を取りやすく、高い磁気異方性を実現しやすく好ましい。高い磁気異方性を有する事によって、強磁性共鳴周波数を高くする事ができ、それによって高周波磁気特性が向上する。FeCo基合金は、第2成分としてNi,Mu,Cuなどを含有する合金を挙げることができる。尚、これらの第2成分は1種類の金属だけでも良いし複数の金属でも良い。これらの第2成分は、高周波磁気特性を向上させるために効果的な成分である。
【0034】
また、マトリックス絶縁性酸化物相14が、シリコン酸化物と、シリコン酸化物と共晶系となる少量酸化物、または、アルミニウム酸化物と、アルミニウム酸化物と共晶系となる少量酸化物を含有することが望ましい。これは、共晶系となる少量酸化物により、個々の板状磁性体16がこの金属を含む少量酸化物を介して磁気的に繋がり優れた磁気特性を実現できる可能性があるからである。ここで、少量とは、主成分酸化物であるシリコン酸化物あるいはアルミニウム酸化物に対して、マトリックス絶縁性酸化物相14中に占めるモル割合が少ないことを意味する。
【0035】
この少量酸化物は、後述のように共晶系複合酸化物を共晶分解して2相に分離させ、そのうちの1相をエッチング除去させる製造方法で作成する場合には、残りの1相中に必然的に少量残存するものである。共晶系の組み合わせに関しては後述する。
【0036】
板状磁性体16は、一軸配向性を有する結晶系のものが好ましい。一軸配向性を有する結晶系の材料は、先に述べたように、高い磁気異方性を実現しやすく、それによって強磁性共鳴周波数を高くする事ができ高周波磁気特性が向上する。
【0037】
また、この時、磁化容易軸、もしくは磁化容易面が磁性膜面直方向、すなわち、磁性膜12面に垂直な方向に配向するのが好ましい。これによって、膜面内方向に高周波磁場を印加した時、回転磁化によって磁化が進行し高周波で損失を低減する事が出来る。また、磁化容易軸、もしくは磁化容易面が一方向に揃っていると、外部高周波磁場を印加した際に共鳴分散が少なく、非常にシャープな強磁性共鳴を示す。そのため、高い周波数まで損失の少ない(μ’’の小さい)磁気特性を得る事ができ、高μ’、低μ’’が要求されるインダクタンス素子やアンテナ基板、限られた周波数帯域での電磁波吸収特性が求められる狭帯域用電磁波吸収材料等に用いる高周波磁性材料として好ましい特性となる。
【0038】
一方で、幅広い周波数帯域での電磁波吸収特性が求められる広帯域電磁波吸収材料等に用いる高周波磁性材料としては、共鳴分散を大きくした方が有利である。このため、等方的な結晶系で、また磁化容易軸がランダムに配向したものの方が、都合が良い。よって、用途に応じて使い分けるのが好ましい。
【0039】
板状磁性体16の寸法は、磁性膜12面内でみて横寸法(図1(b)のW)が1nm以上1μm以下、磁性膜12面内でみて縦寸法(図1(b)のL)が100nm以上で、縦寸法と横寸法の比(縦寸法/横寸法)で表されるアスペクト比が10以上、好ましくは100以上である事が望ましい。
【0040】
板状磁性体16の横寸法を1nm未満にすると、超常磁性が生じて磁束量が低下する恐れがある。また1μmより大きくすると、いくらアスペクト比が大きくても多磁区構造となりやすく高周波磁気特性が劣化する恐れがある。磁性体は一般にサイズが大きくなると磁気的に多磁区構造を取りやすく、その場合、磁区間に存在する磁壁の共鳴によって高周波において損失が大きくなってしまう。そのため、高周波用磁性体としては、多磁区構造でなく単磁区構造である事が望ましい。
【0041】
板状磁性体16のアスペクト比を大きくすると、磁気的な単磁区限界粒径を大きくする事が出来る。一般に磁性体の形状が球状の場合、単磁区構造を実現できる限界のサイズは数十nm程度であると考えられている。しかしこの時、磁性粒子が金属の場合、サイズが数十nm程度では酸化が進行しやすく(特にFe等の場合)、酸化によって飽和磁化が減少し磁気特性が劣化しやすい。また、酸化による体積変化によって部材に応力がかかり磁気特性及び機械的特性が劣化してしまう恐れがある。
【0042】
更には、数十nmサイズの金属は熱的にも不安定で凝集・焼結が起こりやすく、それによる磁気特性及び機械的特性の劣化を招く恐れもある。このため、より大きなサイズで単磁区構造を実現するのが好ましく、アスペクト比を大きくするとこれが可能になる。例えば、アスペクト比を10以上にすると、φ100nm×長さ1μm程度の円柱サイズでも単磁区でいられる可能性があり、この様な磁性金属はサイズが大きいため耐酸化性と熱的安定性が高く、安定に優れた高周波磁気特性を実現する事が可能となる。
【0043】
また、アスペクト比は実効的な透磁率の向上と強磁性共鳴周波数の向上にも効果的な役割を果たす。アスペクト比が小さいと反磁界の影響を強く受け、実効的な透磁率が低下し、また、強磁性共鳴周波数が低下する。一方で、アスペクト比が大きいと反磁界の影響が小さくなり、実効的な透磁率が向上し、また、強磁性共鳴周波数が向上するため望ましい。以上のような優れた効果はアスペクト比が10以上、好ましくは100以上ある時に得られる。
【0044】
板状磁性体16の磁性膜面直方向の高さ寸法、すなわち、磁性膜12の膜厚(図1(a)のT)は1μm以上である事が好ましい。磁性材料の透磁率を利用した電子デバイス部品においては、磁束量が重要になるため、透磁率が大きく且つ磁性材料の体積が大きい事が求められる。求められる磁性膜12の膜厚は、使用する磁性膜12の面積と用いる電子デバイス種類によって異なるが、1μm以上あるのが好ましい。
【0045】
ここで、磁性膜12中における全板状磁性体16の体積割合が大きい程好ましく、特に50vol%以上では、磁性膜12の飽和磁化が大きくなり、高い透磁率と良好な高周波磁気特性が得られより望ましい。また、この範囲の体積割合においては、個々の板状磁性体16が磁気的に結合し、閉磁路を形成しより自発磁化が磁性膜12面直方向に固定されやすく、高い異方性磁界と小さな異方性分散が実現しやすく、それによって優れた高周波磁気特性を得る事が可能となる。
【0046】
次に、本実施の形態の高周波磁性材料の製造方法について説明する。この製造方法は、基板上に共晶系となる2種の酸化物を2元同時形成する酸化物形成工程と、熱処理により酸化物の共晶分解を促進する分解工程と、共晶分解で生じた2層の共晶反応相のうち一方を選択的にエッチングし、基板に略垂直に配向する空隙を形成するエッチング工程と、空隙を磁性金属で充填し板状磁性体を形成する充填工程を有する。
【0047】
共晶系となる2つの酸化物の組み合わせとしては、FeO−SiO、Fe−SiO、Fe−SiO、CoO−SiO、Co−SiO、CoO−TiO、CoO−CaO等、様々なものが挙げられる。特に限定されるものではないが、共晶反応による2相分離を起こした後の2相が、エッチングによって除去しやすい相と除去しにくい相からなる事が好ましい。
【0048】
例えば、Fe3O4−SiOの共晶系においては、共晶反応においてFeとSiOの2相が析出し、Fe相は塩酸等の酸性液体等によって簡単にエッチング除去できる。一方でSiO相は塩酸等の酸性液体等によって容易にはエッチング除去出来ない。このような性質を利用して、共晶反応後に2相分離を促進させ、そのうち1相をエッチング除去する事によって空隙を形成し、ポーラス材料を得る事が出来る。ちなみにこのポーラス材料の空隙の部分に、後の工程で磁性体を堆積または充填させる。
【0049】
共晶系の酸化物の組み合わせにおいては、特に、一方の酸化物がFe、Co、Niのいずれかから選ばれる酸化物で、もう一方の酸化物がSiOかAlのいずれかから選ばれる酸化物、の組み合わせである事がより好ましい。一方の酸化物としてFe、Co、Niのいずれかから選ばれる酸化物を選ぶ事によって、共晶反応による2相分離後にエッチングで除去されにくい相にFe、Co、Niの一部を残存させる事が可能となる。このエッチングで除去されにくい相がマトリックス絶縁性酸化物相となる。
【0050】
エッチングで除去された部分には、その後、磁性体をメッキ等によって堆積させるのであるが、マトリックス絶縁性酸化物相にFe、Co、Niの一部が残存していると、上述のように個々の磁性体がこの残存元素を含む酸化物を介して磁気的に繋がり優れた磁気特性を実現できる可能性があり好ましい。もう一方の酸化物はSiOかAlのいずれかから選ばれる酸化物がより好ましいが、これは共晶反応による2相分離後の1相が一般にエッチングされにくい化学的に安定な酸化物になりやすく都合が良いからである。また、共晶系の2つの酸化物相の割合であるが、共晶点組成である事が完全に2相分離を促進しやすく望ましいが、共晶点組成から多少ずれても共晶分離はおこるため比較的幅広い組成範囲で合成を行う事が出来る。
【0051】
酸化物形成工程においては、上記の様な共晶系を取る2つの酸化物を別々の位置に配置した蒸着源から同時に電子ビームを用いて蒸着させる。また、蒸着の代わりにスパッタリングによってクラスターを生成させても良い。この時、膜の密着性と膜の緻密性を上げるために基板加熱をしても良い。生成する膜は十分にアモルファス状態であり、且つ十分に緻密質の膜である事が望ましい。これにより、後の熱処理による共晶分解が効果的に実現できるからである。
【0052】
ここで、酸化物形成工程が蒸着により行われ、2つの蒸着源の重心の垂直二等分線方向と、基板上において所望される板状磁性体の配向方向とが一致するよう基板を配置することが望ましい。図2は、蒸着の際の蒸着源と酸化物を形成する基板との位置関係を示す上面図である。蒸着装置20に2つの酸化物の蒸着源22、24が固定され、それぞれの蒸着源の重心がGa、Gbである。磁性膜がその上に形成される基板26には、デバイスの設計上の要求から所望される板状磁性体の配向方向(図中矢印d)がある場合がある。
【0053】
このような場合に、図2のように、Ga、Gbの垂直ニ等分線方向であるA−Aと、矢印dの方向を一致させることによって、最終的に基板上に形成される板状磁性体の配向方向を所望の方向とすることが可能となる。これは、2つの蒸着源22、24から飛んでくるクラスターが混じり合った所で選択的に強く微視的な共晶反応相が生成しやすく、2つの蒸着源22、24の垂直二等分線方向A−Aに板状の配向相が出来やすいためである。
【0054】
なお、同様の作用は、酸化物形成工程を2枚のターゲットによるコスパッタで行う場合でも得ることが可能である。
【0055】
分解工程においては、アモルファス状態の共晶系をO、CO等の酸性雰囲気下で酸化、もしくは真空、不活性ガス、窒素ガス雰囲気中で200〜1400℃の範囲でアニールさせる熱処理によって共晶分解を促進させる。例えば、Fe−SiO系やCo−SiO系においては、大気中で600℃、2時間の熱処理を行うと十分に共晶分解を促進させる事が可能となる。
【0056】
エッチング工程は、共晶分解によって生成した2相のうち1相を選択的にエッチング除去する工程である。エッチング除去方法に関しては特にこだわらないが、簡便且つ大量合成に向く塩酸等の酸性溶液を用いた化学的エッチング法が好ましい。例えば、Fe−SiO系やCo−SiO系においては、60℃〜120℃の範囲で0.1〜10規定塩酸でエッチング処理を施すと、全表面に渡って均一にエッチングが施される。
【0057】
この時、エッチングによって除去されて残存したマトリックス絶縁性酸化物相は完全な直線ではなく、壁が曲率を有した状態になっており、且つ、部分的にデンドライトが発達したギザギザを有する構造になる。これによって、次の充填工程で磁性体をメッキする際、磁性体がアンカーリングによって高い密着性を有するようになる。この様な高い密着性を有する磁性体は熱的安定性や機械的な安定性にも優れている。
【0058】
充填工程は、エッチング工程でエッチング処理して出来た空隙に磁性体を堆積・充填させる工程である。堆積充填させる手法に関しては特に限定されないが、簡便且つ均一に堆積充填させる事が可能なメッキ法が好ましい。メッキ法を用いる場合は、酸化物形成工程において基板表面にAuやCu等の導電性膜をコーティングして配線を施しておく必要がある。もしくは基板自体に導電性基板を用いても良い。
【0059】
本実施の形態に係る高周波磁性材料において、材料組織はSEM(Scanning Electron Microscopy)、TEM(Transmission Electron Microscopy)で、回折パターン(結晶配向性を含む)はTEM回折、XRD(X−ray Diffraction)で、構成元素の同定および定量分析はICP(Inductively coupled plasma)発光分析、蛍光X線分析、EPMA(Electron Probe Micro−Analysis)、EDX(Energy Dispersive X−ray Fluorescence Spectrometer)等で、それぞれ判別(分析)可能である。板状磁性体の寸法は、TEM観察、SEM観察により求めることが可能である。
【0060】
以上、本実施の形態によれば、高周波での損失の要因となる渦電流損失を効果的に抑制でき、かつ高い強磁性共鳴周波数を有し、高い熱的安定性を有する、高周波磁気特性の優れた共晶配向高周波磁性材料を提供することが可能となる。そして、歩留まりの高い高周波磁性材料の製造方法を提供することが可能となる。
【0061】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態のアンテナ装置は、給電端子と、一端に給電端子が接続されるアンテナエレメントと、このアンテナエレメントから放射される電磁波の伝送損失を抑制するための高周波磁性材料を備えている。そして、この高周波磁性材料が第1の実施の形態に記載した高周波磁性材料であることを特徴とする。したがって、以下、第1の形態で記述した高周波磁性材料に関する記載については重複するため省略する。
【0062】
図3は本実施の形態のアンテナ装置の斜視図、図4は断面図である。高周波磁性材料10が、給電端子32が一端に接続されるアンテナエレメント34と、配線基板36との間に設けられている。この配線基板36は、例えば、携帯機器の配線基板であり、例えば、金属の筐体で囲まれている。
【0063】
例えば、携帯機器のアンテナが電磁波を放射する際、アンテナと、携帯機器の筐体などの金属とが、一定以上に近接すると、金属内に生じる誘導電流により電磁波の放射が妨げられてしまう。しかしアンテナ近傍に高周波磁性材料を配置することで、アンテナと、筐体などの金属とを近接させても、誘導電流が発生せず、電波通信を安定化でき、携帯機器を小型化しうる。
【0064】
また、本実施の形態のように、高周波磁性材料10を、給電端子32を挟む2本のアンテナエレメント34と、配線基板36との間に挿入することで、アンテナエレメント34が電磁波を放射する際、配線基板36に生じる誘導電流を抑制し、アンテナ装置の放射効率を上げることができる。
【0065】
このように第1の実施の形態の高周波磁性材料は、優れた高周波磁気特性(高周波帯域で高いμ’と低いμ’’)を実現できるため、アンテナ装置に適用することにより、同一アンテナサイズにおいては送受信効率の向上が可能である。したがって、小さな電力での通信が可能となり、人体への影響も低減できる、また、同一送受信効率においてはアンテナサイズの小型化・薄型化が可能となる。
【0066】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。上記、実施の形態はあくまで、例として挙げられているだけであり、本発明を限定するものではない。また、実施の形態の説明においては、高周波磁性材料、これを用いたアンテナ装置、および高周波磁性材料の製造方法等で、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる高周波磁性材料、これを用いたアンテナ装置、および高周波磁性材料の製造方法等に関わる要素を適宜選択して用いることができる。
【0067】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての高周波磁性材料、これを用いたアンテナ装置、および高周波磁性材料の製造方法は、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその均等物の範囲によって定義されるものである。
【実施例】
【0068】
以下、本発明の実施例を比較例と対比しながら詳細に説明する。
【0069】
(実施例1)
CoOとSiOを電子ビーム蒸着装置で2元同時蒸着させる。この時、CoO蒸着源とSiO蒸着源は、成膜用ステージから下420mmの高さで、ステージ中心から半径200mmの円周において互いに120°の角度になるような方向に配置させた。成膜用ステージにはAuコートしたSiO基板(幅4mm、長さ4mm、厚さ0.5mm)をステージ中心に貼り付けた。蒸着時の組成は、CoO:SiO=6:4(体積比)で、蒸着速度は20nm/分の速度、基板温度を300℃にして行った。得られた膜は膜厚350nm程度の完全なアモルファス膜であった。
【0070】
その後、得られた膜を500℃・2時間大気中でアニールし共晶反応を促進させた。その後、5規定HCl水溶液で80℃、2.5時間エッチング処理を施した。その後、0.9モル/LのCoSO・7HO、0.8モル/LのHBOからなる水溶液をNaCl水溶液を用いながらpH=3〜4になるように調整し、10mA/cmで10分間電解メッキを施し、高周波磁性材料を合成した。
【0071】
得られた高周波磁性材料においては、板状の磁性体Coは、磁性膜面内でみて横寸法が100nm〜500nm程度、磁性膜面内でみて縦寸法が5μnm以上で、縦寸法と横寸法の比で表されるアスペクト比が10以上であり、マトリックス絶縁性酸化物相であるSiO(微量Coを含む)に面内一方向に配向分散したものである事が確認された。また、この板状磁性体の配向方向は、CoO蒸着源とSiO蒸着源の垂直二等分線方向に平行な方向である事が確認された。
【0072】
(比較例1)
FeAlSi粒子をエポキシ樹脂に2重量%と混合し、幅4mm、長さ4mm、厚さ0.5mmのシートに成形し、150℃でキュアして、評価用試料に供した。
【0073】
(比較例2)
カルボニル鉄粒子をエポキシ樹脂に2重量%と混合し、幅4mm、長さ4mm、厚さ0.5mmのシートに成形し、150℃でキュアして、評価用試料に供した。
【0074】
(比較例3)
NiZnフェライト焼結体から幅4mm、長さ4mm、厚さ0.5mmのシートを切り出し、これを評価用試料に供した。
【0075】
(比較例4)
平均粒径1μmのFe粉末と、平均粒径1μmのMgO粉末をモル比で6:4になるように秤量し、1時間かけて混合して混合粉末を調製した。この混合粉末をステンレス製のボールと共にステンレス製の容器に入れ、容器内をアルゴンガスで置換し、封入した後、300rpmで100時間混合するメカニカルアロイ処理を行ってFe粉末を100nmまで微粉化した。処理後は、この混合粉末を真空炉中に導入して、500℃まで1時間かけて昇温して、1時間還元処理を行った後、幅4mm、長さ4mm、厚さ0.5mmのシート状の評価用試料を作製した。
【0076】
(比較例5)
アンテナ特性用にMgOセラミック板を用意した。
【0077】
また、実施例1および比較例1〜4、及び比較例5(比較例5はアンテナ特性評価用のみ)の高周波磁性材料を評価用試料とし、以下の方法で透磁率実部(μ’)、100時間後の透磁率実部(μ’)の経時変化および電磁波吸収特性を調べた。また、実施例1、比較例3、比較例5を携帯電話機のアンテナデバイス(アンテナ基板)に適用し、アンテナ特性を評価した。
【0078】
一般に、強磁性共鳴損失以外の損失が殆どなく、高周波でも高い透磁率を有している高周波磁性材料は、強磁性共鳴周波数より低い周波数帯域では高い透磁率実部(μ’)、低い透磁率虚部(μ’’)を有しており、インダクタンス素子等の高透磁率部品として利用できる。また、強磁性共鳴周波数付近では低い透磁率実部(μ’)、高い透磁率虚部(μ’’)を有しており、電磁波吸収体として利用することができる。すなわち、1つの材料でも、周波数帯域を選ぶことによって、高透磁率部品としても電磁波吸収体としても使用することができる。磁気特性評価は、1GHzで透磁率実部(μ’’)の評価を行い、高透磁率部品としての可能性を探り、2GHzで電磁波の吸収量を測定し電磁波吸収体としての可能性を探った。高透磁率材料をアンテナ基板として用いた場合の可能性も同時に探った。
【0079】
1)透磁率実部μ’
評価用試料を1GHz下で透磁率実部μ’の測定を行った。試料は、凌和電子(株)製PMM−9G1を用いて測定を行った。その際、空気をバックグラウンドとした時と試料を配置した時との、それぞれの誘起電圧値とインピーダンス値とからμ’を導出した。
【0080】
2)100時間後の透磁率実部μ’の経時変化
評価用試料を温度60℃、湿度90%の高温恒湿槽内に100時間放置した後、再度、透磁率実部μ’を測定し、経時変化(100H放置後の透磁率実部μ’/放置前の透磁率実部μ’)を求めた。
【0081】
3)電磁波吸収特性
前記評価用試料の電磁波照射面とその反対の面に厚さ0.5mmで同面積の金属薄板を接着し、2GHzの電磁波下にて試料ネットワークアナライザーのS11モードを用いて、自由空間において反射電力法で測定した。反射電力法は、試料を接着していない金属薄板(完全反射体)の反射レベルと比較して試料からの反射レベルが何dB減少したかを測定する方法である。この測定に基づいて電磁波の吸収量を反射減衰量で定義し磁性体の厚さで規格化し、比較例1の吸収量を1とした時の相対値で求めた。
【0082】
4)アンテナ特性
電波暗室内において送信される電波を、各試料をアンテナデバイスに適用した携帯電話機から3mの位置に配置された受信アンテナで垂直偏波の受信レベルを測定した。このとき、携帯電話機が人体に向かう面側にファントム(模擬生体)を配置し、ファントム側を0〜180°、ファントムと反対側を180〜360°となるように座標設定して1.8GHzの放射電磁場波のレベル(受信レベル)測定を行った。また、比較例5を基準値とした270°における利得改善(dB)を求めた。
【0083】
高周波磁気特性(透磁率と熱的安定性、電磁波吸収特性)の測定結果を表1に示す。
【表1】

表1から明らかなように、実施例1に係る高周波磁性材料は、比較例1〜4に比べて優れた磁気特性を有することがわかる。なお、透磁率実部(μ’)は1GHzのみであるが、平坦な周波数特性を示しており、100MHzでもほぼ同じ値となっている。
【0084】
また、実施例1に係る高周波磁性材料は、比較例1〜4に比べて、100時間後の透磁率実部の経時変化が少なく、極めて高い熱的安定性を有していることがわかる。更には、実施例1に係る高周波磁性材料は、比較例1〜4に比べて、2GHzにおける電磁波吸収特性にも優れている事が分かった。
【0085】
アンテナ特性の測定結果を表2に示す。
【表2】

表2から明らかなように実施例1のアンテナデバイスは、比較例3、5のアンテナデバイスに比べて人体と反対側の180°〜360°(0°)における受信レベルが高いことがわかる。270°における受信レベル(利得改善)は、比較例5のアンテナデバイスを基準とした場合、実施例1のアンテナデバイスは270°位置において5dB以上の受信レベル向上が確認された。
【0086】
表1、表2から分かる様に、実施例1に係る高周波磁性材料は、優れた磁気特性を有しており、且つ熱的安定性にも優れ、1GHz帯域での高透磁率部品、として利用できる可能性を有し、また2GHzでの電磁波吸収特性も優れているため、2GHz帯域で電磁波吸収体としても利用できる可能性を有する。すなわち、1つの材料でも使用周波数帯域を変えることによって、高透磁率部品としても、電磁波吸収体としても使用することができ、幅広い汎用性を示すことが分かる。また、アンテナデバイスのアンテナ基板として用いても十分な可能性を有しており、同一アンテナサイズにおいては送受信効率の向上、同一送受信効率においてはアンテナサイズの小型化・薄型化が可能となる事が分かった。このように、本実施例により本発明の効果が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】第1の実施の形態の高周波磁性材料の斜視図および上面図。
【図2】第1の実施形態の蒸着の際の蒸着源と酸化物を形成する基板との位置関係を示す上面図。
【図3】第2の実施形態のアンテナ装置の斜視図。
【図4】第2の実施形態のアンテナ装置の断面図。
【符号の説明】
【0088】
10 高周波磁性材料
12 磁性膜
14 マトリックス絶縁性酸化物相
16 板状磁性体
20 蒸着装置
22、24 蒸着源
26 基板
32 給電端子
34 アンテナエレメント
36 配線基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス絶縁性酸化物相中に、板状磁性体が配向分散する磁性膜を有する高周波磁性材料であって、
前記板状磁性体が、前記磁性膜面に対して略垂直に形成され、
前記板状磁性体がFe、Co、Niのうち少なくとも1種の金属を含有し、
前記マトリックス絶縁性酸化物相が、シリコン酸化物またはアルミニウム酸化物を主成分酸化物とすることを特徴とする高周波磁性材料。
【請求項2】
前記マトリックス絶縁性酸化物相が、
前記シリコン酸化物と、前記シリコン酸化物と共晶系となる少量酸化物、または、
前記アルミニウム酸化物と、前記アルミニウム酸化物と共晶系となる少量酸化物を含有することを特徴とする請求項1記載の高周波磁性材料。
【請求項3】
前記板状磁性体の前記磁性膜面内における横寸法が1nm以上1μm以下、縦寸法が100nm以上、縦寸法/横寸法で表されるアスペクト比が10以上であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の高周波磁性材料。
【請求項4】
前記磁性膜の膜厚が、1μm以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれか一項に記載の高周波磁性材料。
【請求項5】
前記磁性膜中における前記板状磁性体の体積割合が50vol%以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項4いずれか一項に記載の高周波磁性材料。
【請求項6】
前記板状磁性体が一軸配向性を有する結晶系であることを特徴とする請求項1ないし請求項5いずれか一項に記載の高周波磁性材料。
【請求項7】
前記板状磁性体の結晶が一軸配向性を有し、前記板状磁性体の磁化容易軸もしくは磁化容易面が、前記磁性膜面に対し略垂直であることを特徴とする請求項1ないし請求項6いずれか一項に記載の高周波磁性材料。
【請求項8】
給電端子と、
一端に前記給電端子が接続されるアンテナエレメントと、
前記アンテナエレメントから放射される電磁波の伝送損失を抑制するための高周波磁性材料を具備するアンテナ装置であって、
前記高周波磁性材料が、請求項1ないし請求項7いずれか一項に記載の高周波磁性材料であることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項9】
基板上に共晶系となる2種の酸化物を2元同時形成する酸化物形成工程と、
熱処理により前記酸化物の共晶分解を促進する分解工程と、
共晶分解で生じた2層の共晶反応相のうち一方を選択的にエッチングし、前記基板に略垂直に配向する空隙を形成するエッチング工程と、
前記空隙を磁性金属で充填し板状磁性体を形成する充填工程を有することを特徴とする高周波磁性材料の製造方法。
【請求項10】
前記酸化物形成工程において、前記酸化物の形成が蒸着により行われ、2つの蒸着源の重心の垂直二等分線方向と、前記基板上において所望される前記板状磁性体の配向方向とが一致するよう前記基板を配置することを特徴とする請求項9記載の高周波磁性材料の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−239021(P2009−239021A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83261(P2008−83261)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】