高周波磁性薄膜及び高周波電子デバイス
【課題】 GHz帯域で動作可能な磁性薄膜とこれを用いた電子デバイスを得ることを目的とする。
【解決手段】 磁性体層と絶縁体層が交互に積層された磁性薄膜で、磁性体層は第一の磁性体層1と第二の磁性体層2を含み、前記第一の磁性体層1は前記第二の磁性体層2よりも異方性磁界が高く、前記第二の磁性体層2は前記第一の磁性体層1よりも飽和磁化が高いことを特徴とする。
【解決手段】 磁性体層と絶縁体層が交互に積層された磁性薄膜で、磁性体層は第一の磁性体層1と第二の磁性体層2を含み、前記第一の磁性体層1は前記第二の磁性体層2よりも異方性磁界が高く、前記第二の磁性体層2は前記第一の磁性体層1よりも飽和磁化が高いことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GHzオーダーの周波数帯域で動作可能な磁性薄膜とこれを用いた電子デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される移動体通信の急速な普及に伴い、高い伝送速度を持つ通信機器に対する需要が高まりつつある。伝送速度を高めるために作成された新しい規格は、既存の電波通信技術との競合を避けるために動作周波数が高くなる傾向にあり、近年では動作周波数がGHzオーダーにまで達している。従って最近の通信規格に適合するデバイスに用いる材料には、GHz帯域での動作が不可欠になってきている。
【0003】
このような高い周波数帯での動作はインダクタ、トランス等の磁性体を用いた電子デバイスにも要求されてきている。しかしながら、磁性体は強磁性共鳴によって損失が増大するため、高周波帯域での動作が難しかった。磁性体の高周波帯域での低損失を実現するためには、飽和磁化と異方性磁界を高めて共振周波数を高めることが好ましい。このような特性を有する磁性体を得るために、薄層化された磁性体層と薄層化された絶縁体層を交互に積層した磁性薄膜が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−063844号公報
【特許文献2】特開2003−338409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁性薄膜の共振周波数は、共振周波数をfr、飽和磁化をMs、異方性磁界をHkとすると、式1に示すように、飽和磁化と異方性磁界の積に依存することがわかる。
【0006】
【式1】
【0007】
飽和磁化は、磁性材料によってほぼ決まった値になるので、共振周波数を高くする方法としては現実的には異方性磁界を高めて磁化回転の復元力を大きくすることで解決することが考えられてきた。異方性磁界を高める方法としては、(1)磁場中熱処理などによる誘導磁気異方性の付与、(2)磁性薄膜にスリットを設けることなどによる形状磁気異方性の付与、(3)強磁性体膜と反強磁性体膜間の交換結合、等が知られている。しかしながら、(1)は熱処理過程を必要とするためプロセスが煩雑になり、(2)はスリット部分の磁性薄膜の透磁率が目減りするために実質的な透磁率が減少してしまい、(3)では反強磁性体膜を形成するために磁性体膜全体の飽和磁化が低くなり、透磁率が低下するという問題があった。
【0008】
また、図14はFeCo合金のFeの割合による磁性体の飽和磁化と異方性磁界の変化を示すグラフであるが、これを見ると、飽和磁化を高くすると異方性磁界が低下する傾向がある。このように、高い飽和磁化と高い異方性磁界を両立するのは難しいため、一つの種類の磁性材料によって高い飽和磁化と高い異方性磁界を備え、高周波帯域での低損失と共振周波数を高めることが困難になってきている。特にGHz帯域で動作可能な電子デバイスを得るために必要な特性を実現することは非常に困難であった。
【0009】
本発明は、以上のような問題点を解決して、高飽和磁化と高異方性磁界を有する磁性薄膜及びGHz帯域において有効に動作する電子デバイスを得られるものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、磁性体層と絶縁体層とを交互に積層した高周波磁性薄膜であって、前記磁性体層は第一の磁性体層および第二の磁性体層を含み、前記第一の磁性体層は前記第二の磁性体層よりも高い異方性磁界を有し、前記第二の磁性体層は前記第一の磁性体層よりも高い飽和磁化を有することを特徴とする高周波磁性薄膜を提案する。
【0011】
本発明によれば、第一の磁性体層と第二の磁性体層を積層することにより、第一の磁性体層は異方性磁界を極限まで高めることができ、第二の磁性体層は飽和磁化を極限まで高めることができるとともに、第一の磁性体層の飽和磁化を第二の磁性体層が補い、第二の磁性体層の異方性磁界を第一の磁性体層が補うことができる。各々の磁性体層は絶縁体層によって区分されて交互積層されているため、磁性体同士が混じりあうことなく、各々の持つ高い特性を両立させることが可能となる。これによって磁性体薄膜の共振周波数を高くすることができる。
【0012】
また、本発明は、前記第一の磁性体層が希土類金属と強磁性を示す3d遷移金属との合金を主体としていることを特徴とする高周波磁性薄膜、ならびに前記第二の磁性体層が強磁性を示す3d遷移金属及びそれらの合金を主体としていることを特徴とする高周波磁性薄膜を提案する。また、さらに前記希土類金属がSmであることを特徴とする高周波磁性薄膜、ならびに前記3d遷移金属がCoであることを特徴とする高周波磁性薄膜を提案する。
【0013】
本発明によれば、前記第一の磁性体層を3d遷移金属(Fe、Co、Niの少なくとも1種)と希土類金属(Sm、Pr、Ce、Y、Nd、Laの少なくとも1種)の合金を主体とすることにより、従来の異方性磁界(100〜150_Oe)より高い異方性磁界(1000_Oe以上)を有する磁性体層とすることができる。また、前記第二の磁性体層を強磁性を示す3d遷移金属及びその合金を主体とすることにより、飽和磁化の高い磁性体層とすることができる。ここで、前記希土類金属がSm、前記3d遷移金属がCoの場合、異方性磁界を最も高くすることできる。
【0014】
また、本発明は、前記第一の磁性体層又は前記第二の磁性体層が磁性体粒子を絶縁体で包み込んだグラニュラ構造であることを特徴とする高周波磁性薄膜を提案する。
【0015】
本発明によれば、グラニュラ構造とすることで、磁性薄膜の絶縁抵抗を向上させることができるとともに、高周波透磁率特性における渦電流損失を大幅に低減することが可能になる。
【0016】
また、本発明は、前記第一の磁性薄膜と、前記第二の磁性薄膜が絶縁体層を介して交換結合していることを特徴とする高周波磁性薄膜を提案する。また、さらに前記第一の磁性薄膜と、前記第二の磁性薄膜が、絶縁体層を介して規則的に積層されていることを特徴とする高周波磁性薄膜を提案する。
【0017】
本発明によれば、前記第一の磁性体層と前記第二の磁性体層の絶縁体層を介した各々の界面における交換結合により、各々の層の異方性磁界が平均化される。また、前記第一の磁性体層と前記第二の磁性体層が一定の比率で規則的に積層されるため、各層の比率、膜厚などを制御することにより、飽和磁化、異方性磁界を広い範囲で変えることが可能になり、透磁率の値、共振周波数を一定の範囲で制御することができる。なお、ここでいう「交換結合」は、異なる磁性体層の間に交換相互作用が働いている状態と定義する。
【0018】
また更に、本発明では、磁性薄膜と、導電性金属からなる導体とで形成される高周波電子デバイスであって、前記磁性体薄膜は絶縁体層と磁性体層を交互に積層して形成されており、前記磁性体層は第一の磁性体層および第二の磁性体層を含み、前記第一の磁性体層は前記第二の磁性体層よりも高い異方性磁界を有し、前記第二の磁性体層は前記第一の磁性体層よりも高い飽和磁化を有しており、前記磁性薄膜上に所定形状の前記導体を形成したことを特徴とする高周波電子デバイスを提案する。
【0019】
本発明によれば、GHz帯域において動作可能な、損失の少ない電子デバイスを得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のことから、従来の磁性薄膜と比較して、高い飽和磁化と高い異方性磁界を備え、高周波帯域での低損失と共振周波数を高めた磁性薄膜を実現することができるようになり、GHz帯域で動作可能な電子デバイスを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に係る高周波磁性薄膜の第一の実施形態を、図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る高周波磁性薄膜の模式的断面図であり、第一の磁性体層:第二の磁性体層が1:1である。この磁性薄膜は第一の磁性体層1と第二の磁性体層2が絶縁体層3を介して交互に積層されている。第一の磁性体層1は第二の磁性体層よりも異方性磁界が高くされており、一方第二の磁性体層2は第一の磁性体層1よりも飽和磁化が高くされている。第一の磁性体層1に用いられる磁性体としては、Co−Sm合金の他、Co−Y、Co−Ce、Co−Pr、Co−La、Co−Ndなどの3d遷移金属と希土類金属の合金や、Fe−Pt、Co−Pt規則合金などの異方性磁界材料の高い材料も好適である。また、第二の磁性体層2に用いられる磁性体としては、Co、Fe、FeCo合金、Fe−Ni合金およびCo−Ni合金などの3d遷移金属合金が好適である。絶縁体層3に用いられる絶縁体としては、SiO2、Al2O3等が挙げられる。
【0022】
製造方法の一例を、第一の磁性体層/第二の磁性体層/絶縁体層=Co−Sm/Co/SiO2を例にとって示すと、例えばSiやAl2O3等の絶縁基板S上に、誘導結合型RFスパッタ装置を用い、(1)雰囲気ガス:Ar、(2)成膜圧力:220mPa、(3)背圧:1.0×10−5Pa以下、(4)ターゲット:Co−Sm(Sm:17atm%)で厚さ10nmの第一の磁性体層1を形成する。次いで同じ条件でターゲットをSiO2に変えて前記第一の磁性体層1上に厚さ1nmの絶縁体層3を形成する。次いでターゲットをCoに変えて同じ条件で前記絶縁体層3上に厚さ10nmの第二の磁性体層2を形成する。さらに前記第二の磁性体層2の上に、厚さ1nmの絶縁体層2を形成する。これを繰返して、積層磁性薄膜を形成する。
【0023】
図2〜図4は、本実施形態の変形例で、図2は第一の磁性体層を1層積層する毎に第二の磁性体層を3層積層したものであり、図3は第一の磁性体層を1層積層する毎に第二の磁性体層を2層積層したもので、図4は第一の磁性体層を2層積層する毎に第二の磁性体層を1層積層したものである。これらの変形例は、上記条件による各層の形成を適宜行うことによって得ることができる。
【0024】
図5〜図8は、図1〜図4の磁性薄膜のそれぞれの透磁率−周波数特性を示すグラフであり、図5は図1の磁性薄膜、図6は図2の磁性薄膜、図7は図3の磁性薄膜、そして図8は図4の磁性薄膜のグラフである。これを見ると、どの磁性薄膜でも共振周波数が3GHz以上を示している。これは、磁性薄膜の飽和磁化と異方性磁界が向上して、式1のHkとMsの積がGHz帯域に達するレベルになっていることを示している。なお、これらのグラフを比較すると、第二の磁性体層2の割合が多いほど透磁率は高く、逆に第一の磁性体層1の割合が多いほど共振周波数が高くなっている。このことから、第二の磁性体層2の比率が高くなると飽和磁化が増えて透磁率が高くなり、第一の磁性体層1の比率が高くなると異方性磁界が高くなって共振周波数が高くなる傾向を示しているため、第二の磁性体層2と第一の磁性体層1がそれぞれ高飽和磁化層、高異方性磁界層として有効に機能していることを示している。
【0025】
なお、絶縁体層3の厚みについては、図9の磁性薄膜の絶縁体層厚みと飽和磁化および異方性磁界のグラフに基づいて説明する。異方性磁界が絶縁体層厚みの増加に応じて低下するのは、第一の磁性体層1と第二の磁性体層2間の交換相互作用が絶縁体層厚みの増加に応じて急激に低下するためであると考えられる。特に絶縁体層厚みが1.6nm以上の領域では、異方性磁界が20_Oe前後の値でほぼ一定値となっている。この異方性磁界の値は、第二の磁性体層だけから構成される磁性薄膜の異方性磁界とほぼ同じ値となっており、第一の磁性体層1との交換相互作用がほぼ消滅した状態であると推測できる。したがって、これらの試料では第一の磁性体層1と第二の磁性体層2がほぼ独立に運動しているものと考えられ、異方性磁界の高い第一の磁性体層1の磁化は殆ど動かず、第二の磁性体層2の磁化の運動だけが観察されていると推測できる。高周波磁気特性の改善に必要な高い異方性磁界を得るためには、高飽和磁化層と高異方性磁界層を交換結合させる必要があるため、絶縁体層3の厚みは1nm以下にすることが望ましい。なお、絶縁体層3の厚みが0の場合でも磁性薄膜の形成直後では2000_Oeを超える異方性磁界を示すが、経時変化または熱処理等を行うことにより、各層の磁性体の特性が低下してしまう。よって絶縁体層3の厚みは0.2nm以上にすることが望ましい。
【0026】
次に、磁性体層厚みについて、図10を用いて説明する。図10は、第一の磁性体層1の厚みを10nm、20nm、30nm、40nm、70nm及び140nmに変えたものと透磁率の虚数部との関係を示すグラフである。試料は各厚みの第一の磁性体層1と磁性体比率が1:1になるように第一の磁性体層1の厚みに合わせた枚数の10nmの厚みの第二の磁性体層2と各層間に0.6nmの絶縁体層3を挿入したものを用いた。
【0027】
このグラフを見ると、透磁率の虚数成分は第一の磁性体層1の厚みが薄い試料が高周波側にピークを形成するのに対して、第一の磁性体層1が厚い試料はピークが低周波側にシフトしており、特に第一の磁性体層1の厚みが40nm以上の試料は複数のピークを形成していることが分かる。複数のピークを形成するのは複数の共振モードが磁性体層内に存在していることに起因していると考えられる。複数の共振モードが存在するのは、第一の磁性体層1が厚くなると第二の磁性体層2に隣接する部分と第二の磁性体層2に隣接しない部分が存在するようになり、部分的に異方性磁界が異なる相が形成されること、もしくは第一の磁性体層1内部で第二の磁性体層2に近い界面近傍部と第二の磁性体層2から遠い磁性体層内部で異方性磁界に分布が形成されていることによるものと考えられる。異方性磁界を有効的に高めて、高い高周波磁気特性を得るためには、高異方性磁界層、高飽和磁化層の膜厚を、複数ピークが現れない30nm以下に設定することが望ましい。なお、磁性体層厚みが3nmを下回ると磁化が熱揺らぎによって擾乱される超常磁性状態になり、強磁性を示さなくなるので膜厚は3nm以上が好ましい。
【0028】
次に、本発明に係る高周波磁性薄膜の第二の実施形態を、図11及び図12に基づいて説明する。図11に示す磁性薄膜は、第一の磁性体層1がCo−Sm合金で構成される磁性薄膜であり、第二の磁性体層2がFeCo合金の磁性体粒子4をSiO2の絶縁体5で包み込んだグラニュラ構造の磁性薄膜である積層磁性薄膜となっている。
【0029】
図12に第一の磁性体層1として10nmのCo−Sm層、第二の磁性体層2として20nmのFeCo(Fe:60atm%)−SiO2グラニュラ層、絶縁体層3として0.5nmのSiO2を用いた試料の透磁率周波数特性を示す。透磁率の値が20前後、共振周波数が約9GHzと優れた高周波磁気特性を示している。この試料では高飽和磁化層にFeCo合金のグラニュラ構造層を用いているが、Co層の場合と同様に優れた磁気特性が得られており、高飽和磁化層として有効に機能していることが分かる。
【0030】
次に、本発明に係る電子デバイスの実施形態を、図13に基づいて説明する。図13は基板6上に磁性薄膜7を形成し、磁性薄膜7の上に平面コイルを構成する導体8が形成されている電子デバイスを示している。この磁性薄膜7を、本発明の磁性薄膜を用いることによって、GHz帯域で動作可能な電子デバイスを得ることができる。なお、ここでは配線基板上に磁性薄膜を形成して得られる電子デバイスを提示したが、絶縁基板に磁性薄膜を形成したものを個別チップにした電子部品であっても良い。
【0031】
以上のように、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。
【産業上の利用分野】
【0032】
本発明は、薄膜インダクタ、薄膜トランスなどの薄膜磁性体を用いた電子部品に用いられるもので、特にGHz帯域で使用する電子機器の回路部品に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第一の実施形態の磁性薄膜の断面を示す模式図である。
【図2】本発明の第一の実施形態の磁性薄膜の断面を示す模式図である。
【図3】本発明の第一の実施形態の磁性薄膜の断面を示す模式図である。
【図4】本発明の第一の実施形態の磁性薄膜の断面を示す模式図である。
【図5】図1に示す磁性薄膜の透磁率−周波数特性図である。
【図6】図2に示す磁性薄膜の透磁率−周波数特性図である。
【図7】図3に示す磁性薄膜の透磁率−周波数特性図である。
【図8】図4に示す磁性薄膜の透磁率−周波数特性図である。
【図9】絶縁体層の厚みと、磁性薄膜の飽和磁化及び異方性磁界との関係を示すグラフである。
【図10】第一の磁性体層の厚みと透磁率の虚数部との関係を示すグラフである。
【図11】本発明の第二の実施形態の磁性薄膜の断面を示す模式図である。
【図12】本発明の第二の実施形態の磁性薄膜の透磁率−周波数特性図である。
【図13】本発明の電子デバイスを示す斜視図である。
【図14】飽和磁化と異方性磁界の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0034】
1 第一の磁性体層
2 第二の磁性体層
3 絶縁体層
4 磁性体粒子
5 絶縁体
6 基板
7 磁性薄膜
8 導体
【技術分野】
【0001】
本発明は、GHzオーダーの周波数帯域で動作可能な磁性薄膜とこれを用いた電子デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される移動体通信の急速な普及に伴い、高い伝送速度を持つ通信機器に対する需要が高まりつつある。伝送速度を高めるために作成された新しい規格は、既存の電波通信技術との競合を避けるために動作周波数が高くなる傾向にあり、近年では動作周波数がGHzオーダーにまで達している。従って最近の通信規格に適合するデバイスに用いる材料には、GHz帯域での動作が不可欠になってきている。
【0003】
このような高い周波数帯での動作はインダクタ、トランス等の磁性体を用いた電子デバイスにも要求されてきている。しかしながら、磁性体は強磁性共鳴によって損失が増大するため、高周波帯域での動作が難しかった。磁性体の高周波帯域での低損失を実現するためには、飽和磁化と異方性磁界を高めて共振周波数を高めることが好ましい。このような特性を有する磁性体を得るために、薄層化された磁性体層と薄層化された絶縁体層を交互に積層した磁性薄膜が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−063844号公報
【特許文献2】特開2003−338409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁性薄膜の共振周波数は、共振周波数をfr、飽和磁化をMs、異方性磁界をHkとすると、式1に示すように、飽和磁化と異方性磁界の積に依存することがわかる。
【0006】
【式1】
【0007】
飽和磁化は、磁性材料によってほぼ決まった値になるので、共振周波数を高くする方法としては現実的には異方性磁界を高めて磁化回転の復元力を大きくすることで解決することが考えられてきた。異方性磁界を高める方法としては、(1)磁場中熱処理などによる誘導磁気異方性の付与、(2)磁性薄膜にスリットを設けることなどによる形状磁気異方性の付与、(3)強磁性体膜と反強磁性体膜間の交換結合、等が知られている。しかしながら、(1)は熱処理過程を必要とするためプロセスが煩雑になり、(2)はスリット部分の磁性薄膜の透磁率が目減りするために実質的な透磁率が減少してしまい、(3)では反強磁性体膜を形成するために磁性体膜全体の飽和磁化が低くなり、透磁率が低下するという問題があった。
【0008】
また、図14はFeCo合金のFeの割合による磁性体の飽和磁化と異方性磁界の変化を示すグラフであるが、これを見ると、飽和磁化を高くすると異方性磁界が低下する傾向がある。このように、高い飽和磁化と高い異方性磁界を両立するのは難しいため、一つの種類の磁性材料によって高い飽和磁化と高い異方性磁界を備え、高周波帯域での低損失と共振周波数を高めることが困難になってきている。特にGHz帯域で動作可能な電子デバイスを得るために必要な特性を実現することは非常に困難であった。
【0009】
本発明は、以上のような問題点を解決して、高飽和磁化と高異方性磁界を有する磁性薄膜及びGHz帯域において有効に動作する電子デバイスを得られるものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、磁性体層と絶縁体層とを交互に積層した高周波磁性薄膜であって、前記磁性体層は第一の磁性体層および第二の磁性体層を含み、前記第一の磁性体層は前記第二の磁性体層よりも高い異方性磁界を有し、前記第二の磁性体層は前記第一の磁性体層よりも高い飽和磁化を有することを特徴とする高周波磁性薄膜を提案する。
【0011】
本発明によれば、第一の磁性体層と第二の磁性体層を積層することにより、第一の磁性体層は異方性磁界を極限まで高めることができ、第二の磁性体層は飽和磁化を極限まで高めることができるとともに、第一の磁性体層の飽和磁化を第二の磁性体層が補い、第二の磁性体層の異方性磁界を第一の磁性体層が補うことができる。各々の磁性体層は絶縁体層によって区分されて交互積層されているため、磁性体同士が混じりあうことなく、各々の持つ高い特性を両立させることが可能となる。これによって磁性体薄膜の共振周波数を高くすることができる。
【0012】
また、本発明は、前記第一の磁性体層が希土類金属と強磁性を示す3d遷移金属との合金を主体としていることを特徴とする高周波磁性薄膜、ならびに前記第二の磁性体層が強磁性を示す3d遷移金属及びそれらの合金を主体としていることを特徴とする高周波磁性薄膜を提案する。また、さらに前記希土類金属がSmであることを特徴とする高周波磁性薄膜、ならびに前記3d遷移金属がCoであることを特徴とする高周波磁性薄膜を提案する。
【0013】
本発明によれば、前記第一の磁性体層を3d遷移金属(Fe、Co、Niの少なくとも1種)と希土類金属(Sm、Pr、Ce、Y、Nd、Laの少なくとも1種)の合金を主体とすることにより、従来の異方性磁界(100〜150_Oe)より高い異方性磁界(1000_Oe以上)を有する磁性体層とすることができる。また、前記第二の磁性体層を強磁性を示す3d遷移金属及びその合金を主体とすることにより、飽和磁化の高い磁性体層とすることができる。ここで、前記希土類金属がSm、前記3d遷移金属がCoの場合、異方性磁界を最も高くすることできる。
【0014】
また、本発明は、前記第一の磁性体層又は前記第二の磁性体層が磁性体粒子を絶縁体で包み込んだグラニュラ構造であることを特徴とする高周波磁性薄膜を提案する。
【0015】
本発明によれば、グラニュラ構造とすることで、磁性薄膜の絶縁抵抗を向上させることができるとともに、高周波透磁率特性における渦電流損失を大幅に低減することが可能になる。
【0016】
また、本発明は、前記第一の磁性薄膜と、前記第二の磁性薄膜が絶縁体層を介して交換結合していることを特徴とする高周波磁性薄膜を提案する。また、さらに前記第一の磁性薄膜と、前記第二の磁性薄膜が、絶縁体層を介して規則的に積層されていることを特徴とする高周波磁性薄膜を提案する。
【0017】
本発明によれば、前記第一の磁性体層と前記第二の磁性体層の絶縁体層を介した各々の界面における交換結合により、各々の層の異方性磁界が平均化される。また、前記第一の磁性体層と前記第二の磁性体層が一定の比率で規則的に積層されるため、各層の比率、膜厚などを制御することにより、飽和磁化、異方性磁界を広い範囲で変えることが可能になり、透磁率の値、共振周波数を一定の範囲で制御することができる。なお、ここでいう「交換結合」は、異なる磁性体層の間に交換相互作用が働いている状態と定義する。
【0018】
また更に、本発明では、磁性薄膜と、導電性金属からなる導体とで形成される高周波電子デバイスであって、前記磁性体薄膜は絶縁体層と磁性体層を交互に積層して形成されており、前記磁性体層は第一の磁性体層および第二の磁性体層を含み、前記第一の磁性体層は前記第二の磁性体層よりも高い異方性磁界を有し、前記第二の磁性体層は前記第一の磁性体層よりも高い飽和磁化を有しており、前記磁性薄膜上に所定形状の前記導体を形成したことを特徴とする高周波電子デバイスを提案する。
【0019】
本発明によれば、GHz帯域において動作可能な、損失の少ない電子デバイスを得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のことから、従来の磁性薄膜と比較して、高い飽和磁化と高い異方性磁界を備え、高周波帯域での低損失と共振周波数を高めた磁性薄膜を実現することができるようになり、GHz帯域で動作可能な電子デバイスを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に係る高周波磁性薄膜の第一の実施形態を、図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る高周波磁性薄膜の模式的断面図であり、第一の磁性体層:第二の磁性体層が1:1である。この磁性薄膜は第一の磁性体層1と第二の磁性体層2が絶縁体層3を介して交互に積層されている。第一の磁性体層1は第二の磁性体層よりも異方性磁界が高くされており、一方第二の磁性体層2は第一の磁性体層1よりも飽和磁化が高くされている。第一の磁性体層1に用いられる磁性体としては、Co−Sm合金の他、Co−Y、Co−Ce、Co−Pr、Co−La、Co−Ndなどの3d遷移金属と希土類金属の合金や、Fe−Pt、Co−Pt規則合金などの異方性磁界材料の高い材料も好適である。また、第二の磁性体層2に用いられる磁性体としては、Co、Fe、FeCo合金、Fe−Ni合金およびCo−Ni合金などの3d遷移金属合金が好適である。絶縁体層3に用いられる絶縁体としては、SiO2、Al2O3等が挙げられる。
【0022】
製造方法の一例を、第一の磁性体層/第二の磁性体層/絶縁体層=Co−Sm/Co/SiO2を例にとって示すと、例えばSiやAl2O3等の絶縁基板S上に、誘導結合型RFスパッタ装置を用い、(1)雰囲気ガス:Ar、(2)成膜圧力:220mPa、(3)背圧:1.0×10−5Pa以下、(4)ターゲット:Co−Sm(Sm:17atm%)で厚さ10nmの第一の磁性体層1を形成する。次いで同じ条件でターゲットをSiO2に変えて前記第一の磁性体層1上に厚さ1nmの絶縁体層3を形成する。次いでターゲットをCoに変えて同じ条件で前記絶縁体層3上に厚さ10nmの第二の磁性体層2を形成する。さらに前記第二の磁性体層2の上に、厚さ1nmの絶縁体層2を形成する。これを繰返して、積層磁性薄膜を形成する。
【0023】
図2〜図4は、本実施形態の変形例で、図2は第一の磁性体層を1層積層する毎に第二の磁性体層を3層積層したものであり、図3は第一の磁性体層を1層積層する毎に第二の磁性体層を2層積層したもので、図4は第一の磁性体層を2層積層する毎に第二の磁性体層を1層積層したものである。これらの変形例は、上記条件による各層の形成を適宜行うことによって得ることができる。
【0024】
図5〜図8は、図1〜図4の磁性薄膜のそれぞれの透磁率−周波数特性を示すグラフであり、図5は図1の磁性薄膜、図6は図2の磁性薄膜、図7は図3の磁性薄膜、そして図8は図4の磁性薄膜のグラフである。これを見ると、どの磁性薄膜でも共振周波数が3GHz以上を示している。これは、磁性薄膜の飽和磁化と異方性磁界が向上して、式1のHkとMsの積がGHz帯域に達するレベルになっていることを示している。なお、これらのグラフを比較すると、第二の磁性体層2の割合が多いほど透磁率は高く、逆に第一の磁性体層1の割合が多いほど共振周波数が高くなっている。このことから、第二の磁性体層2の比率が高くなると飽和磁化が増えて透磁率が高くなり、第一の磁性体層1の比率が高くなると異方性磁界が高くなって共振周波数が高くなる傾向を示しているため、第二の磁性体層2と第一の磁性体層1がそれぞれ高飽和磁化層、高異方性磁界層として有効に機能していることを示している。
【0025】
なお、絶縁体層3の厚みについては、図9の磁性薄膜の絶縁体層厚みと飽和磁化および異方性磁界のグラフに基づいて説明する。異方性磁界が絶縁体層厚みの増加に応じて低下するのは、第一の磁性体層1と第二の磁性体層2間の交換相互作用が絶縁体層厚みの増加に応じて急激に低下するためであると考えられる。特に絶縁体層厚みが1.6nm以上の領域では、異方性磁界が20_Oe前後の値でほぼ一定値となっている。この異方性磁界の値は、第二の磁性体層だけから構成される磁性薄膜の異方性磁界とほぼ同じ値となっており、第一の磁性体層1との交換相互作用がほぼ消滅した状態であると推測できる。したがって、これらの試料では第一の磁性体層1と第二の磁性体層2がほぼ独立に運動しているものと考えられ、異方性磁界の高い第一の磁性体層1の磁化は殆ど動かず、第二の磁性体層2の磁化の運動だけが観察されていると推測できる。高周波磁気特性の改善に必要な高い異方性磁界を得るためには、高飽和磁化層と高異方性磁界層を交換結合させる必要があるため、絶縁体層3の厚みは1nm以下にすることが望ましい。なお、絶縁体層3の厚みが0の場合でも磁性薄膜の形成直後では2000_Oeを超える異方性磁界を示すが、経時変化または熱処理等を行うことにより、各層の磁性体の特性が低下してしまう。よって絶縁体層3の厚みは0.2nm以上にすることが望ましい。
【0026】
次に、磁性体層厚みについて、図10を用いて説明する。図10は、第一の磁性体層1の厚みを10nm、20nm、30nm、40nm、70nm及び140nmに変えたものと透磁率の虚数部との関係を示すグラフである。試料は各厚みの第一の磁性体層1と磁性体比率が1:1になるように第一の磁性体層1の厚みに合わせた枚数の10nmの厚みの第二の磁性体層2と各層間に0.6nmの絶縁体層3を挿入したものを用いた。
【0027】
このグラフを見ると、透磁率の虚数成分は第一の磁性体層1の厚みが薄い試料が高周波側にピークを形成するのに対して、第一の磁性体層1が厚い試料はピークが低周波側にシフトしており、特に第一の磁性体層1の厚みが40nm以上の試料は複数のピークを形成していることが分かる。複数のピークを形成するのは複数の共振モードが磁性体層内に存在していることに起因していると考えられる。複数の共振モードが存在するのは、第一の磁性体層1が厚くなると第二の磁性体層2に隣接する部分と第二の磁性体層2に隣接しない部分が存在するようになり、部分的に異方性磁界が異なる相が形成されること、もしくは第一の磁性体層1内部で第二の磁性体層2に近い界面近傍部と第二の磁性体層2から遠い磁性体層内部で異方性磁界に分布が形成されていることによるものと考えられる。異方性磁界を有効的に高めて、高い高周波磁気特性を得るためには、高異方性磁界層、高飽和磁化層の膜厚を、複数ピークが現れない30nm以下に設定することが望ましい。なお、磁性体層厚みが3nmを下回ると磁化が熱揺らぎによって擾乱される超常磁性状態になり、強磁性を示さなくなるので膜厚は3nm以上が好ましい。
【0028】
次に、本発明に係る高周波磁性薄膜の第二の実施形態を、図11及び図12に基づいて説明する。図11に示す磁性薄膜は、第一の磁性体層1がCo−Sm合金で構成される磁性薄膜であり、第二の磁性体層2がFeCo合金の磁性体粒子4をSiO2の絶縁体5で包み込んだグラニュラ構造の磁性薄膜である積層磁性薄膜となっている。
【0029】
図12に第一の磁性体層1として10nmのCo−Sm層、第二の磁性体層2として20nmのFeCo(Fe:60atm%)−SiO2グラニュラ層、絶縁体層3として0.5nmのSiO2を用いた試料の透磁率周波数特性を示す。透磁率の値が20前後、共振周波数が約9GHzと優れた高周波磁気特性を示している。この試料では高飽和磁化層にFeCo合金のグラニュラ構造層を用いているが、Co層の場合と同様に優れた磁気特性が得られており、高飽和磁化層として有効に機能していることが分かる。
【0030】
次に、本発明に係る電子デバイスの実施形態を、図13に基づいて説明する。図13は基板6上に磁性薄膜7を形成し、磁性薄膜7の上に平面コイルを構成する導体8が形成されている電子デバイスを示している。この磁性薄膜7を、本発明の磁性薄膜を用いることによって、GHz帯域で動作可能な電子デバイスを得ることができる。なお、ここでは配線基板上に磁性薄膜を形成して得られる電子デバイスを提示したが、絶縁基板に磁性薄膜を形成したものを個別チップにした電子部品であっても良い。
【0031】
以上のように、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。
【産業上の利用分野】
【0032】
本発明は、薄膜インダクタ、薄膜トランスなどの薄膜磁性体を用いた電子部品に用いられるもので、特にGHz帯域で使用する電子機器の回路部品に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第一の実施形態の磁性薄膜の断面を示す模式図である。
【図2】本発明の第一の実施形態の磁性薄膜の断面を示す模式図である。
【図3】本発明の第一の実施形態の磁性薄膜の断面を示す模式図である。
【図4】本発明の第一の実施形態の磁性薄膜の断面を示す模式図である。
【図5】図1に示す磁性薄膜の透磁率−周波数特性図である。
【図6】図2に示す磁性薄膜の透磁率−周波数特性図である。
【図7】図3に示す磁性薄膜の透磁率−周波数特性図である。
【図8】図4に示す磁性薄膜の透磁率−周波数特性図である。
【図9】絶縁体層の厚みと、磁性薄膜の飽和磁化及び異方性磁界との関係を示すグラフである。
【図10】第一の磁性体層の厚みと透磁率の虚数部との関係を示すグラフである。
【図11】本発明の第二の実施形態の磁性薄膜の断面を示す模式図である。
【図12】本発明の第二の実施形態の磁性薄膜の透磁率−周波数特性図である。
【図13】本発明の電子デバイスを示す斜視図である。
【図14】飽和磁化と異方性磁界の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0034】
1 第一の磁性体層
2 第二の磁性体層
3 絶縁体層
4 磁性体粒子
5 絶縁体
6 基板
7 磁性薄膜
8 導体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体層と絶縁体層とを交互に積層した高周波磁性薄膜であって、前記磁性体層は第一の磁性体層および第二の磁性体層を含み、前記第一の磁性体層は前記第二の磁性体層よりも高い異方性磁界を有し、前記第二の磁性体層は前記第一の磁性体層よりも高い飽和磁化を有することを特徴とする高周波磁性薄膜。
【請求項2】
前記第一の磁性体層は、希土類金属と強磁性を示す3d遷移金属との合金を主体としていることを特徴とする請求項1に記載の高周波磁性薄膜。
【請求項3】
前記第二の磁性体層は、強磁性を示す3d遷移金属またはそれらの合金を主体としていることを特徴とする請求項1に記載の高周波磁性薄膜。
【請求項4】
前記第一の磁性体層は、磁性体粒子を絶縁体で包み込んだグラニュラ構造であることを特徴とする請求項1に記載の高周波磁性薄膜。
【請求項5】
前記第二の磁性体層は、磁性体粒子を絶縁体で包み込んだグラニュラ構造であることを特徴とする請求項1に記載の高周波磁性薄膜。
【請求項6】
前記希土類金属はSmであることを特徴とする請求項2に記載の高周波磁性薄膜。
【請求項7】
前記3d遷移金属はCoであることを特徴とする請求項2または3に記載の高周波磁性薄膜。
【請求項8】
前記第一の磁性体層と、前記第二の磁性体層が絶縁体層を介して交換結合していることを特徴とする請求項1に記載の高周波磁性薄膜。
【請求項9】
前記第一の磁性体層と、前記第二の磁性体層は、絶縁体層を介して規則的に積層されていることを特徴とする請求項1に記載の高周波磁性薄膜。
【請求項10】
前記絶縁体層の厚みは、0.2〜1nmであることを特徴とする請求項1に記載の高周波磁性薄膜。
【請求項11】
磁性体層の厚みは、3〜30nmであることを特徴とする請求項1に記載の高周波磁性薄膜。
【請求項12】
磁性薄膜と、該磁性薄膜上に形成された金属導体とで構成される高周波電子デバイスであって、前記磁性薄膜は絶縁体層と磁性体層を交互に積層して形成されており、前記磁性体層は第一の磁性体層および第二の磁性体層を含み、前記第一の磁性体層は前記第二の磁性体層よりも高い異方性磁界を有し、前記第二の磁性体層は前記第一の磁性体層よりも高い飽和磁化を有しており、前記磁性薄膜上に所定形状の前記導体を形成したことを特徴とする高周波電子デバイス。
【請求項1】
磁性体層と絶縁体層とを交互に積層した高周波磁性薄膜であって、前記磁性体層は第一の磁性体層および第二の磁性体層を含み、前記第一の磁性体層は前記第二の磁性体層よりも高い異方性磁界を有し、前記第二の磁性体層は前記第一の磁性体層よりも高い飽和磁化を有することを特徴とする高周波磁性薄膜。
【請求項2】
前記第一の磁性体層は、希土類金属と強磁性を示す3d遷移金属との合金を主体としていることを特徴とする請求項1に記載の高周波磁性薄膜。
【請求項3】
前記第二の磁性体層は、強磁性を示す3d遷移金属またはそれらの合金を主体としていることを特徴とする請求項1に記載の高周波磁性薄膜。
【請求項4】
前記第一の磁性体層は、磁性体粒子を絶縁体で包み込んだグラニュラ構造であることを特徴とする請求項1に記載の高周波磁性薄膜。
【請求項5】
前記第二の磁性体層は、磁性体粒子を絶縁体で包み込んだグラニュラ構造であることを特徴とする請求項1に記載の高周波磁性薄膜。
【請求項6】
前記希土類金属はSmであることを特徴とする請求項2に記載の高周波磁性薄膜。
【請求項7】
前記3d遷移金属はCoであることを特徴とする請求項2または3に記載の高周波磁性薄膜。
【請求項8】
前記第一の磁性体層と、前記第二の磁性体層が絶縁体層を介して交換結合していることを特徴とする請求項1に記載の高周波磁性薄膜。
【請求項9】
前記第一の磁性体層と、前記第二の磁性体層は、絶縁体層を介して規則的に積層されていることを特徴とする請求項1に記載の高周波磁性薄膜。
【請求項10】
前記絶縁体層の厚みは、0.2〜1nmであることを特徴とする請求項1に記載の高周波磁性薄膜。
【請求項11】
磁性体層の厚みは、3〜30nmであることを特徴とする請求項1に記載の高周波磁性薄膜。
【請求項12】
磁性薄膜と、該磁性薄膜上に形成された金属導体とで構成される高周波電子デバイスであって、前記磁性薄膜は絶縁体層と磁性体層を交互に積層して形成されており、前記磁性体層は第一の磁性体層および第二の磁性体層を含み、前記第一の磁性体層は前記第二の磁性体層よりも高い異方性磁界を有し、前記第二の磁性体層は前記第一の磁性体層よりも高い飽和磁化を有しており、前記磁性薄膜上に所定形状の前記導体を形成したことを特徴とする高周波電子デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−251111(P2007−251111A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110238(P2006−110238)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】
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